しかしながら、磁気カードリーダ100内で1枚の磁気カードに対する情報の記録又は再生が行われている際に、例えば故意に(無理やり)押し込まれた磁気カードが侵入するのを防ぐのは困難である。
すなわち、周囲がゴムローラで形成された防塵ローラ104は、スプリングによって平面部105に付勢されているのみであって、例えばフロントカード挿入口101から無理やり磁気カードが押し込まれた場合、防塵ローラ104は磁気カードの分だけ上方に浮き上がり、メインカード挿入口103への磁気カードの侵入を許してしまうことになる。従って、このような危険性を孕んだ状態では、磁気カードリーダ100のセキュリティ性に欠ける。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気カードやICカードが押し込まれた場合であっても、これらのカードが搬送路に侵入するのを防ぐことができ、ひいてはセキュリティ性を向上させることが可能な媒体処理装置を提供することにある。
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
(1) カード状記録媒体を挿入する挿入口と、カード状記録媒体が搬送される搬送路と、前記搬送路を塞ぐ位置とカード状記録媒体の挿入を許容する位置とを移動可能なローラと、前記搬送路を塞ぐ位置まで前記ローラを付勢する付勢部材と、カード状記録媒体の挿入を許容する位置への前記ローラの移動を阻止する阻止部材と、を有する媒体処理装置であって、前記搬送路のうち前記ローラが付勢される側の面に、前記ローラの一部を収容する凹部が形成され、前記ローラには、直径の大きい大径部と直径の小さい小径部とが形成されており、前記凹部には、前記小径部と対向する位置にリブが形成されていることを特徴とする媒体処理装置。
本発明によれば、搬送路を塞ぐ位置とカード状記録媒体の挿入を許容する位置とを移動可能なローラと、このローラを、搬送路を塞ぐ位置まで付勢する付勢部材と、カード状記録媒体の挿入を許容する位置へのローラの移動を阻止する阻止部材と、を有する媒体処理装置で、搬送路のうちローラが付勢される側の面に、ローラの一部を収容する凹部が形成されていることとしたので、カード状記録媒体が不必要に搬送路に侵入するのをより確実に防ぐことができる。
すなわち、従来の媒体処理装置(例えば図8に示す磁気カードリーダ100)では、防塵ローラ104と平面部105の間にカード状記録媒体が無理やり押し込まれた場合、付勢されただけの防塵ローラ104は、カード状記録媒体の分だけ上方に浮き上がり、カード状記録媒体が搬送路に侵入するのを許す危険性があった。しかし、本発明によれば、たとえカード状記録媒体が押し込まれた場合であっても、阻止部材によってローラがカード状記録媒体の挿入を許容する位置へ移動するのを阻止することができるので、カード状記録媒体が搬送路に侵入するのを防ぐことができる。
特に、本発明に係る媒体処理装置は、単に、阻止部材を用いて、カード状記録媒体の挿入を許容する位置へのローラの移動を阻止するものではない。より詳細に説明すると、従来の磁気カードリーダ100においても、阻止部材を設けてローラの移動を阻止することは考えられる。しかし、これでは挿入されたカード状記録媒体は、防塵ローラ104の下方において周面と凡そ平行に当接するので、無理やり押し込まれると搬送路に入ってしまう虞があった。この点、本発明によれば、搬送路のうちローラが付勢される側の面に、ローラの一部が埋め込まれた状態(すなわちローラの一部が凹部に収容された状態)でローラの移動が阻止されているので、挿入されたカード状記録媒体は、ローラの周面と凡そ垂直に当接することになる。従って、カード状記録媒体が搬送路に侵入するのをより確実に防ぐことができ、ひいては媒体処理装置のセキュリティ性を向上させることができる。
また、本発明には、搬送路を塞ぐ位置までローラを付勢する付勢部材が設けられているので、カード状記録媒体が未だ搬送路に挿入されていない待機状態のとき、塵埃や雨水の浸入を防ぐ防塵機能(防塵シャッタ機能)を発揮することができる。
