図1は反応容器の一実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面に計量流路15、注入流路17、反応室エアー抜き流路19,21、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31及びベローズ53の断面を加えた概略的な断面図、(C)はシリンジ51及びベローズ53近傍を拡大して示す概略的な断面図である。図2はこの実施例を分解して示す断面図及び切替えバルブの概略的な分解斜視図である。図3はこの実施例の1つの反応室近傍を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は斜視図、(C)は断面図である。図4はサンプル容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のB−B位置での断面図である。図5は試薬容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のC−C位置での断面図である。図6はエアー吸引用容器を拡大して示した図であり(A)は平面図、(B)は(A)のD−D位置での断面図である。
図1から図6を参照して反応容器の一実施例について説明する。
反応容器1は反応プレート3の一表面に開口部をもつ複数の反応室5を備えている。この実施例では6×6個の反応室5が千鳥状に配列されている。反応室5内に試薬7及びワックス9が収容されている。
反応室5を含む反応プレート3の材質は特に限定されるものではないが、反応容器1を使い捨て可能として用いる場合には、安価に入手可能な素材があることが好ましい。そのような素材として、例えばポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材が好ましい。反応室5内の物質の検出を吸光度、蛍光、化学発光又は生物発光などにより行なう場合には、底面側から光学的な検出ができるようにするために光透過性の樹脂で形成されていることが好ましい。特に蛍光検出を行なう場合には、反応プレート3の材質として低自蛍光性(それ自身からの蛍光発生が少ない性質のこと)で光透過性の樹脂、例えばポリカーボネートなどの素材で形成されていることが好ましい。反応プレート3の厚さは0.2〜4.0mm(ミリメートル)、好ましくは1.0〜2.0mmである。蛍光検出用の低自蛍光性の観点からは反応プレート3の厚さは薄い方が好ましい。
図1及び図3を参照して説明すると、反応プレート3上に反応室5の配列領域を覆って弾性体プレート11が配置されている。弾性体プレート11は例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン)やシリコーンゴムからなる。弾性体プレート11の厚みは例えば1.0〜5.0mmである。弾性体プレート11は反応プレート3との接合面に溝を備えている。その溝と反応プレート3の表面によって、主流路13、計量流路15、注入流路17、反応室エアー抜き流路19,21、ドレイン空間エアー抜き流路23,25が形成されている。主流路13、計量流路15及び注入流路17は反応室流路を構成する。弾性体プレート11の反応プレート3との接合面には、反応室5上に配置された凹部27も形成されている。図1(A)及び図3(A),(B)では弾性体プレート11について溝及び凹部のみを図示している。
主流路13は1本の流路からなり、すべての反応室5の近傍を通るように折れ曲がって形成されている。主流路13の一端は反応プレート3に設けられた貫通孔からなる流路13aに接続されている。流路13aは後述する切替えバルブ63のポートに接続されている。主流路13の他端は反応プレート3に形成された液体ドレイン空間29に接続されている。主流路13を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm(マイクロメートル)、幅が500μmである。また、主流路13は、計量流路15が接続されている位置の下流側の所定長さ部分、例えば250μmの部分は幅が他の部分に比べて細く形成されており、例えばその幅は250μmである。
計量流路15は主流路13から分岐して反応室5ごとに設けられている。計量流路15の主流路13とは反対側の端部は反応室5の近傍に配置されている。計量流路15を構成する溝の深さは例えば400μmである。計量流路15は内部容量が所定容量、例えば2.5μL(マイクロリットル)に形成されている。計量流路15の主流路13に接続されている部分の幅寸法は、上述の主流路13の細くなっている部分よりも太く、例えば500μmに形成されている。これにより、主流路13の一端から流れてくる液体に対して、計量流路15が分岐している部分では主流路13の方が計量流路15よりも流路抵抗が大きくなっている。主流路13の一端から流れてくる液体は、まず計量流路15に流れ込み、計量流路15が液体で充填された後、主流路13の細くなっている部分を介して下流側へ流れるようになっている。
注入流路17も反応室5ごとに設けられている。注入流路17の一端は計量流路15に接続されている。注入流路17の他端は反応室5上に配置された凹部27に接続されて反応室5上に導かれている。注入流路17は、反応室5内と注入流路17内で圧力差がない状態で反応室5内の液密を保つ寸法で形成されている。この実施例では、注入流路17は複数の溝により構成されており、その溝の寸法は例えば深さが10μm、幅が20μm、ピッチが20μmであり、500μmの幅領域に13本の溝が形成されている。ここでは、注入流路17を構成する溝と計量流路15の境界の面積、すなわち注入流路17を構成する溝の断面積は200μm2である。また、凹部27は深さが例えば400μmであり、平面形状は反応室5よりも小さい円形である。
反応室エアー抜き流路19は反応室5ごとに設けられている。反応室エアー抜き流路19の一端は反応室5上に配置された凹部27に注入流路17とは異なる位置で接続されて反応室5上に配置されている。反応室エアー抜き流路19は、反応室5内と反応室エアー抜き流路19内で圧力差がない状態で反応室5内の液密を保つ寸法で形成されている。反応室エアー抜き流路19の他端は反応室エアー抜き流路21に接続されている。この実施例では、反応室エアー抜き流路19は複数の溝により構成されており、その溝の寸法は例えば深さが10μm、幅が20μm、ピッチが20μmであり、500μmの幅領域に13本の溝が形成されている。
