以下、本発明の実施の形態について説明する。
1.本発明の第1の実施の形態
先ず、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置の構造について説明し、次いで、その作用について説明する。
[電子装置の構造]
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置が3段に設けられた電子機器の正面図である。図3は、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置を下から見たときの背面斜視図である。
図2を参照するに、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15が設けられる電子機器20は、電子部品をプリント配線基板に実装したプラグインユニット(PIU:Plug In Unit。図示を省略する。)をシェルフS内に複数収容し、当該プラグインユニットのコネクタによるプラグイン方式で、前記シェルフSに設けられたバックボードに実装して1つの電子装置15を構成し、これら複数(図2に示す例では3つ)の電子装置15をキャビネット16中に重畳的に複数段(図2に示す例では3段)に並べて取り付けられた構造を有する。また、各電子装置15(シェルフS)は、互いに所定の間隔をもってキャビネット16に着脱自在に取り付けられている。
図3を参照するに、電子装置15の正面(図3のX1側の面)に設けられているシェルフSには、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration circuit)等の電子部品をプリント配線基板に実装した前記プラグインユニットが、当該プリント配線基板の主面が地面と垂直な方向に位置した状態で、図3のX2方向に複数挿入される。
シェルフS内には、金属の仕切り板24(図2参照)が設けられており、シェルフS内のスロットの間を仕切っている。これにより、プラグインユニットの電子部品やプリント配線基板が火災等により燃焼した際に、隣接するプラグインユニットに炎が移ることが防止される。
かかる金属の仕切り板24(図2参照)は、プラグインユニットのプリント配線基板の上端が位置する高さまで設けられているが、電子装置15の背面(図3のX2側の面)の上部に開口形成された排気口25が位置する箇所には設けられておらず、当該箇所では、隣接するスロットとの仕切りは設けられてない。
電子装置15の背面(図3のX2側の面)の上部に開口形成された排気口25は、その構造の詳細を後述する扉部30が回動することにより閉鎖される。図3に示す例では、扉部30は8個設けられており、8個全ての扉部30が回動すると排気口25全体が閉鎖される。
電子装置15の上端においては、図3において点線で示すように、天板26が水平面(X−Y面)に対して斜めに設けられている。これにより、電子装置15の上端は背面側(図3のX2側)が正面側(図3のX1側)より上方に位置し、かかる背面(図3のX2側の面)の上部に排気口25が開口形成されている。
また、前記電子部品等の発熱により電子装置15の内部の温度が上昇するため、当該内部の温度を所望の温度に保持すべく、強制空冷式の冷却部としてファン27が、電子装置15の最下部に複数設けられている。即ち、本例の電子装置15においては、当該装置の最下部に吸気口が形成されている。なお、図2においては、分かりやすくするために、ファン27が設けられている位置を斜線で示している。
かかるファン27により、空気を外部から図3のZ1方向に強制的に取り込み(吸気)、図2において黒い矢印で示すように、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通させて、発熱している電子部品等を冷却する。暖められた空気は、電子装置15の上端において斜めに設けられた天板26の内側面により方向を曲げられて、当該電子装置15の背面(図3のX2側の面)の上部に設けられた排気口25を介して、外部に排出(排気)される。このように、ファン27による吸気及び排気口25を介する排気という一連の空気の流通による冷却構造が各電子装置15ごとに形成されている。なお、ファン27は、シェルフSのスロット内で火災が発生しても停止しないように設定されている。
また、電子装置15をキャビネット16中に重畳的に3段に並べて取り付けられた構造を有する電子機器20においては、図2において白抜き矢印で示すように、空気は、一の電子装置15の天板26の外側面に沿って、その直上に設けられた電子装置15のファン27に取り込まれる。よって、一の電子装置15の上端において斜めに設けられた天板26により、当該電子装置15内を流通した空気を排気口25に導くことができると共に、その直上に設けられた電子装置15のファン27に取り込まれる空気を導くことができ、電子装置15の高さを短縮でき、高さが低いキャビネットにも対応することができる。
図2及び図3に示すように、電子装置15の背面(図3のX1側の面)においては、シェルフSの下にケーブルダクト28が設けられており、プラグインユニットのプリント配線基板に接続されたケーブルが当該ケーブルダクト28内に収容される。電子装置15の内部において、当該ケーブルダクト28が位置している箇所と対応する箇所では、ファン27から取り込まれた空気が整流されて、シェルフS内に流通される。
また、電子装置15の背面(図3のX2側の面)においては、外部インタフェース用のコネクタが配設されたサブバックボード22が、バックボード23の外側に設けられている。
ここで、扉部30及びその周辺の構造について、図4等を参照して説明する。上述のように、本例では、扉部30は8個設けられているが、それぞれ同じ構造を有するため、以下の説明では、1つの扉部30及びその周辺の構造について説明をもって、他の扉部30及びその周辺の構造の説明に代えることとする。
図4は、図3の線A−Aにおける電子装置15の上部の断面図である。電子装置15の正面側(図3のX1側)が図4において左側に相当し、電子装置15の背面側(図3のX2側)が図4において右側に相当する。
図4を参照するに、電子装置15の上端において、水平面に対して斜めに天板26が設けられており、電子装置15の背面の上部に排気口25が開口形成されている。排気口25よりも更に電子装置15の背面側では、前記天板26は、水平面に対して略平行に形成されている。以下では、天板26のうち、水平面に対して斜めに配置されている箇所を傾斜部26−1と、水平面に対して略平行に配置されている箇所を水平部26−2と呼ぶ。
天板26の水平部26−2には、扉部回動用部材として、蝶番等の軸金具31が設けられている。軸金具31は、1本の回転軸31−1と当該回転軸31−1に回動自在に連結された2枚の金属板31−2、31−3から略構成され、一方の金属板31−2が天板26の水平部26−2にネジ等で締結され、他方の金属板31−3が扉部30にネジ等で締結されている。軸金具31の回転軸31−1は、天板26の傾斜部26−1と水平部26−2との接続箇所の近傍に位置している。
従って、金属板31−3に締結された扉部30は、軸金具31の回転軸31−1を中心に回動することができる。
また、排気口25の下部には、水平面と垂直な方向において扉部30の回動を停止するよう、扉部回動停止部材としてストッパ32が設けられている。図3に示すように、ストッパ32は、電子装置15の背面側から見たときに、コの字を反時計回りに90度回転させた形状、即ち、電子装置15の側面(図3におけるY1、Y2側の面)近傍の2箇所において鉛直方向(Z1−Z2方向)に所定長さ形成され、電子装置15の幅方向(Y1−Y2方向)に折曲された形状を有する。
なお、扉部30は、例えば、約65×55mmの大きさに設定してもよい。
ここで、図5も参照する。図5は、扉部30及びその周辺の構造を示す斜視図であり、図4に示す天板26と軸金具31を取り除いた状態で、扉部30及びその周辺を矢印Bで示す方向から見たときの図である。図5に示す扉部30の上面の一部に、図4に示す軸金具31の金属板31−3が接合される。
また、前記扉部30の上面であって、図4に示す軸金具31の金属板31−3が接合される箇所と所定長さ離間して対向する側に、発熱感知部材として、温度ヒューズ33が装着されている。
温度ヒューズ33は、第1の金属板34と第2の金属板35とが、詳細を後述する熱溶融材で接着されて成る。
第1の金属板34は、溶接又はネジ等の締結部材等により、扉部30の前記上面であって、図4に示す軸金具31の金属板31−3が接合される箇所と所定長さ離間して対向する側に取り付けられている。
第2の金属板35は、平面視凸字型形状を有し、本体部35−1と、本体部35−1から延在形成された凸状先端部35−2とを有する。第2の金属板35の本体部35−1には、貫通孔36が形成されている。図4に示すように、ネジ37が、第2の金属板35の貫通孔36と、天板26の傾斜部26−2に形成された貫通孔(図示を省略)とに嵌合されて、第2の金属板35と天板26の傾斜部26とが接合されている。
このような構造を有する第1の金属板34と第2の金属板35とは、上述のように、熱溶融材で接着されている。かかる接着構造について、以下説明する。
