JP4847078B2 - 厚肉光透過性樹脂板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光透過性を有する厚肉の樹脂板であって、その歪みが大きく低減された成形品の製造方法およびかかる成形品に関する。詳しくは低歪み、厚肉、および大面積を併有し、特に車両、船舶および航空機などの輸送機の樹脂製窓ガラス、液晶ディスプレイ保護材、並びに水族館における大型水槽などに有用な厚肉光透過性樹脂板の製造方法およびかかる樹脂板に関するものである。特に芳香族ポリカーボネート製の樹脂板が有用である。
従来からガラス板を芳香族ポリカーボネート樹脂に代表される熱可塑性樹脂製の板に代替し、軽量化、安全性の向上、およびガラスでは不可能な態様での利用を達成するための試みが幅広い分野で実施されている。その中で、肉厚が10mmを超える厚肉の樹脂板が求められる分野がある。該分野としては例えば車両、船舶および航空機などの輸送機の樹脂製窓ガラス、液晶ディスプレイ保護材、並びに水族館における大型水槽などが例示される。
かかる厚肉の樹脂板を直接溶融押出法で製造することは困難であり、通常数mmの肉厚のシートを積層し、熱成形により一体化されている(特許文献1参照)。しかしながらかかる方法は透視歪みの低減には限界があった。輸送機用の樹脂製窓ガラスには、不特定多数の利用者のいずれもが外の景色の視認に不満のないことが必要とされる。よってかかる窓ガラスの歪は十分に低い必要があり、その要求は近年更に厳しくなりつつある。また偏光を通して利用される液晶ディスプレイ保護材においても低歪みであることが求められる。かかる低歪みのためには、樹脂板表面の平面度が良好であること、並びに樹脂板内部の応力が均一であることが必要とされる。
上記特許文献1により、近紫外光域から可視光域の範囲で硬化する光硬化型接着剤によって薄肉のシートを積層一体化して得られた厚肉の芳香族ポリカーボネート樹脂製シートは公知である。しかしながら、かかるシートは大型化に不向きであり、大型化すると面精度が悪化して低歪みの成形品を得るのが困難となりやすい。また積層品の原反に溶融押出したシートを利用する方法は、樹脂が押出に適した溶融特性を有していることが前提となり、樹脂やその添加剤の種類が限定されるとの欠点も有する。
また射出成形を繰り返して多層化することによる厚肉成形品の製造方法も公知である(例えば、特許文献2および3参照)。しかしながらかかる方法は、積層の度に比較的大きな熱応力が発生するために、低歪みの成形品を得ることは困難であった。結果的にかかる方法は多くの工数と十分な管理の下でなければ、低歪の厚肉樹脂板を得にくい。
金型キャビティ容量を予め成形品容量よりも拡大した状態で樹脂を射出充填し、その後特定の条件を満足するよう樹脂を圧縮しながら金型キャビティ容量を減少させる成形方法は公知である(特許文献4参照)。該成形方法は、高外観、低歪み、かつ大型の樹脂製窓ガラス成形品を製造可能である。しかしながら、該方法は主として薄肉かつ大型の成形品を対象としているため、厚肉樹脂板に対して未だ十分な知見を提供するものとはいい難かった。従来射出圧縮成形法は、薄肉成形品においてその利点が生かされると考えられていた。
レンズに代表される光学成形品の射出圧縮成形法に関して、一旦大きく拡大された金型キャビティ内に樹脂を充満させた後に、シリンダからの樹脂圧と型内コアによる圧縮の圧力とをバランスさせて所定の成形品を得る方法は公知である(特許文献5参照)。該文献には、コバの厚みが10mmであるレンズ成形品の成形方法の具体例が開示され、60MPaを超えた型内コアの圧力がキャビティ内の樹脂に掛けられている。
射出圧縮成形法に関して、充填圧力によってキャビティを厚さ方向に拡大した後、ゲートシールを行い、その後圧縮状態の途中で型締力を低下させ、低歪みの成形品を得る方法は公知である(特許文献6参照)。該文献はアクリル樹脂に関して、高圧時は約30〜70MPaの型内圧、型締力を低下させた後の低圧時は約10〜25MPaの型内圧、並びに射出速度は100〜400cm/秒が好ましい旨を開示する。しかしながら、本文献で具体的に開示された成形品は最大3mmの肉厚である。
比較的厚肉の成形品における射出圧縮成形法に関して、予め拡大された金型キャビティ内に特定量の樹脂を充填し、樹脂の体積が特定範囲となったときに型締力を弱める方法は公知である(特許文献7参照)。該文献では、該方法は最大厚さが4mm以上で投影面積が600mm以上である成形品に好適である旨が開示され、より具体的には厚さ6mmのアクリル樹脂製の導光板が開示されている。しかしながら該方法は、概して9mmまでの肉厚を想定している。厚肉かつ低歪の光透過性樹脂板を提供する方法として、未だ十分な知見を該文献は開示しているとはいい難かった。特に厚肉の成形品における成形品内での温度偏差および圧力分布による偏差に対する考慮が十分ではない。
特開平08−039746号公報 特開2004−243686号公報 特開2001−191363号公報 特開2004−098603号公報 特開2000−006216号公報 特開平05−031774号公報 特開2000−229343号公報
上記の如く、従来の押出シートを積層し熱成形する方法は、歪の低減の点でも、また樹脂原料の特性が制限されやすい点でも、近年要求される厚肉樹脂板への低歪み化および多様化に十分対応できない。そこで、本発明者らは、樹脂原料の特性が制限されにくい射出成形による厚肉樹脂板の製造を試みた。
かかる検討において本発明者らは、射出圧縮成形法が厚肉樹脂板の製造においても有効であるとの知見を得た。厚肉樹脂板の射出圧縮成形法では、ほとんどの部分において極めて歪みの少ない、かつ良好な平面性を有する板が得られる。しかしながら、かかる部分は周縁部に対してヒケており、得られる成形品の全体としては十分な低歪みが達成しにくいことが分かった。かかるヒケは成形品が厚肉であるためその絶対量が大きくなりやすく、薄肉の成形品に比較して顕著となりやすい。
ヒケが生ずる原因は、成形品側面部の冷却速度が速いことと、樹脂の圧縮に対応して側面に対する圧力が作用することにある。これらの因子が重なり周縁部の樹脂の密度は中央部よりも高くなる。その結果樹脂への圧縮圧力に対する反力は、密度の高い周縁部によって発生し、中央部には同様の圧力はかからない。これにより最終成形品の中央部はヒケるようになる。成形品が厚肉であるほど収縮量の絶対値が大きくなることから、中央部のヒケは目立ちやすい。また成形品が厚肉であるほど、側面部におけるキャビティの接触面積が大きく、また圧縮量の絶対値が大きいゆえに周縁部への圧力も高まりやすい。よって厚肉成形品においてよりかかる問題は顕著となりやすいと考えられる。
本発明はかかる実情に鑑みなされたものである。したがって本発明の課題は、厚肉の光透過性樹脂板の、効率的で、樹脂原料の多様化に対応可能であり、かつ歪みの大幅な低減を可能とする製造方法を提供することにある。本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、射出圧縮成形法により得られた成形品の周縁部を除去する方法が、かかる課題を解決するのに最も実用的な方法であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば上記課題は、(1)10〜50mmの肉厚を有する光透過性の熱可塑性樹脂からなる樹脂板の製造方法であって、該製造方法は、(i)金型キャビティ内へ溶融した熱可塑性樹脂を射出する工程であって該工程内において可動側金型は圧縮ストローク分だけ余分に開かれた中間型締め状態にある工程(工程−i)、(ii)射出後に樹脂を圧縮して最終型締めを行う工程(工程−ii)、(iii)最終型締め後更に樹脂を圧縮する工程(工程−iii)、(iv)樹脂を金型キャビティ内より取り出し可能となる温度まで冷却させ成形品を取り出す工程(工程−iv)、(vi)成形品にハードコート層を設ける工程(工程−vi)、および(v)かかる成形品の周縁部を除去することにより成形品の平面度を向上させると同時に、樹脂板周縁部にハードコートのない接着代を設ける工程(工程−v)からなることを特徴とする厚肉光透過性樹脂板の製造方法により解決される。
本発明の好適な態様の1つは、(2)上記工程−i〜工程−iiiは、固定側金型と可動側金型との間の平行度が平行度制御手段を用いて制御されることを特徴とする上記構成(1)の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、()上記工程−iにおいて、中間型締め状態における圧縮ストロークと樹脂板の厚みとの合計量は、樹脂板の厚みに対して1.001〜1.08倍の範囲である上記構成(1)〜()の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、()上記工程−iiおよび工程−iiiにおいて、樹脂に加える圧力は10〜35MPaの範囲であり、その加圧時間は成形品の肉厚をt(mm)としたとき、0.7t〜2t(秒)の範囲とする上記構成(1)〜()の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、()上記樹脂板を得るための成形品は、その1つの側面のみにゲートを有していることを特徴とする上記構成(1)〜()の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、()上記樹脂板は、その最大投影面積が900〜18,000cmである上記構成(1)〜()の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、()上記樹脂板は、その全光線透過率が15%以上であり、ヘーズが0.1〜20%の範囲である上記構成(1)〜()の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、()上記熱可塑性樹脂は、粘度平均分子量が13,000〜40,000の芳香族ポリカーボネート樹脂である上記構成(1)〜()の製造方法である。
本発明の好適な態様の1つは、()上記樹脂板は、輸送機用の樹脂製窓ガラス成形品である上記構成(1)〜()の製造方法である。
以下、本発明の詳細について説明する。
<工程−i>
(金型の中間型締め状態)
上述のとおり、本発明において可動側金型は、射出工程内において中間型締め状態と最終型締め状態との差である圧縮ストローク分だけ余分に開かれた中間型締め状態にある。ここで射出工程とは、溶融樹脂が製品に相当する金型キャビティ内へ充填されてから、該キャビティへの充填される樹脂の供給が完了するまでの工程をいう。本発明において可動側金型は、かかる射出工程の間に、最終型締め状態から圧縮ストローク分だけ後退した中間型締め状態にある。かかる可動側金型の後退は、予め余分に開かれた状態で金型キャビティ内に樹脂が充填される方法によってもよく、金型キャビティ内に充填された樹脂の圧力によって後退させる方法であってもよい。前者の方法による工程−i、即ち、予め圧縮ストローク分だけ余分に開かれ、金型同士が中間型締め状態に型締めされた金型キャビティ内へ溶融した熱可塑性樹脂を射出する工程が、工程−iとしてより好ましい。かかる工程は、圧縮ストロークおよび金型の平行度の精密な制御を可能とする。
圧縮ストロークと樹脂板の厚みとの合計量は、目的とする樹脂板の厚みに対して、好ましくは1.001〜1.08倍の範囲である。本発明の樹脂板は十分に厚肉であるため充填に伴う成形品の歪みは小さく、圧縮ストロークを大きくとっても歪み低減における利点は少ない。一方で厚みが大きいことからジェッティングの如き成形不良が元来生じやすい。したがって上記の範囲が好ましい範囲となる。上記範囲は、好ましくは1.005〜1.06倍、より好ましくは1.005〜1.05倍である。圧縮ストロークの絶対値は、好ましくは0.05〜1.5mmの範囲、より好ましくは0.1〜1mmの範囲である。
(樹脂の充填)
溶融樹脂の充填はいかなる方式であってもよいが、インライン・スクリュー方式が装置の効率上最も好ましい。尚、本発明の射出成形は流動射出成形(Flow−Moulding)と称される充填方法を含む。本発明のゲートシールは機械的シールであることが好ましい。かかる機械的シールは、成形機のノズルであっても、金型内であってもよい。金型内の機械的シールとしては、バルブゲート型のホットランナー、およびゲート付近の金型駒をスライドさせてゲートシールおよびゲートカットするスライド駒などが例示される。またバルブゲートはピン構造が好ましい。成形機ノズルの機械的シールは、バルブピンやロータリーバルブなどの構造が好ましい。例えばDFCノズルと称される成形機ノズルの利用が可能である。
