化学パルプを製造するためのパルプ製造用化学薬品と細砕セルロース繊維材との反応は、摂氏140〜180度(℃)の温度が必要である。チップ処理に使われる化学薬品水溶液はそのような温度で蒸発するので、商業的な化学パルプ製造は、一般に、最低約10バール(ゲージ)(約150psig)の圧力の下で耐圧槽、例えば連続蒸解缶で行われる。この圧力を維持するため、特に連続パルプ製造プロセスを実施するときは、高圧フィーダー(以下、「HPF」ということがある)を用い、前記の槽、例えば蒸解缶に入るチップスラリーの圧力を前記の槽の圧力またはそれ以上の圧力レベルに上げて、チップを圧力槽に導入するときに圧力損失が生じないようにする。
本発明は、高圧連続蒸解缶および/または他の高圧チップ処理システムにチップを供給するための輸送システムに関する。高圧チップ処理システムは、一般に米国特許第6,669,410号明細書に示されるようなHPFを備える。HPFは、低圧の細砕セルロース繊維材スラリー(「チップスラリー」)を受け入れ、高圧のチップスラリーを送り出す。高圧スラリーは、連続蒸解缶、チップのスチーム処理槽および他の高圧チップ処理システムに導入するのに好適である。
一般に、高圧フィーダーは、ポケット構造付ローターを有し、このポケット構造付ローターは、チップスラリーを低圧から高圧に輸送する手段として作動すると同時に、圧力損失防止バルブとして作動する。ローターは、低圧スラリーを高圧ストリームに輸送するチャンバーを有する。HPFは一般に、その頂部(12時00分の位置)に低圧入口ポートを、その底部(6時00分の位置)に低圧出口ポートを、その第一側部(9時00分の位置)に高圧入口ポートを、その逆の第二側部(3時00分の位置)に高圧出口ポートを有する固定ハウジングを備える。フィーダーハウジングのローターは、低圧入口ポートと低圧出口ポートのペアを交互に開き、次いで高圧入口ポートと高圧出口ポートのペアを開く。2つの低圧ポートは、2つの高圧ポートが開いている間は開かないし、その逆も同様である。低圧の入口および出口ポートが開いているとき、新しい量のチップスラリーがローターチャンバーに入り、いくらかの液体が出口からパージされる。ローターが高圧の入口および出口を開くと、高圧液体が入り、ローターチャンバーのチップスラリーを高圧出口から高圧導管に押し流す。
HPFのフィーダーハウジングの頂部ポート(12時00分の位置)は、チップと液体のスラリーがフィーダーに導入される低圧入口ポートである。つまり、頂部ポートは従来から低圧チップスラリーの入口であった。しかし、米国、ニューヨーク州グレンズフォールズ(Glens Falls)所在のアンドリッツ社(Andritz Inc.)販売のローレベル(LO-LEVEL)(商標)フィードシステムを特徴付けるポンプ供給にあっては、スラリーポンプからの高圧のスラリー流れは、設備の必要に応じてどんな位置にでも配置されるHPFの低圧入口に導入可能である。ポンプで供給されたスラリーは、物理的にHPFの頂部、両側、底部に位置するポートに、あるいは斜めの角度に位置するポートにさえ、すなわち、どんな所望の位置のポートにも導入することができる。
低圧スラリーがHPFの低圧入口に導入されると、回転ローターの送り出しポケットの一個または複数個以上にスラリーが入る。HPFの低圧出口は低圧入口の反対側に位置する。スラリーが低圧入口と送り出しポケットの一つの第1端に導入されると、スラリーはローターポケットに、ポケットの第2端である反対側の方向に、この場合、ポケットの下端の方向に、低圧出口の方向に流れる。HPFの低圧出口ポートは、普通、スクリーンエレメント、例えば鋳鋼製水平バータイプのスクリーンエレメントが設けられている(例えば、米国特許第5,443,162号明細書に開示のスクリーンエレメントを参照)。このスクリーンエレメントは、フィーダーのローター内にスラリー中のチップを保持するとともに、スラリー中の液体の一部分をポケットの第2端からスクリーン経由で流すことを可能にする。低圧出口から排出された液体は、従来は、チップ供給システムに、HPF上流のチップスラリーの流れに再循環されてきた。低圧出口にあるスクリーンの問題点は、チップの一部がスクリーンを通過してしまうことである。これらのチップは、蒸解缶で再処理しようにも利用できない結果になる。
