第1の発明は、調理物を加熱する調理容器と、前記調理容器を載置するトッププレートと、前記調理容器を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記トッププレートを介して調理容器から放射された赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光したエネルギより前記調理容器の温度を換算する温度検出手段と、前記調理容器の置かれた周囲の照度を検出する照度センサと、前記赤外線センサの受光したエネルギと前記照度センサの受光したエネルギから前記調理容器の有無を判別し、さらに前記調理容器の正確な温度を検出可能か否かを判定する調理容器検出手段と、前記調理容器検出手段の検出結果と前記温度検出手段の温度情報により前記加熱コイルの高周波電流を制御して前記調理容器の加熱電力量を制御する加熱制御手段とを備え、前記調理容器検出手段によって調理容器が検出されなかった場合、前記加熱制御手段は調理容器の加熱を停止または加熱電力量を抑制するように制御を行う誘導加熱装置とすることにより、赤外線センサに外乱光が入って検出温度の誤差が大きいと判断される場合には加熱を停止または加熱電力量を抑制することによって調理容器が使用者の意図しない程に高温となることを防ぐことが可能となる。
第2の発明は、照度センサの感度波長域を可視光域のみとする請求項1に記載の誘導加熱装置とすることにより、調理容器1からの赤外線の影響を排除し、調理容器1の周囲の照度だけを正確に測定することが可能となる。
第3の発明は、赤外線センサの感度波長域は、可視光域を含まないようにした請求項1または2に記載の誘導加熱装置とすることにより、照度センサで検出されるような可視光の外乱光の影響を排除し、調理容器1からの赤外線だけを正確に測定することが可能となる。
第4の発明は、赤外線センサと照度センサの光軸を同一方向とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置とすることにより、赤外線センサの検出域の照度をより正確に測定することが可能となり、調理容器の検出精度を高めることができる。
第5の発明は、報知手段を備え、調理容器検出手段が調理容器がないことを判別した場合、あるいは調理容器の有無の判別がつかない場合、前記報知手段はその旨を誘導加熱装置の使用者に報知する請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱装置とすることにより、調理容器が赤外線センサの検出域にない場合は正確な温度測定が困難なため、使用者に報知することによって調理容器を赤外線センサの検出域上に置き直すあるいは所定の加熱ができないことを使用者に知らせることができる。
第6の発明は、調理容器からの赤外線を導く導光手段をトッププレートと赤外線センサの間に設けた請求項1に記載の誘導加熱装置とすることにより、調理容器からの赤外線エネルギを外乱光の影響を受けにくくして赤外線センサに受光させることができる。
第7の発明は、照度センサは導光手段外に設置する請求項6に記載の誘導加熱装置とすることにより、構成上の設計が容易となり、かつ安価に製造することができる。
第8の発明は、照度センサの検出した照度が所定の値よりも明るく、かつ赤外線センサの受光したエネルギが所定よりも低い場合は、調理容器検出手段は調理容器があるものと判断する請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導加熱装置とすることにより、赤外線センサの検出域を調理容器の底部が覆っているものと判断できるため、赤外線センサは外乱光の影響を受けることなく調理容器からの赤外線エネルギを受光することができるので正確に温度を検出することができる。
第9の発明は、照度センサの検出した照度が所定の値よりも暗く、かつ赤外線センサの受光したエネルギが所定よりも高い場合は、調理容器検出手段は調理容器があるものと判断する請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導加熱装置とすることにより、赤外線センサの検出域を調理容器の底部が覆っているものと判断できるため、赤外線センサは外乱光の影響を受けることなく調理容器からの赤外線エネルギを受光することができるので正確に温度を検出することができる。
