JP4849566B2 - 硫黄含有酸化チタンの製造方法及び硫黄含有酸化チタン分散液の製造方法 - Google Patents

硫黄含有酸化チタンの製造方法及び硫黄含有酸化チタン分散液の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、可視光型光触媒や色素増感型太陽電池に適用が可能な硫黄含有酸化チタン及びその製造方法と、該硫黄含有酸化チタンに金属または金属化合物が担持されている硫黄含有酸化チタンに関する。また、本発明は、該硫黄含有酸化チタンが分散されている硫黄含有酸化チタン分散液及びその製造方法に関する。
酸化チタン粉末は、白色顔料として古くから利用されており、近年は化粧品などの紫外線遮蔽材料、光触媒、コンデンサ、サーミスタの構成材料あるいはチタン酸バリウムの原料等電子材料に用いられる焼結材料などに広く利用され、また、最近は、色素増感型酸化チタンの電極などへの適用の研究開発がなされている。特にここ数年、光触媒としての利用が盛んに試みられており、光触媒反応の用途開発が盛んに行われている。
この酸化チタン光触媒の用途は非常に多岐に亘っており、水の分解による水素の発生、酸化還元反応を利用した有機化合物の合成、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明機器等の汚れ防止等、数多くの用途開発が行われている。
しかしながら、酸化チタンは可視光付近の波長領域において大きな屈折率を示すため、可視光領域では殆ど光吸収は起こらない。屋内での蛍光灯などの下での利用を考えると、蛍光灯のスペクトルは殆どが400nm以上であるため、そのような光触媒では、十分な触媒性能を発現することはできない。
そこで、可視光領域で触媒活性を発現し、より利用性が高い高活性の光触媒の開発が行なわれている。
近年、従前の金属イオンを酸化チタンにドープした光触媒の不十分な触媒活性を改善するものとして、特許文献1の特開2004−143032号公報には、金属原子の一部を硫黄で置換した硫黄含有酸化チタン粉末が開示されている。また、特許文献1には、(1)チタン塩(金属アルコキシド)とチオ尿素の均一混合溶液から、溶媒を除去した後、この粉末を、酸素を含む雰囲気下、500〜900℃、3〜10時間で焼成する含硫黄酸化チタンの製造方法、(2)チタン酸化物とチオ尿素との均一混合物を300〜500℃で焼成する含硫黄酸化チタンの製造方法、及び(3)硫酸チタンアンモニウムを500〜900℃で焼成する含硫黄酸化チタンの製造方法が開示されている。
また、特許文献2の特開2005−254174号公報には、硫黄を含有するルチル型およびアナターゼ型の混合結晶の酸化チタン触媒が開示されており、また、酸化チタン粉末と硫黄または硫黄化合物の混合物の形成後、この混合物を200〜800℃、好ましくは300〜600℃、より好ましくは400〜500℃で焼成する酸化チタンの製造方法が開示されている。
また、特許文献3の特開2005−319423号公報には、塩化チタンの加水分解またはアルカリで中和して得られる酸化チタン、硫黄または硫黄化合物、及び含窒素化合物又は含炭素化合物の混合物を形成したのち、焼成することにより得られる硫黄と炭素を含有する酸化チタン光触媒が開示されている。
特開2004−143032号公報(特許請求の範囲) 特開2005−254174号公報(特許請求の範囲) 特開2005−319423号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1〜3の酸化チタンには、十分な可視光吸収特性及び可視光での光触媒活性が得られず、より一層の性能の向上が必要であるという問題があった。
また、酸化チタンには、光触媒を水や有機溶媒に分散させて、光触媒コーティング液や塗料を製造するための原料光触媒としての用途があり、この場合、水や有機溶媒への分散性が良好なことが要求される。
したがって、本発明の目的は、優れた可視光吸収特性及び可視光での光触媒活性を有し、水や有機溶媒中で分散性が良好な硫黄含有酸化チタン及びその製造方法、並びに硫黄含有酸化チタン分散液及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、(1)硫黄含有酸化チタンをアルカリ水溶液と接触させることにより、熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量を、特定の範囲にすることができ、(2)熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量が、特定の範囲である硫黄含有酸化チタン触媒は、光触媒活性が高いことを見出し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明()は、被処理硫黄含有酸化チタンにアルカリ水溶液を接触させ分離した後の、該アルカリ水溶液のpHが6〜8となるまで、被処理硫黄含有酸化チタンに、アルカリ水溶液を接触させる接触処理工程を有することを特徴とする硫黄含有酸化チタンの製造方法を提供するものである。
また、本発明()は、被処理硫黄含有酸化チタンを水に懸濁させ、次いで、懸濁液のpHが6〜8となるまで、該懸濁液にアルカリを添加して、該被処理硫黄含有酸化チタンに、アルカリを接触させる接触処理工程を有することを特徴とする硫黄含有酸化チタンの製造方法を提供するものである。
また、本発明()は、前記本発明(またはの製造方法により硫黄含有酸化チタンを得た後、溶媒に分散させることを特徴とする硫黄含有酸化チタン分散液の製造方法である。
