図1に固体相変化インク型インクジェットプリンタ10を示す。この図に示されているのはこのプリンタ10の外側ハウジング、特にその頂面12及び複数の側面14である。この外側ハウジングにはユーザインタフェース16として例えばフロントパネルディスプレイスクリーンが、またプリンタ10の動作を制御するための操作部材18として複数個のボタンを含む各種の部材が、それぞれ設けられている。スクリーン16はプリンタ10の状態に関する情報やユーザに対する指示を表示するのに使用されており、またボタン18はこのスクリーン16の隣に配置されている。但し、これらの部材を設ける場所は他の場所としてもよいし、別の種類の部材を設けてもよい。後に図6を参照して説明するインクジェット印刷機構11や、インクスティック30(図2参照)を送給するインクスティック送給系29(図5参照)を含みインクジェット印刷機構11にインクを供給するインク供給系は、この外側ハウジングの内部に収納されている。特に、インク送給系は、蝶番式インクアクセスカバー20が組み込まれている外側ハウジング頂面12の下に、配置されている。カバー20を開けると図2に示した状態、即ちユーザがインク送給系にアクセスできる状態になる。
図2に示されているように、インクアクセスカバー20には連動型インク装填部覆い22が取り付けられている。この覆い22は、インクアクセスカバー20を引き揚げるとスライド及びピボットし、インク装填時用の姿勢になる。すると、この図から看取できる通り、カバー20及び覆い22によって隠されていたキープレート26が露わになる。このプレート26にチャネル個数(図示の例では4個)分設けられているキー開口24A〜24Dはインクスティック装填用の開口である。即ち、図3〜図5に示す通りインクスティック送給系29を構成しているインクスティック送給チャネル28A〜28Dそれぞれの一端にアクセスすることができるよう、開口24A〜24Dが設けられている。
各インクスティック送給チャネル28A〜28Dは、その送給チャネルに対応する色のインクスティック30をインクスティック液化部材32A〜32Dのうち対応するものへと送給するためのチャネルである。これら液化部材32A〜32Dはインクスティック30を液化例えば熔融させる手段であり、それぞれ、例えばプレート状のヒータである熔融板として構成されている。各送給チャネル28A〜28Dはインクを送給する方向161即ちインクスティック30を移送する方向(図11等参照)に沿って細長く延びており、その一端(装填端)の近傍にはキー開口24A〜24Dのうち対応するものが、また他端(液化端)の近傍には熔融板32A〜32Dのうち対応するものが、それぞれ形成乃至配置されている。各単体のインクスティック30は、送給チャネル28A〜28Dのうち対応するものの装填端に設けられているキー開口を介してその送給チャネルに何個かずつ入れられ、その送給チャネル内を同色の物同士数珠繋がりになって送給方向161に向かい送給され、熔融板32A〜32Dのうちその送給チャネルの液化端に設けられているものによって液化例えば熔融される。インクスティック30は固体インクから形成されており、ある送給チャネルの熔融板にてこれを液化させて得られたインクはその熔融板の表面を伝わって流れ、その送給チャネルの液化端とその熔融板との間隙33(図3参照)を通って、液化インクリザーバ31A〜31D(図6も参照)のうちその送給チャネルに対応するもののなかへと滴り落ちる。各液化インクリザーバ31A〜31Dは、それぞれ、熔融板32A〜32Dひいては送給チャネル28A〜28Dに対応するよう設けられている。また、図示した構成においては、各送給チャネル28A〜28Dに対応してプッシュブロック34A〜34Dが設けられている。これらプッシュブロック34A〜34Dは送給チャネル28A〜28Dのうち対応するものの中に配置されており、駆動部材36A〜36D例えば定力バネのうち対応するものの張力によって、その送給チャネル28A〜28Dの長手方向に沿いその液化端に向かって付勢されている。送給チャネル28A〜28D内のインクスティック30はプッシュブロック34A〜34Dによってその送給チャネル28A〜28Dの長手方向に沿いその液化端へと押しやられ、押しやられた先の液化端にある熔融板32A〜32Dに当接する。また、各プッシュブロック34A〜34Dに組み込まれている定力バネ36A〜36Dにはヨーク38が取り付けられており、各ヨーク38はプレート26に設けられたスロット25A〜25Dのうち対応するものを通って延びており、更に覆い22に取り付けられている。従って、カバー20を引き揚げプレート26を露わにする動作に連動して、覆い22に取り付けられている個々のヨーク38が作動し、各プッシュブロック34A〜34Dが対応する送給チャネルの装填端へと引き戻される。なお、定力バネ36A〜36Dは、その配置面を略垂直方向に向けた板バネとして実現することができる。更に、図4にその断面を示すように、インクスティック送給系29内の一組の送給チャネル28A〜28Dには、送給チャネル内案内レール40A〜40D及び二次ガイド面48A〜48Dが設けられている。これら案内レール40A〜40D及びガイド面48A〜48Dは、その送給チャネル28A〜28D内にあるインクスティック30がその送給チャネル28A〜28D内を正常且つ円滑に動けるよう、案内する。逆にいえば、インクスティック30の輪郭は、送給チャネル28A〜28Dのうち対応するものの内部をこれらにより案内されつつ送給方向161へと動けるように、設定されている。また、図5に示すインクスティック送給系29には、熔融板32A〜32Dによるインクスティック液化動作を制御するため、ヒータの他に各種電子回路も組み込まれている。なお、本件技術分野における習熟者(いわゆる当業者)であれば、本願による開示に基づき、図示した送給チャネル28A〜28Dとは異なる向き、個数、位置、構成等で送給チャネルを作成することができようし、また、送給チャネル28A〜28Dの装填端から液化端へとインクスティック30を動かす手法としてまた別の手法を想到することもできよう。
また、カラープリンタの中には四色、即ちイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックのインクを使用するものがある。図示したプリンタ10もその種のカラープリンタであり、各送給チャネル28A〜28Dはそれら四色の何れかに対応づけられている。即ち、各送給チャネル28A〜28Dは、四色のうち対応する色のインクスティック30の送給に使用される。そのため、プリンタ10のオペレータは、各送給チャネル28A〜28Dに装填するインクスティック30の色を間違えないよう、即ち装填先送給チャネルに係る色とは違う色のインクスティック30を装填してしまわないよう、気をつける必要がある。しかしながら、インクスティック30における着色顔料/染料の濃度は極めて濃いため、その見た目だけを頼りにしていたら、プリンタ10のユーザは、そのインクスティック30の色種を容易に判断することができない。なかでもシアン、マゼンタ、ブラックの三色を目で見て区別することは、そのインクスティック30の見た目の色を頼りにしていたら容易でない。これを補い、プリンタ10のユーザが確実に正しい色のインクスティック30だけを各送給チャネル28A〜28Dに装填できるようにするため、図示の例では、キープレート26上のキー開口24A〜24Dが利用されている。即ち、プレート26上の開口24A〜24Dの形状を、対応する送給チャネル28A〜28Dに応じて別々の(ユニークな)形状とする一方で、各送給チャネル28A〜28Dに装填するインクスティック30の形状を、装填先の送給チャネルに対応するキー開口の形状に一致し色別に異なる形状としてある。これら、各色に係るキー開口及びインクスティック30の形状は、間違った色のインクスティック30を各送給チャネル28A〜28Dに装填することができないよう、即ちその送給チャネルに装填してよい適正な色のインクスティック30だけを各送給チャネルに装填することができるよう、設定されている。
図6にインクジェット印刷機構11の一例ブロック構成を模式的に示す。この印刷機構11を構成するプリントヘッド42は、液化インク流路35A〜35Dを介してインク供給元たる液化インクリザーバ31A〜31Dにつながっており、また、プリントドラム48の支持面に被着されている中間転写面46に向けインク滴44を吐出することができるよう、静止状態又は駆動可能形態で適宜支持されている。中間転写面46は、例えば、機能性油脂層等の液体層として形成することができる。この図の例では、アプリケータアセンブリ50を構成するアプリケータ53例えばローラを、プリントドラム48の支持面に接触させることによって、機能性油脂層46を形成している。図示のアプリケータアセンブリ50はメータリングブレード55及びリザーバ57を備える例であり、プリントドラム48に随意に当接させられるように構成されている。