反応室エアー抜き流路21はこの実施例では複数本設けられている。それぞれの反応室エアー抜き流路21には複数の反応室エアー抜き流路19が接続されている。反応室エアー抜き流路21は反応室エアー抜き流路19を反応プレート3に形成されたエアードレイン空間31に接続するためのものである。反応室エアー抜き流路21を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
ドレイン空間エアー抜き流路23は液体ドレイン空間29を後述する切替えバルブ63のポートに接続するためのものである。ドレイン空間エアー抜き流路23の一端は液体ドレイン空間29上に配置されている。ドレイン空間エアー抜き流路23の他端は反応プレート3に設けられた貫通孔からなる流路23aに接続されている。流路23aは後述する切替えバルブ63のポートに接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路23を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
ドレイン空間エアー抜き流路25はエアードレイン空間31を後述する切替えバルブ63のポートに接続するためのものである。ドレイン空間エアー抜き流路25の一端はエアードレイン空間31上に配置されている。ドレイン空間エアー抜き流路25の他端は反応プレート3に設けられた貫通孔からなる流路25aに接続されている。流路25aは後述する切替えバルブ63のポートに接続されている。ドレイン空間エアー抜き流路25を構成する溝の寸法は例えば深さが400μm、幅が500μmである。
弾性体プレート11上に保持プレート33(図1(A)での図示は省略している。)が配置されている。保持プレート33は弾性体プレート11を反応プレート3に固定するためのものである。保持プレート33には反応室5上の位置に貫通孔が形成されている。
図1及び図4を参照して説明すると、反応室5の配列領域及びドレイン空間29,31とは異なる位置で反応プレート3にサンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39が形成されている。サンプル容器35、試薬容器37及びエアー吸引用容器39は本発明の反応容器の封止容器を構成する。
サンプル容器35近傍の反応プレート3に、サンプル容器35の底部から裏面に貫通しているサンプル流路35aと表面から裏面に貫通しているサンプル容器エアー抜き流路35bが形成されている。サンプル容器35の開口部周囲の反応プレート3上に突起部35cが配置されている。サンプル容器エアー抜き流路35b上の突起部35cに貫通孔からなるサンプル容器エアー抜き流路35dが形成されている。突起部35cの表面にサンプル容器35とサンプル容器エアー抜き流路35dを連通しているサンプル容器エアー抜き流路35eが形成されている。
サンプル容器エアー抜き流路35eは例えば幅5〜200μm、深さ5〜200μmの寸法の1本又は複数本の細孔によって形成されており、サンプル容器35内とサンプル容器エアー抜き流路35d内で圧力差がない状態でサンプル容器35の液密を保つためのものである。突起部35c上にサンプル容器35及びエアー抜き流路35dを覆って弾性部材であるセプタム41が形成されている。セプタム41は例えばシリコーンゴムやPDMSなどの弾性材料によって形成されており、尖端が鋭利な分注器具により貫通でき、かつ貫通後に分注器具を引き抜くとその貫通孔を弾性によって閉じることができる。セプタム41上にセプタム41を固定するためのセプタムストッパ43が配置されている。セプタムストッパ43はサンプル容器35上に開口部をもつ。この実施例ではサンプル容器35内に予め試薬45が収容されている。
図5に示すように、試薬容器37近傍の反応プレート3に、試薬容器37の底部から裏面に貫通している試薬流路37aと表面から裏面に貫通している試薬容器エアー抜き流路37bが形成されている。試薬容器37の開口部周囲の反応プレート3上に突起部37cが配置されている。試薬容器エアー抜き流路37b上の突起部37cに貫通孔からなる試薬容器エアー抜き流路37dが形成されている。突起部37cの表面に試薬容器37と試薬容器エアー抜き流路37dを連通している試薬容器エアー抜き流路37eが形成されている。
試薬容器エアー抜き流路37eは例えば幅5〜200μm、深さ5〜200μmの寸法の1本又は複数本の細孔によって形成されており、試薬容器37内と試薬容器エアー抜き流路37d内で圧力差がない状態で試薬容器37の液密を保つためのものである。突起部37c上に試薬容器37及びエアー抜き流路37dを覆って例えばアルミニウムからなるフィルム47が形成されている。試薬容器37内に希釈水49が収容されている。
図6に示すように、エアー吸引用容器39は試薬容器37と同様の構成をもつ。すなわち、エアー吸引用容器39近傍の反応プレート3に、エアー吸引用容器39の底部から裏面に貫通しているエアー吸引用流路39aと表面から裏面に貫通しているエアー吸引用容器エアー抜き流路39bが形成されている。エアー吸引用容器39の開口部周囲の反応プレート3上にエアー吸引用容器エアー抜き流路39d,39eを備えた突起部39cが配置されている。突起部39c上に例えばアルミニウムからなるフィルム47が形成されている。エアー吸引用容器39内には液体及び固体は収容されておらず、エアーが充満している。
弾性体プレート11を保持プレート33によって反応プレートに固定する構造を図7を参照して説明する。図7(A)は保持プレートの抜け止め用の突起を示す断面図、(B)は保持プレートの抜け止め用の突起に対応する反応プレート上及び弾性体プレート上の位置を示す断面図、(C)は抜け止め用の突起により保持プレート及び弾性体プレートを反応プレートに固定した状態を示す断面図である。なお、(B)において反応プレート3と弾性体プレート11を対応させて説明するために両プレート3,11を重ねた状態で図示しているが、実際にはこの状態から保持プレート33を反応プレート3に固定するのではなく、保持プレート33に弾性体プレート11を先に固定してから保持プレート33を反応プレート3に固定するものである。
保持プレート33は反応プレート3側の面に抜け止め用の複数の突起100を備えている。突起100は図1(A)に示されているように、各反応室の注入流路17の近傍と、反応室が配置されている領域の周囲の適当な位置に設けられている。突起100は円柱状の軸の先端に軸径よりも大きい径をもつ球面状の膨張部100aを備えている。膨張部100aは基端部側に軸の周面から垂直方向に突出した面からなる引掛り部100cを備えている。ここで、突起100の「軸」とは突起100の基端部から引掛り部100cまでを意味する。