第10の発明は、照度センサの検出した照度が所定の値よりも暗く、かつ赤外線センサの受光したエネルギが所定よりも低い場合は、報知手段は調理容器の有無を検出できないことを報知する請求項1〜7のいずれか1項に記載の誘導加熱装置とすることにより、赤外線センサの検出域を調理容器の底部が覆っているかどうかの判断がつかないため、このまま加熱を開始あるいは継続すると温度検知手段は正確な温度を検知することができず、その不正確な温度情報を元に加熱制御を行うと調理容器が使用者の意図しない高温となって危険なため、その旨を報知することによって安全性を高めることができる。
第11の発明は、加熱制御手段が加熱を開始する前に少なくとも1回は、調理容器検出手段は、調理容器の検出を行う請求項1〜10に記載の誘導加熱装置とすることにより、加熱を始めても正確に温度を検出できるか否かを判別してから加熱を開始するため、安全性の高い誘導加熱装置を実現することができる。
第12の発明は、加熱制御手段が調理容器を加熱している際、調理容器検出手段が調理容器がないことを判別した場合、加熱制御手段は加熱を停止または加熱電力量を抑制させるまでに時間差を設ける請求項1〜11のいずれか1項に記載の誘導加熱装置とすることにより、調理中に調理容器の位置が変わり、調理容器がないと判定される条件が揃った場合でもまた元の位置に戻される可能性があるため、すぐに加熱出力を変更せずに調理容器が元の位置に戻ったか否かを判別するための時間を設けて使い勝手の低下を防ぐことができる。
第13の発明は、調理容器検出手段は、時間差内に少なくとも1回調理容器の検出を行う請求項12に記載の誘導加熱装置とすることにより、調理容器が元の位置に戻ったか否かの判定を複数回判定し、一時的な状態で判断しないようにすることで誤動作を避けることができる。
第14の発明は、加熱コイルを半径方向に分割した箇所を設け、そのコイルの間隙部に赤外線センサを配置する請求項1に記載の誘導加熱装置とすることにより、調理容器底部の温度分布の中でも温度の高いところを測定することができ、調理容器が油の発火する危険な温度域になることを検出する際の誤差を小さくすることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱装置の概略構成図を示すものである。
図1において、1は調理容器、2は調理容器1が載置されるトッププレート、3はこのトッププレート2の下方に配設された加熱コイル、4は調理容器1の底部に対向して配置した赤外線センサ、5は赤外線センサ4の受光エネルギから温度を換算する温度検出手段、6は調理容器1の置かれた周囲の照度を検出する照度センサ、7は赤外線センサ4の受光したエネルギと照度センサ6の受光したエネルギから調理容器1の有無を判別する調理容器検出手段、8は加熱コイル3に高周波電流を流して調理容器1を誘導加熱する加熱制御手段である。
以上のように構成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
まず、図示していないが加熱制御手段8に接続された操作部などによって誘導加熱装置に加熱開始の指示が発せられると、加熱制御手段8は接続されている加熱コイル3に高周波電流を供給する。調理容器1は、加熱コイル3の上方にあるトッププレート2に載置され、加熱コイル3とは磁気結合している状態にある。高周波電流を供給された加熱コイル3からは高周波磁界が発生し、調理容器1内には電磁誘導による渦電流が流れ、そのジュール熱のために調理容器1が加熱されるものである。
赤外線センサ4は、トッププレート2を介して調理容器1から放射されてくる赤外線を受光し、その情報は温度検出手段5に送られる。温度検出手段5は、赤外線センサ4の受光したエネルギ量より調理容器1の温度を演算し、その温度情報を加熱制御手段8に送る。
加熱制御手段8は、使用者の指定した加熱電力量に制御する一方、温度検出手段5から得た温度情報によっては加熱電力量を抑制、あるいは加熱停止を行う。例えば、揚げ物調理を行うモードで加熱動作を開始した場合には、調理容器1を所定の温度で維持するように加熱電力量を制御し、あるいは通常の加熱を行っていた際に調理容器1が異常な高温になっている場合に加熱電力量を抑制、あるいは加熱停止を行い、油発火等がないように安全性を確保している。加熱制御手段8と温度検出手段5は一体のものであってもよく、DSPやマイコン等が使用されることが多いがそれに限定するものではなく、カスタムICのようなものであっても構わない。