本発明によれば、優れた可視光吸収特性及び可視光での光触媒活性を有し、水や有機溶媒中で分散性が良好な硫黄含有酸化チタン及びその製造方法を提供することができる。したがって、本発明の硫黄含有酸化チタンは光触媒コーティング液や塗料として有用である。
本発明の硫黄含有酸化チタンは、熱重量分析(測定条件 測定範囲:室温〜1000℃、昇温速度:5℃/分、雰囲気:空気中)における600℃〜1000℃の間の質量減量が、1.0質量%以下、好ましくは0質量%以上0.8質量%以下である硫黄含有酸化チタンである。該質量減量が、上記範囲内にあることにより、硫黄含有酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。また、上記範囲にあることにより、水や有機溶媒中での分散性を良くすることができる。したがって、本発明の硫黄含有酸化チタンは光触媒コーティング液や塗料として有用である。
本発明でいう熱重量分析とは、一定の昇温速度で物質を加熱し、このときの該物質の質量(重量)変化を、経時的に測定する分析方法である。なお、該熱重量分析は、単に質量変化を経時的に測定する方法であり、その質量変化の要因が何であるか判定するものではない。該熱重量分析の分析条件を、以下に示す。
<分析条件>
測定範囲:室温〜1000℃
昇温速度:5℃/分
雰囲気:空気中
該熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量の算出方法を、以下に示す。例えば、試験試料を該熱重量分析にて分析した結果、試験前(加熱前)の試験試料の質量がX(g)、試験開始時点から600℃時点までの質量減量がY(g)、試験開始時点から1000℃までの質量減量がZ(g)であった場合、該熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量A(%)は、以下の式:
A(%)={(Z−Y)/X}×100
により算出される値である。
本発明の硫黄含有酸化チタンは、硫黄含有量が0.02〜0.3質量%であり、比表面積が70〜140m/gであり、且つ結晶構造が、X線回折によるとアナターゼを主体とする相である硫黄含有酸化チタンであることが、可視光での光触媒活性が高くなる点で好ましく、硫黄含有量が、0.02〜0.1質量%であることが特に好ましく、また、比表面積が、95〜135m/gであることが特に好ましい。
本発明において、結晶構造がアナターゼ主体であるとは、下記の式で定義されるルチル化率が、1%以下であることを指す(ASTM D 3720−84)。結晶構造をアナターゼ主体とすることで、硫黄含有酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Id)
Ir:X線回折パターンにおけるルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)のピーク面積、
Id:X線回折パターンにおけるアナターゼ型酸化チタン粉末の最強干渉線(面指数101)のピーク面積
本発明の硫黄含有酸化チタンの結晶構造がアナターゼ主体である場合、本発明の硫黄含有酸化チタンは、ブルッカイトを含んでいても構わない。例えば、X線回折パターンにおける「アナターゼ型結晶酸化チタンの101ピーク面積、並びにブルッカイト型結晶酸化チタンの面指数120及び面指数111のピーク面積の合計」に対する「ブルッカイト型結晶酸化チタンの面指数121のピーク面積」の比が、10%以下である。
本発明の硫黄含有酸化チタンは、酸化チタンの骨格構造中に硫黄原子がドープされた化合物であり、酸化チタンのチタンサイト(カチオンサイト)の一部が、硫黄原子で置換された構造、すなわち、硫黄カチオン置換型酸化チタンである。
本発明の硫黄含有酸化チタンのチタンサイトの一部が、硫黄原子に置換されていることの確認は、X線光電子分光法(XPS)分析により行なわれる。硫黄含有酸化チタンのチタンサイトの一部が、硫黄原子に置換されている場合、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが見られる。つまり、チタンサイト、言い換えると、カチオンサイトの一部が、硫黄原子で置換されていると推測できる。
一方、硫黄含有酸化チタンのチタンサイトの一部が、硫黄原子に置換された構造ではなく、酸素原子の一部が、硫黄原子で置換された構造を有するものも知られている。その場合は、S2−に由来する160eV付近の特性ピークが見られ、169eV付近には特性ピークは見られない。また、硫黄含有酸化チタンが、酸化チタン中の原子の一部が硫黄原子で交換された化合物ではなく、単なる酸化チタンと硫黄との混合物である場合は、169eV付近及び160eV付近のいずれにも特性ピークは見られない。
本発明の硫黄含有酸化チタンは、優れた可視光吸収特性及び可視光での光触媒活性を有する。従って、本発明の硫黄含有酸化チタンは、可視光照射により触媒活性を発現する光触媒用の酸化チタンとして有用である。また、本発明の硫黄含有酸化チタンは、水又は有機溶媒中での分散性に優れる。
本発明の硫黄含有酸化チタンを製造する方法は、以下に示す本発明の硫黄含有酸化チタンの製造方法により、好適に製造される。
本発明の硫黄含有酸化チタンの製造方法は、熱重量分析(測定条件 測定範囲:室温〜1000℃、昇温速度:5℃/分、雰囲気:空気中)における600℃〜1000℃の間の質量減量が、1.0質量%以下となるまで、被処理硫黄含有酸化チタンに、アルカリ水溶液を接触させる接触処理工程を有する、硫黄含有酸化チタンの製造方法である。なお、本発明において、該被処理硫黄含有酸化チタンとは、アルカリ水溶液を接触させる対象物となる硫黄含有酸化チタンを指す。