本例では、熱溶融材として、ペースト状の半田が用いられる。例えば、環境への影響を考慮して鉛フリーの半田を用いてもよい。後述する接着箇所に、メタルマスクを用いて印刷し、炉中で溶融接合して、半田を設ける。かかる方法により、半田の接着量を安定させることができる。一般に、金属製の板に半田付けを行うのは、熱が逃げるため困難であるが、上述の如きリフローを用いて半田付けを行うことにより、半田の接着を容易に行うことができる。
但し、第1の金属板34と第2の金属板35とを接着する熱溶融材は、半田に限定されず、例えば、当該熱溶融材として、熱可塑性接着剤を用いてもよい。
熱溶融材は、平面視凸字型形状を有する第2の金属板35の凸状先端部35−2の下面の先端側の一部に設けられている。凸状先端部35−2における熱溶融材の形成面積は、当該凸状先端部35−2が耐衝撃性を保つために必要な強度を持つ面積に設定される。例えば、熱溶融材の形成幅を約3mmに、形成面積を約5乃至25mm2に設定してもよい。
かかる熱溶融材を介して第2の金属板35の凸状先端部35−2の下面の先端側の一部と、第1の金属板34とが接着されている。
シェルフS(図3参照)のスロット内で火災が発生し、温度が半田の融点である約220℃以上になると、半田から成る熱溶融材は溶融し、第1の金属板34と第2の金属板35との接着が解かれ、かかる第1の金属板34が取り付けられた扉部30が、図6に矢印で示すように、軸金具31の回転軸31−1を中心に回動することができる。
特に、本例では、上述のように、熱溶融材は、平面視凸字型形状を有する第2の金属板35の凸状先端部35−2の下面の全部ではなく、先端側の一部にのみ設けられている。よって、第2の金属板35の本体部35−1の凸状先端部35−2側の端面(図5において黒色で示す)と、第1の金属板34の側縁部との間には所定の間隙が形成された状態で、熱溶融材を介して第2の金属板35の凸状先端部35−2の下面の先端側の一部と、第1の金属板34とが接着されている。
上述のように、温度が半田の融点である約220℃以上になると、半田から成る熱溶融材は溶融し、即ち、温度ヒューズ33は、発熱感知して作動するが、かかる作動温度は熱溶融材たる半田の接着面積に依存する。第2の金属板35の本体部35−1の凸状先端部35−2側の端面(図5において黒色で示す)と、第1の金属板34の側縁部との間に間隙を設けず、熱溶融材を第2の金属板35の凸状先端部35−2の下面の全部に形成し、第2の金属板35の凸状先端部35−2の下面の全面と第1の金属板34とを接着してしまうと、第2の金属板35の本体部35−1の凸状先端部35−2側の端面(図5において黒色で示す)にも半田から成る熱溶融材が付着してしまう。その結果、半田の接着面積が、設定していたものと相違してしまい、温度ヒューズ33の作動温度に影響を与えてしまうおそれがある。
一方、本例のように、第2の金属板35の本体部35−1の凸状先端部35−2側の端面(図5において黒色で示す)と、第1の金属板34の側縁部との間に所定の間隙を形成した状態で、熱溶融材を介して第2の金属板35の凸状先端部35−2の下面の先端側の一部と、第1の金属板34とを接着することにより、半田の接着面積を所定の値に維持するように的確に管理することができ、よって、温度ヒューズ33の作動温度を安定させることができる。
ここで、回動動作する扉部30の重さについて、図2及び図7を参照して説明する。
上述のように、図2において黒い矢印で示すように、ファン27により外部から取り込まれた空気は、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通し、図7において白抜きの矢印で示すように、天板26の内側面により方向を曲げられて、電子装置15の背面の上部に設けられた排気口25を介して、外部に排出される。
従って、回動動作する扉部30は、温度ヒューズ33の作動温度に到達した際に、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通してきた空気の風圧にうちかって、回動し始めることができる重さを有することが必要である。
より具体的には、図7に示すように、扉部30の重さをm、重力加速度をg、ファン27により外部から取り込まれた空気の風圧をp、扉部30の面積をSとすると、扉部30の重さmは、m×g×cosθ>p×S×cosθ、即ち、m×g>p×Sの関係を満足する必要がある。ここで、θは、天板26の傾斜部26−2の、水平面に対する傾斜角度である。
換言すれば、扉部30は、前記空気の風圧p×前記風圧pが作用する扉部30の面積S÷重力加速度gから算出される値よりも大きい値の自重を有する必要がある。これにより、扉部30は、温度ヒューズ33の作動温度に到達した際に、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通してきた空気の風圧にうちかって、回動し始めることができる。
[電子装置の作用]
次に、上述の構造を有する電子装置15の作用について説明する。
先ず、電子装置15の内部において火災が発生していない通常状態の場合について説明し、次いで、電子装置15の内部において火災が発生した場合について、説明する。
[通常状態の場合]
再度、図2及び図7を参照する。
電子装置15の内部において火災が発生していない通常状態においては、ファン27による吸気及び排気口25を介する排気という一連の空気の流通による冷却構造が確保される。即ち、図2において黒い矢印で示すように、シェルフS内のスロットに設けられたプラグインユニットの電子部品等を冷却するためにファン27により外部から取り込まれた空気は、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通し、図7において白抜きの矢印で示すように、天板26の内側面により方向を曲げられて、電子装置15の背面の上部に設けられた排気口25を介して、外部に排出される。
この状態において、扉部30は、温度ヒューズ33及び蝶番31を介して天板26に固定されている。上述のように、温度ヒューズ33は、第1の金属板34と第2の金属板35とが、熱溶融材で接着されて成る。第1の金属板34は扉部30に接合され、第2の金属板35は天板26の傾斜部26に接合されている。従って、第1の金属板34と第2の金属板35とを接着している熱溶融材は、扉部30及び第1の金属板34の重力によって引っ張られた状態になっている。
また、上述のように、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通した空気は、水平面に対して斜めに設けられた天板26の内側面により流通方向を曲げられて、電子装置15の背面の上部に設けられた排気口25を介して、外部に排出される構造となっているため、温度ヒューズ33及び蝶番31を介して天板26に固定されている扉部30には、上向きに、即ち、扉部30及び第1の金属板34の重力の方向と反対の方向に、圧力(風圧)が作用する。
このように、扉部30及び第1の金属板34の重力と風圧とは、互いに反対の方向に作用するため、熱溶融材に作用する引っ張り力は、前記重力−(マイナス)風圧となり、扉部30及び第1の金属板34の自重のみが作用する場合に比し小さい。よって、第1の金属板34と第2の金属板35とを接着する熱溶融材として、引張り強度の小さい材料を選択することができる。
[電子装置15の内部において火災が発生した場合]
電子装置15のシェルフSにおいて、あるスロット内において火災が発生すると、当該スロットの真上に位置する扉部30は、扉部30及び第1の金属板34の自重とファン27により外部から取り込まれた空気の風圧を利用して、以下に説明するように回動する。
即ち、あるスロット内で火災が発生し、当該スロット内の温度が上昇し半田の融点である約220℃以上になると、当該スロットの真上に位置する扉部30に取り付けられた第1の金属板34と第2の金属板35とを接着する半田から成る熱溶融材は溶融し、第1の金属板34と第2の金属板35との接着が解かれる。
そうすると、かかる第1の金属板34が取り付けられた扉部30は、扉部30及び第1の金属板34の重力から風圧を引いた(扉部30及び第1の金属板34の重力−(マイナス)風圧)力によって、即ち、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通してきた空気の風圧にうちかって、図6に矢印で示すように、軸金具31の回転軸31−1を中心に回動し始める。
扉部30が回動し始めた状態を図8に示す。
図8に示すように、電子装置15の排気口25が位置する高さ部分では、電子装置15の内部において下から上へ向かって流通した空気は、水平面に対して斜めに設けられた天板26の内側面により流通方向を曲げられ、電子装置15の正面側から背面側に向かって斜め上への方向に流れる。
従って、扉部30が回動し始めると、回動前には扉部30及び第1の金属板34の重力と反対の方向に作用していた風圧の扉部30への作用方向が変わり、扉部30を更に回動させる方向に風圧は作用する。
よって、かかる風圧を利用して扉部30は回動でき、扉部30により排気口25を短時間で閉鎖することができる。これにより、電子装置10の内部で火災が発生しても外部への延焼を瞬時に抑えることができる。
