JP4874124B2 - サッカロマイセス・セレビジエにおける組換え遺伝子の産生 - Google Patents
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Description
本発明は、一般に、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)における組換えDNA配列を産生および検出する方法、ならびに、本発明の方法を行うために用いられるプラスミドおよびエス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞に関する。
酵素や他のタンパク質などの物質の微生物的および酵素的な生産は、重要な経済的論題である。酵素は生体触媒として活性なタンパク質であり、天然の化合物および生体の代謝に責任を負うだけでなく、天然および非天然化合物の工業的な生産にも用いられている。酵素または酵素の助けにより生産されるこれらの化合物は、薬剤、化粧品、食品などの製造に用いることができる。しかしながら、酵素の工業的な使用は、それらの標的特異性とそれらが機能することができる特異的な条件のために大いに妨げられている。他のタンパク質は、ヒトおよび動物の健康の領域において治療上の効果を有する。医療上重要なタンパク質の重要なクラスに、サイトカイニンおよび成長因子がある。
望ましい酵素特性を得るために変異導入法のサイクルを繰り返し行うことができる。
DNAまたは遺伝子シャッフリングアプローチは、ある相同性を有する部位間のまたは同一の範囲間の組換え現象に基づいている。真核生物における遺伝子組換えを調べるための実験で用いられる重要な生物は、出芽酵母のサッカロマイセス・セレビジエである。単純な単細胞生物におけるこれらの過程の研究は、DNA配列の操作が容易であるという明白な利点と、細胞の大部分において同時に誘導される特異的な組換え現象を研究できる可能性を有する。さらに、先の数十年に渡って発酵技術およびこの生物の基礎的な遺伝子学における専門知識の財産が蓄積されてきた。そしてこれは、現在分子レベルで最も良く研究されている真核生物である。その非病原性の性質、その分泌の技量およびそのグリコシル化の潜在能力によって、エス・セレビジエは遺伝子クローニングおよび遺伝子発現のための好ましいホスト(宿主)生物である。それゆえ、本発明の基礎を成す技術的な問題は、サッカロマイセス・セレビジエにおける組換えモザイク遺伝子の産生のための方法および手段を提供することである。
サッカロマイセス・セレビジエにおける組換えDNA配列の産生および検出方法であって、
a)ゲノムの定められた遺伝子座に、少なくとも第一のおよび第二のマーカー配列に隣接する組換えられるべき第一のDNA配列を含む第一の組換えカセット、および、対立遺伝子座に、少なくとも第三のおよび第四のマーカー配列に隣接する組換えられるべき第二のDNA配列を含む第二の組換えカセットを有している第一の二倍体エス・セレビジエ細胞を産生する工程、
b)a)で得られた第一の二倍体細胞の胞子形成を誘導する工程、および、
c)そこにおいて第一の組換えDNA配列が少なくとも第一のおよび第四のマーカー配列に隣接する組換えカセットを含む一倍体細胞、および、そこにおいて第二の組換えDNA配列が少なくとも第二のおよび第三のマーカー配列に隣接する組換えカセットを含む一倍体細胞を単離する工程:
を含む、方法を提供することにより解決する。
そこにおいて第三の組換えDNA配列が少なくとも第一のおよび第二のマーカー配列に隣接する組換えカセットを含む一倍体細胞、および、そこにおいて第四の組換えDNA配列が少なくとも第三のおよび第四のマーカー配列に隣接する組換えカセットを含む一倍体細胞を単離する。
本発明の方法を用いて、組換え変異配列の多量のライブラリーを容易に作製することができ、望まれる機能を有する変異体は、その後適切な選択またはスクリーニングシステムを用いることによって特定される。
a)組換えられるべき第一のDNA配列を、第一のクローニング媒体上に隣接して位置する第一と第二のマーカー配列の間に挿入し、組換えられるべき第二のDNA配列を第二のクローニング媒体上に隣接して位置する第三と第四のマーカー配列の間に挿入し、それにより2つのマーカー配列それぞれが、エス・セレビジエ ゲノムの定められた遺伝子座と相同の標的配列に隣接し、
b)a)で得られたクローニング媒体から隣接する標的配列を有する第一の組換えカセットおよび第二の組換えカセットそれぞれを切り出し、それにより切り出した各断片がそれぞれの2つのマーカー配列および標的配列に隣接する組換えられるべきDNA配列を含み、
c)第一のカセットまたは第二のカセットに対してヘテロ接合性の二倍体細胞を得るために、b)で得られた断片を別々にエス・セレビジエ二倍体細胞に形質転換し、そこで、標的配列がそれらが相同である遺伝子座へのカセットの組み込みに作用し、
