JP4870859B2 - 液相エピタキシャル成長装置及び成長方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液相エピタキシャル(以下LPEと称する。)成長装置、特に化合物半導体のLPE成長用の閉管式LPE成長装置に関する。また、LPE成長方法、特に化合物半導体を前記閉管式LPE成長装置を用いて成長する方法に関する。
【0002】
化合物半導体のLPE成長方法としては、これまで一般的に、開管式LPE成長方法であるボートスライド法が行われてきた。しかしながら、組成の中に蒸気圧の高い元素(例えば、Hg、As、Pなど)を含む化合物半導体結晶を開管式LPE成長方法で成長させる場合は、蒸気圧を制御する必要があるため、成長中にキャリアガスを流し、その流量を厳密に制御しなければならないが、これには一般的に精度上の限界がある。
【0003】
このため、組成の中に蒸気圧の高い元素を含む化合物半導体結晶を成長させる場合は、蒸気圧の変動を抑えるために閉管式LPE成長方法が用いられている。閉管式LPE成長方法には、成長用溶液(以下メルトと称する。)を結晶成長用基板に接触させる方式によって、閉管を傾斜させるネルソン式、閉管を回転させるティッピング式、及び閉管内で結晶成長用基板をメルトの中に浸せきさせるディッピング式などの方式がある。
【0004】
一方、化合物半導体デバイスの中でも、赤外線検知素子や赤外線レーザ素子などの赤外デバイスには、エネルギーバンドギャップの狭い、例えば水銀カドミウムテルル(Hg1-xCdxTe)といった化合物半導体結晶が用いられている。この赤外デバイスの製造に際しては、結晶の組成比やエネルギーバンドギャップなどの物性の制御性の観点から、現在LPE成長により結晶成長を行うのが主流である。そして、このような赤外デバイス用の化合物半導体結晶に対しては、その組成の中に水銀などの蒸気圧が高く蒸発しやすい元素が含まれているので、主に前記閉管式LPE成長方法が用いられている。
【0005】
近年、LPE結晶成長用基板の大口径化や、デバイスの高性能化の要求に伴い、基板面内でより均一な膜厚分布を有し、結晶欠陥をより低減させたエピタキシャル層をLPE成長により結晶成長させることのできる技術が要求されている。
【0006】
【従来の技術】
図7は、ティッピング式成長方法に用いる従来の閉管式LPE成長装置を示す構成図であり、結晶成長用基板22を搭載した状態のものを示す。図中、21は石英アンプル(閉管)、22は結晶成長用基板、23は基板ホルダ、24は基板固定用の上部石英治具、25は基板固定用の下部石英治具、26は結晶成長用基板及び基板ホルダを保持する保持溝、27は成長用溶液(メルト)、28は成長用溶液(メルト)の収納部、29は石英アンプル(閉管)の回転軸を表す。
【0007】
図7(a)は、従来の閉管式LPE成長装置全体の斜視図を表す。図7(b)は円筒形状を有する石英アンプル21の管軸に平行な面における図7(a)の断面図(図7(a)のA−A断面図に相当。)、図7(c)は石英アンプル21の管軸に垂直な面における図7(a)の断面図(図7(a)のB−B断面図に相当。)を表し、それぞれメルト27が充填された状態で示してある。また、図7(d)は石英アンプル21を図7(c)に示す状態から回転軸29に沿って180°回転させた状態を表す図であり、結晶成長用基板22表面にメルト27を接触させて基板表面にエピタキシャル層を形成する時の状態を示す。
【0008】
図7(a)及び(b)に示すように、ティッピング式成長方法に用いる従来の閉管式LPE成長装置では、結晶成長用基板22を載置させた基板ホルダ23を、結晶成長用基板22及び基板ホルダ23を保持するための保持溝26を設けた基板固定用の上部石英治具24及び下部治具25により、上下、左右から挟み込んで固定している。そして、この状態で、前記結晶成長用基板22、前記基板ホルダ23、前記基板固定用上部治具24及び下部治具25は全て石英アンプル(閉管)21の中に収められ、真空封止されている。