このようにして、扉部30が回動し、扉部30が水平面と垂直な方向に位置すると、扉部30は、排気口25の下部に設けられたストッパ32に当接する。この状態を図9に示す。
図9に示すように、扉部30が電子装置15の背面側に押し出される方向(図9に矢印で示す方向)に風圧が扉部30に作用している一方、ストッパ32により、水平面と垂直な方向において扉部30の回動が停止される。よって、扉部30が水平面と垂直な方向よりも更に電子装置15の背面側に回動してしまうことを回避でき、一旦扉部30が排気口25を閉鎖すると、扉部30はばたつくことなく当該閉鎖状態を維持させることができる。
ところで、本発明の発明者は、規格GR−63−COREに基づく、上述の本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15のシェルフSのスロットの下方にガスバーナを挿入してメタンガスを燃焼させるシミュレーションを行い、図10乃至図12に示す結果を得ている。ここで、図10乃至図12は、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15の防火試験のシミュレーション結果を示す電子装置15の正面図(その1)乃至(その3)である。図10乃至図12においては、シェルフS内の温度分布が示されている。
図10に示す例では、各スロットの上方に位置する扉部30の幅を約65mmに設定し、即ち、各扉部30に設けられた熱溶融材を約65mm間隔で設け、シェルフSの略中央のスロットの下方にガスバーナを挿入してメタンガスを燃焼させ、約9kWの熱量が発生する場合のシミュレーション結果が示されている。
当該ガスバーナが挿入されたスロットの上方に位置する温度ヒューズ33に設けられた熱溶融材が溶融し、当該温度ヒューズ33が設けられた扉部30が排気口25を部分的に閉鎖する。よって、炎が電子装置の外部に吹き出すことが防止され、電子装置10の外部への延焼を回避することができる。
また、メタンガスの燃焼によりシェルフS内の温度が上昇するが、シェルフSのスロットに挿入されるプラグインユニットのプリント配線基板の上端が位置する高さまで金属の仕切板24(図2参照)が設けられているため、当該ガスバーナが挿入されるスロットに隣接するスロット内に挿入されるプラグインユニットへの延焼は回避される。
一方、排気口25が位置する箇所には仕切板24(図2参照)は設けられておらず、当該箇所では、隣接するスロットとの仕切りは形成されていないため、高温の熱、煙、及び引火性ガスは当該箇所においては横方向に広がり、排気口25のうち開口している部分を介して電子装置15の外部に排出される。
シミュレーションの結果によれば、発熱源のスロットを中心に左右に約80mm広がった範囲が、前記熱溶融材を構成する半田の融点(約220℃)以上の温度を有する。このことから、約65mm間隔で設けられた接合材(半田)のうち、熱源に最も近い位置に位置する熱溶融材を溶融することができる。
また、図10において点線で囲んだ部分は、殆ど温度上昇が見られていない。これは、排気口25が設けられている高さ箇所においては、高温の熱、煙は横方向に広がり、排気口25のうち開口している部分を介して電子装置15の外部に排出されるからである。
図10に示す例では、シェルフSの略中央のスロットの下方にガスバーナを挿入してメタンガスを燃焼させ、約9kWの熱量が発生する場合を想定しているが、かかる発熱源のスロットを変えた例のシミュレーション結果を図11及び図12に示す。
図11に示す例では、前記発熱源のスロットが図10に示す例の場合よりも左側に位置している場合が示され、図12に示す例では、前記発熱源のスロットが図10に示す例の場合よりも右側に位置している場合が示されている。
図11及び図12に示す例においても、図10に示す例と同様に、当該ガスバーナが挿入されたスロットの上方に位置する温度ヒューズ33に設けられた熱溶融材が溶融し、当該温度ヒューズ33が設けられた扉部30が排気口25を部分的に閉鎖する。よって、炎が電子装置の外部に吹き出すことが防止され、電子装置10の外部への延焼を回避することができる。また、排気口25のうち開口している部分を介して、高温の熱、煙、及び引火性ガスは電子装置15の外部に排出される。
ところで、上述のように、図3に示す例では、扉部30は8個設けられているが、排気口25を閉鎖している一の扉部80に隣接する他の扉部80の閉鎖動作について、図13及び図14を参照して説明する。
ここで、図13及び図14は、排気口25を閉鎖している一の扉部80に隣接する他の扉部80の閉鎖動作を説明するための図であり、図3に示す本発明の第1の実施の形態に係る電子装置を下から見たときの背面部分拡大斜視図である。なお、図13及び図14では、説明をしやすくするために、扉部30を、扉部30−1乃至30−8として図示している。
図13を参照するに、扉部30−5の下方に位置するスロット内で火災が発生し、温度が上昇して扉部30−5に設けられた温度ヒューズ33に設けられた熱溶融材の融点に達すると、扉部30−5は排気口25を部分的に閉鎖する。
すると、図13において黒色の矢印で示すように、炎、高温の空気、煙、及び引火性ガスは、当該扉部30−5により流動を妨げられ、当該扉部30−5を回り込み横方向に広がって、排気口25のうち開口している部分を介して電子装置15の外部に出ようとする。このとき、扉部30−5に隣接する扉部30−4及び扉部30−6に設けられた温度ヒューズ33は作動温度に達すると作動するため、図14に示すように、扉部30−4及び扉部30−6も排気口25を部分的に閉鎖する。
それでもなお、炎、高温の空気、煙、及び引火性ガスが、扉部30−4乃至30−6により流動を妨げられ、扉部30−4乃至30−6を回り込み横方向に広がって、排気口25のうち開口している部分を介して電子装置15の外部に出ようとしても、扉部30−4に隣接する扉部30−3及び扉部30−6に隣接する扉部30−7に設けられた温度ヒューズ33は作動温度に達すると作動し、扉部30−3及び扉部30−7も排気口25を部分的に閉鎖する。
このように、本例では、扉部30−1乃至30−8が順に排気口25を閉鎖していく構造となっている。よって、炎が電子装置15の外部に吹き出すことが確実に防止され、電子装置10の外部への延焼を回避することができる。また、排気口25のうち開口している部分を介して、高温の熱、煙、及び引火性ガスは電子装置15の外部に排出することができる。
任意のスロットで火災が発生すると、当該スロットの真上に位置する扉部30に設けられた温度ヒューズ33が作動し、発火点の真上部分の排気口25が当該扉部30により閉鎖され、そのときの状態に応じて隣接する他の扉部30も順に閉鎖することができる限り、排気口25を閉鎖する扉部30の配設数及び各扉部30に設けられる温度ヒューズ33の配設位置につき、特に限定はない。
このように、排気口25を分割するように複数の扉部30を設け、各扉部30により排気口25を部分的に(分割して)閉鎖させることにより、電子装置15の内部の任意の箇所で火災が発生しても、適切な扉部30で排気口25を部分的に閉鎖させることができ、電子装置15の外部への延焼を防止することができる。一方、排気口25のうち開口している部分から高温の熱、煙、及び引火性ガスを電子装置15の外部に排出することができる。よって、高温の熱、煙、及び引火性ガスが電子装置15の内部に充満してしまうことを回避することができ、電子装置15の正面の隙間等から炎が漏れてしまうことも回避することができる。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15によれば、電子装置15の内部において火災が発生していない通常状態の場合には、排気口25を開放し、電子装置15の内部において火災が発生した場合にのみ排気口25を閉鎖することによって、電子装置15の外部への延焼を防止することができる。また、電子装置15の内部において火災が発生した場合にのみ排気口25を閉鎖しているため、電子装置15の冷却性能の向上を図ることができる。
特に、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15では、排気口25には、扉部30が複数設けられ、かかる扉部30により、当該排気口25を分割的に閉鎖する構造となっている。
よって、電子装置15の内部の任意の箇所で火災が発生した場合に、当該火災発生箇所の真上に位置する扉部30に設けられた温度ヒューズ33が作動することによって、当該扉部30を閉鎖して炎が電子装置15の外部に出てしまうことを回避し、電子装置15の外部への延焼を防止することができる。また、排気口25を閉鎖した扉部30に隣接する扉部30も順に閉鎖することができるため、炎が電子装置15の外部に吹き出すことが確実に防止される。
一方、温度ヒューズ33が作動温度まで達していない扉部30は排気口25を閉鎖せず開放されたままになっており、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置15の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置15の自己消火機能の向上を図ることができる。
