JP4853170B2 - 超電導コイルおよび該超電導コイルを備えた超電導機器 - Google Patents

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本発明は、超電導コイルおよび該超電導コイルを備えた超電導機器に関し、詳しくは、1つの超電導コイルを複数の分割コイルにより形成し、各分割コイルに効率良く電流を流して大きな起磁力を発生するものである。
従来、本出願人は、特開平8−190823号公報(特許文献1)において、帯状の超電導テープ線1をソレノイド状に巻いた図3に示す超電導コイル2を、また、特開平11−340071号公報(特許文献2)において超電導テープ線1をパンケーキ状に巻いた図4に示す超電導コイル3を提供している。
前記ソレノイド状の超電導コイル2が軸線方向に長尺であるのに対して、パンケーキ状の超電導コイル3は軸線方向に偏平であるため、複数の超電導コイル3を軸線方向に重ね合わせて隣接する超電導コイル3同士を直列に接続することにより1つの超電導コイル4を形成している。
ところで、超電導テープ線は磁場の影響を受けやすく、帯状の超電導テープ線の幅広面に対して直交方向の磁場がかかると臨界電流が低下して、超電導の特性を効率良く発揮できなくなる問題がある。
前記超電導コイル2、4では、超電導コイル2、4に電流を通電すると、図5(A)に示すようような磁場5が発生し、超電導コイル2、4の軸線方向Xの各位置の超電導テープ線にかかる直交方向の磁場は、図5(B)に示すように、軸線方向Xの中央で最も小さく、両側へいくに従って大きくなる。
よって、超電導コイル2、4の軸線方向Xの各位置の超電導テープ線の臨界電流は、図5(C)に破線で示すように、超電導コイル2、4の軸線方向Xの中央付近は大きいが、両側へいくに従って小さくなる。
ソレノイド状の超電導コイル2は1本の超電導テープ線からなり、超電導コイル4は複数のパンケーキ状の超電導コイル3を直列接続しているため、図5(C)に実線で示すように、超電導コイル2、4には、コイル両端の臨界電流よりも小さな電流が均一に流れる。
よって、超電導コイル2、4の軸線方向Xの中央付近では、臨界電流が大きいにもかかわらず、少しの電流しか流すことができず、負荷率(電流値/臨界電流値)が低く、軸線方向Xの中央付近の超電導テープ線を有効に利用できていない。
また、前記パンケーキ状の超電導コイル3を軸線方向Xに重ね合わせ、図6(A)に示すように、各超電導コイル3を1つの電源7に並列接続した超電導コイル6では、両端の超電導コイル3Aのインダクタンスが他の超電導コイル3Bよりも小さくなって電流が流れやすくなる。よって、図6(B)に示すように、軸線方向Xの両端の超電導コイル3Aには大きな電流が流れるが、両端を除いた中央の超電導コイル3Bには両端の超電導コイル3Aに比べて小さな電流しか流れない。
このように、軸線方向両端の超電導コイル3Aには、大きな電流を流すことができるが、この電流値を前記臨界電流値よりも小さく設定しなければならず、中央の超電導コイル3に流せる電流はますます小さくなり、超電導コイル6においても、軸線方向の中央付近の超電導テープ線を有効に利用できていない。
特開平8−190823号公報 特開平11−340071号公報
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、1つの超電導コイルを複数の分割コイルにより形成し、各分割コイルに効率良く電流を流して大きな起磁力を発生させることを課題としている。
前記課題を解決するため、本発明は、超電導テープ線を同一巻回数で形成した複数の分割コイルを備え、
前記複数の分割コイルを軸線方向に沿って並列配置し、
これら複数の各分割コイルはそれぞれ電源接続部を備え、軸線方向の中央部の分割コイルと軸線方向の両側の分割コイルは異なる電源に接続され、軸線方向の中央部の分割コイルは軸線方向の両側の分割コイルより大きな電圧が印加される構成としている超電導コイルを提供している。
本発明の超電導コイルでは、軸線方向の中央部の分割コイルと軸線方向の両側の分割コイルを異なる電源に接続し、軸線方向の中央部の分割コイルに軸線方向の両側の分割コイルより大きな電圧を印加することにより、軸線方向の中央の分割コイルにも大きな電流を流せるようにしている。
これにより、中央の分割コイルに効率良く電流を流して負荷率を高めることができ、高い起磁力(電流値×ターン数)を発生させることができる。また、本発明の超電導コイルは負荷率を高めているため、従来の超電導コイルに比べて超電導テープ線の量を低減してコイル自体を小型化することができる。
前記分割コイルに印加する電圧を軸線方向の中心に対して対称とし、両端の分割コイルから中央の分割コイルにかけて印加される電圧を段階的に大きくしていることが好ましい。
前記構成によれば、各分割コイルの臨界電流に応じてより適度な電圧を印加することができ、より効率良く各分割コイルに電流を流すことができる。
また、軸線方向の中央から等距離に配置した分割コイルを同一の電源に並列接続すれば、多くても電源の個数を、分割コイルが偶数n個の場合にはn/2個、分割コイルが奇数m個の場合には((m−1)/2)+1個とすることができる。
さらに、本発明は、前記超電導コイルを備えた超電導機器を提供している。
前記超電導機器としては、モータ、発電機、変圧器、超電導電力貯蔵装置(SMES)、限流器等が挙げられる。
前述したように、本発明によれば、超電導テープ線を同一巻回数で形成した分割コイルを軸線方向に沿って並列配置し、軸線方向の中央部の分割コイルに軸線方向の両側の分割コイルより大きな電圧を印加することにより、中央の分割コイルに効率良く電流を流して負荷率を高めることができ、高い起磁力(電流値×ターン数)を発生させることができる。また、本発明の超電導コイルは負荷率を高めているため、従来の超電導コイルに比べて超電導テープ線の量を低減してコイル自体を小型化することができる。