HPFのローターポケットに導入されるチップは、スクリーンエレメントで保持されたチップを含み、ローターの回転作用で輸送される。ローターが普通1/4回転すると、前に低圧入口と流通していたポケットの第一端は今度、HPF高圧出口と流通する。高圧出口は、普通、連続蒸解缶または回分蒸解缶のいずれかの蒸解缶の入口と一本以上の導管で流通している。同時に、ローターの回転により、前は低圧出口と流通していた送り出しポケットの第2端は、高圧入口と流通する。高圧入口は、普通、高圧水ポンプから高圧液体の流れを受け入れる。この液体の圧力は、約5〜15バール(ゲージ)の範囲が一般的で、普通、約7〜10バール(ゲージ)である。この高圧液体が、チップと液体とのスラリーを送り出しポケットから送り出し、高圧出口から排出し、最終的には蒸解缶入口に流入させる。
ローターが回転を続けると、高圧流体を受け入れたポケットの第2端は、次いで低圧入口と流通し、低圧入口と接続している導管から新たなスラリーの供給を受け入れる。同様に、ポケットの第1端は、回転により、ハウジングのスクリーンエレメントを備える低圧出口と流通する。上記のプロセスを繰り返すことにより、ローターの一回転が完結する間に、各送り出しポケットは、チップと液体を二回受け入れ、排出する。ローターは、普通、少なくとも二個、典型的には四個の送り出しポケットを備え、ローターが回転するにつれて低圧入口からスラリーを受け入れて高圧出口からスラリーを排出するサイクルが繰り返される。これらのポケットの端部は、ローターの回転位置に依存して、スラリーの入口になったり、出口になったり両方の役目を果たす。
図1と図2に示されるシステムは、連続蒸解缶システムであるけれども、本発明の方法とシステムとは、一基または複数の基数の回分蒸解缶、連続蒸解缶に接続された浸透槽、または他の高圧処理システムに供給するためにも使用し得ると理解される。連続蒸解缶は、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、ソーダパルプ、または同様なパルプを製造するプロセスに使用し得る。
図1は、細砕セルロース繊維材、例えば針葉樹チップのスラリーを連続蒸解缶11の頂部に供給するチップ供給システム10を示す。蒸解缶11は、一般に頂部セパレーターを備えるが、頂部セパレーターには、スラリーから過剰の液体を抜き出して供給システム10に戻すために液抜き出しスクリーン12が蒸解缶11の入口付近に設けられている。また、蒸解缶11は、当パルプ製造中、またはその後に使用済み蒸解液の抜き出しを行うための液抜き出しスクリーン14を少なくとも1基備えることができる。
蒸解缶11は、また通常他に1基または複数基の液抜き出しスクリーン(図示せず)をさらに備えている。これらの液抜き出しスクリーンは、蒸解液循環系、蒸解缶蒸解循環系、または液抜き出し導管と希釈液添加導管を有する蒸解缶循環系に関連して設けることができる。蒸解液、例えばクラフト白液、黒液または緑液を、これらの循環系に添加することもできる。蒸解缶11は、また製造された化学パルプを排出するための出口15も備えており、製造された化学パルプは、洗浄や漂白などの処理をさらに行うように後の工程に送ることができる。
チップ供給システム10は、チップ貯蔵ビン21に導入された細砕セルロース繊維材20を受け入れる。一般に、繊維材20は針葉樹または広葉樹チップであるが、どんな形の細砕セルロース繊維材、例えばおがくず、草、藁、バガス、ケナフ、または他の農業廃棄物またはこれらの組合せチップも使用し得る。「チップ」という用語が本明細書において細砕セルロース繊維材を称するものとして用いられるが、この用語は、木材チップに限定されるものではなく、どんな形の上記の細砕セルロース繊維材または類似のものを称するものであることが理解される。
チップ貯蔵ビン21は、振動排出装置を備えた従来のビン又は米国特許第5,500,083号明細書に記載され、米国、アンドリッツ社から販売されているダイヤモンドバック(DIAMONDBACK)(商標)型スチーム処理槽である。チップ貯蔵ビン21は、その入口にエアロック装置と、貯蔵ビン内のチップレベルをモニター・制御する手段と、貯蔵ビン内の圧力をコントロールする適切なメカニズムを含むことができる。スチームは、新しいものでも、あるいは廃液の蒸発から発生されたスチーム(すなわちフラッシュされた蒸気)でもよいが、普通、1本以上の導管22経由で貯蔵ビン21に加えられる。
チップは、通常、貯蔵ビン21から計量装置23、例えばスクリュー式計量装置に排出され、次いで計量装置23から、圧力遮断装置24、例えば低圧フィーダーに排出される。圧力遮断装置24は、その上流にあるチップ供給システムに存在する実質的大気圧から加圧水平処理槽25を遮断するものである。
