JP4845000B2 - 被焼入物品の急冷装置及び被焼入物品の急冷方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被焼入物品の少なくとも一部を焼入れするために、焼入温度まで加熱されたこの被焼入物品の焼入領域を冷却液で急冷するための装置及び方法に関する。
例えば、四輪車両のドアの内部に配置される側面衝突用補強部材であるインパクトビームや、センターピラー用補強部材は、プレス成形された後に、求められる強度を確保するために部分的に焼入れされる。下記の特許文献1には、センターピラー用補強部材を部分的に焼入れするための装置が示され、この装置は、被焼入物品となっているセンターピラー用補強部材の焼入領域を高周波電流による誘導加熱で加熱するための加熱手段と、この加熱手段で焼入温度まで加熱された焼入領域を冷却液で急冷することによって焼入れする急冷手段とを有している。この装置における急冷手段は冷却液が供給されるジャケットであり、このジャケットは被焼入物品の両側に配置されており、それぞれのジャケットの冷却液噴出部から冷却液が噴出することにより、焼入領域は急冷され、焼入れされる。そして、この装置では、それぞれのジャケットの冷却液噴出部から噴出した冷却液によって焼入領域を被焼入物品の表裏から略同時に急冷するようになっている。
特開2000−256733(段落番号0047、図2)
急冷手段を被焼入物品の両側に配置し、これらの急冷手段の冷却液噴出部から噴出した冷却液によって被焼入物品を急冷する場合に、冷却液の焼入領域への到達時にずれがあると、冷却液が早く到達した側では急冷による収縮が生ずるとともに、反対側ではこの収縮による圧縮降伏が生じ、この圧縮降伏のために、焼入れ後の被焼入物品の全体形状は、焼入れ前と比較すると、冷却液が早く到達した側へ湾曲突出した形状となってしまう。このような問題を解消するためには、被焼入物品の両側に配置されたそれぞれの急冷手段の冷却液噴出部から噴出される冷却液を被焼入物品の焼入領域に同時に到達させなければならず、そのためには、それぞれの急冷手段から被焼入物品の焼入領域までの間隔を同じにしなければならないが、これによると、焼入れ前の形状が異なっているそれぞれの被焼入物品についての焼入れを行うためには、これらの形状に対応した形状を有している急冷手段、すなわち特許文献1では上記ジャケットを用意しなければならない。
このため、特許文献1に示されている従来技術によると、焼入れ前の形状が異なっているそれぞれの被焼入物品ごとにジャケットを製造しなければならず、これらの被焼入物品についてジャケットを共通化することができない。
また、上述したように、焼入れ後の被焼入物品の全体形状は、焼入れ前と比べると、冷却液が早く到達した側へ湾曲突出した形状となるため、急冷手段の形状設定によってそれぞれの急冷手段から被焼入物品の焼入領域までの間隔を決めることにより、被焼入物品が焼入れ後に所定方向へ湾曲突出した等の所望どおりの形状になるようにすることもできるが、これによると、焼入れ後の形状が異なるそれぞれの被焼入物品について、この焼入れ後の形状と対応した形状となっている急冷手段を用意しなければならず、この場合にも、急冷手段をそれぞれの被焼入物品について共通化することができない。
本発明の目的は、被焼入物品の両側に配置される急冷手段を、焼入れ前の形状が異なっているそれぞれの被焼入物品や焼入れ後の形状が異なるそれぞれの被焼入物品を含む各種の被焼入物品について、共通化できるようになる被焼入物品の急冷装置及び被焼入物品の急冷方法を提供するところにある。
本発明に係る被焼入物品の急冷装置は、少なくとも一部が焼入領域となっている被焼入物品の両側に配置された急冷手段を有し、それぞれの前記急冷手段に、前記焼入領域に向って冷却液を噴出する少なくとも1個の冷却液噴出部が設けられ、焼入温度まで加熱された前記焼入領域を前記冷却液噴出部から噴出する冷却液で急冷することによって焼入れする被焼入物品の急冷装置において、それぞれの前記急冷手段を制御し、これらの急冷手段の前記冷却液噴出部から冷却液を噴出するタイミングを設定するための制御装置を備えていることを特徴とするものである。
この急冷装置によると、それぞれの急冷手段の冷却液噴出部から被焼入物品の焼入領域に向って冷却液を噴出させるタイミングは、制御装置によって任意に制御でき、これらの急冷手段から冷却液が焼入領域に到達する時を自由に設定できるため、焼入れ前の形状が異なっているそれぞれの被焼入物品や、焼入れ後の形状が異なるそれぞれの被焼入物品について、同じ急冷手段を用いることができ、これらの被焼入物品について急冷手段を共通化できることになる。このため、急冷手段に関するコストを削減できる。
この急冷装置において、それぞれの急冷手段における冷却液噴出部の個数は1個でもよく、複数個でもよい。
それぞれの急冷手段における冷却液噴出部の個数を複数個とする場合に、これら全部の冷却液噴出部からの冷却液噴出タイミングを制御装置で制御すると、焼入れ前の形状が複雑となっている被焼入物品についても、また、焼入れ後の形状が複雑となる被焼入物品についても、急冷手段を共通化できることになり、その急冷手段を適用できる被焼入物品の種類を拡大できる。
それぞれの急冷手段は、冷却液を被焼入物品の焼入領域に向って噴出させる冷却液噴出部を備えていれば、任意の構造、形式のものでよい。
例えば、その第1番目の急冷手段の例は、冷却液供給管と、この冷却液供給管の先端に接続されたノズルとを含んで構成されるものであり、第2番目の急冷手段の例は、冷却液供給管と、この冷却液供給管から冷却液が供給されるジャケットとを含んで構成されるものである。
