近年の移動体通信分野では、それぞれ異なる情報を各々伝送するための複数のチャネルを、同一の時間に多重して無線通信を行うような無線通信方式が提案されている。
このような無線通信方式の一つとして、3GPP(Third Generation Partnership Project)で検討されているW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式がある。
また、3GPPでは、基地局から移動体通信端末へ送られるデータ(ダウンリンクのデータ)の伝送レートを向上させる方式として、HSDPA(high speed downlink packet access)方式が追加定義されている。このHSDPA方式によれば、移動体通信端末にてモニタした受信品質情報により、適応変調と適応符号化率を可能とし、また、受信データの受信正否判定結果であるACK(acknowledge)やNACK(unacknowledge)を高頻度に基地局へ送信することにより、高速な物理層での再送合成を可能とし、それらの結果として、高速なダウンリンクデータ伝送のサービスを実現させている。
〔従来の移動体通信端末の構成例〕
図6には、このW−CDMA方式が適用された従来の移動体通信端末の構成例を示す。なお、この図6の構成は主要部のみを示し、フィルタ等のその他の構成については省略している。
先ず、送信信号の流れを説明する。
図6において、DPDCH(dedicated physical data channel)は、データを伝送するためのチャネルである。当該DPDCHのデータは、CPU(Central Processing Unit)/DSP(Digital Signal Processor)116の機能ブロックの一つであるRLC(Radio Link Control)での再送訂正処理が施された後に、DPDCHエンコーダ(encoder)121にて通信路符号化されて生成される。なお、再送訂正とは、送信したデータが受信する側でエラーとなった場合、そのデータを再送する機能のことであり、DPDCHでは、RLCにおいて実現される。ここで、再送訂正のためには、送信したデータを保存しておくバッファが必要になり、図6の例では、CPU/DSP116に接続されたメモリ140が、上記送信したデータを保存しておくバッファとなされている。なお、再送には時間がかかるため、遅延時間を短くする必要のある音声データなどでは再送訂正は行われない。DPCCH(dedicated physical control channel)は、それを受信する側で位相補正や受信品質推定をするための情報などを伝送するためのチャネルである。HS−DPCCH(high speed-dedicated physical control channel)は、HSDPA用の以下に述べる情報を基地局に伝送するためのチャネルである。これらDPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの各伝送チャネルの信号は、拡散部101へ送られる。
なお、上記HS−DPCCHの信号は、図7に示すようなフレーム構造を有している。この図7に示すフレーム構造において、1フレームTfは10msの長さを有し、その1フレーム内に複数のサブフレーム(subframe)が配される。一つのサブフレームは2msの長さを有し、当該サブフレーム内にはHARQ(hybrid automatic repeat request)−ACK部と、CQI(Channel Quality Indicator)部が配される。上記HARQ−ACK部は、ダウンリンクデータの受信正否判定結果(ACK又はNACK)が配される部分であり、これを受信した基地局はACKの場合には当該ダウンリンクデータは問題なく受信されたということで再送を行わずに他のデータを送信し、NACKの場合には当該ダウンリンクデータを再送する。CQI部は、受信品質情報(以下、CQIとする)が配される部分であり、当該CQIを受信した基地局は、そのCQI及びその他の情報を元にしてダウンリンクデータの変調度や符号化率を決定する。HARQ−ACK部は、2560chipsの大きさを有し、自端末宛の受信データがあるときのみ、当該HARQ−ACK部にて受信正否判定結果が送信され、それ以外の場合には送信されない。また、CQI部は5120chipsの大きさを有し、CQIはネットワーク側から指定された周期で送信され、それ以外の場合は送信されない。