d)c)で得られたヘテロ接合性の二倍体細胞の胞子形成を別々に誘導し、および、
e)第一のおよび第二のマーカー配列に隣接する第一のカセットを含む一倍体細胞、および、第三のおよび第四のマーカー配列に隣接する第二のカセットを含む一倍体細胞を別々に単離する。
この2つのマーカー配列の間には、組換えられるべきDNA配列を挿入するために、複数の制限部位、特に制限酵素SmaI、XbaI、BglIIおよびPacIの認識部位が配置される。この2つのマーカー配列は、エス・セレビジエ ゲノムの染色体III上のBUD31−HCM1遺伝子座と相同の標的配列に隣接する。
本発明の好ましい実施形態では、組換えられるべき第一のおよび第二のDNA配列が、エス・セレビジエ以外の生物体由来のものである。
非翻訳配列の例としては特に限定されず、プロモーター配列、リボゾーム結合部位を含む配列、イントロン配列、ポリアデニル化配列などが挙げられる。このような非翻訳配列の組換えによって、細胞の環境において、結果として細胞の経過の調節を変化させる、例えば、遺伝子発現を変化させる変異配列を発展させることができる。
例えば、マーカーを追加すると、選択の厳密性を増進させることができる。
プラスミドpMXY9は、隣接するURA3マーカー遺伝子およびCAN1マーカー遺伝子を含む。上記2つのマーカー遺伝子の間に、組み込まれるべきDNA配列を挿入するための数個の制限部位を含むポリリンカー配列が配置される。上記2つのマーカーは、エス・セレビジエ ゲノムの染色体III上のBUD31−HCM1遺伝子座と相同の標的配列に隣接する。
2つのマーカー遺伝子の間のポリリンカー配列は、制限酵素SmaI、XbaI、BglIIおよびPacIの制限部位を含む。
プラスミドpMXY12は、TRP1マーカー遺伝子およびCYH2マーカー遺伝子を含む。この2つのマーカー遺伝子の間に、組み込まれるべきDNA配列を挿入するための数個の制限部位を含むポリリンカー配列が配置される。上記2つのマーカーは、エス・セレビジエ ゲノムの染色体III上のBUD31−HCM1遺伝子座と相同の標的配列に隣接する。ポリリンカー配列は、制限酵素SpeI、SmaIおよびPacIの制限部位を含む。
上は、個々の実験の平均±標準偏差(n)である。下は、これらのデータのグラフ表示である。
以下の菌株が用いられた:MXY60、MXY62、MXY64、MXY66、MXY99およびMXY102。
コントロールの反応は、フランキングマーカー配列の既知の配置を含む適当なゲノムDNAテンプレートについて親の(P)または組換え体(R)、DNAがないコントロール(−)のいずれについても行われた。
配列番号1および2はそれぞれ、MSH2の増幅に用いられるプライマーMSH2UPおよびMSH2DNの配列を示す。
配列番号3から配列番号6はそれぞれ、MSH2特異的分析プライマーであるプライマーMSH2A1、MSH2A2、MSH2A3およびMSH2A4の配列を示す。
配列番号7および配列番号8はそれぞれ、KanMX特異的分析プライマーであるプライマーK2KANMXおよびK3KANMXの配列を示す。
配列番号9および配列番号10はそれぞれ、LEU2の増幅に用いられるプライマーLEU2UPおよびLEU2DNの配列を示す。
配列番号13および配列番号14はそれぞれ、3´標的配列の増幅に用いられるプライマーKNS1およびKNS2の配列を示す。
配列番号15から配列番号17はそれぞれ、5´標的配列の増幅に用いられるプライマーKNS3、KNS4およびKNS6の配列を示す。
配列番号18および配列番号19はそれぞれ、Oxa7の増幅に用いられるプライマーKNS7およびKNS8の配列を示す。
配列番号20および配列番号21はそれぞれ、Oxa11の増幅に用いられるプライマーKNS9およびKNS10の配列を示す。
配列番号22は、BUD31下流分析プライマーであるプライマーKNS12の配列を示す。
配列番号24は、TRP1特異的分析プライマーであるプライマーKNS14の配列を示す。
配列番号25は、URA3特異的分析プライマーであるプライマーKNS15の配列を示す。
配列番号26および配列番号27は、それぞれCYH2の増幅に用いられるプライマーKNS17およびKNS18の配列を示す。
配列番号29は、シークエンシングプライマーとして用いられるCAN1特異的リバース(逆方向)プライマーであるプライマーKNS31の配列を示す。
配列番号30は、シークエンシングプライマーとして用いられるCYH2特異的リバースプライマーであるプライマーKNS33の配列を示す。
配列番号31および配列番号32はそれぞれ、Oxa5の増幅に用いられるプライマーKNS36およびKNS37の配列を示す。
