以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された模式的断面図である。このゴルフボール2は、球状のコア4と、カバー6とを備えている。カバー6の表面には、多数のディンプル8が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル8以外の部分は、ランド10である。このゴルフボール2は、カバー6の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。コア4とカバー6との間に、中間層が設けられてもよい。
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下である。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上がより好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下がより好ましい。
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
コア4の架橋には、共架橋剤が好適に用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
コア4のゴム組成物には、硫黄化合物、充填剤、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
コア4の直径は30.0mm以上、特には38.0mm以上である。コア4の直径は42.0mm以下、特には41.5mm以下である。コア4が2以上の層から構成されてもよい。
カバー6に好適なポリマーは、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
アイオノマー樹脂に代えて、又はアイオノマー樹脂と共に、他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、熱可塑性樹脂スチレンエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。
カバー6には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー6にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
カバー6の厚みは0.3mm以上、特には0.5mm以上である。カバー6の厚みは2.5mm以下、特には2.2mm以下である。カバー6の比重は0.90以上、特には0.95以上である。カバー6の比重は1.10以下、特には1.05以下である。カバー6が2以上の層から構成されてもよい。
図2は、図1のゴルフボール2が示された拡大正面図である。図2には、符号AからGにより、ディンプル8の種類が示されている。全てのディンプル8の平面形状は、円である。このゴルフボール2は、直径が4.5mmであるディンプルAと、直径が4.4mmであるディンプルBと、直径が4.3mmであるディンプルCと、直径が4.1mmであるディンプルDと、直径が4.0mmであるディンプルEと、直径が3.5mmであるディンプルFと、直径が3.0mmであるディンプルGとを備えている。ディンプルAの個数は60であり、ディンプルBの個数は86であり、ディンプルCの個数は56であり、ディンプルDの個数は10であり、ディンプルEの個数は76であり、ディンプルFの個数は22であり、ディンプルGの個数は18である。ディンプル8の総数は、328個である。直径の平均Daは、4.16mmである。
図3は、図1のゴルフボール2の一部が示された拡大断面図である。この図3には、ディンプル8の中心(最深部)及びゴルフボール2の中心を通過する平面に沿った断面が示されている。図3における上下方向は、ディンプル8の深さ方向である。図3において二点鎖線12で示されているのは、仮想球である。仮想球12は、ディンプル8が存在しないと仮定されたときのゴルフボール2の表面である。ディンプル8は、仮想球12から凹陥している。ランド10は、仮想球12と一致している。
