JP4870115B2 - 液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルム、液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は液晶パネルのガラス基板への接着に有用な液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムに関する。さらには前記粘着型光学フィルムを用いた液晶表示装置に関する。前記光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、防眩シートまたはこれらが複数積層されているものがあげられる。
従来感圧性接着シートは、紙、ダンボール、プラスチック材料、木材、金属などの種々の被着体への接着、固定などに広く使用されている。その中でもアクリル系粘着剤は、その優れた接着特性、耐候性などの点から従来のゴム系粘着剤に代わり広く普及してきた。アクリル系粘着剤には主として、溶剤型のアクリル系粘着剤が用いられてきたが、これら溶剤型アクリル系粘着剤は有機溶媒中で合成されるため、塗工時の溶剤の揮発が環境的に問題があり、水分散型のアクリル系粘着剤への転換が図られている。
水分散型のアクリル系粘着剤を用いた粘着シートは、溶剤を用いないため、環境衛生上望ましく、耐溶剤性の点でも優れるなどの利点を有している。一般に、この粘着シートは、粘着剤層の保持力等に影響を及ぼす溶剤不溶分を調整するため、アクリル系モノマーを主成分とする単量体混合物の重合終了後に架橋剤を添加して粘着剤組成物を調製し、これを基材上に塗布することにより製造している。しかしながら、このようにして得られた粘着シートでは、ガラス板に対して高い接着力を得ることが困難であり、これまで満足いく特性は得られていなかった。
また近年、新しい表示装置として液晶ディスプレイが普及してきている。液晶ディスプレイは、その画像形成方式から液晶パネルの最表面を形成するガラス基板の両側に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光フィルムが液晶パネルの最表面に貼着されている。また液晶パネルの最表面には偏光フィルムの他に、ディスプレイの表示品位を向上させるために様々な光学素子が用いられるようになってきている。例えば、着色防止としての相差フィルム、液晶ディスプレイの視野角を改善するための視野角拡大フィルム、さらにはディスプレイのコントラストを高めるための輝度向上フィルム等が用いられる。これらのフィルムは総称して光学フィルムと呼ばれる。
前記光学フィルムを液晶パネルの最表面に貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、光学フィルムを液晶パネルの最表面に瞬時に固定できること、光学フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないこと等のメリットを有することから、粘着剤は、光学フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられている。すなわち、液晶パネルの最表面への光学フィルムの貼着には粘着型光学フィルムが一般的に用いられる。前記粘着剤としては、接着性、透明性、耐候性などの点で優れているアクリル系粘着剤が多用されている。
また前記光学フィルム用粘着剤には、貼合せ(リワーク)が可能であるという特性が要求される場合がある。これは光学フィルムを液晶パネルの最表面に貼り合わせる際、貼り合わせ位置を誤ったり、貼合せ面に異物が噛み込むことが多く、このような場合にも光学フィルムを液晶パネル最表面から剥離し、再度貼り合わせを可能とするため要求される特性である。なお、この場合液晶パネルは高価であるため再利用するが、比較的安価である光学フィルムは廃棄される。
前記リワーク性については、液晶パネルの最表面のガラス基板に対する接着力がより低いことが必要である。しかし液晶ディスプレイが計測器、電子時計やテレビ、さらには車載用の機器などの種々の分野に普及して、過酷な条件下で使用される機会が増大するにつれて、光学フィルムと液晶パネルとの粘着剤層を介した接着が高温多湿の雰囲気下での使用に十分耐える接着力を有することが要求されている。したがって、貼り付け初期はリワーク可能な程度に接着力が低く、その後は高温多湿の雰囲気においても、粘着剤層と液晶セルとの界面で浮きや剥離を生じたりすることのないよう強固に接着する粘着剤が望まれている。
特開平07−26229号公報 特開2001−55550号公報
従って本発明の目的は、経時で接着力が上昇し強固に接着する、アクリル系の水分散型粘着剤による粘着剤層が積層されている液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルム、及び当該粘着型光学フィルムが液晶パネルのガラス基板面に粘着剤層を介して配置されてなる液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、水分散型の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物において、シラン系単量体と水系で共重合して得られる水分散物を含有する水分散型粘着剤が、経日で接着力が上昇して強固な接合力が発現するという知見を得、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物とシラン系単量体をエマルション重合して得られる水分散物からなる水分散型粘着剤を粘着剤層として光学フィルム上の少なくとも片面に設けた液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムであって、単量体混合物100重量部に対してシラン系単量体0.005〜1重量部を含み、ガラス板被着体に貼着後、70℃、20%RH、7日保存後の接着力が初期値の1.5倍以上であることを特徴とする液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルム(請求項1)に係るものである。
また本発明は、当該粘着型光学フィルムが液晶パネルのガラス基板面に粘着剤層を介して配置されてなる液晶表示装置(請求項2)に係るものである。
