JP4865278B2 - ラッピング治具およびラッピング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ラッピング部の外径を調整する外径調整手段を備えたラッピング治具およびこのラッピング治具を備えたラッピング装置に関するものである。
従来、産業用ロボットに装備される駆動機構の一つにボールねじ機構がある。このロボットボールねじ機構に用いられているボールねじナットは、内部にボールが転動する螺旋状の凹溝が形成されている。この凹溝は、切削加工により所定の形状に形成された後、ラッピングによって最終的な寸法に仕上げられている。
このラッピングは、例えば特許文献1に示されているようなラッピング治具を使用して行われている。この特許文献1に開示されたラッピング治具は、円筒状に形成されたラッピング治具本体と、このラッピング治具本体の内部に嵌挿された軸部材とを備えている。
前記ラッピング治具本体の外周部には、前記凹溝内をラッピングするためのねじ状の突条が形成されている。この突条の外表面には、砥粒が電着や接着などにより付着されている。また、このラッピング治具本体は、外径を拡げたり縮めたりすることができるように、軸線方向に延びるスリットが複数形成されている。
前記軸部材の外周面は、外径が先端部から漸次大きくなるテーパ面となるように形成されており、ラッピング治具本体内に嵌挿された状態で基端部がラッピング治具本体に螺合されている。すなわち、この軸部材をラッピング治具本体内にねじ込むことにより、ラッピング治具本体の外径が大きくなり、軸部材を戻すことにより、ラッピング治具本体が縮径する。
このように構成されたラッピング治具は、例えば特許文献2に示されているようなラッピング装置に取付けて使用される。
特許文献2に開示されているラッピング装置は、上述したラッピング治具を回転させるとともに軸線方向に往復動させる構成が採られている。すなわち、このラッピング装置に装着されたラッピング治具は、ねじが締め込まれる方向に回転しながらボールねじナット内に挿入され、ねじが緩む方向に回転しながらボールねじナット内から引き出される。
このラッピング治具において、前記軸部材のねじ込み量の調整(ラッピング治具本体の外径の調整)を例えば作業者による手作業で行うためには、ラッピング治具を装置から取外し、前記軸部材をラッピング治具本体に対して回すことによって行う。
特開2002−292555号公報(第5頁、第2図) 特開2002−292520号公報(第6頁、第10図)
特許文献1に示されたラッピング治具は、人手によって外径を調整するためにはラッピング装置から取外さなければならない。このため、この外径調整作業を行うときの作業工数が多くなってしまうという問題があった。
このような不具合を解消するためには、ラッピング治具本体に対して軸部材を回動させる機構をラッピング装置に組込むことが考えられる。しかし、回転するラッピング治具本体に対して軸部材を相対的に回す機構は、構造が複雑になるために、ラッピング装置の製造コストが著しく高くなってしまう。
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、ラッピング治具本体の外径を人手によって簡単に調整することができるラッピング治具を提供することを第1の目的とする。また、ラッピング中にラッピング治具本体の外径を調整することができるラッピング装置を安価に提供することを第2の目的とする。
この目的を達成するために、本発明に係るラッピング治具は、円筒状であって径方向に拡縮自在に形成され、外周部にラップ部が設けられるとともに内周面にテーパ孔が形成されたラッピング治具本体と、前記テーパ孔内に嵌合するテーパ面が外周部に形成され、先端側がラッピング治具本体内に挿入されたテーパ軸部材と、このテーパ軸部材の基端側外周部に設けられ、ラッピング治具本体を先端側へ付勢するばね部材と、前記ラッピング治具本体を前記テーパ軸部材の先端部側から前記ばね部材側へテーパ軸部材に対して移動させる外径調整手段とを備え、前記外径調整手段は、前記テーパ軸部材の軸心部に移動可能に挿入され、テーパ軸部材を貫通するロッドと、このロッドにおけるテーパ軸部材の先端部から突出する先端部に設けられ、ラッピング治具本体を押圧する押圧手段とから構成され、前記押圧手段は、ラッピング治具本体の先端部内に形成されたテーパ孔内に嵌合するテーパ部材を備え、前記テーパ軸部材とテーパ部材とは、軸方向に間隙を介して配置されているものである。
請求項に記載した発明に係るラッピング治具は、請求項1に記載したラッピング治具において、押圧手段は、ロッドに螺着するナットと座金とを備え、このナットによってラッピング治具本体に対する軸線方向の位置が変更可能に構成されているものである。
