JP4844633B2 - イオントラップ飛行時間型質量分析装置 - Google Patents

イオントラップ飛行時間型質量分析装置 Download PDF

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本発明は、電場によってイオンを閉じ込めるためのイオントラップと飛行時間の相違を利用してイオンを質量に応じて分離して検出する飛行時間型質量分析装置とを組み合わせたイオントラップ飛行時間型質量分析装置に関する。
飛行時間型質量分析装置(以下、TOFMS(=Time of Flight Mass Spectrometer)と呼ぶ)では、通常、加速したイオンを電場及び磁場を有さない飛行空間内に導入し、イオン検出器に到達するまでの飛行時間に応じて各種イオンを質量(厳密には質量電荷比m/z)毎に分離する構成を有する。従来より、こうしたTOFMSのイオン源としてイオントラップを利用したイオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)が知られている。
典型的なイオントラップ2はいわゆる3次元四重極型であり、図1中に示すように、略円環状のリング電極21と、リング電極21を挟んで両側に設けられた一対のエンドキャップ電極22、23とにより構成される。通常、リング電極21に高周波電圧を印加してイオントラップ2内部のイオン捕捉空間に四重極電場を形成し、該電場によってイオンを捕捉して蓄積する。イオンは、イオントラップ2の外側で生成された後にイオントラップ2内部に導入される場合と、イオントラップ2の内部で生成される場合とがある。なお、イオントラップ2の理論的な説明は、非特許文献1などに詳しく記載されている。
IT−TOFMSにおいて質量分析を行う際には、上記のような各種の処理によりイオントラップ2内部に分析対象となるイオンが用意された時点で、リング電極21への高周波電圧の印加を停止する。それとほぼ同時又はやや遅れて、一対のエンドキャップ電極22、23間にイオン排出用の電圧を印加し、イオントラップ2内部にイオン排出用電場を形成する。この電場によりイオンは加速され、出射口25を通ってイオントラップ2から飛び出し、その外側に設けられている飛行時間型質量分析部3へと導入されて質量分析が行われる。
イオントラップ2内にイオンが捕捉されている状態では、そのイオンは高周波電場によって加速と減速とを繰り返しているため、イオントラップ2からイオンを出射させる際には、質量分解能及び質量精度の向上のためにイオンの速度拡がりを小さくするべく高周波電圧の振幅を漸減させるのが一般的である。しかしながら、このとき高周波電場による捕捉作用は弱まるために空間的にはイオンが拡がってしまう。そのため、出射口25を通過する際のイオンの損失が大きくなり、飛行時間型質量分析部3での検出感度が低下することになる。
上述のようなイオントラップ2内でのイオンの加速及び減速は捕捉用高周波電場の変化と同期しているので、イオンの運動エネルギーが最も小さくなるような位相で以て捕捉用高周波電場を止めることが可能であれば、検出感度を低下させることなく質量分解能や質量精度の向上を図ることができる。しかしながら、従来の一般的なアナログ方式のイオントラップでは、捕捉用高周波電圧をリング電極21に印加するためにLC共振器を用いており、このような回路では任意の位相で電圧の印加を急に停止することは困難である。そこで、特許文献1に記載のイオントラップ装置では、或る特定の位相で捕捉用高周波電圧の印加を停止するような制御を行うと、その直前の振幅に依らず或る一定時間後にリング電極の電位が所定値になるという特徴的な現象を利用して、イオンの空間的な拡がりが比較的小さい状態でイオンをイオントラップ2から排出するようにしている。
しかしながら、電圧発生回路に共振器を利用しているため、捕捉用高周波電圧の印加を停止する制御を行っても、実際にはリング電極には暫時電圧が掛かることになる。そのため、捕捉用高周波電圧の印加を停止するような制御を行った時点以降、実際にイオントラップからイオンを排出するまでの時間の間にイオントラップ内に残る電場の影響により、イオン排出時点でのイオンの速度拡がりが大きくなるおそれがある。それによって、質量分解能や質量精度が低下するおそれがある。
ところで、上述のような共振器を利用したアナログ方式のイオントラップに替わって、最近、矩形波状の高周波電圧をリング電極に印加するデジタル方式のイオントラップが開発されている(例えば特許文献2、非特許文献2など参照)。デジタル方式イオントラップでは、矩形波状の高周波電圧の振幅を一定に保ったまま周波数を変化させることで蓄積するイオンの質量選択が可能である。こうしたデジタル方式イオントラップの電圧発生回路では、例えば特許文献2に記載のように直流電源で生成される直流電圧をスイッチで切り替えて矩形波状電圧を発生する構成が採られており、原理的に任意のタイミングで電圧の印加を停止することが可能である。