この図に例示されているインクジェット印刷機構11は、更に、紙等の最終印刷媒体64を案内する媒体ガイド61及び媒体プレヒータ(予熱器)62を備えている。媒体ガイド61及び媒体プレヒータ(予熱器)62による案内を受け、最終印刷媒体64は、ローラ68の駆動面と、これに向かい合っておりプリントドラム48によって支持されている中間転写面46と、の間のニップ(隙間)65を、通り抜けていく。更に、インク滴44を堆積させることにより中間転写面46上に形成してある画像63をこうして最終印刷媒体64の表面に転写した後、その最終印刷媒体64を中間転写面46から剥がす助力として、可動部を有するストリッパフィンガ/ストリッパエッジ69が実装されている。
なお、インクジェットプリンタ10の構成として、プリントヘッド42のインク滴生成部(後掲の例では72)が最終印刷媒体64に向け直にインク滴44を吐出する構成、即ち中間転写面46を介した転写を行わない構成を、採ることもできる。
電子化されているプリンタコントローラ70はプリントヘッド42に機能連結されており、作動信号を発生させてヘッド42に送ることにより、そのヘッド42を構成する個々のインク滴生成部72を選択的に作動させてインク滴44を吐出させる。即ち、ヘッド42を構成する個々のインク滴生成部72に対しコントローラ70から作動信号が与えられると、作動信号を受けたインク滴生成部72が励振する。図7に、ヘッド42を構成するインク滴生成部72、即ちインク滴44を生成する部材の一例ブロック構成を模式的に示す。ヘッド42は例えばこの図に示す如き構成のインク滴生成部72を複数個備えており、コントローラ70は作動させたいインク滴生成部72に対して個別に吐出器作動信号を供給することによって、それらインク滴生成部72を選択的に励振させる。各インク滴生成部72はそれぞれインク滴吐出器79を備えており、このインク滴吐出器79は吐出器作動信号が供給されるとインク滴44を吐出する。インク滴吐出器79として使用できるデバイスの例としては、例えば、圧電トランスデューサ等の電気機械トランスデューサ、特にセラミックによって形成されている圧電トランスデューサを掲げることができる。この他、シェアモードトランスデューサ(shear-mode transducer)、円環状捩りトランスデューサ(annular constrictive transducer)、電歪トランスデューサ(electrostrictive transducer)、電磁トランスデューサ(electromagnetic transducer)、磁歪トランスデューサ(magnetorestrictive transducer)等も、各インク滴生成部72内でインク滴吐出器79として使用することができる。
インク滴生成部72のインレットチャネル71はマニホルド、例えば液化インク流路35A〜35Dのうち対応する1個に接続されており、インク滴生成部72は接続先液化インク流路を介してインク収蔵用構造物、例えば液化インクリザーバ31A〜31Dのうち1個からインク73を受け取る。インレットチャネル71から入ってきたインク73は加圧/ポンプチャンバ75内に流れ込む。このチャンバ75の一方の壁は可撓性ダイアフラム77によって形成され又は可撓性ダイアフラム77に接しており、この可撓性ダイアフラム77には例えば加圧チャンバ75上に重なるように中間接続用構造化薄膜78が取り付けられており、この構造化薄膜78には更に電気機械トランスデューサ79が取り付けられている。この図の例におけるトランスデューサ79は、圧電素子電極82と圧電素子電極83とにより圧電素子81を挟み込んだ構成を有する圧電トランスデューサであり、例えば構造化薄膜78を介しプリンタコントローラ70から発火信号や非発火信号等の作動信号を与えて動作させる。そのため、一方の電極83をコントローラ70と共通の接地電位に接続しておき、構造化薄膜78を介したトランスデューサ駆動用の信号の供給は他方の電極82に対して行う、という形態が採られている。こうしてトランスデューサ79を作動させると加圧チャンバ75内のインクがインク滴成形アウトレットチャネル85内に流れ込み、このアウトレットチャネル85、特にそのノズル/オリフィス87から、インク受容媒体例えば中間転写面46に向けインク滴44が吐出されることとなる。
ここに、インク滴44が有する特性のうち注目すべき特性の一つはそのインク滴44のサイズであり、これは例えばそのインク滴44に含まれるインクの質量として捉えることができる。こうした特性を含めノズル87から個別に吐出されるインク滴44の特性に影響を及ぼす要因は数多くある。例えば、ノズル87の開口径、電気機械トランスデューサ79の物理特性、プリンタコントローラ70からトランスデューサ79に与えられる吐出器作動信号の大きさ、その信号の継続時間等が、インク滴44の特性に影響を及ぼす要因であるといえよう。
プリンタ10の種類・構成にもよるが、プリントヘッド42を長時間に亘り或いは多数回使用すると、ノズル87から吐出されるインク滴44の特性もそれに応じて変化する。例えば、使用に伴いヘッド表面が腐食してノズル開口径が変化することがある。本実施形態においては、プリントヘッド42のノズル87から吐出されるインク滴44の実際のサイズを判別してインク滴サイズ変化を補償するプロセスを実行することにより、そのプリンタ10におけるインク滴サイズを経時的に一定に保つようにしている。
図8に例示するプロセスは、プリントヘッド42のインク滴生成部72から吐出されるインク滴44のサイズ例えば質量を判別し、判別したインク滴サイズが所定インク滴サイズ条件に合致しているかどうかを判別するプロセスである。インク滴サイズが所定インク滴サイズ条件に合致していない場合、例えばインク滴サイズが特定のサイズ範囲を逸脱している場合には、例えばプリンタコントローラ70がインク滴生成部72のインク滴吐出器79を校正して、所定インク滴サイズ条件に合致するインク滴44が生成される状態を復活・再現させる。この校正は、例えば、コントローラ70からインク滴生成部72に供給される作動信号を、そのインク滴生成部72から吐出されるインク滴44がサイズ的に見て所定インク滴サイズ条件を満たす(或いはそれに近い)ものになるよう、コントローラ70にて修正する、という手法で実行される。
ステップ110にて始まるこの校正プロセス即ちインク滴サイズ変化補償プロセスにおいては、まず、校正を実施すべき特定期間即ち校正期間が到来したことをステップ111にて識別する。プリンタ10例えばそのコントローラ70は、続くステップ112にて、その校正期間の間にインクジェット印刷機構11のプリントヘッド42に進入したインクの量を判別し、それと並行して実行されるステップ113にて、同じ校正期間中にヘッド42から吐出されたインク滴44の個数を判別する。この校正期間中、コントローラ70からヘッド42のインク滴生成部72に供給される吐出器作動信号は、ある所定の信号特性を有する信号、例えばその大きさ(例えば電圧値)が所定値、その継続時間が所定時間、又はその波形が所定波形等といった信号である。ヘッド42によるインク滴吐出個数は、既存の多くのプリンタにて種々の目的で採られているやり方に従い計数し、コントローラ70では例えばその結果たるインク滴吐出個数計数結果情報を取得して利用する。ヘッド42への進入インク量及びヘッド42からのインク滴吐出個数が分かれば各インク滴44のサイズも分かる。
そこで、続くステップ114ではインク滴44の代表サイズ例えば平均サイズを判別する。例えば、所定校正期間におけるプリントヘッド内進入インク量として同期間におけるインクジェット印刷機構内進入インク質量を求めてある場合、ステップ114では、その値を同期間におけるプリントヘッド吐出インク滴個数で除すことにより、各インク滴44の平均サイズを判別する。なお、プリントヘッド42を含むインクジェット印刷機構11に進入したインクの質量は、そのプリンタ10のインク送給系内の特定点を通過したインクの質量を調べることによって、知ることができる。次のステップ115では、ステップ114にて判別したインク滴サイズを所定インク滴サイズ条件と対比する。もしインク滴サイズ判別結果がそのインク滴サイズ条件に合致していたら、コントローラ70は、ステップ116として示すように、インク滴生成部72に送る吐出器作動信号を従前と同じ特性の信号例えば同じ大きさや同じ継続時間の信号に保つ。逆に、インク滴サイズ判別結果がインク滴サイズ条件に合致していない場合、例えば判別したインク滴サイズがインク滴サイズ条件に照らして大きすぎる場合や小さすぎる場合には、コントローラ70は、ステップ117にて、インク滴生成部72から吐出されるインク滴44のサイズがより大きく或いはより小さくなるよう、吐出器作動信号を修正する。吐出器作動信号を修正する方向は、その修正後のインク滴サイズが所定インク滴サイズ条件に合致するような(或いはそれに近づくような)方向とする。コントローラ70は、これ以後は、ステップ118として示すように、ヘッド42のインク滴生成部72に対し、ステップ117にて修正した吐出器作動信号、即ちそれ以前の吐出器作動信号とは異なる特性を有する吐出器作動信号を送る。ノズル87はこの新たな吐出器作動信号によって駆動されることになる。また、ここで吐出器作動信号の特性と称しているのはその信号の大きさ(電圧値)、継続時間、波形等のことであり、吐出器作動信号の修正とは例えばその信号の特性をそれ以前の第1所定特性から新たな第2所定特性へと変化させることである。例えば、判別したインク滴サイズが大きすぎる場合、ステップ117では、吐出器作動信号の電圧値を下げる、継続時間を短くする等の修正を施す。こうして修正された吐出器作動信号の供給がステップ118にて開始されると、それ以後に吐出されるインク滴44のサイズはそれまでより小さくなる。なお、吐出器作動信号を修正する際に変化させる特性は一種類とは限らず、複数種類の特性を複合的に変化させてもかまわない。ノズル87を駆動するための吐出器作動信号を詳細にはどのように修正すればよいのか、またある特定のヘッド42のインク滴生成部72から吐出されるインク滴44に対しその修正によって詳細にはどのような影響が現れるのか、については、そのヘッド42の設計及び製造条件次第であるといえる。そして、図示の例では、以上のプロセスによる校正について再チェックを行うことができる。即ち、吐出器作動信号の修正によってインク滴サイズが所定インク滴サイズ条件内に入ったかどうかを、ステップ111からの再実行により確かめることができる。再チェックが不要な場合或いは再チェックに成功した場合は、ステップ120に進んで当座のプロセスが終了される。