本発明の硫黄含有酸化チタンの製造方法に係る該被処理硫黄含有酸化チタンは、正の電荷を有する硫黄含有酸化チタンであれば良いが、酸化チタンのチタンサイト(カチオンサイト)の一部が、硫黄原子で置換された構造の硫黄含有酸化チタンであることが好ましく、アナターゼ型酸化チタンのチタンサイト(カチオンサイト)の一部が、硫黄原子で置換された構造の硫黄含有酸化チタンであることが特に好ましい。
該被処理硫黄含有酸化チタンは、どのような方法で製造されたかは、特に制限されない。該被処理硫黄含有酸化チタンを製造する方法としては、
(i)原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成し、該被処理硫黄含有酸化チタンを得る方法(以下、(i)の方法とも記載する。)、
(ii)チタンアルコキシドなどのチタン塩とチオ尿素類などの硫黄化合物とを混合焼成する方法(例えば、特開2004−143032公報に記載の方法)、
(iii)硫酸チタンアンモニウムを焼成する方法、
(iv)チオ尿素類などの硫黄化合物を含むチタン塩水溶液を、中和または加水分解し、次いで、得られた中和物または加水分解物を焼成する方法、
(v)物理的気相蒸着法、スパッタリング法、化学的気相蒸着法などにより作製する方法、
などが挙げられる。また、その他、該被処理硫黄含有酸化チタンを製造する方法としては、正の電荷を有する硫黄含有酸化チタンを製造することができる公知の方法が適用できる。また、該被処理硫黄含有酸化チタンは、粉末状のものや、物理的気相蒸着法、スパッタリング法、化学的気相蒸着法などにより作製された膜状のものでも構わない。
該被処理硫黄含有酸化チタンとしては、該(i)の方法により製造されたものが好ましい。以下に、該(i)の方法について述べる。
該(i)の方法は、該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を焼成して、該被処理硫黄含有酸化チタンを得る方法である。
該(i)の方法では、先ず、該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を作製する。なお、該(i)の方法では、硫黄がドープされる前の酸化チタン、すなわち、該被処理硫黄含有酸化チタンを製造するための原料となる酸化チタンを、原料酸化チタンと記載する。
該(i)の方法に係る該原料酸化チタンとしては、例えば、チタン塩とアルカリ化合物との中和反応により得られる酸化チタン、又はチタン塩の加水分解により得られる酸化チタンが挙げられる。また、該原料酸化チタンとしては、チタン塩とアルカリ化合物との中和反応により得られる酸化チタン、又はチタン塩の加水分解により得られる酸化チタンを、更に、加熱処理して得られる酸化チタンが挙げられる。
該原料酸化チタンを、チタン塩とアルカリ化合物との中和反応により製造する場合や、チタン塩の加水分解により製造する場合、中和条件(pH、中和温度、アルカリ化合物の添加速度など)、加水分解条件(pH、加水分解速度、加水分解温度など)、スラリーからの固形物の分離、あるいは、固形物を得るために必要に応じて実施する洗浄、乾燥などの操作条件を種々選択することにより、該原料酸化チタンを製造することができる。また、チタン塩とアルカリ化合物との中和反応により得られる酸化チタン、又はチタン塩の加水分解により得られる酸化チタンを、更に、加熱処理することにより該原料酸化チタンを製造する場合、該加熱処理する際の加熱処理温度、加熱処理時間等の加熱処理条件を種々選択することにより、該原料酸化チタンを製造することができる。
該原料酸化チタンとしては、比表面積が200〜400m/gであり、X線回折分析におけるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=0.60〜1.5°であり、且つ結晶構造がアナターゼ主体である原料酸化チタンが好ましい。
例えば、四塩化チタン水溶液にアルカリ化合物を、20℃〜80℃にて、短時間(例えば、0.5時間以下)で、添加して中和し、中和反応によって得られた酸化チタンを、加熱処理することにより、該原料酸化チタンを製造することができる。このとき、加熱処理する際の加熱処理温度は、200〜350℃である。該加熱処理温度が、上記範囲内にあることにより、比表面積が200〜400m/gであり、且つアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=0.60〜1.5°である加熱処理物を得易くなる。一方、該加熱処理温度が、200℃未満だと、加熱処理物の比表面積が400m/gより大きくなり易く、あるいは、アナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=1.5°より広くなり易い。また、該加熱処理温度が、350℃を超えると、加熱処理物の比表面積が200m/gより小さくなり易く、あるいは、アナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=0.6°より狭くなり易い。該原料酸化チタンの比表面積及びX線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が上記範囲にあることが、可視光での光触媒活性が高い硫黄含有酸化チタンが得られる点で好ましい。また、加熱処理する際の加熱処理時間は、好ましくは1〜5時間、特に好ましくは2〜3時間である。また、加熱処理する際の雰囲気は、特に制限されず、空気中、酸素ガス中のような酸化性雰囲気下;窒素ガス中、アルゴンガス中のような不活性雰囲気下;真空下等が挙げられ、経済的には、空気中が有利である。
