JP4864525B2 - 物質導入装置及び物質導入方法 - Google Patents
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Description
即ち、細胞への物質導入では、細胞内の水溶液に導入物質の水溶液を注入するために、細胞内の水溶液と導入物質の水溶液との間に界面を生じない。
このため、体積が同等でもインクジェットプリンタでは扱う圧力のオーダが桁違いに大きくなっており、同じ機構をマイクロインジェクションに適用することは非常に難しい。
なお、図における符号3は、透明容器である。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、中空尖頭部を有する微少物質吐出部材1に充填した液体を圧力によって小胞体内へ吐出させて反応を観測する小胞体への物質導入装置であって、微少物質吐出部材1を用いて蛍光試薬を含んだ第1の溶液2を、第1の溶液2と界面を生じない第2の溶液4中へ吐出して蛍光強度を検出する蛍光強度検出手段6、予め計測した蛍光強度と吐出量との相関に基づいて前記蛍光強度検出手段6により検出した蛍光強度から吐出量を求める吐出量算出手段、吐出量算出手段で算出した吐出量から、微少物質吐出部材1の吐出量と圧力及び加圧時間との相関を求める演算手段、及び、演算手段で演算した圧力及び加圧時間と吐出量との相関に基づいて圧力及び加圧時間を制御して吐出量を調整する調整手段とを少なくとも備えたことを特徴とする。
なお、本発明における小胞体とは細胞、微生物、マイクロカプセル等の総称であり、また、中空尖頭部を有する微少物質吐出部材とは、マイクロピペット、シリンジ、或いは、キャピラリ等の総称である。
図2参照
図2は、本発明の実施例1に用いるマイクロインジェクション装置の概念的構成図であり、内部に対物レンズ13を上下移動させるフォーカス手段を持つ同軸照明付きの倒立型高倍率顕微鏡12を収容した基台11上にコントローラ付きのXYステージ30を支持・固定し、このXYステージ30によってキャリブレーション用シャーレや細胞を収容する細胞反応チップ等の透明容器21を観察位置まで移動する。
図3参照
まず、
a.後述する蛍光試薬を含んだ蛍光試薬水溶液からなる液滴を球状にするため、予め、透明容器21として用いるシャーレ41に疎水化処理を施すか、或いは、透過率を下げないために、ナノスケールの微細凹凸を形成する被膜などを設ける。
b.シャーレ41にシリコーンオイル等の液体42を満たす。
この場合の液体42は高透過率で、低自家蛍光であり、屈折率が蛍光試薬水溶液と近いとともに、蛍光試薬水溶液と界面を形成するという条件を満たせば任意である。
なお、シリコーンオイルを用いる場合には、吸湿性があるため測定時間に注意を要する。
c.キャピラリ31に蛍光試薬水溶液36を充填し、マイクロインジェクション装置にセットする。
d.この段階で、シャーレ41に収容した液体42に励起光源14から励起光22を照射して液体42の自家蛍光を含めた背景画像を冷却CCDカメラ18によって撮影する。
e.キャピラリ31を吐出機構35によって加圧して、シャーレ41内に蛍光試薬水溶液36を微少量滴下して、シャーレ41の底部に蛍光試薬水溶液36の微少な液滴37を形成する。
f.正立型高倍率顕微鏡24を用いて明視野画像をCCDカメラ25で撮像するとともに、励起光源14から励起光22を照射して液滴37からの蛍光23を含めた蛍光画像を冷却CCDカメラ18で撮像する。
g.撮像した明視野画像より、液滴37の直径Dから液滴37の体積Vを求める。
なお、画像と実寸のスケールはあらかじめ計測しておく。
h.撮像した蛍光画像の各ピクセルにおける蛍光強度Is から背景画像の各ピクセルにおける背景強度Ib を引き、全画面、もしくは一定輝度の範囲を総計して蛍光強度の総和I(=Σ(Is −Ib ))を求める。
i.このような計測を吐出機構35による加圧する圧力を変えることにより、液滴37の直径Dを変えて順次行うことによって蛍光強度の総和Iと液滴37の体積Vの比例曲線を得る。
この場合の液滴37の体積Vとしては、必要に応じて10fl〜100plの範囲内で計測を行う。
また、励起光22は液滴37中の蛍光分子が飽和するのに充分な強度とする。
図4は、蛍光強度の総和Iと液滴の体積Vの相関を表す比例曲線であり、ほぼ、
V=12.5〔pl/count〕×I〔count〕
の比例関係にあることが確認された。
但し、球状の液滴37であるため、吐出液体とシャーレ41に満たした液体42の屈折率が大きく異なる場合には得られた直線の傾きに補正を加える。