プリントヘッド42が置かれている状況やそのヘッド42の種類次第であるが、吐出器作動信号に応じてインク滴生成部72から吐出されるインク滴44のサイズは、そのインク滴生成部72におけるインク滴吐出履歴に関わるまた別の変動要因、例えばそのインク滴生成部72が直前のクロックサイクルでもインク滴44を吐出していたかどうか等の事情によって、変動することがあり得る。こうした要因によるインク滴サイズ変動に対処するには、そのヘッド42のタイプに応じ経験的又は実験的に何種類かの変動要因を選定し、選定した変動要因毎に分けてインク滴吐出個数を計数し、プリンタコントローラ70にてその結果を保持するようにすればよい。例えば、直前クロックサイクルでの吐出有無という要因に対処するには、あるクロックサイクルで各インク滴生成部72から吐出されたインク滴44の個数を、その直前のクロックサイクルにてそのインク滴生成部72がインク滴44を吐出していた場合と、その直前のクロックサイクルにてそのインク滴生成部72がインク滴44を吐出していなかった場合とに分けて計数し、その結果をコントローラ70にて保持するようにすればよい。そのようにしてあれば、コントローラ70は、インク滴サイズ判別結果がインク滴サイズ条件に合致するかどうかをステップ115にて判別する際に、こうした付加的情報を加味して当該判別を行うことができるし、インク滴サイズ判別結果がインク滴サイズ条件に合致していないことが判明した際に、ステップ117にてそれら付加的情報に基づき修正の仕方を決めて吐出器作動信号を修正し適切な特性の信号にすることもできる。
更に、本校正プロセスは、所定校正期間中にインク滴生成部72から吐出される精細インク滴44のインク種別と、当該校正期間中にインク送給系を通ってプリントヘッド42に進入するインク即ちその進入量が計測・判別されるインクの種別とが、厳密には一致していない場合であってさえも、実行することができる。即ち、両インクの密度が一致しており且つそのインク送給系を介して途切れなく送給されている限り、そのインク送給系の所定部分を通るインクの量を計測することと、ヘッド42に進入するインクの量を計測することは、実質的に同じことである。
更に、ステップ114におけるインク滴代表サイズ判別に際しては、印刷動作と同じくインクを使用するが印刷動作と異なりインク滴44を吐出しないプリンタ動作をも、考慮に入れるとよい。例えば、目詰まりを解消・防止するためのノズルパージ機能等によって実行されるプリントヘッド保守動作においては、ある程度の量のインクが消費されるけれどもインク滴44としては吐出されていないので、プリンタコントローラ70ではこれをインク滴吐出として記録していない。従って、その種の動作を1回実行する毎に消費されるインク量を推定しておき、コントローラ70にてそうした動作の実行回数を記録しておくようにすれば、インク滴44として吐出されていないインク消費量を除外して吐出インク滴実サイズをより正確に判別することができる。或いは、印刷動作以外にインク消費動作が行われていない時期に限ってインク滴代表サイズ判別ステップ114を実施する(校正期間を開始する)ようにすることによっても、吐出インク滴実サイズをより正確に知ることができる。
また、ステップ114におけるインク滴代表サイズ判別が、そのプリンタ10をターンオフした後再度ターンオンした時点については省略されるように、プリンタ10を構成することもできる。例えば、ターンオフした後再度ターンオンした時点で各液化インクリザーバ31A〜31Dの中身が全て廃棄容器内に移し替えられる構成のプリンタ10においては、その時点におけるインク滴平均サイズ計算を避けるようにするとよい。
また、校正期間におけるインクジェット印刷機構内進入インク量の判別は、同期間内にインクスティック送給系29内を通過したインクスティック30の個数を調べることによって、行うことができる。即ち、固体インクを使用する印刷システムに対するインクの供給は、固体インク素材から形成された固体状のインク即ちインクスティック30を各インクスティック送給チャネル28A〜28Dに装填することによって行われるので、各送給チャネル28A〜28D内でインクスティック30の通過個数を計数することによって印刷機構内侵入インク量を判別することができる。また、インクスティック通過個数の計数は、各送給チャネル28A〜28D内に適当な点を定め、その位置で行えばよい。即ち、インクスティック通過個数の計数は、インクスティック30が熔融板32A〜32Dに当接する場所で行ってもよいし(到達個数計数)、それより幾分前段にある場所で行ってもよい(狭義の通過個数計数)。
各インクスティック30は、複数個設けられているインクスティック送給チャネル28A〜28Dのうちのある同じ送給チャネルに通されるもの同士で、同じ形状及び質量となるように設計及び製造されている。即ち、インクスティック製造公差が十分厳しく設定されているため、同じ送給チャネルに係るインクスティック30であれば互いに実質的に同じ質量であるといえるから、インクスティック通過個数を計数することによってインクジェット印刷機構内進入インク質量を正確に計測することができる。
図9に、図1〜図6に示したプリンタ10のインクスティック送給系29向けのインクスティック30の一例斜視外観を示す。この図に例示したインクスティック30の本体は立体的であり、その全体に亘って質量分布が実質均一になるよう、インクスティック素材によって形成されている。また、インクスティック本体は複数個の外面、即ち底部外面、頂部外面、2個の側部外面及び2個の端部外面によって外部と画されている。図中の符号52、54、56及び60は、それぞれ、インクスティック本体の底部外面、頂部外面、側部外面及び端部外面を表している。なお、インクスティック本体の外面を平坦面にする必要も、また面同士を平行にし或いは直交させる必要もない。更に、インクスティック本体の外面には立体的な構造(凹凸等)を設けることも傾斜を付けることも外面同士を斜めに交わらせることもできる。それでもなお略直方体状であるかのように説明したのは、インクスティック構造の核心部分を視覚的に理解する助けになるであろうからである。
インクスティック30は、固体インク送給系を構成しているインクスティック送給チャネル28A〜28Dのうち対応するもののなかを押されて動いていけるよう、自身を案内する案内手段を備えている。インクスティック本体に設けられている第1の案内手段はインクスティック側ガイド部66である。図示の例では、このガイド部66はインクスティック本体の重心から横方向にずれた位置、例えばインクスティック本体の側部外面56のうち一方の直近で、且つインクスティック本体重心よりかなり下方にある位置に、底部外面52から突出するように設けられている。また、底部外面52上におけるガイド部66の形成位置は当該底部外面52の側辺のうち一方(58A)又はその近傍である。更に、ガイド部66の横方向寸法は約3.0mmであり、インクスティック本体の底部外面52からの突出高さは約2.0〜5.0mmである。
図10に、固体インク送給系を構成する細長いインクスティック送給チャネル28A〜28Dの構成を、そのうちの送給チャネル28Dを例としその断面によって示す(他の送給チャネルもこれと同様又は類似の構成とすることができる)。この図や図4に示すように、送給チャネル28Dは送給チャネル内案内レール40Dを備えている。案内レール40Dは、送給チャネル28D内でインクスティック30を案内する送給系側案内手段として当該送給チャネル28Dの下部に設けられている。従って、送給チャネル28D内におけるインクスティック30の案内は、先に述べたインクスティック側ガイド部66と、送給チャネル28Dの一部特に案内レール40Dとの協働により、行われる。これを可能にするため、固体インク送給系内の案内レール40Dとインクスティック本体側のガイド部66は互いにコンパチブルな構成例えば互いに相補的な形状としてある。このように互いに相補的な形状としてあれば、インクスティック本体下部のガイド部66を送給チャネル28D側の案内レール40Dに当接させ、前者を後者に対し摺動させることができる。