一般に、本発明の第1の実施の形態の電子装置15等の電子装置の内部に設けられる部品として、材料を持続的に燃焼させるために必要な酸素濃度(酸素指数)が高い難燃性の材料が用いられる。この酸素濃度は空気の温度が低下するに従って高くなる。従って、本発明の第1の実施の形態の電子装置15の冷却構造により、高い冷却性能をもって熱を放出させて電子装置15の内部の空気の温度を下げることにより、電子装置15の自己消火機能の向上を図ることができる。
ところで、排気口25の下部には、水平面と垂直な方向において扉部30の回動が停止されるよう、扉部回動停止部材としてストッパ32が設けられているが、図3に示す例では、ストッパ32は、電子装置15の背面側から見たときに、コの字を反時計回りに90度回転させた形状、即ち、電子装置15の側面(図3におけるY1、Y2側の面)近傍の2箇所において鉛直方向(Z1−Z2方向)に所定長さ形成され、電子装置15の幅方向(Y1−Y2方向)に折曲された形状を有する。
しかしながら、本発明はかかる態様に限定されず、ストッパの形状及び取り付け態様等に特に限定はなく、例えば、図15及び図16に示す構造であってもよい。ここで、図15及び図16は、図3に示す電子装置の変形例に係る電子装置100を下から見たときの背面斜視図(その1)及び(その2)である。なお、図15及び図16において、図3に示す箇所と同じ箇所には同じ番号を付し、その説明を省略する。
図15では、どの扉部30も排気口25を閉鎖していない状態、即ち、電子装置15の内部において火災が発生していない通常状態が示されている。
図15に示す例では、所定の大きさを有する開口部115が扉部30の配設数と同じ数(図15に示す例では8個)形成された扉部回動停止板110が、扉部30との当接により扉部30の回動を停止する扉部回動停止部材として、排気口25の全面に取り付けられている。
図16(a)には、全ての扉部30を扉部回動停止板110に当接させて、排気口25を閉鎖している状態が示され、図16(b)には、図16(a)において点線で囲んだ部分を拡大して示されている。図16(a)及び図16(b)において、一点鎖線は、扉部回動停止板110に当接した扉部30の外形を示している。
扉部回動停止板110には、8個の開口部115が形成されている。隣接する開口部115は、長さAの間隔をもって設けられている。一方、各扉部30を回動させるためには、隣接する扉部30間に僅かな隙間(本例では、長さBの隙間)を設ける必要がある。
本例では、隣接する開口部115の同士の間の長さAは、隣接する扉部30間の隙間の長さBよりも長く設定されている。更に、本例では、互いに隣接する扉部30で排気口25を閉鎖すると、扉部回動停止板110の互いに隣接する開口部115の間に、扉部30の外周の鉛直方向部分が位置する。
従って、互いに隣接する扉部30で排気口25を閉鎖すると、扉部回動停止板110において開口部115が形成されていない箇所に、隣接する扉部30間の隙間が位置し、当該隣接する扉部30間の隙間を、扉部回動停止板110において開口部115が形成されていない箇所で塞ぐことができる構造となっている。よって、火災の際に隣接する扉部30間の隙間から炎が漏れてしまうことも回避することができ、電子装置100の外部への延焼を確実に回避することができる。
また、上述の実施の形態では、複数(図2に示す例では3つ)の電子装置15が、キャビネット16中に重畳的に複数段(図2に示す例では3段)に並べて取り付けられ、各電子装置15において天板26が水平面に対して斜めに設けられ、各電子装置15の排気口25は、電子装置15の背面(図3のX2側の面)の上部に開口形成されている。
しかしながら、本発明はかかる態様に限定されない。本発明の電子装置は必ずしもキャビネット中に重畳的に複数段に並べて取り付けられる必要はなく、また、天板の配設方向に特に制約はない。更に、電子装置の排気口は必ずしも電子装置の背面に形成されていなくてもよく、電子装置の正面に形成されている態様であってもよい。
また、上述の実施の形態では、電子装置15は、プリント配線基板の主面が水平面と垂直な方向に位置した状態で、プラグインユニットが複数挿入されるシェルフSを備えている。
しかしながら、本発明はかかる態様に限定されない。例えば、プリント配線基板の主面が水平面と平行な方向に位置した状態で、プラグインユニットが複挿入される構造を有し、正面から吸気を行い、背面から排気を行う態様の電子装置に対しても本発明を適用することができる。
2.本発明の第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態に係る電子装置は、排気口における扉部の閉鎖構造及び機構が、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15と相違し、他の箇所については本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15と同様の構造を有する。
そのため、以下では、本発明の第2の実施の形態に係る電子装置の構造につき、排気口における扉部の閉鎖構造を主として説明し、次いで、当該電子装置の作用について説明する。また、図17乃至図32において、図3乃至図16で示した箇所と同じ箇所については同じ符号を付し、その説明を省略する。
[電子装置の構造]
図17は、本発明の第2の実施の形態に係る電子装置を下から見たときの背面斜視図である。
図17を参照するに、本発明の第2の実施の形態に係る電子装置215の正面(図17のX1側の面)に設けられているシェルフSには、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration circuit)等の電子部品をプリント配線基板に実装した前記プラグインユニットが、当該プリント配線基板の主面が地面と垂直な方向に位置した状態で、図17のX2方向に複数挿入される。
シェルフS内には、図2に示す態様と同様に、金属の仕切り板(図17では図示を省略する)が設けられており、シェルフS内のスロットの間を仕切っている。これにより、プラグインユニットの電子部品やプリント配線基板が火災等により燃焼した際に、隣接するプラグインユニットに炎が移ることが防止される。
かかる金属の仕切り板は、プラグインユニットのプリント配線基板の上端が位置する高さまで設けられているが、電子装置215の背面(図17のX2側の面)の上部に開口形成された排気口225が位置する箇所には設けられておらず、当該箇所では、隣接するスロットとの仕切りは設けられてない。
電子装置215の背面(図17のX2側の面)の上部に開口形成された排気口225は、その構造の詳細を後述する扉部230が回動することにより閉鎖される。図17に示す例では、扉部230は3枚(230A乃至230C)設けられている。
電子装置215の上端においては、図17において点線で示すように、天板26が水平面(X−Y面)に対して斜めに設けられている。これにより、電子装置215の上端は背面側(図17のX2側)が正面側(図17のX1側)より上方に位置し、かかる背面(図17のX2側の面)の上部に排気口225が開口形成されている。
また、前記電子部品等の発熱により電子装置215の内部の温度が上昇するため、当該内部の温度を所望の温度に保持すべく、図2に示すファン27と同様に、強制空冷式の冷却部としてファン(図17では図示を省略する)が、電子装置215の最下部に複数設けられている。即ち、本例の電子装置215においても、当該装置の最下部に吸気口が形成されている。
かかるファンにより、空気を外部から図17のZ1方向に強制的に取り込み(吸気)、電子装置215の内部において下から上へ向かって流通させて、発熱している電子部品等を冷却する。暖められた空気は、電子装置215の上端において斜めに設けられた天板26の内側面により方向を曲げられて、当該電子装置215の背面(図17のX2側の面)の上部に設けられた排気口225を介して、外部に排出(排気)される。なお、ファンは、シェルフSのスロット内で火災が発生しても停止しないように設定されている。
なお、電子装置215を、本発明の第1の実施の形態に係る電子装置15と同様に、重畳的に複数段に並べて取り付けることにより電子機器が形成される(図2参照)。
ここで、図18乃至図27も参照して、電子装置215の排気口225における扉部230の閉鎖構造について説明する。
まず、図18を参照する。図18は、図17に示す電子装置215の排気口225の構造を説明するための分解斜視図である。
図18に示すように、電子装置215の上部は、電子装置215の上端において斜めに設けられた天板26と、蝶番201を介して天板26に対して回動可能に設けられた扉部230A乃至230Cと、扉部230A乃至230Cに対応して3枚の開口部205A乃至205Cが形成され、排気口225の全面に取り付けられた扉部回動停止板210と、扉部230Bと扉部230A及び230Cとの間に設けられ一部が天板26に取り付けられた2枚の扉部間仕切り板220と、扉部間仕切り板220及び電子装置215の上部の内側面の近傍に設けられ一部が天板26に取り付けられた板バネ250と、各開口部205A乃至205C内の一対の板バネ250間に張架されたロープ255等から大略構成される。