【0009】
図7において、石英アンプル21は円筒形状を有する閉管であり、その管軸29にそって回転可能になっている。結晶成長用基板22は正方形の結晶成長面を有する平板状基板である。基板ホルダ23は平板状の石英治具に前記結晶成長用基板22を載置するための凹部が形成されたものであり、前記凹部に前記結晶成長用基板を載置した場合、前記基板ホルダ23の外周部の高さが前記結晶成長用基板22の表面の高さに比べて等しいか、又は小さくなるように形成したものである。また、前記結晶成長用基板22及び前記基板ホルダ23は、前記結晶成長用基板22の正方形の四辺のうち、一方の対向する二辺30a、30bに対応した端部において前記保持溝26により挟持されて固定されており、残りの二辺30c、30dに対応する端部は開放されている。
【0010】
次に、図7に示した閉管式LPE成長装置を用いた従来の結晶成長方法について説明する。まず、上記説明したように、結晶成長用基板22を基板ホルダ23に載置し、この基板ホルダを基板固定用の上部石英治具24及び下部石英治具25により挟持して固定する。また、メルト収納部28には、予め所定の組成に秤量して高温で合金化させ冷却した、固体状態のメルトを載置する。(図示せず。)この状態で、石英アンプル21を真空封止した後、この石英アンプル21を成長炉内に挿入し、加熱して前記メルトを溶融する。(図7(c)を参照。)続いて、成長炉内の温度を一定の割合で降下させていき、成長開始の温度になった時、前記石英アンプル21を回転軸29に沿って180°回転させて、基板ホルダ23に載置された結晶成長用基板22が液体状態のメルトに接触するようにし、結晶成長を開始させる。(図7(d)を参照。)そして、所定の膜厚のエピタキシャル層が成長できた後、石英アンプル21を再び回転軸29に沿って180°回転させて図7(c)の状態に戻し、前記メルトを結晶成長用基板22の表面から除去することにより、成長を終了させる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7に示した従来の閉管式LPE成長装置を用いて結晶を行った場合、結晶成長用基板22及び基板ホルダ23の四辺の端部のうち、一方の二辺30a、30bの端部は図7(b)に示すように下部石英治具25の端面にて規制されているが、残りの二辺30c、30dの端部は図7(d)に示すように開放されているため、結晶成長用基板22の開放された端部において異常成長が起こりやすいという問題がある。
【0012】
すなわち、開放された端部では、結晶成長の際に前記端部よりも外側にあるメルトからも原料供給を受けるため、結晶成長用基板22の中央部に比べて表面端部における成長速度が大きくなり、エピタキシャル層の膜厚が外周部で厚い、U字型分布となってしまう。また、実際の装置では、結晶成長用基板22及び基板ホルダ23の加工精度の問題から結晶成長用基板22と基板ホルダ23の間に図示しない隙間が生じてしまうので、開放された端部ではこの隙間にメルトが侵入することに起因して結晶成長用基板22の側面からの結晶成長も起こりやすく、このこともエピタキシャル層のU字型膜厚分布の原因となってしまう。
【0013】
以上のように、従来の閉管式LPE成長装置を用いた場合、成長したエピタキシャル層の膜厚の均一性を確保することが困難であった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたもので、基板面内で良好な膜厚の均一性を有するエピタキシャル層を成長することを可能にする閉管式LPE成長装置、及び前記閉管式LPE成長装置を用いた化合物半導体のLPE成長方法を提供することを目的とする。
【0015】
