JP4862116B2 - SiC含有シートの製造方法 - Google Patents

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本発明は、SiC含有シートの製造方法に関する。
SiCは高強度、高硬度で高熱伝導性を示す耐熱、耐腐食性に優れた高温材料であり、スペースシャトルのノズルや多孔性高温フィルターとして使用されている。また、最近では都市ゴミ焼却炉壁レンガとして需要も高まっている。クラッチ廃材から形状を維持したままシート状SiCを生産できれば、都市ゴミ焼却炉におけるSiCレンガの補強・補修材としてSiCレンガの長寿命化を図ることができる。また、細孔制御したシート状SiCを作製できれば、ジ−ゼルエンジン排気ガス中に含まれるカーボン微粒子除去用フィルターなどの高温排ガス用フィルターとして利用可能である。
ところで、クラッチ板製造会社においては、クラッチ板を切り抜いた後の廃材(クラッチ廃材)が多量に発生する。例えば、あるクラッチ板製造会社では、毎年一億数千枚のクラッチ板を切り抜いた後の廃材(クラッチ廃材)を、毎月130トン埋め立て廃棄している。このクラッチ廃材はその嵩高さのため広い廃棄用地を必要とするので、廃材処理は緊急かつ重要な問題となっている。このクラッチ廃材は、一般に、シリカを主成分とする粘土鉱物、天然・合成繊維、炭素材料の複合材にフェノール樹脂を含浸したシート状厚紙であり、SiC生成に必要な珪素と炭素成分を含み、廃材自体がSiCの原料となり得る。そのため、過去にはクラッチ廃材の有効利用について長年研究がなされている。
例えば、クラッチ廃材を粉砕した粉末を高温(≧1400 ℃)焼成してSiC粉末を作製することが提案されている。しかし、SiC粉末は様々な方法で、既に工業的に生産されており、このクラッチ廃材からのSiC粉末を工業的に展開することは極めて難しく、実用化には至っていない。
クラッチ廃材からのSiC粉末を原料とするものではないが、SiC粉末を原料とした炭化珪素質グリーンシートの製造方法が特開平11−236266号公報(特許文献1)に記載されている。この製造方法は、粒径2μm以上の炭化珪素粉末を10重量%以上含み、かつ粒径1μm以下の炭化珪素粉末が20重量%以上である炭化珪素原料に焼結助剤、有機バインダー、及び可塑材を加え有機溶剤中で混合したスラリーを用いてシート化することで、炭化珪素質グリーンシートを製造するものである。
しかし、特許文献1に記載のように、スラリーを用いてシート化する方法によりシート状SiCを作製するには、SiC微粉末を水などと混ぜ泥しょう鋳込みや押し出し成形などでシート状にして、乾燥後、高温で焼成してSiCシートを作製する。しかし、大きなサイズ(≧30−50cm)になると乾燥中や焼成中に大きなクラックが発生したり、割れたりして一枚のシートを作製することは、現在の技術では非常に難しく、コストも高くつく。従って、高純度SiCウェハーの製造以外、SiCシートを量産したと言う報告は見当たらない。
上記のようなクラッチ廃材の処理という廃棄物処理に関するニーズ、及び製品としてのシート状SiCに対するニーズがあるにも関わらず、SiC生成に必要な珪素と炭素成分を含み、廃材自体がSiCの原料となり得るクラッチ廃材からシート状SiCを製造する方法は提案されていない。
本発明者らの予備的な検討によれば、クラッチ廃材を単に加熱処理するだけでは、レンガの補強・補修材や高温排ガス用フィルターとしての使用に耐え得る程の強度を有するSiC含有シートを製造することはできなかった。
また、SiC粉末スラリーを押し出し成形し高温処理することで、SiCシートを作製することも試みたが、高温処理によって生じる大きな収縮とクラック発生のために、上記強度を有するSiC含有シートを製造することはできなかった。
そこで本発明の目的は、クラッチ廃材等のSiC生成に必要な珪素と炭素成分を含む複合体シートから、適当な強度を有するSiC含有シートを製造する方法を提供することにある。
本発明は、以下の通りである。
[1]複合体シートを予備加熱し、1400〜1600℃で熱処理することを含むSiC含有シートの製造方法であって、前記複合体シートは、セルロースおよび合成繊維の少なくとも一方、炭素粉体および炭素繊維の少なくとも一方、珪藻土並びにフェノール樹脂を含有し、かつ少なくとも前記予備加熱は、複合体シートからの揮発成分雰囲気下で行う前記方法。
[2]前記複合体シートは、セルロース10-30%、合成繊維10-30%、炭素粉体2-12%、炭素繊維2-10%、珪藻土20-50%、及びフェノール樹脂20-40%を含有する[1]に記載の製造方法。