なお、本発明において、阻止部材が機能するタイミングの如何は問わない。例えば、実際にカード状記録媒体が搬送路に挿入されているときに阻止部材が機能する場合には、2枚目のカード状記録媒体が搬送路に挿入されるのを防ぐことができるし、カード状記録媒体が未だ搬送路に挿入されていないときに阻止部材が機能する場合には、例えば取引時間外にカード状記録媒体が不法に(悪意により)搬送路に挿入されるのを防ぐことができる。
また、本発明によれば、上述したローラには小径部と大半部とが形成されているとともに、上述した凹部には、この小径部と対向する位置にリブが形成されていることとしたので、カード状記録媒体が搬送路に侵入するのをより確実に防ぐことができる。
すなわち、例えばカード状記録媒体が0.2mm程度のPET(ポリエチレンテレフタラート)カードである場合には、たとえ阻止部材と凹部によってローラの移動を阻止していたとしても、PETカードがローラに当接した後、折れ曲がってローラと凹部の間をすり抜け、搬送路に侵入する危険性がある。しかし、本発明に係る媒体処理装置によれば、ローラに形成された大径部と、凹部に形成されたリブとが存在するので、PETカードがローラと凹部の間をすり抜けるためには、PETカードが挿入方向と垂直な方向に波打った形状になっていなければならないが、PETカードをこのような形状にするのは実際問題として困難である。従って、PETカードがローラと凹部の間をすり抜けるのを防止することができ、ひいてはカード状記録媒体が搬送路に侵入するのをより確実に防ぐことができる。
加えて、本発明は、阻止部材が有するローラの移動阻止機能の信頼性を高めるという特有の効果も奏している。より詳細に説明すると、従来の防塵ローラ104のように大径部と小径部の区別がないローラでは、媒体処理装置の長年の使用によりローラの表面に粘着性ゴミが付着すると、その粘着性ゴミの分だけローラの外径が大きくなり、ローラの移動阻止機構との隙間がなくなってしまい、結果として、ローラの移動阻止機能が上手く機能しない場合がある。しかし、本発明のように、大径部と小径部の区別があるローラによれば、カード状記録媒体が摺動するのはローラの大径部であって、ローラの小径部にはカード状記録媒体は摺動しない。従って、例えば阻止部材を進退させる位置をこの小径部近傍にすれば、大径部に付着した粘着性ゴミの存在によって、阻止部材が進入できないこともなく(ローラの移動阻止機能が失われることもなく)、ひいてはカード状記録媒体の挿入を許容する位置へのローラの移動をより確実に阻止することができる。その結果、阻止部材が有するローラの移動阻止機能の信頼性を高めることができる。
(2) 前記阻止部材は、カード状記録媒体が前記媒体処理装置内に存在する場合に、前記ローラの移動を阻止することを特徴とする媒体処理装置。
本発明によれば、カード状記録媒体が媒体処理装置内に存在する場合に、上述した阻止部材によってローラの移動が阻止されるので、2枚目のカード状記録媒体が搬送路に挿入されるのを防ぐことができる。
(3) 前記阻止部材は、前記ローラを挟んで前記凹部と対向する位置に対して進退可能に設けられ、前記凹部と対向する位置にあるとき、前記ローラの移動を阻止することを特徴とする媒体処理装置。
本発明によれば、ローラを挟んで凹部と対向する位置に対して阻止部材が進退可能に設けられ、この阻止部材が凹部と対向する位置にあるとき、ローラの移動が阻止されることとしたので、簡易な機構によって、カード状記録媒体の挿入を許容する位置へローラが移動するのをより確実に防ぐことができる。
(4) 前記ローラは、前記リブが前記小径部に当接している第1の位置と、カード状記録媒体の挿入を許容するように前記小径部と前記リブとが離間している第2の位置と、前記小径部が前記阻止部材に当接している第3の位置と、を移動可能であることを特徴とする媒体処理装置。