膨張部100aはその先端から基端部側に延びた切欠き100bを備えている。突起100の切欠き100bは弾性力によって開いた状態を維持するようになっており、外部からの力によって閉じられたときは開く方向に復元力が作用する。膨張部100aの最大部分の外径は切欠き100bが閉じたときに突起100の軸径よりも小さくなるように、膨張部100aの外径及び切欠き100bの開閉幅が設定されている。
弾性体プレート11の各突起100に対応する位置に、反応プレート3側が突起100で貫通できる程度に薄い膜110aで閉じられた凹部からなる貫通部110が形成されている。貫通部110を構成する凹部の内径は突起100の膨張部100aの外径以上に設定されている。膜110aは弾性体プレート11と一体成型されたものであり、その膜厚は例えば100μmである。
反応プレート3の弾性体プレート11側の面の各突起100に対応する位置の弾性体プレート11側に凹部110の内径と同程度の大きさの内径をもつ凹部124が設けられ、凹部124の底面に突起100を通すための貫通穴120が設けられている。穴120は反応プレート3の弾性体プレート11とは反対側の面に設けられた係合部122に開けられたものである。穴120の内径は切欠き100bが閉じているときの膨張部100aの外径よりも大きく、切欠き100bが開いているときの膨張部100aの外径及び膨張部100a付近の軸径よりも小さく設定されている。
突起100の軸の長さは、反応プレート3と弾性体プレート11を重ねたときの弾性体プレート11の保持プレート33側表面から反応プレート3の係合部122の表面までの長さと同じか又はそれよりも僅かに短く設定されている。
弾性体プレート11を保持プレート33に固定するには、突起100を貫通部110に通す。このとき貫通部110の膜110aは突起100によって貫通される。ところで、弾性体プレート11と保持プレート33との位置決めは、弾性体プレート11の保持プレート33との対向面の適当な位置に形成された凹部112と、保持プレート33の弾性体プレート11との対向面で弾性体プレート11の凹部112に対応する位置に形成された凸部106によってなされる。すなわち、弾性体プレート11を保持プレート33に固定するときに凹部112に凸部106を嵌め込むことにより、弾性体プレート11が保持プレート33に対して位置決めされる。
次に、弾性体プレート11を保持した保持プレート33を反応プレート3に固定するには、図7(C)に示されているように、保持プレート33の突起100を反応プレート3の穴120に挿入する。突起100の切欠き100bは、膨張部100a表面と穴120の内壁との接触により閉じ、膨張部100aが穴120を完全に通過したところで軸の周面が穴100の内壁に接触するまで開く。これにより、保持プレート33は反応プレート3に対する位置決めがなされ、さらには、引掛り部100cと係合部122の表面が係合するため、突起100は穴120に挿入された状態で固定される。
突起100が穴120に挿入された状態において、凹部124の内壁と突起100の軸の周面との間に隙間が生じている。この隙間に突起100による貫通によって裂けた貫通部110の膜110aが全て収容されるように、凹部124の内径及び深さが設定されている。すなわち凹部124は、突起100の貫通によって裂けた膜110aが逃げる空間を確保するために設けられたものである。このような空間124を反応プレート3に設けておくことにより、突起100の貫通によって裂けた膜110aが弾性体プレート11と反応プレート3との間に留まることを防止できる。
なお、弾性体プレート11の貫通部110は貫通穴であってもよいが、反応プレート3側に薄い膜110aが形成されているほうが好ましい。弾性体プレート11は貫通部110とともに成型により製作するが、貫通部110を貫通穴として形成しようとしてもシリコーンやPDMSなどの成型材料の流動性によって貫通部110の縁にバリが形成されることがある。形成されたバリが貫通部110の内側にあれば、貫通部110に突起100を通したときにバリが突起に纏わり付き、保持プレート33を反応プレート3に固定する際に反応プレート3の凹部124の内壁と突起100との間の空間にバリが収容されるので、弾性体プレート11と反応プレート3との間にバリが留まることはない。ところが、貫通部110の縁に形成されたバリが弾性体プレート11の裏面側に反り返ってしまうと、その貫通部110に突起100を通した後も弾性体プレート11の自己吸着性によってバリが反り返ったままになり、保持プレート33を反応プレート3に固定する際に反り返ったバリが弾性体プレート11と反応プレート3との間に留まる虞がある。この実施例に示されているように、弾性体プレート11の各貫通部110に膜110aが形成されていれば、突起100の貫通により裂けた膜110aは突起100に纏わり付いて凹部124の内壁と突起100との間の空間に確実に収容されるため、保持プレート33を反応プレート3に固定する際に突起100の貫通で裂けた膜110aが弾性体プレート11と反応プレート3との間に留まることはない。
反応プレート3、弾性体プレート11及び保持プレート33の間の固定と位置決めのための突起100、凹部112、凸部106、貫通部110及び穴120は、動作の説明や他の実施例では図示と説明を省略しているが、図1及び図7に記載のものと同じものを備えている。
図1及び図2を参照して説明を続けると、反応室5の配列領域、ドレイン空間29,31及び容器35,37,39とは異なる位置の反応プレート3の表面にシリンジ51が設けられている。シリンジ51は反応プレート3に形成されたシリンダ51aとシリンダ51a内に配置されたプランジャ51bとカバー体51dにより形成されている。反応プレート3にシリンダ51aの底部に設けられた吐出口から裏面に貫通しているシリンジ流路51cが形成されている。
カバー体51dはプランジャ51bの摺動方向に可撓性をもち、シリンダ51aとプランジャ51bに接続されている。カバー体51dは、シリンダ51aの内壁のプランジャ51bが接触する部分をシリンダ51a外の雰囲気とは気密性を保って遮断するためのものであり、シリンダ51aとプランジャ51bとカバー体51dで囲まれた封止空間51eを形成している。シリンダ51aに接続される側のカバー体51dの端部はシリンダキャップ51fによりシリンダ51aの上端に気密性を確保して固定されている。また、プランジャ51bに接続される側のカバー体51dの端部は接着剤によりプランジャ51bの上面に気密性を確保して接続されている。ただし、カバー体51dをシリンダ51a、プランジャ51bに接続する方法及び位置はこれに限定されるものではない。