本発明の閉管式LPE成長装置では、図7で示した従来の装置と異なり、正方形の表面(結晶成長面)を有する結晶成長用基板の外周部のうち、正方形の四辺の表面端部すべてを、開口部を有する側壁部により完全に被覆し、前記開口部内において前記成長用結晶基板の表面(結晶成長面)が表出するようにした構造となっている。この構造により、結晶成長用基板に開放された端部がなくなるので、従来のごとく、結晶成長用基板の端部において異常成長が起こり、成長したエピタキシャル層がU字型の膜厚分布となることを防止することができ、良好な膜厚の均一性を有するエピタキシャル層を形成することが可能となる。
【0016】
しかしながら、上記の本発明の閉管式LPE装置の構造には、前記開口部に、結晶成長用基板の基板面に対して垂直な側壁面が存在することに起因して、結晶成長用基板の表面端部においてエピタキシャル層の膜厚が減少するという短所がある。すなわち、結晶成長用基板の表面端部では、従来の装置における保持溝により挟持された端部の場合と同様に、結晶成長の際に前記側壁部の垂直な側壁面により原料供給に寄与できるメルトの領域が制限されるため、基板の端部に近づくにつれて約45°の傾斜を持ってエピタキシャル層の膜厚が減少してしまう。このため、上記の本発明の閉管式LPE装置の構造では、成長したエピタキシャル層の膜厚の均一性を従来に比べて大きく向上させることができるものの、より膜厚の均一性を向上させるために上記短所を解消することが望ましい。
【0017】
そこで、本発明の閉管式LPE成長装置では更に、前記側壁部の開口部に対して、前記結晶成長用基板の基板面と前記開口部の側壁面とのなす角度が90度以上になるように、テーパーを形成する。言い換えれば、側壁部に設けられた開口部の断面積が前記結晶成長用基板の表面に近づくにしたがって小さくなるように、前記開口部にテーパーを形成する。開口部にこのようなテーパー形状を設けることにより、結晶成長の際に結晶成長用基板の表面端部に対して原料供給を行うことができるメルトの領域を、従来の装置における開放された端部の場合と保持溝により挟持された端部の場合の中間程度に、適切に設定できる。このため、基板の端部においても基板の中央部と同等の成膜速度を得ることができるようになり、基板の端部まで良好な膜厚の均一性を有するエピタキシャル層を形成することが可能となる。
【0018】
ところで、LPE成長の場合、原理的に結晶成長用基板に液体状態の成長用溶液(メルト)を接触させて結晶成長させるため、従来より、成長終了時のメルト除去(ワイプ・オフ)において基板上にメルトが残留してしまうといった基本的問題が生じていた。基板上に残留メルトが発生すると、エピタキシャル成長層に結晶欠陥が発生し、デバイス不良の原因となる可能性がある。この点に関し、図7に示す従来の閉管式LPE成長装置では、結晶成長用基板22及び基板ホルダ23の四辺の端部のうち二辺30c、30dの端部が開放されているので、石英アンプル21を回転させたときにこの開放された端部よりメルトが流れ出すため、メルトが除去されやすい構造になっている。
【0019】
これに対し、本発明の閉管式LPE装置の構造では、上記述べたように、従来の装置に比べて成長したエピタキシャル層の膜厚の面内均一性を著しく向上させることができるが、その反面、結晶成長用基板の四辺すべてを側壁部により被覆しているため、基板上に残留メルトが発生することが懸念される。
【0020】
このため、本発明の閉管式LPE成長装置では、前記開口部の隅部に溝を設けるように構成する。このように溝を設けた構造とすることより、成長終了後、結晶成長用基板上からメルトを除去する際に基板から除去しきれないメルトがあっても、この残留分のメルトは前記溝に落とし込むことにより基板上から完全に除去することができるので、結晶成長用基板の上に残留メルトが発生するのを防止することが可能になる。
【0021】
