JP4866139B2 - 天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法 - Google Patents

天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、合成ガス製造工程と、フィッシャートロプッシュ油製造工程と、アップグレーディング工程とを有する天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法に関する。
天然ガスから合成ガスを製造する合成ガス製造工程、合成ガスをフィッシャートロプッシュ反応させ重質炭化水素を生成するフィッシャートロプッシュ工程、重質炭化水素を水素化精製して製品燃料油を製造するアップグレーディング工程を有してなる天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおいては、最終目的製品が灯軽油であるために、アップグレーディング工程で灯軽油以外の副産物として分離生成されるLPGやナフサ等の軽質炭化水素はその性状からして付加価値が低く、例えば、軽質炭化水素として再製品化を図るのか、あるいは既存プロセスの原料として利用するのかは、市場価値、経済性など様々な要素を加味して判断されているのが実状であると言える。
ところで、天然ガスからの灯軽油製造プロセスでは付加価値が低い副産物である軽質炭化水素を、再度、プロセス中に取り込んで原料として再利用することができれば、原料原単位を上げることが出来、経済的に有利になると思われる。しかしながら、具体的にプロセスとしてどのようにして処理すべきかを提案している技術は未だ存在していないのが現状である。
特開2000−104078号公報
このような実状のもとに本発明は創案されたものであって、その目的は、天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおいて、付加価値が低い副産物である軽質炭化水素の具体的な再利用化を図り、原料原単位を上げることのできる新規な合成ガスの製造方法を提供することにある。
このような課題を解決するために、本発明の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法は、天然ガスとスチーム及び/又は二酸化炭素との改質反応により合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、前記合成ガスをフィッシャートロプッシュ反応させた後、フィッシャートロプッシュ反応生成物からガス状生成物を分離してフィッシャートロプッシュ油を製造するフィッシャートロプッシュ油製造工程と、前記フィッシャートロプッシュ油を水素化精製し、得られた水素化精製物を蒸留して軽質炭化水素と、最終製品である灯軽油とに分離するアップグレーディング工程と、を有する天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおいて、前記アップグレーディング工程において蒸留により分離されたLPGとナフサを主成分として含む軽質炭化水素の一部または全部を、合成ガス製造用原料として、前記合成ガス製造工程に循環使用してなるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記合成ガス製造工程において、天然ガスと循環使用される軽質炭化水素との混合原料における炭化水素由来の炭素モル数をCで表わしたとき、炭素1モル当たりのH2O/C(モル比)が0.0〜3.0及び/又はCO2/C(モル比)が0.0〜1.0の範囲内にあるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記合成ガス製造工程において、供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対して、循環使用される軽質炭化水素中の炭素原子数の割合が10〜35%となるように設定される。
また、本発明の好ましい態様として、前記合成ガス製造工程において、供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対して、最終製品である灯軽油中の炭素原子数の割合が60〜80%となるように前記軽質炭化水素のリサイクル割合が設定される。
また、本発明の好ましい態様として、前記合成ガス製造工程において、触媒層の出口温度が800〜950℃、触媒層出口圧力が1.5〜3.0MPaG、GHSV(gas hourly space velocity)が500〜5000hr-1となるように設定される。
また、本発明の好ましい態様として、前記合成ガス製造工程において、天然ガス原料として供給される炭化水素原料ガスがメタンを主成分とする炭素数1〜6の炭化水素であるように構成される。