このように、カバー体51dは、シリンダ51aとプランジャ51bに接続されてシリンダ51aとプランジャ51bとカバー体51dで囲まれた封止空間51eを形成しているので、シリンダ51aとプランジャ51bの間を介しての、外部からの異物の進入や、液体の外部への環境汚染が防ぐことができる。なお、カバー体51dはプランジャ51bの摺動方向に可撓性をもつので、プランジャ51bの摺動動作は可能である。
この実施例ではプランジャ51bとカバー体51dは別々の部材により形成されているが、プランジャとカバー体は一体成形されたものであってもよい。一体成形されたプランジャとカバー体の材料として例えばシリコーンゴムを挙げることができる。
反応プレート3には、反応室5の配列領域、ドレイン空間29,31、容器35,37,39及びシリンジ51とは異なる位置にベローズ53も設けられている。ベローズ53は内部空間が封止されており、伸縮することにより内部容量が受動的に可変なものであり、例えば反応プレート3に設けられた貫通孔53a内に配置されている。
反応室5の配列領域とは異なる位置で反応プレート3の裏面に容器ボトム55が取り付けられている。容器ボトム55にはベローズ53に連通する位置にエアー抜き流路53bが設けられている。ベローズ53は容器ボトム55の表面に密着して接続されている。容器ボトム55は流路13a,23a,25a,35a,35b,37a,37b,39a,39b,51c,53bを所定のポート位置に導くためのものである。
反応プレート3容器及びボトム55に、一端が封止空間51eに接続され、他端がベローズ53にされたシリンジエアー抜き流路53cが設けられている。図1(A)でのシリンジエアー抜き流路53cの図示は省略している。
このように、一端が封止空間51eに接続され、他端がベローズ53されているシリンジエアー抜き流路53cを備えているので、封止空間51eを反応容器1外部雰囲気とは遮断しつつ、プランジャ51bが摺動するときに封止空間51eの内部容量の変化にともなう封止空間51e内部の圧力変化を緩和することができ、プランジャ51bを円滑に摺動させることができる。
容器ボトム55の反応プレート3とは反対側の面に円盤状のシール板57、ロータアッパー59及びロータベース61からなるロータリー式の切替えバルブ63が設けられている。切替えバルブ63はロック65により容器ボトム55に取り付けられている。
シール板57は、その周縁部近傍に設けられ、流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続される貫通孔57aと、それよりも内側の同心円上で流路23a,25a,35b,37b,39b,53bのうち少なくとも2つ接続される貫通溝57bと、中心に設けられ、シリンジ流路51cに接続される貫通孔57cを備えている。
ロータアッパー59は、シール板57の貫通孔57aと同じ位置に設けられた貫通孔59aと、シール板57の貫通溝57bに対応して表面に設けられた溝59bと、中心に設けられた貫通孔59cを備えている。
ロータベース61はその表面に、ロータアッパー59の周縁部と中心に配置された2つの貫通孔59a,59cを接続するための溝61aを備えている。
切替えバルブ63の回転により、シリンジ流路51cが流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続されるのと同時に、エアー抜き流路53bが流路23a,25a,35b,37b,39bのうちの少なくともいずれかに接続される。
図1(A)に示した切替えバルブ63の位置は、シリンジ流路51cは流路13a,35a,37a,39aのいずれにも接続されておらず、エアー抜き流路53bも流路23a,25a,35b,37b,39bのいずれとも接続されていない初期状態の位置を示している。
反応容器1では、注入流路17は反応室5内と注入流路17内で圧力差がない状態で反応室5の液密を保つように形成されている。反応室エアー抜き流路19も反応室5内と反応室エアー抜き流路19内で圧力差がない状態で反応室5の液密を保つように形成されている。反応室流路の主流路13と、主流路13が接続された液体ドレイン空間29及びドレイン空間エアー抜き流路23は切替えバルブ63の切替えにより密閉可能になっている。容器35,37,39はセプタム41又はフィルム47で封止されている。容器35,37,39に接続された流路35a,35b,37a,37b,39a,39bは切替えバルブ63の切替えにより密閉可能になっている。エアー抜き流路53bの一端はベローズ53に接続されて密閉されている。このように、反応容器1内部の容器及び流路は密閉系で形成されている。なお、ベローズ53を備えていない構成であってエアー抜き流路53bが反応容器1外部の雰囲気と接続されている場合であっても、切替えバルブ63の切替えによりエアー抜き流路53bを反応容器1内部の容器及びエアー抜き流路53b以外の流路とは遮断できるので、液体が収容される又は液体が流される容器及び流路を密閉系にすることができる。
図8は図1に示した反応容器1を処理するための反応処理装置を反応容器1とともに示す断面図である。反応容器1の構造は図1と同じなのでその説明は省略する。
反応処理装置は反応室5の温度調整をするための温調機構67と、シリンジ51を駆動するためのシリンジ駆動ユニット69と、切替えバルブ63を切り替えるための切替えバルブ駆動ユニット71を備えている。
図9から図15は、サンプル容器35からサンプル液を反応室5に導入する動作を説明するための平面図である。図1及び図9から図15を参照してこの動作を説明する。
図示しない尖端が鋭利な分注器具を用い、サンプル容器35上のセプタム41を貫通して例えば5μLのサンプル液をサンプル容器35内に分注する。サンプル液を分注後、分注器具を引き抜く。分注器具を引き抜いたときのセプタム41の貫通孔はセプタム41の弾性により閉じられる。
シリンジ駆動ユニット69をシリンジ51のプランジャ51bに接続し、切替えバルブ駆動ユニット71を切替えバルブ63に接続する。
図9に示すように、図1(A)に示した切替えバルブ63の状態から切替えバルブ63を回転させてサンプル流路35aとシリンジ流路51cを接続し、サンプル容器エアー抜き流路35bをエアー抜き流路53bに接続する。このとき、エアー抜き流路37b,39bもエアー抜き流路53bに接続される。サンプル容器35には例えば45μLの試薬45が収容されている。