[3]複合体シートが自動車用クラッチ材である[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]揮発成分雰囲気は、二重タンマン管内に前記複合体シートを置き、二重タンマン管の外側を非酸化雰囲気にすることで実現する[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]複合体シートに珪素含有化合物を含浸して成分調整を行った後に、前記予備加熱と加熱を行う[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]複合体シートを600℃以下の温度まで予備加熱し、室温まで冷却し、珪素含有化合物を含浸して成分調整を行った後に、再度加熱を行う[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]1400〜1600℃での熱処理の開始時または途中において、加熱された複合体シートをSi融液に浸漬して成分調整を行った後、さらに熱処理を行う[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]複合体シートの加熱を0.1〜100℃/分の範囲の速度で行う[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]複合体シートの加熱を多段階で行う[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]1400〜1600℃での熱処理を1〜200時間行う[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]SiC含有シートは、SiCに加えてガラス成分を含む[1]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]SiC含有シートは、SiCの含有量が20〜50質量%の範囲である[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13][1]〜[12]のいずれかに記載の方法で得られたSiC含有シートを水蒸気および二酸化炭素ガスで賦活処理することで多孔質SiC含有シートを得る、多孔質SiC含有シートの製造方法。
本発明によれば、レンガの補強・補修材や高温排ガス用フィルターとしての使用に耐え得る程の強度を有するSiC含有シートを製造することができる。
さらに、原料となる複合体シートとしてクラッチ廃材を用いる場合、シート状のクラッチ廃材をそのまま使用することができるため、SiC粉末をシート状に成形するプロセスが省略でき、しかもクラッチ廃材の原料費が"0"であることから、非常に安価なSiC含有シートを生産できる。
クラッチ廃材から安価なSiCシートが生産されると、都市ゴミ焼却炉SiC材への補修シート、家庭用耐熱材料への利用など広い利用・用途が期待される。
本発明は、複合体シートを予備加熱し、1400〜1600℃で熱処理することを含むSiC含有シートの製造方法であって、前記複合体シートは、セルロース、珪藻土、合成繊維、炭素粉体、炭素繊維及びフェノール樹脂を含有し、かつ少なくとも前記予備加熱は、複合体シートからの揮発成分雰囲気下で行うことを特徴とする。
原料となる複合体シートは、代表的には、自動車用クラッチ材である。クラッチ材は、クラッチを製造する前のクラッチ材であっても、クラッチを製造して残ったクラッチ廃材であってもよい。即ち、本発明における自動車用クラッチ材は、クラッチ廃材も含む概念である。但し、上記組成を有する複合体シートであれば、自動車用クラッチ材に限定されない。上記5つの成分は、自動車用クラッチ材の代表的な組成に含まれる成分である。
さらに、前記複合体シートは、セルロース10-30%、合成繊維10-30%、炭素粉体2-12%、炭素繊維2-10%、珪藻土20-50%、及びフェノール樹脂20-40%を含有するものであることができる。この組成は、自動車用クラッチ材の代表的な組成でもある。
セルロースは、例えば、セルロースパルプであることができる。
合成繊維には、特に限定はないが、自動車用クラッチ材の場合には、高い強度を有することを必要とされることから、例えば、アラミド繊維等であることができる。但し、アラミド繊維に限定する意図はなく、それ以外の合成繊維であっても良い。
炭素粉体としては、例えば、グラファイト、カーボンブラックや活性炭などを挙げることができる。
炭素繊維は、炭素系の繊維であれば、特に限定はない。
珪藻土は、板状構造をとる一般的な珪藻土であっても、円筒状であり、筒部が網目状である珪藻土であっても良い。
フェノール樹脂は、特に限定はないが、例えば、レゾール系フェノール樹脂であることができる。但し、レゾール系フェノール樹脂に限定さる意図はなく、それ以外の合成樹脂であっても良い。