図3において両矢印Diで示されているのは、ディンプル8の直径である。この直径Diは、ディンプル8の両側に共通の接線Tが画かれたときの、一方の接点Edと他方の接点Edとの距離である。接点Edは、ディンプル8のエッジでもある。エッジEdは、ディンプル8の輪郭を画定する。直径Diは、2.00mm以上6.00mm以下が好ましい。直径Diが2.00mm以上に設定されることにより、大きなディンプル効果が得られる。この観点から、直径Diは2.20mm以上がより好ましく、2.40mm以上が特に好ましい。直径Diが6.00mm以下に設定されることにより、実質的に球であるというゴルフボール2の本来的特徴が維持される。この観点から、直径Diは5.80mm以下がより好ましく、5.60mm以下が特に好ましい。
図4は、図2のゴルフボール2の一部が示された拡大正面図である。この図4には、ディンプル8a、ディンプル8b、ディンプル8c、ディンプル8d及びディンプル8eが示されている。図4におけるV−V線に沿った平面は、ディンプル8aの中心及びディンプル8bの中心を通過する。
図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。図5において、符号Oaで示されているのはディンプル8aの中心であり、符号Obで示されているのはディンプル8bの中心である。符号Caで示されているのは、中心Oaを通過しゴルフボール2の半径方向に延びる線Laと仮想球12との交点である。符号Cbで示されているのは、中心Obを通過しゴルフボール2の半径方向に延びる線Lbと仮想球12との交点である。点Caと点Cbとを結ぶ円弧は、「ジョイントアーク」と称される。ジョイントアークは、仮想球12の表面に存在している。ジョイントアークは、大円の一部である。ジョイントアークは、他のディンプル8と交差していない。本発明では、そのジョイントアークが他のディンプル8と交差しないディンプル対は、「隣接ディンプル対」と称される。ディンプル8aとディンプル8bとは、隣接ディンプル対を構成する。ディンプル8aのエッジEdは、ジョイントアーク(Ca−Cb)の上にある。ディンプル8bのエッジEdも、ジョイントアーク(Ca−Cb)の上にある。円弧(Ed−Ed)は、ジョイントアーク(Ca−Cb)の一部である。円弧(Ed−Ed)の長さは、隣接ディンプル対(8a−8b)のピッチである。ディンプル8aとディンプル8bとが離れているとき、ピッチは正である。ディンプル8aとディンプル8bとが接するとき、ピッチはゼロである。ディンプル8aとディンプル8bとが交差するとき、ピッチはゼロである。
図4から明らかなように、ジョイントアーク(Ca−Cc)は他のディンプル8と交差しない。ディンプル8aとディンプル8cとは、隣接ディンプル対を構成する。ジョイントアーク(Ca−Cd)は、他のディンプル8と交差しない。ディンプル8aとディンプル8dとは、隣接ディンプル対を構成する。ジョイントアーク(Ca−Ce)は、他のディンプル8と交差しない。ディンプル8aとディンプル8eとは、隣接ディンプル対を構成する。ジョイントアーク(Cb−Cc)は、ディンプル8dと交差する。ディンプル8bとディンプル8cとの対は、隣接ディンプル対ではない。
このゴルフボール2は、1382個の隣接ディンプル対を備えている。914個の隣接ディンプル対は、(Da/4)以下のピッチを有する。546個の隣接ディンプル対は、(Da/20)以下のピッチを有する。(Da/20)以下であるピッチは、平均直径Daとの対比において、極めて小さい。このゴルフボール2では、そのピッチが(Da/4)以下である隣接ディンプル対の数N1の、ディンプル総数Nに対する比(N1/N)は、2.79である。このゴルフボール2では、そのピッチが(Da/20)以下である隣接ディンプル対の数N2の、数N1に対する比(N2/N1)は、0.60である。
比(N1/N)は2.70以上が好ましく、比(N2/N1)は0.50以上が好ましい。換言すれば、このゴルフボール2が下記数式(I)及び(II)を満たすことが好ましい。
(N1/N) ≧ 2.70 (I)
(N2/N1) ≧ 0.50 (II)
本発明では、数N1及びN2の算出において、ピッチが平均直径Daと対比される。高い密度が達成されるために小さなディンプルが多数配置された従来のゴルフボールでは、(N1/N)及び(N2/N1)が小さい。これに対し、上記数式(I)及び(II)を満たすゴルフボール2では、ディンプル8が極めて密に配置されており、かつ小さなディンプル8の数が少ない。このゴルフボール2では、個々のディンプル8がディンプル効果に寄与しうる。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。