ここで調理容器1は加熱コイル3と磁気結合するものであり、通常は磁性材料製のものである。非磁性で低抵抗な金属である銅やアルミなどは通常の誘導加熱装置では加熱できないが、最近は低抵抗金属でも加熱できる方式が実用化されており、その方式の誘導加熱装置であれば低抵抗金属製の調理容器であっても構わない。また、調理容器1の径が小さい場合やトッププレート2と調理容器1の間に大きなギャップがあると加熱することができないような設計となっていることが多い。
トッププレート2は誘導加熱装置の外観を形成する一部であり、調理容器1を載置するところである。トッププレート2は耐熱強化ガラス等で作られたもので、平面となっていることから掃除のし易さや美観といった面で優れており、誘導加熱装置の長所の一つとなっている。
赤外線センサ4は、調理容器1から放射されてくる赤外線を受光するものである。赤外線センサ4は複数個設けても良い。従来の誘導加熱装置では、トッププレート2の下部と接触するように取り付けられた熱電対やサーミスタなどの接触式の温度センサを使用していた。その場合、調理容器1の底部とトッププレート2が接触している部分の熱伝導と輻射熱によってトッププレート2の上部が温められ、その熱がトッププレート2の下部の方に伝導し、その温度を計測することになる。この場合はトッププレート2を介して間接的に調理容器1の底部の温度を測定することになるため、調理容器1とトッププレート2の接触面積の大きさやトッププレート2の熱容量などに左右されて調理容器1の温度変動に対する応答性が悪いという課題があった。しかし赤外線センサ4の場合には、調理容器1からの赤外線を直接赤外線センサ4で受光するため、調理容器1とトッププレート2の接触面積の大きさやトッププレート2の熱容量に左右されることなく調理容器1の温度変動に対してすぐに反応するという利点がある。
これにより、例えば調理容器1の中に調理物が入っていない状態で加熱を行った場合、調理容器1は急激に温度が上昇する。その中に油を滴下すると発火する可能性があるため、調理容器1が油の発火点以上とならないような安全装置がある。従来の誘導加熱装置では上述のように調理容器1の温度変動に対して遅れがあるため、十分に余裕を持たせた設計として発火を防止している。しかしながら、その機能がフライパンの予熱等でも機能する場合があり、使い勝手を悪くしている場合があった。しかし、赤外線センサ4を使用した場合には熱応答の遅れに対する余裕を見る必要がないため、このような状況を回避することができる。
温度検出手段5は、赤外線センサ4の出力を温度に換算するものである。赤外線センサ4が受光したエネルギは、そのエネルギによって決まる電圧あるいは電流あるいは周波数などに変換されて出力される。温度検出手段5ではそれらの物理量から温度に変換し、加熱電力量の制御に必要な情報として利用される。温度検出手段5は赤外線センサ4の物理量を入力する機能と、物理量を温度に換算する演算機能と、換算した温度を出力する機能をもつ。換算された温度情報は加熱制御手段8に送られ、その温度に応じて様々な制御が行われる。
本方式は、赤外線センサ4の検出域は全て調理容器1の底部が覆っており、赤外線センサ4が検出するエネルギは全て調理容器1からの赤外線エネルギである場合は問題ない。しかしながら、赤外線センサ4の検出域に調理容器1の底部が覆っていない部分が存在すると、その部分より外乱光が侵入し、赤外線センサ4はその外乱光のエネルギを受光してしまう。外乱光のエネルギは、調理容器1から放射する赤外線エネルギよりも大きいため、調理容器1からの赤外線エネルギは検出不能となる。
このような状況を回避するために本発明では、調理容器1の置かれた周囲の照度を検出する照度センサ6と、赤外線センサ4の受光したエネルギと照度センサ6の受光したエネルギから調理容器1の有無を判別する調理容器検出手段8を設ける誘導加熱装置としたものである。
照度センサ6は、調理容器1の置かれた周囲の照度を検出するためのものである。照度センサ6としては人間の視感度に合わせた特性を持つものもあるが、特にそういうものである必要はない。
調理容器検出手段8は、赤外線センサ4の受光したエネルギと照度センサ6の受光したエネルギから調理容器1の有無を判別する。
調理容器の検出方法について図2を用いて説明する。
STEP1では、まず赤外線センサ4の受光したエネルギを測定する。測定した値をV1とする。
STEP2では、照度センサ6の受光したエネルギを測定する。測定した値をV2とする。
STEP3では、赤外線センサ4で測定したV1と判定値αの大小比較を行う。判定値αは、赤外線センサ4を暗状態に置き外乱光のエネルギを受けていない状態で、なおかつ調理容器1が所定の温度(例えば、25度)のときに赤外線センサ4が検出するエネルギに、バラツキの要素と余裕分とを足した値に設定する。