各送給チャネル内案内レール40A〜40Dの幅方向寸法はその案内レールを設けてある送給チャネルの幅方向寸法よりかなり狭く設定されており、また各送給チャネル28A〜28Dの底面はその大部分が窪み又は開口となっているので、インクスティック30の底部外面52は送給チャネル28A〜28Dの底面とほとんど接触しない。そのため、インクスティック素材から破片や粉体が生じることはほとんどないし、仮に生じたとしてもそれらはこの窪み又は開口から落ちていくので、送給チャネル28A〜28Dに沿ったインクスティック30の摺動がインクスティック素材の破片や粉体で邪魔されることはない。案内レール40A〜40Dの幅方向寸法は、具体的には、その案内レールを設けてある送給チャネルの幅方向寸法の30%未満、より好ましくは5〜25%、特に好ましくは約15%とする。
また、先に述べたように、所定校正期間におけるインクスティック送給系通過インクスティック個数を計数するのは、それを通じて同期間における印刷機構内進入インク量(質量)を調べるためである。以下図示説明する例においては、インクスティック送給系29を構成する個々のインクスティック送給チャネル28A〜28D内に位置を定め、インクスティック30の所定部位がその所定位置を通過したことを検知する検知器をその位置に設け、その検知結果に基づきその位置におけるインクスティック通過個数を計数している。即ち、互いにそっくりなインクスティック30が装填先送給チャネル28A〜28D内で押されて動き所定位置を順次通過していく際に、それらインクスティック30の同一部位を、インクスティック送給系29に設けた検知器によって順次検知するようにしている。また、この検知器によって検知されるのは、具体的には、各インクスティック30に設けられたインクスティック側被検知部150(後述)である。即ち、検知器を通過するとき被検知部150が検知器に及ぼす作用を検知し、それをインクスティック又はその一部の通過として計数し、その結果をインクスティック(部分)通過回数即ちインクスティック(部分)通過個数の計数値として記録する。
インクスティック通過個数計数システムは、機械式、電子式、光学式等の形態で実現することができる。例えば機械式計数システムとして実現する場合は、各インクスティック30に設けたインクスティック側被検知部150に当接させ得る可動部を備えた機械式の送給チャネル内インクスティック計数機構160(後述)を、各インクスティック送給チャネル28A〜28Dに対応して設ければよい。電子式計数システムとして実現する場合は、インクスティック30の外面に電子式被検知部を取り付けるかインクスティック30の内部に電子式被検知部を埋め込んでおき、送給チャネル28A〜28D内又はその直近に設けた電子式検知器乃至検知システムによってこの電子式被検知部の存在を検知するようにすればよい。光学式計数システムとして実現する場合は、インクスティック30に光学式被検知部を取り付け又は埋め込んでおき、これを検知できるように光学式検知器乃至検知システムを構成及び配置すればよい。光学式被検知部は例えばそのインクスティック30の外面にスポット状蛍光ペイントその他の着色部として設け、光学式検知器乃至検知システムは例えばその送給チャネルに光源部及び光検知部を近接配置した構成とする。そのような構成下では、光源部から発せられ通過中のインクスティック30上の着色部によって反射された光を光検知部にて検知することにより、インクスティック30の通過を検知してその回数(通過個数)を計数することができる。温度式の到達個数計数(これも通過個数計数の一態様である)については後に図19等を参照して説明する。
図11〜図13に、インクスティック送給チャネル28A〜28Dのうち対応するものの中にあるインクスティック30の個数を機械式に計数する送給チャネル内インクスティック計数機構160と、それに適するインクスティック側被検知部150の一例構成を示す。これらの図には4番目の送給チャネル28Dに係る構成を例示してあるが、1番目〜3番目の送給チャネル28A〜28Cに係る計数機構も同様の構成及び配置である。更に、これらの図においては、その構成及び動作を視覚的に理解しやすくするため各種構成要素のうち幾つかをやや誇張して描いてあり、また送給チャネル28Dの構成要素例えば送給チャネル内案内レール40Dを図上省略してある。送給チャネル28D内を送給方向161に向け移動していくインクスティック30は、それぞれ、計数機構160と当接し得るよう配置された被検知部150を備えている。この例における被検知部150は、そのインクスティック30の外面例えば頂部外面54に、例えばインクスティック素材の有無や組成差や密度差が体現された構造体として形成されている。インクスティック本体の外形をかたちづくる手法としてモールド成形を使用するのであれば、当該モールド成形の際に併せて、インクスティック本体外面即ちインクスティック30の外面に被検知部150も作り込むことができる。この手法は、例えば、図示の例の如く凹部乃至孔として被検知部150を形成するのに適している。また、これらの図に例示した計数機構160はピボットアーム部164にフィンガ部162を取り付けた可動式検知機構を備えており、そのアーム部164の一端には、検知器170例えば光センサに作用するようフラグ部166が設けられている。これらフィンガ部162及びアーム部164は固定ピボットポイント165周りで一体回転するよう互いに固着されているので、図12及び図13に示すようにインクスティック30が送給チャネル28D内を送給方向161に向かって前進する間は概ね、インクスティック30の表面が計数機構160のフィンガ部162の先端によってなぞられることとなる。インクスティック30が前進していくと、いずれ、その表面の被検知部150がフィンガ部162の先端の位置に到来する。すると、計数機構160のフィンガ部162の先端は、重力、図示しないバネによる付勢力等の作用によって、その被検知部150の中に入り込む。これに伴い、フィンガ部162及びアーム部164は、ピボットポイント165周りでピボットする。光センサ170は、これを以て、インクスティック30が計数機構設置箇所を通過しつつある、ということを検知する。より具体的にいうと、図中の光センサ170は、光ビームを発する光源部172並びにこの光ビームを受光検知可能な方向及び距離にある光検知部174を備えており、それら光源部172及び光検知部174は、フィンガ部162の先端がインクスティック30の主面に当接しているとき(図12参照)フラグ部166により光ビームが遮られるよう配置されている。フラグ部166により光ビームが遮られている状態では、光センサ170の光検知部174は、光源部172から発せられる光ビームを検知することができない。この状態からインクスティック30が動いてその被検知部150が計数機構設置箇所に到来すると、フィンガ部162の先端が被検知部150たる凹部乃至孔の中に入り込み、それに伴いアーム部164が図中時計回り方向にピボットする。すると、図13に示すようにフラグ部166が光センサ170の外に出る。フラグ部166が光センサ170の外に出ると、光源部172から発せられる光ビームが光検知部174により検知される。インクスティック30が送給チャネル28Dに沿って更に動くと、フィンガ部162が被検知部150の外に押し出されてインクスティック30の主面に当接している状態に回帰する。それに伴ってアーム部64が図中反時計回り方向にピボットし、ひいてはフラグ部166が光センサ170内に再進入するので、光ビームが再び遮られて光源部172から発せられた光ビームが光検知部174まで届かなくなる。光センサ170は回路基板182を介してカウンタ180に接続されており、このカウンタ180は、アーム部164が動きフラグ部166が光センサ170を出入りした回数を、光センサ170の出力に基づき計数する。この計数の結果は、計数機構設置箇所を通過したインクスティック30の個数を表している。なお、カウンタ180は、電子化されているプリンタコントローラ70(図6参照)の一部として構成することもできるし、別体の部材として構成することもできる。
以上の例ではインクスティック側被検知部150をインクスティック30の頂部外面54に凹部乃至孔として形成してあるが、凹部や孔でなくてインクスティック30から出っ張った突起として形成することもできるし、また頂部外面54以外の外面に設けることもできる。更に、図示しないローラをフィンガ部162の先端に装着・配設し、それによってフィンガ部162とインクスティック30の表面との間の摩擦を減らすようにしてもよい。また、インクスティック30とその次のインクスティック30との隙間の上をフィンガ部162が通るときにアーム部164が大きく回りその結果光センサ170がトリガされてしまうことを防ぐには、フィンガ部162の先端を十分大きくしまたインクスティック30同士の隙間を十分狭く保てばよい。或いは逆に、インクスティック30とその次のインクスティック30との隙間が被検知部150として機能するように、即ちインクスティック30同士の隙間の到来・出退に応じてアーム部164が回転し光センサ170がトリガされるように、インクスティック30を形成してもよい。そして、通常時はフラグ部166が光センサ170の外に出ていて光源部172から光検知部174に至る光ビーム経路が成立しているが、被検知部150が通過するときにはアーム部164が動いてフラグ部166が光ビームを遮ることとなるよう、光センサ170及びフラグ部166を構成・配置することもできる。いわゆる当業者であれば、このような変形は本願による開示に基づき容易になし得るであろう。