ここで、扉部230A乃至230C等について、図19も参照して説明する。図19は、図17に示す電子装置215の排気口225を下方から見た斜視図である。
図19に示すように、電子装置215の排気口225には、3枚の扉部230A乃至230Cが設けられている。排気口225の略中央に位置する扉部230Bの面積は、その左右に位置する扉部230A及び230Cよりも大きく設定されている。
詳細は後述するが、電子装置215が通常状態にある場合は、扉部230A乃至230Cは、天板26の近傍に位置し、板バネ250と接触して当該板バネ250に支持されている。また、この状態において、各扉部230A乃至230Cの側端部はシェルフS内のスロットの間を仕切っている仕切り板24の真上に位置している。
扉部230A乃至230Cは、蝶番201を介して天板26に接続されており、扉部230A乃至230Cが天板26に対して自重により回動すると、排気口225は閉鎖される。詳細は後述するが、電子装置215の内部において火災が発生すると、扉部230A乃至230Cの少なくとも1つの扉部が閉鎖し、少なくとも1つの扉部は閉鎖しない構造となっている。そのため、排気口225の少なくとも一部は常に開いた状態となっている。
扉部230A乃至230Cが、自重により回動して扉部回動停止板210に当接すると、扉部230A乃至230Cの回動は停止される。そして、上述のファンにより、外部から図17のZ1方向に強制的に取り込まれ、電子装置215の内部において下から上へ向かって流通する空気の風圧により、扉部230A乃至230Cによる排気口225の閉鎖状態が維持される。
本例では、上述のように、扉部回動停止板210には、3枚の開口部205A乃至205Cが形成されている。
図20に、図19において点線で囲んだ部分を拡大して示す。
隣接する開口部205A及び205Bは、長さAの間隔をもって設けられている。一方、各扉部230A及び230Bが回動できるように、隣接する扉部230A及び230B間に僅かな隙間(本例では、長さBの隙間)を設けられている。
本例では、隣接する開口部205A及び205Bの同士の間の長さAは、隣接する扉部230A及び230B間の隙間の長さBよりも長く設定されている。更に、本例では、互いに隣接する扉部230A及び230Bで排気口225を閉鎖すると、扉部回動停止板210の互いに隣接する開口部215の間に、扉部230A及び230Bの外周の鉛直方向部分が位置する。かかる寸法関係は、隣接する開口部205B及び205Cにおいても同様である。
従って、互いに隣接する扉部230で排気口225を閉鎖すると、扉部回動停止板210において開口部215が形成されていない箇所に、隣接する扉部230間の隙間が位置し、当該隣接する扉部230間の隙間を、扉部回動停止板210において開口部215が形成されていない箇所で塞ぐことができる構造となっている。よって、火災の際に隣接する扉部230間の隙間から炎が漏れてしまうことも回避することができ、電子装置215の外部への延焼を確実に回避することができる。
図19を再度参照するに、扉部230Bと扉部230A及び230Cとの間には扉部間仕切り板220が設けられており、排気口225の領域が3つの領域、即ち、扉部230Aが設けられた領域、扉部230Bが設けられた領域、及び扉部250Cが設けられた領域に仕切られている。
図21に、天板26(図17参照)を取り除いた状態における電子装置215の上面図を示す。図21の紙面の上側が、電子装置215の背面側である。
図19及び図21に示すように、扉部間仕切り板220は、鉛直方向に主面が形成されてなる本体部220aと、本体部220aから所定角度折曲して延在形成された取付け部220bと、から構成されている。取付け部220bは、螺子等の締結部材により、天板26に取り付け固定されている。
図22に、図19に示す排気口225のうち、扉部230Bが設けられた領域を拡大して示す。
図21及び図22に示すように、電子装置215の背面側において排気口225は扉部間仕切り板220により仕切られているものの、電子装置215の正面側は、背面側と同様に仕切られてはいない。即ち、電子装置215の正面側には扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成されている。
従って、詳細は後述するが、電子装置215の内部において火災が発生すると、炎は、当該扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成された電子装置215の正面側に回り込むことが可能な構造となっている。
そして、図21に示すように、扉部間仕切り板220の本体部220aは、スロットの間を仕切っている仕切り板24の真上に位置している。また、当該本体部220aの、電子装置215の正面側の端部は、開口部205A乃至205C内の一対の板バネ250間に張架されたロープ255よりも、電子装置215の正面側に位置している。かかる構造の作用については、後述する。
次に、扉部間仕切り板220及び電子装置215の上部の内側面の近傍に設けられ一部が天板26に取り付けられた板バネ250と、各開口部205A乃至205C内の領域に設けられた一対の板バネ250間に張架されたロープ255の構造について説明する。
図23に、図22に示す扉部230Bが設けられた領域を下から見た斜視図を示す。なお、図23では、扉部230Bが設けられた領域が主として図示されているが、扉部230A及び230Cが設けられた領域でも同様の構造が形成されている。
図21及び図23に示すように、弾性部材である板バネ250は、鉛直方向に主面が形成されてなる本体部250aと、電子装置215の正面側において本体部250aから所定角度折曲して延在形成された天板用取付け部250bと、電子装置215の背面側において本体部250aから扉部230A乃至205Cの内側に約90度折曲して延在形成されたロープ用取付け部250cとから大略構成されている。
各開口部205A乃至205C内に設けられた一対の板バネ250の配設間隔は、各扉部230A及び230Cの幅よりも長く設定されている。上記一対の板バネ250の本体部250aは、ロープ255が取り付けられる前の状態において、例えば、扉部間仕切り板220の本体部220aに略接するように設けられている。
天板用取付け部250bは、螺子等の締結部材により、天板26に取り付け固定されている。但し、天板用取付け部250bを設けず、板バネ250の本体部250aの、電子装置215の正面側の端部を、扉部間仕切り板220の本体部220aに固定する態様であってもよい。
一対の板バネ250のロープ用取付け部250cには、ロープ255の両端部が取り付けられ、ロープ255は、扉部230A乃至230Cの幅方向に張設されている。
ロープ255は、所定の温度の熱で溶け得る糸状又は線状の細くて長い部材(例えば、ワイヤ等)である。ロープ255の長さは、一対の板バネ250のロープ用取付け部250cの間隔よりも短く、ロープ255の両端部が一対の取付け部250cに取り付けられると、板バネ250の本体部250a及びロープ用取付け部250cは、ロープ255により引っ張られ、扉部230A乃至230Cの内側に弾性的に曲げられる(弾性変形する)。
弾性的に曲げられた一対の板バネ250の本体部250aの、電子装置215の背面側の先端部分の間隔は、扉部230A乃至230Cの幅よりも短い。従って、板バネ250の本体部250aの、電子装置215の背面側の先端部分は、蝶番201を介して天板26に対して自重により回動しようとする扉部230A乃至230Cの直下に位置する。よって、当該先端部分により、扉部230A乃至230Cは支持され、これにより、扉部230A乃至230Cが開いた状態が保持される。
即ち、電子装置215が通常状態にある場合、扉部230A乃至230Cは、天板26と、板バネ250の本体部250aの電子装置215の背面側の先端部分との間に位置している。
電子装置215が通常状態にある場合には、電子装置215内に設けられた電子部品の発熱により電子装置215内の空気は暖められ、電子装置215の排気口225における空気の温度は例えば約80℃まで上昇する。また、ロープ255は、両端部が取り付けられた板バネ250の復元力によって常に引っ張られているため、当該引っ張りにより、ロープ255の変形が時間の経過と共に進行するクリープ現象が発生し得る。
そのため、熱や当該クリープに起因するロープ255の伸び量が、当該伸びにより板バネ250が扉部230A及び230Cの外側にずれて、板バネ250による扉部230A及び230Cの支持が解け、扉部230A及び230Cが閉鎖してしまう長さまで達しないように、板バネ250の弾性力、ロープ255の長さ及び材料等が設定される。
また、ロープ255の材料の選定にあっては、電子装置215が通常状態にあるときの排気口225における空気の温度(例えば、約80度)のときに熱により溶けて切断されないものの、排気口225における空気の温度が当該温度よりも高温の所定の温度になったときに熱で溶け得る材料であること等も考慮される。