本発明は、天然ガスとスチーム及び/又は二酸化炭素との改質反応により合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、前記合成ガスをフィッシャートロプッシュ反応させた後、フィッシャートロプッシュ反応生成物からガス状生成物を分離してフィッシャートロプッシュ油を製造するフィッシャートロプッシュ油製造工程と、前記フィッシャートロプッシュ油を水素化精製し、得られた水素化精製物を蒸留して軽質炭化水素と、最終製品である灯軽油とに分離するアップグレーディング工程と、を有する天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおいて、前記アップグレーディング工程において蒸留により分離された軽質炭化水素を、合成ガス製造用原料として、前記合成ガス製造工程に循環使用してなるように構成しているので、天然ガスからの灯軽油製造プロセスでは、付加価値が低い副産物である軽質炭化水素の具体的な再利用化を図り、原料原単位を上げることができるという極めて優れた効果が発現する。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、天然ガスから灯軽油を目的生成物(製品)として製造するプロセスにおける合成ガスの製造方法に関するものである。
図1は、本発明の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法を示すスキームである。
天然ガスからの灯軽油製造プロセスは、図1に示されるように合成ガス製造工程10と、フィッシャートロプッシュ油製造工程(FT合成工程)20と、アップグレーディング工程30と、を有して構成されている。
このような天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおいて、本発明の要部は、アップグレーディング工程30において蒸留により分離された軽質炭化水素を、合成ガス製造用原料として、合成ガス製造工程に循環使用(リサイクル)するように構成している点にある。軽質炭化水素の循環(リサイクル)工程の状態が図1における符号40で示されている。
なお、軽質炭化水素の循環(リサイクル)先をフィッシャートロプッシュ油製造工程(FT合成工程)20とした場合には、循環炭化水素は原料となり得ず、また、合成ガス分圧が低下し、結果としてフィッシャートロプッシュ合成の反応率が低下してしまうという不都合が生じてしまい、好ましくない。
まず、最初に、本発明における天然ガスからの灯軽油製造プロセスを構成している各工程について詳細に説明する。
〔合成ガス製造工程〕
合成ガス製造工程は、原料として供給される天然ガスとスチーム及び/又は二酸化炭素との改質反応(リフォーミング反応)により合成ガス(COおよびH2)を製造するための工程である。すなわち、メタンを主成分として含む炭化水素原料ガスを原料として、合成ガス製造用触媒の存在下にスチーム(H2O)および/または二酸化炭素(CO2)リフォーミングによってCOとH2とを主成分とする合成ガスを製造する工程である。
ただし、本発明においては、原料として供給される天然ガスに加えて、上述のごとくアップグレーディング工程30により分離された軽質炭化水素が、合成ガス製造工程にリサイクルされて合成ガス製造用原料として加わっている(図1における軽質炭化水素の循環(リサイクル)工程40を参照)。そのため、リサイクルされる軽質炭化水素をも含めた合成ガス製造工程のさらに必要な追加説明は、後述するアップグレーディング工程30の後に、詳述することとする。
改質反応に用いられる合成ガス製造用触媒についての説明
合成ガス製造用触媒は、基材となる担体(キャリアー)と、この担体に担持された触媒金属を有している。
担体としては、焼成された酸化マグネシウム成形体を用いることが好ましい。このような成形体は、酸化マグネシウム原料粉末をモールドにより所定の形状に圧力成形した後に焼成することにより形成される。成形体の具体的形状に特に制限はないが、一般には、リング、サドル、マルチホール、ペレット等の工業触媒形態とすることが望ましい。なお、破砕物のような不定形形状であってもよい。
前記酸化マグネシウム成形体の担体は、その比表面積が0.1〜1.0m2/g、好ましくは0.2〜0.5m2/gである。比表面積が1.0m2/gを超えると、カーボンの生成速度が大きくなり触媒の活性が低下するという不都合が生じる傾向がある。また、この値が0.1m2/g未満となると、単位触媒当たりの活性が不足してしまい、多量の触媒が必要となるという不都合が生じる傾向がある。比表面積は、いわゆる「BET」法により測定されたものである。一般には、焼成温度と焼成時間によって、得られる触媒または担体の比表面積をコントロールすることができる。
担体である酸化マグネシウム(MgO)は、市販の酸化マグネシウム(MgO)を焼成して得ることができる。酸化マグネシウム(MgO)の純度は98重量%以上、好ましくは99重量%以上であることが要求され、特に、炭素析出活性を高める成分や、高温、還元ガス雰囲気下で分解する成分、例えば鉄、ニッケル等の金属や二酸化ケイ素(SiO2)等の混入は好ましくない。
このような担体には、触媒金属としてのルテニウム(Ru)が金属換算量で10〜5000wt-ppm、好ましくは100〜2000wt-ppmの範囲で担持される。担持量が5000wt-ppmを超えると触媒コストが高くなるとともに、製造中における炭素析出量が多くなる傾向が生じてしまう。この一方で、担持量が10wt-ppm未満となると、十分な触媒活性が得られなくなってしまうという不都合が生じる。Ru金属の担持量は、触媒担体に対する重量割合として算出される。