それぞれの急冷手段を、冷却液供給管と、この冷却液供給管から冷却液が供給されるジャケットとを含んで構成し、これらの急冷手段に複数個の冷却液噴出部を設ける場合には、それぞれのジャケットの内部に、互いに仕切られ、かつ被焼入物品に向って開口している冷却液噴出孔が形成された複数個の仕切り室が設けることにより、これらの仕切り室をそれぞれの冷却液噴出部とすることができる。そして、これらの仕切り室ごとに冷却液供給管を接続し、これらの冷却液供給管に前記制御装置で制御される開閉弁を設けることにより、それぞれの仕切り室の冷却液噴出孔から被焼入物品に向って冷却液が噴出するタイミングを制御装置で任意に設定することができる。
このようにジャケットの内部に複数個の仕切り室を設け、これらの仕切り室の冷却液噴出孔から冷却液を被焼入物品に向かって噴出させる場合には、それぞれの仕切り室ごとに、焼入作業後にこれらの仕切り室の内部に残留している冷却液を排出するためのエアを供給するエア供給管を設けることが好ましい。
これによると、それぞれの仕切り室の冷却液噴出孔から冷却液を噴出させて1個の被焼入物品についての焼入作業を終了した後、それぞれのエア供給管からそれぞれの仕切り室にエアを供給することにより、これらの仕切り室に残っている冷却液を冷却液噴出孔から排出することができ、これにより、全部の仕切り室の状態を冷却液噴出前と同じ状態に復帰させることができるため、次回の焼入作業の対象物である被焼入物品に向かってそれぞれの仕切り室の冷却液噴出孔から冷却液を噴出させるためのタイミングを、前記制御装置で設定したとおりの正確なタイミングとすることができる。
また、仕切り室ごとに設けられているそれぞれの冷却液供給管に、仕切り室と前記開閉弁との間において、この開閉弁の側から仕切り室の側への流体の流通だけを許容する逆止弁を設けることが好ましい。
これによると、焼入作業後のそれぞれの仕切り室に残留している冷却液を排出するためのエアをこれらの仕切り室に供給しても、このエアが仕切り室から冷却液供給管の前記開閉弁の側へ侵入するのを逆止弁で阻止でき、これにより、次の被焼入物品に向かってそれぞれの仕切り室から冷却液を噴出するタイミングが、仕切り室から冷却液供給管の開閉弁の側へ侵入するエアによってずれるのを防止できる。
以上説明した本発明に係る被焼入物品の急冷装置において、被焼入物品の両側に配置される急冷手段の配置位置は、被焼入物品の上下位置でもよく、左右位置でもよい。
また、これらの急冷手段の配置位置を被焼入物品の上下位置とする場合であって、それぞれの急冷手段を、前述と同じく、冷却液供給管と、この冷却液供給管から冷却液が供給されるジャケットとを有して構成し、これらのジャケットの内部に、互いに仕切られ、かつ被焼入物品に向って開口している冷却液噴出孔が形成された複数個の仕切り室を設け、これらの仕切り室をそれぞれの前記冷却液噴出部とし、それぞれの仕切り室ごとに前記冷却液供給管を接続し、これらの冷却液供給管に前記制御装置で制御される開閉弁を設ける場合には、被焼入物品の上下に配置されたジャケットのうち、被焼入物品の上側に配置されたジャケットのそれぞれの仕切り室ごとに、焼入作業後のこれらの仕切り室の内部に残留している冷却液を排出するためのエアを供給するエア供給管を設けてもよい。
なぜなら、前回の被焼入物品の焼入作業が終了して次回の被焼入物品についての焼入作業を開始するときに、被焼入物品の上下に配置されたジャケットのうち、被焼入物品の下側に配置されたジャケットのそれぞれの仕切り室に冷却液が残留していても、これらの仕切り室における冷却液の残留状態は同じになるため、次回の被焼入物品に向かってこれらの仕切り室から冷却液を噴出させるタイミングの設定が容易となり、設定したとおりのタイミングにより、被焼入物品の下側に配置されたジャケットのそれぞれの仕切り室から冷却液を噴出させることができるからである。
このように、被焼入物品の上下に配置されたジャケットのうち、被焼入物品の上側に配置されたジャケットのそれぞれの仕切り室ごとに、焼入作業後のこれらの仕切り室の内部に残留している冷却液を排出するためのエアを供給するエア供給管を設ける場合には、被焼入物品の上側に配置されたジャケットのそれぞれの仕切り室ごとに接続されている冷却液供給管に、仕切り室と開閉弁との間において、この開閉弁の側から仕切り室の側への流体の流通だけを許容する逆止弁を設ける。
これにより、被焼入物品の上側に配置されたジャケットのそれぞれの仕切り室に残留している冷却液を排出するためのエアを焼入作業後にこれらの仕切り室に供給しても、このエアが仕切り室から冷却液供給管の開閉弁の側へ侵入するのを逆止弁で阻止できる。
本発明に係る被焼入物品の急冷方法は、被焼入物品の少なくとも一部に画定された焼入領域を焼入温度まで加熱するための加熱工程と、前記被焼入物品の両側に配置されたそれぞれの急冷手段に少なくとも1個設けられている冷却液噴出部から冷却液を噴出させることにより、これらの冷却液で前記焼入領域を急冷するための急冷工程とを含んでいる被焼入物品の急冷方法において、それぞれの前記急冷手段の前記冷却液噴出部から冷却液を噴出させるタイミングをそれぞれの前記急冷手段を制御する制御装置で設定し、これらの冷却液が前記焼入領域に到達する時を調整するための調整工程を有していることを特徴とするものである。
この急冷方法における第1の例として、上記調整工程における冷却液の噴出タイミングの設定により、それぞれの急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液を焼入領域に同時又は略同時に到達させることができる。
これによると、焼入れ後の被焼入物品の形状を焼入れ前の形状と同じ又は略同じとすることができる。
また、第2の例として、上記調整工程における冷却液の噴出タイミングの設定により、それぞれの急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液のうち、一方の急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液を他方の急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液よりも早く焼入領域に到達させることができる。