一方、電子装置215の内部において火災が発生すると、扉部230A乃至230Cは、図24乃至図26に示すように回動する。ここで、図24乃至図26は、電子装置215の内部において火災が発生した場合の、扉部230A乃至230Cの回動動作を説明するための図(その1)乃至(その3)である。図24乃至図26においては説明の便宜に鑑み、扉部230Bの回動動作のみ示しているが、このことは、扉部230A及び230Cにおいても同様である。
炎によるロープ255の燃焼や溶融等によりロープ255が切断されること(図24参照)又はロープ255が熱により伸びることが契機となり、板バネ250が復元し、図24において矢印で示すように板バネ250が扉部230Bの外側にずれて板バネ250による扉部230Bの支持が解ける。そうすると、図25に示すように、扉部230Bは自重により蝶番201を介して回動する。
当該回動により、扉部230Bが扉部回動停止板210に当接すると、図26に示すように、扉部230Bの回動は停止される。
そして、上述のファンにより、外部から図17のZ1方向に強制的に取り込まれ、電子装置215の内部において下から上へ向かって流通する空気の風圧により、扉部230Bによる排気口225の閉鎖状態が維持される。
このような排気口225における扉部230の閉鎖構造を有する電子装置215の作用について、以下、説明する。
[電子装置の作用]
上述したように、電子装置215が通常状態にある場合は、板バネ250の本体部250aの、電子装置215の背面側の先端部分は、蝶番201を介して天板26に対して自重により回動しようとする扉部230A乃至230Cの直下に位置する(図21及び図23参照)。よって、当該先端部分により、扉部230A乃至230Cは支持され、これにより、扉部230A乃至230Cが開いた状態が保持される。
電子装置215の内部において火災が発生すると、当該火災の発生箇所に依り、以下の如く、扉部230A乃至230Cは動作する。
1.火災の発生箇所が電子装置215の中央付近の場合
図27は、電子装置215の中央付近で火災が発生した場合の、扉部230A乃至230Cの動作を説明するための図である。
電子装置215の内部であり、扉部230Bの下方の箇所であって、電子装置215の中央付近において火災が発生し(火災が発生した箇所を図27において×印で示す)、炎がロープの位置する高さまで到達すると、扉部230Bが位置する領域に張設されたロープ255は、炎による燃焼や溶融等により切断されること等が契機となり、板バネ250が復元し、扉部230Bは自重により蝶番201を介して回動し、排気口255において扉部230Bが位置する領域は閉鎖される。
一方、図21及び図22を参照して説明したように、電子装置215の背面側において排気口225は扉部間仕切り板220により仕切られているものの、電子装置215の正面側は、背面側と同様に仕切られてはいない。即ち、電子装置215の正面側には扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成されている(図21及び図22参照)。
従って、ファンにより、外部から図17のZ1方向に強制的に取り込まれ、電子装置215の内部において下から上へ向かって流通する空気の流れは、扉部間仕切り板220を回り込んで、扉部230Bが設けられている領域の左右の領域から排気する流れとなる。炎もかかる空気の流れに乗って、図27において黒色の矢印で示すように扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成された電子装置215の正面側(図27の紙面の下側)に回り込む。
しかしながら、図19に示すように、排気口225の略中央に位置する扉部230Bの面積は、その左右に位置する扉部230A及び230Cよりも大きく設定されている。
よって、炎は、扉部230Bの左右に位置する扉部230A及び230Cが位置する領域に張設されたロープ255まで届かず、当該ロープ255は切断されない。従って、排気口255において扉部230A及び扉部Cが位置する領域は閉鎖されない。
このように、火災の発生箇所が電子装置215の中央付近の場合、排気口225の略中央に位置する扉部230Bは閉鎖されるため、電子装置215の外部への延焼を防止することができる。
また、炎は電子装置215の正面側を回り込むが、扉部230A及び扉部230Cは閉鎖されないため、排気口255の一部が開口した状態に維持される。そして、当該開口している部分から、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置215の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置215の自己消火機能の向上を図ることができる。
2.火災の発生箇所が扉部間仕切り板220付近の場合
図28及び図29は、扉部230Bと扉部230Cとの間に位置する扉部間仕切り板220付近で火災が発生した場合の、扉部230A乃至230Cの動作を説明するための図(その1)及び(その2)である。
電子装置215の内部であり、扉部230Bの下方の箇所であって、扉部230Bと扉部230Cとの間に位置する扉部間仕切り板220付近において火災が発生し(火災が発生した箇所を図28及び図29において×印で示す)、炎がロープの位置する高さまで到達すると、扉部230Bが位置する領域に張設されたロープ255は、炎による燃焼や溶融等により切断されること等が契機となり、板バネ250が復元し、扉部230Bは自重により蝶番201を介して回動し、排気口255において扉部230Bが位置する領域は閉鎖される。
ファンにより、外部から図17のZ1方向に強制的に取り込まれ、電子装置215の内部において下から上へ向かって流通する空気の流れは、扉部間仕切り板220を回り込んで、扉部230Bが設けられている領域の左右の領域から排気する流れとなる。炎もかかる空気の流れに乗って、扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成された電子装置215の正面側(図27の紙面の下側)に回り込む。
従って、図28において黒色の矢印で示すように、炎は、火災が発生した箇所付近に位置する扉部間仕切り板220を介して隣接する領域(図28に示す例では、扉部230Cが設けられた領域)に回り込み、当該領域に張設されたロープ255にまで炎が達し、当該ロープ255は炎による燃焼や溶融等により切断され、その結果板バネ250が復元し、扉部230Cは自重により蝶番201を介して回動し、排気口255において扉部230Cが位置する領域は閉鎖される(図28参照)。
すると、閉鎖していない扉部は火災が発生した箇所から遠い側に位置する扉部230Aのみとなり、そこから排気される。炎は扉部230A側に向かうが、扉部230Aが位置する領域に張設されたロープ255にまで届かず、当該ロープ255は切断されない。従って、排気口255において扉部230Aが位置する領域は閉鎖されない(図29参照)。
このように、火災の発生箇所が扉部間仕切り板220付近の場合、排気口225の略中央に位置する扉部230Bと、当該火災の発生箇所に近い箇所に位置する扉部230Cは閉鎖されるため、電子装置215の外部への延焼を防止することができる。
また、炎は電子装置215の正面側を回り込むが、当該火災の発生箇所から遠い箇所に位置する扉部230Aは閉鎖されないため、排気口255の一部が開口した状態に維持される。そして、当該開口している部分から、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置215の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置215の自己消火機能の向上を図ることができる。
3.火災の発生箇所が扉部230A(230C)が設けられている領域の場合
電子装置215の内部であり、扉部230Bの左又は右側に設けられている扉部230A又は扉部230Cの下方の箇所において火災が発生し、炎が扉部230A(230C)が位置する領域に張設されたロープ255の位置する高さまで到達すると、当該ロープ255が、炎による燃焼や溶融等により切断されること等が契機となり、板バネ250が復元し、扉部230A(230C)は自重により蝶番201を介して回動し、排気口255において扉部230A(230C)が位置する領域は閉鎖される。
ファンにより、外部から図17のZ1方向に強制的に取り込まれ、電子装置215の内部において下から上へ向かって流通する空気の流れは、扉部間仕切り板220を回り込んで、扉部230Bが設けられている領域から排気する流れとなる。炎もかかる空気の流れに乗って、扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成された電子装置215の正面側に回り込む。
火災の発生箇所が、扉部230A(230C)と扉部230Bとの間に設けられた扉部間仕切り板220から離れており、扉部230Bが設けられた領域において張設されたロープ255にまで炎が達しない場合、当該ロープ255は切断されない。従って、排気口255において扉部230Bが位置する領域は閉鎖されない。即ち、この場合、扉部230A(230C)のみが開いた状態となる。
