JP4857744B2 - Mems振動子の製造方法 - Google Patents
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Description
ディスク型MEMS振動子210は、シリコンからなる半導体基板201上に、窒化膜211と、酸化膜からなる第一の犠牲層212と、第二の犠牲層213と配線層214が順次積層して形成され、第一及び第二の犠牲層212,213と配線層214の略中央部に、略円筒形状もしくは矩形状を有する開口部C3が設けられている。開口部C3の凹底部である窒化膜211上には、多結晶シリコンからなる円盤状の振動部221aと、アンカー部222a〜222dとで構成される振動子構造体221が備えられている。振動子構造体221の中心の円盤状の振動部221a周辺は、第一及び第二の犠牲層212,213が除去され可動電極になっている。振動子構造体221の振動部221aの外周から外側に梁部により放射状に形成されたアンカー部222a〜222dの終端は、周辺の第二の犠牲層213と配線層214に挟まれて支持されている。前記振動子構造体221は、窒化膜211との間に隙間を設けて備えられており、振動部221a周辺の第一の犠牲層212及び第二の犠牲層213を除去した場合に可動電極となる。また、振動子構造体221の振動部221aを挟んだ二方向には、固定電極としての一対の電極構造体231a,231bが、それぞれの先端部を振動部221aに向けて形成されている。各電極構造体231a,231bは、第二の犠牲層213を介して前記振動部221a端の一部と重なるように配置され、その後、振動部221a周辺の第一及び第二の犠牲層212,213を除去することで開口部C3に露出する先端部が可動状態となり、他端部は第二の犠牲層213と配線層214の間に挟まれて支持されるため、片持ち支持状態で形成される。各電極構造体231a,231bは、それぞれの先端部が振動部221aの僅か手前で一旦垂直方向に屈曲してから、再び振動部221aの中央部に向かって水平に屈曲して形成される。この様に各電極構造体231a,231bは、振動部221aに接触しないように隙間を設けて形成されており、振動部221aの構造体側面及び端部の天面との間に対向容量を有する構造となる。
ディスク型振動子210の駆動電極(電極構造体231a)に駆動電圧を注入すると、振動部221aとの間に電位差が生じ、これに伴い電荷が蓄電される。従って、通常のキャパシタと同様に駆動電極(電極構造体231a)と振動部221aとの間には電流が流れる。これは検出電極(電極構造体231b)と振動部221aの間においても同様であり、ディスク型MEMS振動子210全体には、2つのキャパシタを直列に接続した場合の静電容量値に相当した電流が流れる。これを式に表すと以下の通りとなる。
この結果、MEMS型振動子210は特定の周波数において電流値が増加し、周波数特性においてピークを生じ、振動子として動作する。
この場合、本来望まない容量成分が振動部221aと各電極構造体231a,231b間に形成され、尚且つ前記の通り、各電極構造体231a,231bはそれぞれが片持ち梁構造となるため、固有振動周波数を有する事となる。
従って、例えば、振動部221aの振動周波数と電極構造体231a,231bの固有周波数が近くなった場合には、本来固定されるべき電極構造体231a,231bが振動し、この振動が固定電極としての電極構造体231a,231bから検出される振動周波数に悪影響を及ぼす虞がある。例えば、発振回路として使用した場合の発振周波数とび(周波数ジャンプ)が起こるなどの不具合を引き起こす可能性があった。
以下、本発明のMEMS振動子についてディスク型MEMS振動子を例にとり、具体化した実施形態について説明する。
ディスク型MEMS振動子10の駆動電極(電極構造体31a)に駆動電圧を注入すると、振動部21aとの間に電位差が生じ、これに伴い電荷が蓄電され、通常のキャパシタと同様に駆動電極(電極構造体31a)と振動部21aとの間には電流が流れる。これは検出電極(電極構造体31b)と振動部21aの間においても同様であり、ディスク型MEMS振動子10全体には2つのキャパシタを直列に接続した場合の静電容量値に相当した電流が流れる。
一方で、振動部21aは特定の周波数において固有の振動周波数を有し、また、ディスク型の振動子では高次の振動モードを動作に用いており、特定の周波数において平面方向へ屈曲が生じる。この場合、前述した電極構造体31a及び31bと振動部21aとの間の静電容量に変位が生じ、各構造体間に形成されるキャパシタには電圧に相当した電荷が蓄電されているが、静電容量が変動した場合、キャパシタへの蓄電量Q=CVを満足させるために電荷の移動が生ずる。この結果、振動部21aの固有振動周波数においては、静電容量の変化に伴い電流が流れる。振動部31からの出力電流は一方の電極構造体31bから検出される。