このため、光の絶対強度を知りたい場合には、別途キャリブレーション作業を必要とするが、本発明の実施例においては、同じ冷却CCDカメラ18を用いているので絶対強度は不要である。
また、異なる冷却CCDカメラを使用する場合も、基準となる冷却CCDカメラとの感度の相対比率さえキャリブレーションすれば、絶対強度は不要である。
図5参照
まず、上述のオフラインキャリブレーションによって、吐出量と蛍光強度との相関関係を取得したのち、キャピラリ31の形状の公差などの誤差要因を取り除くため、細胞に導入する所定の薬液と蛍光試薬を混合した蛍光試薬水溶液を用いて、まず、
A.シャーレ41に収容した水溶液43、例えば、細胞液の組成に近い水溶液に対し、上述のオフラインでキャリブレーションした蛍光試薬水溶液36を吐出する。
この時、
B.吐出量が微少であるため、数秒のオーダでは観測画面内に残滓が留まり、図6に示すように蛍光強度の総和Iは吐出が完全に終了したのち、拡散が進行しているにも拘わらず一定の値を保つため、一定になった蛍光強度総和Iを冷却CCDカメラ17で測定し、測定結果を図4に示した蛍光強度の総和Iと液滴の体積Vの相関関係と対比させて吐出量に換算する。
C.各圧力Pi 及び加圧時間ti における吐出量Vi を求める。
D.要求される吐出量を満たすための圧力と加圧時間の条件を内挿もしくは外挿する。
図7参照
図7は、本発明の実施例2に用いる細胞保持容器の説明図であり、透明プラスチック基板51上に2段構造の細胞収容槽部52と1段構造の第1計測用槽55及び第2計測用槽56とを設ける。
なお、細胞収容槽部52と第1計測用槽55及び第2計測用槽56との間隔は、各槽に収容する溶液が互いに混ざらない間隔とする。
このSi製細胞チップ53の各細胞収容部の底部には吸引孔(図示は省略)が設けられており、細胞収容槽部52の下段部に設けられた吸引口(図示は省略)を介して細胞54を吸引固定している。
上記の結果を用いて、キャピラリ31からの吐出量Vi が所望の値となるように圧力Pi 及び加圧時間ti を調整しながら細胞54に蛍光試薬水溶液36をインジェクションする。
特に、蛍光試薬水溶液36が細胞54内にインジェクションしなくても、細胞54と接触するだけで作用する場合に有効となる。
なお、この時、キャリブレーション用槽に細胞が存在しても問題はない。
再び、図1参照
(付記1) 中空尖頭部を有する微少物質吐出部材1に充填した液体を圧力によって小胞体内へ吐出させて反応を観測する小胞体への物質導入装置であって、前記微少物質吐出部材1を用いて蛍光試薬を含んだ第1の溶液2を前記第1の溶液2と界面を生じない第2の溶液4中へ吐出して蛍光強度を検出する蛍光強度検出手段6、予め計測した蛍光強度と吐出量との相関に基づいて前記蛍光強度検出手段6により検出した蛍光強度から吐出量を求める吐出量算出手段、前記吐出量算出手段で算出した吐出量から前記微少物質吐出部材1の吐出量と圧力及び加圧時間との相関を求める演算手段、及び、前記演算手段で演算した圧力及び加圧時間と吐出量との相関に基づいて圧力及び加圧時間を制御して吐出量を調整する調整手段とを少なくとも備えたことを特徴とする物質導入装置。
(付記2) 上記液滴からの蛍光7を放出するための励起光を照射する励起光照射手段5を備えたことを特徴とする付記1記載の物質導入装置。
(付記3) 付記1または2に記載の物質導入装置による物質導入方法であって、中空尖頭部を有する微少物質吐出部材1に充填した蛍光試薬を含んだ第1の溶液2を前記第1の溶液2と界面を生じない第2の溶液4中へ吐出して蛍光強度を検出し、予め計測した蛍光強度と吐出量との相関より吐出量を求めたのち、前記算出した吐出量から前記微少物質吐出部材1の吐出量と圧力及び加圧時間との相関を求め、前記求めた吐出量と圧力及び加圧時間との相関に基づいて圧力及び加圧時間を制御して上記小胞体内への第1の溶液2の吐出量を調整することを特徴とする物質導入方法。
(付記4) 上記蛍光強度と吐出量との相関を、微少物質吐出部材1に充填した蛍光試薬を含んだ第1の溶液2を前記第1の溶液2と界面を生じる液体8中へ吐出して液滴を形成し、前記液滴を撮像して取得した画像から前記液滴の直径を計測するとともに、前記液滴の蛍光強度を検出し、前記計測した液滴の直径と前記検出した蛍光強度とから吐出量と蛍光強度との相関を求めることを特徴とする付記3記載の物質導入方法。
(付記5) 上記微少物質吐出部材1が、上記小胞体内への第1の溶液2を吐出する工程に用いる微少物質吐出部材1と別個の微少物質吐出部材1であることを特徴とする付記4記載の物質導入方法。