シリンジ51のプランジャ51bを摺動させてサンプル容器35内のサンプル液及び試薬45を混合させる。その後、サンプル容器35内の混合液を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に例えば10μLだけ吸引する。このとき、サンプル容器35はエアー抜き流路35e,35d,35b、切替えバルブ63及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、サンプル容器35内の気体容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。また、プランジャ51bの摺動により、カバー体51dが変形して封止空間51e(図1(C)参照。)の内部容量が変化する。封止空間51eはシリンジエアー抜き流路53cを介してベローズ53に接続されているので、封止空間51eの内部容量の変化によってもベローズ53が伸縮する。以下に説明する動作工程でも、プランジャ51bの摺動による封止空間51eの内部容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。
図10に示すように、切替えバルブ63を回転させて試薬流路37aとシリンジ流路51cを接続し、試薬容器エアー抜き流路37bをエアー抜き流路53bに接続する。試薬容器37には例えば190μLの希釈水49が収容されている。切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引した混合液を試薬容器37内に注入し、シリンジ51を摺動させて混合液と希釈水49と混合する。その希釈混合液を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に例えば全部、すなわち200μL吸引する。このとき、試薬容器37はエアー抜き流路37e,37d,37b、切替えバルブ63及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、試薬容器37内の気体容量の変化にともなってベローズ53が伸縮する。
図11に示すように、切替えバルブ63を回転させて、主流路13の一端に接続された流路13aとシリンジ流路51cを接続し、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31に接続された流路23a,25aをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を押出し方向に駆動させて、切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引した希釈混合液を主流路13に送る。流路13a側から主流路13に注入された希釈混合液は、シボ及び矢印によって示すように、流路13a側から順に計量流路15を満たし、液体ドレイン空間29に到達する。希釈混合液が主流路13及び計量流路15に導入されるときの導入圧力状態では、注入流路17は、気体は通すが希釈混合液を通さない。計量流路15への希釈混合液の充填にともなって計量流路15の気体は注入流路17を介して反応室5内へ移動する。この気体の移動にともない、反応室5内の気体の一部は反応室エアー抜き流路19,21へ移動する。さらに反応室エアー抜き流路19からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。また、液体ドレイン空間29に希釈混合液が注入されることにより、液体ドレイン空間29からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。これにより、ベローズ53は膨張する。
図12に示すように、切替えバルブ63を回転させてエアー吸引用流路39aとシリンジ流路51cを接続し、エアー吸引用容器エアー抜き流路39bをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を吸引側に駆動させてエアー吸引用容器39内の気体を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引する。このとき、エアー吸引用容器39はエアー抜き流路39e,39d,39b、切替えバルブ63及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、エアー吸引用容器39内の減圧にともなってベローズ53が収縮する(白抜き矢印参照)。
図13に示すように、切替えバルブ63を回転させて、図11の接続状態と同じく、流路13aとシリンジ流路51cを接続し、流路23a,25aをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を押出し方向に駆動させて、切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内の気体を主流路13に送って主流路13内の希釈混合液をパージする(白抜き矢印参照)。このときのパージ圧力状態では注入流路17は希釈混合液を通さないので、計量流路15内には希釈混合液が残存している(シボ参照。)。パージされた希釈混合液は液体ドレイン空間29内に収容される。また、液体ドレイン空間29に希釈混合液が注入されることにより、液体ドレイン空間29からベローズ53までの流路内の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。これにより、ベローズ53は膨張する。
図14に示すように、切替えバルブ63を回転させて、図12の接続状態と同じく、エアー吸引用流路39aとシリンジ流路51cを接続し、エアー吸引用容器エアー抜き流路39bをエアー抜き流路53bに接続する。シリンジ51を吸引側に駆動させてエアー吸引用容器39内の気体を切替えバルブ63内の流路、シリンジ流路51c及びシリンジ51内に吸引する。このとき、図12を参照して説明したのと同様に、ベローズ53が収縮する(白抜き矢印参照)。
図15に示すように、切替えバルブ63を回転させて、流路13aとシリンジ流路51cを接続し、流路25aをエアー抜き流路53bに接続する。この接続状態は、主流路13の下流側端が接続された液体ドレイン空間29が切替えバルブ63内の流路に接続されていない点で図11及び図13に示した接続状態とは異なる。シリンジ51を押出し方向に駆動させる。主流路13の下流側端はベローズ53には接続されていないので、主流路13内が液体導入圧力及びパージ導入圧力よりも大きく加圧される。これにより、計量流路15内の希釈混合液が注入流路17を通って反応室5内に注入される。希釈混合液が反応室5内に注入された後は主流路13内の気体の一部は計量流路15及び注入流路17を介して反応室5内に流れ込む。このとき、反応室5は反応室エアー抜き流路19,21、エアードレイン空間31、ドレイン空間エアー抜き流路25a及びエアー抜き流路53bを介してベローズ53に接続されているので、反応室5、ベローズ53間の気体は順次ベローズ53側へ移動する(白抜き矢印参照)。これにより、ベローズ53は膨張する。