図14〜図17に、インクスティック側被検知部150を検知する送給チャネル内インクスティック計数機構160の他の例、即ちインクスティック30の底部に形成された被検知部150を検知する構成を示す。この例における被検知部150は、インクスティック30の底部外面52上にある下部突出型インクスティック側ガイド部66に形成されている。また、図18に、図14〜図17に示した計数機構160向けのインクスティック30の例を示す。
図18に示されているインクスティック30は図9に示したインクスティック30とほぼ同じ構成であり、そのインクスティック側被検知部150が凹部であるのも変わりないが、被検知部150の形成箇所が下部突出型インクスティック側ガイド部66であるという点で異なっている。他方、図14〜図17に示されている送給チャネル内インクスティック計数機構160においては、アーム部とフィンガ部とが一体になってアーム一体型のフィンガ部162が構成されている。更に、この計数機構160はそのアームが図示しないバネ等の付勢機構によって付勢されそのフィンガ部162が送給チャネル28D内のインクスティック本体に押しつけられるように構成されているので、インクスティック30の前進に伴いフィンガ部162の先端がインクスティック30の表面をなぞることとなる。なぞる範囲には、インクスティック30から下方に突出するよう形成されているガイド部66と、図18に示すようにガイド部66に凹部(切欠)として形成されている被検知部150とが、含まれる。インクスティック30の表面をなぞっていく過程でフィンガ部162が被検知部150に行き当たったとき及びそこから退出したときには、計数機構160のアームが固定ピボットポイント165周りでピボットする。検知器170は、計数機構160におけるこうしたアームの動きを検知して、そのことを示す信号をカウンタ180に送る。この検知器170は例えば光センサとして構成することができる。その場合、例えば、フィンガ部162がインクスティック側ガイド部66に当接している間は計数機構160のアームが第1姿勢即ちそのフラグ部166が光センサ170内光ビーム経路を遮らない姿勢を採り、フィンガ部162が被検知部150即ち凹部に行き当たってアームが固定ピボットポイント165周りでピボットすると第2姿勢、即ちフラグ部166が光センサ170内光ビーム経路を遮る姿勢になるよう、構成するとよい。
なお、図示したインクスティック側被検知部150はインクスティック側ガイド部66の一端に設けられているが、これはガイド部66のどこの部位に設けてもかまわないし、ガイド部66以外に設けてもよい。例えば、インクスティック30の底部外面52のうちガイド部66とは別の箇所に設けてもよいし、底部外面52以外の外面に設けてもよい。また、インクスティック30の外面に突起を形成しこれを被検知部150としてもよい。更に、インクスティック30の外面のうち前部外面(端部外面60のうち前側のもの)が熔融板32Dに接触したとき被検知部150が検知されることとなるように、計数機構160を配置・構成してもよい。
更に、図示した光センサ170は送給チャネル内インクスティック計数機構160を介してインクスティック側被検知部150を検知する間接的光センサであったが、これに代えて又はこれと共に、被検知部15を直接検知する光センサを設けてもよい。この直接的光センサは、例えば、インクスティック側ガイド部66を差し挟むように光源部及び光検知部を配した構成とする。この構成においては、通常時は、光源部からガイド部66方向に発せられた光ビームが当該ガイド部66によりブロックされるので、ガイド部66を挟んで光ビーム経路の延長方向にある光検知部はこの光ビームを検知できないが、被検知部150が光源部の面前を通過するときには、それまで光ビームを遮っていたガイド部66が面前に存在しなくなるため光源部からの光ビームが光検知部に届く。こうした仕組みによっても、インクスティック30の通過を検知することができる。
また、図16に示すように、インクスティック送給チャネル28D内におけるインクスティック30のストックが尽きかけていることも、送給チャネル内インクスティック計数機構160によって検知することができる。これを実現するには、送給チャネル28Dに設けられているインクスティック追従部、例えばプッシュブロック34Dに、ガイド後続掃引部176及びプッシュブロック側被検知部178を設ければよい。これらのうちガイド後続掃引部176は、その送給チャネル28Dの下部にある案内レール40Dと少なくとも部分的に噛み合うよう、即ちこの部位に達したとき計数機構160のフィンガ部162が第1姿勢を採るよう、その輪郭を設定しておく。また、プッシュブロック側被検知部178は、案内レール40Dに当接しないよう、即ちこの部位ではフィンガ部162が第2姿勢を採るよう、そのプッシュブロック34の先端に凹部(切欠)として配置形成しておく。従って、送給チャネル28D内にある一連のインクスティック30のなかで最後尾に位置するインクスティック30の被検知部150に入ってからプッシュブロック34Dの被検知部178を出るまでの間、フィンガ部162は第2姿勢を保ち続ける。最後尾以外のインクスティック30の被検知部150に入ってからその次のインクスティック30のインクスティック側ガイド部66に達するまでフィンガ部162が第2姿勢を保つ期間と比べると、この期間は長い。他方で、カウンタ180には、インクスティック液化動作が持続的に実行されているときにフィンガ部162がどの程度の時間に亘り第2姿勢を採り続けるか、について、推定時間長情報がプログラミングされている。この推定時間長は、例えば、熔融板32Dの作動時間長についての情報と、熔融板32Dが作動しているときのインク液化速度推定値とに基づき、求めておく。この推定時間長と光センサ170の出力とをカウンタ180にて照合することによって、計数機構160によりストック不足を検知することができる。
更に、図17に示す構成の送給チャネル内インクスティック計数機構160によっても、そのプリンタ10のインクスティック送給チャネル28D内に装填されている固体インクスティック30のストックがほとんど尽きていることを検知して、ユーザに知らせることができる。即ち、この図の計数機構160及びプッシュブロック34Dは、フィンガ部162の先端を最後尾のインクスティック30の後端が通過したときに計数機構160のアームが動き、例えば第2姿勢から更に反時計方向に回って第3姿勢になるよう、配置及び構成されている。この図の計数機構160は、更に、第2の検知器177例えば光センサを有しており、そのアームが第3姿勢を採ったことがこの光センサ177によって検知されるように構成されている。具体的には、光センサ177内にはその光源部から光検知部へと光ビームが発せられており、光センサ177は、フラグ部166がこの光ビームを遮る位置に達したことを検知することによって、計数機構160のアームが第3姿勢になっていることを検知する。これによって、まもなくインクスティック30が尽きることが分かる。また、こうしてインク不足状態を検知する計数機構160の位置を、その送給チャネル28D内で先頭にあるインクスティック30の先端が熔融板32Dに接したときに第3姿勢即ち“インク切れ間近”を検知するような位置に設定しておけば、“インク切れ間近”が検知された時点でその送給チャネル28D内にあるインクスティック30が所定の整数個になる(即ち半端なインクスティックがない状態になる)。従って、その時点でプリンタコントローラ70により現在のインク滴平均サイズが判別済であれば、そのプリンタコントローラ70にて、その送給チャネル28D内のインクスティック30が完全に尽きるまでの間に何個のインク滴44を吐出できるかを、計算により求めることもできる。
以上述べた各種の例のように、対応するインクスティック送給チャネルに装填されているインクスティック30が尽きかけていることを検知・認識できる送給チャネル内インクスティック計数機構160を、そのプリンタ10の各送給チャネル28A〜28Dに設けることによって、そのプリンタ10においてどの色のインクスティック30が尽きかけているのかを、取り立ててプリンタ構成要素を増やすこと無しに、検知・識別することが可能になる。なお、従来のプリンタにおいては、送給チャネルのうちどれかでインクスティックが尽きかけていることは検知・認識できたが、どの送給チャネルにて当該インク不足状態が発生しているのかまでは識別できなかった。
送給チャネル内インクスティック通過個数計数方式としては、更に、熔融板32A〜32Dにより液化される段階でインクスティック30の個数を計数する方式、即ち到達個数計数方式を使用することもできる。この方式を採る場合、熔融板32A〜32Dの温度を計測する温度センサ例えばサーミスタ(後述の210等)を設ける。この温度センサは、例えば、インクスティック30の断面積変化を検知する手段として設けることも、インクスティック30を直接検知する手段として設けることもできる。インクスティック30のうち被検知部150が形成されている部分、例えば凹部又は孔が形成されている狭搾部分では、インクスティック素材によって満たされている断面積が他の部分と違っている(凹部又は孔の場合は狭くなっている)ため、この部分(例えば狭搾部分)が熔融板32A〜32Dに当接するに至るとその熔融板32A〜32Dの温度が変化(例えば上昇)する。断面積検知変化手段として設けられた温度センサは、例えばこうした温度変化を検知することによって、インクスティック30の断面積変化を検知する。