拡散部101に入力されたDPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの各伝送チャネルの信号のうち、DPDCHの信号は乗算器124に送られ、DPCCHの信号は乗算器125に、HS−DPCCHの信号は乗算器126に送られる。乗算器124ではDPDCHの信号にチャネライゼーションコード(channelization code)Cdが乗算され、同様に、乗算器125ではDPCCHの信号にチャネライゼーションコードCcが乗算され、乗算器126ではHS−DPCCHの信号にチャネライゼーションコードChsが乗算される。つまり、拡散部101においては、DPDCHの信号を上記チャネライゼーションコードCdにより拡散し、DPCCHの信号をチャネライゼーションコードCcにより拡散し、HS−DPCCHの信号をチャネライゼーションコードChsにより拡散する処理が行われる。当該拡散部101にて拡散された後の、DPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの各伝送チャネルの信号は、振幅調整部102へ送られる。
この振幅調整部102において、上記DPDCHの信号は乗算器127に送られ、DPCCHの信号は乗算器128に、HS−DPCCHの信号は乗算器129に送られる。そして、乗算器127は、後述する送信電力制御部117から送られてくる振幅比設定用の係数Kdを上記DPDCHの信号に乗算し、同様に、乗算器128は送信電力制御部117から送られてくる振幅比設定用の係数KcをDPCCHの信号に乗算し、乗算器129は送信電力制御部117から送られてくる振幅比設定用の係数KhsをHS−DPCCHの信号に乗算する。つまり、振幅調整部102は、上記振幅比設定用の係数KdによりDPDCHの信号振幅を調整し、同じく、振幅比設定用の係数KcによりDPCCHの信号振幅を調整し、振幅比設定用の係数KhsによりHS−DPCCHの信号振幅を調整する。当該振幅調整部102にて振幅調整がなされた後の、DPDCHの信号は、I相の信号として加算器132へ送られる。
ここで、HS−DPCCHは、DPDCHのマルチコード数に応じてI相、Q相のどちらに割り当てられるかが変更されるようになされており、例えばDPDCHが1チャネルの場合にはQ相に割り当てられてDPCCHとマルチコード化されるようになっている。なお、図6において、振幅比設定後のDPCCHとHS−DPCCHの信号は、加算器130にて加算され、Q相の信号として加算器132へ送られる。
加算器132では、I相の信号とQ相の信号が多重化、すなわち複素化されることになる。なお、この構成例では、当該複素化された信号の電力(ベースバンドの電力)は常に一定値Pbbになるよう、後述する送信電力制御部117が上記振幅比設定用の係数Kd,Kc,Khsを制御するものとなされている。
上記複素化された信号は、スクランブル(scramble)部103にて、所定のスクランブリングコード(scrambling code)がかけられてスクランブル処理された後、D/A(digital/analog)コンバータ104へ送られる。D/Aコンバータ104は、上記スクランブル処理後の信号をD/A変換した後、直交変調部105へ送る。直交変調部105では、上記D/A変換後の信号を直交変調する。なお、説明を簡略化するため、この構成例のスクランブル処理部103、D/Aコンバータ104、直交変調部105でのゲインは0dBであるとする。上記直交変調部105にて直交変調された後の信号は、可変ゲインアンプ106へ送られる。
可変ゲインアンプ106は、送信電力制御部117からの制御を受けつつ、供給された信号の電力(RF帯の信号電力)を、ゲインGにより必要な送信電力まで増幅した後、アンテナ107へ送る。
アンテナ107は、供給された信号を電波により送信する。
次に、受信信号の流れについて簡単に説明する。
アンテナ107にて受信された信号は、RF(radio frequency)/IF(intermediate frequency)受信回路108にて増幅とダウンコンバートが行われ、A/D(analog/digital)コンバータ109にてディジタル信号に変換された後、レイクフィンガ(Rake-Finger)部110にて逆拡散及びRake合成される。上記レイクフィンガ部110での逆拡散及びRake合成後の各伝送チャネルの信号は、それぞれ各伝送チャネルに対応して設けられているデコーダ(decoder)111〜113に送られる。
HS−SCCH(high speed-signaling control channel)デコーダ111は、HSDPAサービスの制御信号伝送用チャネルであるHS−SCCHの信号をデコードすると共に、そのデコード結果をCPU/DSP116に報告する。
HS−DSCH(high dpeed-downlink shared channel)デコーダ112は、HSDPAサービスのデータ伝送用チャネルであるHS−DSCHの信号をデコードする。当該デコード後のデータは、CRC(cyclic redundancy check)部115でのデータ誤り確認結果と共に、CPU/DSP116へ送られる。なお、HS−DSCHデコーダ112は、再送合成用のバッファを有しており、このバッファに保持されたデータを用いることで前述の物理層での再送合成を実現している。