本発明によれば、水分散型の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物にシラン系単量体を添加し水系で共重合して得られる水分散物を含有する水分散型粘着剤を粘着剤層として光学フィルム上に設けた液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムとすることにより、ガラス板被着体に対し経時で接着力が上昇し強固に接着する液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムを提供することができる。さらに高温多湿の雰囲気下でも粘着剤層と液晶セルとの界面で浮きや剥離を生じたりすることのない、耐熱性および耐湿性に優れた粘着型光学フィルムおよび液晶表示装置を提供することができる。
本発明は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物とシラン系単量体をエマルション重合して得られる水分散物からなる水分散型粘着剤を粘着剤層として光学フィルム上の少なくとも片面に設けた液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムである。
本発明において主構成単量体として用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、一般式(1)
CH2=C(R1)COOR2 (1)
(式中、R1は水素原子又はメチル基、R2は炭素数2〜14のアルキル基を示す)で表される化合物が挙げられる。
前記R2として、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基などが例示できる。なかでも、R2として、ブチル基、2−エチルヘキシル基などの炭素数2〜10のアルキル基が好ましい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独でまたは2種以上混合して使用できる。例えば、アクリル酸アルキルエステルとして、アクリル酸ブチル単独、又はアクリル酸ブチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとを組み合わせて使用できる。この場合、アクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとの割合は、前者/後者=0/100〜55/45(例えば、5/95〜60/40)程度である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物中の該(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、上記(メタ)アクリル酸C2-14アルキルエステル]の比率は、一般に80重量%以上(例えば80〜99.8重量%程度)、好ましくは85重量%以上(例えば85〜99.5重量%程度)、さらに好ましくは90重量%以上(例えば90〜99重量%程度)である。
前記単量体混合物は、熱架橋するための架橋点を導入するため、通常、官能基含有単量体(熱架橋性官能基含有単量体)を含んでいる。該官能基含有単量体をコモノマー成分として用いることにより被着体に対する接着力も向上する。
前記官能基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有単量体又はその酸無水物;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸などのカルボキシル基含有単量体又はその酸無水物などが好ましい。上記の官能基含有単量体は1種または2種以上使用することができる。
上記官能基含有単量体の使用量は、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に対して、例えば0.5〜12重量部、好ましくは1〜8重量部程度である。
また、前記単量体混合物には、凝集力等の特性を高めるため、必要に応じて、その他の共重合性単量体が含まれていてもよい。このような共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル:酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;シクロペンチルジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類などが挙げられる。これらの共重合性単量体も1種または2種以上使用できる。
本発明において、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合されるシラン系単量体としては、ケイ素原子を有する重合性化合物であれば特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルに対する共重合性に優れている点で(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン誘導体などの(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物が好ましい。シラン系単量体としては、例えば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらのシラン系単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
また、上記以外に、共重合可能なシラン系単量体として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなども使用できる。
シラン系単量体の量は前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの種類や用途などに応じて適宜選択できるが、シラン系単量体の共重合量が、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物(シラン系単量体を除く)100重量部に対して、1重量部を超えると接着できない程度まで粘着力が低下する場合があり、また0.005重量部未満ではポリマー強度の不足で凝集力が低下しやすくなる。従って、本発明では、前記単量体混合物(シラン系単量体を除く)100重量部に対するシラン系単量体の量は、0.005〜1重量部であり、好ましくは0.01〜0.5重量部であり、更に好ましくは0.03〜0.1重量部の範囲である。