V1>αとなった場合、これはつまり調理容器1が所定の温度より大きい場合に放出される赤外線エネルギをうけているか、外乱光のエネルギを受けているために暗状態のエネルギよりも大となったと考えることができる。
尚、所定の温度とは25度としたが、対象物の温度が赤外線センサ4が検出できる赤外線エネルギを放出する温度以下であれば何度でもよい。
STEP4では、照度センサ6で測定したV2と判定値βの大小比較を行う。判定値βは、図3を用いて説明する。赤外線センサ4を暗状態に置いたときの赤外線センサ4の受光したエネルギaに対して、赤外線センサ4をある照度γの環境に置いたときの赤外線センサ4の受光したエネルギbとの間に差違(b−a)が生じたことを検出できるレベルまで照度を上げ、赤外線センサ4のエネルギがbとなったときの照度γにバラツキの要素と余裕分を足した値としてβを設定する。V2>βとなった場合、調理容器1が置かれている周囲の照度が十分にあるため、赤外線センサ4の検出域を調理容器1の底部が覆っていなければそこから調理容器1の周囲の光が外乱光として赤外線センサ4の検出域に入り、赤外線センサ4はそれを受光して受光エネルギが高くなるような状態に赤外線センサ4が置かれていると考えることができる。
STEP5は、V1>α、V2<βという条件であるので、V2<βより周囲は十分に暗い状態であり、周囲から外乱光が入りうる状況ではないことがわかる。さらに、V1>αから調理容器1からの赤外線エネルギを受光していると考えられる。つまり、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っており、調理容器1からの赤外線エネルギを受光できる状態であるため調理容器1は有りと判定し、調理容器1を加熱しても正確に赤外線センサ4の受光したエネルギから温度検出手段5が温度を算出ことができる。このとき、赤外線センサ4は既に調理容器1からの赤外線エネルギを受光しているため、調理容器1は高温となっていることがわかる。
STEP6は、V1>α、V2>βという条件であるので、V2>βより周囲は十分に明るい状態であり、周囲から外乱光が入りうる状況であることがわかる。V1>αから調理容器1の周囲の光が外乱光として侵入して赤外線エネルギを受光している可能性があると考えられる。つまり、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っていない可能性があり、調理容器1からの赤外線エネルギを以外の光によってS/N比が悪くなり正確に温度を検出できない可能性がある。したがって、このような状態では調理容器1は無いと判定し、調理容器1の加熱を停止または加熱電力量を抑制するように制御を行う。
または、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っており、調理容器1が所定の温度以上となっているために赤外線センサ4は赤外線エネルギを受光している可能性がある。これらを互いに見分けることはできないため、調理容器1の有無を判定することができない旨を誘導加熱装置の使用者に通知するという制御であっても良い。
STEP7はSTEP4と同様のため、説明は省略する。
STEP8は、V1<α、V2>βという条件であるので、V2>βより周囲は十分に明るい状態であり、周囲から外乱光が入りうる状況であることがわかる。V1<αから赤外線センサ4は暗状態に置かれた状態と判断できる。つまり、周囲の外乱光を赤外線センサ4が受光してしまう可能性があるものの、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っているために外乱光が遮断されているため、調理容器1からの赤外線エネルギを受光できる状態であるため調理容器1は有りと判定し、調理容器1を加熱しても正確に赤外線センサ4の受光したエネルギから温度検出手段5が温度を算出ことができる。このとき、調理容器1は低温であるため、赤外線エネルギは放射されていないことがわかる。
STEP9は、V1<α、V2<βという条件であるので、V2<βより周囲は十分に暗い状態であり、周囲から外乱光が入りうる状況ではないことがわかる。V1<αから赤外線センサ4は暗状態に置かれた状態と同じである。つまり、赤外線センサ4は調理容器1からの赤外線エネルギも周囲の外乱光のエネルギも受光していないが、周囲からの外乱光は無いことがわかっているため、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っていない可能性があり、調理容器1が有るとは断定できない状況にある。したがって、このような状態では調理容器1の有無を判定することができないため、その旨を誘導加熱装置の使用者に通知する、あるいは安全を優先して調理容器1の加熱を停止または加熱電力量を抑制するように制御を行う等の設計思想の判断が必要となる。