更に溶融樹脂の射出充填にあたって、金型キャビティ内に二酸化炭素を注入しておくこともできる。射出圧縮成形の金型は印籠構造であることが多い。印籠構造の金型においては金型キャビティ内の空気が抜けにくい場合がある。二酸化炭素の注入は、かかる場合にもガスの巻き込みを生ずることなく樹脂ヤケを防止する。更に二酸化炭素の断熱作用は、成形品の低歪み化の向上に作用する。二酸化炭素の金型キャビティへの注入は公知のいかなる方法であってもよいが、金型のパーティング面からの注入が好ましい。注入圧力は1〜3MPaが好適である。かかる圧力を維持するためパーティング面には漏れ防止のためのOリングが入れられる。
本発明の樹脂板は、表面のうねりに起因する歪みが極力抑制されていることが好ましい。したがって樹脂板の表面に相当する部分のキャビティ表面は、キャビティ表面の表面粗さ(Ra’)が0.05μm以下、および本文中に規定する表面うねり成分の平均振幅y’が0.4μm以下、かつ、表面うねり成分の平均波長x’が検出される場合、y’が下記式(1)を満足することが好ましい。かかる点の詳細は、特開2002−128909号公報に記載されている。
y’≦ 0.0004(x’)+0.0002x’ (1)
(但し、y’は金型のキャビティ表面におけるJIS B0610に規定するろ波うねり曲線の平均振幅Wa’を表し、その単位はμmであり、x’は金型のキャビティ表面のろ波うねり曲線の平均波長WSm’を表し、その単位はmmである。)
<工程−ii>
(金型の最終型締め状態)
樹脂充填後の最終型締めは、閉鎖されたキャビティ中で行うことも、一部開放されたキャビティ中で行うこともできる。閉鎖されたキャビティとは、樹脂の流動する余地のない閉ざされた状態のキャビティをいう。かかるキャビティは、ホットランナーのバルブの閉鎖、および完全なゲートシールにより達成される。更にシリンダー側から付加する樹脂圧力と圧縮圧力との平衡が維持された状態が含まれる。一方、一部開放されたキャビティでは、樹脂の流動する余地がある開放されたキャビティをいう。例えば、オープンノズルで樹脂が大きくフローバックされる場合や、捨てキャビが設けられて樹脂が圧縮によって流入する場合などがある。成形品の品質を安定化させるためより好ましいのは閉鎖されたキャビティにおいて圧縮を行う方法である。
最終型締め工程において、可動側金型パーティング面と固定側金型のそれとは接触(以下、“型面タッチ”と称する場合がある)しないことが好ましい。型面タッチがある場合、所定の圧力が樹脂に十分に伝わることがなくなり、寸法精度に優れた低歪みの成形品は得られ難くなる。可動側金型のパーティング面と固定側金型のそれとの距離は、好ましくは0.05〜3mmの範囲、より好ましくは1〜2mmの範囲である。3mmを超える設定とした場合には成形品形状によっては可動側金型の倒れが生じ製品にバラツキが生じやすくなる。また0.05mm未満の場合には十分な制御が困難となり、連続の成形において型面タッチが生ずる場合がある。
更に中間型締め状態から最終型締め状態までの金型の移動速度は、0.01mm/sec以上が好ましく、0.1mm/sec以上がより好ましい。かかる移動速度は現時点では事実上40mm/sec程度が装置上の限界である。35mm/secのレベルであれば、所定の平行度を維持しつつその速度制御が可能である。尚、かかる移動速度は平均値であり、圧縮動作時において一定である必要はない。但し、上限はいかなる時点においても35mm/sec程度が好ましい。
また樹脂への圧縮は、通常これらの可動側金型と樹脂とが直接に接触することにより行われるが、流体の如きの圧力伝達媒体がこれらの間に介在して行われてもよい。
(オーバーラップについて)
本発明では、中間型締め状態から最終型締め状態への可動側金型の圧縮動作は、樹脂の供給完了以前に開始されてもよい。圧縮動作と樹脂の射出供給とが同時に行われている期間(t(秒))は、通常オーバーラップ時間と称される。本発明の樹脂板は厚肉であることから、長いオーバーラップ時間は利点が少ない。オーバーラップ時間は好ましくは2秒以下、より好ましくは1秒以下である。
<工程−iii>
(圧縮時の圧力)
金型キャビティ内の樹脂に加える圧力は好ましくは10〜35MPaの範囲である。かかる圧力とすることにより、変形がなく高外観で、低歪み性の成形品が達成される。上記の圧力が10MPa未満では溶融樹脂の圧縮が不十分となり、樹脂板表面に面精度が不十分となりやすい。一方、35MPaを超える場合圧力は、成形品中の歪みを大きくしやすい。上記の圧力は15MPa以上が好ましく、18MPa以上が更に好ましい。上記の圧力は30MPa以下が好ましく、27MPa以下が更に好ましい。尚、かかる圧力は、型締め力を成形品の投影面積で除して算出される値である。
上述のとおり、圧縮動作においては先に高密度化した周縁部が圧力の多くを受けている。よって、上記の圧力は周縁部に多くはかかるが、該周縁部以外の中央部には殆どかかっていない。かかる状況によって、中央部の樹脂は大きな圧力を受けることなく冷却固化される。
一方、本発明において重要な点は、その中央部の樹脂は、充填時の温度および圧力がほぼ均一化され、更にその後の冷却による熱履歴も一定となる点である。通常キャビティ内に流入した溶融樹脂はキャビティ表面との接触によって冷却され、その結果充填時間の差に基づく温度分布が生じる。かかる分布は通常解消され難い。しかし本発明の成形品は極めて厚肉であることから、冷却された部分の割合は少なくかかる温度分布が生じ難い。したがって充填時の温度分布は薄肉成形品に比較して均一化している。その後の圧縮は、外部から均等に付与されることでその圧力分布においても均一化される。かかる圧力は上記のとおり余り大きくない。更に冷却過程では、中央部の樹脂は周縁部によってキャビティの側面からは断熱され、接触するキャビティ表面のみから熱の放出がなされる。よって冷却における履歴も中央部ではほぼ均一となる。これらの結果、中央部のいずれの部分においても、その熱収縮は均一となり極めて少ない歪みが得られる。このように本発明の成形方法は、厚肉成形品の固有の特性を有効に活用しているといえる。
尚、上記の圧力は樹脂に実質的に掛けられる圧力である。したがって本発明の目的を損なわない範囲において、35MPaを超える圧力を短時間かけることも可能である。例えばキャビティ表面に対する転写性をより向上させることが必要な場合などに有効である。即ち一旦高い圧力で圧縮した後、上記の特定圧力に戻して歪み分を適正に緩和させることも可能である。また上記圧力は樹脂に加える圧力であることから、可動側金型の固定側金型に対する型面タッチがないことが前提である。型面タッチがある場合には所定の圧力を樹脂に伝えることができない。
(加圧の保持時間)
金型キャビティ内の溶融樹脂は、最終型締め状態後も取り出し可能になるまでの間、所定の加圧がなされ、樹脂板を得るための成形品に形成される。かかる加圧の適正な保持時間は、成形品の厚みに依存し厚みが厚くなるほど適正な時間は長くなる。かかる保持時間は、基本的に樹脂の厚みの2乗に比例する。本発明において好適な時間は、上述のとおり、成形品の肉厚をt(mm)としたとき、0.7t〜2t(秒)の範囲である。かかる時間はより好ましくは0.75t〜1.95t(秒)の範囲であり、最も好ましくは0.8t〜1.9t(秒)の範囲である。
(平行度の制御)
上述のとおり、本発明の上記工程−i〜工程−iiiは、固定側金型と可動側金型との間の平行度が平行度制御手段を用いて制御されることが好ましい。本発明の製造方法では、上述のとおり、固定側金型と可動側金型を完全に型締めしない中間型締め状態において樹脂が金型キャビティ内に充填されることから、これら金型間の平行は、内部の樹脂圧力や金型自重などの影響で容易に崩れてしまう。特に本発明の樹脂板は厚肉であり比較的長い時間圧縮をする必要があることから、最終的な平行からのずれが大きくなりやすい。かかる理由によって、上記の如く固定側金型と可動側金型との間の平行度が平行度制御手段を用いて制御されることが好ましい。またかかる平行度の制御によって固定側金型と移動側金型との間のかじりの防止も達成される。かかるかじりの防止は、特に大型の樹脂板を製造する場合に必要とされる。
上記平行度は、固定側金型と可動側金型との間の傾き量および捩れ量をtanθとしたとき、tanθが0.00001〜0.002の範囲であることが好ましい。
平行度の基準は、その成形で採用された平行度制御の基準に基づくが、好ましくは次の2点のいずれかが採用され得る。
第1は、射出成形機が有する平行位置を平行度の基準に使用する場合である。かかる平行位置は、精密に作製された基準金型が固定側金型取付け盤(以下“固定盤”と略称することがある)と可動側金型取付け盤(以下“可動盤”と略称することがある)に取着されて平行状態とすることにより求められる。第2は、固定盤と可動盤に取着された、成形に使用する金型に倣った平行位置を平行度の基準とする場合である。例えば、平行度制御が複数の型締め機構の伸縮を調整による場合には、その平行位置の決定操作において各型締め機構における圧力が射出圧縮成形時のプレス圧力に対して、所定の割合(好ましくは90%)に到達するまで型を押し付ける。得られた平行位置が以後の平行度算出の基準とされる。
上記の如く決定された平行位置が、傾き量および捩れ量であるtanθが0の状態とされる。かかる状態からの平行度のズレがtanθで表される。本発明の好適な態様において、平行度制御手段やその平行度を算出するためのセンサーは、金型取付け盤の外周部近傍の4箇所に配設される。傾き量とは上下左右の位置関係にあるセンサー間での平行からのズレを表し、捩れ量とは対角の位置関係にあるセンサー間での平行からのズレを表す。即ち、2つのセンサー間の関係において、それぞれのセンサーにおける基準原点からの距離の差をΔLとし、かかるセンサー間の基準平行面内での距離をHとすると、傾き量および捩れ量を表すtanθは、tanθ=ΔL/Hとなる。tanθは好ましくは0.00001〜0.0008の範囲、より好ましくは0.000015〜0.0003の範囲である。
成形時、かかる平行度が特定範囲内となるように可動盤の平行度が制御される。好適な態様においては、各センサー間の原点からの距離の差異、即ち各部における可動盤と固定盤との距離の差異が特定範囲内となるように制御される。かかる距離の差異は、好ましくは20〜500μmの範囲、より好ましくは20〜200μmの範囲、更に好ましくは30〜70μmの範囲である。かかる平行度を監視するためのセンサーとしてはリニアスケールが最適である。リニアスケールは、磁気検出方式および光学検出方式のいずれであってもよいが、その分解能は好ましくは20μm以下、より好ましくは1μm以下である。一方でその精度は、好ましくは±50μm以下、より好ましくは±10μm程度である。精度の適切な下限は±3μm程度である。かかるリニアスケールの位置および距離の情報によって、本発明に必要な平行度制御が達成される。
平行度の制御方法は、より具体的には、特開平5−269749号公報、特開平5−269750号公報、および特開平5−269751号公報などに開示された方法が利用できる。
(平行度制御手段の構成)
本発明の平行度制御手段は、従来公知のものが使用可能であるが、本発明の好適な態様は、構成−a:金型取付け盤に配設された複数の型締め機構の伸縮を調整することにより平行度を制御する手段、または構成−b:型締め機構による型締め力に対抗して矯正力を金型の取付け面に対して付与する複数の矯正力付与機構の伸縮を調整することにより平行度を制御する手段である。
構成−aの平行度制御手段はより精密な平行度が維持可能であり、大型の成形品においても十分に対応可能であることから、本発明においてより好適である。上記構成−bの平行度制御手段は既存の射出成形機に簡便に付属することでその機能を発揮させることが可能であり、その結果設備投資コストが抑制される点において有利である。
上記構成−aおよび構成−bにおける型締め機構および矯正力付与機構は、油圧シリンダ、圧空シリンダ、リニアモータ、ボールネジ・スクリューとサーボモータとの組合せ、および圧電素子などの直線運動が可能な駆動機構が利用できる。中でも好ましいのは簡便な機構で高精度かつ高出力が達成される点で油圧シリンダである。