本実施形態では、本来振動することを望まない固定電極(電極構造体)の幅方向断面が階段形状を有するときと、平板形状のときの振動解析を、固定電極(電極構造体)に見立てた構造体の厚みを変化させて行なった。以下にその解析結果を説明する。
図5は、本解析に用いた構造体のうち、幅方向断面が階段形状を有する構造体の形状を示しており、図5(a)は構造体41の平面図、同図(b)は断面図である。
図5に示すように、構造体41の幅方向断面は、底部略中央に所定の長さの平坦部を有し、該平坦部両端がそれぞれ一旦上方に略垂直に折れ曲って僅かに延びてから、さらに外側方向に略水平に折れ曲った階段形状を有している。この構造体41の一端部を固定部に固定し、他端部側が長さLにて片持ち支持されるようにした。このとき、構造体41と幅方向断面が平板形状の構造体の長さLは2μmで統一し、幅方向断面が平板形状の構造体の幅は、図5中の幅W1に合わせた。また、本実施形態の振動解析では、上記の構造体41の上面から1MPaの圧力を均等に印加し、そのときの構造体41の厚み方向の振動変位量を解析した。なお、幅方向断面の形状が平板形状の構造体についても、同様の方法にて解析した。そして、構造体41及び幅方向断面が平板形状の構造体のそれぞれの厚さT2を、0.3μm、0.5μm、0.8μm、1μm、1.5μm、2μmとして解析した。
このときの解析結果を図6に示す。図6のグラフでは、横軸に構造体の厚みT2をとり、縦軸には、構造体41及び幅方向断面が階段形状を有する構造体それぞれの、各厚み(T2)における、厚み方向の変位量の比((幅方向断面が階段形状の構造体の変位量)/(幅方向断面が平板形状の構造体の変位量))を変位比率と定義してパーセンテージで示している。
上記の解析結果から、MEMS振動子においては、本来振動を望まない固定電極が片持ち構造となって固有周波数を有する場合に、その幅方向断面を階段形状にすることによって固有周波数を変化させる効果を奏することがわかる。また、発明者の解析結果によれば、図5に示す構造体41の階段形状の高さT1を調整することによって、構造体41の固有周波数をある程度任意に調整することが可能であることも確認された。
ディスク型MEMS振動子10は、シリコンからなる半導体基板1上に順次積層された窒化膜11、第一の犠牲層12、第二の犠牲層13、第三の犠牲層14、及び配線層15の略中央に、開口部C1を形成した。そして、開口部C1の凹底部の窒化膜11上の略中央に、アンカー部22a〜22dで支持されることにより窒化膜11と隙間を介して略平行に設けられた振動部21aを備えた振動子構造体21を設けた。さらに、第三の犠牲層14と配線層15に一端部が挟まれて支持され、他端部(先端部)を振動部21aに向けて片持ち支持構造で設けた電極構造体31a,31bを、幅方向断面が階段形状になるようにして形成した。
この構成によれば、電極構造体31a,31bは片持ち支持されているため一定の固有周波数を有するが、その幅方向断面が階段形状を有した所謂リブ構造と近似な補強構造を備えている。これにより、例えば電極構造体31a,31bの幅方向断面が平板形状の場合よりも剛性が増すので、固有周波数を変化させることができる。これにより、本来振動させたい振動子構造体21の振動周波数と、電極構造体31a,31bの固有周波数を十分離すことが可能となり、振動子構造体21の振動に対して電極構造体31a,31bの振動による影響を回避することが可能となる。また、リブ構造と近似な補強構造を有することにより、電極構造体31a,31bの基板厚み方向への振動量を抑圧できるため、スプリアスの発生量を抑えることができる。従って、優れた振動特性を有するMEMS振動子(ディスク型MEMS振動子10)を得ることができる。
次に、振動子構造体と電極構造体を備えたMEMS振動子の製造方法について説明する。MEMS振動子の製造においては、半導体プロセスが用いられている。図2、図3、図4は、MEMS振動子の一例としてのディスク型MEMS振動子10の製造工程を示す概略断面図である。なお、図2、図3、図4は、特に電極構造体31の幅方向断面の階段形状に形成する方法を説明する便宜上、図1(c)と同じ位置の断面を示している。
最後に、フォトレジスト101を剥離することにより、振動子構造体21、及び電極構造体31を備えたディスク型MEMS振動子10が得られる。
次に、図7(c)に示すように、振動子構造体61が形成された第一の犠牲層52上に、第二の犠牲層53をやや厚めの所定厚みにて堆積させたのち、その上にフォトレジスト111を塗布する。この第二の犠牲層53は、後述する電極構造体71の下側の外形、及び電極構造体71と振動子構造体61との所定の隙間を形成するための犠牲層となる。まず、図7(d)に示すようにフォトレジスト111をパターニングして所望のフォトレジスト111パターンを形成してから、第二の犠牲層53をフォトリソグラフィ法やエッチング法などによってパターニングする。この時、第二の犠牲層53のエッチング量を制御することで、図8(a)に示すように電極構造体71の幅方向断面の階段形状の底辺部分の幅、及び底辺部分の両端部の立ち上がり高さ等の原型となる凹部S3が形成される。