図19及び図20に、熔融板32A〜32Dにて液化されていくインクスティック30の個数を計数できるよう、インクスティック側被検知部150が熔融板32A〜32Dに達したときに生じる熔融板32A〜32Dの温度変化を検知する手段を設けた構成の例を示す。ここでは4番目のインクスティック送給チャネル28Dに設けられた熔融板32Dで例示しているが、他の送給チャネル28A〜28Cの熔融板32A〜32Cについてもそれぞれ同様の構成を設けることができる。熔融板温度を検知するための温度センサ210例えばサーミスタは、熔融板32D上の所定部分(当接部周辺;図示の例では当接部の上方)に取り付けられており、また、温度検知結果情報を送ることができるよう、図6に示したプリンタコントローラ70等の電子的制御モジュールに接続されている。熔融板32Dを加熱するためプリンタ10からその熔融板32Dにエネルギを供給する速度はほぼ一定であるので、熔融板32Dに送られるエネルギの量は、インクスティック30を連続的に液化させた場合の数値に換算することができる。その一方で、インクスティック基準断面積、即ち被検知部150を含まない部位におけるインクスティック30の送給方向直交方向断面積はほぼ一定である。従って、熔融板温度は液化プロセス中は概ね一定に保たれる。但し、各インクスティック30には被検知部150があり、図19及び図20から理解できるように、熔融板32Dの作用によってインクスティック30が液化され消耗していくといずれ、この被検知部形成部位が熔融板32Dに当接するに至る。被検知部形成部位におけるインクスティック30の送給方向直交方向断面積はそれ以外の部位におけるそれとは異なっているので、被検知部150を含む断面が熔融板32Dに当接するに至ると液化対象インク量が変化する。熔融板32Dに供給されるエネルギが一定であるから、液化対象インク量が変化するとその熔融板32Dの温度が変化する。例えば、図示の例のようにインクスティック本体に高さが低い部分を形成することによって凹部又は孔状の被検知部150を設けてある場合、被検知部断面が熔融板32Dに当接すると液化対象インク量が減少して熔融板温度が上昇する。サーミスタ210は、このように変化した熔融板温度を検知してその結果を示す情報を電子制御モジュールへと送る。電子制御モジュールは、サーミスタ210からの温度検知結果情報を解析することにより、被検知部150の存在を示すような温度変化が生じているかどうかを判別する。なお、被検知部150は、インクスティック30の各所に生じ得る小さな凹部や孔を電子制御モジュールが誤って被検知部150として計数してしまうことがないよう、十分大きくしておく。即ち、インクスティック30における被検知部断面積は、同じインクスティック30上で被検知部150から離れた場所にある部位の断面積とはっきり区別できるように、十分違う断面積にしておく。具体的には、送給方向161に直交する面におけるインクスティック断面積を、被検知部形成部位ではそれ以外の部位に対して少なくとも20%の差を有する面積にしておく。被検知部150を凹部又は孔として形成する例でいえば、これは、被検知部形成部位におけるインクスティック断面積をそれ以外の部位におけるインクスティック断面積に対して80%未満に抑えるということである。80%は一つの目安であり、より好ましくは75%未満、或いは更に66%(2/3)未満とし、最小で約50%とすることも十分に可能である。また、被検知部150には、インクスティック送給方向直交方向だけでなくインクスティック送給方向161に沿っても、ある程度の広がりを持たせておく。例えば、インクスティック30の送給方向寸法に対して約10%超の送給方向寸法を持たせるとよく、これは最大20〜25%まで拡げることもできる。このような断面積変化付き形状のインクスティック30は、例えば、プレス成形や圧縮成形等の手法で形成することができる。
電子制御モジュール例えばプリンタコントローラ70は、例えば各回温度計測値(例えば計測時点近傍でのピーク値)を記録し、過去1回又は複数回分の温度計測値の代表値例えば平均値や、そのばらつきを示す指標例えば標準偏差を求める。電子制御モジュールは、液化サイクルにて取得及び記録する温度計測値を、求めた平均値や標準偏差と照らし合わせる。例えば、過去10回分の平均値を求めてこれを最新の温度計測値と比較する。その結果、最新の温度計測値が(過去10回分の平均値)+(十分なマージン)を上回っていた場合、電子制御モジュールは、インクスティック側被検知部150が検知されたものと判断して、液化開始済インクスティック個数計数値をインクリメントする。過去所定回数分の温度計測値の代表値例えば平均値に対するマージンは、例えば、ある一定のしきい値として設定しておいてもよいし、或いは、当該過去所定回数分の温度計測値のばらつき指標を基準として随時定めてもよい。例えば標準偏差の3倍をマージンとする。
また、インクスティック送給チャネル28A〜28Dにてジャミングが発生したためその送給チャネル28A〜28D内のインクスティック30が熔融板32A〜32Dのうち対応するものにたどり着けなくなる場合がある。そうした場合に液化開始済インクスティック個数計数値が誤ってインクリメントされることを避けるには、熔融板32A〜32Dにインクスティック30が接していないことを検知しただけではインクスティック側被検知部150の到来と認識しないようにすればよい。例えば、サーミスタ210による検知結果が液化対象インク量不足を示し続けている期間を、電子制御モジュール例えばプリンタコントローラ70にて計測・判別するようにすればよい。即ち、本物の被検知部150が到来したときに生じる液化対象インク量不足期間の推定長に応じて設定した時間長と、計測した液化対象インク量不足期間の時間長とを比較し、後者が前者に対して長い場合(好ましくは更にその差が有意差である場合)に、液化開始済インクスティック個数計数値をインクリメントしない(或いはインクリメントした計数値を記録しない)ようにすればよい。そのような状況が発生した場合、電子制御モジュールからユーザに可視的又は可聴的警告メッセージを提示し、その送給チャネル28A〜28D内のインクスティック30にジャミング又はストック切れが生じていることを警告するようにしてもよい。また、電子制御モジュールが計測実施時点を記録するように構成されていれば、温度計測値が被検知部150の存在を示すに至った第1の計測実施時点と、当該第1の時点より後の第2の計測実施時点とに於ける温度計測値を利用して、電子制御モジュールに上掲の判別及び警告を行わせることができる。例えば、第1の計測実施時点と第2の計測実施時点の間の時間間隔が本物の被検知部150によって生じる時間間隔の推定値を上回っており、且つ、第2の計測実施時点における温度計測値がなお被検知部150の存在を示している場合、液化開始済インクスティック個数計数値をインクリメントせずに電子制御モジュールが警告メッセージを提示するようにする。温度計測値が被検知部150の存在を示す(かのようにみえる)温度計測値であるかどうかの判別は、様々な基準で行うことができる。例えば、第2の計測実施時点における温度計測値が過去所定回数分の温度計測値の平均値よりも第1の計測実施時点における温度計測値の方に近い場合、第2の計測時点でもなお被検知部150が存在している(かの如き状況である)と判別できる。また、第2の計測実施時点における温度計測値と過去所定回数分の温度計測値の平均値との間に所定許容範囲を上回る差がある場合も、同様の状況と判別できる。
更に、インクスティック送給系29は、例えば、プッシュブロック34A〜34Dを介してインクスティック30を横方向に付勢し、インクスティック送給チャネル28A〜28Dの底面の傾斜に沿って熔融板32A〜32D方向に滑落させるように、構成されている。こうした構成に限らず、インクスティック送給系29においては、熔融板32A〜32D上におけるインクスティック位置が液化の進行に伴い変化してしまうことがある。従って、これを防ぐ助力になる付勢機構を送給チャネル28A〜28D内に設けるとよい。即ち、熔融板32A〜32Dに対するインクスティック30の位置が変化するとサーミスタ210による温度検知結果が変化し、インクスティック側被検知部150の検知が妨げられることとなりかねないので、例えば、インクスティック液化に伴う位置変化を防ぐ助力用付勢機構として、熔融板32A〜32Dに角度を付けるようにする。熔融板32A〜32Dに付ける角度は、インクスティック30が熔融板32A〜32Dの表面に沿い持ち上がることが妨げられるような角度とする。具体的には、熔融板32A〜32Dの下端位置が送給チャネル28A〜28D内で同じ熔融板32A〜32Dの上端位置より下流側に位置することとなるような傾きを、熔融板32A〜32Dに付ける。熔融板32A〜32Dの傾き角は、送給チャネル28A〜28D内の案内レール40A〜40Dに対して例えば80〜85°、より好ましくは85°とする。