平行度制御手段は、金型取付け盤の外周部近傍の4箇所に配設されることが好ましい。更にかかる手段やセンサーの位置関係は、基準平行面に投影されたとき互いに上下軸および左右軸のいずれにおいても軸対象とされることが好ましい。また上記構成−aおよび構成−bにおける型締め装置は、直圧式であってもトグル式であってもよく、またハーフナット機構に代表され、キーロックタイプまたはタイバーロックタイプと称される係止機構を備えるものであってもよい。
上記構成−aの“複数の型締め機構の伸縮を調整することによる平行度制御手段”を有する型締め装置は、型締め機構が油圧シリンダの場合には、(A-a)固定側金型を保持するための固定盤、(A-b)可動側金型を保持するための可動盤、(A-c)可動盤を固定盤に対して移動させて型締めを行う複数の型締めシリンダ、(A-d)各型締めシリンダの長さを計測する計測装置、(A-e)長さの計測から金型の平行度のずれを検出し、かかるずれが所定値以内となるよう各型締めシリンダに伸縮の指令を出す制御装置、並びに(A-f)制御装置の指令により開閉する各型締めシリンダに接続されたサーボ弁からなる。型締めシリンダは該シリンダに圧油を供給するアキュームレータに接続されるのが一般的である。計測装置は型締めシリンダに付設あるいは近傍に配設されることが好ましい。尚、電気による駆動装置を有する型締め機構は、サーボ弁の如き油圧機構に代えて、電流、電圧、周波数、またはパルス数を制御する機構を有する。
上記構成−bの“型締め機構による型締め力に対抗して矯正力を金型の取付け面に対して付与する複数の矯正力付与機構の伸縮を調整することにより平行度を制御する手段”を有する型締め装置は、型締め機構および矯正力付与機構が油圧シリンダの場合には、(B-a)固定側金型を保持するための固定盤、(B-b)可動側金型を保持するための可動盤、(B-c)可動盤を固定盤に対して移動させて型締めを行う型締めシリンダ、(B-d)型締め力と反対方向の力を可動盤に付与する複数の矯正シリンダ、(B-e)各矯正シリンダの長さを計測する計測装置、(B-f)長さの計測から金型の平行度のずれを検出し、かかるずれが所定値以内となるよう各矯正シリンダの圧力の指令を出す制御装置、並びに(B-g)制御装置の指令により開閉する各矯正シリンダに接続されたサーボ弁からなる。型締めシリンダは該シリンダに圧油を供給するアキュームレータに接続されるのが一般的である。矯正シリンダも必要に応じてアキュームレータを備えてもよい。電気による駆動の場合も上記構成−aの場合と同様、サーボ弁の如き油圧機構に代えて、電流、電圧、周波数、またはパルス数を制御する機構を有する。
構成−bにおける型締め機構は、通常射出成形機に利用されるいかなるものであってもよく、直圧式であってもトグル式であってもよい。構成−bでは、矯正シリンダのごとき矯正力付与機構が予め備えられた型締め機構であってもよいが、好ましくは通常の射出成形機の型締め機構に矯正力付与機構が取り外し可能に備えられた型締め機構である。かかる型締め機構とすると、本発明の製造方法をより簡便に行うことができる。構成−bでより好適な平行度制御手段は、金型の脱着を可能とした一対の共通プレート間に矯正力付与機構を配設したものである。かかる好適な態様によれば、金型を取着した一対の共通プレートを成形機の金型取付け盤に装着するとの簡単な作業により、既存の射出成形機で本発明の製造方法を実施することができる。
上記構成−aの平行度制御手段を備えた射出成形機としては、(株)名機製作所製のMDIPシリーズが例示される。上記構成−bの平行度制御手段の構成は、例えば特開2001−47484号公報および特開2003−48241号公報に開示されている。また上記構成−aおよび構成−bの平行度制御手段をいずれも備えたものであってもよい。平行度制御手段を併用する場合には、型締め時および型開時のいずれにおいても、いずれの手段も使用する方法、型締め時および型開時のいずれかでのみいずれの手段も使用する方法、並びに型締め時および型開時のそれぞれで手段を使い分ける方法のいずれの方法も利用できる。
<工程−iv>
(成形品の取り出し)
キャビティ内の成形品は、キャビティ内から取り出し可能な温度となるまで冷却後、取り出される。取り出しのため型開きする際には、所定の中間位置まで上記の平行制御がなされる。かかる中間位置は通常上記の中間型締め位置である。荷重たわみ温度以下であれば取り出しが可能といえるが、樹脂板の自重によりたわみが生ずる場合があるため、取り出した際の樹脂板の表面温度が、樹脂板を構成する熱可塑性樹脂の荷重たわみ温度から30〜60℃低い温度であるように取り出すことが生産効率上好ましい。例えばビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂の場合、75〜105℃の範囲が好適であり、80〜100℃の範囲が更に好ましい。かかる冷却の工程中は、上記の好ましい圧縮圧力(10〜35MPa)を保持したままでもよいし、圧力を好ましい範囲から低下させた状態で残りの冷却時間を消費してもよい。
尚、キャビティ表面の温度は、樹脂板を構成する荷重たわみ温度から、好ましくは5〜50℃低い温度、より好ましくは10〜35℃低い温度である。かかる範囲であると転写性と成形サイクルの短縮との両立が図れる。
また、本発明の樹脂板は厚肉があることから、内部に大きな熱を蓄積する。したがって型内から取り出された成形品を熱伝導性の低い空気中に放置すると、内部の熱が十分に放散されず、成形品の表面近傍を再軟化させる。かかる再軟化によって成形品が変形する。しかしながら、内部の熱を金型内で完全に取り除くことは効率的でない。よって、形状保持性が出現した後、型内から取り出された成形品を速やかに冷却する工程を設けることが好ましい。かかる冷却方法としては、チラーユニットの如き冷却装置を用いて室温以下(好ましくは15℃以下)に冷却された冷却面に接触させる方法、並びに室温以下とされた冷媒、好ましくは水に接触させる方法が好適に例示される。
一方、必要に応じて、キャビティ表面を部分的に高温化し、成形時の固化層の発達を遅らせることにより、より均一な熱分布を得ることもできる。かかる高温化の方法としては、主として以下の2つの方法が広く提案され、本発明においても好適である。第1の方法として低熱伝導率材料からなるキャビティを用いて溶融樹脂の自己熱を利用する方法である。第2の方法として充填前に予め高温化された、特にガラス転移温度以上の表面温度にされた金型キャビティ内に溶融樹脂を充填し、その後冷却する方法である。これらの方法によってその成形サイクルの増加は最小限に抑制される。
かかる第1の方法としてより具体的には、キャビティ表面に、熱伝導率が0.01〜10W/mKであり、厚みが0.01〜10mmの範囲にある断熱層を形成し、溶融樹脂の熱の発散を防止することによりその表面温度を高温化する方法が例示される。かかる熱伝導率は、より好ましくは0.01〜3W/mK、より好ましくは0.01〜0.7W/mKである。断熱層は、耐熱樹脂、セラミック、およびガラスなどから作成することができる。断熱層が耐熱樹脂の場合は、特にその厚みは、好ましくは0.1〜3mm、より好ましくは0.2〜2mm、更に好ましくは0.5〜1.5mmの範囲である。一方、断熱層がガラスまたはセラミックの場合は、その厚みは1〜5mmの範囲が好ましい。
上記第2の方法としてより具体的には、金型内の流体通路に熱媒を通すことにより金型キャビティ表面の温度を熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上とすると共に、その後樹脂のガラス転移温度未満の冷媒に切り替えることにより樹脂を金型内より取り出し可能となる温度まで冷却させる方法が例示される。熱媒および冷媒としては、機械用油や水が用いられるが、水系のもの、例えば冷媒として水が、また熱媒として加圧水が好ましく用いられる。更にかかる第2の方法においては、金型キャビティ表面近傍、特に流体通路の周囲には、金型本体を構成する金属よりも熱伝導率の高い金属を用いることが好ましい。該高熱伝導率の金属は、好ましくは銅またはその合金であり、かかる合金の好適な具体的としてはベリリウム銅およびベリリウムを0.3〜3重量%程度含有する銅合金が例示される。熱媒および冷媒の流路は、水力学的相当直径で3〜6mmの範囲、および金型キャビティ表面から流路の表面までの距離は1〜10mmの範囲が好ましい。金型キャビティは、好ましくは入れ子構造とされ、母型と入れ子との境界に断熱層を設けることが好ましい。
<工程−v>
工程−vは、成形品の周縁部を除去することにより成形品の平面度を向上させる工程である。上述のとおり上記工程−i〜工程−ivによって周縁部の密度が高く、それ以外の中央部の密度が低く、その結果該中央部に少なからずヒケを生じた成形品が得られる。周縁部により成形品の平面度は十分なものとはならない。工程−vは、かかる周縁部を除去することにより、中央部の均一に収縮され良好な平面度と低歪み性を有する部分を樹脂製窓ガラスに代表される用途に使用する。
かかる除去すべき部分は、樹脂板に求められる平面度の程度によって異なる。予め必要とされる平面度を決定し、それ以外の部分が確実に除去されるようにすることが好ましい。平面度が不十分な周縁部では、表面が湾曲することにより樹脂板を通して視認する像が、レンズ効果によって歪むことから、かかる点を利用してその平面度を決定することが簡便である。
除去すべき部分は、成形品ごとに決定してもよいし、予め定められた部分を除去するようにしてもよい。通常、最終製品の大きさは決まっていることから、後者が好ましい。成形品ごとの決定は、例えば最終製品の大きさが得られる成形品か否かの全数検査に用いられる。
予め定められた部分の除去は、安定した成形条件の下で成形品の平面度の状態を観察する。かかる観察から求められる平面度を達成するに十分な部分を決定して、除去すべき周縁部を決定することができる。かかる周縁部は、当然のことながら限りなく少ないことが製造コスト上有利である。よって、平面度が基準値を外れる周縁部をできるかぎり少なくできる成形条件を求めることも重要である。一方で、本発明はかかる成形条件を詰める工数を簡略化できる点に利点の1つがある。よって、除去すべき周縁部を比較的大きめに取り、求められる樹脂板に対する成形品の大きさを決定するようにする。これにより、より多様な材料に対応可能であると共に、極めて歪みが少なく平面度の高い厚肉の樹脂板が容易に製造できるようになる。
除去すべき周縁部のおよその目安としては、周縁部の幅を成形品端部から好ましくは10〜80mmの範囲、より好ましくは20〜50mmの範囲に設定するとよい。
上記の平面度の決定方法としては、従来公知の種々の方法が利用できる。本発明の樹脂板は光透過性に優れていることから、例えば次のような方法が例示される。第1には、透視ひずみ量を測定する方法である。かかる測定はJIS R3212に準拠して行うことができる。かかる方法においては、例えば樹脂板の傾き角度を45度とし、スクリーンに投影された円形の最大直径をデジタルノギス(最小目盛0.01mm)で計測して各領域の透視ひずみ量を計算する。例えば2分以上の部分を除去すべき周縁部として、その領域を決定する。逆に言えば、2分以上の領域が当初設定された除去部分に含まれていないかを確認する。
第2に、次のような方法も例示される。等間隔に並んだ平行線の像と、該像の面と平行でありかつ該面から一定の距離だけ離れた成形品とを配置する。更に該成形品から一定の距離だけ離れて観察部分を配置する。等間隔に並んだ平行線は、上述のとおり平面度が損なわれた部分では凹レンズの効果によってその距離が縮んで観察される。平面度の程度と間隔との関係を予め求めることで、その除去されるべき部分を決定することができる。観察部分には例えばCCDカメラを配置する。そして線の画像を取り込み、かかる画像を解析することによって、線間隔を求めることが可能である。更に平行線の像と成形品とは、互いに静止した状態で観察されてもよいし、等間隔線に直角の方向に移動する関係にあってもよい。移動する場合には、線の粗密による像が視認されることになり、かかる状態から除去されるべき部分を決定できる。