本発明の方法では、複合体シートを予備加熱し、1400〜1600℃で熱処理してSiC含有シートを製造するが、その際、少なくとも前記予備加熱は、複合体シートからの揮発成分雰囲気下で行う。複合体シートは、通常、室温から熱処理温度である1400〜1600℃に加熱される。まず、約600℃までの予備加熱では、複合体シートに含まれるフェノール樹脂成分に主に由来する炭化水素ガスが揮発し、炭化が進行する。約600℃までの予備加熱条件によって、炭化の程度(炭化率)は変化するが、フェノール樹脂を基準とすると約60%程度の炭化率となる。複合体シートの予備加熱は、例えば、2〜15℃/分の範囲の速度で行うことが適当であるが、より詳細には、室温から約200℃までは5〜10℃/分の範囲、約200℃から約600℃までは2〜10℃/分の範囲で加熱することが適度な炭化率を得るという観点から好ましい。さらに、600℃を超え1400〜1600℃での熱処理によって、複合体シートに含まれる炭素成分と珪素成分が反応して、炭化珪素が生成する。約600℃から1400〜1600℃への加熱は、1〜10℃/分の範囲で行うことが好ましい。このように、複合体シートの加熱は、加熱により生じる現象を考慮して、多段階で行うことができる。
少なくとも上記予備加熱は、複合体シートからの揮発成分雰囲気下で行い、揮発成分は、前述のように、主にフェノール樹脂成分に由来する炭化水素ガスである。予備加熱を複合体シートからの揮発成分雰囲気下で行うことで、シート形状を維持し、かつ最終的に得られるシートが、所望の強度を有するものとなる。複合体シートの熱処理時の雰囲気は、揮発成分雰囲気であるか、不活性ガス雰囲気であることができる。具体的には、当初は揮発成分雰囲気であり、徐々に不活性ガス雰囲気に変換し、熱処理終了時には、雰囲気中の一部またはすべてのガスを不活性ガスにすることができる。
予備加熱を複合体シートからの揮発成分雰囲気下で行う方法は、特に制限はないが、例えば、二重タンマン管内に複合体シートを置き、二重タンマン管の外側を非酸化(不活性ガス)雰囲気にすることで実現することができる。二重タンマン管内に置かれた複合体シートから発生した炭化水素などのガスは、当初は、二重タンマン管内に充満し、ある程度ガス発生が進むと、二重タンマン管の隙間を介して二重タンマン管外に一部は排出されるが、その際、二重タンマン管内は、二重タンマン管内が減圧にならない限り、炭化水素などのガスで満たされる。但し、600℃以上になると炭化水素などのガスの一部は熱分解による炭化、または、縮合反応を起こしカーボンを生成し、一部は系外に排出される。1400〜1600℃の熱処理温度になると、二重タンマン管の外側を流通する不活性ガスに置き換わる。
二重タンマン管を使用する方法の他に、フェノール樹脂を“蒸し焼き”できるものであれば良く、例えば、不活性雰囲気での高温、高圧釜でも良い。
原料に使用する複合体シートは、セルロース、珪藻土、合成繊維、炭素粉体、炭素繊維及びフェノール樹脂を含有するものであり、炭素成分と珪素成分を含むが、場合によっては炭素成分と珪素成分の比率がSiC生成に最適でない場合もあり得る。そのような場合は、必要により、炭素成分または珪素成分を複合体シートに添加することができる。炭素成分または珪素成分の複合体シートへの添加は、加熱開始前であっても、一度途中まで加熱したものに対して行っても良い。
より具体的には、複合体シートに珪素含有化合物を含浸して成分調整を行った後に、前記加熱を行うことができる。珪素含有化合物としては特に制限はないが、複合体シートに含浸させやすいという観点から、有機珪素化合物にすることができる。珪素含有化合物の含浸量は、複合体シートの組成を考慮してSiC生成に適した組成となるように、適宜決定できる。
あるいは、複合体シートを600℃以下の温度まで加熱し、室温まで冷却し、その後に、珪素含有化合物を含浸して成分調整を行い、再度加熱を行うこともできる。複合体シートを600℃以下の温度まで加熱することで、複合体シート中のフェノール樹脂の少なくとも一部を除去し、シート中への珪素含有化合物含浸を容易にすることができる。
あるいは、1400〜1600℃での熱処理の開始時または途中において、加熱された複合体シートをSi融液に浸漬して成分調整を行った後、さらに熱処理を行うこともできる。Si源として、Si融液を用いるため、複合体シートをSiの融点以上に加熱した後にSi融液を浸漬する。Si融液の浸漬は、熱処理の開始時、またはある程度熱処理が進行した熱処理の途中のいずれで行っても良い。