本発明によれば、リブが小径部に当接している第1の位置と、カード状記録媒体の挿入を許容するように小径部とリブとが離間している第2の位置と、小径部が阻止部材に当接している第3の位置と、をローラが移動可能であることとしたので、ローラが第1の位置にあるときには、カード状記録媒体が未だ搬送路に挿入されていない待機状態において防塵対策を講じることができ、ローラが第2の位置にあるときは、カード状記録媒体の挿入を許容することができる(カード状記録媒体の挿入によってローラは押し上げられる又は押し下げられる)。そして、カード状記録媒体が搬送路に挿入されると、付勢部材によってローラは第1の位置に戻り、その後阻止部材が動作する。この状態で2枚目のカード状記録媒体が挿入されようとすると、ローラは第3の位置に移動するが、阻止部材によりそれ以上移動することがないため、2枚目のカード状記録媒体の挿入が阻止されることになる。すなわち、ローラが第3の位置にあるときは、1枚目のカード状記録媒体が媒体処理装置内に挿入されている状態で、2枚目のカード状記録媒体が搬送路に挿入されるのを防いでいる。このように、第1の位置,第2の位置及び第3の位置を移動するローラの一連の動作によって、カード状記録媒体の不正侵入を防ぎつつ、スムーズかつ無駄のない媒体取込及び媒体処理を実現することができる。
なお、本発明では、カード状記録媒体が未だ搬送路に挿入されていない待機状態(上述した第1の位置の状態)において、ローラの小径部と凹部に形成されたリブとが当接するように構成しているので、ローラがカード挿入口を塞ぐ位置(第1の位置)が、リブの存在によって影響を受けることはなく(リブがあることによって第1の位置が上下することはなく)、ローラと凹部との当接状態を一定に保つこと(第1の位置を一定に保つこと)ができる。
(5) 前記リブは、前記大径部と対向する位置の近傍に形成されていることを特徴とする媒体処理装置。
本発明によれば、上述したリブは、大径部と対向する位置の近傍に形成されていることとしたので、カード状記録媒体がローラと凹部の間をすり抜けるためには、カード状記録媒体の挿入方向と垂直な方向に、相当大きな勾配の波打った形状(急峻な波形状)になっていなければならず、これは実際問題として非常に困難である。従って、たとえカード状記録媒体がカード挿入口から無理やり挿入されたとしても、それがローラと凹部の間をすり抜けるのは難しく、結果的に搬送路に侵入するのを防ぐことができる。また、本発明によれば、少ない数のリブでカード状記録媒体の不正侵入を効果的に防ぐことができる。
(6) 前記ローラが前記第1の位置にあるとき、前記凹部と前記大径部は離間していることを特徴とする媒体処理装置。
本発明によれば、ローラが第1の位置にあるとき、凹部と大径部は離間していることとしたので(好ましくは、0.3mm以上、以上、装置寿命及び使用環境により適宜決定)、大径部に少々のゴミがついた場合であっても、ローラの回転機能が失われるのを防ぐことができ、また、ローラの第1の位置を一定とすることができる。
以上説明したように、本発明によれば、不必要にカード状記録媒体が搬送路に侵入するのを防ぐことができ、ひいては媒体処理装置のセキュリティ性を向上させることができる。特に、大径部と小径部とに区別されたローラによって、その大径部にゴミが付着した場合であっても、その小径部に阻止部材を適切に進入させることができ、ひいては阻止部材が有するローラの移動阻止機能の信頼性を高めることができる。なお、塵埃や雨水の浸入を防ぎ、防塵機能を発揮することもできる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
[機械構成]
図1は、本発明の実施の形態に係るカードリーダ1の機械構成を示す図である。ただし、図1は、カードリーダ1をある程度分解して、裏から見たときの機械構成を示している。
図1において、カードリーダ1は、カードが挿入されるカード挿入口11と、カードが搬送される搬送路(図1では図示しないが、カード挿入口11から取入れられたカードを、カードリーダ1内部へ搬送するための通路)と、ローラ12と、付勢板バネ13と、ロックレバー15と、を有している。
ローラ12は、搬送路を塞ぐ位置とカードの挿入を許容する位置とを移動可能であって、付勢板バネ13によって、搬送路を塞ぐ位置まで付勢されている。すなわち、シャッター機構の小型化(装置全体の小型化),搬送路の防塵,カード処理中における2枚目の挿入防止などを目的として、カード挿入口11付近にノーマルクローズ(カードが挿入されるのを待機している通常状態では、カード挿入口11を閉じている)のローラ12が設けられており、このノーマルクローズの機能は、付勢板バネ13によって、カード挿入口11を閉じる方向にローラ12(例えばローラ支軸)が付勢されることにより実現している。