これによると、冷却液が早く到達した側では急冷による収縮が生じ、反対側ではこの収縮による圧縮降伏が生じるため、この圧縮降伏のために、焼入れ後の被焼入物品の形状を焼入れ前の形状と異ならせることができる。
これを具体的に説明すると、焼入れ前の形状がどちらの急冷手段の側にも湾曲突出していない形状となっていた被焼入物品については、焼入れ後の形状を上記一方の急冷手段の側に湾曲突出した形状とすることができ、また、焼入れ前の形状が上記一方の急冷手段の側に湾曲突出している形状となっていた被焼入物品については、焼入れ後の形状を上記一方の急冷手段の側に一層大きく湾曲突出した形状とすることができる。そして、焼入れ前の形状が上記他方の急冷手段の側に湾曲突出している形状となっていた被焼入物品については、焼入れ後の形状を、どちらの急冷手段の側にも湾曲突出していない形状や、上記一方の急冷手段の側に湾曲突出した形状とすることができる。
以上の本発明は、立体形状を有する被焼入物品にも適用でき、平面形状を有する被焼入物品にも適用できる。
また、被焼入物品に画定される焼入領域の個数は、1個でもよく、複数個でもよい。複数個の焼入領域が画定される被焼入物品については、これらの焼入領域を同じ急冷手段で急冷することができる。
また、被焼入物品の焼入領域を焼入温度まで加熱するための加熱手段は、高周波電流による誘導加熱式のものでもよく、ガス火炎によるものでもよく、レーザー光等によるものでもよく、任意である。
さらに、それぞれの急冷手段を制御し、これらの急冷手段の冷却液噴出部から冷却液を噴出させるタイミングを設定するための制御装置は、タイマーやリレーを含んで構成されるシーケンス回路によるものでもよく、プログラムに基づき作動するコンピュータによるものでもよい。
本発明によると、被焼入物品の両側に配置される急冷手段を、焼入れ前の形状が異なっているそれぞれの被焼入物品や焼入れ後の形状が異なるそれぞれの被焼入物品を含む各種被焼入物品について、共通化、すなわち兼用化できるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態における被焼入物品1は、四輪車両のドアの内部に配置され、側面衝突に対するドアの必要強度を確保するためのインパクトビームであり、細長形状となっているこの被焼入物品1は、板金のプレス成形で生産された後に、一部が焼入れされて所定強度とされる。
図1には、被焼入物品1が複数個のクランプ装置2で挟持されて焼入装置50にセットされている状態が示され、この図1では、焼入装置50を構成する装置や手段、部材のうち、クランプ装置2と、焼入れ用の冷却水を受ける受水槽であって、これらのクランプ装置2が立設された排水口3A付きの水槽3とが実線で示されている。図2は図1のS2−S2線断面図であり、この図2には、被焼入物品1を加熱、急冷するための手段も示されている。
図2で示されているように、被焼入物品1は、長さ方向と直交する水平方向である幅方向の両端のフランジ部1Aと、これらのフランジ部1Aの内側に形成された隆起部1Bとからなり、フランジ部1Aがクランプ装置2で挟持されて被焼入物品1は焼入装置50にセットされる。このように被焼入物品1がクランプ装置2で焼入れ装置50にセットされたときにおいて、隆起部1Bの上下端部が、図1で示されているように、被焼入物品1の長さ方向に延びる被焼入物品1の上辺1Cと下辺1Dになっている。フランジ部1Aと上辺1Cは水平であり、下辺1Dの高さ位置は、被焼入物品1の長さ方向両端部及びその周辺部ではフランジ部1Aと一致しているが、被焼入物品1の長さ方向の中間部では、下辺1Dはフランジ部1Aよりも下側へ湾曲突出している。
図2で示されているとおり、それぞれのクランプ装置2は、支柱4の上端に取り付けられた下クランプ部材5と、下クランプ部材5に対して軸6を中心に上下に回動自在となっている上クランプ部材7と、上クランプ部材7を回動させるシリンダ8とを有し、シリンダ8で上クランプ部材7が下向きに回動することにより、上下のクランプ部材5,7でフランジ部1Aが挟持される。また、それぞれのクランプ装置2には、フランジ部1Aを挟持したときの上下のクランプ部材5,7の間隔を調整可能とするボルト及びロックナット等による間隔調整手段9が設けられている。
図1で示されているとおり、クランプ装置2は被焼入物品1の長さ方向に複数個配置され、これらのクランプ装置2のうち、1個のクランプ装置2は、間隔調整手段9による上下のクランプ部材5,7の間隔調整によってフランジ部1Aを強く挟持するが、他のクランプ装置2における上下のクランプ部材5,7の間隔は、間隔調整手段9によってフランジ部1Aの厚さと同じ又は略同じに設定されている。このため、これらのクランプ装置2ではフランジ部1Aを強く挟持せず、フランジ部1Aを上下から軽く保持する程度となっている。これにより、被焼入物品1の焼入領域が後述するように焼入温度まで加熱された際における被焼入物品1の長さ方向への自由な伸長、及び急冷された際における被焼入物品1の長さ方向への自由な収縮が保障されている。
被焼入物品1の両側である上下には、高周波電流による誘導加熱手段の構成部材である誘導コイルであって、急冷手段の構成部材にもなっているジャケット10,11が図示しない支持部材で支持されて配置され、本実施形態では、上のジャケット10は、被焼入物品1の幅方向両側に2つある上辺1Cと上側から対向し、下のジャケット11は、被焼入物品1の幅方向両側に2つある下辺1Dと下側から対向している。また、上の2個のジャケット10は連結部10Aで連結され、下の2個のジャケット11も連結部11Aで連結され、これにより、それぞれのジャケット10と11によってU字形となった誘導コイル電路兼用急冷用ジャケット水路が構成されている。