飛行性能の観点から、比(N1/N)は2.75以上がより好ましく、2.90以上が特に好ましい。比(N1/N)は4.00以下が好ましい。飛行性能の観点から、比(N2/N1)は0.54以上がより好ましく、0.60以上がさらに好ましく、0.64以上が特に好ましい。比(N2/N1)は1.00以下である。
個々のディンプル8がディンプル効果を発揮するとの観点から、平均直径Daは4.00mm以上が好ましく、4.10mm以上がより好ましく、4.15mm以上が特に好ましい。平均直径Daは5.50mm以下が好ましい。平均直径Daが5.50mm以下に設定されることにより、実質的に球であるというゴルフボール2の本来的特徴が維持される。
ディンプル8の面積sは、無限遠からゴルフボール2の中心を見た場合の、輪郭線に囲まれた領域の面積である。円形ディンプル8の場合、面積sは下記数式によって算出される。
s = (Di / 2)2 ・ π
図2に示されたゴルフボール2では、ディンプルAの面積は15.90mm2であり、ディンプルBの面積は15.20mm2であり、ディンプルCの面積は14.52mm2であり、ディンプルDの面積は13.20mm2であり、ディンプルEの面積は12.57mm2であり、ディンプルFの面積は9.62mm2であり、ディンプルGの面積は7.07mm2である。
本発明では、全てのディンプル8の面積sの合計の、仮想球12の表面積に対する比率は、占有率と称される。十分なディンプル効果が得られるとの観点から、占有率は75%以上が好ましく、78%以上がより好ましく、81%以上が特に好ましい。占有率は、90%以下が好ましい。図2に示されたゴルフボール2では、ディンプル8の合計面積は4500.5mm2である。このゴルフボール2の仮想球12の表面積は5728.0mm2なので、占有率は78.6%である。
ディンプル8の直径Diが大きく設定されると、ディンプル8同士が交差することがある。多数の交差を有するゴルフボール2では、ディンプル8の見かけ上の占有率は大きいが、ディンプル8の実効面積は小さい。飛行性能の観点から、見かけ上の占有率との対比において、実効面積が大きい方が好ましい。換言すれば、ディンプル8同士の交差の数は少ない方が好ましい。交差する隣接ディンプル対の数N3の数N1に対する比(N3/N1)は0.10以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.06以下が特に好ましい。理想的には、比(N3/N1)はゼロである。図2に示されたゴルフボール2では、数N3は12であり、比(N3/N1)は0.013である。
ディンプル効果の観点から、直径が3.50mm以下であるディンプル8の数N4の総数Nに対する比(N4/N)は0.20以下が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.10以下が特に好ましい。理想的には、比(N4/N)はゼロである。
十分な占有率が達成されうるとの観点から、ディンプル8の総数は200個以上が好ましく、252個以上が特に好ましい。個々のディンプル8が十分な直径を備えうるとの観点から、総数は362個以下、さらには360個以下、さらには332個以下、さらには328個以下が好ましい。
互いに直径の異なる複数種のディンプル8が配置されることが、好ましい。複数種のディンプル8が配置されることにより、比(N1/N)が大きく、比(N2/N1)が大きく、平均直径Daが大きく、かつ比(N3/N1)が小さなゴルフボール2が達成されうる。この観点から、ディンプル8の種類数は3以上がより好ましく、4以上が特に好ましい。モールドの製造容易の観点から、種類数は15以下が好ましい。
本発明において「ディンプルの容積」とは、ディンプル8の輪郭を含む平面とディンプル8の表面とに囲まれた部分の容積を意味する。ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル8の総容積は250mm3以上が好ましく、260mm3以上がより好ましく、270mm3以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、総容積は400mm3以下が好ましく、390mm3以下がより好ましく、380mm3以下が特に好ましい。
ゴルフボール2のホップが抑制されるとの観点から、ディンプル8の深さは0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上が特に好ましい。ゴルフボール2のドロップが抑制されるとの観点から、深さは0.60mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.40mm以下が特に好ましい。深さは、接線Tとディンプル8の最深部との距離である。