ルテニウム(Ru)に代えてロジウム(Rh)も使用されうる。
合成ガス製造用触媒の調製方法の好適な一例を以下に説明する。
触媒担体の形成
酸化マグネシウム(MgO)の粉末に、例えば滑択剤としてのカーボンを混合した後に、所定の形状に圧力成形する。その後、その成形物を1000℃以上、好ましくは、1000〜1300℃、さらに好ましくは、1100〜1200℃の焼成温度で、1〜4時間焼成する。焼成雰囲気は通常大気中で行われる。
通常のリフォーミング触媒の活性は、触媒のタイプが決まれば外表面積にほぼ比例するため、粒子サイズを小さくすると触媒活性は高くなるが、ガスの質量速度が大きいため、圧力損失が大きくなってしまう。そのため、円筒状の形状が採用されることが多い。
触媒金属(Ru)の担持
このように形成された担体に塩化ルテニウム水溶液を含浸させた後、乾燥、焼成させることにより、酸化マグネシウム成形体の外表面にルテニウム(Ru)を担持させるようにする。
塩化ルテニウム水溶液を含浸させる好適な方法としては、浸漬法やスプレー法等が有る。これらの中でも、特に、塩化ルテニウム水溶液を担体に向けて噴霧するスプレー法を用いることが好ましい。
Ruを吸着した担体は、50〜150℃の温度で1〜4時間程度乾燥させた後、300〜500℃、好ましくは350〜450℃の温度で1〜4時間焼成させる。乾燥および焼成の雰囲気は空気中とすればよい。焼成を行うことにより触媒金属の反応活性がさらに高まる。
合成ガスの製造方法
上記のように調製された合成ガス製造用触媒の存在の基に、上述したようにメタンを主成分として含む天然ガス(一般にはメタンを主成分とする炭素数1〜6の炭化水素)と、アップグレーディング工程30により分離されリサイクルされて合成ガス製造用原料となる軽質炭化水素との混合ガスを原料として、H2Oおよび/またはCO2リフォーミングによってCOとH2とを主成分とする合成ガスが製造される。
この場合、主成分であるメタンを中心に考えると、
(i)メタン(CH4)と二酸化炭素(CO2)を反応させる方法(CO2リフォーミング)の場合、その反応は下記式(1)で示されるように進行する。
CH4 + CO2 ⇔ 2CO +2H2 …式(1)
(ii)また、メタン(CH4)とスチーム(H2O)を反応させる方法(スチームリフォーミング)の場合、その反応は下記式(2)で示されるように進行する。
CH4 + H2O ⇔ CO +3H2 …式(2)
この改質反応条件下では、触媒がシフト能を有するために上記2つの式と同時に下記式(3)の水性ガスシフト反応が進行する。
CO + H2O ⇔ CO2 +H2 …式(3)
上記(1)、(2)の化学量論式より、メタンのCO2リフォーミングではH2/COモル比=1の合成ガスが、メタンのスチームリフォーミングではH2/COモル比=3の合成ガスが生成する。従って、これらの反応を組み合わせることによりH2/COモル比=1〜3の合成ガスが生成ガスからの水素などガス分離を行うことなく直接合成することが可能となる。
すなわち、メタノール、FT合成、DME原料となるH2/COモル比=1〜2付近の合成ガスを直接合成することが可能となる。
しかしながら、このようなモル比を直接合成する反応条件下では、一般に、生成ガスが触媒表面上へのカーボン析出を起こしやすい組成となり、カーボン析出による触媒劣化が生じる。このような問題を解決することができる所定の触媒として、上記説明の合成ガス製造用触媒が用いられる。さらに、上記説明の合成ガス製造用触媒を用いることによって、本願発明の要部である、アップグレーディング工程30において蒸留により分離された軽質炭化水素を、合成ガス製造用原料として、合成ガス製造工程に循環使用(リサイクル)することが実現可能となる。すなわち、上記以外の合成ガス製造用触媒を用いた場合において、軽質炭化水素を、合成ガス製造用原料として、合成ガス製造工程に循環使用させると、軽質炭化水素からの炭素析出が顕著になってしまい触媒の失活が起こってしまうのである。
〔フィッシャートロプッシュ油製造工程(FT合成工程)〕
上述してきた合成ガスをフィッシャートロプッシュ反応させた後、フィッシャートロプッシュ反応生成物からガス状生成物を分離してフィッシャートロプッシュ油を製造する工程である。
FT合成反応は、合成ガスであるCOとH2から下記式によって炭化水素混合物を与える反応である。
CO+2H2 → 1/n −(CH2n− +H2
触媒金属としては、例えば、金属状態の鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)等が用いられる。このような触媒金属を担体表面に担持して用いる場合には、例えば、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア等の担体を使用することができる。
反応条件は、一般に、反応温度:200〜350℃、反応圧力:常圧〜4.0MPaG程度である。鉄触媒を用いた場合には、反応温度:250〜350℃、反応圧力:2.0〜4.0MPaG程度が好ましく、コバルト触媒を用いた場合には、反応温度:220〜250℃、反応圧力:0.5〜4.0MPaG程度が好ましい。