本発明では、粘着剤の用途に応じて架橋剤を用いることができる。前記架橋剤としては、通常用いる架橋剤を使用することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤は、油溶性及び水溶性の何れであってもよい。
本発明の水分散型粘着剤組成物は、例えば、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし且つシラン系単量体を含む単量体混合物を慣用の乳化重合に付して、(メタ)アクリル酸エステル共重合体の水分散液を得、これに必要に応じて前記架橋剤を添加することにより調製できる。
重合方法としては、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などを採用でき、重合温度は、例えば20〜100℃程度である。
重合に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせなどのレドックス系開始剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。重合開始剤の使用量は、モノマーの総量100重量部に対して、例えば0.005〜1重量部程度である。
また、重合には連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、慣用の連鎖移動剤、例えば、ドデカンチオール等のメルカプタン類等が例示できる。連鎖移動剤の使用量は、モノマーの総量100重量部に対して、例えば0.001〜0.5重量部程度である。
また、乳化剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などを使用できる。これらの乳化剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乳化剤の使用量は、モノマーの総量100重量部に対して、例えば0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部程度である。
なお、水分散型粘着剤組成物は、上記方法のほか、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体を乳化重合以外の方法で得た後、必要に応じて前記架橋剤を添加し、乳化剤により水に分散させて調製してもよい。
本発明の水分散型粘着剤組成物には、粘着付与成分を混合することもできる。混合できる粘着付与成分としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂およびエラストマーなどを挙げることができる。
水分散型粘着剤組成物には、その他、必要に応じて、pHを調整するための塩基(アンモニア水など)や酸、粘着剤に通常使用される添加剤、例えば、界面活性剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤などが添加されていてもよい。
本発明の液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムは、上記水分散型粘着剤組成物を粘着剤層として光学フィルム上の少なくとも片面に設けた粘着型光学フィルムである。基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム;クラフト紙などの紙;金属箔などを使用できる。前記プラスチックフィルムは、無延伸フィルム及び延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムの何れであってもよい。また、基材のうち粘着剤を塗布する面には、通常使用される下塗剤やコロナ放電方式などによる表面処理が施されていてもよい。基材の厚みは、目的に応じて適宜選択できるが、一般には10〜500μm程度である。またその形状はテープ状、シート状、フィルム状など、任意の形状に加工して使用することができる。
水分散型粘着剤組成物の塗布は、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いて行うことができる。前記水分散型粘着剤組成物は、乾燥後の粘着剤層の厚みが、例えば10〜100μm程度となるように塗布される。
本発明の液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムは、ガラス板被着体に対する接着力が、ガラス板被着体に貼着後、70℃、20%RH、7日保存後の接着力が初期値の1.5倍以上、好ましくは1.7倍以上(通常10倍以下)であることを特徴とする。ここで接着力の初期値とは、ガラス板被着体に貼着後、23℃下に30分放置した後に測定した接着力をいう。
経日での接着力が初期値の1.5倍以上、好ましくは1.7倍以上(通常10倍以下)と設定することで、経時でより強固に接着することができ、高温多湿の雰囲気下での使用においても、接着力が上昇するため浮きや剥がれなどを生じることはない。
本発明の液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムにおいて、特に高い接着力が要求される用途に使用する場合は、ガラス板被着体に対する初期の接着力を15N/20mm以上、好ましくは17N/20mm以上(通常30N/20mm以下)とすることが望ましい。ガラス板被着体に対する初期の接着力を15N/20mm以上とし、経日での接着力が初期値より1.3倍以上であれば、初期よりガラス板被着体に対して十分な接着力を示し、さらに経日でより強固に接着させることができる。
一方、リワーク性が要求されるような用途に使用する場合は、初期は仮止め程度の弱い接着力が要求される。このためガラス板被着体に対する初期の接着力を4N/20mm〜10N/20mm程度、好ましくは5N/20mm〜9N/20mm程度とすることが望ましい。この様に設定することで貼り付け初期はリワーク可能な程度に接着力が低く、その後は接着力が上昇し、高温多湿の雰囲気においても、粘着剤層と液晶セルとの界面で浮きや剥離を生じたりすることのないよう強固に接着することができる。
本発明においては、上記粘着シートの支持体として光学フィルムを用いることを特徴とする液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルム、及び粘着型光学フィルムが液晶パネルのガラス基板面に粘着剤層を介して配置されてなる液晶表示装置を提供する。
本発明の粘着型光学フィルムは、図1に示すように、光学フィルム1に前記ガラス板用水分散型粘着剤による粘着剤層2が設けられている。また、粘着剤層2には離型シート3を設けることができる。