請求項に記載した発明に係るラッピング治具は、請求項1または請求項2に記載したラッピング治具において、ラッピング治具本体のテーパ軸部材に対する相対回転を規制し、かつラッピング治具本体のテーパ軸部材に対する軸線方向への移動を許容する回転伝達手段を備えているものである。
請求項4に記載した発明に係るラッピング治具は、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載したラッピング治具において、前記ラッピング治具本体のテーパ孔は、基端部側の半部と、前記テーパ部材が嵌合する先端部側の半部とで傾斜する方向を変えて形成されているものである。
請求項に記載した発明に係るラッピング装置は、請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載したラッピング治具を支持し、このラッピング治具を回動させかつ軸線方向に往復動させる駆動装置を備えているものである。
請求項に記載した発明に係るラッピング装置は、請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載したラッピング治具を支持し、このラッピング治具を回動させかつ軸線方向に往復動させる第1の駆動装置と、前記ラッピング治具のロッドを軸線方向に移動させる第2の駆動装置とを備えているものである。
本発明によれば、外径調整手段によってテーパ軸部材をラッピング治具本体に対して軸線方向に移動させることにより、ラッピング治具本体の拡径または縮径する。外径調整手段はテーパ軸部材の先端部側からラッピング治具本体を移動させるものであるから、ラッピング治具の先端側で容易に操作することができる。
したがって、本発明によれば、外径調整を人手作業により容易に行うことができるラッピング治具を提供することができる。
また、本発明によれば、ロッドをテーパ軸部材に対して軸線方向に移動させることによりラッピング治具本体がテーパ軸部材に対して軸線方向に移動し、ラッピング治具本体が拡径または縮径する。このため、この発明に係るラッピング治具を装備するラッピング装置に前記ロッドを軸線方向へ移動させる機構を設けることにより、ラッピング中にラッピング治具を拡径または縮径させることができる。ロッドを軸線方向に移動させる機構は、これをラッピング治具本体に対して回転させる機構に較べて簡単に構成することができる。したがって、この発明によれば、ラッピング装置のコストダウンを図りながら、ラッピング中に拡径または縮径することが可能なラッピング治具を提供することができる。
また、本発明によれば、ロッドをテーパ軸部材に対して軸線方向に移動させることにより、ラッピング治具本体は、その基端側と先端側とにおいてそれぞれ拡径または縮径する。このため、このラッピング治具本体においては、基端側と先端側とでテーパ部分の角度を変えることができ、この構成を採ることにより、基端側と先端側とで外径を違えることが可能になる。したがって、この発明によるラッピング治具においては、ラッピングの進行状況に応じて、またはワークの形状に応じて最適になるような外径に調整したうえでラッピングを行うことができる。
請求項記載の発明によれば、ロッドをテーパ軸部材に対して軸線方向に移動させる他に、ナットを締め込んだり緩めたりすることによってもラッピング治具本体を拡径または縮径させることができる。このため、この発明によれば、外径調整をより一層容易に行うことができるようになる。
請求項記載の発明によれば、テーパ軸部材とラッピング治具本体とが一体に回転するようになる。このため、この発明によるラッピング治具においては、テーパ軸部材のみを駆動装置に接続する構成を採り、コストダウンを図ることができる。
請求項記載の発明によれば、ラッピング治具を装着した状態でもラッピング治具の外径を人手により容易に調整することができるラッピング装置を提供することができる。
請求項記載の発明によれば、第2の駆動装置によりロッドを軸線方向に移動させることによって、ラッピング中においてもラッピング治具を拡径または縮径させることができる。ロッドを軸線方向に移動させる機構は、回転しているラッピング治具本体に対してロッドを回転させる機構に較べて簡単に構成することができる。したがって、この発明によれば、ラッピング中にラッピング治具本体の外径を調整可能なラッピング装置を安価に提供することができる。
以下、本発明に係るラッピング治具の前提となる参考例を図1ないし図8によって詳細に説明する。