切替えバルブ63を図1の接続状態にして反応容器1内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉した後、温調機構67により反応室5を加熱してワックス9を融解させる。これにより、反応室5に注入された希釈混合液はワックス9の下に入り、希釈混合液と試薬7が混ざり反応する。このように、反応容器1によれば反応処理を密閉系で行なうことができる。
また、希釈混合液を反応室5内に注入する前に、温調機構67により反応室5を加熱してワックス9を融解させておき、反応室5内への希釈混合液の注入時にワックス9が融解しているようにしてもよい。この場合、反応室5に注入された希釈混合液は直ちにワックス9の下に入り、希釈混合液と試薬7が混ざり反応する。切替えバルブ63の接続状態が図15の状態であっても、ベローズ53により密閉系は確保されている。希釈混合液の注入後に切替えバルブ63を図1の接続状態にすれば、反応容器1内部の容器、流路及びドレイン空間を密閉することができる。ここで切替えバルブ63を図1の接続状態に切り替えるタイミングは、希釈混合液の注入直後から希釈混合液と試薬7の反応終了までのいずれのタイミングであってもよいし、希釈混合液と試薬7の反応終了後であってもよい。
このように、反応容器1によれば、反応処理を密閉系で行なうことができ、反応処理前及び反応処理後も密閉系にすることができる。
この実施例では流路13,15,17,19,21,23を形成するための溝は弾性体プレート11に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの流路の全部又は一部分を形成するための溝を反応プレート3表面に形成してもよい。
図16は反応容器の他の実施例の反応室近傍を拡大して示す概略的な断面図である。この実施例は、反応室ベースと弾性体プレートの間に流路スペーサを配置した以外の構成は図1から図15を参照して説明した上記実施例と同じである。
反応プレート3上に反応室5の配列領域を覆って流路スペーサ73が配置され、さらにその上に弾性体プレート11、保持プレート33がその順に配置されている。流路スペーサ73は例えばPDMSやシリコーンゴムからなる。流路スペーサ73の厚みは例えば0.5〜5.0mmである。流路スペーサ73は反応室5内に突出している凸部75を反応室5ごとに備えている。凸部75は断面が略台形に形成されており、例えば基端部の幅は1.0〜2.8mm、先端部の幅は0.2〜0.5mmであり、先端部が基端部に比べて細くなっている。また、凸部75の表面には超撥水処理が施されている。ただし、凸部75の表面に必ずしも撥水処理が施されていなくてもよい。
さらに、流路スペーサ73は凸部75の先端部から反対側の面に貫通している貫通孔からなる注入流路77を凸部75の形成位置ごとに備えている。注入流路77の内径は例えば500μmである。注入流路77の弾性体プレート11側の開口は弾性体プレート11の注入流路17に接続されている。なお、この実施例では図1から図15を参照して説明した上記実施例と比較して弾性体プレート11に凹部27を備えていない。
さらに、流路スペーサ73は弾性体プレート11の反応室エアー抜き流路19と反応室5を連通させるための貫通孔からなる反応室エアー抜き流路79も備えている。
また、図示は省略するが、流路スペーサ73は、主流路13の両端部、反応室エアー抜き流路21のエアードレイン空間31側の端部、及びドレイン空間エアー抜き流路23,25の両端部に貫通孔を備え、それらの流路13,21,23,25を反応プレート3に設けられた容器29,31又は流路23a,25bに接続している。
この実施例では、注入流路77の注入流路15とは反対側の端部(注入流路の他端)は反応室5の内側上面に突出して形成された凸部75の先端に配置されているので、注入流路15,77を通って反応室5に注入される液体が反応室5に滴下しやすくなる。
さらに、液体が注入流路77を通って凸部75の先端から吐出される際に凸部75の先端に形成される液滴が反応室5の側壁に接触するように凸部75の先端を反応室5の側壁近傍に配置すれば、反応室5の側壁を伝って液体を反応室5内に注入することができ、より確実に反応室5内に液体を注入することができる。ただし、凸部75の形成位置は、凸部75の先端に形成される液滴が反応室5の側壁には接触しない位置であってもよい。
図17は反応容器のさらに他の実施例の反応室近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
この実施例は、図16を参照して説明した実施例と比べて、反応室5の内部に突起部81をさらに備えている。突起部81の先端は凸部75の先端の下方に配置されている。これにより、凸部75の先端に形成される液滴を反応室5内に導きやすくなる。特に、突起部81の少なくとも先端の表面に親水性処理を施しておけば、特に有効である。
図18は反応容器のさらに他の実施例の反応室近傍を拡大して示す概略的な断面図である。
この実施例は、図17を参照して説明した実施例と比べて、反応室5の側壁に形成された段差部83と、反応室5の上面とは間隔をもって段差部83の上面に形成された凸条部85をさらに備えている。段差部83及び凸条部85は上方から見て環状に形成されている。凸条部85の先端は反応室5の側壁とは間隔をもって配置されている。
凸条部85の先端が反応室5の上面及び側面とは間隔をもって配置されていることにより、反応室5の内部に収容された液体が反応室の側壁を伝って反応室5の上面に到達するのを防止することができる。この効果は凸条部85の少なくとも先端部分に撥水処理を施しておくと特に有効である。
図18に示した段差部83及び凸条部85を備えた構成は図16に示した実施例にも適用することができる。
また、図16、図17又は図18を参照して説明した各実施例では、流路13,15,17,19,21,23を形成するための溝は弾性体プレート11に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それらの流路の全部又は一部分を形成するための溝は、流路スペーサ73の弾性体プレート11側表面、流路スペーサ73の反応プレート11側表面、反応プレート3表面のいずれに形成されていてもよい。
また、シリンジ51について、シリンダ51aの一部分が切替えバルブ63の一部分によって形成されていてもよい。