また、本発明の閉管式LPE装置では、前記側壁部に設けられた開口部が石英アンプルの回転軸に対して傾斜するように構成する。この構造により、成長終了後、結晶成長用基板上からメルトを除去する際に、前記開口部の隅部においてメルトをその表面張力により1箇所に凝集させることができるので、メルトの除去が容易になり、結晶成長用基板上に残留メルトが発生するのを防止することが可能になる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1乃至図4は、それぞれ本発明の第1乃至第4の実施の形態を説明するための図である。図1乃至図4の中で同一のものは同一の記号で示してあり、1は石英アンプル(閉管)、2は結晶成長用基板、3は基板載置部(第1の石英治具)、4は側壁部(第2の石英治具)、5は成長用溶液(メルト)、6は成長用溶液(メルト)を収納する空洞、7は成長用溶液(メルト)載置部(第3の石英治具)、8は石英アンプル(閉管)の回転軸、9は側壁部4の開口部12に設けられたテーパー、10は側壁部4の開口部に設けられた溝、12は側壁部に設けられた開口部を表す。
【0023】
図1(a)は円筒形状を有する石英アンプル1の管軸に平行な面(図7(a)のA−A断面図に相当。)における断面図、図1(b)は石英アンプル1の管軸に垂直な面(図7(a)のB−B断面図に相当。)における断面図を表し、それぞれメルト5が充填された状態で示してある。図1(c)は石英アンプル1を図1(b)に示す状態から回転軸8に沿って180°回転した状態を表す図であり、結晶成長用基板2表面にメルト5を接触させて基板2表面にエピタキシャル層を形成する時の状態を示す。図2乃至図4は側壁部4の構造の詳細を表す拡大図であり、結晶成長用基板2の基板面に垂直な方向から見た図である。
【0024】
本発明の第一の実施の形態について図1を用いて説明する。まず、本発明の第1の実施の形態として、ティッピング式成長方法に用いる閉管式LPE成長装置について図1に示して説明する。石英アンプル1には内径35mm、厚さ2mmの石英ガラス製の閉管を用いる。結晶成長用基板2には25.0mm(縦)×25.0mm(横)×1.0mm(厚さ)の正方形平板状に加工した化合物半導体結晶を用いる。基板載置部3(第1の石英治具)、側壁部4(第2の石英治具)及び成長用溶液(メルト)載置部7(第3の石英治具)は1つの石英ムク棒より加工して形成する。石英ガラスはメルトとの濡れ性がよくないので、石英ガラス製のアンプル及び治具を用いることにより、結晶成長用基板上の残留メルトの発生を抑制することができる。
【0025】
まず、直径35mmの円筒形状を有する石英ムク棒を管軸を含む平面(第1の分割面)で1/2に分割する。分割した一方の石英ムク棒(第3の石英治具)には、中央部にメルトを収納するための空洞を形成する。この空洞は、前記第1の分割面に平行な面内で25mm(縦)×30mm(横)の長方形の断面を有するものであり、第1の分割面に垂直な方向には突き抜けの構造になっている。これによりメルト載置部7が形成される。
【0026】
また、分割した他方の石英ムク棒は、前記第1の分割面より高さ3.5mmのところで、第1の分割面に対して平行な平面(第2の分割面)で更に2つの部位に分割する。このうち、厚さ3.5mmの平板状に加工された部位(第2の石英治具)から側壁部4を形成し、残りの部位(第1の石英治具)から基板載置部3を形成する。まず、第1の石英治具には、前記第2の分割面側の中央部に結晶成長用基板2を載置するための凹部(25.1mm(縦)×25.1mm(横)×1.1mm(厚さ))を形成する。これにより基板載置部3が形成される。また、第2の石英治具には、中央部に24.8mm(縦)×24.8mm(横)の正方形の開口部12を形成する。これにより、結晶成長用基板2の表面端部を被覆し、基板2上の結晶成長領域を規定する開口部12を有する側壁部4が形成される。このとき、メルト載置部7の空洞6、基板載置部3の凹部、及び側壁部4の開口部12は、すべての中心が同一軸上に位置するように形成する。
【0027】