反応は一種の重合反応であり、一般に重合度(n数)を一定に保つことは困難であり、生成物C1〜C100+で幅広く存在する。生成炭化水素の炭素数分布は、Schulz-Flory分布則に従い、その分布則における連鎖成長確率αによって表現することができる。工業触媒ではαの値は0.85〜0.95程度である。
FT反応の生成物は一次的にはα−オレフィンである。α−オレフィンは次のように二次反応により変化する。すなわち、水素化による直鎖パラフィンの生成、水素化分解によるメタンなどの低級パラフィンの生成、あるいは二次的連鎖成長による、より高級な炭化水素の生成等である。また、少量ではあるが、エタノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン、酢酸などのカルボン酸なども生成する。
FT合成の反応器としては、例えば、固定床反応器、流動床反応器、スラリー床反応器、超臨界反応器等が用いられる。
FT合成による炭化水素は原料の合成ガス製造段階で脱じん、さらに触媒の保護のために脱硫等の精製が行なわれているために、合成される炭化水素は硫黄分や重金属類等を含んでおらず、極めてクリーンなものとなる。
FT合成で製造された炭化水素は、ほとんど直鎖のオレフィン(1−オレフィン)および直鎖のパラフィンから構成されている。
フィッシャートロプッシュ反応生成物からガス状生成物を分離してフィッシャートロプッシュ油(炭化水素油)とするための分離手段は、特に限定されるものでなく、公知の種々の分離手段を用いることができる。一例として、例えば、フラッシュ分離器を用いればよい。
〔アップグレーディング工程〕
上記のフィッシャートロプッシュ油製造工程から得られたフィッシャートロプッシュ油を水素化精製(接触水素化処理)し、得られた水素化精製物を蒸留して、軽質炭化水素と、最終製品である灯軽油とに分離する処理が行なわれる。
水素化精製の処理としては、例えば、流動床、移動床、スラリー床、または固定床のような任意の触媒床反応装置を用いて行なうことができる。水素化処理条件としては、例えば、反応温度175〜400℃程度、水素分圧1〜25MPaG(10〜250気圧)程度とされる。
水素化精製された炭化水素留分は蒸留によって、LPGとナフサ(Naphtha)を主成分として含む軽質炭化水素と、最終製品である灯軽油(灯油(Kerosen)および軽油(Gas Oil))とに分離される。
本発明において、最終製品の対象から外れるLPGやナフサ(Naphtha)などの軽質炭化水素は、合成ガス製造用原料として、前記合成ガス製造工程に循環使用される。つまり、LPG、ナフサの軽質炭化水素は、図1に示されるように合成ガス製造用原料として合成ガス製造工程10にリサイクルされ導入される。
説明を再度、合成ガス製造工程10に戻して以下説明する。
合成ガス製造工程10においては、本来の原料である天然ガスと循環使用される軽質炭化水素との混合原料における炭化水素由来の炭素モル数をCで表わしたとき、炭素1モル当たりのH2O/C(モル比)が0.0〜3.0及び/又はCO2/C(モル比)が0.0〜1.0の範囲内となるように調整操作される。
特に、H2O/C(モル比)の好ましい範囲は、0.3〜1.7であり、さらに好ましい範囲は0.7〜1.3である。また、CO2/C(モル比)の好ましい範囲は、0.2〜0.8であり、さらに好ましい範囲は0.4〜0.6である。
さらに、本発明における合成ガス製造工程10においては、供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対して、循環使用される軽質炭化水素中の炭素原子数の割合が10〜35%、より好ましくは15〜35%、さらに好ましくは20〜30%となるように設定される。この値が10%未満となると軽質炭化水素の具体的な再利用化を図り、原料原単位を上げるという本来の目的が十分に果たせなくなってしまう。この一方で、この値が35%を超えると、合成ガス製造用触媒表面上へのカーボン析出が起こりやすくなり、カーボン析出による触媒の劣化が生じてしまう。従って、10〜35%という数値は、循環使用する軽質炭化水素をどの程度の割合でリサイクルとすべきかを決定する上での重要なファクターとなる。すなわち、10〜35%の範囲であればアップグレーディング工程40で分離された軽質炭化水素の全量をリサイクルしても特に問題はないが、全量をリサイクルした場合に35%を超えるようであれば、全量ではなくその一部をリサイクルするような手法がとられる。
また、本発明の合成ガス製造工程10において、供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対して、最終製品である灯軽油中の炭素原子数の割合が60〜80%、より好ましくは65〜80%となるように、軽質炭化水素のリサイクル割合が設定される。
また、本発明の合成ガス製造工程10における触媒層の出口温度は800〜950℃、好ましくは850〜920℃とされる。触媒層出口圧力は1.5〜3.0MPaGとされる。GHSV(gas hourly space velocity)は500〜5000hr-1とされる。