周縁部を除去する方法は特に限定されない。かかる方法としては、切削加工法、切断法、および打ち抜き法のいずれも利用できる。切削加工法としては、ルーター、エンドミル、フライス、およびロータリーバイトなどの各種切削工具を用いて、NC旋盤、フライス盤、およびマシニングセンタなどにより切削加工を行う方法が例示される。切断法では、刃物による切断、砥粒による切断、せん断切断、加熱・溶融による切断、および放電切断などが利用できる。上記の中では機器が汎用されており、切削の精度および速度に優れる点で切削加工法が好ましい。また切削は、完全乾式切削、湿式切削、およびセミドライ式切削のいずれの方法において行ってもよい。
更に上述のとおり、成形品周縁部の除去によって成形品の平面度を向上させると同時に、樹脂板周縁部にハードコートのない接着代を設けることが好ましい。樹脂板は何らかの方法で機器本体や枠などの部材に取付けられるが、かかる取付け方法は接着法が好適である。接着法によって樹脂板にかかる応力が均一化され、より強固な固定が可能となる。一方、接着代にハードコート層が設けられていると、樹脂板と部材との接着力はハードコート部の密着強度に影響され好ましくない場合が多い。よって上記の如く接着代はハードコートのないものとすることが好ましい。接着代は少なくとも樹脂板の周縁部のいずれか一部に設けられればよい。更に、接着代が樹脂板の少なくとも周縁部のいずれか一辺全体に亘って設けられている態様がより好ましく、接着代が周縁部の全体、即ち樹脂板の全辺に亘って設けられている態様が更に好ましい。
<工程−vi>
(ハードコートの方法)
工程−viは成形品にハードコート層を設ける工程である。本発明の樹脂板は特に輸送機の樹脂製窓ガラス用に要求される特性を十分に有しており、更にハードコート層が設けられた樹脂板はより実用性に優れるようになる。ハードコート層はいずれの段階で設けられてもよい。例えば、(a)インモールドコート法もしくはハードコート層を有するシート成形品のインサート成形法などを用いて射出圧縮成形時にハードコート層を設ける方法(即ち成形品の取り出し工程において既にハードコート層が設けられている方法)、(b)キャビティより取り出された成形品にハードコート層を設け、その後周縁部の除去を行う方法、および(c)周縁部の除去が行われた後ハードコート層を設ける方法のいずれかの方法が代表的に例示される。
上記法の中でも(b)の方法がより好適である。切削前にハードコートを設けることでマスキング工程および洗浄工程をより簡略化でき、更にハードコート工程においてある程度の熱履歴を受ける場合が多いことから、そのアニール処理によって切削後の樹脂板の寸法精度をより高められる利点もある。尚、(c)の方法においては、一旦平面性を確保するための周縁部の除去を行った後、ハードコートを行い、再度接着代を設けるための切削加工を行う方法であってもよい。
上記(b)および(c)の方法でハードコート層を設ける場合、コート方法として、ディップコート法、フローコート法、ブレードコート法、ナイフコート法、スクイズコート法、トランスファーロールコート法、グラビヤロールコート法、エアースプレーコート法、静電スプレーコート法、およびスピンコート法などを用いることができる。コート成分の塗布以外の方法としては転写法が挙げられる。かかる方法では、離型紙上に、ハードコート層および該層と成形品とを接着する層を設けたラミネート用シートを準備し、かかるシートと成形品とをラミネートすることにより、成形品上にハードコート層を設けることができる。
(ハードコート層について)
次に本発明のハードコート層について説明する。本発明では各種のハードコート剤が使用可能である。例えば、シリコーン樹脂系ハードコート剤や有機樹脂系ハードコート剤などが例示される。
シリコーン樹脂系ハードコート剤は、シロキサン結合をもった硬化樹脂層を形成するものであり、例えば、3官能シロキサン単位に相当する化合物(トリアルコキシシラン化合物など)を主成分とする化合物の部分加水分解縮合物、好ましくは更に4官能シロキサン単位に相当する化合物(テトラアルコキシシラン化合物など)および/または2官能シロキサン単位に相当する化合物を含む部分加水分解縮合物、並びに更にこれらにコロイダルシリカなどの金属酸化物微粒子を充填した部分加水分解縮合物などが挙げられる。シリコーン樹脂系ハードコート剤は更に1官能性のシロキサン単位を含んでよい。これらには縮合反応時に発生するアルコール(アルコキシシランの部分加水分解縮合物の場合)などが含まれるが、更に必要に応じて任意の有機溶剤、水、あるいはこれらの混合物に溶解ないしは分散させてもよい。そのための有機溶剤としては、低級脂肪酸アルコール類、多価アルコールとそのエーテル、エステル類などが挙げられる。なお、ハードコート層には平滑な表面状態を得るため各種界面活性剤、例えば、シロキサン系、フッ化アルキル系界面活性剤などを添加してもよい。金属酸化物微粒子は、コロイダルシリカに加えて、酸化亜鉛、酸化セリウムおよび酸化チタンから選択される1種以上を併用して使用してもよい。かかる併用は、ハードコートの硬度、透明性、および耐候性をバランスよく向上させる。かかる微粒子の粒径は好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜100nmである。
有機樹脂系ハードコート剤としては、例えば、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、多官能アクリル樹脂などが挙げられる。ここで多官能アクリル樹脂としてはポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレートなどの樹脂が挙げられる。これらの中でも特に紫外線硬化型のハードコート剤が好適である。更にかかるハードコート剤は、紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体が共重合した構成単位を含有することがより好ましい。より好適な有機樹脂系ハードコート剤は、かかる単量体とアルキル(メタ)アクリレート単量体とを共重合することによりハードコート層が形成されるものである。かかる紫外線硬化型のハードコート剤はその処理が簡便である点で好ましく、更に紫外線吸収性単量体および/または光安定性単量体が共重合した構成単位を容易に包含できる点において、成形品の耐光性を大きく改良できる点で好ましい。アクリル系ハードコート剤の市販品としては、例えばオリジン電気(株)製オリジアプトシリーズ、および(株)日本触媒製ユーダブルシリーズなどが例示される。これらは架橋剤成分と混合して使用することができる。
一方、ガラス様の硬度が成形品に求められる場合には、長期間の耐候性に優れ、かつ表面硬度が比較的高いシリコーン樹脂系ハードコート剤が好ましい。特に各種の樹脂からなるプライマー層(第1層)を形成した後、その上にシリコーン樹脂系ハードコート剤から調製されたトップ層(第2層)を形成したものが好ましい。
かかるプライマー層(第1層)を形成する樹脂としては、各種ブロック化されたイソシアネート成分およびポリオール成分からなるウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、およびポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ホスファゼンアクリレート、メラミンアクリレート、アミノアクリレートなどの各種多官能アクリル樹脂を挙げることができ、これらは単独でも2種以上を併用して使用することもできる。これらの中でも少なくとも50重量%がアクリル樹脂である樹脂が好ましく、さらに該アクリル樹脂が多官能アクリレートを50モル%以上含むアクリル樹脂である樹脂がより好ましい。具体的には50モル%以上のアルキルメタクリレートモノマーと50モル%以下のビニル系モノマーを重合して得られる樹脂が挙げられる。アルキルメタクリレートモノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレートおよびブチルメタクリレートが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。なかでもメチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートが好ましい。
また、他のビニル系モノマーとしてはアルキルメタクリレートモノマーと共重合可能なものであり、殊に接着性あるいは耐候性等の耐久性の面で、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの誘導体が好ましく使用される。具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用できる。また、アクリル樹脂の2種以上を混合した混合物であってもよい。
また、かかるアクリル樹脂は、熱硬化型であることが好ましく、0.01モル%〜50モル%の架橋性の反応基を持つビニル系モノマーを含有することが望ましい。かかる架橋性の反応基を持つビニル系モノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
なかでも、架橋性の反応基をもつビニル系モノマーとして2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基をもつアクリルモノマーを利用し、架橋剤としてポリイソシアネート化合物もしくはその誘導体を生成するポリイソシアネート化合物前駆体を利用した熱硬化型ウレタンアクリル樹脂を好ましく使用することができる。
これらは未反応状態のものを塗布後所定の反応をさせて硬化樹脂とすること、並びに反応後の樹脂を直接塗布し硬化樹脂層を形成することのいずれも適用可能である。後者は通常樹脂を溶媒に溶解し溶液とした後、塗布されその後溶媒が除去される。また前者の場合も溶媒を使用することが一般的である。
更に、本発明のハードコート剤やプライマーには、公知の光安定剤や紫外線吸収剤や赤外線吸収剤、並びにシリコーン樹脂ハードコート剤の触媒、熱・光重合開始剤、重合禁止剤、シリコーン消泡剤、レベリング剤、増粘剤、沈殿防止剤、垂れ防止剤、難燃剤、帯電防止剤、有機・無機顔料・染料の各種添加剤および添加助剤を含むことができる。
本発明のハードコート層は、紫外線吸収剤を含有することが、良好な耐久性(殊に密着性に対する耐久性)を有することから好適である。
好適なシリコーン樹脂系ハードコート剤におけるプライマー層(第1層)は、アルキルメタクリレートから誘導される構成単位(単位−a)50モル%以上、脂肪環含有(メタ)アクリレートから誘導される構成単位(単位−b)1〜35モル%、およびヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートから誘導される構成単位(単位−c)1〜15モル%を含有し、かかる単位−a〜cを70モル%以上含有するアクリル系共重合体、ブロック化されたポリイソシアネート化合物、硬化触媒および紫外線吸収剤からなるアクリル樹脂組成物を熱硬化させたアクリル系樹脂であることが好ましい。かかるアクリル系共重合体は、(メタ)アクリレートのエステル置換基中にヒンダードアミン骨格を含有する化合物から誘導される構成単位(単位−d)0.1〜10モル%を含有することが好ましい。尚、(メタ)アクリレートの如き表記は、アクリレートおよびメタクリレートのいずれをも意味することを示す。
単位−aを誘導する化合物としては、メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートが好ましい。単位−bを誘導する化合物としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシル(メタ)アクリレート、およびアダマンチル(メタ)アクリレートが好ましい。単位−cを誘導する化合物としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。単位−dを誘導する化合物としては、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンが好ましい。単位−aの上限は好ましくは97モル%であり、より好ましくは55〜87モル%であり、単位−bはより好ましくは5〜30モル%、単位−cはより好ましくは5〜15モル%、並びに単位−dはより好ましくは1〜8モル%である。