図1はこの参考例によるラッピング治具の断面図で、同図(a)はテーパ軸部材が挿入される部材を破断しテーパ軸部材を露出させた断面図、同図(b)はラッピング治具の縦断面図である。同図(b)の破断位置を同図(a)においてB−B線によって示す。図2はラッピング治具本体の平面図、図3は同じく正面図、図4は同じく底面図である。図5は図2におけるラッピング治具本体のV線矢視図、図6は図2におけるラッピング治具本体のVI−VI線断面図、図7はラッピング治具本体とテーパ軸部材の嵌合部分を拡大して示す断面図、図8はラッピング治具本体の斜視図である。
これらの図において、符号1で示すものは、この参考例によるラッピング治具である。このラッピング治具1は、ボールねじナット(図示せず)のボール転動用溝に雄ねじの螺旋形状を精密に転写し、かつこの溝を研磨してその面粗度を向上させるためのものである。
このラッピング治具1は、図1に示すように、同図において上下方向に延びるように形成されたテーパ軸部材2と、このテーパ軸部材2に装着された筒状のラッピング治具本体3などによって構成されている。
前記テーパ軸部材2は、図1において上端側に位置する基端部4と、この基端部4に一端が接続し、他端に向かうにしたがって外径が漸次小さくなるテーパ部5とから構成されている。
前記基端部4は、外径が一定になるように形成されている。この基端部4の軸端には、図示していないラッピング装置に接続される四角柱状の連結部6が形成されている。なお、このラッピング装置としては、例えば特許文献2に記載されているような装置を使用することができる。
前記テーパ部5の前記一端は、前記基端部4より外径が小さくなるように形成されている。このため、基端部4とテーパ部5との境界部分には段差7が形成されている。この段差7に接するテーパ部5には、ワッシャ11と、後述するラッピング治具本体3を先端側(図1においては下側)に付勢するための複数の皿ばね12と、この皿ばね12とラッピング治具本体3との間に介装された筒体13とが装着されている。前記皿ばね12によって本発明でいうばね部材が構成されている。
前記テーパ部5の先端部には、図1に示すように、雄ねじ14が一体に形成されている。この雄ねじ14は、テーパ軸部材2にラッピング治具本体3を装着した状態でラッピング治具本体3の外に突出する長さに形成されている。この雄ねじ14の基端側には、ラッピング治具本体3の先端部が嵌合するとともに座金として機能する有底筒状のキャップ15が被冠されており、雄ねじ14の先端側には、2個のナット16,16が螺着している。この参考例においては、前記雄ねじ14と、前記キャップ15およびナット16とによって、本発明でいう外径調整手段が構成されている。しかし、キャップ15は、必ずしも必要とせず、また単なる座金を用いてもよい。
前記テーパ軸部材2の外周部であって、軸線方向の二箇所には、図1および図7に示すように、他の部位に較べて外径が小さくなる括れ部17,18が形成されている。すなわち、このテーパ軸部材2のテーパ部5には、前記段差7から先端側に延びる第1のテーパ面5aと、二つの括れ部17,18の間に位置する第2のテーパ面5bと、先端部に位置する第3のテーパ面5cとが形成されている。
テーパ軸部材2のテーパ部5における前記第1のテーパ面5aが形成された部位と、第2のテーパ面5bが形成された部位とには、ボルト21がテーパ軸部材2の径方向に延びるように螺着されている。このボルト21の頭部21aは、図1(b)に示すように、テーパ部5の外周面から径方向の外側に突出し、後述するラッピング治具本体3の長孔22内に嵌合している。
前記ラッピング治具本体3の内周部には、図6に示すように、基端部3a(図6において上端部)から先端部3bに向かうにしたがって漸次内径が小さくなるテーパ孔23が形成されている。このテーパ孔23は、前記テーパ軸部材2のテーパ部5が嵌合する形状、すなわちテーパ部分の角度が一致するような形状に形成されている。
ラッピング治具本体3の外周部には、図2〜図6および図8に示すように、軸線方向の略全域にわたって雄ねじ状の突条24が形成されている。この突条24によって本発明でいうラップ部が構成されている。このラッピング治具本体3の前記突条24を含む外周面には、砥粒が電着によって付着されている。
ラッピング治具本体3の基端部3a(図1においては上端部)には、前記筒体13の先端部内に嵌合する小径筒部25が形成されている。また、ラッピング治具本体3の先端部3bには、前記キャップ15内に嵌合する小径筒部26が形成されている。
さらに、ラッピング治具本体3には、前記ボルト21の頭部21aが嵌合する長孔22が形成されており、また軸線方向に延びる4本のスリット27〜30が形成されている。