また、ロックレバー15は、カードの挿入を許容する位置へのローラ12の移動を阻止するものであって、ソレノイドユニット14によって(例えばラッチソレノイドで)駆動される。このロックレバー15の機械構成について図2を用いて詳述する。
図2は、図1に示すカードリーダ1において、ロックレバー15の機械構成を説明するための図である。特に、図2(a)では、ロックレバー15を直視できるようにするために、ソレノイドユニット14を透明にしてある。また、上述したように、ロックレバー15は、ソレノイドユニット14によって図中の矢印のように移動可能となっている。一方、図2(b)では、説明の便宜上、ローラ12の一部を透明にしてある。
図2(a)において、ロックレバー15は、ローラ12の下面(図2でいえば上面)にせり出しており、ローラ12の鉛直下方向(図2(a)でいえば鉛直上方向)への移動を規制する。これにより、ローラ12が搬送路を塞いだ状態でロックされ、2枚目のカード挿入を防止することができるようになっている。一方、図2(b)では、説明の便宜上、ローラ12の一部を透明にしてある。
一方で、カード処理中以外は、ロックレバー15は退避位置にあり、ローラ12の鉛直方向(カードの厚さ方向)への移動が規制されない。従って、カード未挿入状態では、挿入するカードによってローラ12が鉛直下方(図2(a)でいえば鉛直上方)に移動し、これによりカードリーダ1内にカードが取り込まれることになる。
ここで、ローラ12の上側(図2(a)でいえば下側)には、搬送路の一部となる上ベゼル20に凹部17が形成されている。すなわち、図2(b)に示すように、搬送路のうちローラ12が付勢される側の面(上ベゼル20の一部の面)には、ローラの一部を収容する凹部17が形成されている。そして、上述したロックレバー15は、ローラ12を挟んでこの凹部17と対向する位置に対して進退可能に設けられており、この凹部17と対向する位置にあるとき、ローラ12の移動を阻止することになる。
従って、ロックレバー15が図2(a)に示す位置にせり出しているとき(凹部17と対向する位置にあるとき)、上ベゼル20に形成された凹部17にローラ12が埋め込まれた状態でローラ12の移動が阻止されることになるので、挿入されたカードは、ローラ12の周面と凡そ垂直に当接する。その結果、カードが無理やり押し込まれても搬送路に入ってしまう虞は少ない。従って、カードが搬送路に進入するのをより確実に防ぐことができ、ひいてはカードリーダ1のセキュリティ性を向上させることができる。特に、カードが既にカードリーダ1内に存在する場合において、簡易な構成によってローラ12の移動を阻止することによって、2枚目のカードが搬送路に挿入されるのを防ぐことができる。
また、上述したようにノーマルクローズの状態では、ローラ12は付勢板バネ13によって付勢され、ローラ12の一部が凹部17に収容されていることから、塵埃や雨水の浸入を防ぐ防塵機能を発揮することができる。
一方で、図2(a)に示すように、ローラ12は、直径の大きい大径部12a〜12cと、直径の小さい小径部12dとから形成されている。また、図2(b)に示すように、凹部17には、小径部12dと対向する位置にリブ16が形成されている(リブ16の配置態様については、図3を用いて詳述する)。なお、リブ16の形状は、図示のように凹部の形状に沿うものに限られず、ローラ12の大径部に接するようなものであればよい。
従って、ロックレバー15と凹部17によりローラ12の移動を阻止している場合に、カードの挿入方向と垂直な方向に波打った形状になっていなければ、カードがローラ12と凹部17の間をすり抜けることができないようにすることができる。そして、カードをこのような形状にするのは実際問題として困難である。従って、カードがローラ12と凹部17の間をすり抜けるのを防止することができ、ひいてはカードが搬送路に侵入するのをより確実に防ぐことができる。なお、コスト削減及び部品精度向上の観点から、大径部12a〜12cは同一部品となっている。