本発明では、仮想球12の上にありディンプル8と交差しない大円は、「大円帯」と称される。バックスピンの回転軸が大円帯を含む平面と直交するとき、この大円帯においてバックスピンの周速が最も速い。バックスピンの回転軸が大円帯を含む平面と直交するとき、十分なディンプル効果が得られない。大円帯は、飛行性能を阻害する。大円帯はさらに、空力的対称性を阻害する。ゴルフボール2が大円帯を備えないことが好ましい。
図2には、2つの極点P、2つの第一緯線14、2つの第二緯線16及び赤道18が画かれている。極点Pの緯度は90°であり、赤道18の緯度は0°である。第一緯線14の緯度は、第二緯線16の緯度よりも大きい。
このゴルフボール2は、赤道18よりも上の北半球Nと、赤道18よりも下の南半球Sとからなる。北半球N及び南半球Sのそれぞれは、極近傍領域20、赤道近傍領域22及び調整領域24を備えている。第一緯線14は、極近傍領域20と調整領域24との境界線である。第二緯線16は、赤道近傍領域22と調整領域24との境界線である。極近傍領域20は、極点Pと第一緯線14との間に位置する。赤道近傍領域22は、第二緯線16と赤道18との間に位置する。調整領域24は、第一緯線14と第二緯線16との間に位置する。換言すれば、調整領域24は、極近傍領域20と赤道近傍領域22との間に位置する。
第一緯線14又は第二緯線16と交差するディンプル8では、その中心位置に基づき、所属する領域が決定される。第一緯線14と交差しその中心が極近傍領域20に位置するディンプル8は、極近傍領域20に所属する。第一緯線14と交差しその中心が調整領域24に位置するディンプル8は、調整領域24に所属する。第二緯線16と交差しその中心が赤道近傍領域22に位置するディンプル8は、赤道近傍領域22に所属する。第二緯線16と交差しその中心が調整領域24に位置するディンプル8は、調整領域24に所属する。
図6、7及び8は、図2のゴルフボール2が示された平面図である。図6には、第一緯線14及び第二緯線16と共に、5つの第一経線26が示されている。この図6において第一緯線14に囲まれているのが、極近傍領域20である。極近傍領域20は、5つのユニットUpに区画されうる。ユニットUpは、球面三角形である。ユニットUpの輪郭は、第一緯線14の一部と2つの第一経線26とからなる。図6では、1つのユニットUpに関し、符号A、B、D、E及びGによりディンプル8の種類が示されている。
5つのユニットUpのディンプルパターンは、72°回転対称である。換言すれば、あるユニットUpのディンプルパターンが極点Pを中心として経度方向に72°回転すると、隣のユニットUpのディンプルパターンと実質的に重なる。ここで「実質的に重なる」状態には、一方のディンプル8が他方のディンプル8と完全に一致する状態のみならず、一方のディンプル8が他方のディンプル8と多少ずれる状態も含まれる。ここで「多少ずれる状態」には、一方のディンプル8の中心が他方のディンプル8の中心から多少離れた状態が含まれる。一方のディンプル8の中心と他方のディンプル8の中心との距離は、1.0mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。ここで「多少ずれる状態」には、一方のディンプル8の寸法が他方のディンプル8の寸法とは多少異なる状態が含まれる。寸法差は0.5mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。寸法とは、ディンプル8の輪郭に画かれうる最長線分の長さを意味する。円形ディンプル8の場合は、その寸法は直径と一致する。
図7には、第一緯線14及び第二緯線16と共に、6つの第二経線28が示されている。この図7において第二緯線16の外側が、赤道近傍領域22である。赤道近傍領域22は、6つのユニットUeに区画されうる。ユニットUeは、球面台形である。ユニットUeの輪郭は、第二緯線16の一部、2つの第二経線28及び赤道18(図2参照)の一部からなる。図7では、1つのユニットUeに関し、符号B、C及びEによりディンプル8の種類が示されている。