前記長孔22は、ラッピング治具本体3を内周面から外周面にわたって貫通しかつ軸線方向に長くなるように形成されている。この長孔22におけるラッピング治具本体3の周方向の開口幅は、前記ボルト21の頭部が嵌合する寸法に形成されている。すなわち、前記ボルト21は、ラッピング治具本体3のテーパ軸部材2に対する相対回転を規制し、かつラッピング治具本体3のテーパ軸部材2に対する軸線方向への移動を許容する。このボルト21と長孔22とによって、本発明でいう回転伝達手段が構成されている。
前記スリット27〜30は、ラッピング治具本体3が弾性変形により拡径または縮径することができるようにするためのもので、ラッピング治具本体3を周方向に4等分する位置にそれぞれ軸線方向に延びるように形成されている。これら4箇所のスリット27〜30のうち、ラッピング治具本体3を軸線方向から見て同一直径上に位置する二つのスリットは、対をなすように同一形状に形成されている。すなわち、4箇所のスリット27〜30は、ラッピング治具本体の軸心を挾んで対向するものどうしを1組として2組設けられている。一方の組のスリット27,29は、ラッピング治具本体3の基端面(図3,5,6において上端面)に開放し、他方の組のスリット28,30は、ラッピング治具本体3の先端面に開放している。これらのスリット27〜30における前記開放端とは反対側の端部は、それぞれ円形孔31に接続されている。
このように構成されたラッピング治具本体3をテーパ軸部材2に組付けるためには、先ず、テーパ軸部材2にワッシャ11と、皿ばね12と、筒体13とを装着し、テーパ軸部材2のテーパ部5をラッピング治具本体3のテーパ孔23内に挿入する。次に、テーパ軸部材2の雄ねじ14にキャップ15を組付け、2個のナット16を螺着する。これとともに、テーパ軸部材2にボルト21をラッピング治具本体3の外側から螺着する。
ラッピング治具本体3にテーパ軸部材2を挿通させた状態で前記ナット16を締め込むことにより、ラッピング治具本体3が皿ばね12の弾発力に抗してテーパ軸部材2に対して基端側に移動し、テーパ孔23内にテーパ部5が押し込まれてラッピング治具1が拡径する。すなわち、この参考例によるラッピング治具1においては、前記ナット16を締め込むことにより拡径し、締め込まれたナット16を緩めることにより拡径状態から縮径する。ナット16は、いわゆるダブルナットの作用により緩むことがないようにテーパ軸部材2に締結することができるから、このラッピング治具1は、所望の外径を保つ状態でラッピングを行うことができる。
ラッピング治具1を使用して行うラッピングは、予めボール転動面が研削などにより所定の形状に形成されたボールねじナットにラッピング治具1を挿入することによって行う。なお、このラッピング治具1によるラッピングを実施する以前に、粗仕上げ用のラッピング治具を使用してボールねじナットを研磨しておくこともできる。
ラッピング治具1による前記ラッピングは、ラッピング治具1を図示していないラッピング装置によってねじが締まる方向に回しながらボールねじナット内に挿入する第1の行程と、ラッピング治具1の基端部4がボールねじナット内に達した後にラッピング治具1を逆方向に回しながらボールねじナットから引き出す第2の行程とを繰り返して行う。
ラッピングによりボールねじナットの研磨が進むと、砥粒が被研磨面に当たり難くなる。このような場合は、ラッピング装置を一時停止させ、ナット16を締め込み、ラッピング治具本体3を拡径させる。
すなわち、このナット16は、テーパ軸部材2の先端部にラッピング治具本体3の外に位置するように取付けられているから、前記拡径作業または縮径作業を人手によってラッピング治具1の先端側で容易に行うことができる。
ラッピング初期や前記拡径を行った直後などは、ラッピング治具本体3が被研磨面に強く押し付けられることがある。
この参考例によるラッピング治具1においては、テーパ軸部材2に括れ部17,18が形成されており、この括れ部17,18とラッピング治具本体3との間に環状の隙間S(図7参照)が形成されているから、上述したようにラッピング治具本体3が被研磨面に過大な力によって押し付けられるような場合は、前記隙間Sが狭くなる方向にラッピング治具本体3が弾性変形し、押圧力を低減することができる。このため、このラッピング治具1によれば、常に適正な押圧力をもってラッピングを行うことができる。
本発明に係るラッピング治具の実施の形態とラッピング装置の一実施の形態を図9ないし図15によって詳細に説明する。
図9はラッピング治具の参考例を示す断面図、図10はラッピング治具の一実施の形態を示す断面図で、図9はテーパ軸部材がラッピング治具本体の先端部まで延びる例を示し、図10はテーパ軸部材がラッピング治具本体の中間部まで延びている例を示す。