他チャネルデコーダ113は、その他の伝送チャネル、例えばHSDPAサービスの前に事前に伝送される制御チャネルの信号をデコードし、そのデコード結果をCPU/DSP116に報告する。
また、TPC(transmit power control)ビット判定部114は、上記レイクフィンガ部110からの各伝送チャネル中に挿入されているTPCビットを抽出・判定し、それら抽出・判定結果を送信電力制御部117に報告する。
なお、CPU/DSP116は、デコード結果のデータがRLCで再送訂正可能なものである場合、RLCでの再送訂正処理を行う。このためには、送信側と同じくバッファが必要になり、したがって、CPU/DSP116には当該バッファとして機能を有するメモリ140が接続されている。HS−DSCHのデータもRLCでの再送訂正が可能な場合、物理層での再送合成とは別にRLCでの再送訂正も行うことになる。
また、CPU/DSP116は、移動体通信端末に固有のパラメータである最大送信電力Pmax及びベースバンド電力Pbbを例えば内部メモリに保持している。さらに、CPU/DSP116は、HSDPAサービスの前に事前に伝送される制御チャネルのデータから、1回の送信電力制御当たり何dBの制御を行うかを示すΔTPC、初期送信電力Pini及び、DPDCHの伝送チャネルについての他チャネルとの間の送信電力比に対応する重み係数βc、DPCCHの伝送チャネルについての他チャネルとの間の送信電力比に対応する重み係数βd、HS−DPCCHの伝送チャネルについての他チャネルとの間の送信電力比に対応する重み係数βhsに関する情報を収集する。
送信電力制御部117は、Pmax,Pbb,ΔTPC,Pini,βc,βd,βhs及びTPC_CMD(command)により、Kd,Kc,Khs及びGを導出し、各伝送チャネルの電力比、総送信電力を制御する。
ここで、ΔTPCとTPC_CMDは、閉ループパワーコントロール(closed loop power control)に関係するパラメータである。上記閉ループパワーコントロールとは、受信品質が一定となるように通信相手の送信電力を調整する送信電力制御のことである。移動体通信端末の送信電力を制御する閉ループパワーコントロールでは、基地局は、受信したDPCCHの信号から受信品質を計算し、その受信品質が目標に満たない場合には送信電力を上げる命令を、一方、受信品質が目標を超える場合には送信電力を下げる命令を移動体通信端末への送信信号にTPCビットとして挿入し伝送する。移動体通信端末では、このTPCビットを受信し、TPC_CMDとして解釈する。なお、TPC_CMDは、送信電力を上げる場合には「+1」、下げる場合には「−1」を表す値となる。ΔTPCは、送信電力を制御する際に1回に何dB制御するかを決めるパラメータである。
〔従来の送信電力制御のフローチャート〕
次に。図8には、送信電力制御部117における送信電力制御の処理フローチャートを示す。
この図8において、ステップS101にて、送信電力制御部117には、ΔTPC,Pbb,Pmax,Piniが入力される。なお、ΔTPC,Piniは通信を行う前に基地局から与えられる値であり、CPU/DSP116が内部メモリに保存しておいたものを送信電力制御部117に与える。Pbbは端末毎の固定値、Pmaxは仕様で決められた値であり、CPU/DSP116から送信電力制御部117に供給される。
次に、ステップS102にて、送信電力制御部117には、TPC_CMD,βc,βd,βhsが入力される。なお、TPC_CMDはスロット毎にCPU/DSP116から与えられ、βc,βd,βhsは必要に応じてCPU/DSP116から与えられる。当該ステップS102の後、送信電力制御部117は、ステップS103へ処理を進める。
ステップS103の処理に進むと、送信電力制御部117は、当該ステップS103に示す演算式により、βc,βd,βhsの各値がどのような値でもPbbが一定値になるようにKc,Kd,Khsの値を求める。
次にステップS104にて、送信電力制御部117は、初回の送信か否かを判定し、初回の送信であるときはステップS105へ、そうでないときにはステップS106へ処理を進める。
ステップS105の処理に進むと、送信電力制御部117は、PiniからPbbを引くことによりGを求め、次のステップS107へ処理を進める。
一方、ステップS106の処理に進むと、送信電力制御部117は、前回の電力制御時の送信電力値であるGprevと、現在のKc及び前回の電力制御時のゲイン設定に用いられたKc_prevと、上記TPC_CMD、ΔTPCとを用いて、可変ゲインアンプ106に与えるゲインGの値を求める。なお、ステップS106中の式において、第1項は前回の電力制御時のゲイン設定値、第2項は各βの値が変化した時にそれに応じてKcが変化することによるゲインを相殺するための項、第3項はTPC_CMDの受信結果に応じてゲインをアップ/ダウンするための項である。このステップS106の処理後、送信電力制御部117は、ステップS107へ処理を進める。