処理槽25は、高圧スチーム、例えば約10〜20psigのスチームでチップ材を処理するのに用いられる。処理槽25はスクリューコンベヤーも備えることができる。スチームは、新しくきれいなものでも、またはフラッシュされたものでもよいが、1本以上の導管28経由で処理槽25に加えられる。
処理槽25での処理の後、チップスラリーは、高圧輸送装置27、例えば米国、ニューヨーク州グレンズフォールズ(Glens Falls)所在のアンドリッツ社(Andritz Inc.)販売の高圧フィーダー(HPF)に輸送される。一般に、スチーム処理されたチップ材は、チップシュートなどの導管またはシュート26によって高圧フィーダー27に輸送される。熱せられた蒸解液、例えば使用済みクラフト黒液と白液との混合液が、一般に導管29からシュート26に添加され、チップと液体とのスラリーがシュート26に生成される。加圧処理槽25と圧力遮断装置24は、米国特許第5,000,083号明細書に開示され、アンドリッツ社からダイヤモンドバック(DIAMONDBACK)(商標)スチーム槽として販売されているスチーム処理槽によって代替することができる。
前記の高圧フィーダー(HPF)27は、チップシュート26に接続された低圧入口(12時00分の位置)と、導管30に接続された低圧出口(低圧入口の向かい側で6時00分の位置)とを有するローターハウジングを備えている。前記HPFのハウジングは、また導管33に接続された高圧入口(9時00分の位置)と、導管34に接続された高圧出口(高圧入口の向かい側で3時00分の位置)とを備えている。
HPF、特にそのポケットローター35は、可変速電気モーターと減速機(図示せず)で駆動される。低圧入口からは、加熱されたチップスラリーがシュート26からローター35のポケットに送入される。HPFハウジングの低圧出口にあるスクリーン36により、ローターポケットにチップは保持されるが、液体は、ローターを通過して導管30経由で抜き出される。
ローター35が回転すると、ローターポケット内に保持されていたチップは、導管33経由で9時00分の位置の高圧入口に入ってくる高圧液体に曝される。ローターポケットに入ってくる高圧液体により、チップはフィーダーから洗い流し出され、3時00分の位置の高圧出口経由で導管34に排出される。得られた高圧チップスラリーは、導管34経由で蒸解缶11の頂部に送入される。
蒸解缶11の入口に達すると、導管34のチップをスラリー化するのに使用された過剰の液体の一部分がスクリーン12経由でスラリーから取り除かれる。スクリーン12で取り除かれた過剰の液体は、導管33経由でポンプ32の入口に戻される。導管33内の液体は、必要に応じて新鮮な蒸解液が添加され、ポンプ32で加圧され、フィーダー27でチップを洗い流すための高圧液体として使用される。
フィーダー27の低圧出口(6時00分の位置)から排出された低圧液体(およびスクリーン36から流出したチップ)は、導管30に流出する。導管30の液体とチップのスラリー流れは、1基またはそれ以上のポンプ37で加圧される。ポンプは少なくとも1基で、好ましいのは1〜4基のスクリュー羽根車ポンプを直列に配列したものである。これらのポンプ37は、導管30からのスラリーを増加させるので、導管31内のスラリーは、チップスラリー導管34と同一の高圧になる。
導管31内の加圧されたチップスラリー流れは、導管接続点38で、導管34内の加圧された流れと一緒になる。導管31と34内の両スラリーの高圧流れは、導管接続点38と蒸解缶11の頂部セパレーター12との間にある導管39において合流する。導管31内のチップスラリー流れは、導管34内の液体/チップ比率よりも実質的に大きい液体/チップ比率を有し得る。従って、導管31からの液体含有率が高い流れを追加すると、導管39内の液体/チップ比率は上昇し得る。
導管30と導管31内を通る流れの量は、導管34内の流量に較べて相対的に少なくてよい。低圧出口(導管30と31)からのチップスラリーを高圧出口(導管34)からのチップスラリーと合流することによって、導管30内のチップは蒸解缶11に指向される。従来の液処理システムでは閉塞の問題を起こした、低圧出口流(導管30)中のチップは、蒸解缶に導入されて、利用される。