上記ブロック化されたポリイソシアネート化合物の割合は次のとおりである。該化合物において生成するイソシアネート基の量が、単位−cのヒドロキシ基1当量に対して、0.8〜1.5当量、より好ましくは0.8〜1.3当量、更に好ましくは0.9〜1.2当量の範囲となるようにする。またブロック化されたポリイソシアネート化合物において生成するイソシアネート基の量は、イソアネート基の重量割合として好ましくは5.5〜50重量%、より好ましくは6〜40重量%である。ブロック化されたポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシネート基をオキシム類、活性メチレン化合物、アルコール類、およびフェノール類などで封鎖してある。かかる封鎖により熱硬化反応時にイソシアネート基が生成するようにし、貯蔵時の安定性が向上している。ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのジイソシアネート化合物から誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクト型ポリイソシアネートなどが例示される。
硬化触媒としては、有機錫化合物、4級アンモニウム塩化合物、および3級アミン化合物などが例示される。有機錫化合物としては、モノブチルチントリス(2−エチルヘキサノエート)、ジメチルチンジネオデカノエート、ジブチルチンビス(2−エチルヘキサノエート)、モノブチルチントリス(n−ブチルプロピオネート)、ジブチルチンジラウレートなどが好適に例示される。硬化触媒は、アクリル系共重合体およびブロック化されたポリイソシアネート化合物の合計100重量部に対して0.001〜0.4重量部、好ましくは0.002〜0.3重量部である。
紫外線吸収剤としては、従来公知のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤、およびフェニルサリシレート系紫外線吸収剤などを利用できる。トリアジン系紫外線吸収剤を主成分とすることが好ましく、単独もしくは2種以上を併用してもよい。かかるトリアジン系紫外線吸収剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビン1577、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン479およびCGL777MPAが好適に例示される。紫外線吸収剤の含有量は、アクリル系共重合体およびブロック化されたポリイソシアネート化合物の合計100重量部に対して1〜40重量部、好ましくは2〜30重量部である。
上記アクリル樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してよく、かかる量はアクリル系共重合体およびブロック化されたポリイソシアネート化合物の合計100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.2〜8重量部である。
好適なシリコーン樹脂系ハードコート剤におけるトップ層(第2層)は、コロイダルシリカ(ta成分)、下記式(I)で表わされるアルコキシシランの加水分解縮合物(tb成分)であって、ta成分が10〜60重量%、好ましくは10〜40重量%、tb成分が下記R SiO(4−m−n)/2に換算して40〜90重量%、好ましくは60〜90重量%であるオルガノシロキサン樹脂組成物である。
更に耐候性の向上の目的で、下記式(II)で表わされる紫外線吸収性基含有アルコキシシランの加水分解縮合物(tc成分)や金属酸化物(td成分)を加えてもよく、その場合はta成分〜tc成分の合計量を100重量%としたとき、ta成分が5〜60重量%、好ましくは5〜40重量%、tb成分が下記R SiO(4−m−n)/2に換算して35〜90重量%、好ましくは55〜90重量%、およびtc成分がWSiO(4−p)/2に換算して0.01〜15重量%、好ましくは0.1〜10重量%であり、ta成分〜tc成分の合計100重量部を基準としてtd成分が0.1〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であり、かつtc成分とtd成分との重量比がtc:td=0.1:1〜150:1の範囲であることを特徴とするものである。かかるtc:tdの上限は、好ましくはtc:td=100:1、より好ましくはtc:td=50:1、更に好ましくはtc:td=20:1の範囲であることを特徴とする樹脂組成物を硬化させたオルガノシロキサン樹脂である。
Si(OR4−m−n (I)
(但し、式中R、Rはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、またはメタクリロキシ基、アミノ基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基からなる群から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、m、nはそれぞれ0、1、2のいずれかの整数であり、m+nは0、1、2のいずれかの整数である。)
Si(OR’)4−p (II)
(但し、式中Wは紫外線吸収性基含有残基であり、R’は炭素数1〜4のアルキル基であり、pは1または2の整数を表わす。)
上記ta成分は、好ましくは直径5〜200nm、より好ましくは10〜40nmである。上記tb成分は、アルキルトリアルコキシシランが好ましい。上記tc成分は、アルコキシシリルベンゾトリアゾール化合物、およびアルコキシシリルベンゾフェノン化合物が例示され、例えば2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)ジフェニルケトンが好適に利用される。
上記オルガノシロキサン樹脂組成物は、硬化触媒を含有することが好ましく、該硬化触媒としては、脂肪族カルボン酸のアルカリ金属塩およびコリン塩の如き4級アンモニウム塩が挙げられ、かかる量はオルガノシロキサン樹脂成分100重量部を基準として、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
プライマー層の膜厚は、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは1〜10μmであり、トップ層の膜厚は、好ましくは1〜10μm、より好ましくは3〜8μmである。
本発明では上記以外の方法でハードコート層が設けられてもよい。かかる他の方法としては、例えば蒸着法および溶射法が挙げられる。蒸着法としては物理蒸着法および化学蒸着法のいずれも使用できる。物理蒸着法としては真空蒸着法、スパッタリング、およびイオンプレーティングが例示される。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、および光CVD法などが例示される。溶射法としては大気圧プラズマ溶射法、および減圧プラズマ溶射法などが例示される。上記方法によりダイヤモンドライクカーボンなどの硬質被膜を形成することが可能である。
<樹脂板について>
(樹脂板の形状)
本発明の樹脂板を得るための成形品は、その1つの側面のみにゲートを有していることが好ましい。単一かつ側面に配置されたゲートは、樹脂板中の樹脂流動が複雑化することを抑制でき、樹脂板を低歪みとするのに好適である。またウエルド部の形成によって生じる樹脂の疎密がないので低歪みの成形品が得られる。かかる疎密は、成形条件内では解消し難く樹脂板の歪みを大きくしやすい。通常かかるゲートを有する成形品は大きな樹脂流動長のために成形品の歪みが大きくなり易いが、本発明は樹脂板が厚肉であってかつ射出圧縮成形法を用いることにより、かかる歪みを低減することができる。
本発明の樹脂板を得るための成形品は、ゲートから流動末端までの流動長が200〜1,500mmであり、その最大投影面積が1500〜20,000cmであることが好ましい。成形品の流動長は、より好ましくは300〜1500mm、更に好ましくは350〜1400mmである。最大投影面積の下限はより好ましくは2000cmであり、その上限はより好ましくは18,000cmである。
上記の成形品より得られる樹脂板の大きさは、その最大投影面積において好ましくは900〜18,000cm、より好ましくは1,500〜15,000cmである。本発明の樹脂板の厚みは10〜50mmであり、好ましくは12〜30mm、更に好ましくは14〜25mmの範囲である。上記の如く大型でかつ厚肉の樹脂板、殊にポリカーボネート樹脂の樹脂板を極めて低歪みでかつ効率的に製造する方法は、意外にもこれまで知られていなかった。本発明は従来押出シートの積層熱成形により製造されていた厚肉樹脂板の製造方法に代わる新規な製造方法を提供するものである。よって本発明の樹脂板は均一な厚みであることを基本とする。しかしながら上述のとおり接着代の如き取付け用の構造を付与するために、周縁部の厚みが異なるものであってもよい。更に樹脂板の中央部においても、その厚みが不均一な態様であってもよい。また樹脂板は、平板が最も好ましいが、湾曲面を有する板であってもよい。湾曲面である場合、その曲率半径は300mm以上であることが好ましい。
(樹脂板の光線透過率)
本発明の光透過性の樹脂板は、その全光線透過率が15%以上であり、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である樹脂板である。樹脂板の透明性は高いほど好ましい場合が多いが、一方で本発明の樹脂板は厚肉であることから、実質上の上限は88%である。樹脂板の全光線透過率はJIS K7105に準拠する方法で測定される値である。樹脂板のヘーズは好ましくは0.1〜20%の範囲である。ヘーズの上限は好ましくは10%、より好ましくは5%である。
(樹脂板の熱可塑性樹脂)
本発明の樹脂板を構成する熱可塑性樹脂は、各種の重合体または共重合体、およびこれらに各種の添加剤を配合した樹脂組成物を含む。本発明における熱可塑性樹脂としては、非晶性の熱可塑性樹脂組成物が好ましい。また結晶性熱可塑性樹脂であっても、上記構成(1)の射出成形で十分な透明性を確保できるものであれば、本発明の熱可塑性樹脂として使用できる。かかる結晶性熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、および結晶性を低下させた共重合ポリエステル樹脂などが例示される。
非晶性熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、変性PPE樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、およびポリエーテルイミド樹脂などが例示される。これらの中でも輸送機に求められる高い強度を有する点でポリカーボネート樹脂が好ましく、特にビスフェノールA型ポリカーボネートが好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は13,000〜40,000の範囲であると、幅広い分野に適用可能となる。粘度平均分子量が20,000未満であると切削性に優れ、装飾用途や精密彫刻用途に好適となる。粘度平均分子量が20,000以上であると強度に優れ、輸送機の樹脂窓に好適となる。本発明の好適な用途である輸送機の樹脂窓においては、粘度平均分子量の下限はより好ましくは22,000、更に好ましくは23,000である。本発明の樹脂板は厚肉であるため、比較的高い分子量においても成形時の歪みは許容限度内となる。粘度平均分子量の上限は、汎用性の点からより好ましくは35,000、更に好ましくは30,000である。
尚、かかる粘度平均分子量はポリカーボネート樹脂全体として満足すればよく、分子量の異なる2種以上の混合物によりかかる範囲を満足するものを含む。特に粘度平均分子量が50,000(より好ましくは80,000以上、更に好ましくは100,000以上)を超えるポリカーボネートの混合は、溶融時のエントロピー弾性を高くする点で有利な場合がある。例えば、本発明においてはジェッティングの抑制に効果がある。エントロピー弾性の向上による効果は、ポリカーボネートの分子量が高いほど顕著となるが、実用上該分子量の上限は200万、好ましくは30万、より好ましくは20万である。かかるポリカーボネート樹脂を0.5〜20重量%、好ましくは1〜10重量%配合すると、成形性を特に損なうことなく所定の効果が得られる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。ポリカーボネート樹脂の詳細については、例えば、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