配列番号33は、シークエンシングプライマーとして用いられるURA3特異的フォワードプライマーであるプライマーKNS38の配列を示す。
1. 材料および方法
1.1 培地
標準的なリッチ培地YPD(Bio101社)を通常の生育のために用い、合成のドロップアウト培地(Bio101社)を遺伝子マーカーのチェックおよび組換え体の選択のために用いた。胞子形成のため、細胞をSPS(50mMリン酸カリウム、pH5.0、0.5%酵母抽出物(Difco社)、1%バクトペプトン(Difco社)、0.17%酵母窒素塩基、1%酢酸カリウム、0.5%硫酸アンモニウム)に必要な栄養成分を添加した中で終夜前培養し、洗浄し、1%酢酸カリウムに栄養成分を添加した中に再懸濁し、2日間振とうしながらインキュベートした。全ての操作を30℃で行った。四分子分析のため、子嚢をエスカルゴ(Helix pomatia)B−グリコシダーゼ(Sigma社)を用いて消化し、TDM400マイクロマニュピュレーター(微調整装置)(Micro Video Instruments社)を備えたNikon Eclipse E400 microscopeを用いて詳しく調べた。
本研究において用いられたまたは作製された全ての酵母の菌株を、表1および表2に一覧にした。全ての酵母菌株は、速やかに胞子を形成するW303から出た同質遺伝子的な誘導体である。組換えカセットを用いる形質転換のホストとして役立つ二倍体MXY47が、以下のように形質転換および遺伝子の交叉により作製された。一倍体D184−1B(S. Gangloff、CEA、フランス、の寄贈品)は、配列リストに載っているLEU2断片(プライマー対LEU2UP/LEU2DNを用いたW303菌株U474の予備的なPCRにより得られた)を用いて形質転換され、Leu+一倍体MXY13が生じた。一倍体D184−1C(S. Gangtoffの寄贈品)は、HIS3断片(プライマー対HIS3UP/HIS3DNを用いたORD4369−25Dの予備的なPCRにより得られた)を用いて形質転換され、His+一倍体MXY25が生じた。一倍体MXY18およびMXY22は、それぞれD184−1BおよびD184−1Cの劣性シクロヘキサミド耐性(cyh2R)誘導体で、10μg/mlシクロヘキサミド上で選択された;シクロヘキサミド耐性を与えるCYH2遺伝子座への変異地図の存在は、配列決定(2つの異なるヌクレオチドの変化が、グルタミン38をリジンに変化させる)および分離解析によって確認された。二倍体MXY29を得るためにMXY18およびMXY25を交雑させた;二倍体MXY33を得るためにMXY13およびMXY22を交雑させた。MXY38を得るために一倍体分離個体MXY29−6DおよびMXY33−8Cを交雑させた。MXY38はleu2−3、112およびhis3−11、15マーカーに対してヘテロ接合性であり、cyh2R変異に対してホモ接合性である。MXY38は、RBT348(R. Borts, University of Leicesterの寄贈品)からプライマーMSH2UPおよびMSH2DNを用いたPCRにより増幅したmsh2::KanMXカセットを用いて形質転換され、MXY47を生じた。形質転換体は200μg/mlG418(Invitrogen社)上で選択され、マーカーの分離を確かめるために、プライマーMSH2A1、MSH2A2、MSH2A3およびMSH2A4を用いるコロニーPCR(下記を参照)および四分子分析、すなわち4つの胞子の分析により確認された。
クローニングのホストとして、バクテリア菌株XL1−Blue MRF´(ΔmcrA)183(mcrCB−hsdSMR−mrr)173 endA1 supE44 thi−1 recA1 gyrA96 relA1 lac [F´ proAB laclqZΔM15 Tn10 (Tet´)])およびJM110(rpsL [Str´] thr leu thi−1 lacY galk galT ara tonA tsx dam dcm supE44 Δ[lac−proAB][F´ traD36 proAB laclqZΔM15])が用いられた。プラスミドの作製には、標準的な方法を用いた(Ausubelら)。この実験で用いられたまたは作製されたすべてのプラスミドを、表3に一覧にして示す。クローニングに用いられた制限酵素、T4 DNAリガーゼおよびその他の酵素は、New England BioLabs社から購入した。DNA断片およびプラスミドは、Qiagen社およびMacherey−Nagel社により供給されたキットを用いて精製した。