本実施形態では、誘導コイルになっているジャケット10,11の配置位置と対応している被焼入物品1の上述したそれぞれの部分、すなわち、上辺1Cとその隣接部分及び下辺1Dとその隣接部分が、被焼入物品1に画定された焼入領域となっている。
図3には、上下のジャケット10,11と、上記加熱手段の電気回路及び上記急冷手段の冷却水供給回路とが示されている。上記加熱手段は、ジャケット10,11に通電される高周波電流によって被焼入物品1の上記焼入領域を誘導加熱するものであるため、図3で示されている電源装置12には、電源装置12からの電流を高周波電流に変換する高周波インバータ13が接続され、高周波インバータ13からの高周波電流は高周波トランス14で所定電圧に変換され、この所定電圧の高周波電流が誘導コイルであるジャケット10,11に通電される。
また、図2で示されているように、それぞれのジャケット10,11の内部には、冷却水流通管15が配管され、これらの管15の内部を流通する冷却水により、高温となるジャケット10、11を冷却するようになっている。本実施形態では、管15は、それぞれ2個あるジャケット10,11について往復配管されており、図3で示されている冷却水16は、これらの管15ごとに供給される。
また、図3で示されているように、それぞれのジャケット10,11は、両端が端面板10B,10C,11B,11Cで塞がれた中空部材となっているとともに、これらのジャケット10,11の内部には仕切り板17,18が設けられ、これらの仕切り板17,18により、ジャケット10,11の内部には、被焼入物品1の長さ方向であるジャケット10,11の長さ方向に仕切られた複数個ずつ、本実施形態では5個ずつの仕切り室A〜E,F〜Jが形成されている。これらの仕切り室A〜E,F〜Jごとに図2で示された冷却水噴出孔21,22が形成され、これらの冷却水噴出孔21,22は被焼入物品1に向かって開口している。
さらに図2で示すとおり、上下のジャケット10,11には冷却水供給管23,24が接続され、これらの冷却水供給管23,24は、図3で示されているように、それぞれの仕切り室A〜E,F〜Jごとに設けられ、これらの冷却水供給管23,24には、図2に示すように、電磁開閉弁25,26が設けられている。また、それぞれの冷却水供給管23,24には、開閉弁25,26と仕切り室A〜E,F〜Jとの間において、逆止弁27,28が設けられている。逆止弁27,28は、開閉弁25,26の側から仕切り室A〜E,F〜Jの側への流体の流通を許容し、これとは反対方向への流体の流通を阻止するものである。また、それぞれの冷却水供給管23,24には、開閉弁25,26と逆止弁27,28との間において、流量調整弁70,71が介設され、これらの流量調整弁70,71は、仕切り室A〜E,F〜Jに供給される冷却水の量を手動操作等で調整可能とし、仕切り室A〜E,F〜Jと対応する焼入領域のそれぞれの部分に適切な量の冷却水を供給できるようにするためのものであり、焼入領域のそれぞれの部分に噴出供給する冷却水の量を、必要に応じて均等としたり、不均等としたりすることができるようになっている。
以上の構成により、冷却水供給管23,24に供給される図3で示す冷却水29は、開閉弁25,26が開くことにより、流量調整弁70,71と逆止弁27,28を経て仕切り室A〜E,F〜Jに流入し、流量調整弁70,71で調整された量の冷却水が、それぞれの仕切り室A〜E,F〜Jの冷却水噴出孔21,22から被焼入物品1に向かって噴出する。したがって、本実施形態では、冷却水供給管23,24と開閉弁25,26と流量調整弁70,71と逆止弁27,28と仕切り室A〜E,F〜Jと冷却水噴出孔21,22とにより、被焼入物品1の加熱された前記焼入領域を急冷するための上下の急冷手段が構成されている。また、前記仕切り板17,18で互いに仕切られていて、それぞれに冷却水噴出孔21,22が形成されている仕切り室A〜E,F〜Jにより、上下の急冷手段における被焼入物品1に向かって冷却水29を噴出するための冷却水噴出部が構成され、この冷却水噴出部は、上下のジャケット10,11に5個ずつ設けられている。
図2で示されているように、それぞれの冷却水供給管23,24には、逆止弁27,28と仕切り室A〜E,F〜Jとの間において、エア供給管30,31が接続され、これらのエア供給管30,31には図3で示すエア32が供給される。それぞれのエア供給管30,31には、図2で示すように、電磁開閉弁33,34が設けられ、これらの開閉弁33,34が開くことにより、エア32はそれぞれの仕切り室A〜E,F〜Jに供給され、焼入作業後の仕切り室A〜E,F〜Jに残留している冷却水がエア32で排出されるようになっている。
なお、それぞれのエア供給管30,31を冷却水供給管23,24に接続するのではなく、仕切り室A〜E,F〜Jに直接接続するようにしてよい。
また、本実施形態では、図2で示されている冷却水供給管23,24における逆止弁27,28と流量調整弁70,71との間の短管部分23A,24Aと、エア供給管30,31におけるジャケット10,11と開閉弁33,34との間の短管部分30A,31Aは、ナイロンホース又はゴムホース等による電気絶縁管となっており、これにより、ジャケット10,11に通電される高周波電流が開閉弁25,26,33,34へリークするのを防止し、これらの開閉弁25,26,33,34がリーク電流で機能不全となったり破損するのを防止している。
図3で示されているように、以上の冷却水供給管23,24の開閉弁25,26とエア供給管30,31の開閉弁33,34は、制御装置40で制御され、また、前記電源装置12も制御装置40で制御される。この制御装置40は、プログラムに基づき作動するコンピュータである。