また、図2(a)に示すように大径部12a〜12cと小径部12dとから形成されたローラ12を用いることで、ロックレバー15によるローラ12の移動阻止機能の信頼性を高めることが可能になる。ローラ12の移動阻止機能の信頼性向上について、図3を用いて詳述する。
図3は、図1に示すカードリーダ1において、ローラ12,ロックレバー15,リブ16(16a〜16c)の配置関係を説明するための図である。特に、図3は、カード挿入口11からその内部を見たときの概略図となっている。
図3に示すように、ローラ12には、大径部12a〜12cと小径部12dとが形成されており、このローラ12(図示しないローラ支軸)は、付勢板バネ(図1参照)によって、図3中の上方向に付勢されている。また、ロックレバー15は、大径部12aと大径部12bの間にその一部が、大径部12bと大径部12cの間に他の一部がせり出されるようになっている。さらに、凹部17(図3では点線で示す)に形成されたリブ16a及び16bは、大径部12bと大径部12cの間において、小径部12dと対向する位置に配置されているとともに、凹部17に形成されたリブ16c及び16dは、大径部12aと大径部12bの間において、小径部12dと対向する位置に配置されている。
ここで、ロックレバー15とローラ12の小径部12dとのクリアランスはH1となっている。本実施形態では、これを0.2mmとしている。従って、ロックレバー15が動作する際、小径部12dとのクリアランスを十分に保つことができ(動作マージンを確保することができ)、ひいてはローラ12の移動阻止機能の信頼性を向上させることができる。
この点、大径部12a〜12cと小径部12dの区別がないローラでは、ローラの移動阻止機能が失われる虞があった。より具体的に説明すると、大径部12a〜12cと小径部12dの区別がないローラを使用する場合、ローラとロックレバーとのクリアランスを0.1mm以内に抑える必要がある。仮にクリアランスを0.2mmにした場合には、1枚のカードがカードリーダ内に存在していても、例えば厚さ0.2mm前後のPETカードが不必要に挿入される虞があるからである。従って、ローラとロックレバーとのクリアランスは、例えば0.05mm程度にする必要がある。しかし、この程度のクリアランスにするとなると、部品精度を高くする必要があり、組み立て・調整作業も困難になり、結果的に製造コストが上昇してしまう。また、市場ではカードリーダのメンテナンス(クリーニング)を行う頻度は低く、カードに付着している粘着性ゴミ(汚れ)がローラに転写してしまい(ローラは常時鉛直方向に付勢されているため、カードがローラに摺動するとき、汚れが転写し易いのである)、ローラに転写した粘着性ゴミの厚さが0.05mm以上となれば、ロックレバーがロック位置に動作できなくなり、シャッターエラーが発生する。
このように、大径部12a〜12cと小径部12dの区別がないローラでは、ローラへのゴミ付着に対するマージンがほとんどないため、ローラの移動阻止機能が失われる虞があったが、本発明に係るカードリーダ1によれば、ローラ12に大径部12a〜12cと小径部12dが形成されているので、カードが摺動するのはローラ12の大径部12a〜12cとなり、ローラ12の小径部12dにはカードは摺動しないことから、小径部12dへの粘着性ゴミの付着がほとんどないため、ロックレバー15が動作する際の小径部12dとのクリアランスH1を確保するとともに、このクリアランスH1を長期間保つことができる。その結果、ローラ12の移動阻止機能の信頼性を向上させることができる。
また、図3に示すように、ローラ12の小径部12dがリブ16a〜16dに当接しているとき、凹部17と大径部12a〜12cは離間している(度当て面を逃がしている)。すなわち、クリアランスH2が発生している。本実施形態では、これを0.2〜0.3mmとしている。従って、大径部12a〜12cに多少のゴミが付着した場合であっても、ローラの回転機能が失われるのを防ぐことができる(ローラ12への汚れ転写マージンを大きくすることができる)。なお、リブ16a〜16dをローラ12の小径部12dに当接させることで、ローラ12の鉛直上下方向の移動範囲を一定にすることができる(小径部12dには汚れが付着し難いためである)。また、ローラ12の度当て面として、幅が大きな度当て面を形成するのではなく、幅が小さなリブを複数(リブ16a〜16d)形成することとしたので、仮に、小径部12dにゴミが転写した場合であっても、その悪影響を最小限に抑えることが可能である。