組換えの第一ラウンドのために、組換えカセットを有するプラスミドをNot1で消化し、すべての消化生成物をMXY47の形質転換に用いた。ウラシル(pMXY9誘導体用)またはトリプトファン(pMXY12誘導体用)原栄養株が選択され、コンストラクトの導入によるBUD31−HCM遺伝子座の2つの染色体の複製物のうちの1つのターゲティングが、無傷のまたは破壊されたBUD31−HCM1遺伝子座からの断片を増幅させるプライマー、URA3−CAN1誘導体に対してプライマーKNS12/KNS13/KNS15を、TRP1−CYH2誘導体に対してプライマーKNS12/KNS13/KNS14を用いたコロニーPCRにより確認された。形質転換されたヘテロ接合体は胞子を形成し、組換えカセットを有する野生型またはmsh2一倍体を同定するために四分子分析を行った。反対の交配型(opposite mating type)の適切な一倍体をYPDプレート上に撒き、終夜生育させ、同じYPDプレート上で混合し、そして終夜交配させた。交配プレートは、二倍体を選択するためにUra−Trp培地に対してレプリカプレートとし、後日補助栄養素を添加したSPSに多量に接種され、終夜培養された。前培養を遠心沈殿し、洗浄し、そして細胞を1%酢酸カリウムに補助栄養素を添加した中に再懸濁し、2日間インキュベートした。
多くの場合、このような偽陽性は、分析PCRにより示唆されるように変異によるCANまたはCYH2マーカーの不活性化により生じる。
予備的なまたは分析PCRのためのテンプレートとして用いられるゲノムのDNAは、Ausubelらの標準的なミニプレップ手順に従って、終夜のYPD培養物から調製された。クローニングまたは配列決定で用いられる断片の予備的なPCRが、テンプレートとしてOxaプラスミドDNA(約50pg)または酵母ゲノムのDNA(約0.5μg)を用いて、2.5UのHerculase polymerase (Stratagene社)、1x Herculase 反応バッファー、0.2mMの各dNTPおよび100ngの各プライマーを含む50μlの反応液中で行われた。増幅は、以下のように行われた:94℃ 2分;94℃ 10秒、55℃ 30秒、72℃ 30秒を30サイクル;68℃ 10分。組換えカセットがBUD31遺伝子座に組み込まれたことを確認するために、変更したコロニーPCRを以下の増幅条件で行った(http://www.fhcrc.org/labs/hahn/methods/mol bio meth/pcr yeast colony. html)。:Oxaの挿入断片を特徴づけるための分析PCRは、候補組換え体およびコントロール菌株から調製された約0.5μgのゲノムのDNA、1.5UのTaqポリメラーゼ(Roche社)、1x反応バッファー、0.2mMの各dNTPおよび100ngの各プライマーを含む100μlの反応体積で、伸長反応を68℃で2分行う以外はコロニーPCRと同じ増幅条件で行った。
すべての増幅反応は、Mastercycler gradient 5331(Eppendorf社)を用いて行った。
2.1 酵母減数分裂の相同的組換え(homeologous recombination)システムの開発
インビボでの異なるDNA配列間の組換えを促進するために酵母サッカロマイセス・セレビジエを利用する戦略を開発した。この戦略の重要な特性は、ゲノムワイドな組換えが高レベルで起こっており、通常は異なる配列間の組換えを制限するミスマッチ修復(MMR)システムが不活化している減数分裂の細胞の使用を含むことである。
ベータラクタマーゼのOxaスーパーファミリーに属する遺伝子が、組換え体の選択のためのシステムの可能性をテストするための基質として選択された。以下のOxa対間の組換えが、野生型およびmsh2の出のものにおいて評価された:Oxa11−Oxa11、これらは800bp ORF(翻訳領域)の初めから終わりまで100%の相同性を共有する;Oxa7−Oxa11、95%;Oxa5−0xa11、78%。適当な一倍体間の交雑によって生成した二倍体が、減数分裂に入るように誘導された。減数分裂の培地から胞子が調製され、続く希釈物が、細胞の生育能力を測定するためにYPD上に植えられ、組換え体を選択するために、ウラシル欠乏カナバニン含有(−Ura+Can)倍地上およびトリプトファン欠乏シクロヘキサミド含有(−Trp+Cyh)培地上に植えられた。
図3に示されるデータは、野生型の出のものにおいて配列の異種性が増加すると、交叉組換えへの強い阻害効果があることを証明しており、そしてこの効果はmsh2変異によって軽減されるが、止めることはできない。一般に、msh2変異は、試験された相違の2つのレベルにおいて野生型菌株で観察されるより組換えの頻度を約1桁増加させる。しかしながら、MSH2のみの不活性化は、より異種性の度合いが高い組換え基質間の組換えの阻害を完全に補うことはできない。例えば、78%の相同性を共有するOxa挿入断片を有するmsh2菌株(MXY102)についての組換え頻度は、100%の相同性のOxa挿入断片を有する野生型菌株(MXY60)について観察されたより、少なくとも10倍(Ura+CanR)および25倍(Trp+CyhR)低い。このことは、MSH2依存性ミスマッチ修復以外の要因が、より相違する配列間の交叉組換えを妨げることを示唆する。78%の相違レベルでmsh2組換え体の出現が、おおよそ2×10−4の頻度であったことは注目すべきであり、より相違が多い基質間でも組換えが達成されたことを示す。