図11はラッピング装置の正面図、図12はラッピング装置の側面図、図13はラッピング装置のヘッドユニットを拡大して示す断面図である。図14はボールねじナット用支持装置の平面図で、同図においては、最も上に位置する可動プレートを破断した状態で描いてある。図15はボールねじナット用支持装置の正面図で、同図においては、ボールねじナットを含めてその周辺を破断した状態で描いてある。これらの図において、前記図1〜図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9に示すラッピング治具41と図10に示すラッピング治具42は、テーパ軸部材2の軸心部を貫通するロッド43を備え、後述するラッピング装置44(図11および図12参照)に取付けられている。なお、図9および図10に示すラッピング治具本体3には、図示してはいないが、図1〜図8に示した参考例のラッピング治具本体3と同様に複数のスリット27〜30が設けられている。また、図9および図10に示すラッピング治具41,42には、図示してはいないが、図1〜図8に示した参考例のラッピング治具1と同様にボルト21と長孔22とからなる回転伝達手段が設けられている。
前記ロッド43は、テーパ軸部材2の軸心部に穿設された貫通孔45内に移動自在に挿入されており、テーパ軸部材2の先端から外に突出している。このロッド43の前記突出部分には雄ねじ14が形成されており、キャップ15が被冠されているとともに、2個のナット16が螺着されている。これらのキャップ15とナット16とのうち特にナット16によって、本発明でいう押圧手段が構成され、ロッド43およびナット16によって、本発明でいう外径調整手段が構成されている。ロッド43の基端部43aは、図13に示すように、後述するラッピング装置44の油圧シリンダ46に軸継手47を介して接続されている。
図9に示すラッピング治具42において、前記キャップ15は、ラッピング治具本体3の先端面に当接し、テーパ軸部材2の先端面とは離間している。すなわち、図9に示すラッピング治具41においては、前記ロッド43をテーパ軸部材2に対して基端側に移動させることにより、ラッピング治具本体3がテーパ軸部材2に対して同方向に移動することによって拡径する。このラッピング治具本体3は、上述したように拡径した状態でロッド43を上記とは反対方向に移動させることによって縮径する。また、図9に示すラッピング治具41は、図1に示すラッピング治具1と同様に、ナット16を締め込んだり緩めたりすることによってもラッピング治具本体3を拡径させたり縮径させることができる。
図10に示すラッピング治具42においては、図9に示すラッピング治具41に較べてテーパ軸部材2が短くなるように形成されている。図10に示すテーパ軸部材2は、ラッピング治具本体3の中間部内まで延びるように形成されている。このため、図10に示すラッピング治具本体3の先端部内には、テーパ軸部材2とは別体に形成されたテーパ部材48が嵌合されている。このテーパ部材48は、図10において下側に位置する先端部から他端部に向かうにしたがって外径が漸次小さくなるように形成され、軸心部に穿設された貫通孔49を通してロッド43が貫通している。
この実施の形態によるラッピング治具本体3のテーパ孔23は、前記テーパ部材48が嵌合できるように、基端部側の半部23aと先端部側の半部23bとで傾斜する方向を変えて形成されている。すなわち、テーパ孔23の先端部側半部23bは、ラッピング治具本体3の先端部3bから基端部3aに向かうにしたがって内径が漸次小さくなるように形成されている。
前記テーパ部材48は、前記テーパ孔23内に嵌合した状態でラッピング治具本体3の先端部3bから外に突出する長さに形成されている。このテーパ部材48におけるラッピング治具本体3の外に突出した先端部は、キャップ15とナット16とからなる押圧部材によって他端側に押圧されている。この実施の形態において、キャップ15は、ラッピング治具本体3の先端面とは離間し、ラッピング治具本体3を軸線方向に押すことがないように構成されている。
図10に示したラッピング治具42は、ロッド43をテーパ軸部材2に対して基端部側に移動させることにより、テーパ軸部材2とテーパ部材48とによってラッピング治具本体3が両側から挟圧され、ラッピング治具本体3が拡径する。ラッピング治具本体3は、前記拡径状態でロッド43を上記とは反対方向に移動させることによって縮径する。図10に示すラッピング治具42においても、ナット16を締め込んだり緩めたりすることによってラッピング治具本体3を拡径、または縮径させることができる。
ラッピング治具を図9および図10に示すように構成しても図1〜図8に示した参考例の形態を採る場合と同等の効果を奏する。