図21及び図22に、そのインクスティック側被検知部150の構成が異なるインクスティック30の例を示す。これらの例においては、インクスティック送給方向161に沿った被検知部150の長さが、被検知部150との当接により温度が変化している時間長を検知できるように設定されている。また、何れの例における被検知部150もそれぞれ所定の方向に沿ってインクスティック30の両端に跨っている。例えば図22に例示したインクスティック30では、インクスティック送給チャネル28A〜28D内に装填したときに送給方向161にほぼ直交することとなる方向に沿って、且つインクスティック本体の頂部外面54でその全幅に亘り延びてこれを横切るよう、被検知部150が形成されている。これらの例のように被検知部150をその両端に開通させておくこと、或いは少なくとも一端に開通させておくことにより、被検知部150が液化したインクによって早期に満たされてしまいサーミスタ210による被検知部存否検知判別が妨げられてしまうことを、防ぐことができる。なお、これらの例における被検知部150も、凹部ではなく突起(断面積拡張部)として設けることができる。いわゆる当業者であれば本願による開示に基づきこのことを理解できるであろう。断面積拡張部を被検知部150として使用する場合、熔融板32A〜32Dが被検知部150を含む断面に当接したとき液化対象インク量が増しその液化にエネルギが費やされて熔融板温度が低下することを、検知するようにする。
図23にまた別の構成を示す。この図に示す構成においては、インクスティック30上の液化対象部位の温度を直接計測するため、熔融板32D上のインクスティック液化用部位に、温度センサ222例えばサーミスタが埋め込まれている(ここでは熔融板32Dを例にしているが他の熔融板32A〜32Cについても同様である)。直接温度計測用の温度センサ222としてサーミスタを設ける場合、そのサーミスタ222は、例えば、熔融板32Dの外面のうちインクスティック当接側の面とは逆側を向いている面に設ける。このサーミスタ222には突起を設けておきその突起を熔融板32Dに貫通させる。更に、この突起の位置、形状、寸法等は、熔融板32Dに押しつけられて液化中のインクスティック30に当接することとなるよう、またそのインクスティック30のインクスティック側被検知部150にもいずれ面することとなるよう、設定する。
電子制御モジュール例えばプリンタコントローラ70は、まずは、第2サーミスタ222の温度がやや高めの温度例えば150℃になるように熔融板32Dの温度を上昇させる。図示の例では、インクスティック30の液化対象部位の温度が検知されるよう熔融板32D上に第2サーミスタ222が配置されているため、加熱によってインクスティック素材が液化し始めると第2サーミスタ222による温度検知結果がインク融点例えば約110℃まで下がる。また、図示のインクスティック30においてはそのインクスティック側被検知部150が凹部又は孔として形成されているため、液化の進行に伴いインクスティック30の被検知部150が直接式温度センサたる第2サーミスタ222に行き当たると、この第2サーミスタ222の温度は再び上昇して高めの温度例えば150℃に戻る。第2サーミスタ222による温度検知結果を示す情報は、信号路224を通って電子制御モジュール例えばプリンタコントローラ70に送られる。第1サーミスタ210も、熔融板32Dに係る温度検知結果情報を送る。電子制御モジュールは、一種類又は複数種類の解析アルゴリズムを使用して、サーミスタ210又は222によって捕捉された温度変化が本当に被検知部150の存在を示しているのかどうかを判別し、示していると判別した場合に限り液化開始済インクスティック個数計数値をインクリメントする。この判別には、最新の温度計測値を従前の温度計測値と比較するアルゴリズム、例えば最新の温度計測値が過去何回分かの温度計測値の平均値に対して有意差を有しているかどうかを調べるアルゴリズム等の解析アルゴリズムを、使用することができる。
サーミスタ222による直接温度計測ひいてはその結果を利用した判別は、インクスティック側被検知部150が設けられている部位におけるインクスティック断面積と、他の部位におけるインクスティック断面積とが同じであっても、成功裡に実施することができる。例えば、図23に例示した構成も、インクスティック30の被検知部150が凹部又は孔として形成されているという点で、先に示した幾つかの例と変わりがない。しかし、到来時にこの被検知部150に面することとなるよう配置されたサーミスタ222によって、被検知部150たる凹部又は孔の有無が直接に(即ち面積差に頼らずに)検知されるため、この凹部又は孔を設けたことによる断面積縮小分を補うような突起が被検知部150と同じ断面上に設けられていても、被検知部150を検知することができる。即ち、インクスティック30の形状面での制約が緩くなる。
また、直接式温度センサ222を配置する位置を、熔融板32D上でインクスティック本体と当接しない部位にすることもできる。即ち、インクスティック側被検知部150がインクスティック本体から突出する部分として設けられている場合、インクスティック本体とは接触することがないが被検知部150たる突起には接触することとなるように、直接式温度センサ222を構成及び配置することができる。
また、各インクスティック30にインクスティック側被検知部150を追加し、送給チャネル内インクスティック計数機構160も然るべく構成することにより、プリンタ10におけるインク消費量検知判別頻度を高めることができる。即ち、インクスティック送給チャネル28A〜28D内に装填されるインクスティック30それぞれに、複数個の被検知部150(次に述べる例での150A及び150B)を設けるようにしてもよい。1個のインクスティック30に複数個の被検知部150を設けた場合、そのインクスティック30が送給方向161に沿ってその送給チャネル28A〜28D内を動き計数機構設置箇所を通過していく間に、当該計数機構160が複数回作動することとなる。従って、計数機構160が作動してから次に作動するまでの間に送給チャネル内計数機構設置箇所を通過するインクスティック素材の質量が略一定になるように、それら複数個の被検知部150を配置するとよい。
図24に示す例は、図11〜図13に示されていたものと同様の構成を有する機械式の送給チャネル内インクスティック計数機構160を使用し、且つ各インクスティック30の外面にそれぞれ複数個のインクスティック側被検知部150を形成した例である。この図の例では各インクスティック30に設けた被検知部150の個数が2個であるが、これは別の個数とすることもできる。また、図示の例では、インクスティック本体上における送給方向沿い間隔が一定になるように、即ち被検知部150の検知から次の被検知部150の検知までの間に計数機構160の面前を通過していくインクスティック素材質量がどの被検知部対をとっても一定になるように、各被検知部150が設けられている。インクスティック本体の前部外面(端部外面60のうち前寄りのもの)に近い方の被検知部を150A、後部外面(端部外面60のうち後寄りのもの)に近い方の被検知部を150Bで表すこととすると、インクスティック30上における被検知部150の位置は、より詳細には、同一インクスティック30上における被検知部150A・被検知部150B間インクスティック素材質量と、先行するインクスティック30上に形成された被検知部150Bと後続するインクスティック30上に形成された被検知部150Aの間にあるインクスティック素材質量とが、同一になるように設定されている。このように間隔が設定されているため、計数機構160により検知される各回の被検知部通過を以て、仮想的インクスティック片(被検知部位置でインクスティック30を仮想的に分割したもの;その大きさは各インクスティック30にある被検知部150の個数により変わる)の通過として検知し、当該仮想的インクスティック片の通過個数を計数することができる。この仮想的インクスティック片通過個数計数を実行できるようにするため、図示の例では、前寄りの被検知部150Aからインクスティック30の前部外面までの距離191に後寄りの被検知部150Bから後部外面(前部外面と逆側の面)までの距離193を加算した長さが、送給方向161に沿った隣接被検知部間距離195と等しくなるように、距離195に対して距離191及び193が短めに設定されている。また、図示の例では各インクスティック30上に2個の被検知部150A及び150Bが設けられているが、送給方向161に沿ってこれらに並ぶよう更なる被検知部150を追加する場合も、隣接被検知部間距離195が前方距離191と後方距離193の和に等しいという関係を保ちつつ、どの隣接被検知部対をとっても被検知部間距離195が一定になるようにする。また、各被検知部150は、送給方向161に沿って互いに等しい寸法とする。