相同的組換えおよび相同的組換え(homeologous recombination)におけるmsh2の効果は、まず、各実験の特定の選択の特定の相同性割合について野生型組換え体に対するmsh2組換え体の比率を計算し、そしてその後、このように決定された比率全体の平均および標準偏差を計算して定量化した。データを図4に示す。msh2変異の存在は、相同性95%および78%の相同的組換えの頻度を増加させ、あまり有利な判断は下せないが、依然として100%同一の配列間の組換えの定量可能な増加がある。さらに、相同的組換えのmsh2増加の程度は2つの選択物において異なっている:配列が少し異なる相同配列のOxa挿入断片を有する菌株に関しては、MSH2の不活性化は、Trp+CyhR組換え体の発生頻度を、Ura+CanR組換え体の発生頻度を増加させるより大いに増加させる。原則として、両方の組換え体の型(Ura+CanRおよびTrp+CyhR)の発生頻度は等しいはずであるが、これらの数は、配列の相違の程度における差異と関連して、msh変異によって誘発されるまたは高められるシステムに偏りがあることを示唆している。得られた組換え体の型における、挿入断片およびフランキングマーカー配列の相対的な影響を調べるための実験は、この偏りはフランキングマーカーの特性であることを示すが、減数分裂の組換え現象の結果に作用する組換え基質の影響は、まだ説明できない(データは示さず)。
22%相違のOxa遺伝子を含む野生型およびmsh2二倍体(それぞれMXY99およびMXY102)から生じたUra+CanRおよびTrp+CyhR胞子コロニーに適用された、PCR分析の例を図5に示した。各菌株について、各組換え体の表現型を発現した10のコロニーを分析した。
各コロニーからの抽出物が、親分子を特異的に増幅させるプライマー対および組換え分子を特異的に増幅させるプライマー対を用いる増幅のためのテンプレートとして用いられた。
野生型およびmsh2二倍体(それぞれMXY64およびMXY66)から生じたOxa7−0xa1減数分裂の組換え体、これらは95%の相同性を共有する組換え基質を含むが、これらの組換え体のうち表現型および分子(PCR)試験を満たすものが配列分析にかけられた。
配列の多様性を増やす反復方式の酵母のシステムの能力を、減数分裂の第一ラウンドで生成したOxa7−Oxa11組換え一倍体から二倍体を作製することによってテストし、そしてこれらの新たな二倍体を減数分裂の第二ラウンドにかけた。
Claims (44)
- サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)における組換えDNA配列の産生および検出方法であって、
a)ゲノムの定められた遺伝子座に、第一のおよび第二のマーカー配列の間に位置する組換えられるべき第一のDNA配列を含む第一の組換えカセットを有し、かつ、該ゲノムの定められた遺伝子座の対立遺伝子座に、第三のおよび第四のマーカー配列の間に位置する組換えられるべき第二のDNA配列を含む第二の組換えカセットを有している第一の二倍体エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞を産生する工程、
b)a)で得られた第一の二倍体細胞の胞子形成を誘導する工程、および、
c)該組換えられるべき第一のDNA配列と該組換えられるべき第二のDNA配列との間の交叉によって形成される第一の組換えDNA配列が第一のおよび第四のマーカー配列の間に位置する組換えカセットを含む一倍体細胞、および、該組換えられるべき第一のDNA配列と該組換えられるべき第二のDNA配列の間の交叉によって形成される第二の組換えDNA配列が第二のおよび第三のマーカー配列の間に位置する組換えカセットを含む一倍体細胞を単離する工程:
を含む、方法。 - さらに、
a)請求項1のc)で得られた第一の組換えDNA配列を含む一倍体細胞と請求項1のc)で得られた第二の組換えDNA配列を含む一倍体細胞とを交配することにより第二の二倍体細胞を産生する工程、
b)a)で得られた第二の二倍体細胞の胞子形成を誘導する工程、および、
c)請求項1のc)で得られた第一の組換えDNA配列と請求項1のc)で得られた第二の組換えDNA配列との間の交叉によって形成される第三の組換えDNA配列が第一のおよび第二のマーカー配列の間に位置する組換えカセットを含む一倍体細胞、および、請求項1のc)で得られた第一の組換えDNA配列と請求項1のc)で得られた第二の組換えDNA配列との間の交叉によって形成される第四の組換えDNA配列が第三のおよび第四のマーカー配列の間に位置する第四の組換えカセットを含む一倍体細胞を単離する工程:
を含む請求項1に記載の方法。 - 請求項2のc)で得られた一倍体細胞を、少なくとも一度他の一倍体細胞と共に別の交配サイクルを行い、得られた二倍体細胞の胞子形成を誘導し、組換えDNA配列を有する一倍体細胞を、2つのマーカー配列間の分子連鎖に基づき単離することにより、さらに組換えDNA配列を産生する請求項1又は2に記載の方法。
- 前記第一の二倍体細胞が同時にまたは経時に第一の組換えカセットを含むDNA分子および第二の組換えカセットを含むDNA分子を用いて二倍体エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞を形質転換することにより産生されたものであり、この2つの組換えカセットがエス・セレビジエ(S. cerevisiae)ゲノムの対立遺伝子座に組み込まれてもよい、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第一のまたは第二の組換えカセットを含むDNA分子が酵母人工染色体(YAC)である請求項4に記載の方法。
- 第一のまたは第二の組換えカセットを含むDNA分子がクローニング媒体であり、そこで2つのマーカー配列それぞれが、組換えられるべき第一のまたは第二のDNA配列に隣接する側とは反対側において、エス・セレビジエ(S. cerevisiae)ゲノムの定められた遺伝子座と相同の標的配列に隣接する請求項4に記載の方法。
- 前記第一の二倍体細胞がゲノムの定められた遺伝子座に第一の組換えカセットを有している一倍体エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞と、該ゲノムの定められた遺伝子座の対立遺伝子座に第二の組換えカセットを有している一倍体エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞とを融合することにより産生されたものである請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第一の二倍体細胞がゲノムの定められた遺伝子座に第一の組換えカセットを有している一倍体エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞と、該ゲノムの定められた遺伝子座の対立遺伝子座に第二の組換えカセットを有している一倍体エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞とを交配することにより産生されたものである請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
- 第一のまたは第二の組換えカセットを有している一倍体細胞が:
a)組換えられるべき第一のDNA配列を、第一のクローニング媒体上において隣接して位置する第一と第二のマーカー配列の間に挿入し、組換えられるべき第二のDNA配列を第二のクローニング媒体上において隣接して位置する第三と第四のマーカー配列の間に挿入し、それにより2つのマーカー配列それぞれが、組換えられるべき第一のまたは第二のDNA配列に隣接する側とは反対側において、エス・セレビジエ(S. cerevisiae)ゲノムの定められた遺伝子座と相同の標的配列に隣接し、
b)a)で得られたクローニング媒体から第一の組換えカセットおよび第二の組換えカセットそれぞれを有している断片を切り出し、それにより各カセットがそれぞれの2つのマーカー配列の間に位置する組換えられるべきDNA配列を含み、そして各カセットが標的配列に隣接し、
c)第一のカセットまたは第二のカセットに対してヘテロ接合性の二倍体細胞を得るために、b)で得られた組換えカセットとフランキング標的配列とを有している断片を別々にエス・セレビジエ(S. cerevisiae)二倍体細胞に形質転換し、それにより該標的配列がカセットのその配列が相同である遺伝子座への組み込みに作用し、
d)c)で得られたヘテロ接合性の二倍体細胞の胞子形成を別々に誘導し、および、
e)第一のカセットを含み、第一のおよび第二のマーカー配列を発現する一倍体細胞、および、第二のカセットを含み、第三のおよび第四のマーカー配列を発現する一倍体細胞を別々に単離する
ことにより産生されるものである請求項7または8に記載の方法。 - 前記第一のクローニング媒体がプラスミドpMXY9(DSM 17010)であり、第二のクローニング媒体がプラスミドpMXY12(DSM 17011)である請求項9に記載の方法。