こうすることによって、従来の赤外線センサ4だけの場合には外乱光が侵入した場合に正確な温度を測定することができないという課題を有していたが、本発明のように調理容器検出手段7によって調理容器1の有無を判別し、正確な温度を検出できるか否かを判定して加熱を行うため、調理容器1が過度に温度上昇し、調理容器1の変形や破損、または油の発火等の危険な状況を回避することのできる誘導加熱装置を提供することができ、使用者に便益をもたらすことができる。
温度検出手段5、調理容器検出手段7、加熱制御手段8は、それぞれDSPやマイコン等が使用されることが多いがそれに限定するものではなく、カスタムICのようなものであっても構わない。また、それらの機能を1つのマイコン等で兼用しても良い。
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態2に記載した発明の内容は、照度センサの感度波長域を可視光域のみとする誘導加熱装置としたものである。
誘導加熱装置に搭載される温度検知手段に求められる温度検出範囲は、350〜400℃ぐらいまでである。これは、油の発火温度が330〜350℃程度であるため、調理容器1がその温度にならないように制御することができれば油発火の危険がない、安全な誘導加熱装置を提供することができるためである。勿論、さらに高温域まで測定することができる温度検出手段であっても良い。
図4に示すように、物体から放射される赤外線エネルギは、温度が高くなるほど短波長側にもエネルギをもつようになる。誘導加熱装置で検出したい温度域は330〜350℃程度であるが、この温度域では、可視光域が概ね700nmぐらいのため、可視光域と赤外線エネルギの放射される波長域とではほぼ分離することができる。
照度センサ6には様々なものがあり、人間の視感度に合わせた特性を持つものや、可視光域以外の所、つまり700nm以上の所にも感度を持つものもある。ここで、700nm以上の所にも感度を持つ照度センサ6を使用したとすると、調理容器1が高温で赤外線エネルギを放射していた場合にはそのエネルギで照度センサ6が反応してしまうことになる。照度センサ6としては調理容器1の温度状態によって影響を受けないことが望ましいため、照度センサ6は感度波長域を可視光域のみに限定することによってその影響を受けることなく照度を測定することができ、調理容器検出手段7の判別の精度を高めることができる。
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態3に記載した発明は、赤外線センサの感度波長域は、可視光域を含まないようにした誘導加熱装置としたものである。
実施の形態2で説明したように、調理容器1からの赤外線エネルギと可視光域を分けることによって、照度センサ6と赤外線センサ4がそれぞれ精度良く検出することができるようになる。
700〜1100nmの赤外線エネルギを受光することのできる赤外線センサ4は、多くの場合、700nm以下の波長域にも感度を持つことが多い。そのような場合には可視光域をカットするフィルタを用いて使用すればほぼ同じ特性が得られるので、このような構成であっても良い。
赤外線センサ4が可視光域に感度を持たないことにより、調理容器1の周囲からの可視光エネルギによる影響を受けることなく調理容器1からの赤外線エネルギを受光することができるため、S/N比が向上し、温度検出手段5の算出する温度の誤差が少なくなり、安全性の高い誘導加熱装置を提供することができる。
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態4に記載した発明は、赤外線センサと照度センサの光軸を同一方向とする誘導加熱装置としたものである。
照度センサ6は調理容器1の周囲の照度を測定するものであるが、照度センサ6を設置する目的としては、赤外線センサ4の検出域を調理容器1の底部が覆っていない場合に、赤外線センサ4の検出域に侵入する外乱光のレベルを測定し、その情報を元に調理容器検出手段7が調理容器の有無を検出するためである。