6つのユニットUeのディンプルパターンは、60°回転対称である。換言すれば、あるユニットUeのディンプルパターンが極点Pを中心として経度方向に60°回転すると、隣のユニットUeのディンプルパターンと実質的に重なる。赤道近傍領域22のディンプルパターンは、3つのユニットにも区画されうる。この場合、各ユニットのディンプルパターンは、120°回転対称である。赤道近傍領域22のディンプルパターンは、2つのユニットにも区画されうる。この場合、各ユニットのディンプルパターンは、180°回転対称である。赤道近傍領域22のディンプルパターンは、3つの回転対称角度(すなわち60°、120°及び180°)を有する。回転対称角度を複数有する領域では、最も小さい回転対称角度(この例では60°)に基づき、ユニットUeが決定される。
図8には、第一緯線14及び第二緯線16が示されている。この図8において第一緯線14と第二緯線16とに囲まれているのが、調整領域24である。図8には、調整領域24が備えるディンプル8に関し、符号C、E、F及びGによりその種類が示されている。
調整領域24のディンプルパターンは、平面視において、X−X線に対して線対称である。このディンプルパターンは、X−X線以外に対称軸を有さない。極点Pを中心とした0°以上360°未満の回転では、ディンプルパターン同士の重なりは生じない。換言すれば、調整領域24のディンプルパターンは、互いに回転対称である複数のユニットに区画されえない。
調整領域24のディンプルパターンが、回転対称である複数のユニットに区画されうるものでもよい。この場合、調整領域24のユニットの数は、極近傍領域20のユニットUpの数と異なる必要があり、さらに、赤道近傍領域22のユニットUeの数とも異なる必要がある。
このゴルフボール2では、極近傍領域20のユニットUpの数Npが5であり、赤道近傍領域22のユニットUeの数Neが6である。両者は、異なっている。数Npと数Neとが異なっているディンプルパターンは、変化に富んでいる。このゴルフボール2では、飛行中の空気の流れがよく乱される。このゴルフボール2は、飛行性能に優れる。数Npと数Neとの組み合わせ(Np,Ne)は、(5,6)には限られない。他の組み合わせとしては、(2,3)、(2,4)、(2,5)、(2,6)、(3,2)、(3,4)、(3,5)、(3,6)、(4,2)、(4,3)、(4,5)、(4,6)、(5,2)、(5,3)、(5,4)、(6,2)、(6,3)、(6,4)及び(6,5)が例示される。
理由の詳細は不明であるが、本発明者の得た知見によれば、数Np及び数Neの一方が奇数であり、他方が偶数である場合に、大きなディンプル効果が得られる。さらに、数Npと数Neとの差が1であるとき、特に大きなディンプル効果が得られる。この差が1である組み合わせとしては、(2,3)、(3,2)、(3,4)、(4,3)、(4,5)、(5,4)、(5,6)及び(6,5)が例示される。
ディンプル効果の観点から、極近傍領域20が十分な面積を有し、かつ赤道近傍領域22が十分な面積を有することが好ましい。赤道近傍領域22の面積の観点から、第一緯線14及び第二緯線16の緯度は15°以上が好ましく、20°以上がより好ましい。極近傍領域20の面積の観点から、第一緯線14及び第二緯線16の緯度は45°以下が好ましく、40°以下がより好ましい。第一緯線14は、無数の緯線から任意に選択されうる。第二緯線16も、無数の緯線から任意に選択されうる。図2、6、7及び8に示されたゴルフボール2では、第一緯線14の緯度は42°であり、第二緯線16の緯度は30°である。
ディンプル効果への極近傍領域20の寄与の観点から、ディンプル8の総数に対する極近傍領域20に存在するディンプル8の数の比率は20%以上が好ましく、25%以上がより好ましい。この比率は、45%以下が好ましい。
ディンプル効果への赤道近傍領域22の寄与の観点から、ディンプル8の総数に対する赤道近傍領域22に存在するディンプル8の数の比率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましい。この比率は、65%以下が好ましい。
もし極近傍領域20が境界線を挟んで赤道近傍領域22と隣接すると、ユニットの数の相違に起因して、この境界線の近傍においてディンプル8が密に配置され得ない。この場合、境界線の近傍に広いランド10が存在する。広いランド10は、ディンプル効果を阻害する。本発明に係るゴルフボール2では、極近傍領域20と赤道近傍領域22との間に調整領域24が存在する。この調整領域24では、ユニットの数に拘泥されることなくディンプル8が配置されうるので、ランド10の面積が抑制されうる。この調整領域24により、高い占有率が達成される。