- 形質転換に用いられる前記二倍体エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞が少なくとも二つの栄養因子に対して栄養要求性である請求項4から6、9または10のいずれか一項に記載の方法。
- 前記二倍体細胞がura3−1対立遺伝子およびtrp1−1対立遺伝子に対してホモ接合性であり、該遺伝子が該細胞をウラシルおよびトリプトファンそれぞれに対して栄養要求性にする請求項11に記載の方法。
- 形質転換に用いられる前記二倍体細胞が少なくとも2つの抗生物質に対して耐性である請求項4から6または9から12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記二倍体細胞がcan1−100対立遺伝子およびcyh2R対立遺伝子に対してホモ接合性であり、該遺伝子が該細胞をカナバニンおよびシクロヘキサミドそれぞれに対して耐性にする請求項13に記載の方法。
- 対立遺伝子ura3−1、trp1−1、can1−100およびcyh2Rに対してホモ接合性であり、msh2::KanMX変異に対してヘテロ接合性であるエス・セレビジエ(S. cerevisiae)菌株MXY47(DSM 17026)の二倍体細胞が形質転換に用いられる請求項4から6または9から14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞が機能的ミスマッチ修復システムを有するものである請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞が一過的にまたは持続的にミスマッチ修復システムを欠損しているものである請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記一過的または持続的なミスマッチシステムの欠損が、ミスマッチ修復システムに関わる1または2以上の遺伝子の変異および/または誘導的な発現または抑圧、ミスマッチ修復システムを飽和させる薬剤を用いた処理および/または包括的にミスマッチ修復を損なわせる薬剤を用いた処理によるものである請求項17に記載の方法。
- 前記第一のおよび第二の組換えカセットがエス・セレビジエ(S. cerevisiae)ゲノムの染色体III上のBUD31−HCM1遺伝子座に組み込まれている請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組換えられるべき第一のおよび第二のDNA配列が少なくとも1個のヌクレオチドで異なるものである請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組換えられるべき第一のおよび第二のDNA配列が、エス・セレビジエ(S. cerevisiae)以外の生物体およびエス・セレビジエ(S. cerevisiae)を含む生物体由来のものである請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
- 前記組換えられるべき第一のおよび第二のDNA配列が、1または2以上の非翻訳配列および/または1または2以上のタンパク質をコードしている配列を含む請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
- 前記マーカー配列が、栄養マーカー、色素マーカー、抗生物質耐性マーカー、抗生物質感受性マーカー、プライマー認識部位、イントロン/エクソン境界、酵素の特定のサブユニットをコードしている配列、プロモーター配列、下流調節遺伝子配列および制限酵素部位からなる群より選択されるものである請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第一のおよび第三のマーカー配列が栄養マーカーであり、その遺伝子産物がエス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞の栄養要求性を補うことができる請求項23に記載の方法。
- 前記第一のマーカー配列がURA3であり、その遺伝子産物がウラシル栄養要求性エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞にウラシル原栄養性を付与することができる請求項24に記載の方法。
- 前記第三のマーカー配列がTRP1であり、その遺伝子産物がトリプトファン栄養要求性エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞にトリプトファン原栄養性を付与することができる請求項24に記載の方法。
- 前記第二のおよび第四のマーカー配列が抗生物質感受性マーカーであり、その遺伝子産物がその抗生物質に耐性のエス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞に抗生物質への感受性を付与することができる請求項23に記載の方法。