(付記6) 上記小胞体内への第1の溶液2の吐出量を調整するための吐出量の計測を、前記小胞体内への第1の溶液2の吐出工程においてオンラインで行うことを特徴とする付記3乃至5のいずれか1に記載の物質導入方法。
(付記7) 上記小胞体を保持する容器に、小胞体保持部と、前記小胞体保持部と溶液が混じらないように隔離した位置に計測部とを設け、前記計測部において上記吐出量と圧力及び加圧時間との相関を求めることを特徴とする付記3乃至6のいずれか1に記載の物質導入方法。
(付記8) 上記小胞体内への第1の溶液2の吐出量を調整するための吐出量の計測を、前記小胞体内への第1の溶液2の吐出工程の前に、オフラインで行うことを特徴とする付記3乃至5のいずれか1に記載の物質導入方法。
2 第1の溶液
3 透明容器 4 第2の溶液
5 励起光照射手段
6 蛍光強度検出手段
7 蛍光
8 液体
11 基台
12 倒立型高倍率顕微鏡
13 対物レンズ
14 励起光源
15 フィルタ
16 コリメートレンズ
17 ハーフミラー
18 冷却CCDカメラ
19 蛍光フィルタ
20 反射ミラー
21 透明容器
22 励起光
23 蛍光
24 正立型高倍率顕微鏡
25 CCDカメラ
26 明視野照明用光源
27 明視野照明シャッター
28 コリメートレンズ
30 XYステージ
31 キャピラリ
32 キャピラリホルダ
33 移動ステージ
34 チューブ
35 吐出機構
36 蛍光試薬水溶液
37 液滴
41 シャーレ
42 液体
43 水溶液
50 細胞保持容器
51 透明プラスチック基板
52 細胞収容槽部
53 Si製細胞チップ
54 細胞
55 第1計測用槽
56 第2計測用槽
57 シリコンオイル
58 培養液
Claims (6)
- 中空尖頭部を有する微少物質吐出部材に充填した液体を圧力によって小胞体内へ吐出させて反応を観測する小胞体への物質導入装置であって、前記微少物質吐出部材を用いて蛍光試薬を含んだ第1の溶液を前記第1の溶液と界面を生じない第2の溶液中へ吐出して蛍光強度を検出する蛍光強度検出手段、予め計測した蛍光強度と吐出量との相関に基づいて前記蛍光強度検出手段により検出した蛍光強度から吐出量を求める吐出量算出手段、前記吐出量算出手段で算出した吐出量から前記微少物質吐出部材の吐出量と圧力及び加圧時間との相関を求める演算手段、及び、前記演算手段で演算した圧力及び加圧時間と吐出量との相関に基づいて圧力及び加圧時間を制御して吐出量を調整する調整手段とを少なくとも備えたことを特徴とする物質導入装置。
- 請求項1記載の物質導入装置による物質導入方法であって、中空尖頭部を有する微少物質吐出部材に充填した蛍光試薬を含んだ第1の溶液を前記第1の溶液と界面を生じない第2の溶液中へ吐出して蛍光強度を検出し、予め計測した蛍光強度と吐出量との相関より吐出量を求めたのち、前記算出した吐出量から前記微少物質吐出部材の吐出量と圧力及び加圧時間との相関を求め、前記求めた吐出量と圧力及び加圧時間との相関に基づいて圧力及び加圧時間を制御して上記小胞体内への第1の溶液の吐出量を調整することを特徴とする物質導入方法。
- 上記蛍光強度と吐出量との相関を、上記微少物質吐出部材に充填した蛍光試薬を含んだ第1の溶液を前記第1の溶液と界面を生じる液体へ吐出して液滴を形成し、前記液滴を撮像して取得した画像から前記液滴の直径を計測するとともに、前記液滴の蛍光強度を検出し、前記計測した液滴の直径と前記検出した蛍光強度とから吐出量と蛍光強度との相関を求めることを特徴とする請求項2記載の物質導入方法。
- 上記小胞体内への第1の溶液の吐出量を調整するための吐出量の計測を、前記小胞体内への第1の溶液の吐出工程においてオンラインで行うことを特徴とする請求項2または3に記載の物質導入方法。
- 上記小胞体を保持する容器に、小胞体保持部と、前記小胞体保持部と溶液が混じらないように隔離した位置に計測部とを設け、前記計測部において上記吐出量と圧力及び加圧時間との相関を求めることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の物質導入方法。
- 上記小胞体内への第1の溶液の吐出量を調整するための吐出量の計測を、前記小胞体内への第1の溶液の吐出工程の前に、オフラインで行うことを特徴とする請求項2または3に記載の物質導入方法。
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