占有率の観点から、調整領域24が十分な面積を有することが好ましい。この観点から、第一緯線14の緯度と第二緯線16の緯度との差は、4°以上が好ましい 。調整領域24が広すぎると、数Npと数Neとの差によるディンプル効果が損なわれる。ディンプル効果の観点から、第一緯線14の緯度と第二緯線16の緯度との差は、20°以下が好ましく、15°以下がより好ましい。
占有率の観点から、ディンプル8の総数に対する調整領域24に存在するディンプル8の数の比率は5%以上が好ましく、8%以上がより好ましい。数Npと数Neとの差によるディンプル効果の観点から、この比率は24%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
極近傍領域20がユニットUpに区画され、さらに赤道近傍領域22がユニットUeに区画されたゴルフボール2では、回転によりパターンの周期が生じる。ユニットUpの数Np及びユニットUeの数Neが多いほど、周期は短い。数Np及び数Neが少ないほど、周期は長い。適切な周期は、ディンプル効果を高める。適切な周期の観点から、数Np及び数Neは4以上6以下が好ましく、5以上6以下が特に好ましい。数Np及び数Neの最も好ましい組み合わせ(NP,Ne)は、(5,6)及び(6,5)である。図2及び6から8に示されたゴルフボール2では、(Np,Ne)は(5,6)である。
空力的対称性の観点から、北半球Nのディンプルパターンと南半球Sのディンプルパターンとが等価であることが好ましい。赤道18を含む平面に対して北半球Nのディンプルパターンと対称であるパターンが、南半球Sのディンプルパターンと実質的に重なるとき、両パターンは等価である。赤道18を含む平面に対して北半球Nのディンプルパターンと対称であるパターンが、極点Pを中心として回転させられたときに南半球Sのディンプルパターンと実質的に重なるときも、両パターンは等価である。
本発明では、塗装層を備えたゴルフボール2において、ディンプル8の各部位のサイズが測定される。
図9は、本発明の他の実施形態に係るゴルフボール30が示された正面図である。図9には、符号AからGにより、ディンプル32の種類が示されている。全てのディンプル32の平面形状は、円である。このゴルフボール30は、直径が4.60mmであるディンプルAと、直径が4.45mmであるディンプルBと、直径が4.30mmであるディンプルCと、直径が4.10mmであるディンプルDと、直径が3.90mmであるディンプルEと、直径が3.40mmであるディンプルFと、直径が3.00mmであるディンプルGとを備えている。ディンプルAの個数は80であり、ディンプルBの個数は60であり、ディンプルCの個数は62であり、ディンプルDの個数は58であり、ディンプルEの個数は38であり、ディンプルFの個数は18であり、ディンプルGの個数は14である。ディンプル32の総数は、330個である。
このゴルフボール30は、1476個の隣接ディンプル対を備えている。964個の隣接ディンプル対は、(Da/4)以下のピッチを有する。614個の隣接ディンプル対は、(Da/20)以下のピッチを有する。そのピッチが(Da/4)以下である隣接ディンプル対の数N1の、ディンプル総数Nに対する比(N1/N)は、2.92である。そのピッチが(Da/20)以下である隣接ディンプル対の数N2の、数N1に対する比(N2/N1)は、0.64である。このゴルフボール30では、ディンプル32が極めて密に配置されており、かつ小さなディンプル32の数が少ない。このゴルフボール30では、個々のディンプル32がディンプル効果に寄与しうる。このゴルフボール30は、飛行性能に優れる。
このゴルフボール30は、4.21mmの平均直径Daと、81.1%の占有率とを備えている。このゴルフボール30は、7種類のディンプル32を備えている。このゴルフボール30では、交差する隣接ディンプル対の数N3は58であり、比(N3/N1)は0.060である。このゴルフボール30では、直径が3.50mm以下であるディンプル32の数N4の総数Nに対する比(N4/N)は、0.10である。このゴルフボール30では、比(N1/N)が大きく、比(N2/N1)が大きく、平均直径Daが大きく、比(N3/N1)が小さく、かつ比(N4/N)が小さい。このゴルフボール30は、飛行性能に優れる。
図9に示されるように、このゴルフボール30は赤道33、北半球N及び南半球Sを備えている。赤道33は、大円帯である。北半球N及び南半球Sのそれぞれは、極近傍領域34、赤道近傍領域36及び調整領域38を備えている。