以下、具体的実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕
図1に示されるような天然ガスからの灯軽油製造プロセスのアップグレーディング工程30で副生するナフサとLPGを全量リサイクルしてFT(フィッシャー・トロプシュ)合成に適したH2O/CO=2.0の合成ガスの製造を行なった。
合成ガス製造用触媒としては、MgO触媒担体にRuを担持した触媒を用いた。
合成ガス製造工程10における触媒層の出口温度900℃、触媒層出口圧力2.0MPaG、GHSV(gas hourly space velocity)2000hr-1、H2O/C(モル比)=1.27、CO2/C(モル比)=0.41であり、原料天然ガスの組成は、(C1/C2/C3/C4/C5+/N2=90.0/5.5/2.5/0.5/1.0/0.5(モル/モル))であった。
図1に示される合成ガス製造セクション入口および出口(図1に示される符号(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(7))のマテリアルバランスをとり、そのマテリアルバランスに基づき、灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造工程の評価を行なった。
その結果、マテリアルバランスに基づいて算出した供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対する、リサイクルガス中の炭素原子数の割合は、25.8%であり、原料天然ガス中の炭素原子が製品(灯油、軽油)となる割合は67.4%であった。原料天然ガス量は、リサイクルを行なわない場合と比べて17.5%減じることができた。
〔実施例2〕
図1に示されるような天然ガスからの灯軽油製造プロセスのアップグレーディング工程30で副生するナフサのみリサイクルしてFT(フィッシャー・トロプシュ)合成に適したH2O/CO=2.0の合成ガスの製造を行なった。合成ガス製造工程10における触媒層の出口温度900℃、触媒層出口圧力2.0MPaG、GHSV(gas hourly space velocity)2000hr-1、H2O/C(モル比)=1.27、CO2/C(モル比)=0.41であり、原料天然ガスの組成は、(C1/C2/C3/C4/C5+/N2=90.0/5.5/2.5/0.5/1.0/0.5(モル/モル))であった。
図1に示される合成ガス製造セクション入口および出口(図1に示される符号(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(7))のマテリアルバランスをとり、そのマテリアルバランスに基づき灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造工程の評価を行なった。
その結果、マテリアルバランスに基づいて算出した供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対する、リサイクルガス中の炭素原子数の割合は、24.1%であり、原料天然ガス中の炭素原子が製品(灯油、軽油)となる割合は66.6%であった。原料天然ガス量は、リサイクルを行なわない場合と比べて16.4%減じることができた。
〔実施例3〕
図1に示されるような天然ガスからの灯軽油製造プロセスのアップグレーディング工程30で副生するナフサの半分の量のみをリサイクルしてFT(フィッシャー・トロプシュ)合成に適したH2O/CO=2.0の合成ガスの製造を行なった。合成ガス製造工程10における触媒層の出口温度900℃、触媒層出口圧力2.0MPaG、GHSV(gas hourly space velocity)2000hr-1、H2O/C(モル比)=1.25、CO2/C(モル比)=0.44であり、原料天然ガスの組成は、(C1/C2/C3/C4/C5+/N2=90.0/5.5/2.5/0.5/1.0/0.5(モル/モル))であった。
図1に示される合成ガス製造セクション入口および出口(図1に示される符号(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(7))のマテリアルバランスをとり、そのマテリアルバランスに基づき灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造工程の評価を行なった。
その結果、マテリアルバランスに基づいて算出した供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対する、リサイクルガス中の炭素原子数の割合は、11.0%であり、原料天然ガス中の炭素原子が製品(灯油、軽油)となる割合は60.6%であった。原料天然ガス量は、リサイクルを行なわない場合と比べて8.2%減じることができた。
〔比較例1〕