特開2004−214077号公報 特表2003−512702号公報 アール・イー・マーチ(R. E. March)、 アール・ジェイ・フヘス( R. J. Hughes)著、「クァドルポール・ストレージ・マス・スペクトロメトリー(Quadrupole Storage Mass Spectrometry)」、 ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1989年、pp.31-110 古橋ほか3名、「デジタルイオントラップ質量分析装置の開発」、島津評論、島津評論編集部、2006年3月31日、第62巻、第3・4号、pp.141-151
上記文献に記載のデジタル方式イオントラップを用いた質量分析装置では、捕捉しているイオンのうちの特定の質量を持つイオンを選択的に共鳴させてイオントラップから排出して質量分析することは行われている。しかしながら、デジタル方式イオントラップをTOFMSのイオン源としたものではなく、イオントラップに蓄積したイオンを一斉に排出してTOFMSに導入する場合の適切な電圧の制御については従来知られていなかった。
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、従来よりも高い質量分解能及び高い質量精度での質量分析を行ったり、従来よりも高い感度での質量分析を行ったりすることができるイオントラップ飛行時間型質量分析装置を提供することにある。
また本発明の別の目的は、分析目的等に応じて、質量分解能及び質量精度の高さを重視した質量分析を行ったり、検出感度の高さを重視した質量分析を行ったりすることができるイオントラップ飛行時間型質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、1個のリング電極と、該リング電極を挟んで配置された一対のエンドキャップ電極とから成り、それら電極で囲まれる空間に形成される捕捉用電場によりイオンを捕捉する3次元四重極型のイオントラップと、一方のエンドキャップ電極に設けられた出射口を通してリング電極の中心軸の延伸方向に前記イオントラップから排出されたイオンを飛行させることで質量分離し検出する飛行時間型質量分析部と、を具備するイオントラップ飛行時間型質量分析装置において、
a)捕捉用電場を形成するために前記リング電極に矩形波状の高周波電圧を印加する主電圧発生手段と、
b)前記イオントラップからイオンを排出して前記飛行時間型質量分析部に導入するために、前記エンドキャップ電極の少なくとも一方に電圧を印加する補助電圧発生手段と、
c)捕捉用電場により前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で該イオンを前記出射口から一斉に排出するために、前記矩形波状の高周波電圧が所定の位相である時点で該電圧を一定電圧値に切り替えるべく前記主電圧発生手段を制御し、その切替えと同時又はその切替え後にイオン排出用の電圧を印加するべく前記補助電圧発生手段を制御する制御手段と、
を備え、前記矩形波状の高周波電圧を一定電圧値に切り替える前記所定の位相は任意に又は複数段階に選択可能であることを特徴としている。
例えば主電圧発生手段は、高い周波数の矩形波信号を分周して得た矩形波信号を制御信号として複数の直流電圧を切り替えることで、目的とする矩形波状の高周波電圧を生成して出力する構成とすることができる。この場合、分周比を切り替えることで、或いは基準となる矩形波信号の周波数を例えば電圧制御型発振器などにより変更することで、高周波電圧の周波数を変更することができる。また、分周回路のリセット(又はセット)のタイミングを変更したり分周回路において分周カウンタの出力を論理演算する回路の構成を切り替えたりすることで、矩形波状の高周波電圧を一定電圧値に切り替える位相を変更することができる。
イオントラップに捕捉されているイオンの挙動は矩形波状の高周波電圧の位相に同期している。即ち、捕捉用電場によりイオンが受ける運動エネルギーは高周波電圧の位相に同期して変動し、また捕捉空間内におけるイオンの位置(例えば中心点からの距離)も高周波電圧の位相に同期して変動している。飛行時間型質量分析部において質量分解能や質量精度を高めるには、同一イオン種に対する飛行時間のばらつきが少ないことが望ましいから、上記所定の位相として、イオントラップ中のイオンの速度拡がりが飛行時間型質量分析部における飛行時間の拡がりに及ぼす影響が最小となるような位相を設定可能であるようにするとよい。