一方、火災の発生箇所が、扉部230A(230C)と扉部230Bとの間に設けられた扉部間仕切り板220に近く、扉部230Bが設けられた領域において張設されたロープ255にまで炎が達する場合、当該ロープ255は炎による燃焼や溶融等により切断され、その結果板バネ250が復元し、扉部230Bは自重により蝶番201を介して回動し、排気口255において扉部230Bが位置する領域は閉鎖される。
すると、閉鎖していない扉部は火災が発生した箇所から遠い側に位置する扉部230C(230A)のみとなり、そこから排気される。このとき、炎は扉部230C(230A)側に向かうが、扉部230C(230A)が位置する領域に張設されたロープ255にまで届かず、当該ロープ255は切断されない。従って、排気口255において扉部230C(230A)が位置する領域は閉鎖されない。
このように、火災の発生箇所が扉部230Bの左側(右側)に設けられている扉部230A(230C)の領域内の場合、少なくとも扉部230A(230C)は閉鎖されるため、電子装置215の外部への延焼を防止することができる。
また、炎は電子装置215の正面側を回り込むが、少なくとも火災が発生した箇所から遠い側に位置する扉部230C(230A)は閉鎖されないため、排気口255の一部が開口した状態に維持される。そして、当該開口している部分から、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置215の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置215の自己消火機能の向上を図ることができる。
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、ロープ255が、扉部230A乃至230Cが設けられた領域内において、扉部230A乃至230Cの幅よりも長く張設されているため、当該扉部230A乃至230Cが設けられた領域における如何なるスロットで火災が発生した場合にも、また、当該領域においてどのような温度分布が形成されても(特定の箇所だけが高温となっても)、炎による燃焼や溶融又は伸びにより当該ロープ255は切断され、その結果板バネ250が復元する。そうすると、扉部230A乃至230Cは自重により蝶番201を介して回動し、排気口255において扉部230A乃至230Cが位置する領域は閉鎖され、電子装置215の外部への延焼を防止することができる。
そして、電子装置215の正面側には扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成されているため、ファンにより、外部から強制的に取り込まれ、電子装置215の内部において下から上へ向かって流通する空気の流れは、扉部間仕切り板220を回り込む流れとなる。炎もかかる空気の流れに乗って、扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成された電子装置215の正面側に回り込む。
従って、一の扉部230A乃至230Cがされた後、炎が当該一の扉部230A乃至230Cの近傍を回り込んで隣接する他の扉部230A乃至230Cが設けられた電子装置215の背面側から電子装置215の外部に出火してしまうことを防止することができる。
また、炎は、扉部間仕切り板220が設けられていない領域が形成された電子装置215の正面側に回り込むため、電子装置215内における炎の長さが長くなる。よって、当該炎が電子装置215内で途切れ得るため、電子装置215の外部に出火してしまうことを防止することができる。
更に、仮に、炎が電子装置215内で途切れない場合であっても、排気口225の手前に位置し、前記他の扉部230A乃至230Cが設けられた領域に設けられたロープ255に炎が到達すると、炎による燃焼や溶融又は伸びにより当該ロープ255は切断され、その結果板バネ250が復元する。そうすると、前記他の扉部230A乃至230Cは自重により蝶番201を介して回動し、排気口255において前記他の扉部230A乃至230Cが位置する領域は閉鎖され、電子装置215の外部への延焼を防止することができる。
電子装置215内のどの箇所で火災が発生しても、扉部230A乃至230Cのうち、少なくとも1つの扉部は閉鎖せず、排気口225の一部は常に開いた状態となっている。従って、排気口225において開口している部分から、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置215の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置215の自己消火機能の向上を図ることができる。
即ち、本発明の第2の実施の形態によれば、電子装置215内で火災が発生した際に、3枚の扉部230A乃至230Cで、排気口225において閉鎖している箇所と開口している箇所とを形成することができる。排気口225を部分的に閉鎖することにより、電子装置215の外部への延焼を防止すると共に、開口している部分から、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置215の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置215の自己消火機能の向上を図ることができる。
ところで、上述の図17乃至図29に示す例においては、排気口225に3枚の扉部230A乃至230Cが設けられているが、本実施の形態はかかる例に限定されず、図30及び図31に示すように、1個の扉部が排気口に設けられている態様であってもよい。
ここで、図30及び図31は、図17に示す電子装置215の第1の変形例に係る電子装置の排気口の斜視図(その1)及び(その2)である。
図30に示すように、本変形例では、排気口325の幅全長よりも僅かに短い長さを有する扉部330が1枚設けられ、上述の扉部230A乃至230Cと同様に、蝶番201を介して天板26に自重により回動可能に設けられている。
また、排気口325には、扉部330よりも僅かに大きい開口部305を有する扉部回動停止板310が設けられており、図17乃至図29に示す例と同様に、扉部330が、自重により回動して扉部回動停止板310に当接すると、扉部330の回動は停止される。そして、電子装置315の下部に設けられたファンにより電子装置315の内部において下から上へ向かって流通する空気の風圧により、扉部330による排気口325の閉鎖状態が維持される。
電子装置315の上部の内側面の近傍には、一部が天板26に取り付けられた一対の板バネ250と、当該一対の板バネ250の間にはロープ255が張架されている。本変形例における一対の板バネ250は、図17乃至図29に示す例における一対の板バネ250と同様の配設間隔、天板26への取り付け構造、及び形状を有する。また、本変形例におけるロープ255も、図17乃至図29に示す例におけるロープ255と同様の態様で、板バネ250に取り付けられている。
本変形例では更に、扉部330に、例えば、約10mm乃至30mmの間隔で、直径約1mm乃至3mmの小さい開口穴350が多数開口形成されている。
電子装置215が通常状態にある場合、扉部330は、天板26と、板バネ250の本体部250aの電子装置215の背面側の先端部分との間に位置している。
一方、電子装置215の内部において火災が発生すると、ロープ255において当該火災の発生箇所に近い部分が、炎による燃焼や溶融等により切断されること又は当該ロープ255が熱により伸びることが契機となり、板バネ250が復元し、板バネ250が扉部330の外側にずれて板バネ250による扉部330の支持が解ける。そうすると、扉部330は自重により蝶番201を介して回動する。
当該回動により、扉部330が扉部回動停止板210に当接すると、図31に示すように、扉部230Bの回動は停止される。そして、上述のファンにより、外部から強制的に取り込まれ、電子装置315の内部において下から上へ向かって流通する空気の風圧により、扉部330による排気口325の閉鎖状態が維持される。
上述のように、本変形例では、排気口325の幅の略全長に亘って、ロープ255が張設され、扉部330が1個設けられている。従って、電子装置315のどの箇所において火災が発生しても、ロープ255において当該火災の発生箇所に近い部分が切断され、1枚の扉部330で排気口325全体を閉鎖する。従って、電子装置315の外部への延焼を防止することができる。
また、本変形例では、扉部330に、開口穴350が多数開口形成されている。従って、当該開口穴350を介して、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置315の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置315の自己消火機能の向上を図ることができる。
即ち、本変形例では、扉部330に多数形成された開口穴350が、図17乃至図29に示す例において、電子装置215内で火災が発生した際に、3枚の扉部230A乃至230Cのうち閉鎖せずに、排気口325を部分的に開口している扉部の役割を果たしている。