図1に示されるような天然ガスからの灯軽油製造プロセスのアップグレーディング工程30で副生するナフサとLPGをリサイクルさせることなく、FT(フィッシャー・トロプシュ)合成に適したH2O/CO=2.0の合成ガスの製造を行なった。合成ガス製造工程10における触媒層の出口温度900℃、触媒層出口圧力2.0MPaG、GHSV(gas hourly space velocity)2000hr-1、H2O/C(モル比)=1.24、CO2/C(モル比)=0.46であり、原料天然ガスの組成は、(C1/C2/C3/C4/C5+/N2=90.0/5.5/2.5/0.5/1.0/0.5(モル/モル))であった。
図1に示される合成ガス製造セクション入口および出口(図1に示される符号(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(7))のマテリアルバランスをとり、そのマテリアルバランスに基づき灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造工程の評価を行なった。
その結果、マテリアルバランスに基づいて算出した原料天然ガス中の炭素原子が製品(灯油、軽油)となる割合は55.6%であった。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明ではアップグレーディング工程において蒸留により分離された軽質炭化水素を、合成ガス製造用原料として、合成ガス製造工程に循環使用してなるように構成しているので、天然ガスからの灯軽油製造プロセスでは、付加価値が低い副産物である軽質炭化水素の具体的な再利用化を図り、原料原単位を上げることができるという極めて優れた効果が発現する。
天然ガスを化学的に転換し、メタノール、DME、合成石油などを製造するための合成ガスを製造する産業に利用される。
図1は、本発明の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法を示すスキームである。
符号の説明
10…合成ガス製造工程
20…フィッシャートロプッシュ油製造工程(FT合成工程)
30…アップグレーディング工程
40…軽質炭化水素の循環(リサイクル)工程

Claims (6)

  1. 天然ガスとスチーム及び/又は二酸化炭素との改質反応により合成ガスを製造する合成ガス製造工程と、
    前記合成ガスをフィッシャートロプッシュ反応させた後、フィッシャートロプッシュ反応生成物からガス状生成物を分離してフィッシャートロプッシュ油を製造するフィッシャートロプッシュ油製造工程と、
    前記フィッシャートロプッシュ油を水素化精製し、得られた水素化精製物を蒸留して軽質炭化水素と、最終製品である灯軽油とに分離するアップグレーディング工程と、を有する天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおいて、
    前記アップグレーディング工程において蒸留により分離されたLPGとナフサを主成分として含む軽質炭化水素の一部または全部を、合成ガス製造用原料として、前記合成ガス製造工程に循環使用してなることを特徴とする天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法。
  2. 前記合成ガス製造工程において、天然ガスと循環使用される軽質炭化水素との混合原料における炭化水素由来の炭素モル数をCで表わしたとき、炭素1モル当たりのH2O/C(モル比)が0.0〜3.0及び/又はCO2/C(モル比)が0.0〜1.0の範囲内にある請求項1に記載の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法。
  3. 前記合成ガス製造工程において、供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対して、循環使用される軽質炭化水素中の炭素原子数の割合が10〜35%となるように設定されてなる請求項1または請求項2に記載の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法。
  4. 前記合成ガス製造工程において、供給される天然ガス原料の炭化水素中の炭素原子数に対して、最終製品である灯軽油中の炭素原子数の割合が60〜80%となるように前記軽質炭化水素のリサイクル割合が設定されてなる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法。
  5. 前記合成ガス製造工程において、触媒層の出口温度が800〜950℃、触媒層出口圧力が1.5〜3.0MPaG、GHSV(gas hourly space velocity)が500〜5000hr-1である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法。
  6. 前記合成ガス製造工程において、天然ガス原料として供給される炭化水素原料ガスがメタンを主成分とする炭素数1〜6の炭化水素である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の天然ガスからの灯軽油製造プロセスにおける合成ガスの製造方法。
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