該(i)の方法に係る該硫黄化合物としては、熱により分解し、その分解過程でSOガスが発生する、分子中に硫黄原子を有する化合物であればよく、常温で固体または液体である化合物が好ましく、含硫黄有機化合物、含硫黄無機化合物、金属硫化物、硫黄などが挙げられ、更に具体的には、例えば、チオ尿素、チオ尿素の誘導体、硫酸塩などが挙げられる。これらのうち、特に、チオ尿素が、400〜500℃で完全に分解し、硫黄含有酸化チタン中に残存しないため好ましい。
該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合方法は、特に制限されないが、(1)該原料酸化チタンに、該硫黄化合物を溶解させた溶液を添加し、十分混合した後、溶媒を蒸発させる方法、(2)該原料酸化チタンと該硫黄化合物とを、乾式で混合する方法、(3)該原料酸化チタンと該硫黄化合物を、分散媒中で混合する方法などが挙げられる。これらの混合方法のち、(2)の方法が、操作性の点から好ましい。
該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物中の、該硫黄化合物の混合量は、該原料酸化チタンをTiO換算したときの100質量部に対する硫黄原子の質量が、好ましくは5〜150質量部、特に好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは20〜40質量部となる量である。該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲内にあることにより、硫黄含有量が0.02〜0.3質量%である硫黄含有酸化チタンを製造し易くなる。一方、該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物中の、該硫黄化合物の混合量が上記範囲を外れると、0.02〜0.3質量%である硫黄含有酸化チタンを製造し難くなる。
該(i)の方法では、次いで、該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を焼成する。
該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を焼成する方法としては、焼成用容器に、該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を投入し蓋をする。その際、完全開放だと、該硫黄化合物から発生するガスの滞留が起こらないため、若干の隙間を開ける。該混合物の焼成の際には、熱により該硫黄化合物が分解して、その分解過程でSOガスが発生し、これらのガス中の硫黄が、該原料酸化チタン中に取り込まれ、そして、該原料酸化チタン中のチタン原子の一部が硫黄原子で置換される。つまり、該(i)の方法では、該硫黄化合物の分解により生じるSOガスを雰囲気に滞留させつつ、該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物の焼成を行う。
該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を焼成する際の焼成温度は、好ましくは200〜800℃、特に好ましくは300〜600℃、更に好ましくは400〜500℃である。該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を焼成する際の焼成温度が上記範囲内にあることにより、硫黄含有酸化チタンの可視光での光触媒活性が高くなる。
該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を焼成する際の焼成時間は、好ましくは1〜10時間、特に好ましくは1〜5時間、更に好ましくは2〜5時間である。
該原料酸化チタンと該硫黄化合物との混合物を焼成する際の雰囲気は、特に制限されず、空気、酸素ガスなどの酸化性雰囲気下、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性雰囲気下、真空下などが挙げられる。
本発明の硫黄含有酸化チタンの製造方法に係る該アルカリ水溶液としては、例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などが挙げられる。これらのうち、アンモニア水が好ましい。
そして、本発明の硫黄含有酸化チタンの製造方法に係る該接触処理工程では、該被処理硫黄含有酸化チタンに、該アルカリ水溶液を接触させるが、該接触処理工程では、硫黄含有酸化チタンの熱重量分析(測定条件 測定範囲:室温〜1000℃、昇温速度:5℃/分、雰囲気:空気中)における600℃〜1000℃の間の質量減量が、1.0質量%以下、好ましくは0質量〜0.8質量%となるまで、該被処理硫黄含有酸化チタンと、該アルカリ水溶液との接触を行なう。
本発明の硫黄含有酸化チタンの製造方法において、硫黄含有酸化チタンの熱重量分析(測定条件 測定範囲:室温〜1000℃、昇温速度:5℃/分、雰囲気:空気中)における600℃〜1000℃の間の質量減量を、1.0質量%以下、好ましくは0質量%〜0.8質量%とする方法としては、
(I)該被処理硫黄含有酸化チタンに該アルカリ水溶液を接触させ分離した後の、該アルカリ水溶液のpHが6〜8となるまで、該被処理硫黄含有酸化チタンに、該アルカリ水溶液を接触させる接触処理工程を行なう方法、
(II)該被処理硫黄含有酸化チタンを水に懸濁させ、次いで、懸濁液のpHが6〜8となるまで、該懸濁液にアルカリを添加して、該被処理硫黄含有酸化チタンに、アルカリを接触させる接触処理工程を行なう方法、