1基またはそれ以上のポンプ37は各々、スクリュー遠心羽根車スラリーポンプ、または他の加圧・輸送装置、例えばピストン型固体輸送ポンプまたは高圧エダクターでよい。好ましくは、例えば4基までの複数基の加圧・スラリー化ポンプ37を用いて、スラリーを導管30と31に輸送し、低圧排出流れを加圧する。ポンプ37は、英国、ニューベリー(Newbury)所在のハイドロスタル社(Hidrostal Ltd)販売のスクリュー遠心羽根車ポンプおよび/または米国、ユタ州ソルトレークシティ所在のウェアースペシャリティポンプ社(Weir Specialty Pump)製造のウェムコ(Wemco)(商標)ポンプでよい。
オプションの導管40は、導管33からの液体(蒸解缶の頂部セパレーターからの液体)の一部を、チップ供給システム、例えばチップシュート26、チップ貯蔵ビン21または処理槽25に導入する。バルブ(図示せず)を用いて、導管33内の導管40に向かう流れ部分を制御することができる。導管40の流れを制御するバルブは、導管29にあるのが好ましいが、導管33、40、45および29によって規定されるループ内の何処にあってもよい。サンドセパレーター42とインライン排出器43は、特に導管40と導管29の間に設けることができる。サンドセパレーター42は、液体から砂と異物を除去するサイクロンタイプのセパレーターでよい。インライン排出器43は、過剰の液体を導管45から取り出し、導管46に排出する静的な篩分装置でよい。導管46はレベルタンクに接続することもできる(図2を参照)。インライン排出器43で取り出されなかった液体は、導管29を通過し、チップ供給システムに再導入される。
図2は、蒸解缶にチップを供給するための別のチップ供給システム110を示す。このシステム110は、米国特許第5,476,572号、第5,622,598号および第5,635,025号の各明細書に記載のプロセスと装置を用いる。本発明の効果をもたらすように用いられるこの装置とプロセスは、米国、アンドリッツ社よりローレベル(Lo-Level)(商標)という名称で包括的に販売されている。図2中の部品で、図1のものと同一の部品は、同じ参照数字で示され、図1のものと同様の部品、または同様な機能を果たす部品は、図1の参照数字の前に数字「1」を付加して示される。
図1のチップ供給システム10と同様に、図2においてチップ20はスチーム処理槽121に導入され、そこで導管22を経て導入されるスチームに曝される。スチーム処理槽121の排出口は計量装置123、さらに導管126に連結されている。導管126は、米国、アンドリッツ社販売のチップチューブ(Chip Tube)であることが好ましい。蒸解液は、普通、図1の導管29と同様の導管55経由で、チップチューブ126に導入される。スチーム処理槽121は米国特許第5,000,083号明細書に記載のようなダイヤモンドバック(DIAMONDBACK)(商標)スチーム処理槽が好ましいので、図1に記載の圧力遮断装置24や図1の加圧スチーム処理槽25はなくてもよい。米国特許第5,476,572号明細書に開示されているように、チップと液体とのスラリーをHPF(高圧フィーダー)27に直接排出する代わりに、導管50に続く高圧のスラリーポンプ51を用いて、導管52経由でチップをHPF(高圧フィーダー)27に輸送する。
ポンプ51は、ポンプ37と同一タイプのスクリュー遠心羽根車ポンプまたは他のポンプであることが好ましい。ポンプ51を経て送られるチップは、図1について図示されたと同様に高圧フィーダー27で蒸解缶11に輸送される。
図1に示された態様と同じように、蒸解缶11から抽出され、導管33に流入した液体の一部は、オプションとして導管40に分岐し得る。導管40の液体は、サンドセパレーター42、導管45、インライン排出器43および導管144を経由して液体レベルタンク53に送られる。
液体レベルタンク53は、導管54経由でポンプ51の入口に十分の量の液体を供給することを確保する。このタンク53は、また導管55経由でチップチューブ126にも液体を供給することができる。また、このレベルタンク53は、所望ならば、作業者がチップ供給システムの液体レベルを変えて、液体レベルを計量装置123の上までにしたり、またはスチーム処理槽121までに上げたりすることを可能にする。
インライン排出器43で排出された過剰の液体は、オプションとしてこのインライン排出器43と接続された導管61経由で第2レベルタンク60に流入される。タンク60からの液体は、導管62、ポンプ63および導管64経由で蒸解缶11に送出される。
本発明は、最も実際的かつ好ましい態様と考えられたものに関して記載されているが、本発明は、開示された態様に限定されず、逆に、特許請求の範囲に含まれる種々の改良や均等の改変を包含することが理解される。