上記成分調整は、具体的には以下のように実施することができる。炭化したクラッチ廃材中に含まれる残存フリー炭素からSiCを生成するため、珪素成分としてSi-アルコキシド(TEOS)、または、Si 融液を加え、SiC生成に対する成分調整を行う。例えば、(1)不活性雰囲気下、1000℃で焼成した炭化クラッチ廃材を大気中、700℃で加熱し、残存炭素量を決定し、その炭素量に見合ったTEOSを含浸し、>800℃で予備焼成することでクラッチ廃材中にSiO2微粒子を分散する。あるいは、(2)Ar中、1400〜1600℃でクラッチ廃材にSi 融液を含浸する。
1400〜1600℃での熱処理は、例えば、1〜100時間行うことができる。加熱時間は、加熱温度及び生成物を考慮して適宜決定できる。
本発明の製造方法で得られるSiC含有シートは、SiCを主成分として含有し、例えば、SiCの含有量が 20 〜 50 質量%の範囲である。好ましくはSiCの含有量が40〜60 質量%の範囲である。また、SiC以外の成分としては、ガラス成分を含むことができる。ガラス成分を含むことで、SiC粒子や繊維同士を結合させるバインダーのような役割を果たし、シートの強度増大に役立つ。
上記本発明の製造方法で得られるSiC含有シートは、例えば、セルロース、合成繊維や炭素繊維から生成した繊維状SiC、多孔性珪藻土から得られるSiC、フェノール樹脂の炭化で生成するカーボン微粒子から生成するSiC粒子からなる複合体である。それに対して、この複合シートを水蒸気および二酸化炭素ガスで賦活処理し、炭素成分の一部を揮散させ、1400〜1600℃で高温処理することで多孔質SiC含有シートを得ることができる。得られた多孔質SiC含有シートは、高温排ガスフィルターとしての用途がある。多孔質の細孔分布は、水蒸気や二酸化炭素ガス分圧を変えることで任意に変えられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
3種類の試料( 2 cm× 1 cm× 1 mm)を、それぞれアルミナボードに乗せ、図1に示すように、二重タンマン管に入れ、さらに、二重タンマン管を炉心管内に置いた。試料の組成は、以下のとおりである。
・サンプルB(珪藻土約3%、カーボン約10%(活性炭)、有機成分)
・サンプルC(珪藻土約40%、カーボン約15%、有機成分(繊維質))
・サンプルD(珪藻土約15%、カーボン約35%(グラファイト)、有機成分)
尚、カーボンには、炭素粉体および炭素繊維が含まれ、有機成分には、セルロース、合成繊維及びフェノール樹脂が含まれる。
炉心管内にアルゴンガスを約75ml/minで流して、600℃までは1.5〜20℃/minの速度で昇温し、その後5℃/minで1400℃まで加熱しこの温度で3時間保持した後、室温まで放冷し、SiC含有シートを得た。得られたシートの写真を図2に示し、SEM写真を図3に示す。
得られたシートの組成は、炭素成分が40〜60Vol%であり、SiC成分が40〜60Vol%となる。
本発明により得られるSiCシートは、例えば、ゴミ焼却炉用SiCレンガに接着セメントで貼り付けると、ゴミ焼却ガス中で激しく酸化・腐食されるSiCレンガの補強・補修材として利用できる。また、焼成粘土レンガへの補強材としての適用も可能となる。さらに細孔を制御した多孔性SiCシートはジ−ゼルエンジン排気ガス中に含まれるカ−ボン微粒子除去用フィルターなどの高温排ガス用フィルターとして用途がある。
加熱炉の概略説明図。 実施例1で得たシートB、C、Dの写真。 実施例1で得たシートB、C、DのSEM写真。

Claims (4)

  1. 複合体シートを予備加熱し、1400〜1600℃で熱処理することを含むSiC含有シートの製造方法であって、前記複合体シートは、シリカを主成分とする粘土鉱物、天然・合成繊維、炭素材料の複合材にフェノール樹脂を含浸したシート状厚紙であり、かつ、前記予備加熱は、二重タンマン管内に前記複合体シートを置き、二重タンマン管の外側を非酸化雰囲気にして、1.5〜20℃/minの範囲の速度で600℃まで加熱する、前記方法。
  2. 前記複合体シートは、セルロース10-30%、合成繊維10-30%、炭素粉体2-12%、炭素繊維2-10%、珪藻土20-50%、及びフェノール樹脂20-40%を含有する請求項1に記載の製造方法。
  3. 複合体シートが自動車用クラッチ材である請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 1400〜1600℃での熱処理を1〜200時間行う請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
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