上記の熱可塑性樹脂は、上記の透明性を損なわない範囲において、従来公知の各種の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、離型剤、摺動剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、強化充填材、衝撃改質剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤等が例示される。尚、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、および離型剤などは、従来上記の熱可塑性樹脂における公知の適正量を配合できる。かかる量が樹脂の透明性を阻害することが稀であるからである。
本発明の樹脂板は、上述のとおり輸送機の窓に好適であることから、上記の中でも特に熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および赤外線吸収剤などを含有することが好ましい。
(熱安定剤)
熱安定剤としては、リン系安定剤が好適に例示される。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。かかるリン安定剤のうちホスファイトの具体例としては、(a-1)トリス(イソデシル)ホスファイトの如きトリアルキルホスファイト、(a-2)フェニルジイソデシルホスファイトの如きアリールジアルキルホスファイト、(a-3)ジフェニルモノ(イソデシル)ホスファイトの如きジアリールモノアルキルホスファイト、(a-4)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトの如きトリアリールホスファイト、(b)ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトなどのペンタエリスリトール型ホスファイト、並びに(c)2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトの如き二価フェノール類と反応し環状構造を有するホスファイトなどが好適に例示される。リン安定剤のうちホスフェートの具体例としては、トリメチルホスフェートおよびトリフェニルホスフェートなどが好適に例示される。ホスホナイト化合物の具体例としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトなどが好適に例示される。第3級ホスフィンの具体例としては、トリフェニルホスフィンが好適に例示される。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物が好適に例示される。例えばテトラキス[メチレン−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好適に利用される。
他の熱安定剤としては、例えば3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物に代表されるラクトン系安定剤が好適に例示される。かかる安定剤の詳細は特開平7−233160号公報に記載されている。かかる化合物はIrganox HP−136(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販され、該化合物を利用できる。更に該化合物と各種のホスファイト化合物およびヒンダードフェノール化合物を混合した安定剤が市販されている。例えば前記社製のIrganox HP−2921が好適に例示される。
その他熱安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどのイオウ含有安定剤が例示される。
上記熱安定剤および酸化防止剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量%中0.0001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%である。但しラクトン系安定剤は、その上限を0.03重量%とするのがよい。
(紫外線吸収剤)
本発明における紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として公知のベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、環状イミノエステル系化合物、およびシアノアクリレート系化合物などが例示される。より具体的には、例えばベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、および2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]などが好適に例示される。例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノールが好適に例示される。例えば、環状イミノエステル系化合物としては2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)が好適に例示される。更に例えば、シアノアクリレート系化合物としては1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンが好適に例示される。
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
上記の中でも良好な熱安定性を有する点から、より好適な紫外線吸収剤として環状イミノエステル系化合物が挙げられる。その他化合物においても比較的高分子量である方が良好な耐熱性が得られ、例えば、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール、および1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンが好適に例示される。紫外線吸収剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量%中、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
また本発明の熱可塑性樹脂およびコート層は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートに代表されるヒンダードアミン系の光安定剤も含むことができる。ヒンダードアミン系光安定剤と上記紫外線吸収剤との併用が耐候性を効果的に向上させる。かかる併用では両者の重量比(光安定剤/紫外線吸収剤)は95/5〜5/95の範囲が好ましく、80/20〜20/80の範囲が更に好ましい。光安定剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。光安定剤の含有量は配合される成分100重量%中、好ましくは0.0005〜3重量%、より好ましくは0.01〜2重量%、更に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
(赤外線吸収剤)
本発明の赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、並びに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR−362や日本触媒(株)製HA−1、金属ホウ化物と金属酸化物の混合系赤外線吸収剤としては例えば住友金属鉱山(株)製KHCS−06等が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含み、さらにウイスカーも含む)、カーボンファイバー(気相成長法によるものを含む)、カーボンナノチューブ、およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤は、ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して0.0005〜0.2重量部が好ましく、0.0008〜0.1重量部がより好ましく、0.001〜0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーは熱可塑性樹脂100重量%中、重量割合で0.1〜200ppmの範囲が好ましく、0.5〜100ppmの範囲がより好ましい。
(成形用樹脂材料の製造)
樹脂材料は、通常必要な添加剤を原料樹脂と溶融混練したペレットの形状で、射出成形機に供給される。かかる供給時は水分含有量を十分に低減されることが必要である。ポリカーボネート樹脂の如き水分吸収性の高い熱可塑性樹脂は、十分に乾燥され射出成形機に供給されることが必要である。溶融混練は、従来公知の溶融混練機が利用でき、特にベント式二軸押出機が好適である。また押出中に生じた異物を除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置することが好ましい。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にペレットの製造場所から、射出成形機への製造場所への運搬には、従来光情報記録媒体の基板製造用ペレットに利用される、各種の防塵コンテナが利用できる。
(樹脂板への積層)
本発明の樹脂板は、その表面に上記のハードコート層以外にも各種の機能層を設けることができる。かかる機能層としては、図柄層、導電層(発熱層、電磁波吸収層、帯電防止層)、撥水・撥油層、親水層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、割れ防止層、並びに金属層(メタライジング層)などが例示される。これらの機能層は、ハードコート層の表面、ハードコート層とは反対側の成形品表面、成形品層が複数層ある場合の成形品層と成形品層との間、プライマー層と成形品表面との間の一部分、並びにプライマー層とハードコートのトップ層との間の一部分などにおいて設けることが可能である。
上記において図柄層は通常印刷により形成される。印刷方法としては、グラビヤ印刷、平板印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、パット印刷、スクリーン印刷などの従来公知の印刷方法を製品形状や印刷用途に応じて使用することができる。
印刷で使用する印刷インキの構成としては、主成分として樹脂系と油系などを使用することが可能であり、樹脂系としては、ロジン、ギルソナイト、セラック、コパールなどの天然樹脂やフェノール系およびその誘導体、アミノ系樹脂、ブチル化尿素、メラミン樹脂、ポリエステル系アルキッド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、飽和ポリエステル樹脂、非晶性ポリアリレート樹脂、非晶性ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合物、ブチラール樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹、ウレタン樹脂などの合成樹脂が使用することができる。耐熱性の高いインキ成分が必要とされる場合は、ポリカーボネート樹脂および非晶性ポリアリレート樹脂などをバインダーとした印刷インキが好ましく挙げられる。また印刷インキに顔料や染料などにより所望の色に調整することができる。
本発明の光透過性樹脂板の製造方法は、透視像の歪みや色ぶれがない厚肉の樹脂板を、効率的に製造する方法である。したがって、上述のとおり、これらの特性が求められる車両、船舶および航空機などの輸送機の樹脂製窓ガラス、圧力容器、圧力配管および隔壁などにおける透視窓、並びに液晶ディスプレイ保護材に代表される偏光画像を透視する用途に代表される幅広い工業分野、例えばパチンコ・パチスロ等の遊戯機器やゲーム機器用途において有用である。更にかかる樹脂板表面に精密光学機能素子を切削することにより、光学機能素子としての樹脂板を提供することも可能である。またかかる樹脂板は厚肉かつ低歪みであることから、切削による各種の光学素子を作成することが可能であり、その母材としても有用である。よってその奏する工業的効果は格別のものである。