図19は反応容器のさらに他の実施例を示す図であり(A)は概略的な平面図、(B)は(A)のA−A位置での断面に計量流路15、注入流路17、反応室エアー抜き流路19,21、液体ドレイン空間29、エアードレイン空間31及びベローズ53の断面を加えた概略的な断面図、(C)はシリンジ51及びベローズ53近傍を拡大して示す概略的な断面図である。図20は切替えバルブの概略的な分解図であり、(A)はシール板の平面図及び断面図、(B)はロータアッパーの平面図及び断面図、(C)はロータベースの平面図及び断面図を示す。
この実施例では、シリンジ87のシリンダ87aは、例えばポリプロピレン、ポリカーボネートなどの樹脂素材により形成されており、切替えバルブ95のロータアッパー91と一体成形されたものである。
シリンジ87は、反応プレート3及び容器ボトム55に形成された貫通孔内に配置されたシリンダ87aと、シリンダ87a内に配置されたプランジャ87bとカバー体87dにより形成されている。
カバー体87dはプランジャ87bの摺動方向に可撓性をもち、シリンダ87aとプランジャ87bに接続されている。カバー体87dは、シリンダ87aの内壁のプランジャ87bが接触する部分をシリンダ87a外の雰囲気とは気密性を保って遮断するためのものであり、シリンダ87aとプランジャ87bとカバー体87dで囲まれた封止空間87eを形成している。
シリンダ87aに接続される側のカバー体87dの端部はシリンダキャップ87fによりシリンダ87aの上端に気密性を確保して固定されている。また、プランジャ87bに接続される側のカバー体87dの端部は接着剤によりプランジャ87bの上面に気密性を確保して接続されている。ただし、カバー体87dをシリンダ87a、プランジャ87bに接続する方法及び位置はこれに限定されるものではない。また、プランジャとカバー体は一体成形されたものであってもよい。一体成形されたプランジャとカバー体の材料として例えばシリコーンゴムを挙げることができる。
このように、カバー体87dは、シリンダ87aとプランジャ87bに接続されてシリンダ87aとプランジャ87bとカバー体87dで囲まれた封止空間87eを形成しているので、シリンダ87aとプランジャ87bの間を介しての、外部からの異物の進入や、液体の外部への環境汚染が防ぐことができる。なお、カバー体87dはプランジャ87bの摺動方向に可撓性をもつので、プランジャ87bの摺動動作は可能である。
図20も参照してシリンジエアー抜き流路53c及び切替えバルブ95について説明する。
切替えバルブ95は、円盤状のシール板89、ロータアッパー91及びロータベース93によって形成されている。切替えバルブ95はロック65により容器ボトム55に取り付けられている。
シール板89は、その周縁部近傍に設けられ、流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続される貫通孔89aと、それよりも内側の同心円上で流路23a,25a,35b,37b,39b,53bのうち少なくとも2つ接続される貫通溝89bと、中心に設けられ、シリンダ87aが挿入される貫通孔89cを備えている。容器ボトム55に対向するシール板89の面にはフッ素樹脂層(図示は省略)が形成されている。
ロータアッパー91は、その一表面の中央部に設けられた円筒状のシリンダ87aと、シール板89の貫通孔89aと同じ位置に設けられた貫通孔91aと、シール板89の貫通溝89bに対応して表面に設けられた溝91bと、溝91b内に設けられた貫通孔91cと、中心に設けられた貫通孔91dを備えている。貫通孔91dは、シリンダ87aの底部に設けられており、シリンダ87aの吐出口を構成する。
ロータアッパー91には、シリンダ87aの上端面からロータアッパー91の裏面まで貫通している貫通孔からなるシリンジエアー抜き流路53cも形成されている。シリンダ87aの上端面にはシリンダ87aの内壁からシリンジエアー抜き流路53cにつながる切欠きが形成されている。この切欠きにより、図19(C)に示すように、シリンダ87aの上端面がカバー体87dで覆われた状態で封止空間87eとシリンジエアー抜き流路53cが連通する。
ロータベース93は、ロータアッパー91の裏面と貼り合わされる表面に、ロータアッパー91に形成された貫通孔91aと貫通孔91dを接続するための溝93aと、ロータアッパー91に形成されたシリンジエアー抜き流路53cと91cを接続するための溝93bを備えている。
シール板89、ロータアッパー91、ロータベース93は、図19に示すように、シール板89の貫通孔89cにシリンダ87aが挿入され、重ね合わされて配置されて、切替えバルブ95を形成する。
シリンダ87aの吐出口を構成する、ロータアッパー91の貫通孔91dは、ロータベース93の溝93a及びロータアッパー91の貫通孔91aを介して、シール板89の貫通孔89aに接続される。
封止空間87e(図19参照)は、シリンジエアー抜き流路53c、ロータベース93の溝93b、ロータアッパー91の貫通孔91c及び貫通溝91bを介して、シール板89の貫通溝89bに接続される。
図19及び図20を参照して流路接続について説明する。
切替えバルブ95の回転により、シリンダ87aの吐出口を構成する、ロータアッパー91の貫通孔91dが溝93a、貫通孔91a及び貫通孔89aを介して、流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続される。
また、貫通孔91dが流路13a,35a,37a,39aのいずれかに接続されるのと同時に、エアー抜き流路53bが貫通溝89b,91bを介して流路23a,25a,35b,37b,39bのうちの少なくともいずれかに接続される。このとき、封止空間87eはシリンダエアー抜き流路53c、溝93b、貫通孔91c及び貫通溝89b,91bを介してエアー抜き流路53bに接続される。
この実施例によれば、シリンジ87と切替えバルブ95の間の流路を無くすことができ、流路構成が簡単になる。
また、流路に継ぎ目がある場合には、継ぎ目部分で液体や気体の漏れが発生したり、継ぎ目部分に液だまりが発生したりすることがある。この実施例ではシリンダ87aとロータアッパー91は一体成形されているので、シリンジ87と切替えバルブ95の間に流路の継ぎ目が無く、シリンジ87と切替えバルブ95の間での漏れや液だまりの発生を無くすことができる。
また、継ぎ目部分での液だまりが発生すると、送液する液体の容量減少の懸念や、液だまりの液体と送液される他の液体との混合による液体のキャリーオーバーや汚染、濃度変動の懸念などが生じるが、この実施例ではシリンジ87と切替えバルブ95の間でのこれらの懸念もなくすことができる。