したがって、図5に示すように照度センサ6と赤外線センサ4の光軸がずれてしまうと外乱光のレベルを正確に測定することができず、調理容器検出手段7の判定精度が下がってしまう。
よって、照度センサ6と赤外線センサ4の光軸が同一方向となるように設置し、調理容器検出手段7の判定精度を上げることによってより安全性の高い誘導加熱装置を提供することができる。
(実施の形態5)
次に本発明の実施の形態5について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態5に記載した発明の内容は、報知手段を備え、調理容器検出手段7が調理容器がないことを判別した場合、あるいは調理容器の有無の判別がつかない場合、前記報知手段はその旨を誘導加熱装置の使用者に報知する誘導加熱装置としたものである。
調理容器1がない場合には調理容器1からの赤外線エネルギを赤外線センサ4は受光することができないため、温度検出手段5は調理容器1の温度は上がっていないと判定してしまう。しかしながら調理容器1の温度は上昇しているため、鍋の変形や油の発火といった危険な状態となる可能性がある。また、調理容器1の有無の判別がつかない場合も、もし実際には調理容器1がなかった場合に同様のことが起こり得るため、加熱をしては危険である。
そのような場合、加熱をするためには調理容器1をトッププレート2に置く際の置き場所を変更して、赤外線センサ4の検出域を調理容器1の底部が覆うように設置し直してもらう以外に方法がない。したがって、使用者に調理容器1が検出できないことを報知手段9によって報知し、調理容器1の置き直しを促すものである。
報知手段9としては、視覚的なもの、あるいは聴覚的なものが代表的であるが、それ以外のものであっても良い。視覚的なものとしては、発光ダイオード等のランプや、液晶などの表示装置を使用される場合が多いがそれに限定するものではない。また、聴覚的なものではブザーやメロディー、音声案内などが多いがそれに限定するものではない。
(実施の形態6)
次に本発明の実施の形態6について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態6に記載した発明の内容は、調理容器からの赤外線を導く導光手段をトッププレートと赤外線センサの間に設けた誘導加熱装置としたものである。
図1に示すように、赤外線センサを筒状の導光手段10の中に配置し、導光手段10は赤外線センサ4の光軸方向に伸びる構成とする。導光手段10は加熱コイル3の間隙を通し、トッププレート2の近傍まで存在するように構成する。
このような構成とすることによって、調理容器1からの赤外線エネルギが赤外線センサ4の受光部に届かずに散乱してしまうことを防止するとともに、調理容器1の周囲からの外乱光や加熱コイルからの赤外線エネルギなどを赤外線センサ4が受光することを防止し、S/N比の悪化を防ぐことができる。そうすることによって、温度検出手段5の算出する温度の誤差が少なくなり、安全性の高い誘導加熱装置を提供することができる。
導光手段10としては、樹脂材料であっても金属材料であっても構わないが、金属材料を使用する場合には導光手段10が誘導加熱されないように配慮すべきである。まだ、樹脂材料の場合には加熱コイル3からの輻射熱に耐えうる温度特性を持つ材料を選定する必要がある。
調理容器1からの赤外線エネルギが微少な場合には導光手段10の内部を鏡面仕上げとする事により赤外線センサ4の感度を上げることができ、内面を黒色等で塗装した場合には外乱光の影響を受けにくくすることができる。
また、導光手段10は図1に示すように加熱コイル3の上面よりもトッププレート2に近い所まで伸びている方が良い。これは、誘導磁界を発生させるインバータや加熱コイル3を冷却するための風が導光手段10内に入りにくくなるためである。導光手段10内に冷却風が入ると、冷却風は加熱コイル3等で温められた状態で導光手段10内に侵入し、赤外線センサ4の温度を上げる場合があるためである。赤外線センサ4の温度が上昇してしまうと受光感度が変化するため、赤外線センサ4としては同一温度に維持される方が望ましいからである。また、外乱光の影響を少なくする意味でも導光手段10はトッププレート2に近いところまで伸びていることが望ましい。但し、赤外線センサ4の検出域を狭める場合もあるため、その場合は両者のバランスがとれたところに設計する必要がある。
(実施の形態7)
次に本発明の実施の形態7について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態7に記載した発明の内容は、照度センサは導光手段外に設置する誘導加熱装置としたものである。