ステップS107の処理に進むと、送信電力制御部117は、今回の電力制御時のゲイン設定に用いられたKcの値を次回に用いるゲイン設定用の値Kc_prevとして保管する。
次に、送信電力制御部117は、ステップS108にて、今回決定したGの値でPbbを調整(Pbb+G)した場合、その値がPmaxより大きくなるか否か判定し、大きくなるときにはステップS109へ処理を進め、そうでないときにはステップS110へ処理を進める。
ステップS109に進むと、送信電力制御部117は、Pmax−PbbからGを決定した後、ステップS110へ処理を進める。すなわち、送信電力制御部117は、ステップS108とステップS109の処理により、送信電力が最大送信電力Pmaxを越えないようにゲインGを制御している。
ステップS110の処理に進むと、送信電力制御部117は、今回の電力制御時のゲインGの値を次回の電力制御に用いるゲインGprevとして保管し、ステップS102へ処理を戻す。
なお、送信電力制御を行う従来技術の一例として、特開2001−308723の公開特許公報(特許文献1)には、通信サービス或いは送信データ種別或いは送信伝送速度に応じて伝送チャネル毎に係数を掛けるための係数乗算手段と、その係数が掛けられた複数チャネルを多重化して変調する多重及び変調手段と、その多重及び変調後の信号の送信電力を可変するゲイン可変手段と、そのゲイン可変手段を制御するゲイン制御手段を有し、さらに、全ての伝送チャネルが同時に送信されていない場合には、伝送速度或いは伝送チャネルの組み合わせに応じて通信装置に設定され得る最大送信電力とは異なる送信電力を用いて送信時の最大送信電力制御を行うようにゲイン制御手段を制御するための送信電力制御手段を備えていることで、最大送信電力制御にかかわらず通信品質を確保可能とした通信装置が開示されている。
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本実施の形態は、本発明の移動体通信端末及び送信電力制御方法の一例として、3GPP、W−CDMA方式におけるHSDPAサービスが適用される携帯電話端末とその通信システムを挙げて説明する。
〔第1の実施形態の携帯電話端末の構成〕
図1には、本発明の第1の実施の形態の携帯電話端末の構成例を示す。なお、この図1の構成は主要部のみを示し、フィルタ等のその他の構成については省略している。
先ず、送信信号の流れを説明する。
図1において、DPDCH,DPCCH,HS−DPCCHは、これら各チャネルは前述の図6にて説明したのと同様のチャネルである。DPDCHのデータは、CPU/DSP16の機能ブロックの一つであるRLCでの再送訂正処理が施された後(なお、CPU/DSP以外でもRLC機能は実現可能である。)に、DPDCHエンコーダ21にて通信路符号化されて生成される。ここで、再送訂正のためには、送信したデータを保存しておくバッファが必要になり、図1の例では、CPU/DSP16に接続されたメモリ40が、上記送信したデータを保存しておくバッファとなされている。なお、遅延時間を短くする必要のある音声データなどでは再送訂正は行われない。これらDPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの各伝送チャネルの信号は、拡散部1へ送られる。なお、上記HS−DPCCHの信号は、前述の図7に示したフレーム構造を有する。
拡散部1に入力されたDPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの各伝送チャネルの信号のうち、DPDCHの信号は乗算器24に送られ、DPCCHの信号は乗算器25に、HS−DPCCHの信号は乗算器26に送られる。乗算器24ではDPDCHの信号にチャネライゼーションコードCdが乗算され、同様に、乗算器25ではDPCCHの信号にチャネライゼーションコードCcが、乗算器26ではHS−DPCCHの信号にチャネライゼーションコードChsが乗算される。すなわち、拡散部1では、DPDCHの信号を上記チャネライゼーションコードCdにより拡散し、同様に、DPCCHの信号をチャネライゼーションコードCcにより拡散し、HS−DPCCHの信号をチャネライゼーションコードChsにより拡散する。当該拡散部1にて拡散された後のDPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの各伝送チャネルの信号は、振幅調整部2へ送られる。