また、図3で示されているとおり、被焼入物品1の上下に配置されていて、被焼入物品1の長さ方向に真っ直ぐに延びているジャケット10,11は、水平に配置され、それぞれのクランプ装置2で支持されたときにおける被焼入物品1の上辺1Cは、前述したとおり、水平に延びている。このため、上のジャケット10におけるそれぞれの仕切り室A〜Eから被焼入物品1の焼入領域までの全部の間隔は、L1である。これに対して本実施形態に係る被焼入物品1の下辺1Dは、前述の説明から明らかなとおり、被焼入物品1の長さ方向両端から長さ方向内側へ一定長さ分までは水平に延びているが、これ以降は下側に向かって次第に突出して被焼入物品1の長さ方向中央部でその突出量が最大となった湾曲状となっている。このため、下のジャケット11におけるそれぞれの仕切り室F〜Jから被焼入物品1の焼入領域までの間隔は、ジャケット11の長さ方向両端の仕切り室F,Jについては、L2であり、これらの仕切り室F,Jの次のジャケット11の長さ方向内側の仕切り室G,Iについては、L2よりも短いL3であり、ジャケット11の長さ方向中央の仕切り室Hについては、L3よりもさらに短いL4になっている。
また、仕切り室A〜E,F〜Jから逆止弁27,28までの冷却液供給管23,24の容量を含む全部の仕切り室A〜E,F〜Jの容量は、同じになっている。
次に、被焼入物品1の前述した焼入領域を焼入れするための作業について説明する。この焼入作業は、被焼入物品1の焼入れ前の形状をそのまま維持して焼入れするものである。
被焼入物品1のフランジ部1Aがそれぞれのクランプ装置2で挟持され、これによって被焼入物品1が図2の焼入装置50にセットされた後、図3で示す制御装置40で電源装置12がオンとなり、誘導コイルであるジャケット10,11に高周波電流が通電されることにより、被焼入物品1の焼入領域は誘導された高周波電流で加熱される。そして、制御装置40で予め設定されている所定時間が経過してそれぞれの焼入領域が焼入温度になると、制御装置40は電源装置40をオフにするとともに、制御装置40は、それぞれの冷却水供給管23,24に設けられている開閉弁25,26を、図4で示すタイムチャートで示されたタイミング順序に従って開く。これにより、図3で示す冷却水29は、開閉弁25,26と流量調整弁70,71と逆止弁27,28を通って上下のジャケット10,11のそれぞれの仕切り室A〜E,F〜Jに流入するとともに、これらの仕切り室A〜E,F〜Jの冷却水噴出孔21,22から被焼入物品1に向かって噴出し、被焼入物品1の焼入領域を冷却水29が急冷することにより、これらの焼入領域が焼入れされる。
なお、クランプ装置2の前述した上下のクランプ部材5,7が、被焼入物品1の焼入領域を加熱する際に誘導加熱されるおそれがある場合には、これらのクランプ部材5,7を、例えば、ガラス繊維や耐熱ガラス等の非磁性材料で形成してもよい。
図4のタイムチャートは、縦軸を時間とし、横軸をジャケット10,11の長さ方向として示したもので、時間の進行方向を下向きとしている。このタイムチャートにおけるa〜eは、上のジャケット10の仕切り室A〜E,F〜Jごとに設けられている開閉弁25を表し、f〜jは、下のジャケット11の仕切り室F〜Jごとに設けられている開閉弁26を表している。
また、このタイムチャートでは、被焼入物品1の焼入領域までの間隔が最も大きい下のジャケット11の仕切り室F,Jのための開閉弁26を制御装置40で開くタイミングが、基準時T1として示されている。この基準時T1において、仕切り室F,Jのための開閉弁26が制御装置40からの信号で開いた後、時間T2において、次に被焼入物品1の焼入領域までの間隔が大きい下のジャケット11の仕切り室G,Iのための開閉弁26が制御装置40からの信号で開き、そして、この後、時間T3において、下のジャケット11の仕切り室Hのための開閉弁26が、時間T4において、上のジャケット10の仕切り室A〜Eのための開閉弁25が、それぞれ制御装置40からの信号で開く。
時間T1と時間T2の差は、図3で示されている間隔L2と間隔L3の差と対応し、時間T2と時間T3の差は、間隔L3と間隔L4の差と対応している。また、上のジャケット10の仕切り室A〜Eのための開閉弁25からこれらの仕切り室A〜Eに下向きに流入して仕切り室A〜Eの冷却水噴出孔21から下向きに噴出する冷却水の速度は、下のジャケット11の仕切り室Hのための開閉弁26からこの仕切り室Hに上向きに流入してこの仕切り室Hの冷却水噴出孔22から上向きに噴出する冷却水の速度と比較すると、重力の影響分だけ速くなるため、時間T3と時間T4の差は、これらの冷却水の速度差が考慮された間隔L4と間隔L1の差に対応している。
制御装置40で設定されている開閉弁25,26の開きタイミングは、このようなタイミングであるため、上下のジャケット10,11のそれぞれの仕切り室A〜E、F〜Jの冷却水噴出孔21,22から噴出した冷却水は、それぞれ同時又は略同時に被焼入物品1の焼入領域に到達する。このため、被焼入物品1の焼入領域は同時又は略同時に急冷されることになり、したがって、上下のジャケット10,11から被焼入物品1への冷却水の到達時にずれがあった場合に生ずる被焼入物品1の上下の湾曲変形は発生せず又はその発生は抑制され、被焼入物品1は、焼入れ後の形状が焼入れ前の形状と同じ又は略同じになって焼入れされる。
全部の開閉弁25,26が開いてから所定時間が経過すると、それぞれの開閉弁25,26は制御装置40からの信号で閉じ、そして、前述したエア供給管30,31に設けられているそれぞれの開閉弁33,34は、制御装置40からの信号で所定時間だけ開く。これにより、それぞれの仕切り室A〜E,F〜Jの内部と、仕切り室A〜E,F〜Jから逆止弁27,28までの冷却液供給管23,24の内部に残っている冷却水は、エア供給管30,31から供給されるエアで冷却水噴出孔21,22から排出され、これらの仕切り室A〜E,F〜Jの内部と、仕切り室A〜E,F〜Jから逆止弁27,28までの冷却液供給管23,24の内部は、冷却水が供給される前の状態に戻る。