さらに、図3に示すリブ16a〜16dは、各々の高さが約1.0mm程度であるとともに、大径部12a〜12cと対向する位置の近傍に形成されている。より具体的には、リブ16aは大径部12cと対向する位置の近傍に、リブ16b及び16cは大径部12bと対向する位置の近傍に、リブ16dは大径部12aと対向する位置の近傍に、それぞれ形成されている。従って、ロックレバー15と凹部17によりローラ12の移動を阻止している場合に、カードの挿入方向と垂直な方向に、(リブ16a〜16dと接触する付近で)急峻な波形状になっていなければ、カードがローラ12と凹部17の間をすり抜けることができないようにすることができる。そして、カードをこのような形状にするのは、実際問題として非常に困難である。従って、カードがローラ12と凹部17の間をすり抜けるのを防止することができ、ひいてはカードが搬送路に侵入するのをより確実に防ぐことができる。
[機械動作]
次に、図3及び図4を用いて、ローラ12の移動動作について詳述する。図4は、図1に示すカードリーダ1におけるローラ12の移動動作を説明するための説明図である。
まず、図3に示すように、ローラ12は、リブ16a〜16dが小径部12dに当接している第1の位置にあるとする。このとき、ロックレバー15は退避位置にあるが、図示のように、ローラ12はカード挿入口11を塞ぐ位置にある。従って、カードが未だ搬送路に挿入されていない待機状態では、防塵対策を講じることが可能となっている。
次に、カードがカード挿入口11から挿入されると、ローラ12は、カードの挿入を許容するように小径部12dとリブ16a〜16dが離間している第2の位置に移動する(図4(a)参照)。すなわち、カードの挿入によって、ローラ12は押し下げられることになる。ただし、図4(a)では、説明の便宜上、カード挿入口11全体を開くこととしているが、実際は、カードの挿入を可能とする程度の幅が開けば足りる。
そして、カードが搬送路に挿入された後、付勢板バネ13によってローラ12は第1の位置に戻された後(図3参照)、ソレノイドユニット14によってロックレバー15がロック位置に動作する。これにより、カードの挿入を許容する位置へローラが移動するのが阻止されることになる。
例えば、無理やり2枚目のカードをカード挿入口11に挿入した場合、ローラ12はクリアランスH1(図3参照)だけ鉛直下方に移動するが、それ以上は、図4(b)に示すように小径部12dがロックレバー15に当接することになるので、2枚目のカードが搬送路に挿入されることはない。すなわち、ローラ12が図4(b)に示す第3の位置にあるときは、1枚目のカードがカードリーダ1内に挿入されている状態で、2枚目のカードが搬送路に挿入されるのを防いでいる。
このように、第1の位置,第2の位置及び第3の位置を移動するローラ12の一連の動作によって、カードの不正侵入を防ぎつつ、スムーズかつ無駄のないカード取込及びカード処理を実現することができる。
[実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るカードリーダ1によれば、ローラ12とロックレバー15のクリアランスH1を拡大して動作信頼性を向上できる。また、クリアランスH1の設定に余裕ができることで、各部品の要求精度を低くでき、かつ、組立・調整作業も容易となることから、コスト的に有利になる。また、上ベゼル20の凹部17において、ローラ12の大径部12a〜12cに対応した箇所を大きく逃がすことで、汚れ転写に対するマージンを広げ、メンテナンス(クリーニング)のサイクルを長くできる。また、上ベゼル20の凹部17におけるローラ12の度当て面を、ローラ12の小径部12dに対応した箇所に設けることとしたので、ローラ12の鉛直上下方向の位置を一定にすることができ、更には、度当て面をリブ形状(リブ16a〜16d)としたので、仮に小径部12dに汚れが転写しても、その悪影響を最小限に抑えることができる。