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
[参考例1]
(第1層用アクリル樹脂塗料HP−1の調製)
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと省略する) 74.2部、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMAと省略する) 33.6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下HEMAと省略する) 13.0部、LA−82(旭電化工業(株)製ヒンダードアミン系光安定性基含有メタクリレート;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート12.0部、メチルイソブチルケトン(以下MIBKと省略する) 132.8部および2−ブタノール(以下2−BuOHと省略する)66.4部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、アゾビスイソブチロニトリル(以下AIBNと省略する)0.33部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN 0.08部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、不揮発分濃度が39.7%のアクリル共重合体溶液(A)を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で115000であった。アクリル共重合体溶液(A)100部に、MIBK42.9部、2−BuOH21.4部、1−メトキシ−2−プロパノール83.1部を加えて混合し、チヌビン400(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製トリアジン系紫外線吸収剤) 5.3部、アクリル共重合体溶液(A)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100(デグサ・ジャパン(株)製ブロック化されたポリイソシアネート化合物) 10.1部を添加し、さらにジメチルチンジネオデカノエート0.015部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂塗料(HP−1)を得た。
[参考例2]
(第1層用アクリル樹脂塗料HP−2の調製)
還流冷却器及び撹拌装置を備え、窒素置換したフラスコ中にエチルメタクリレート(以下EMAと略称する) 102.7部、HEMA 13.0部、MIBK 115.7部および2−BuOH 57.9部を添加混合した。混合物に窒素ガスを15分間通気して脱酸素した後、窒素ガス気流下にて70℃に昇温し、AIBN0.33部を加え、窒素ガス気流中、70℃で5時間攪拌下に反応させた。さらにAIBN0.08部を加えて80℃に昇温し3時間反応させ、不揮発分濃度が39.6%のアクリル共重合体溶液(B)を得た。アクリル共重合体の重量平均分子量はGPCの測定(カラム;Shodex GPCA−804、溶離液;THF)からポリスチレン換算で115000であった。
前記アクリル共重合体溶液(B)100部に、MIBK40.6部、2−BuOH20.3部、1−メトキシ−2−プロパノール80.8部を加えて混合し、チヌビン329(チバ・スペシャルティーケミカルズ製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)20.7部、アクリル共重合体溶液(E)中のアクリル共重合体のヒドロキシ基1当量に対してイソシアネート基が1.0当量になるようにVESTANAT B1358/100 11.6部を添加し、さらにn−ブチルトリス(2−エチルヘキサノエート)錫 0.051部、APZ−6633 9.66部を加えて25℃で1時間攪拌し、アクリル樹脂塗料(HP−2)を得た。
[参考例3]
(第2層用オルガノシロキサン樹脂組成物塗料HT−1の調製)
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製 カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%)133部に1Mの塩酸1.3部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン162部を滴下して加えた。メチルトリメトキシシランの滴下直後から反応熱で混合液の温度は上昇を開始し、滴下開始から5分後に60℃まで温度上昇した後、冷却の効果で徐々に混合液温度が低下した。混合液の温度が30℃になった段階でこの温度を維持するようにして30℃で10時間攪拌し、これに、硬化触媒としてコリン濃度45重量%のメタノール溶液0.8部、pH調整剤として酢酸5部、希釈溶剤としてイソプロピルアルコール200部を混合し、オルガノシロキサン樹脂組成物塗料(HT−1)を得た。
[参考例4]
(第2層用オルガノシロキサン樹脂組成物塗料HT−2の調製)
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業(株)製カタロイドSN−30、固形分濃度30重量%)100部に1Mの塩酸1部を加えよく攪拌した。この分散液を10℃まで冷却し、氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン149部、ジメチルジメトキシシラン10.7部および2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシシリルプロポキシ)ジフェニルケトン3.4部の混合試薬を滴下して加えた。その混合試薬添加直後から反応熱で反応液の温度は上昇を開始し、混合試薬添加開始から5分後に60℃まで温度上昇した後冷却の効果で徐々に反応液温度が低下した。反応液の温度が30℃になった段階でこの温度を維持するようにして30℃で7時間攪拌し、これに、硬化触媒として45%コリンメタノール溶液0.8部、pH調整剤として酢酸5部、金属酸化物として酸化チタンスラリー(テイカ(株)製710T、固形分濃度40〜45重量%)11部を添加後、希釈溶剤として2−プロパノール200部を混合し、オルガノシロキサン樹脂組成物塗料(HT−2)を得た。
[実施例1]
以下の(I)〜(VI)の工程に従い、周縁部が除去され、表面にハードコートが積層された樹脂板を作成した。
(I)樹脂原料の製造
下記の原料表記に従い、樹脂原料の製造方法について説明する。
9重量部のPC、0.1重量部のEW、0.03重量部のPEPQ、0.03重量部のIRGF、0.05重量部のIRGN、0.25重量部のUV1577、0.37重量部のKHCS−06をスーパーミキサーで均一混合した。かかる9.83重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合し、押出機に供給するための予備混合物を得た。
得られた予備混合物を押出機に供給した。使用された押出機は、スクリュ径77mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製:TEX77CHT(完全かみ合い、同方向回転、2条ネジスクリュー))であった。該押出機は、スクリュ根元から見てL/D約8〜11の部分に順に送りのニーディングディスクと逆送りのニーディングディスクとの組合せからなる混練ゾーンを有し、その後L/D約16〜17の部分に送りのニーディングディスクからなる混練ゾーンを有していた。更に該押出機は、後半の混練ゾーンの直後にL/D0.5長さの逆送りのフルフライトゾーンを有していた。ベント口はL/D約18.5〜20の部分に1箇所設けられた。押出条件は吐出量320kg/h、スクリュ回転数160rpm、およびベントの真空度3kPaであった。また押出温度は第1供給口230℃からダイス部分280℃まで段階的に上昇させる温度構成であった。
ダイスから押出されたストランドは、温水浴中で冷却され、ペレタイザーにより切断されペレット化された。切断された直後のペレットは、振動式篩部を10秒ほど通過することにより、切断の不十分な長いペレットおよびカット屑のうち除去可能なものが除去された。
(II)使用原料
上記(I)で記号表記の各成分は下記の通りである。
PC: ビスフェノールAとホスゲンから界面縮重合法により製造された粘度平均分子量23,700のポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製:パンライトL−1250WP(商品名))
EW:ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのフルエステル(理研ビタミン(株)製:リケスターEW−400)
VPG:ペンタエリスリトールと脂肪族カルボン酸(ステアリン酸およびパルミチン酸を主成分とする)とのフルエステル(コグニスジャパン(株)製:ロキシオールVPG861)
PEPQ:ホスホナイト系熱安定剤(Sandoz社製:サンドスタブP−EPQ)
IRGF:ホスファイト系熱安定剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製:Irgafos168)
IRGN:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Irganox1076)
UV1577:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Tinuvin1577)
KHCS−06:金属ホウ化物と金属酸化物混合系赤外線吸収剤(住友金属鉱山(株)製:赤外線吸収剤成分が0.3重量%のポリカーボネート樹脂マスター)
ATO:アンチモンドープ酸化スズ(石原産業(株)製:SN−100P)
ITO:スズドープ酸化インジウム(富士チタン工業(株)製:ITO)
(III)樹脂板成形品の製造
上記(I)の方法で製造された樹脂原料であるペレットをプラテンの4軸平行制御機構を備えた射出プレス成形可能な大型成形機((株)名機製作所製:MDIP2100、最大型締め力33540kN)を用いて射出プレス成形し、図3に示す厚み18mmで長さ×幅が700mm×800mmの樹脂板成形品を製造した。かかる成形機は、樹脂原料を十分に乾燥可能なホッパードライヤー設備を付帯しており、かかる乾燥後のペレットが圧空輸送により成形機供給口に供給され成形に使用された。
成形はシリンダ温度300℃、ホットランナー設定温度290℃、金型温度は固定側105℃、可動側95℃、プレスストローク:0.5mm、中間型締め状態から最終型締め状態までの金型の移動速度0.02mm/秒、および加圧の保持時間:600秒であった。圧縮時の圧力は25MPaとし、該圧力で加圧の保持時間中保持した。射出速度はゲート部充填までの領域で5mm/秒、それ以降の領域で18mm/秒とした。また可動側金型パーティング面は最終の前進位置において固定側金型パーティング面に接触しないものとした。ランナはモールドマスターズ社製のバルブゲート型のホットランナー(直径8mmφ)を用いた。充填完了直前に型圧縮を開始し、オーバーラップは0.5秒とした。充填完了後直ちにバルブゲートを閉じて溶融樹脂がゲートからシリンダへ逆流しない条件とした。かかる成形においては、その4軸平行制御機構により、傾き量および捩れ量を表すtanθは約0.000025以下で保持された。
得られた成形品は取り出し後、成形品を10℃の水槽内に30分間保持して十分に冷却した。かかる冷却後成形品は取り出され、圧空を吹きつけることにより表面の水分を除去した。
次に、周縁部から20mmの部分を除去した。さらに図4に示すように角部を丸めた周縁部から50mmの部分を接着代とし、(即ち接着代はほぼ30mm幅)接着代を除いた部分を視認部とした。
(IV)ハードコート処理