また、飛行時間型質量分析部において検出感度を高めるには、より多くの量のイオンが飛行時間型質量分析部に導入されることが望ましく、そのためにはイオントラップからイオンが排出される際の損失を抑えることが必要となる。そこで、上記所定の位相として、イオントラップ中のイオンを排出する際のイオンの空間的な拡がりが最小となるような位相を設定可能であるようにするとよい。
本発明で用いられる3次元四重極型のイオントラップにおいて上述のような条件を満たすのは、矩形波状の高周波電圧のデューティ比が50%であるときに、その位相は1.5πである。但し、ここで位相は厳密に1.5πでなくてもよく、その近傍であればよい。
一方、上記のような位相条件では、イオントラップからのイオンの排出方向におけるイオンの空間的な拡がりは大きくなり、加速条件のばらつきは大きくなる。そのため、こうしたばらつきの影響を軽減できるように、リフレクトロン型の飛行時間型質量分析装置を用いる必要がある。
こうした構成がとれない場合、例えばリニア型の飛行時間型質量分析装置を用いる場合には、上記所定の位相として、イオントラップ中のイオンの空間的な拡がりに起因して、飛行時間型質量分析部へのイオンの導入のためにイオンが加速される際に発生する速度の拡がりが最小となるような位相を設定可能であるようにするとよい。本発明で用いられる3次元四重極型のイオントラップでは、矩形波状の高周波電圧のデューティ比が50%であるときに、そうした条件を満たす位相は0.5πである。
上述のように飛行時間型質量分析部がリニア型であるときとリフレクトロン型であるときとではイオン排出の際の好適な位相が相違するから、リニア型とリフレクトロン型との動作モードの切り替えが可能である場合には、その切り替えに対応して前記所定の位相が切り替え可能である構成とするとよい。この切替えはオペレータが手動で行うようにしてもよいし、リニア/リフレクトロンの動作モードの切替えに連動して自動的にイオン排出時の位相が切り替わるようにしてもよい。
好ましい態様として、矩形波状の高周波電圧のデューティ比は50%であって、リフレクトロン型の動作モードにおいては上記所定の位相は1.5πであり、リニア型の動作モードにおいては上記所定の位相は0.5πである構成とするとよい。
本発明に係るイオントラップ飛行時間型質量分析装置によれば、分析目的や分析対象の試料の種類、或いは分析条件などに応じて、高い検出感度を維持しながら高い質量分解能及び高い質量精度での質量分析を行ったり、或いは、特に質量分解能及び質量精度を重視してこれらを向上させた質量分析を行ったりすることができる。また、飛行時間型質量分析部としてリニア型とリフレクトロン型の動作モードが切替え可能である構成において、いずれの動作モードでも高い質量分解能及び質量精度を達成することができる。
本発明の一実施形態によるイオントラップ飛行時間型質量分析装置の全体構成図。 本実施形態のイオントラップ飛行時間型質量分析装置における主電圧発生部の概略回路構成を示すブロック図。 本実施形態のイオントラップ飛行時間型質量分析装置においてイオントラップからイオンを排出する際のタイミングの一例を示す図。 リング電圧切替え時の位相とイオンの速度分布との関係のシミュレーション結果を示す図(a)、及びリング電圧切替え時の位相とイオンの空間分布との関係のシミュレーション結果を示す図(b)。 アンジオテンシンIIの1価イオンの質量近傍の質量スペクトルの実測結果であり、(a)は位相0πの場合の質量スペクトル、(b)は位相1.5πの場合の質量スペクトル。 アンジオテンシンIIの1価イオン及び2価イオンのピーク強度の実測結果を示す図。
符号の説明
1…イオン化部
2…イオントラップ
21…リング電極
22…入口側エンドキャップ電極
23…出口側エンドキャップ電極
24…入射口
25…出射口
3…飛行時間型質量分析部
31…飛行空間
32…リフレクトロン
33…第1検出器
34…第2検出器
5…主電圧発生部
50…クロック生成部
51…位相制御回路
52、53、54…計数回路
55、56、57…電圧源
58、59、60…スイッチ
6…補助電圧発生部
7…制御部
8…操作部
以下、本発明の一実施形態であるイオントラップ飛行時間型質量分析装置(IT−TOFMS)について、構成と動作とを詳細に説明する。図1は本実施形態のIT−TOFMSの全体構成図である。
イオントラップ2は1個のリング電極21と2個一対のエンドキャップ電極22、23とを含み、リング電極21には主電圧発生部5が接続され、エンドキャップ電極22、23には補助電圧発生部6が接続されている。入口側エンドキャップ電極22のほぼ中央に穿孔された入射口24の外側にはイオン化部1が配設されており、イオン化部1において生成されたイオンは入射口24を通過してイオントラップ2内に導入される。一方、出口側エンドキャップ電極23にあって入射口24とほぼ一直線上に設けられた出射口25の外側には飛行時間型質量分析部3が配設されている。