また、切替えバルブ上にシリンジを配置する場合、図1に示したようにシリンジ51と切替えバルブ63の間に流路51cが形成されていると、流路51cが形成されている部分にはシリンダ51aを形成することができないが、図19に示した実施例ではシリンジ87と切替えバルブ95の間に流路がないので、シリンダ51a,81aの平面サイズが同じであってもシリンダ87aの容量をシリンダ51aに比べて大きくすることができる。
また、シリンダ87aをシリンダ51aと同じ容量で形成する場合、シリンダ87aの高さをシリンダ51aと同じ平面サイズでシリンダ51aに比べて低くしたり、シリンダ87aの平面サイズをシリンダ51aと同じ高さでシリンダ51aに比べて小さくしたりすることができる。
例えば反応容器1全体の平面サイズの制限からシリンダ51aの上端面を反応容器1全体の上面から突出して配置しなければならない場合であっても、シリンダ87aの高さをシリンダ51aと同じ容量及び平面サイズでシリンダ51aに比べて低くすることができるので、シリンダ87aの上端面を反応容器1全体の上面と同じ位置かそれよりも低い位置に配置することができる。これにより、シリンダの上端面が反応容器全体の上面から突出している場合の不具合、例えば複数の反応容器を積み重ねて保管する場合の不具合や、反応容器の包装が大きくなる等の不具合をなくすことができる。
また、シリンダ87aの平面サイズをシリンダ51aと同じ容量でシリンダ51aに比べて小さくすれば、反応容器1全体の平面サイズの縮小も可能である。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、形状、材料、配置、個数、寸法、流路構成などは一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、エアー抜き流路53bに接続されたベローズ53は内部容量が受動的に可変な容量可変部材であれば他の構造であってもよい。そのような構造として例えば可撓材料からなる袋状のものや、シリンジ状のものなどを挙げることができる。
また、ベローズ53等の容量可変部材は必ずしも備えていなくてもよい。
また、容器35,37,39に試薬等の液体を予め収容しないのであれば、エアー抜き流路の一部分に細孔からなる流路35e,37e,39eを必ずしも備えている必要はない。
また、上記の実施例では、封止容器としての容器35,37,39に連通して設けられたエアー抜き流路35b,37b,39bは切替えバルブ63を介してエアー抜き流路53bに接続されるが、封止容器に連通して設けられるエアー抜き流路は反応容器外部、又はベローズ53等の容量可変部に直接接続されていてもよい。
また、容器35,37,39の封止方法として開閉可能なキャップを用いてもよい。
また、上記実施例では反応プレート3は1つの部品により形成されているが、反応プレートは複数の部品によって形成されていてもよい。
また、反応室5内の試薬は乾燥試薬でもよい。
また、サンプル容器35内や反応室5内に予め試薬は収容されていなくてもよい。
また、上記実施例では試薬容器37に希釈水49が収容されているが、希釈水49に変えて試薬を収容するようにしてもよい。
また、反応プレート3に遺伝子増幅反応を行なうための遺伝子増幅容器を備えているようにしてもよい。例えば、試薬容器37を空の状態にしておけば、遺伝子増幅容器として用いることができる。
また、反応室5内に遺伝子増幅反応を行なうための試薬を収容しておけば、反応室5内で遺伝子増幅反応を行なうことができる。
また、主流路13に導入される液体に遺伝子が含まれている場合、反応室5内にその遺伝子と反応するプローブを備えているようにしてもよい。
また、上記実施例では、シリンジ51は切替えバルブ63上に配置されているが、シリンジ51を配置する位置は切替えバルブ63上に限定されるものではなく、どこでもよい。
また、上記実施例では切替えバルブとしてロータリー式の切替えバルブ63を用いているが、切替えバルブはこれに限定されるものではなく、種々の流路切替えバルブを用いることができる。また、切替えバルブを複数備えていてもよい。
また、上記実施例では、計量流路15に充填された液体を注入流路17を介して反応室5に注入する際に、エアーパージ後の主流路13内を加圧して液体を反応室5に注入しているが、本発明の反応処理方法はこれに限定されるものではない。例えば、シリンジ51を用いて反応室エアー抜き流路21内を陰圧にできるように流路構成を変更し、反応室エアー抜き流路21内、ひいては反応室5内を陰圧にすることによって計量流路15に充填された液体を注入流路17を介して反応室5に注入するようにしてもよい。また、別途シリンジを用意して、主流路13内を陽圧にし、かつ反応室5内を陰圧にして、反応室5に液体を注入するようにしてもよい。
また、上記実施例では、1本の主流路13を備え、すべての計量流路15が主流路13に接続されているが、流路構成はこれに限定されるものではない。例えば、複数本の主流路を設け、各主流路に1つ又は複数の計量流路を接続するようにしてもよい。
本発明の反応容器において、主流路は密閉可能なものであるが、主流路の両端が開閉可能になっていることにより主流路が密閉可能になっている例を挙げることができる。ここで、「主流路の両端が開閉可能になっている」とは、主流路の端部に他の空間が接続され、この他の空間の、主流路とは反対側の端部が開閉可能になっている場合も含む。例えば、上記実施例では、流路13aや、液体ドレイン空間29、ドレイン空間エアー抜き流路23及び流路23aが上記他の空間に相当する。
また、本発明の反応容器において、反応室エアー抜き流路は密閉可能なものであるが、反応室エアー抜き流路の反応室とは反対側の端部が開閉可能になっていることにより反応室エアー抜き流路が密閉可能になっている例を挙げることができる。ここで、「反応室エアー抜き流路の反応室とは反対側の端部が開閉可能になっている」とは、反応室エアー抜き流路の反応室とは反対側の端部に他の空間が接続され、この他の空間の、反応室エアー抜き流路とは反対側の端部が開閉可能になっている場合も含む。例えば、上記実施例では、エアードレイン空間31、ドレイン空間エアー抜き流路25及び流路25aが上記他の空間に相当する。
このような態様では、主流路及び計量流路に液体が導入され、次に主流路内の上記液体がパージされ、さらに計量流路内に残存する上記液体が反応室内に注入された後、主流路の両端、及び反応室エアー抜き流路の反応室とは反対側の端部が閉じられて主流路及び反応室エアー抜き流路が密閉される。