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態の超電導コイル10は、モータからなる超電導機器に用いられるものであり、帯状のビスマス系超電導テープ線11をダブルパンケーキ状に巻回した分割コイル12を複数個(本実施形態では18個)備え、これら分割コイル12を軸線方向Xに並列配置し、各分割コイル12の電源接続部12aをリード線14を介してそれぞれ所要の電源13に接続している。電源接続部12aでは、超電導テープ線11とリード線14をハンダ付けしている。
前記分割コイル12はターン数を全て均一の76ターンとしており、これら分割コイル12を軸線方向Xの配置位置に応じて異なる電源13にそれぞれ接続している。
詳細には、軸線方向Xの中央の10個の分割コイル12Aを電源13Aに接続し、該分割コイル12Aの両側の2つの分割コイル12Bを電源13Bに接続し、該分割コイル12Bの軸線方向端部側に配置された2つの分割コイル12Cを電源13Cに接続し、該分割コイル12Cの軸線方向端部側に配置された2つの分割コイル12Dを電源13Dに接続し、該分割コイル12Dの軸線方向端部側に配置された2つの分割コイル12Eを電源13Eに接続して、分割コイル12A〜12Eにそれぞれ200、191、176、158、136ボルトの電圧を印加している。
即ち、分割コイル12A〜12Eに印加する電圧を軸線方向Xの中央で対称とし、両端の分割コイル12Eから中央の分割コイル12Aにかけて印加する電圧を段階的に大きくしている。
前記構成によれば、各分割コイル12A〜12Eの臨界電流に応じて印加する電圧値を相違させることにより、軸線方向Xの中央の分割コイルにも大きな電流を流せるようにしている。
これにより、中央の分割コイルに効率良く電流を流して負荷率を高めることができ、高い起磁力(電流値×ターン数)を発生させることができる。また、本発明の超電導コイルは負荷率を高めているため、従来の超電導コイルに比べて超電導テープ線の量を低減してコイル自体を小型化することができる。
また、本実施形態では、全ての分割コイル12のターン数を均一として、各分割コイル12に印加する電圧のみを変えているため、設計を容易にすることができる。
なお、本実施形態では、パンケーキ状の分割コイルをそれぞれ電源に接続しているが、複数のソレノイド状の分割コイルをそれぞれ電源に接続してもよい。
また、本実施形態では、超電導コイルの冷却構造について説明及び図示を省略しているが、液体窒素等の冷媒を収容した断熱性を有する容器内に超電導コイルを配置して超電導温度まで冷却している。
さらに、本実施形態では、超電導コイルをモータからなる超電導機器に用いているが、発電機、変圧器、超電導電力貯蔵装置(SMES)あるいは限流器からなる他の超電導機器に用いてもよい。
図2は、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、帯状のビスマス系超電導テープ線21をダブルパンケーキ状に巻回した分割コイル22を軸線方向Xに並列配置した超電導コイル20を2つ設け、各分割コイル22の電源接続部22aをリード線24を介してそれぞれ所要の電源23に接続している。
前記分割コイル22はターン数を全て均一としており、これら分割コイル22を軸線方向Xの配置位置に応じて異なる電源23にそれぞれ接続している。
詳細には、軸線方向Xの中央に対して対称位置に配置された分割コイル22A〜22Iをそれぞれ同一の電源23A〜23Iに接続しており、分割コイル22A〜22Iにそれぞれ199.8、186.2、174.2、163.8、155.0、147.8、142.2、138.2、135.8ボルトの電圧を印加している。
なお、本実施形態では、電源23に2つの超電導コイル20を接続しているが、3つ以上の超電導コイルを接続してもよい。
前記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の超電導コイルは、自動車等の駆動用モータや、その他発電機、変圧器、超電導電力貯蔵装置(SMES)等の超電導機器に用いられるものである。
本発明の第1実施形態を示し、(A)は超電導コイルの概略図、(B)は分割コイルの位置と通電される電流値の関係を示す図面である。 本発明の第2実施形態の超電導コイルの概略図である。 従来のソレノイド状の超電導コイルを示す図面である。 従来のパンケーキ状の超電導コイルを示す図面である。 (A)〜(C)は従来例の問題点を示す図面である。 (A)(B)は他の従来例の問題点を示す図面である。
符号の説明
10、20 超電導コイル
11、21 超電導テープ線
12、22 分割コイル
12a、22a 電源接続部
13、23 電源

Claims (3)

  1. 超電導テープ線を同一巻回数で形成した複数の分割コイルを備え、
    前記複数の分割コイルを軸線方向に沿って並列配置し、
    これら複数の各分割コイルはそれぞれ電源接続部を備え、軸線方向の中央部の分割コイルと軸線方向の両側の分割コイルは異なる電源に接続され、軸線方向の中央部の分割コイルは軸線方向の両側の分割コイルより大きな電圧が印加される構成としている超電導コイル。
  2. 前記分割コイルに印加する電圧を軸線方向の中心に対して対称とし、両端の分割コイルから中央の分割コイルにかけて印加される電圧を段階的に大きくしている請求項1に記載の超電導コイル。
  3. 請求項1または請求項2に記載の超電導コイルを備えた超電導機器。
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