上記形成した、基板載置部3の凹部に結晶成長用基板2を載置し、その上から側壁部4を圧接して結晶成長用基板2を固定し、次いで前記側壁部4の表面にメルト載置部7を取り付ける。そして、これらを石英アンプル1内に挿入し、真空封止すると、図1(a)及び(b)に示す閉管式LPE成長装置が形成される。ここで、側壁部4の開口部12の大きさは結晶成長用基板2よりも若干(正方形の一辺の長さで0.2mm程度)小さくなっているため、側壁部4は結晶成長用基板2の外周部のすべてを被覆し、同時に側壁部4により結晶成長用基板2を固定することが可能になっている。そして、この構造により、結晶成長用基板2の表面端部にはすべて、基板面に対して垂直な、前記開口部12の側壁面が配置され、開放された端部が存在しないため、上記説明したように、結晶成長用基板2上に均一な膜厚分布を有するエピタキシャル層を形成することができる。
【0028】
次に、上記説明した本発明の第1の実施の形態の閉管式LPE成長装置を用いて、ティッピング式のLPE成長を行う方法について説明する。図1を用いて、水銀カドミウムテルル(Hg1-xCdxTe)を成長させる場合について説明する。結晶成長用基板2には、Cd0.97Zn0.03Te結晶を用い、25.0mm(縦)×25.0mm(横)×1.0mm(厚さ)の正方形平板状に加工したものを用いる。また、メルト5には、TeリッチであるHgCdTeメルトを50g用いる。このメルトは、各組成元素ごとに、成長させるエピタキシャル層の所定の組成比に応じて予め秤量して石英アンプル内に真空封止し、約600℃で50時間加熱して均一に合金化した後、冷却して形成した固体状のものである。ここでは、Hg:Cd:Te=0.1504:0.0099:0.8397のモル比で秤量して合金化した、実液相化温度480℃、実平衡組成比x=0.23、平衡Hg分圧0.08atm、平衡Te2分圧0.006atm、平衡Cd分圧5×10-9atmを有するHgCdTeメルトを用いる。
【0029】
まず、前記Cd0.97Zn0.03Te基板2にBr−メタノール液でエッチング処理を施し、この基板2を基板載置部3の凹部に載置した後、側壁部4により圧接して固定する。次いで、メルト載置部7に設けた空洞6に前記HgCdTeメルト5を載置し、Cd0.97Zn0.03Te基板2、HgCdTeメルト5、基板載置部3、側壁部4及びメルト載置部7を石英アンプル1に入れ、真空封止した後、成長炉(図示せず。)に挿入する。
【0030】
次に、前記成長炉を500℃に30分程度で昇温し、この状態に約1時間程度保持して空洞6内のメルト5を溶融する。(図1(b)を参照。)このとき、結晶成長用基板2も500℃の温度になるよう装置構造を設計しておく。この後、成長炉の温度を0.1℃/分の降温速度で温度を下げていく。そして、成長炉の温度が480℃になったとき、石英アンプル1を回転軸8を中心にして図1(b)の矢印の方向に180°回転させ、結晶成長用基板2にメルト5を接触させ、LPE結晶成長を開始させる。(図1(c)を参照。)このとき、メルト5及び結晶成長用基板2の温度が常に同一になるように装置構造を設計しておく。
【0031】
この状態で更に0.1℃/分の降温速度で温度を下げていき、成長開始時刻より46分後に、再び石英アンプル1を回転軸8を中心にして図1(c)の矢印の方向に180°回転させ、メルト5を結晶成長用基板2から除去し、結晶成長を終了させる。これで、表面組成x=0.22、膜厚30μm±1μmを有し、基板2の端部から1mmの領域まで組成が均一なエピタキシャル成長層が形成できる。
【0032】
ここで、成長終了後メルト5を石英アンプル1を回転させて除去する際に、予め基板2からほとんどのメルトが除去される回転角(図1(b)の状態から矢印の方向に約90°)を見積もっておき、この回転角において石英アンプル1の回転をいったん停止させるのが好ましい。このとき、メルトはその表面張力により1箇所に凝集する。そして、メルトが凝集するのを待った後、再度回転させることによりメルトを基板2から完全に除去するようにする。このときの石英アンプル1の停止時間は、およそ1分程度で充分である。