飛行時間型質量分析部3は、イオンを飛行させる飛行空間31と、イオンを電場によって折り返すリフレクトロン32と、飛行空間31内を直進して来たイオンを検出するための第1検出器33と、リフレクトロン32で折り返されて飛行して来たイオンを検出するための第2検出器34とを含む。即ち、この飛行時間型質量分析部3はリニア動作モードとリフレクトロン動作モードとの切替えが可能な構成であり、試料の種類や分析目的に応じていずれかの動作モードを選択して分析が行えるようになっている。
主電圧発生部5及び補助電圧発生部6は制御部7による制御の下に、それぞれ所定の電圧を発生する。ここではイオントラップ2はいわゆるデジタル方式イオントラップ(DIT)であり、後述するように、主電圧発生部5は、所定の電圧値の直流電圧をスイッチングすることで矩形波状の高周波電圧を発生する回路を含む。図2は主電圧発生部5の概略回路構成を示すブロック図、図3はイオントラップ2からイオンを排出する際のタイミングの一例を示す図である。
図2において、クロック生成部50は所定周波数の基準クロック信号を生成する回路である。第1、第2及び第3なる3つの計数回路52、53、54はそれぞれ、基準クロック信号をカウントするカウンタとそのカウンタの出力に対して論理演算を行うゲート回路とを含み、位相制御回路51からの設定に基づいてカウンタがリセットされるタイミングやカウント値などが変更され得るように構成されている。第1電圧源55により生成される直流電圧V1をオン・オフする第1スイッチ58は第1計数回路52の出力により駆動される。第2電圧源56により生成される直流電圧V2をオン・オフする第2スイッチ59は第2計数回路53の出力により駆動される。さらに第3電圧源57により生成される直流電圧V3をオン・オフする第3スイッチ60は第3計数回路54の出力により駆動される。
第1乃至第3スイッチ58、59、60はいずれか1つのみがオンされ、オン状態であるスイッチに対応した電圧が出力される。したがって、第1乃至第3計数回路52、53、54の出力の矩形波信号のパターンの組み合わせが主電圧発生部5から出力される矩形状の高周波電圧の変化のパターンを決めることになる。そして、その矩形状の高周波電圧の周波数や後述するようにその高周波電圧の印加を停止するタイミング(位相)は、操作部8での操作に応じて制御部7から指示を受けた位相制御回路51により設定されることになる。なお、この実施形態の構成では、リング電極21に印加される高周波電圧はハイレベルが電圧V1、ローレベルが電圧V2の矩形波状であり、この高周波電圧の印加停止時の電圧はV3である。
イオントラップ2内にイオンを捕捉する際には、図3(a)、(b)、(c)において(i)期間で示すように第1乃至第3計数回路52、53、54の出力の矩形波信号のパターンを設定する。これにより、リング電極21には図3(d)に示すような矩形状の高周波電圧が印加される。このとき、エンドキャップ電極22、23はともに接地状態としておくか、或いはともに適宜の同一直流電圧を印加しておく。上記のように印加される高周波電圧によってイオントラップ2内には高周波電場が形成され、イオントラップ2内のイオンは吸引と反発との力を交互に受けることで中央付近に捕捉される。
こうして捕捉したイオンをイオントラップ2内から一斉に排出して飛行時間型質量分析部3に導入する際には、イオンに対するリング電極21による吸引・反発の力を解除し、それとほぼ同時又はやや遅れて、入口側エンドキャップ電極22と出口側エンドキャップ電極23との間にイオンに運動エネルギーを付与して出射口25を通し外部に引き出すような電圧を印加する必要がある。そこで、この実施形態のIT−TOFMSでは、位相制御回路51で設定された位相でスイッチ58、59、60により出力電圧をV3に切り替え、それとほぼ同時に補助電圧発生部6からエンドキャップ電極22、23に所定の電圧を印加するようにしている。
ここでは、オペレータが操作部8より指示を与えることで、出力電圧をV1/V2の矩形波電圧からV3の一定電圧に切り替える位相を0.5πと1.5πのいずれかに選択的に設定できるようにしている。この2つの位相を選択する意義について説明する。図4は計算機によるシミュレーション結果を示す図であって、(a)はリング電圧切替え時の位相とイオンの速度分布との関係、(b)はリング電圧切替え時の位相とイオンの空間分布との関係を示す図である。