この後、それぞれのクランプ装置2による被焼入物品1のフランジ部1Aの挟持が解除され、焼入れ済みのこの被焼入物品1が図示しない取出装置で焼入装置50から取り出され、これに代わって次回の焼入作業の対象物である被焼入物品1のフランジ部1Aがそれぞれのクランプ装置2で挟持され、この被焼入物品1について、前述した焼入作業が繰り返される。
また、焼入領域となっている上辺や下辺の形状が被焼入物品1と比較して異なっている別種の被焼入物品をそれぞれのクランプ装置2で挟持させ、この別種の被焼入物品についての焼入作業を、焼入れ後の形状を焼入れ前の形状と同じ又は略同じに維持させて行う場合には、焼入作業前において、それぞれの開閉弁25,26の開きタイミングを制御装置40で設定調整する作業を行い、これにより、全部の仕切り室A〜E,F〜Jの冷却水噴出孔21,22から噴出した冷却水が同時又は略同時に被焼入物品の焼入領域に到達するようにする。この後に焼入作業を行うと、全部の仕切り室A〜E,F〜Jの冷却水噴出孔21,22から噴出した冷却水は同時又は略同時に被焼入物品に到達するため、この被焼入物品を、焼入れ後の形状を焼入れ前の形状と同じ又は略同じに維持させて焼入れすることができる。
なお、このように上述の被焼入物品1とは上辺や下辺の形状が異なっていて、クランプ装置2で挟着されるフランジ部の高さ位置も異なっている各種の被焼入物品についての焼入作業を、同じクランプ装置2を用いて行えるようにするためには、それぞれのクランプ装置2の高さ寸法を調整可能とすればよい。そのための一例は、図1で示されているように、クランプ装置2の支柱4を、支柱本体4Aと、支柱本体4Aの下側に継ぎ足される支柱補助部材4Bとで形成し、支柱本体4Aに対して取り付け、取り外し自在とされる支柱補助部材4Bとして各種長さのものを用意することである。また、クランプ装置の高さ寸法を調整可能とするためには、支柱4を、上下に長い長孔が形成され、この長孔にボルト等の締結具が挿通される複数個の部材や、ターンバックル方式で上下方向に位置調整可能となった複数個の部材で形成してもよい。
以上説明した本実施形態によると、被焼入物品の上下に配置されたジャケット10、11に接続されている冷却水供給管23,24の開閉弁25,26は、制御装置40で制御され、これらの開閉弁25,26の開きタイミング、言い換えると、ジャケット10,11からの冷却水の噴出タイミングは、制御装置40で任意に設定できるため、上辺や下辺の形状が異なっている各種の被焼入物品についての焼入作業を、焼入れ後の形状を焼入れ前の形状と同じ又は略同じにして行う作業として行う場合に、同じジャケット10,11を用いて行えることになり、被焼入物品の上辺や下辺の形状と倣った形状となっているジャケットを別途製造する必要がなく、ジャケット10,11をこれらの被焼入物品について共通化、すなわち兼用化できることになる。
また、それぞれのジャケット10,11の内部には、互いに仕切られた仕切り室A〜E,F〜Jがジャケット10,11の長さ方向に並設され、これらの仕切り室A〜E,F〜Jごとに冷却水噴出孔21,22や冷却水供給管23,24、開閉弁25,26が設けられているため、それぞれのジャケット10,11の仕切り室A〜E,F〜Jは冷却水噴出部となっているとともに、これら全部の冷却水噴出部からの冷却水噴出タイミングが制御装置40で調整自在となっているため、ジャケット10,11の長さ方向に長い寸法となっている被焼入物品が、その長さ方向において上下寸法が変化する複雑な形状のものとなっていても、このような被焼入物品の焼入領域に対して有効に焼入作業のための急冷を行うことができる。
また、1個の被焼入物品の焼入作業後において、それぞれの仕切り室A〜E,F〜Jにはエア供給管30,31からエアを供給でき、このエアにより、仕切り室A〜E,F〜Jの内部と、仕切り室A〜E,F〜Jから逆止弁27,28までの冷却液供給管23,24の内部に残留している冷却水を排除することにより、これらの箇所を焼入作業前と同じ状態に復帰させることができるため、次の被焼入物品の焼入作業を行う場合において、それぞれの仕切り室A〜E,F〜Jの冷却水噴出孔21,22から冷却水をこの被焼入物品の焼入領域に向かって噴出させるタイミングを、制御装置40で設定したとおりの正確なタイミングとすることができる。
さらに、上のジャケット10の仕切り室A〜Eの内部と、仕切り室A〜Eから逆止弁27までの冷却液供給管23,24の内部に残留している冷却水を完全にエアで排除できるため、前記加熱手段で焼入温度まで加熱された次の被焼入物品の焼入領域に、上のジャケット10から冷却水が落下し、この焼入領域の温度が低下してしまうなどの不測の事態が生ずるのを防止できる。
また、冷却水供給管23,24には、仕切り室A〜E,F〜Jと開閉弁25,26との間において、開閉弁25,26の側から仕切り室A〜E,F〜Jの側への流体の流通だけを許容する逆止弁27,28が設けられているため、仕切り室A〜E,F〜Jに冷却水排出用エアを供給しても、このエアは逆止弁27,28より先には侵入しない。このため、開閉弁25,26が開かれたときに、それぞれの仕切り室A〜E,F〜Jから冷却水が噴出するタイミングは、制御装置40で設定されたとおりの正確なタイミングとなる。
また、制御装置40で開閉され、仕切り室A〜E,F〜Jへの冷却水の供給及び遮断を行う開閉弁25,26と、仕切り室A〜E,F〜Jへのエアの供給及び遮断を行う開閉弁33,34は、高周波電流が通電されるジャケット10,11に配置されておらず、これらの開閉弁25,26,33,34は、前述した電気絶縁管23A,24A,30A,31Aによってジャケット10,11と電気的に絶縁された冷却水供給管23,24の箇所とエア供給管30,31の箇所に配置されているため、開閉弁25,26,33,34をジャケット10,11に通電される高周波電流から保護することができる。