が挙げられる。
すなわち、本発明の第一の形態例の硫黄含有酸化チタンの製造方法(以下、本発明の第一の形態例の製造方法とも記載する。)は、該被処理硫黄含有酸化チタンに該アルカリ水溶液を接触させ分離した後の、該アルカリ水溶液のpHが6〜8となるまで、該被処理硫黄含有酸化チタンに、該アルカリ水溶液を接触させる接触処理工程を有する硫黄含有酸化チタンの製造方法である。
また、本発明の第二の形態例の硫黄含有酸化チタンの製造方法(以下、本発明の第二の形態例の製造方法とも記載する。)は、該被処理硫黄含有酸化チタンを水に懸濁させ、次いで、懸濁液のpHが6〜8となるまで、該懸濁液にアルカリを添加して、該被処理硫黄含有酸化チタンに、アルカリを接触させる接触処理工程を有する硫黄含有酸化チタンの製造方法である。
本発明の第一の形態例の製造方法では、該被処理硫黄含有酸化チタンと、該アルカリ水溶液との接触を、
(a)該被処理硫黄含有酸化チタンを、該アルカリ水溶液中に加えて撹拌し、次いで、固液分離を行い、固体と該アルカリ水溶液に分離するという操作(以下、操作(a)とも記載する。)、
(b)該被処理硫黄含有酸化チタンを、フィルター上に置き、そこに、該アルカリ水溶液を注ぎ、該被処理硫黄含有酸化チタン及び該フィルターを通過させ、通過した該アルカリ水溶液を採取するという操作(以下、操作(b)とも記載する。)、
により行なうことができる。
そして、本発明の第一の形態例の製造方法では、該操作(a)で固液分離により得た該アルカリ水溶液のpHが、6〜8になるまで、該操作(a)を繰り返す。また、該操作(b)で採取した該アルカリ水溶液のpHが、6〜8になるまで、該操作(b)を繰り返す。
本発明の第一の形態例の製造方法では、該操作(a)又は該操作(b)を行なった後、必要に応じて乾燥して、硫黄含有酸化チタンを得る。
本発明の第二の形態例の製造方法では、先ず、該被処理硫黄含有酸化チタンを水に加え、撹拌し、懸濁させて、懸濁液を得る。次いで、該懸濁液のpHが6〜8になるまで、該懸濁液にアルカリを添加する。本発明の第二の形態例の製造方法では、このように、該被処理硫黄含有酸化チタンと該アルカリとの接触を行なう。
本発明の第二の形態例の製造方法で、該懸濁液に添加する該アルカリとしては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどが挙げられ、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのように水溶液にして、該アルカリを添加してもよいし、あるいは、該アルカリをそのまま添加してもよい。
本発明の第二の形態例の製造方法では、該懸濁液のpHが6〜8になるまで、該懸濁液にアルカリを添加した後、固液分離を行い、必要に応じて乾燥して、硫黄含有酸化チタンを得る。
また、本発明の硫黄含有酸化チタンは、硫黄含有酸化チタン上に、金属または金属化合物が担持されている硫黄含有酸化チタンであってもよい。
本発明の硫黄含有酸化チタンに担持される該金属としては、例えば、白金、パラジウム、銀、金などの貴金属;クロム、マンガン、バナジウム、鉄、ニッケル、亜鉛、銅、ジルコニウム、ニオブ、タングステンなどの遷移金属;インジウム;錫;鉛;ビスマスなどが挙げられる。また、本発明の硫黄含有酸化チタンに担持される該金属化合物は、本発明の硫黄含有酸化チタンに担持される該金属の塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硼酸塩などの金属塩;本発明の硫黄含有酸化チタンに担持される該金属の有機金属化合物(例えば酢酸塩、蓚酸塩、金属アルコキシドなど)などが挙げられる。
本発明の硫黄含有酸化チタンにおいて、硫黄含有酸化チタン上に、該金属または該金属化合物を担持する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができ、例えば、
金属陽イオンを含む液に、硫黄含有酸化チタンを浸漬した後、金属または金属化合物を析出させ、濾過を行う方法;
金属陽イオンを含む液に、硫黄含有酸化チタンを浸漬した後、溶媒を蒸発させ、金属または金属化合物を粉末上に析出させる方法;
などが挙げられる。
本発明の硫黄含有酸化チタン分散液は、本発明の硫黄含有酸化チタンを含む分散液であり、溶媒に、本発明の硫黄含有酸化チタンが分散されている分散液である。本発明の硫黄含有酸化チタン分散液に係る該溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert-ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などの有機溶媒が挙げられる。さらに、本発明の硫黄含有酸化チタン分散液は、分散性を向上させるために、界面活性剤などの分散剤を含んでいても構わない。本発明の硫黄含有酸化チタン分散液に用いられる該分散剤としては、カルボキシル基含有高分子分散剤、アミン系分散剤、ジアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
本発明の硫黄含有酸化チタン分散液中、本発明の硫黄含有酸化チタンの分散量は、その用途に応じて適宜調整されるが、1〜60質量%であることが好ましい。また、該分散剤の添加量は、本発明の硫黄含有酸化チタン分散液中の本発明の硫黄含有酸化チタンに対し0.2〜20質量%である。該分散剤の添加量が上記範囲未満だと、硫黄含有酸化チタンの分散性の向上効果が得られ難くなり、また、上記範囲を超えると、硫黄含有酸化チタンの特性が低下し易くなる。