図10に示すラッピング治具42のラッピング治具本体3は、その基端部3a側と先端部3b側とにおいてそれぞれ拡径または縮径する。すなわち、このラッピング治具42においては、基端側と先端側とでテーパ部分の角度を変えることができ、このような構成を採ることにより、基端側の外径と先端側の外径とを違えることが可能になる。このため、このラッピング治具42においては、ラッピングの進行状況に応じて、またはボールねじナットの形状に応じて最適になるような外径に調整したうえでラッピングを行うことができる。
前記ラッピング治具41,42が装着されるラッピング装置44は、図11および図12に示すように、基台51と、この基台51の前側上部に装着されたボールねじナット用支持装置52と、基台51の後側上部に立設された上部支持台53と、この上部支持台53に後述する昇降装置54を介して支持された昇降ヘッド55と、この昇降ヘッド55に設けられた回転駆動装置56および前記油圧シリンダ46とから構成されている。
前記ボールねじナット用支持装置52は、図14および図15に示すように、支持台61と、この支持台61の上に支持部材62を介して支持された下部筒体63と、支持台61に昇降自在に支持された2本の支柱64,64と、これらの支柱64,64の上端部どうしを接続する可動プレート65と、この可動プレート65に取付けられた上部筒体66とを備えており、ボールねじナット67をラッピング治具41,42の下方に保持している。
前記下部筒体63は、ボールねじナット67を支承するためのもので、ボールねじナット67の下端部の開口に遊嵌状態で嵌合している。すなわち、ボールねじナット67は、下部筒体63の上に水平方向へ移動可能に載置されている。下部筒体63の近傍であって支持部材62の上には、ボールねじナット67のフランジ67aに側方から当接することによりボールねじナット67の回転を規制するストッパープレート68が設けられている。
前記2本の支柱64,64は、支持台61に回動自在に設けられた操作用レバー69にラック・ピニオン式の駆動機構(図示せず)を介して接続されており、操作用レバー69を操作することにより昇降するように構成されている。この支柱64,64に取付けられた可動プレート65は、図15に示すように、上部筒体66がボールねじナット67の上方に離間する上昇位置と、前記支持部材62に立設された円柱状のストッパー70に可動プレート65が上方から当接する下降位置との間で昇降する。
前記上部筒体66は、ボールねじナット67の上端部を水平方向に位置決めするためのもので、この上部筒体66の下端部には、ボールねじナット67の上端部が嵌合する円形凹部71が形成されている。上部筒体66は、可動プレート65が下降位置に下げられた状態で前記円形凹部の底(上壁)とボールねじナット67の上面との間に隙間が形成されるように構成されている。
すなわち、このボールねじナット用支持装置52は、ボールねじナット67の上端部の水平方向への移動を上部筒体66によって規制し、ボールねじナット67の上下方向への移動を下部筒体63と上部筒体66との間で遊動できる程度に規制する。
前記昇降装置54は、図11および図12に示すように、上下方向に延びる前記上部支持台53の前面に取付けられた左右一対のスライドレール81,81と、これらのスライドレール81,81に昇降自在に支持されたスライダ82と、このスライダ82における左右方向の中央部に取付けられたボールねじナット83と、このボールねじナット83を貫通して上下方向に延びるボールねじ軸84と、このボールねじ軸84の上端部に接続された昇降用モータ85などによって構成されている。この昇降用モータ85の動作時期、回転方向などは後述する制御装置86が制御する。
前記昇降ヘッド55は、図13に示すように、前記スライダ82の前面に取付けられたスピンドルハウジング91と、このスピンドルハウジング91の内部に軸受92,93によって回転自在に支持された筒状のスピンドル94と、このスピンドル94に取付けられたタップチャック95などによって構成されている。
前記スピンドルハウジング91の上端部であって両側部には、図11および図12に示すように、ワイヤ96を介して重量相殺用のウエイト97が接続されている。前記ワイヤ96は、上部支持台53の上端部に設けられたプーリ98,98に架け渡され、上部支持台53内に収容されたウエイト97とスピンドルハウジング91とを接続している。