インクスティック30の通過回数をその一部質量の通過回数として計数するこの手法は、インクスティック30における長手方向(送給方向161)に沿った質量分布が一定でない場合、例えばその断面積やインクスティック素材密度が一定でないためインクスティック30における単位移動距離当たりの質量が一定でない場合にも、好適に使用できる。そういった場合にこの手法を使用するには、例えば、長手方向(送給方向161)における被検知部間隔を断面積や密度の違いに応じて変えればよい。即ち、そのインクスティック30の長手方向(送給方向161)に沿ったインクスティック側被検知部150の間隔を、計数機構160のアーム部164の作動からその次の作動までの間に計数機構設置箇所を通過していくインクスティック素材質量が常に一定になるよう、言い換えれば各被検知部150の先端辺とその次の被検知部150の先端辺の間にあるインクスティック素材質量が常に一定になるよう、長手方向被検知部間隔を断面積や密度の違いに応じて変えればよい。
また、インクスティック30の通過回数をその一部質量の通過回数として計数する手法を用いることにより、プリンタ10による校正プロセス(図8参照)実行時にインクスティック30まるまる1個が液化されることを待つ必要がなくなるだけでなく、ノズルパージその他のプリントヘッド保守動作が実行されてからその次に実行されるまでの短い期間でも液化開始済インクスティック個数計数値を取得することが可能になるという点で、プリンタ10の性能向上につながるものである。
図25に、図14〜図17に示した送給チャネル内インクスティック計数機構160を用い、インクスティック30の一部質量の通過を検知及び計数できるようにした構成を示す。この図の構成においては、インクスティック30に複数個のインクスティック側被検知部150A及び150Bを設け、それらを計数機構160によって検知及び計数するようにしている。具体的には、各被検知部150A及び150Bはそのインクスティック30上のインクスティック側ガイド部66に沿って等間隔で形成されている。より詳細には、同じインクスティック30上に形成されている被検知部150A・被検知部150B間の間隔と、隣同士のインクスティック30上に形成されていて送給方向161に沿って隣り合っている被検知部150A・被検知部150B間の間隔とが、共に同じ距離197になるよう、インクスティック送給方向161に沿った被検知部間隔が設定されている。被検知部間隔がこのように設定されているため、計数機構160により被検知部150を検知することで、インクスティック30の一部質量(各インクスティック30の全質量と各インクスティック30に設けられている被検知部150の個数によって決まる質量)の通過を検知することができる。また、この図に示した例では、被検知部150のうち後部外面寄りにある被検知部150Bがインクスティック本体の後端に直面しており、被検知部150Bとインクスティック本体後端との間の距離が0である。更に、インクスティック30の前端から前部外面寄りの被検知部150Aまでの距離191は、被検知部150Aと被検知部150Bとの間の距離195と等しい。加えて、各被検知部150A及び150Bの送給方向寸法は同じ寸法197である。従って、被検知部150Aの先端辺と被検知部150Bの先端辺の間にあるインクスティック素材の質量、即ちインクスティック30が送給方向161に沿って動いていくときに計数機構160による検知と検知の間に計数機構設置箇所を通過する質量が、常に一定になる。そして、この図に示した構成に適するインクスティック30の構成を図26に示す。
いわゆる当業者であれば認識できるように、以上説明した構成を変形し、前部外面寄りのインクスティック側被検知部150Aをそのインクスティック30の前端に直面させ、後部外面寄りの被検知部150Bとそのインクスティック30の後端との間に距離を設けた構成とすることも、可能である。いわゆる当業者であればこれも認識できるように、先に説明した構成を変形し、被検知部150Aをそのインクスティック30の前端にまた被検知部150Bを同じインクスティック30の後端にそれぞれ直面させた構成とすること、即ち先行するインクスティック30の被検知部150Bと後続のインクスティック30の被検知部150Aとがひとつながりの被検知部として送給チャネル内インクスティック計数機構160により検知される構成とすることも、可能である。その場合、被検知部150Aと被検知部150Bとの間、即ちインクスティック30の中寄り部位に何個かの被検知部150を設けることもできる。被検知部150A及び150Bの送給方向寸法は、当該中寄りの被検知部150の送給方向寸法の1/2とする。
図27に、複数個のインクスティック側被検知部150A及び150Bを有するインクスティック30の例を示す。このインクスティック30は、被検知部150が熔融板32A〜32Dに行き当たったときに生じる熔融板温度変化を検知する構成、例えば図19及び図20又は図23に示した構成での使用に適するものである。この図の例では、被検知部150A・150Bの同一辺間にあるインクスティック素材質量が一定になるようにしてある。
以上説明した事項のうち、プリンタ10における送給チャネル内インクスティック計数手法については、プリンタ10にコンフィギュレーション機能を組み込んでおくとよい。即ち、ユーザ、システム管理者、サービス担当技術者等による操作・指示で検知動作や計数動作の内容を設定・変更・調整できるようにしておくとよい。このようなコンフィギュレーション機能が設けられていれば、例えば使用するインクスティック30上に設けられているインクスティック側被検知部150の個数等、使用するインクスティック30の種類に応じてプリンタ10の側を調整することができ、ひいては様々な種類のインクスティック30を使用できるプリンタ10を実現することができる。また、こうしたコンフィギュレーション機能は様々な形態で実現できる。例えば、フロントパネルディスプレイスクリーン16やボタン18を用いた一連の操作に応じてコンフィギュレーション動作を実行させる形態でもよいし、そのプリンタ10の接続先コンピュータにインストールされているプリンタドライバからの指示に応じてコンフィギュレーション動作を実行させる形態でもよい。
本発明は、その固体インク送給系のインクスティック送給チャネルに細長い案内レールが設けられた相変化型インクジェットプリンタにて使用されるインクスティックに係る発明として、捉えることができる。即ち、例えば、その本体が立体的外形を有しており、当該インクスティック本体の外面には細長いインクスティック側ガイド部が設けられており、インクスティック側ガイド部にはインクスティック本体の外面に沿って細長い突起が形成されており、この細長い突起にはインクスティック側被検知部となる切欠、凹部又は孔が形成されたインクスティックに係る発明として、捉えることができる。インクスティック本体は、例えば、本インクスティックを装填方向沿いにインクススティック送給チャネル内へと装填でき、更に装填方向に略直交する送給方向沿いに本インクスティックをインクスティック送給チャネル内で動かせるよう、構成する。インクスティック側ガイド部は、例えば、本インクスティックをインクスティック送給チャネル内に装填したときインクスティック側ガイド部がインクスティック送給チャネル内の案内レールと接触して案内レールが本インクスティックを負うこととなるように構成し、またその形状は、例えば、送給方向に沿い本インクスティックが動いていくときインクスティック側ガイド部が案内レールと連携して本インクスティックが固体インク送給チャネル沿いに案内されることとなるよう、設定する。
本インクスティックにおけるインクスティック側ガイド部の横方向位置、即ち送給方向及び装填方向と略直交する横方向における位置は、好ましくは、インクスティック本体の重心の横方向位置から片側に寄った位置とする。
本発明は、その固体インク送給系のインクスティック送給チャネルに細長い案内レールが設けられた相変化型インクジェットプリンタにて使用されるインクスティックに係る発明として、捉えることができる。即ち、例えば、その横方向に広がりを持ったインクスティック本体と、その横方向位置がインクスティック本体の重心の横方向位置からずれ側端面寄りにある第1及び第2インクスティック側ガイド部と、インクスティック送給チャネル内の可動部付き計数手段と当接するよう第1及び第2インクスティック側ガイド部のうち一方に設けられたインクスティック側被検知部と、を備えるインクスティックに係る発明として、捉えることができる。インクスティック側ガイド部の横方向位置は、例えば、インクスティック本体の重心の横方向位置から見て第1インクスティック側ガイド部の重心が一方の側端面寄りにまた第2インクスティック側ガイド部の重心が他方の側端面寄りになるよう、設定する。第1インクスティック側ガイド部は、例えば、本インクスティックが固体インク送給系のインクスティック送給チャネル内に置かれたときにそのインクスティック送給チャネル内の案内レールと接触し案内レールが本インクスティックを負うこととなるよう、インクスティック本体の底部の一部として形成する。
10 インクジェットプリンタ、28A〜28D インクスティック送給チャネル、29 インクスティック送給系、30 インクスティック、40A〜40D 送給チャネル内案内レール、48A〜48D 二次ガイド面、52,54,56,58A,60 インクスティックの底部外面,頂部外面,側部外面,底部側辺,端部外面、66 下部突出型インクスティック側ガイド部、150,150A,150B 被検知部(凹部/孔)、160 インクスティック計数機構、161 送給/移送方向。