光学フィルム1としては液晶表示装置等の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。たとえば、光学フィルムとしては偏光フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルムまたは防眩シート等があげられる。
偏光フィルムを構成する偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、たとえば、ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン系配向フィルム等があげられる。偏光子の厚さも特に制限されないが、5〜80μm程度が一般的である。
前記偏光子の片面または両面には、透明保護層を耐水性等の目的で、ポリマーによる塗布層として、またはフィルムのラミネート層等として設けることができる。透明保護層を形成する、透明ポリマーまたはフィルム材料としては、適宜な透明材料を用いうるが、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮断性などに優れるものが好ましく用いられる。透明保護層の厚さは特に制限されないが、10〜300μm程度が一般的である。
前記透明保護層を形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、二酢酸セルロースや三酢酸セルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、あるいは前記ポリマーのブレンド物なども前記透明保護層を形成するポリマーの例としてあげられる。
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムや液晶ポリマーフィルムなどがあげられる。位相差フィルムの厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。位相差板は、二層以上の延伸フィルムの重畳体などとして形成して位相差等の光学特性を制御したものとして形成することもでき、着色防止や視角範囲の拡大等を目的に液晶セルの位相差を補償するためなどに偏光フィルムと積層してなる楕円偏光フィルムとして用いることもできる。
高分子素材としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これら高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
液晶性ポリマーとしては、たとえば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどがあげられる。主鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶性ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これら液晶性ポリマーは、たとえば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
前記偏光フィルム、位相差フィルムは積層して用いることもでき反射型偏光フィルム、半透過層型偏光フィルム、偏光分離偏光フィルム等とすることができる。また、前記例示の光学フィルムは、光学補償フィルム、その他の各種視野角拡大フィルムとして使用することもでき、さらには光学フィルムとしては、輝度向上フィルム等があげられる。また偏光フィルムは、表面上に微細凹凸構造の反射層を設けて防眩シートとすることもできる。
粘着剤層2の形成は、液晶パネルのガラス基板に貼着する光学フィルム1の片面に行う。形成方法としては、特に制限されず前述の方法を用いることができ、光学フィルム1に粘着剤組成物(水分散液)を塗布し乾燥する方法、粘着剤層2を設けた離型シート3により転写する方法等があげられる。粘着剤層2(乾燥膜厚)は厚さ、特に限定されないが、10〜40μm程度とするのが好ましい。
なお、離型シート3の構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等があげられる。離型シート3の表面には、粘着剤層2からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理な剥離処理が施されていても良い。
このようにして得られる光学フィルムを、液晶パネルのガラス基板面に、粘着剤層を介して配置することにより、液晶表示装置を製造することができる。この際、粘着剤層を有する光学フィルムを2種以上積層してもよい。また液晶表示装置は、光学フィルムと液晶セルとの間に粘着剤を直接塗着して、単層または積層構造の粘着剤層を設ける方法で形成してもよい。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器を用い、アクリル酸ブチル90部、アクリル酸2−エチルヘキシル10部、アクリル酸3部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン株式会社製『KBE−503』)0.06部、ドデカンチオール(連鎖移動剤)0.05部、2,2′−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]]ジヒドロクロライド(開始剤)0.1部を、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)1.5部を添加した水100部に加えて乳化重合したのち、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。これに水分散液の固形部100部に対し粘着付与剤としてロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製『スーパーエステルE−100』)を固形分で30部加え、水分散型粘着剤を得た。これを厚さ40μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、120℃で3分乾燥し、厚さ50μmの粘着剤層を付設して粘着シートを作製した。なおこの時の溶剤不溶分は42%であった。
実施例2