赤外線センサ4と導光手段10は加熱コイル3の間隙に配置されるが、加熱コイル3の間隙は導光手段10の大きさに対して十分ではない場合が多い。そのような状況において、赤外線センサ4と照度センサ6を同一の導光手段10内に配置することは設計上困難である。
そのような場合でも、赤外線センサ4と照度センサ6の光軸を揃えることなどによって、赤外線センサ4と照度センサ6を同一の導光手段10内に置いたときと近い効果が得られ、かつ設計が容易となって安価に商品を提供することができる。
(実施の形態8)
次に本発明の実施の形態8について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態8に記載した発明は、照度センサの検出した照度が所定の値よりも明るく、かつ赤外線センサの受光したエネルギが所定よりも低い場合は調理容器検出手段が調理容器があるものと判断する誘導加熱装置としたものである。
実施の形態1で説明したように、図2のSTEP8の場合である。これは調理容器1の周囲が明るく、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っており、調理容器1が低温であることを示している。この場合は調理容器1からの赤外線エネルギを赤外線センサ4は外乱光の影響を受けずに受光することができ、温度検出手段5は誤差があまり発生せずに温度を算出することができるため、調理容器1が過度の温度上昇をして危険な状態となることなく加熱することができる。
(実施の形態9)
次に本発明の実施の形態9について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態9に記載した発明は、照度センサの検出した照度が所定の値よりも暗く、かつ赤外線センサの受光したエネルギが所定よりも高い場合は調理容器検出手段が調理容器があるものと判断する誘導加熱装置としたものである。
実施の形態1で説明したように、図2のSTEP5の場合である。これは調理容器1の周囲が暗く、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っており、調理容器1が高温であることを示している。この場合は調理容器1からの赤外線エネルギを赤外線センサ4は外乱光の影響を受けずに受光することができ、温度検出手段5は誤差があまり発生せずに温度を算出することができるため、調理容器1が過度の温度上昇をして危険な状態となることなく加熱することができる。
(実施の形態10)
次に本発明の実施の形態10について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態10に記載した発明は、照度センサの検出した照度が所定の値よりも暗く、かつ赤外線センサの受光したエネルギが所定よりも低い場合は報知手段は調理容器の有無を検出できないことを報知する誘導加熱装置としたものである。
実施の形態1で説明したように、図2のSTEP9の場合である。これは調理容器1の周囲が暗く、調理容器1が低温であることを示している。しかしながら、調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っているかどうかは判別することができず、調理容器検出手段7は調理容器1の有無を判別できない。そのような状態で加熱を開始または継続すると、場合によっては調理容器1は使用者の意図しないほどに高温となり、調理容器1の変形や破損、油の発火等の危険な状態となる可能性がある。
したがって、報知手段によって使用者にその旨を伝えることによって調理容器1の置き場所を変更することを促し、安全に加熱ができる状態へと導くことができる。こうすることで、加熱ができないという状況を回避することができる。
(実施の形態11)
次に本発明の実施の形態11について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態11に記載した発明は、調理容器検出手段は、加熱制御手段が加熱を開始する前に少なくとも1回は調理容器の有無を判別する誘導加熱装置としたものである。
実施の形態1で説明したように、赤外線センサ4を用いて温度を検出する場合には外乱光の影響をなくし、対象物からの赤外線エネルギを受光できる環境であることが必要である。そのような状況にない場合には赤外線センサ4の受光するエネルギのS/N比が悪く、温度検出手段5の算出する温度には誤差を多く含むことになる。それはつまり、調理容器1が使用者の意図しない高温となる可能性がある。