このような石英アンプル1の回転方法を行うことにより、結晶成長用基板2上の残留メルトをより効果的に低減させることができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施の形態について図2を用いて説明する。第2の実施の形態では、 第1の実施の形態の装置構造に加えて、図2に示すように、側壁部4の開口部12にテーパー9を形成する。このテーパー9は、開口部12の側壁面と結晶成長用基板2の基板面とのなす角度αが90°以上で、かつ135°以下となるように形成するのが好ましい。このようなテーパー9を設ける側壁部4の高さは、前記第2の分割面より1mm程度で充分であり、残りの側壁部4では側壁面と基板面とのなす角度は通常どおり90°にすればよい。この構造により、上記説明したように、結晶成長の際に結晶成長用基板2の表面端部に対して原料供給を行うことができるメルトの領域を適切に制限できるため、結晶成長用基板2上に基板2の端部まで均一な膜厚分布を有するエピタキシャル層を形成することができる。
【0034】
ここで、図2に示すテーパー9の形状を開口部12の側壁面に一体的に加工することが困難である場合は、側壁部4を更に前記第1及び第2の分割面に平行な平面(第3の分割面)でテーパーを形成する部位と残りの部位とに分割し、テーパー形状の加工と通常の側壁面の加工とを別々に行うことも可能である。この場合、加工終了後、分割した2つの部位を再び第3の分割面で接続させて、一体の側壁部4として使用すればよい。
【0035】
また、第2の実施の形態の閉管式LPE成長装置を用いてLPE成長を行う場合は、第1の実施の形態の場合と同様に行えばよい。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態について図3を用いて説明する。第3の実施の形態では、第1の実施の形態の装置構造に加えて、図3に示すように、側壁部4に設けられた開口部12の隅部に溝10を形成する。この溝10は、例えば幅5mm、深さ3mmの大きさで形成した貫通溝である。この構造により、上記説明したように、成長終了後メルト5を除去する際に、除去しきれない分のメルトを前記溝10に落とし込むことができるので、結晶成長用基板2の表面から完全にメルトを除去することができ、残留メルトの発生を防止することができる。
【0037】
ここで、前記溝10を形成することにより結晶成長用基板2の表面端部のうち前記溝10を形成した部分が開放された状態になってしまうため、前記溝10を形成した部分において、従来のごとく異常成長により基板の端部でエピタキシャル層の膜厚が増加してしまう可能性が懸念される。しかしながら、前記溝10の側壁面も基板の表面端部を被覆する開口部12の側壁面と同等の役割を果たすことができるので、幅5mm程度の前記溝10に対応するエピタキシャル層の膜厚の増加は、実際にはほとんど無視できる程度のものである。
【0038】
また、第3の実施の形態の閉管式LPE成長装置を用いてLPE成長を行う場合は、第1の実施の形態の場合と同様に行えばよい。
【0039】
次に、本発明の第4の実施の形態について図4を用いて説明する。第4の実施の形態では、第1の実施の形態の装置構造に加えて、図4に示すように、側壁部4に形成する開口部12を石英アンプル1の回転軸8に対して傾斜させるように構成する。この傾斜の角度θは、0°以上かつ45°以下になるように構成することが好ましい。この構造によって、上記説明したように、成長終了後メルト5を除去する際に石英アンプル1を回転軸8を中心にして回転させたとき、前記開口部12の正方形の隅部において、メルトをその表面張力により1箇所に凝集させることができる。このため、メルトの除去が容易になり、結晶成長用基板2上に残留メルトが発生するのを防止することが可能になる。
【0040】
更にこのとき、第1の実施の形態で説明したのと同様に、石英アンプル1を回転軸8を中心にしておよそ90°程度回転させた後いったん停止させることにより、表面張力によるメルトの凝集が促進されることとなるので、よりメルトの除去が容易になり、残留メルトの低減がより促進される。