図4(a)では、位相0π、0.5π、π、1.5πでのz軸方向(イオントラップ2へのイオン導入方向及びイオントラップ2からのイオン排出方向)のイオンの位置分布を横軸に、そのときにイオンが持つ速度分布を縦軸に示している。この図により、位相1.5πにおいてイオンのz軸方向の速度拡がりが最も小さくなることが分かる。一方、図4(b)ではz軸に互いに直交するx軸方向を横軸に、y軸方向を縦軸に示している。この図より、位相1.5πにおいてx軸方向、y軸方向のいずれにもイオンの空間的な拡がりが最小になることが分かる。
したがって、リング電極21へ印加される高周波電圧の位相が1.5πであるときにその電圧をV3に切り替えてイオンをイオントラップ2から排出すると、イオンの分析前の初速度が飛行時間に及ぼす影響が最も小さくなる。それによって、同一質量のイオンに対する飛行時間のばらつきを抑えることができ、質量分解能及び質量精度を高めることができる。また、イオン排出時におけるx軸方向、y軸方向のイオンの空間的な拡がりも小さいので、出射口25でのイオンの通過効率が良好になり、飛行時間型質量分析部3に導入するイオン量を十分に確保して検出感度を向上させることができる。
但し、図4(a)から分かるように位相1.5πではz軸方向にイオンの拡がりが大きい。これはイオンが排出される際の出発位置のばらつきが大きいことを意味するとともに、z軸方向の位置によって加速電場の電位が相違することにより速度拡がりが生じるおそれがあることを意味する。しかしながら、一般に、飛行時間型質量分析部3がリフレクトロン動作モードである場合には、上記のようなばらつき要因はイオンを折り返す際に補正され、その影響が軽減されることが知られている。そのため、リフレクトロン動作モードでは、イオン排出時の位相を1.5πに定めることが、質量分解能及び質量精度の向上、検出感度の向上の両方の観点で好ましいと言える。
これに対し飛行時間型質量分析部3がリニア動作モードである場合には、リフレクトロン動作モードとは異なり、上記のような補正作用は期待できない。イオン排出時の位相を0.5πとするとイオン排出時のz軸方向の拡がりが最小となり、このとき速度のばらつきも位相が1.5πのときほどではないものの位相が0π又はπのときに比べれば十分に小さくなる。そこで、リニア動作モードでは、イオン排出時の位相を0.5πに定めることが、質量分解能及び質量精度の向上の観点で好ましいと言える。但し、このときにはx軸方向、y軸方向の空間的な拡がりは大きいので、出射口25でのイオンの通過効率は必ずしも高くなく検出感度の点では不利である。
上述のように、飛行時間型質量分析部3をリニア動作モード又はリフレクトロン動作モードのいずれで動作させるのかによって、オペレータが操作部8より適宜の位相を指示するようにすれば、各動作モードに適したタイミングでイオントラップ2からイオンが排出されて質量分析に供されることになる。なお、こうした指示をオペレータが行うことなく、リニア/リフレクトロン動作モードの選択に応じて自動的に、つまりはリニア動作モードでは位相0.5π、リフレクトロン動作モードでは位相1.5πが設定されるようにしてもよい。
上述したようにリフレクロトン動作モードにおいてイオン排出時の位相を1.5πとすることが適切であることを、図1に示した実施形態のIT−TOFMSを用いた実験的に確認した。この実験では、イオン化部1におけるイオン化法としてはエレクトロスプレイイオン化法(ESI)を用い、飛行時間型質量分析部3はリフレクトロン動作モードで動作させた。また、分析対象の試料としては、アンジオテンシンII(AngiotensinII:アミノ酸配列=[DRVYIHPF]、m/z:1046.5)を用いた。
図5はアンジオテンシンIIの1価イオンの質量近傍の質量スペクトルの実測結果であり、(a)は位相0πの場合の質量スペクトル、(b)は位相1.5πの場合の質量スペクトルである。いずれもアンジオテンシンIIの1価イオンのピークが出現しているが、そのピークの半値幅FWHMは大きく異なり、(a)では約0.17Da、(b)では約0.096Daである。なお、ピークトップの質量が厳密に1価イオンのm/zとなっていないので校正上の問題であり、ここでは無視できる。
質量分析における質量分解能は、目的イオンの質量Mとそのピークの半値幅Δmとから、M/Δmで求まる。そこで、上記半値幅からそれぞれの質量分解能を計算すると、位相0πでは約6000、位相1.5πでは約10000となる。したがって、イオン排出時の位相を1.5πとした場合には位相を0πとした場合に比べて、1.8倍程度の高い質量分解能を達成できることが分かる。
図6はアンジオテンシンIIの1価イオン及び2価イオンのピーク強度の実測結果を示す図である。いずれのイオンもイオン排出時の位相を1.5πとした場合に位相を0πとした場合に比べて、数倍程度の高い信号強度が得られることが分かる。つまり、m/zの大小に拘わらず、位相1.5πでは高い検出感度を達成できると言える。