そのような状況を回避するため、加熱の開始前に少なくとも1回は調理容器検出手段7を動作させ、調理容器1の有無を判別することで安全性を確保することができる。
(実施の形態12)
次に本発明の実施の形態12について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本発明の実施の形態12に記載した内容は、加熱制御手段が調理容器を加熱している際、調理容器検出手段が調理容器がないことを判別した場合、加熱制御手段は加熱を停止または加熱電力量を抑制させるまでに時間差を設ける誘導加熱装置としたものである。
加熱中に調理容器1をあおった場合、赤外線センサ4に外乱光のエネルギが到達して調理容器検出手段7が調理容器1が無いものと判定する場合がある。調理容器1が赤外線センサ4の検出域を覆っていない場合には正確な温度測定が困難なため、加熱を停止または加熱電力量を抑制するように制御を行う。
しかしながら、調理容器1をあおっている場合にはまた調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆う状態に戻される可能性が高いため、例え調理容器検出手段7が調理容器1が無いものと判定した場合でもすぐに加熱を停止または加熱電力量を抑制すると使用者の意図しない動作となり、使い勝手が低下する。
したがって、調理容器検出手段7が調理容器1が無いものと判定してもすぐに加熱を停止または加熱電力量を抑制せず、時間差を設けて本当に調理容器1が赤外線センサ4の検出域を覆っていない状態で加熱を継続しているのかどうかを判定してから加熱を停止または加熱電力量を抑制することで使い勝手の低下を防ぐことができる。
なお、あおりを行っている際、調理容器1が加熱コイル3から大きく離れた場合には誘導加熱装置自体の安全機能が働き、加熱を停止する場合がある。この安全機能は、調理容器1と加熱コイル3を含む磁気結合の変化から調理容器1が加熱コイル3と大きく離れていることを検出し、離れている場合には調理容器1が無いものと判定して加熱を停止する機能である。
赤外線センサ4で温度検出を行う誘導加熱装置の場合には、上記の磁気結合から調理容器1の有無を検出して調理容器1が有ると判定された場合でも調理容器1の底部が赤外線センサ4の検出域を覆っていない場合には温度測定の誤差が大きくなるため、そのような状況を避けるために調理容器検出手段7を別途設けることで安全性を確保している。
(実施の形態13)
次に本発明の実施の形態13について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態13に記載した発明の内容は、調理容器検出手段は、時間差内に少なくとも1回調理容器の検出を行う誘導加熱装置としたものである。
実施の形態12で説明したように、調理容器1をあおった場合に調理容器検出手段7が調理容器1が無いものと判定し、加熱を停止または加熱電力量を抑制するまでに時間差を設ける。そして、実際に加熱を停止または加熱電力量を抑制する前に少なくとも1回は調理容器1の有無を判別し、調理容器1が本当にない場合にだけ加熱を停止または加熱電力量を抑制することによって使い勝手の低下を回避することができる。
(実施の形態14)
次に本発明の実施の形態14について説明する。実施の形態1と同一部分は説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
本実施の形態14に記載した発明の内容は、加熱コイルを半径方向に分割した箇所を設け、そのコイルの間隙部に赤外線センサを配置する誘導加熱装置としたものである。
調理容器1を誘導加熱した際の温度分布は、図6のように加熱コイル3の中心部分に温度のピークがあり、調理容器1の中央部は温度が低い分布となる。
調理容器1が使用者の意図せず温度が上昇した際、調理容器1の最高温度部分に油を滴下した場合でも油発火することのない安全な誘導加熱装置を提供するためには、調理容器1の最高温度部分が油の発火点以下となるように制御する必要がある。
そのためには赤外線センサ4は中央部にあるよりも加熱コイル3の中心部付近に配置する方が良い。したがって、図7に示すように加熱コイル3を半径方向に分割した箇所を設け、その間隙部に赤外線センサ4を配置することによって調理容器1の最高温度に近い温度を測定することができ、油発火の心配のない安全で安心な誘導加熱装置を実現することができる。