図5は、上辺61Cと下辺61Dが水平に延びている被焼入物品61を、焼入れ後の形状を2点鎖線61’で示すように長さ方向中央部が上側へ湾曲突出した形状にさせて焼入れする場合の実施形態を示し、上下のジャケット10、11から焼入領域が設けられている上辺61C、下辺61Dまでの間隔は、被焼入物品61の全体長さについて一様のL5となっている。
図6には、図5の実施形態における制御装置40で設定される仕切り室A〜E,F〜Jのための開閉弁25,26の開きタイミングが示されている。図6におけるa〜e,f〜jは、前記実施形態と同じく、上下のジャケット10,11の仕切り室A〜E,F〜Jのための開閉弁25,26を表している。
上のジャケット10の仕切り室Cのための開閉弁25は、最も早い基準時T5で開き、次に、時間T6において、上のジャケット10の仕切り室B,Dのための開閉弁25が開き、この後、時間T7において、下のジャケット11の全部の仕切り室F〜Jのための開閉弁26が開き、時間T8において、上のジャケット10の仕切り室A,Eのための開閉弁25が開く。時間T7と時間8は、下のジャケット11の全部の仕切り室F〜Jから噴出した冷却水と、上のジャケット10の仕切り室A,Eから噴出した冷却水とが同時又は略同時に被焼入物品61の上辺61Cと下辺61Dの焼入領域に到達するように設定されている。時間T7と時間T8の差は、前述したように、上のジャケット10の仕切り室A,Eのための開閉弁25からこれらの仕切り室A,Eに下向きに流入して仕切り室A,Eから下向きに噴出する冷却水の速度は、下のジャケット11の仕切り室F〜Jのための開閉弁26からこれらの仕切り室F〜Jに上向きに流入して仕切り室F〜Jから上向きに噴出する冷却水の速度と比較して、重力の影響分だけ速くなるため、このような速度差を考慮したことに基づく。
この実施形態では、上のジャケット10の仕切り室Cから噴出した冷却水が最初に被焼入物品61の上辺61Cの焼入領域に到達し、次に、上のジャケット10の仕切り室B,Dから噴出した冷却水が被焼入物品61の上辺61Cの焼入領域に到達し、この後、下のジャケット11の全部の仕切り室F〜Jから噴出した冷却水と、上のジャケット10の仕切り室A,Eから噴出した冷却水とが同時又は略同時に被焼入物品61の上辺61Cと下辺61Dの焼入領域に到達する。
これによると、被焼入物品61の上辺61Cの焼入領域における被焼入物品61の長さ方向中央部とその周辺部が先に急冷されるため、この急冷により、被焼入物品61の下辺61Dにおける被焼入物品61の長さ方向中央部とその周辺部で圧縮降伏が生ずる。この圧縮降伏のため、焼入れ後の被焼入物品61の形状は、2点鎖線61’で示されているように、長さ方向中央部が上側へ湾曲突出した形状となる。
被焼入物品61の焼入れ後の形状を2点鎖線61’で示す形状とは異なる形状とする場合には、焼入作業前に、開閉弁25,26の開きタイミングがその焼入れ後の形状と対応するタイミングとなるように調整する作業を制御装置40で行う。これにより、被焼入物品61を、焼入れ後の形状を所望形状にして焼入れすることができる。
そして、この実施形態によると、焼入れ後の形状が異なる各種の被焼入物品について、急冷手段である上下のジャケット10,11を共通化、すなわち兼用化して焼入作業を行える。
図7の実施形態では、上のジャケット10の仕切り室A〜Eごとに、これらの仕切り室A〜Eに焼入作業後に残っている冷却水を排出するためのエアを供給するエア供給管30と、このエア32が仕切り室A〜Eから冷却水供給管23の開閉弁25の側へ侵入するのを阻止する逆止弁27とが設けられているが、下のジャケット11には、このようなエア供給管や逆止弁は設けられていない。
この実施形態では、焼入作業後に下のジャケット11の仕切り室F〜Jに冷却水が残っていることになるが、この残っている冷却水が仕切り室F〜Jから落下しても、この冷却水は次の被焼入物品の側へ達しないため、この被焼入物品の焼入れに悪影響は生じない。また、冷却水は下のジャケット11の全部の仕切り室F〜Jに満たされた状態で残り、冷却水の残留状態は全部の仕切り室F〜Jで同じになっているため、これらの仕切り室F〜Jのための開閉弁26の開きタイミングを制御装置40で設定する作業を、前述したそれぞれの実施形態と同じく、容易に行える。
そして、この実施形態によると、下のジャケット11には、仕切り室F〜Jごとにエア供給管と逆止弁を設ける必要がないため、それだけ装置全体の簡略化と製造コストの低減を図ることができる。
本発明は、四輪車両のドアの側面衝突用補強部材であるインパクトビームや、センターピラー用補強部材等のように、一部又は全体が焼入領域となって加熱される場合に、この焼入領域を冷却液で急冷して焼入れするために利用できる。
被焼入物品が焼入装置に複数個のクランプ装置で挟持されてセットされている状態を示す図であって、クランプ装置と、焼入れ用の冷却水の受水槽である水槽とを実線で示した図である。 図1のS2−S2線断面図であって、被焼入物品を加熱、急冷するための手段も示した図である。 焼入装置の加熱手段の電気回路及び急冷手段の冷却水供給回路と、制御装置によるこれらの加熱手段及び急冷手段の制御系統を示す図である。 図1〜図3の被焼入物品を、焼入れ後の形状を焼入れ前の形状と同じ又は略同じにして焼入れする場合に、被焼入物品の上下のジャケットのそれぞれの仕切り室に接続されている冷却水供給管の開閉弁を制御装置で開くタイミングを示すタイムチャートである。 上辺と下辺が水平となっている被焼入物品を、焼入れ後の形状を焼入れ前の形状と比較して長さ方向中央部が上側へ湾曲突出した形状にして焼入れする実施形態を示す図3と同様の図である。 図5の実施形態における図4と同様の図である。 上下のジャケットのうち、上のジャケットだけに、このジャケットの仕切り室に焼入作業に残っている冷却液を排出するためのエアを仕切り室に供給するエア供給管を設けた実施形態を示す図3と同様の図である。