【0041】
また、第4の実施の形態の閉管式LPE成長装置を用いてLPE成長を行う場合は、第1の実施の形態の場合と同様に行えばよい。
【0042】
一方、側壁部4の開口部12の構造については、上述の第2乃至第4の実施の形態において述べた構造のほかに、これらの構造を適宜組み合せたものを用いることができることはもちろんである。すなわち、前記側壁部4に前記テーパー9及び前記溝10を設けたものを図5(a)に、前記側壁部4に前記テーパー9を設け、かつ側壁部4に設けた開口部12を傾斜させたものを図5(b)に示す。また、前記開口部12に前記溝10を設け、かつ側壁部4に設けた開口部12を傾斜させたものを図6(a)に、前記開口部12に前記テーパー9及び前記溝10を設け、かつ側壁部4に設けた開口部12を傾斜させたものを図6(b)に示す。これらの構造により、各々、上述の第2乃至第4の実施の形態において述べた本発明の閉管式LPE装置に特有の効果の中から、複数の効果を同時に得ることが可能になる。尚、図5及び図6において、図1乃至図4で示したものと同一のものは同一の記号で示してある。
【0043】
また、上述の第1乃至第4の実施の形態では、結晶成長用基板としてCd0.97Zn0.03Te結晶を用い、その上に組成比x=0.22を有する水銀カドミウムテルル(Hg1-xCdxTe)を成長させる場合を示したが、本発明はこれらの物質に限定されるものではない。上記以外の組成比xを有する水銀カドミウムテルル(Hg1-xCdxTe)を成長させることができることはもちろん、エピタキシャル成長を行う物質として、水銀亜鉛テルル(Hg1-xZnxTe)又は水銀カドミウム亜鉛テルル(Hg1-x(Cd1-yZny)xTe)を用いることができる。結晶成長用基板として、CdTe、Cd1-xZnxTe、又は、シリコン又はサファイアからなる基板上にこれらの結晶のうちの1つを成長させたものを用いることができる。
【0044】
また、エピタキシャル成長を行う物質としては、一般にA1-xBxC形の化学式で示される物質であって、AがHg、BがCd、Mn、Zn、Fe及びCのいずれか1つの元素、CがTe、Se及びSのいずれか1つの元素である三元の化合物半導体結晶を用いることもでき、また、前記A、B及びCの元素よりなる四元以上の化合物半導体結晶も用いることも可能である。結晶成長用基板としてはCdTe、Cd1-xZnxTe、Cd1-xTexSe、及びCd1-xMnxTeを用いることもでき、シリコン、サファイア、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、ガリウム砒素、及びAlMgO4のいずれか1つからなる基板の上にこれらの結晶のうちの1つを成長させたものを用いることも可能である。
【0045】
更に本発明は、3−5族及び2−6族等の三元以上の多元化合物半導体結晶のLPE成長であって、特にHg、As、Pなどの蒸気圧の高い元素が組成の中に含まれる場合に用いることが有効である。
【0046】
また、上述の第1乃至第4の実施の形態では、アンプル(閉管)1、及び基板載置部3、側壁部4、メルト載置部7といったアンプル内に封入する治具は、すべて石英ガラス製のものを用いたが、代わりに表面にガラス化処理を施したカーボン材料、pBN、及びSiC膜を表面にコーティングしたカーボン材料のいずれか1種、又はこれらを複数組み合せた材料で形成することができる。
【0047】
最後に、上述の第1乃至第4の実施の形態では、石英アンプル(閉管)を回転させることにより結晶成長用基板とメルトを接触させるティッピング式のLPE成長の場合について説明したが、本発明の閉管式LPE成長装置及び成長方法は、石英アンプル(閉管)を傾斜させることにより結晶成長用基板とメルトを接触させるネルソン式や、石英アンプル(閉管)内で結晶成長用基板をメルトに浸せきさせるディッピング式に対しても適用することができる。