該カルボキシル基含有高分子分散剤としては、ポリカルボン酸及びその塩の少なくとも1種の分散剤が好ましい。例えば、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、該アミン系分散剤としては、アルキルアミンおよびポリカルボン酸のアミン塩のうち少なくとも1種の分散剤が好ましい。例えば、ポリエステル酸、脂肪酸、脂肪酸アミド、ポリカルボン酸、アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、およびこれらの誘導体等をアミン化したものなどが挙げられる。また、該ジアルキルスルホコハク酸塩は、次式:
(式中、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、NH、アルキルアミンやアルカノールアミン等の四級アンモニウム基などを表す。R、Rは、同一または異なってよく、炭素数5〜15のアルキル基又はフェニル基を示す。)
で表されるものが挙げられる。代表例としては、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジドデシルスルホコハク酸ナトリウム、ビストリデシルスルホコハク酸ナトリウムなどがある。
本発明の硫黄含有酸化チタン分散液の製造方法は、本発明の硫黄含有酸化チタン、溶媒、及び必要に応じて該分散剤を所定の割合で混合する。より高い分散性を得るために、液を調製後、湿式解砕処理を行ってもよい。この湿式解砕処理を行うため装置としては、本発明の硫黄含有酸化チタン分散液中の硫黄含有酸化チタンの凝集を緩和することができるものであれば、特に制限されず、せん断作用や摩砕作用を利用した解砕装置、攪拌式の解砕装置などの公知の湿式解砕装置が挙げられる。具体的には、ジェットミル、ビーズミル、ロールミル、ハンマーミル、振動ミル、流星型ボールミル、サンドミル、三本ロールミル等の解砕装置が挙げられる。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
(1)酸化チタン中の硫黄含有量の測定
酸素気流中燃焼−赤外線吸収法(測定装置:株式会社堀場製作所製 EMIA−520)で測定した。
(2)X線回折分析
以下の、X線回折測定条件にて行った。半値幅は、アナターゼ(101)ピークの高さの1/2となる幅(角度)を測定した。
(X線回折測定条件)
回折装置 RAD−1C(株式会社リガク製)
X線管球 Cu
管電圧・管電流 40kV、30mA
スリット DS-SS:1度、RS:0.15mm
モノクロメータ グラファイト
測定間隔 0.002度
計数方法 定時計数法
また、ルチル化率を、ASTM D 3720−84に従い求めた。つまり、X線回折パターンにおけるルチル型結晶酸化チタンの最強干渉線(面指数110)のピーク面積(Ir)と、アナターゼ型酸化チタン粉末の最強干渉線(面指数101)のピーク面積(Id)を求め、以下の算出式より求めた。
ルチル化率(質量%)=100−100/(1+1.2×Ir/Id)
(3)比表面積の測定
BET法により測定した。試料の脱気は、110℃にて行った。
(4)光触媒性能の測定
イソプロピルアルコール(IPA)の分解性能において評価した。10mlの試験管に、IPAの初期濃度が50mmol/lのアセトニトリル溶液5mlを用意する。これに得られた硫黄含有酸化チタン粉末を0.10g混合する。このような試験管を2つ用意する(試験管X1及び試験管Y1)。1つの試験管(試験管X1)には、撹拌子で撹拌しながら、350nm以下の波長を除いた光を2時間照射する。他の1つの試験管(試験管Y1)は、光を当てないように暗所で2時間撹拌する。
所定の時間経過後、それぞれの試験管中の溶液を遠心分離機にかけ、上澄みを分取し、ガスクロマトグラフィーを使用してIPAの濃度を測定した。IPA分解性能は以下の式で求めた。
分解性能(%)=(2時間後のY1のIPA濃度−2時間後のX1のIPA濃度)×100/(2時間後のY1のIPA濃度)
(5)XPSの測定
以下の測定条件にて行った。エッチングなどの試料の前処理は特に行わなかった。
(XPSの測定条件)
XPS装置:PHI社製XPS-5700
X線源:単色化 AlKα(1486.6eV) 200W
測定領域:800μm径
検出角:45°(試料法線から)
中和電子銃:使用
スパッタ条件:
イオン積:Ar
加速電圧:3kV
ラスター面積:4×4mm
レート:1.4nm/min.(SiO換算)
(6)熱重量分析
分析条件は以下のとおりである。
装置:株式会社リガク社製 TG−DTA、TG8120
測定範囲:室温〜1000℃
昇温速度:5℃/分
雰囲気:空気中
試験試料採取量:約0.02g
試料容器:アルミナ製
試験前(すなわち、加熱前)の試験試料の質量X(g)、試験開始時点から600℃時点までの質量減量Y(g)、試験開始時点から1000℃までの質量減量Z(g)を測定し、以下の式により、該熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量A(%)を算出した。
A(%)={(Z−Y)/X}×100
(7)塩素濃度の測定
塩素含有量は、酸化チタン粉末をフッ硝酸溶液中で煮沸、溶解した後、この酸化チタン粉末を溶解させた後のフッ硝酸溶液中の塩素の質量を硝酸銀滴定法で測定し、塩素含有量を求めた。
(8)分散性の測定
下記の配合比の溶媒、酸化チタン粉末、分散剤を秤量、混合し、この混合物を下記の条件でビーズミルにて処理を行い、2種類の硫黄含有酸化チタン分散液を作製した。そのスラリーを動的光散乱法により分散体の粒径を測定し、その粒径の大きさで分散性を評価した。