以上の結果より、リフレクトロン動作モードにおいては、イオントラップからのイオン排出時の電圧切替え時の位相を1.5πに設定すると、高い質量分解能で且つ高感度の検出が行えることが実験的に確認できた。これは上述したシミュレーション結果による考察と一致している。
なお、上記実施形態は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜に、変形、修正、追加を行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである

Claims (8)

  1. 1個のリング電極と、該リング電極を挟んで配置された一対のエンドキャップ電極とから成り、それら電極で囲まれる空間に形成される捕捉用電場によりイオンを捕捉する3次元四重極型のイオントラップと、一方のエンドキャップ電極に設けられた出射口を通してリング電極の中心軸の延伸方向に前記イオントラップから排出されたイオンを飛行させることで質量分離し検出する飛行時間型質量分析部と、を具備するイオントラップ飛行時間型質量分析装置において、
    a)捕捉用電場を形成するために前記リング電極に矩形波状の高周波電圧を印加する主電圧発生手段と、
    b)前記イオントラップからイオンを排出して前記飛行時間型質量分析部に導入するために、前記エンドキャップ電極の少なくとも一方に電圧を印加する補助電圧発生手段と、
    c)捕捉用電場により前記イオントラップ内にイオンを捕捉した状態で該イオンを前記出射口から一斉に排出するために、前記矩形波状の高周波電圧が所定の位相である時点で該電圧を一定電圧値に切り替えるべく前記主電圧発生手段を制御し、その切替えと同時又はその切替え後にイオン排出用の電圧を印加するべく前記補助電圧発生手段を制御する制御手段と、
    を備え、前記矩形波状の高周波電圧を一定電圧値に切り替える前記所定の位相は任意に又は複数段階に選択可能であることを特徴とするイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
  2. 前記所定の位相として、前記イオントラップ中のイオンの速度拡がりが前記飛行時間型質量分析部における飛行時間の拡がりに及ぼす影響が最小となるような位相を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載のイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
  3. 前記所定の位相として、前記イオントラップ中のイオンを排出する際のイオンの空間的な拡がりが最小となるような位相を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載のイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
  4. 前記矩形波状の高周波電圧のデューティ比は50%であって、前記所定の位相は1.5πであることを特徴とする請求項2又は3に記載のイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
  5. 前記所定の位相として、前記イオントラップ中のイオンの空間的な拡がりに起因して、前記飛行時間型質量分析部へのイオンの導入のためにイオンが加速される際に発生する速度の拡がりが最小となるような位相を設定可能であることを特徴とする請求項1に記載のイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
  6. 前記矩形波状の高周波電圧のデューティ比は50%であって、前記所定の位相は0.5πであることを特徴とする請求項に記載のイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
  7. 前記飛行時間型質量分析部はリニア型とリフレクトロン型との動作モードの切り替えが可能であって、その切り替えに対応して前記所定の位相が切り替え可能であることを特徴とする請求項に記載のイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
  8. 前記矩形波状の高周波電圧のデューティ比は50%であって、リフレクトロン型の動作モードにおいて前記所定の位相は1.5πであり、リニア型の動作モードにおいて前記所定の位相は0.5πであることを特徴とする請求項に記載のイオントラップ飛行時間型質量分析装置。
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