図10、11及び12は、図9のゴルフボール30が示された平面図である。図10において第一緯線40に囲まれているのが、極近傍領域34である。極近傍領域34は、5つのユニットUpに区画されうる。ユニットUpは、球面三角形である。ユニットUpの輪郭は、第一緯線40の一部と2つの第一経線42とからなる。図10では、1つのユニットUpに関し、符号A、B、C、E及びGによりディンプル32の種類が示されている。5つのユニットUpのディンプルパターンは、72°回転対称である。
図11において第二緯線44の外側が、赤道近傍領域36である。赤道近傍領域36は、6つのユニットUeに区画されうる。ユニットUeは、球面台形である。ユニットUeの輪郭は、第二緯線44の一部、2つの第二経線46及び赤道33(図9参照)の一部からなる。図11では、1つのユニットUeに関し、符号B、C、D、E及びGによりディンプル32の種類が示されている。6つのユニットUeのディンプルパターンは、60°回転対称である。
図12において第一緯線40と第二緯線44とに囲まれているのが、調整領域38である。図12には、調整領域38が備えるディンプル32に関し、符号A、B、C、D、E及びFによりその種類が示されている。調整領域38のディンプルパターンは、平面視において、Y−Y線に対して線対称である。このディンプルパターンは、Y−Y線以外に対称軸を有さない。極点Pを中心とした0°以上360°未満の回転では、ディンプルパターン同士の重なりは生じない。換言すれば、調整領域38のディンプルパターンは、互いに回転対称である複数のユニットに区画されえない。
図9から12に示されたゴルフボール30では、第一緯線40の緯度は35°であり、第二緯線44の緯度は210°である。
このゴルフボール30では、極近傍領域34のユニットUpの数Npが5であり、赤道近傍領域36のユニットUeの数Neが6である。このディンプルパターンは、変化に富んでいる。このゴルフボール30では、調整領域38が大きな占有率に寄与する。このゴルフボール30は、飛行性能に優れる。
図13は本発明のさらに他の実施形態に係るゴルフボール48が示された正面図であり、図14はその平面図である。図13に示されるように、このゴルフボール48は赤道50、北半球N及び南半球Sを備えている。図14に示されるように、北半球N及び南半球Sのそれぞれは、5つのユニットUに区画されうる。ユニットUは、球面三角形である。ユニットUの輪郭は、2つの経線52と赤道50(図13参照)の一部とからなる。図14では、1つのユニットUに関し、符号Aによりディンプル54の種類が示されている。ディンプルAの直径は、4.318mmである。ディンプル54の総数Nは332個である。5つのユニットUのディンプルパターンは、72°回転対称である。
このゴルフボール48は、1450個の隣接ディンプル対を備えている。990個の隣接ディンプル対は、(Da/4)以下のピッチを有する。540個の隣接ディンプル対は、(Da/20)以下のピッチを有する。そのピッチが(Da/4)以下である隣接ディンプル対の数N1の、ディンプル総数Nに対する比(N1/N)は、2.98である。そのピッチが(Da/20)以下である隣接ディンプル対の数N2の、数N1に対する比(N2/N1)は、0.55である。このゴルフボール48では、ディンプル54が極めて密に配置されており、かつ小さなディンプル54の数が少ない。このゴルフボール48では、個々のディンプル54がディンプル効果に寄与しうる。このゴルフボール48は、飛行性能に優れる。
このゴルフボール48は、4.318mmの平均直径Daと、84.9%の占有率とを備えている。このゴルフボール48では、直径が3.50mm以下であるディンプル54の数N4の総数Nに対する比(N4/N)は、ゼロである。このゴルフボール48では、比(N1/N)が大きく、比(N2/N1)が大きく、平均直径Daが大きく、かつ比(N4/N)が小さい。
このゴルフボール48では、交差する隣接ディンプル対の数N3は260であり、比(N3/N1)は0.263である。この比(N3/N1)は、大きい。このゴルフボール48では、見かけ上の占有率との対比において、実効面積が小さい。小さな実効面積は、ディンプル効果の観点では不利である。図13から明らかなように、赤道50はディンプル54と交差しない。この赤道54は、大円帯である。このゴルフボール48は、1本の大円帯を有する。大円帯の存在は、ディンプル効果の観点では不利である。