【0048】
更に付言すれば、本発明には以下に示す事項も含まれる。
付記:
(1)前記結晶成長用基板及び前記側壁部を1つの回転軸を中心に回転させることにより前記結晶成長用基板から前記成長用溶液を除去する液晶エピタキシャル成長方法であって、
前記結晶用基板上から前記結晶用溶液が除去される回転角で前記結晶用成長基板の回転をいったん停止させ、前記結晶用溶液をその表面張力により一箇所に凝集させた後、再び前記成長用結晶基板を回転させて、前記結晶成長用基板から前記結晶成長用溶液を除去することを特徴とする請求項4記載の液晶エピタキシャル成長方法。
【0049】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、化合物半導体のLPE成長に関し、結晶成長用基板の外周部のすべての端部を、開口部を有する側壁部で被覆するので、結晶成長用基板の表面端部で異常成長が起こり、成長したエピタキシャル層がU字型の膜厚分布になることを防止することができる。従って、本発明は、良好な膜厚の均一性を有する化合物半導体のエピタキシャル層を形成することが可能となり、係る化合物半導体のLPE成長装置の性能向上、及び化合物半導体のLPE成長方法の発展に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態を説明するための構成図
【図2】 本発明の第2の実施の形態を説明するための構成図
【図3】 本発明の第3の実施の形態を説明するための構成図
【図4】 本発明の第4の実施の形態を説明するための構成図
【図5】 本発明のその他の実施の形態を説明するための構成図(その1)
【図6】 本発明のその他の実施の形態を説明するための構成図(その2)
【図7】 ティッピング式成長方法に用いる従来の閉管式LPE成長装置を示す構成図
【符号の説明】
1 石英アンプル(閉管)、
2 結晶成長用基板、
3 基板載置部(第1の石英治具)、
4 側壁部(第2の石英治具)、
5 成長用溶液(メルト)、
6 空洞部、
7 成長用溶液(メルト)載置部(第3の石英治具)、
8 石英アンプル(閉管)の回転軸、
9 テーパー、
10 溝、
12 開口部
21 石英アンプル(閉管)、
22 結晶成長用基板、
23 基板ホルダ、
24 基板固定用上部石英治具、
25 基板固定用下部石英治具、
26 保持溝、
27 成長用溶液(メルト)、
28 成長用溶液(メルト)収納部、
29 石英アンプル(閉管)の回転軸
30 結晶成長用基板の端部
Claims (5)
- 結晶成長用基板の表面がその外周部全域に渡って当接される開口部を有し、前記開口部内において前記結晶成長用基板の表面が表出するように構成された側壁部を備えたことを特徴とする液相エピタキシャル成長装置。
- 前記開口部の断面積が前記結晶成長用基板の表面に近づくにつれて小さくなるように前記開口部の断面にテーパーを設けたことを特徴とする請求項1 記載の液相エピタキシャル成長装置。
- 前記開口部の隅部に残留成長用溶液を除去するための溝を設けたことを特徴とする請求項1記載の液相エピタキシャル成長装置。
- 前記結晶成長用基板及び前記側壁部が1つの回転軸を中心に回転可能に構成された液相エピタキシャル成長装置であって、
前記開口部の外周を構成する辺が前記回転軸に対して平行にならないように構成したことを特徴とする請求項1記載の液相エピタキシャル成長装置。 - 請求項1乃至4記載の液相エピタキシャル成長装置を用い、
前記結晶成長用基板及び成長用溶液を加熱して高温に保持し、
次いで前記結晶成長用基板及び前記成長用溶液の温度を下降させながら、前記成長用溶液を前記結晶成長用基板に接触させることにより、
前記開口部内の前記結晶成長用基板の表面上にエピタキシャル層を成長させることを特徴とする液晶エピタキシャル成長方法。
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