(硫黄含有酸化チタン分散液1の配合比)
溶媒:水 87.0質量%
酸化チタン:10.0質量%
分散剤:特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤 ポイズ532A(花王(株)製) 3.0質量%
(硫黄含有酸化チタン分散液2の配合比)
溶媒:エタノール 89.6質量%
酸化チタン:10.0質量%
分散剤:ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(和光純薬工業(株)) 0.4質量%
(硫黄含有酸化チタン分散液の製造方法)
分散装置:ビーズミル(アシザワ・ファインテック(株)製、製品名:スターミル(登録商標)ミニツェア)
周速:8m/s
分散時間:4時間
分散メディア:ジルコニアビーズ((株)ニッカトー製 製品名:YTZ(登録商標)ボールサイズ:0.05mm)
スラリー量:500ml
(分散体の粒径の測定)
濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株)製)により測定した。得られた粒度分布(体積分布)の全粉体の50%をしめるときの粒子径(D50)の値を指標として求めた。
(実施例1)
(原料酸化チタンの製造)
攪拌機を備えた容量1000mlの丸底フラスコに四塩化チタン水溶液(チタン濃度:4質量%) 297gを入れ、次いで60℃に加熱した。次いでアンモニア水を一気に添加して反応系のpHが7.4に維持されるように、60℃で1時間中和処理を行った。この液を110℃にて、45時間乾燥したのち、得られた固形物の純水洗浄及び濾過を2回繰り返した。濾過後の粉末を110℃で、12時間乾燥した。この粉末を250℃、3時間、大気圧下にて加熱処理し、原料酸化チタン粉末Aを得た。該原料酸化チタン粉末Aの比表面積は280m/g、X線回折によるアナターゼの(101)ピークの半値幅は2θ=1.42°であった。
(原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物の焼成)
次いで、該原料酸化チタン粉末Aに、乳鉢で粉砕したチオ尿素を、硫黄原子の質量が、該原料酸化チタン粉末をTiO換算したときの100質量部に対して、40質量部となるように、添加及び混合し、原料酸化チタンとチオ尿素との混合物を得た。次いで、この混合物を焼成炉にて、400℃で2.5時間焼成し、得られた焼成物をボールミルにて粉砕して、被処理硫黄含有酸化チタン粉末Bを得た。
(接触処理)
該被処理硫黄含有酸化チタン粉末Bを、純水に加え、撹拌し、懸濁液を得た。次いで、該懸濁液に、アンモニア水(2.5%水溶液)を、該懸濁液のpHが7になるまで添加した。次いで、該懸濁液の固液分離を行ない、得られた固体を110℃で乾燥して、黄色から黄橙色の硫黄含有酸化チタン粉末Cを得た。この硫黄含有酸化チタン粉末Cの比表面積は122m/g、X線回折分析によるルチル化率は0%、硫黄含有量は0.022質量%、IPA分解性能は38%、熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量は0.78質量%、塩素含有量は0.02質量%、硫黄含有酸化チタン分散液1のD50は48.3nm、硫黄含有酸化チタン分散液2のD50は47.6nmであった。また、該硫黄含有酸化チタン粉末CのXPSスペクトル測定の結果、S4+に由来する169eV付近の特性ピークが見られ、S2−に由来する160eV付近の特性ピークが見られなかった。
(実施例2)
(原料酸化チタンの製造、原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物の焼成、及び接触処理)
接触処理において、アンモニア水を、該懸濁液のpHが7になるまで添加することに代えて、アンモニア水を、該懸濁液のpHが6になるまで添加すること以外は、実施例1と同様に行い、硫黄含有酸化チタン粉末Dを得た。この硫黄含有酸化チタン粉末Dの比表面積は119m/g、X線回折分析によるルチル化率は0%、硫黄含有量は0.038質量%、IPA分解性能は31%、熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量は0.87質量%、塩素含有量は0.03質量%、硫黄含有酸化チタン分散液1のD50は50.4nm、硫黄含有酸化チタン分散液2のD50は49.2nmであった。
(実施例3)
(原料酸化チタンの製造、原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物の焼成、及び接触処理)
接触処理において、アンモニア水を、該懸濁液のpHが7になるまで添加することに代えて、アンモニア水を、該懸濁液のpHが8になるまで添加すること以外は、実施例1と同様に行い、硫黄含有酸化チタン粉末Eを得た。この硫黄含有酸化チタン粉末Eの比表面積は117m/g、X線回折分析によるルチル化率は0%、硫黄含有量は0.021質量%、IPA分解性能は36%、熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量は0.76質量%、塩素含有量は0.02質量%、硫黄含有酸化チタン分散液1のD50は49.2nm、硫黄含有酸化チタン分散液2のD50は48.3nmであった。
(比較例1)
(原料酸化チタンの製造)
実施例1と同様の方法で、原料酸化チタン粉末Aを得た。
(原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物の焼成)