[変形例]
図5は、本発明の他の実施の形態に係るカードリーダ1Aにおいて、ローラ12,ロックレバー15の配置関係を説明するための図である。特に、図5では、図3と異なり、凹部17にリブ16a〜16dが形成されておらず、かつ、大径部12a〜12cと小径部12dの区別がないローラ12が用いられている。このようなカードリーダ1Aによっても、ローラ12の一部が凹部17に収容され、搬送路のうちローラ12が付勢される側の面にローラ12が埋め込まれた状態でローラ12の移動が阻止されることには変わりないので、カードが搬送路に侵入するのをより確実に防ぐことができ、ひいてはカードリーダ1のセキュリティ性を向上させることができる。
特に、図5に示すカードリーダ1Aでは、ローラ12が搬送路を塞ぐ位置につき、ローラ12の付勢方向における一部(図中上部)が凹部17に当接する一方で、ローラ12の反対側の一部(図中下部)が搬送路の搬送面の下部に収納されている。すなわち、従来技術は、図8に示すように、搬送路の上方にローラが設けられ、このローラが搬送方向に付勢されることによって、カード状記録媒体の挿入口を塞ぐ構成であることから、ローラの一部が搬送路の搬送面よりも図中下方に位置することはない。それに対し、図5に示すようなカードリーダ1Aによれば、ローラ12の上部及び下部(一部)ともに、凹部17及び搬送面の下方に収納され、ローラ12の中央部分付近が、挿入されようとするカード状記録媒体に当たるので、搬送路をより確実に塞ぐことができる。以上説明したような構成は、図3に示すカードリーダ1も具備している。
図6は、図5に示すカードリーダ1Aにおけるローラ12の移動動作を説明するための説明図である。図4の説明図と同様に、図6(a)は、ローラ12が第2の位置にあるときを示しており、図6(b)は、ローラ12が第3の位置にあるときを示している。
従って、カードリーダ1Aにおいても、第1の位置(図5参照),第2の位置(図6(a)参照)及び第3の位置(図6(b)参照)を移動するローラ12の一連の動作によって、カードの不正侵入を防ぎつつ、スムーズかつ無駄のないカード取込及びカード処理を実現することができる。
図7は、本発明の他の実施の形態に係るカードリーダ1B〜1Eにおいて、ローラ12,ロックレバー15及びリブ16a〜16dの配置関係を説明するための図である。
図7(a)に示すカードリーダ1Bのように、ロックレバー15を幅の大きな板金としてもよい。この場合、大径部12bは除去する必要がある。ただし、ロックレバー15を幅の大きな板金とした場合、総重量が増えてしまってロック動作が鈍くなる虞がある。そのため、好ましくは、図2(a)に示すように大径部12b近傍をくり抜いたコの字型のロックレバー15を用いるべきである。
図7(b)に示すカードリーダ1Cのように、リブの数を減らして、リブ16e及びリブ16fのみにするとともに、大径部12aと大径部12bの中間にリブ16fを、大径部12bと大径部12cの中間にリブ16eを配置してもよい。ただし、リブを大径部12a〜12c近傍に配置しない場合には、ローラ12と凹部17の間をすり抜け易くなる虞がある。そのため、好ましくは、図3に示すように、リブを大径部12a〜12c近傍に配置すべきである。
図7(c)に示すカードリーダ1Dのように、リブを1個にして、リブ16gのみにすることとしてもよい。ただし、1個のリブgのみではローラ12と当接する際にバランスが悪くなる。そのため、好ましくは、図3に示すようにリブを複数個対称に配置すべきである。
図7(d)に示すカードリーダ1Eのように、幅が大きなリブ16hを用いることとしてもよい。ただし、幅が大きなリブ16hを用いた場合には、仮に小径部12dにゴミが転写した場合には、ローラ12がリブ16hと当接する際に傾いてしまうなど、それによって悪影響を受けてしまう。そのため、好ましくは、図3に示すように、幅が小さなリブを複数(リブ16a〜16d)形成するべきである。これにより、万が一小径部12dにゴミが転写した場合であっても、その悪影響を最小限に抑えることができる。