なお、炎は、閉鎖した扉部330を伝って拡がり、その一部が扉部330に形成された開口穴350を介して電子装置315の外部に出るものの、当該開口穴350は、小さい穴であるため、炎の飛び出し長さは短く、電子装置315の外部への延焼は防止される。
更に、本変形例では、扉部の枚数は1個であり、また、板バネ250も一対のみ設ければよく、部品点数の削減を図ることができ、よって、製造コストの低下をもたらすことができる。
ところで、図17乃至図29においては、一部が天板26に取り付けられた板バネ250(ロープ用取付け部250c)に、ロープ255の端部が取り付けられ、当該ロープ255は、扉部230A乃至230Cの幅方向に張設されている。しかしながら、本実施の形態はかかる例に限定されず、図32に示す態様であってもよい。ここで、図32は、図17に示す電子装置215の第2の変形例に係る電子装置415の排気口425の斜視図である。
図32を参照するに、本例では、板バネ250(例えば、図19参照)は設けられておらず、ロープ255は、扉部230Bと扉部230Aとの間及び扉部230Bと扉部230Cとの間に設けられた扉部間仕切り板220及び電子装置215の上部の内側面の上部に固定され、扉部間仕切り板220と電子装置215の上部の内側面との間に張架されている。
そして、電子装置415が通常状態にあるときには、扉部230A乃至230Cが自重により回動しないように、当該ロープ255で直接扉部230A乃至230Cを下方から支持している。
一方、電子装置215の内部において火災が発生すると、炎によるロープ255の燃焼や溶融等によりロープ255が切断されて、ロープ255による扉部230A乃至230Cの支持が解ける。そうすると、扉部230A乃至230Cは自重により蝶番201を介して回動する。当該回動により、扉部230A乃至230Cが扉部回動停止板210に当接すると、扉部230A乃至230Cの回動は停止される。そして、上述のファンにより、外部から強制的に取り込まれ、電子装置415の内部において下から上へ向かって流通する空気の風圧により、扉部230A乃至230Cによる排気口425の閉鎖状態が維持される。
かかる構造においても、図17乃至図29に示す例と同様に、電子装置415内で火災が発生した際に、3枚の扉部230A乃至230Cにより、排気口425において閉鎖している箇所と開口している箇所とを形成することができる。排気口425を部分的に閉鎖することにより、電子装置415の外部への延焼を防止すると共に、開口している部分から、燃焼により発生する引火性ガスや高温の熱や煙を電子装置415の外部に排出することができ、更なる燃焼を抑えることができる。よって、電子装置415の自己消火機能の向上を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
以上の説明に関し、更に以下の項を開示する。
(付記1)
空気を外部に排気するための排気口を有する電子装置であって、
所定の温度に達すると前記排気口を閉鎖する扉部を備え、
前記扉部の自重と当該電子装置に取り込まれ前記外部に排出される空気の風圧とに基づいて前記扉部が回動することにより、前記排気口は閉鎖されることを特徴とする電子装置。
(付記2)
付記1記載の電子装置であって、
前記扉部には、発熱感知部材が設けられ、
前記発熱感知部材が作動することにより、前記扉部は回動することを特徴とする電子装置。
(付記3)
付記1記載の電子装置であって、
前記排気口は、当該電子装置の上部に開口形成されており、
前記扉部は、当該電子装置の天板に回動自在に設けられていることを特徴とする電子装置。
(付記4)
付記2記載の電子装置であって、
前記扉部は、当該電子装置の天板に回動自在に設けられ
前記発熱感知部材は、前記扉部に取り付けられた第1の金属板と、前記天板に取り付けられた第2の金属板とを備え、
前記第1の金属板と前記第2の金属板とは、熱溶融材で接着されていることを特徴とする電子装置。
(付記5)
付記4記載の電子装置であって、
前記前記第1の金属板と前記第2の金属板とは、前記前記第1の金属板と前記第2の金属板との間に離間部が形成された状態で、前記熱溶融材で接着されていることを特徴とする電子装置。
(付記6)
付記1記載の電子装置であって、
前記扉部は、当該電子装置に取り込まれ前記外部に排出される前記空気の風圧×前記風圧が作用する前記扉部の面積÷重力加速度から算出される値よりも大きい値の自重を有することを特徴とする電子装置。
(付記7)
付記2記載の電子装置であって、
前記扉部は、複数設けられ、
各扉部に、前記発熱感知部材が設けられていることを特徴とする電子装置。(図3)
(付記8)
付記7記載の電子装置であって、
前記扉部回動停止部材は、複数の開口部が形成された扉部回動停止板であり、
隣接する前記開口部同士の間の長さは、隣接する前記扉部同士の間の隙間の長さよりも長く設定され、互いに隣接する前記扉により前記排気口が閉鎖されると、前記扉部回動停止板の互いに隣接する前記開口部の間に、前記扉部の外周部分が位置することを特徴とする電子装置。
(付記9)
空気を外部に排気するための排気口を有する電子装置の防火機構であって、
当該電子装置の内部の所定の箇所が所定の温度に達すると、発熱感知部材が作動して、扉部の天板への取り付けが解かれ、
前記扉部が、前記扉部の自重と当該電子装置に取り込まれ前記外部に排出される空気の風圧とに基づいて回動して、前記排気口を前記扉部により閉鎖することを特徴とする電子装置の防火機構。
(付記10)
付記9記載の電子装置の防火機構であって、
前記扉部の回動は、前記扉部の自重により開始され、
前記扉部の自重と当該電子装置に取り込まれ前記外部に排出される前記空気の風圧とにより、前記扉部の回動は継続され、
水平面と垂直な方向で前記扉部の回動は停止して、前記排気口を前記扉部により閉鎖することを特徴とする電子装置の防火機構。
(付記11)
付記9記載の電子装置の防火機構であって、
前記排気口を閉鎖する前記扉部は複数設けられ、各扉部に発熱温度感知部材が設けられ、
発熱源の真上に位置する扉部は、当該扉部に設けられた発熱感知部材の作動温度に達すると、前記発熱感知部材が作動に基づき回動して、前記排気口を閉鎖し、
他の箇所に設けられた扉部のうち、対応する発熱感知部材の作動温度に達していない箇所の扉部は、前記排気口を開口したままの状態でいることを特徴とする電子装置の防火機構。
(付記12)
空気を外部に排気するための排気口を有する電子装置であって、
回動すると前記排気口を閉鎖する扉部と、
前記扉部の幅の略全長に亘って張設され、前記扉部を前記排気口に対し開いた状態に保持する線状部材と、
前記線状部材が切断される又は所定長さ以上に伸長することにより、前記扉部は自重により回動して前記排気口を閉鎖することを特徴とする電子装置。
(付記13)
付記12記載の電子装置であって、
前記排気口には、弾性部材が設けられ、
前記弾性部材は、前記線状部材が取り付けられて弾性変形し、
弾性変形した前記弾性部材により前記扉部を支持して、前記扉部を前記排気口に対し開いた状態が保持され、
前記線状部材が切断される又は所定長さ以上に伸長することにより、前記弾性部材は復元し、前記扉部の支持が解け、前記扉部は自重により回動して前記排気口を閉鎖することを特徴とする電子装置。
(付記14)
付記13記載の電子装置であって、
前記弾性部材は、前記扉部の両端近傍に配設され、
前記弾性部材に取り付けられる前の状態の前記線状部材の長さは、前記弾性部材の配設間隔よりも短く、
前記線状部材は、前記弾性部材に取り付けられて、前記線状部材により引っ張られ前記扉部の内側に弾性変形することを特徴とする電子装置。
(付記15)
付記12記載の電子装置であって、
回動すると前記排気口を閉鎖する前記扉部は少なくとも3枚設けられ、
前記排気口の略中央の領域に位置する扉部の面積は、前記略中央の領域の隣の領域に位置する扉部の面積よりも大きいことを特徴とする電子装置。
(付記16)
付記15記載の電子装置であって、
隣接する前記扉部の間には、扉部間仕切り板が設けられ、
前記排気口は、前記扉部間仕切り板により仕切られており、
前記電子装置の、前記排気口が設けられている側と反対側には、前記扉部間仕切り板により仕切られていない箇所が形成されていることを特徴とする電子装置。
(付記17)
付記12記載の電子装置であって、
回動すると前記排気口を閉鎖する前記扉部は1枚設けられ
前記扉部には開口穴が形成されていることを特徴とする電子装置。
(付記18)
空気を外部に排気するための排気口を有する電子装置の防火機構であって、
前記電子装置は、
回動すると前記排気口を閉鎖する複数の扉部と、
前記扉部の各々に対応して張設され、前記扉部を前記排気口に対し開いた状態に保持する複数の線状部材と、を備え、
前記線状部材が切断される又は所定長さ以上に伸長すると、前記扉部は自重により回動して前記排気口を閉鎖し、
前記電子装置において火災が発生すると、前記複数の扉部のうち、少なくとも1つの扉部は前記排気口を閉鎖し、少なくとも1つの扉部は前記排気口の開口状態を保持する電子装置の防火機構。
(付記19)
付記18記載の電子装置の防火機構であって、
各扉部の間には、前記排気口から遠い側に開口を持つ扉部間仕切り板を備え、
前記電子装置において火災が発生し、1つの前記扉部が閉鎖すると、炎を前記排気口から遠い側に誘導することを特徴とする電子装置の防火機構。