実施例1と同様の方法で、被処理硫黄含有酸化チタン粉末Bを得た。
(接触処理)
該被処理硫黄含有酸化チタン粉末Bを、純水に加え、懸濁液を得、該懸濁液を1時間撹拌した。次いで、該懸濁液の固液分離を行ない、得られた固体を110℃で乾燥して、黄色から黄橙色の硫黄含有酸化チタン粉末Fを得た。このとき、固液分離後の処理液のpHは3であった。この硫黄含有酸化チタン粉末Fの比表面積は122m/g、X線回折分析によるルチル化率は0%、硫黄含有量は0.056質量%、IPA分解性能は11%、熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量は1.45質量%、塩素含有量は0.02質量%、硫黄含有酸化チタン分散液1のD50は565.1nm、硫黄含有酸化チタン分散液2のD50は428.1nmであった。
(比較例2)
(原料酸化チタンの製造)
実施例1と同様の方法で、原料酸化チタン粉末Aを得た。
(原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物の焼成)
実施例1と同様の方法で、被処理硫黄含有酸化チタン粉末Bを得た。
(接触処理)
該被処理硫黄含有酸化チタン粉末Bを、純水に加え、懸濁液を得、該懸濁液を1時間撹拌した。次いで、該懸濁液を静置し、酸化チタンが沈降させた後、上澄みを除去した。これに純水を加え、同様に攪拌処理を行った。この操作を3回繰り返した。その後、該懸濁液の固液分離を行ない、得られた固体を110℃で乾燥して、黄色から黄橙色の硫黄含有酸化チタン粉末Gを得た。このとき、固液分離後の処理液のpHは3であった。この硫黄含有酸化チタン粉末Gの比表面積は120m/g、X線回折分析によるルチル化率は0%、硫黄含有量は0.055質量%、IPA分解性能は11%、熱重量分析における600℃〜1000℃の間の質量減量は1.33質量%、塩素含有量は0.04質量%、硫黄含有酸化チタン分散液1のD50は498.3nm、硫黄含有酸化チタン分散液2のD50は400.1nmであった。
実施例1〜3では、600℃〜1000℃の間の質量減量が0.7〜0.9質量%の硫黄含有酸化チタンが得られた。実施例1〜3、比較例1及び比較例2より、600℃〜1000℃の間の質量減量が1.0質量%以下、好ましくは0.8質量%以下である硫黄含有酸化チタンは、質量減量が1.0質量%より大きい硫黄含有酸化チタンに比べ、IPAの分解特性、分散性が向上していることがわかる。なお、実施例1〜実施例3、比較例1及び比較例2の間で塩素濃度に大きな差は見られなかった。
(実施例4)
実施例3で得られた硫黄含有酸化チタン粉末E 1.0gを純水100gに加え、分散させたスラリーに、塩化鉄(FeCl・HO(和光純薬工業(株)製))水溶液を、TiO換算したときの100質量部に対して鉄原子として1.0質量部となるように添加した。その後、濾過および純水洗浄を4回繰り返した後、濾過を行った。濾過後の粉を110℃、24時間で乾燥して、鉄化合物が担持された硫黄含有酸化チタン粉末Hを得た。
得られた硫黄含有酸化チタン粉末Hの鉄含有量は1.0質量%、IPA分解性能は51%、硫黄含有酸化チタン分散液1のD50は47.3nm、硫黄含有酸化チタン分散液2のD50は46.1nmであった。また、分散性も良好であった。
(比較例3)
実施例3で得られた硫黄含有酸化チタン粉末Eに代え、比較例2で得られた硫黄含有酸化チタン粉末Gとする以外は、実施例4と同様に行い、鉄化合物が担持された硫黄含有酸化チタン粉末Iを得た。得られた硫黄含有酸化チタン粉末Iの鉄含有量は1.0質量%、IPA分解性能は27%、硫黄含有酸化チタン分散液1のD50は500.2nm、硫黄含有酸化チタン分散液2のD50は387.6nmであった。分散性は実施例4より劣っていた。

Claims (7)

  1. 被処理硫黄含有酸化チタンにアルカリ水溶液を接触させ分離した後の、該アルカリ水溶液のpHが6〜8となるまで、被処理硫黄含有酸化チタンに、アルカリ水溶液を接触させる接触処理工程を有することを特徴とする硫黄含有酸化チタンの製造方法。
  2. 被処理硫黄含有酸化チタンを水に懸濁させ、次いで、懸濁液のpHが6〜8となるまで、該懸濁液にアルカリを添加して、該被処理硫黄含有酸化チタンに、アルカリを接触させる接触処理工程を有することを特徴とする硫黄含有酸化チタンの製造方法。
  3. 前記被処理硫黄含有酸化チタンが、原料酸化チタンと硫黄化合物との混合物を焼成して得られる硫黄含有酸化チタンであることを特徴とする請求項1または2記載の硫黄含有酸化チタンの製造方法。
  4. 前記原料酸化チタンの比表面積が200〜400m/gであり、X線回折分析によるアナターゼの(101)ピークの半値幅が2θ=0.60〜1.5°であり、且つ結晶構造がアナターゼ主体であることを特徴とする請求項記載の硫黄含有酸化チタンの製造方法。
  5. 前記原料酸化チタンが、チタン塩とアルカリ化合物との中和反応により得られる酸化チタン、又はチタン塩の加水分解により得られる酸化チタンであることを特徴とする請求項記載の硫黄含有酸化チタンの製造方法。
  6. 前記原料酸化チタンが、四塩化チタンとアルカリ化合物との中和反応により得られる酸化チタンであることを特徴とする請求項記載の硫黄含有酸化チタンの製造方法
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法により硫黄含有酸化チタンを得た後、溶媒に分散させることを特徴とする硫黄含有酸化チタン分散液の製造方法。
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