符号の説明
1,61 被焼入物品
2 クランプ装置
10,11 誘導加熱のための誘導コイルでもあるジャケット
21,22 冷却液噴出孔である冷却水噴出孔
23,24 冷却液供給管である冷却水供給管
25,26 冷却水供給管の開閉弁
27,28 逆止弁
30,31 エア供給管
33,34 エア供給の開閉弁
A〜E,F〜J 仕切り室
40 制御装置
50 焼入装置

Claims (9)

  1. 少なくとも一部が焼入領域となっている被焼入物品の両側に配置された急冷手段を有し、それぞれの前記急冷手段に、前記焼入領域に向って冷却液を噴出する少なくとも1個の冷却液噴出部が設けられ、焼入温度まで加熱された前記焼入領域を前記冷却液噴出部から噴出する冷却液で急冷することによって焼入れする被焼入物品の急冷装置において、
    前記被焼入物品を挟持してこの被焼入物品を焼入装置にセットするためのクランプ装置と、それぞれの前記急冷手段を制御するための制御装置とを備えているとともに、それぞれの前記急冷手段には、前記被焼入物品の長さ方向に複数個の前記冷却液噴出部が設けられ、これらの冷却液噴出部から冷却液を噴出するタイミングが前記制御装置で個別に制御され
    それぞれの前記急冷手段は、冷却液供給管と、この冷却液供給管から前記冷却液が供給されるジャケットとを有して構成され、これらのジャケットの内部には、互いに仕切られ、かつ前記被焼入物品に向って開口している冷却液噴出孔が形成された複数個の仕切り室が設けられ、これらの仕切り室がそれぞれの前記冷却液噴出部となっているとともに、これらの仕切り室ごとに前記冷却液供給管が接続され、これらの冷却液供給管に前記制御装置で個別に制御される開閉弁が設けられていることを特徴とする被焼入物品の急冷装置。
  2. 請求項1に記載の被焼入物品の急冷装置において、それぞれの前記仕切り室ごとに、焼入作業後のこれらの仕切り室の内部に残留している前記冷却液を排出するためのエアを供給するエア供給管が設けられていることを特徴とする被焼入物品の急冷装置。
  3. 請求項2に記載の被焼入物品の急冷装置において、それぞれの前記冷却液供給管には、前記仕切り室と前記開閉弁との間において、この開閉弁の側から前記仕切り室の側への流体の流通だけを許容する逆止弁が設けられていることを特徴とする被焼入物品の急冷装置。
  4. 請求項1に記載の被焼入物品の急冷装置において、前記ジャケットは前記被焼入物品の上下に配置され、これらのジャケットのうち、前記被焼入物品の上側に配置されたジャケットのそれぞれの前記仕切り室ごとに、焼入作業後のこれらの仕切り室の内部に残留している前記冷却液を排出するためのエアを供給するエア供給管が設けられていることを特徴とする被焼入物品の急冷装置。
  5. 請求項4に記載の被焼入物品の急冷装置において、前記被焼入物品の上側に配置された前記ジャケットのそれぞれの前記仕切り室ごとに接続されている前記冷却液供給管には、前記仕切り室と前記開閉弁との間において、この開閉弁の側から前記仕切り室の側への流体の流通だけを許容する逆止弁が設けられていることを特徴とする被焼入物品の急冷装置。
  6. 被焼入物品の少なくとも一部に画定された焼入領域を焼入温度まで加熱するための加熱工程と、前記被焼入物品の両側に配置されたそれぞれの急冷手段に少なくとも1個設けられている冷却液噴出部から冷却液を噴出させることにより、これらの冷却液で前記焼入領域を急冷するための急冷工程とを含んでいる被焼入物品の急冷方法において、
    前記被焼入物品をクランプ装置で挟持してこの被焼入物品を焼入装置にセットするための工程と、
    それぞれの前記急冷手段に前記被焼入物品の長さ方向に複数個設けられている前記冷却液噴出部から冷却液を噴出させるタイミングをそれぞれの前記急冷手段を制御する制御装置で個別に設定することにより、それぞれの前記冷却液噴出部から噴出する前記冷却液が前記焼入領域に到達する時を調整するための調整工程と、
    を有し
    それぞれの前記急冷手段は、冷却液供給管と、この冷却液供給管から前記冷却液が供給されるジャケットとを有して構成され、これらのジャケットの内部には、互いに仕切られ、かつ前記被焼入物品に向って開口している冷却液噴出孔が形成された複数個の仕切り室が設けられ、これらの仕切り室がそれぞれの前記冷却液噴出部となっているとともに、これらの仕切り室ごとに前記冷却液供給管が接続され、これらの冷却液供給管に前記制御装置で個別に制御される開閉弁が設けられており、これらの開閉弁を前記制御装置で個別に制御することによって前記調整工程が実施されることを特徴とする被焼入物品の急冷方法。
  7. 請求項6に記載の被焼入物品の急冷方法において、前記調整工程における前記タイミングの設定により、それぞれの前記急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液を前記焼入領域に同時又は略同時に到達させることを特徴とする被焼入物品の急冷方法。
  8. 請求項6に記載の被焼入物品の急冷方法において、前記調整工程における前記タイミングの設定により、それぞれの前記急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液のうち、一方の急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液を他方の急冷手段の冷却液噴出部から噴出された冷却液よりも早く前記焼入領域に到達させることを特徴とする被焼入物品の急冷方法。
  9. 請求項8に記載の被焼入物品の急冷方法において、焼入れ後の前記被焼入物品の形状を前記一方の急冷手段の側に湾曲突出した形状とすることを特徴とする被焼入物品の急冷方法。
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