前記スピンドル94の上端部は、図13に示すように、スピンドルハウジング91の上端部から上方に突出し、スピンドル94の下端部は、スピンドルハウジング91の下端部から下方に突出している。スピンドル94の上端部には、ラッピング治具41,42を回転させるための回転駆動装置56が接続されている。この回転駆動装置56は、図13に示すように、スピンドルハウジング91の上端部から前方(図13においては左方)に延びる支持板99に取付けられた減速機100と、この減速機100の上に装備された回転駆動用モータ101と、前記減速機100からスピンドル94の上端部に動力を伝達するためのベルト式伝動装置102などによって構成されている。
前記回転駆動用モータ101の回転数と回転方向は、後述する制御装置86が制御する。この回転駆動装置56と前記昇降装置54とによって、請求項に記載した発明でいう第1の駆動装置が構成されている。
前記スピンドル94の下端部には、テーパーソケット103が下方に向けて開口するように形成されており、タップチャック95のテーパーシャンク104が取付けられている。
前記タップチャック95は、図13においては内部の構造は省略してあるが、図9または図10に示したラッピング治具41,42のテーパ軸部材2の上端部を把持する構造が採られている。また、タップチャック95の軸心部には、貫通孔105が穿設されており、この貫通孔105を通してラッピング治具41,42のロッド43が貫通している。このロッド43は、タップチャック95の上端部に固着されたパイプ106の中を通されてスピンドル94を上下方向に貫通し、スピンドル94の上方に突出している。前記パイプ106の上端部には、スピンドル94の上端部に係合する係合部材107が設けられており、このパイプ106は、前記係合部材107とスピンドル94とによって下方への移動が規制されている。
前記ロッド43の上端部43aは、軸継手47を介して油圧シリンダ46に接続されている。この油圧シリンダ46は、ピストンロッド46aの軸線が上下方向を指向するようにスピンドルハウジング91の上端部に搭載されており、動作する方向が制御装置86によって切り換えられるように構成されている。この油圧シリンダ46によって、請求項に記載した発明でいう第2の駆動装置が構成されている。
前記軸継手47は、前記ロッド43をピストンロッド46aに対して回転自在に支持し、かつ前記ロッド43をピストンロッド46aと一体的に昇降するように支持している。
制御装置86は、前記昇降用モータ85と回転駆動用モータ101とを連動するように制御する。すなわち、制御装置86は、回転駆動装置56によりラッピング治具41,42をねじが締め込まれる方向に回転させながら、昇降装置54によって昇降ヘッド55を下降させる。また、制御装置86は、ラッピング治具41,42をその基端部によってボールねじナット67の上部が研磨されるようになるまで降下させた後、昇降装置54によって昇降ヘッド55を上方に引き上げながら、回転駆動装置56によりラッピング治具41,42をねじが緩む方向に回転させる。
この実施の形態による制御装置86は、前記ラッピング治具41,42の下降と上昇とを例えば所定回数だけ繰り返し行なってラッピングが終了した後に各モータ85,101を停止させる。また、この制御装置86は、ラッピング中に油圧シリンダ46をピストンロッド43とともにロッド43が上昇または下降するように動作させ、ラッピング中においてラッピング治具本体3を拡径または縮径させる。すなわち、ラッピング治具本体3の砥粒が摩滅したときにラッピング治具本体3を拡径させることにより、引き続きラッピングを継続して行うことできる。また、砥粒が摩滅していない場合であっても、ラッピング中にラッピング治具本体3の外径を段階的に拡げることにより、ボールねじナット67の被研磨面が徐々に拡げられるようになり、効率よくラッピングを行うことができる。
さらに、この制御装置86は、例えばロッド43の先端部に螺着したナット16の締め込み量が過大であった場合などのように、ラッピング治具本体3がボールねじナット67に過大な力で押し付けられるような場合は、油圧シリンダ46をピストンロッド43とともにロッド43が下降するように動作させる。
このように油圧シリンダ46を動作させるに当たっては、操作者によって人為的に行う他に、昇降用モータ85または回転駆動用モータ101の負荷を電気的に検出し、この負荷に基づいて制御装置86が自動的に行うように構成することができる。この場合、制御装置86は、前記負荷が過小である場合は油圧シリンダ46のピストンロッド43を上昇させ、前記負荷が過大である場合には前記ピストンロッド43を下降させる。