上記で製造された樹脂板成形品を温度130℃クリーンオーブン中に1時間保管することでアニール処理した。その後参考例1で調整された第1層用アクリル樹脂塗料(HP−1)を液だまりができないようディップコート法によって両面塗布し、25℃のクリーンルーム内で20分間静置した。その後、125℃の熱風循環オーブン中で1時間保管して熱硬化させることにより、8μmの膜厚の硬化膜を積層させた。次いで該成形品の被膜表面上に参考例3で調整された第2層用オルガノシロキサン樹脂組成物塗料(HT−1)をディップコート法によって両面塗布し、25℃のクリーンルーム内で20分間静置した。その後、120℃の熱風循環オーブン中で1時間保管して熱硬化させ、更に4μmの膜厚の硬化膜を積層させた。
(V)周縁部の切削処理
上記(IV)のハードコート処理がされた樹脂板成形品を、ルーターを用いて切削加工した。かかる切削加工により図4に示すように周縁部の除去および接着代の形成がなされた窓部厚み18mmで長さ×幅が558mm×574mm、固定用周縁部の厚み11.5mmで窓部の長さ×幅500mm×520mm、窓部のコーナー部100mmRの樹脂板を作成した。
[実施例2]
実施例1と同様に成形し、上記(IV)のハードコート処理において、第1層用アクリル樹脂塗料として参考例2で調製された(HP−2)を、第2層用オルガノシロキサン樹脂組成物塗料として参考例4で調整された(HT−2)を用いる以外は実施例1と同様にハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例3]
上記(III)の射出プレス成形において、圧縮時の圧力を50MPaとする以外は実施例1と同様に成形した。その後、実施例1と同じハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例4]
上記(III)の射出プレス成形において、厚みを15mmとする以外は実施例1と同様に成形した。その後、実施例1と同じハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例5]
上記(I)において9重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.03重量部のPEPQ、0.3重量部のUV1577、0.37重量部のKHCS−06をスーパーミキサーで均一混合し、かかる9.8重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合する以外は、実施例1と同様に樹脂原料を製造した。その後、実施例1と同じ成形方法、ハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例6]
上記(I)において9重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.03重量部のPEPQ、0.3重量部のUV1577、0.7重量部のKHCS−06をスーパーミキサーで均一混合し、かかる10.13重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合する以外は、実施例1と同様に樹脂原料を製造した。その後、実施例1と同じ成形方法、ハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例7]
上記(I)において9重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.03重量部のPEPQ、0.3重量部のUV1577、0.1重量部のKHCS−06をスーパーミキサーで均一混合し、かかる9.53重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合する以外は、実施例1と同様に樹脂原料を製造した。その後、実施例1と同じ成形方法、ハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例8]
上記(I)において9重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.03重量部のPEPQ、0.3重量部のUV1577、0.3重量部のKHCS−06、0.1重量部のATOをスーパーミキサーで均一混合し、かかる9.83重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合する以外は、実施例1と同様に樹脂原料を製造した。その後、実施例1と同じ成形方法、ハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例9]
上記(I)において9重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.03重量部のPEPQ、0.3重量部のUV1577、0.3重量部のKHCS−06、0.1重量部のITOをスーパーミキサーで均一混合し、かかる9.83重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合する以外は、実施例1と同様に樹脂原料を製造した。その後、実施例1と同じ成形方法、ハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例10]
上記(I)において9重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.03重量部のPEPQ、0.3重量部のUV1577、0.1重量部のATOをスーパーミキサーで均一混合し、かかる9.53重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合する以外は、実施例1と同様に樹脂原料を製造した。その後、実施例1と同じ成形方法、ハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[実施例11]
上記(I)において9重量部のPC、0.1重量部のVPG、0.03重量部のPEPQ、0.3重量部のUV1577、0.1重量部のITOをスーパーミキサーで均一混合し、かかる9.53重量部の混合物と、90重量部のPCとをV型ブレンダーで均一に混合する以外は、実施例1と同様に樹脂原料を製造した。その後、実施例1と同じ成形方法、ハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[比較例1]
上記(III)の射出プレス成形に代えて、完全型締めされた金型内に樹脂を充填する通常の射出成形とした以外は、実施例1と同様に成形した。かかる成形では、充填後もホットランナーのバルブは開放とし、150MPaの保圧を15秒間掛けて保持した後、バルブを閉じて冷却工程に入った。その後、実施例1と同じハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
[比較例2]
上記比較例1の射出成形において、150MPaの保圧を45秒間掛けて保持した以外は比較例1と同様に成形した。その後、実施例1と同じハードコートおよび切削処理を行い、樹脂板を製造した。
(i)評価項目
上記実施例および比較例で製造された樹脂板について、下記の項目で評価した。
(i−1)透視ひずみ量
樹脂板の視認部分(即ちハードコート層を有する部分)における透視ひずみ量を測定した。2分以上の部分が存在する場合を×、すべてが2分以内の場合を○とした。なお、透視ひずみ量の測定は下記の方法で実施した。
(樹脂板成形品の透視ひずみの測定)
JIS R3212に準拠し図1に示す透視ひずみ量の測定装置を用いて測定した。スライド投影機はキャビン工業(株)社製AF−250を用いた。傾きが45°となるようサンプルを設置し、投影機からサンプルを通してスクリーン(13)に投影された円形状(22)の最大直径(23)をデジタルノギスで計測して透視ひずみ量を下記の換算式により算出した。
Δα=Δd/(0.29×R
(ここで、Δαは透視ひずみ量(分)、Δdは最大直径(mm)、Rはサンプルとスクリーンとの距離(m)を表す。)
(i−2)残留ひずみ量
ストレインオプティクテクノロジーズインク製 複屈折測定装置SCA−1500を用い、樹脂板の視認部における残留応力を測定した。2MPa以上の部分が存在する場合を×、すべてが2MPa以内の場合を○とした。
(i−3)外観
ハードコート後の樹脂板の視認部の外観を目視評価した。樹脂板表面のクラックの有無で比較を行い、クラックが発生する場合を×、クラックが発生しない場合を○とした。
Figure 0004847078
実施例で用いた透視ひずみ量の測定装置を模式的に表す図である。 実施例で用いた透視ひずみ量の測定において、スクリーンに投影された円を模式的に表す図である。 実施例で作成された樹脂板成形品の正面概略図(3−A)およびその側面図(3−B)である(破線は切削後の樹脂板を示す)。 実施例で作成された樹脂板の正面概略図(4−A)およびその断面図(4−B)である。
符号の説明
10 投影機
11 成形品
12 スライドの絵柄
13 スクリーン
21 スクリーンに投影された円の基準直径
22 成形品を透過してスクリーンに投影された歪んだ円
23 成形品を透過してスクリーンに投影された歪んだ円の最大直径
31 樹脂板成形品本体
32 成形品の製品相当部分
33 成形品のゲート部分
34 樹脂充填部の突起
35 対象軸
41 樹脂板製品の窓部
42 固定用の周縁部(切削加工あり)
43 製品上下方向の対称軸
44 窓部のコーナー部(100R)
45 製品左右方向の対称軸

Claims (9)

  1. 10〜50mmの肉厚を有する光透過性の熱可塑性樹脂からなる樹脂板の製造方法であって、該製造方法は、(i)金型キャビティ内へ溶融した熱可塑性樹脂を射出する工程であって該工程内において可動側金型は圧縮ストローク分だけ余分に開かれた中間型締め状態にある工程(工程−i)、(ii)射出後に樹脂を圧縮して最終型締めを行う工程(工程−ii)、(iii)最終型締め後更に樹脂を圧縮する工程(工程−iii)、(iv)樹脂を金型キャビティ内より取り出し可能となる温度まで冷却させ成形品を取り出す工程(工程−iv)、(vi)成形品にハードコート層を設ける工程(工程−vi)、および(v)かかる成形品の周縁部を除去することにより成形品の平面度を向上させると同時に、樹脂板周縁部にハードコートのない接着代を設ける工程(工程−v)からなることを特徴とする厚肉光透過性樹脂板の製造方法。
  2. 上記工程−i〜工程−iiiは、固定側金型と可動側金型との間の平行度が平行度制御手段を用いて制御されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 上記工程−iにおいて、中間型締め状態における圧縮ストロークと樹脂板の厚みとの合計量は、樹脂板の厚みに対して1.001〜1.08倍の範囲である請求項1〜請求項に記載の製造方法。
  4. 上記工程−iiおよび工程−iiiにおいて、樹脂に加える圧力は10〜35MPaの範囲であり、その加圧時間は成形品の肉厚をt(mm)としたとき、0.7t〜2t(秒)の範囲とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 上記樹脂板を得るための成形品は、その1つの側面のみにゲートを有していることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 上記樹脂板は、その最大投影面積が900〜18,000cmである請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 上記樹脂板は、その全光線透過率が15%以上であり、ヘーズが0.1〜20%の範囲である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 上記熱可塑性樹脂は、粘度平均分子量が13,000〜40,000の芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 上記樹脂板は、輸送機用の樹脂製窓ガラス成形品である請求項1〜請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
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