- 前記第二のマーカー配列がCAN1であり、その遺伝子産物がカナバニン耐性エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞にカナバニン感受性を付与することができる請求項27に記載の方法。
- 前記第四のマーカー配列がCYH2であり、その遺伝子産物がシクロヘキサミド耐性エス・セレビジエ(S. cerevisiae)細胞にシクロヘキサミド感受性を付与することができる請求項27に記載の方法。
- 第一の、第二の、第三のまたは第四の組換えDNA配列のいずれかを有する組換えカセットを含む一倍体細胞が、各マーカーの組合せの存在を検出するためにPCR法により確認される請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
- 第一の、第二の、第三のまたは第四の組換えDNA配列のいずれかを有する組換えカセットを含む一倍体細胞が、それぞれのマーカー配列の組合せと同じDNA分子上の分子連鎖を選択する培地上に植えられることにより確認される請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
- 第一の組換えDNA配列を含む一倍体細胞が、第一のおよび第四のマーカー配列と同じDNA分子上の分子連鎖を選択する培地上に植えられる請求項31に記載の方法。
- 第二の組換えDNA配列を含む一倍体細胞が、第二のおよび第三のマーカー配列と同じDNA分子上の分子連鎖を選択する培地上に植えられる請求項31に記載の方法。
- 第三の組換えDNA配列を含む一倍体細胞が、第一のおよび第二のマーカー配列と同じDNA分子上の分子連鎖を選択する培地上に植えられる請求項31に記載の方法。
- 第四の組換えDNA配列を含む一倍体細胞が、第三のおよび第四のマーカー配列と同じDNA分子上の分子連鎖を選択する培地上に植えられる請求項31に記載の方法。
- 隣接するURA3マーカー遺伝子およびCAN1マーカー遺伝子を含み、組換えられるべきDNA配列を挿入するためのポリリンカー配列が該2つのマーカー遺伝子配列の間に位置し、該2つのマーカー遺伝子配列が、該ポリリンカー配列に隣接する側とは反対側において、エス・セレビジエ(S. cerevisiae)ゲノムの染色体III上のBUD31−HCM1遺伝子座と相同の標的配列に隣接するプラスミドpMXY9(DSM 17010)。
- 前記ポリリンカー配列が制限酵素SmaI、XbaI、PacIおよびBglIIの制限部位を含む請求項36に記載のプラスミドpMXY9(DSM 17010)。
- 隣接するTRP1マーカー遺伝子およびCYH2マーカー遺伝子を含み、組換えられるべきDNA配列を挿入するためのポリリンカー配列が該2つのマーカー遺伝子配列の間に位置し、該2つのマーカー遺伝子配列が、該ポリリンカー配列に隣接する側とは反対側において、エス・セレビジエ(S. cerevisiae)ゲノムの染色体III上のBUD31−HCM1遺伝子座と相同の標的配列に隣接するプラスミドpMXY12(DSM 17011)。
- 前記ポリリンカー配列が制限酵素SmaI、SpeIおよびPacIの制限部位を含む請求項38に記載のプラスミドpMXY12(DSM 17011)。
- エス・セレビジエ(S. cerevisiae)菌株MXY47(DSM 17026)であって、その二倍体細胞が対立遺伝子ura3−1、trp1−1、can1−100およびcyh2Rに対してホモ接合性であり、msh2::KanMX変異に対してヘテロ接合性であることを特徴とするエス・セレビジエ(S. cerevisiae)菌株MXY47(DSM 17026)。
- プラスミドpMXY9(DSM 17010)を含むイー・コリ(E.coli)菌株JM101。
- プラスミドpMXY12(DSM 17011)を含むイー・コリ(E.coli)菌株DH5α。
- 少なくとも、エス・セレビジエ(S. cerevisiae)菌株MXY47(DSM 17026)の細胞を含む第一のコンテナ、プラスミドpMXY9(DSM 17010)を含むイー・コリ(E.coli)菌株JM101の細胞を含む第二のコンテナおよびプラスミドpMXY12(DSM 17011)を含むイー・コリ(E.coli)菌株DH5αを含む第三のコンテナを含むキット。
- 少なくとも、エス・セレビジエ(S. cerevisiae)菌株MXY47(DSM 17026)の細胞を含む第一のコンテナ、プラスミドpMXY9(DSM 17010)のDNAを含む第二のコンテナおよびプラスミドpMXY12(DSM 17011)のDNAを含む第三のコンテナを含むキット。
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