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン株式会社製『KBE−503』)の配合量を0.04部とした以外は実施例1と同様の配合で乳化重合を行ない、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。これに水分散液の固形部100部に対し架橋剤としてトリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート0.07部と粘着付与剤としてロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製『スーパーエステルE−100』)を固形分で30部加え、水分散型粘着剤を得た。これを実施例1と同様にして粘着シートを作製した。なおこの時の溶剤不溶分は45%であった。
実施例3
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン株式会社製『KBE−503』)の配合量を0.02部とした以外は実施例1と同様の配合で乳化重合を行ない、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。これに水分散液の固形部100部に対し架橋剤としてトリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート0.13部と粘着付与剤としてロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製『スーパーエステルE−100』)を固形分で30部加え、水分散型粘着剤を得た。これを実施例1と同様にして粘着シートを作製した。なおこの時の溶剤不溶分は42%であった。
比較例1
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランを加えず、その他は実施例1と同様の配合で乳化重合を行ない、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。これに水分散液の固形部100部に対し架橋剤としてトリス(エポキシプロピル)イソシアヌレート0.14部と粘着付与剤としてロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製『スーパーエステルE−100』)を固形分で30部加え、水分散型粘着剤を得た。これを実施例1と同様にして粘着シートを作製した。なおこの時の溶剤不溶分は42%であった。
比較例2
3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン株式会社製『KBE−503』)の配合量を1.2部とした以外は実施例1と同様の配合で乳化重合を行ない、10重量%アンモニウム水を添加してpH8に調整した。これに水分散液の固形部100部に対し粘着付与剤としてロジン系樹脂(荒川化学工業株式会社製『スーパーエステルE−100』)を固形分で30部加え、水分散型粘着剤を得た。これを実施例1と同様にして粘着シートを作製した。なおこの時の溶剤不溶分は90%であった。
以上の実施例1〜3および比較例1、2で得た粘着剤及び粘着シートについて次の特性を調べた。結果を表1に示す。
(溶剤不溶分)
実施例および比較例の水分散型粘着剤を剥離ライナー上に塗工し、実施例と同様の乾燥条件で乾燥し粘着剤とした。この粘着剤より、所定量(約0.1g)の試料を精秤し(そのうち不揮発分の重量をW1mgとする)、これを酢酸エチル約40g中に室温で1週間浸漬した後、不溶物を取り出し、この不溶物を100℃で2時間乾燥させて重量(W2mg)を測定し、下記式溶剤不溶分(重量%)=(W2/W1)×100に従って算出した。
(接着力)
PETフィルムに塗工した粘着シートを20mm×100mmの大きさにカットした後、ガラス板に重さ2kg重のゴムローラーを1往復させる方法にて貼り合わせ、23℃下に30分放置後、23℃、65%RH雰囲気中にて接着力の測定を行い、これを初期値とした。また貼り合わせ後、70℃、20%RHで7日間放置後、23℃、65%RH雰囲気中にて接着力の測定を行い、これを経日での測定値とした。測定はサンプルを引張試験機にて180°の剥離角度、300mm/分の剥離速度で行った。
(加湿試験)
粘着型偏光フィルムを200mm×150mmの大きさにカットした後、剥離紙を剥離してから、ガラス板上に貼り合わせ、50℃×0.5Mpaの雰囲気下に15分放置した。このサンプルを60℃/90%R.H.の雰囲気下に500時間放置したときの、浮き、剥がれ等の不具合が発生していないかどうかを目視により確認した。不具合が発生している場合を○、発生していない場合を×とした。
実施例から明らかなように、本発明の液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムは、ガラス板被着体に貼着後、70℃、20%RH、7日保存後の接着力が初期値の1.5倍以上であって、さらに接着力の初期値が15N/20mm以上であり、高温多湿の雰囲気下でも粘着剤層とガラス基板との界面で浮きや剥がれを生じたりすることのない、優れた耐熱性および耐湿性を示すことがわかる。これに対し粘着剤中にシラン系単量体を全く含まない比較例1は、経日での接着力の上昇が不十分であり、またシラン系単量体を特定値以上含ませた比較例2では、架橋度が高いため経日での接着力の上昇が不十分であって、高温多湿の雰囲気下では粘着剤層とガラス基板との界面で浮きや剥がれを生じてしまった。
本発明の粘着型光学フィルムの断面図である。
符号の説明
1 光学フィルム
2 粘着層
3 離型シート

Claims (2)

  1. 少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体混合物とシラン系単量体をエマルション重合して得られる水分散物からなる水分散型粘着剤を粘着剤層として光学フィルム上の少なくとも片面に設けた液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルムであって、
    単量体混合物100重量部に対してシラン系単量体0.005〜1重量部を含み、ガラス板被着体に貼着後、70℃、20%RH、7日保存後の接着力が初期値の1.5倍以上であることを特徴とする液晶パネルのガラス基板貼着用の粘着型光学フィルム。
  2. 請求項1に記載の粘着型光学フィルムが液晶パネルのガラス基板面に粘着剤層を介して配置されてなる液晶表示装置。

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