上述したように構成されたラッピング装置44においては、油圧シリンダ46と軸継手47とからなる簡単な構造の装置によって、ラッピング治具41,42のロッド43を上下方向に移動させ、ラッピング中にラッピング治具41,42を拡径または縮径させることができる。このため、このラッピング装置44は、回転するラッピング治具本体に対してさらに内部の軸部材を回転させるような複雑な装置は不要であるから、このような装置を用いる場合に較べて低コストで製造することができる。
図11〜図13に示したラッピング装置44は、この実施の形態では、図9または図10に示したラッピング治具41,42を装着する形態を採っているが、このラッピング装置44は、図1〜図8に示した参考例のラッピング治具1を取付けて使用することができる。このように外径調整用のロッドを備えていないラッピング治具1を使用する場合は、タップチャック95の貫通孔105内とパイプ106内は空になる。
ラッピング治具の断面図である。 ラッピング治具本体の平面図である。 ラッピング治具本体の正面図である。 ラッピング治具本体の底面図である。 図2におけるラッピング治具本体のV線矢視図である。 図2におけるラッピング治具本体のVI−VI線断面図である。 ラッピング治具本体とテーパ軸部材の嵌合部分を拡大して示す断面図である。 ラッピング治具本体の斜視図である。 ラッピング治具の参考例を示す断面図である。 ラッピング治具の実施の形態を示す断面図である。 ラッピング装置の正面図である。 ラッピング装置の側面図である。 ラッピング装置のヘッドユニットを拡大して示す断面図である。 ボールねじナット用支持装置の平面図である。 ボールねじナット用支持装置の正面図である。
符号の説明
1,41,42…ラッピング治具、2…テーパ軸部材、3…ラッピング治具本体、5…テーパ部、12…皿ばね、14…雄ねじ、15…キャップ、16…ナット、21…ボルト、22…長孔、23…テーパ孔、27〜30…スリット、43…ロッド、46…油圧シリンダ、47…軸継手、54…昇降装置、56…回転駆動装置、67…ボールねじナット85…昇降用モータ、86…制御装置、101…回転駆動用モータ。

Claims (6)

  1. 円筒状であって径方向に拡縮自在に形成され、外周部にラップ部が設けられるとともに内周面にテーパ孔が形成されたラッピング治具本体と、
    前記テーパ孔内に嵌合するテーパ面が外周部に形成され、先端側がラッピング治具本体内に挿入されたテーパ軸部材と、
    このテーパ軸部材の基端側外周部に設けられ、ラッピング治具本体を先端側へ付勢するばね部材と、
    前記ラッピング治具本体を前記テーパ軸部材の先端部側から前記ばね部材側へテーパ軸部材に対して移動させる外径調整手段とを備え
    前記外径調整手段は、
    前記テーパ軸部材の軸心部に移動可能に挿入され、テーパ軸部材を貫通するロッドと、
    このロッドにおけるテーパ軸部材の先端部から突出する先端部に設けられ、ラッピング治具本体を押圧する押圧手段とから構成され、
    前記押圧手段は、ラッピング治具本体の先端部内に形成されたテーパ孔内に嵌合するテーパ部材を備え、
    前記テーパ軸部材とテーパ部材とは、軸方向に間隙を介して配置されていることを特徴とするラッピング治具。
  2. 請求項1記載のラッピング治具において、
    押圧手段は、ロッドに螺着するナットと座金とを備え、このナットによってラッピング治具本体に対する軸線方向の位置が変更可能に構成されているラッピング治具。
  3. 請求項1または請求項2記載のラッピング治具において、ラッピング治具本体のテーパ軸部材に対する相対回転を規制し、かつラッピング治具本体のテーパ軸部材に対する軸線方向への移動を許容する回転伝達手段を備えているラッピング治具。
  4. 請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載のラッピング治具において、前記ラッピング治具本体のテーパ孔は、基端部側の半部と、前記テーパ部材が嵌合する先端部側の半部とで傾斜する方向を変えて形成されていることを特徴とするラッピング治具。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載のラッピング治具を支持し、このラッピング治具を回動させかつ軸線方向に往復動させる駆動装置を備えているラッピング装置。
  6. 請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載のラッピング治具を支持し、このラッピング治具を回動させかつ軸線方向に往復動させる第1の駆動装置と、
    前記ラッピング治具のロッドを軸線方向に移動させる第2の駆動装置とを備えているラッピング装置。
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