次に、図8(b)に示すように、上記凹部S3が形成された第二の犠牲層53上に、多結晶シリコン膜70を積層させたのち、フォトレジスト121を塗布してからフォトリソグラフィ法により所定のレジストパターンを形成する。そして、この多結晶シリコン膜70をフォトレジスト121パターンを介してエッチングすることにより、図8(c)に示すように、幅方向断面が階段形状を有する電極構造体71を形成する。
次に、図8(d)に示すように、スパッタリング法などによって配線層54を形成したのち、図9(a)に示すように、フォトレジスト131を塗布する。そして、フォトレジスト131をフォトリソグラフィ法によってパターニングして、後述する開口部C2を形成するためのフォトレジスト131パターンを形成する(図9(b))。
次に、図9(c)に示すように、上記のフォトレジスト131パターンを介して、配線層54を、少なくとも電極構造体71が露出する深さまでエッチングする。
続いて、ウェットエッチング法により、振動子構造体61及び電極構造体71の周辺部を覆っている第一の犠牲層52、第二の犠牲層53、及び上記ドライエッチングで残っている配線層54を除去するリリースエッチングを行なう。すると、図9(d)に示すように、第一の犠牲層52、第二の犠牲層53、及び配線層54の略中央部に開口部C2が形成されるとともに、振動子構造体61が、窒化膜51と略平行な隙間を設けてリリースされる。さらに、幅方向断面が階段形状となった電極構造体71が、振動子構造体61との間に所定の隙間を設けて片持ち支持されるように形成される。そして最後に、フォトレジスト131を剥離することにより、振動子構造体61、及び電極構造体71を備えたディスク型ディスク型MEMS振動子80が得られる。
上記第1及び第2の実施形態、あるいは変形例1で示した電極構造体31a,31bの幅方向断面の階段形状は、これに限らず次のような形状としてもよい。
図10は、MEMS振動子における、電極構造体の幅方向断面形状の他例を概念的に示す、幅方向の断面図である。
図10(a)の電極構造体151は、上記第1及び第2の実施形態、あるいは変形例1の電極構造体31a,31b、71の幅方向断面の形状を、上下逆さまにした形状を有している。
図10(b)の電極構造体161は、上記第1及び第2の実施形態、あるいは変形例1の電極構造体31a,31b、71の幅方向断面が二段階の階段形状であるのに対して、三段階の階段形状を有している。
また、図10(c)の電極構造体171は、図10(b)とは上下逆さまにした断面形状を有している。
上記の構成の電極構造体は、上記第2の実施形態及び変形例1で説明した製造方法によって製造可能であり、各電極構造体151,161,171の断面形状各部の寸法を調整することによって、片持ち支持された部分の固有周波数を調整して製造することが可能である。従って、振動特性に優れたMEMS振動子の提供に寄与することができる。
上記第1〜3の実施形態では、ディスク型MEMS振動子10の構造、及びディスク型MEMS振動子10,80の製造方法について説明したが、これに限定されない。MEMS振動子として広く知られた櫛型(Comb型)振動子、あるいはビーム型(梁型)振動子などの振動子を備えたMEMS振動子の構造、及びその製造方法としても有効である。換言すれば、所望の振動特性を備えた振動子構造体(可動電極)と、本来振動を望まない駆動用途や検出用途の電極構造体(固定電極)を備えたMEMS振動子において、本発明は前述した効果を奏するものである。
Claims (1)
- 半導体基板と、該半導体基板上に支持され機械的に可動な可動電極と、前記半導体基板に支持され一端が開放され他端が固定される片持ち支持構造の固定電極と、を有し、前記可動電極と前記固定電極の一端とが間隙を介して配置されるMEMS振動子の製造方法であって、
前記半導体基板にエッチングストップ膜を形成する段階と、前記エッチングストップ膜上に第一の犠牲層を形成する段階と、前記第一の犠牲層上に前記可動電極を形成する段階と、前記第一の犠牲層上に第二の犠牲層を形成する段階と、前記第二の犠牲層の一部を除去することにより前記固定電極の形状の一部の原型となる凹部を形成する段階と、前記第二の犠牲層上に前記固定電極を形成する段階と、前記第一の犠牲層及び前記第二の犠牲層の一部をリリースエッチングすることにより、前記可動電極と、前記固定電極の一部とをリリースする段階と、を少なくとも有することを特徴とするMEMS振動子の製造方法。
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