この振幅調整部2において、上記DPDCHの信号は乗算器27に送られ、DPCCHの信号は乗算器28に、HS−DPCCHの信号は乗算器29に送られる。そして、乗算器27は、後述する送信電力制御部17から送られてくる振幅比設定用の係数KdをDPDCHの信号に乗算し、同様に、乗算器28は送信電力制御部17から送られてくる振幅比設定用の係数KcをDPCCHの信号に乗算し、乗算器29では送信電力制御部17から送られてくる振幅比設定用の係数KhsをHS−DPCCHの信号に乗算する。すなわち、振幅調整部2は、上記振幅比設定用の係数KdによりDPDCHの信号振幅を調整し、同様に、振幅比設定用の係数KcによりDPCCHの信号振幅を調整し、振幅比設定用の係数KhsによりHS−DPCCHの信号振幅を調整すること、言い換えると、送信電力比設定用の係数Kd,係数Kc,係数Khsにより、それぞれ対応するDPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの送信電力比を調整する。当該振幅調整部2にて振幅調整がなされた後のDPDCHの信号は、I相の信号として加算器32へ送られる。
また、前述の図6と同様、振幅調整後のDPCCHとHS−DPCCHの信号は、加算器30にて加算され、Q相の信号として加算器32へ送られる。
加算器32では、I相の信号とQ相の信号が多重化、すなわち複素化される。
上記複素化された信号は、スクランブル部3にて、所定のスクランブリングコードがかけられてスクランブル処理された後、D/Aコンバータ4へ送られる。D/Aコンバータ4は、上記スクランブル処理後の信号をD/A変換した後、直交変調部5へ送る。直交変調部5では、上記D/A変換後の信号を直交変調する。なお、この図1の例においても前述の図6の場合と同様に、説明を簡略化するため、この構成例のスクランブル処理部3、D/Aコンバータ4、直交変調部5でのゲインは0dBであるとする。上記直交変調部5にて直交変調された後の信号は、可変ゲインアンプ6へ送られる。
可変ゲインアンプ6は、送信電力制御部17からの制御を受けつつ、供給された信号の電力を、ゲインGにより必要な送信電力まで増幅した後、アンテナ7へ送る。
アンテナ7は、供給された信号を電波により送信する。
次に、受信信号の流れについて簡単に説明する。
アンテナ7にて受信された信号は、RF/IF受信回路8にて増幅とダウンコンバートが行われ、A/Dコンバータ9にてディジタル信号に変換された後、レイクフィンガ部10にて逆拡散及びRake合成される。上記レイクフィンガ部10での逆拡散及びRake合成後の各伝送チャネルの信号は、それぞれ各伝送チャネルに対応して設けられているデコーダ11〜13に送られる。
HS−SCCHデコーダ11は、HSDPAサービスの制御信号伝送用チャネルであるHS−SCCHの信号をデコードすると共に、そのデコード結果をCPU/DSP16に報告する。
HS−DSCHデコーダ12は、HSDPAサービスのデータ伝送用チャネルであるHS−DSCHの信号をデコードする。当該デコード後のデータは、CRC部15でのデータ誤り確認結果と共に、CPU/DSP16へ送られる。なお、HS−DSCHデコーダ12は、再送合成用のバッファを有しており、このバッファに保持されたデータを用いることで前述の物理層での再送合成を実現している。
他チャネルデコーダ13は、その他の伝送チャネル、例えばHSDPAサービスの前に事前に伝送される制御チャネルの信号をデコードし、そのデコード結果をCPU/DSP16に報告する。
また、TPCビット判定部14は、上記レイクフィンガ部11からの各伝送チャネル中に挿入されているTPCビットを抽出・判定し、それら抽出・判定結果を送信電力制御部17に報告する。
なお、CPU/DSP16は、デコード結果のデータがRLCで再送訂正可能なものである場合、RLCでの再送訂正処理を行う。このためには、送信側と同じくバッファが必要になり、したがって、CPU/DSP16に接続されているメモリ40は、当該受信用のバッファとしての機能も備えている。HS−DSCHのデータもRLCで再送訂正が可能な場合、物理層での再送合成とは別にRLCでの再送訂正も行うことになる。
また、CPU/DSP16は、移動体通信端末に固有のパラメータである最大送信電力Pmax及びPbbを内部メモリに保持している。さらに、CPU/DSP16は、HSDPAサービスの前に事前に伝送される制御チャネルのデータから、1回の送信電力制御当たり何dBの制御を行うかを示すΔTPC、初期送信電力Pini及び、それぞれDPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの伝送チャネルについての送信電力比に対応する重み係数βc,βd,βhsに関する情報を収集する。
送信電力制御部17は、Pmax,Pbb,ΔTPC,Pini,βc,βd,βhs及びTPC_CMD(command)により、Kd,Kc,Khs及びGを導出し、各伝送チャネルの電力比、総送信電力を制御する。
以上の構成及び動作は、前述の図6の従来例の構成及び動作と基本的に同じであるが、本発明の第1の実施形態の携帯電話端末は、後述する優先チャネル選択部18を備えており、当該優先チャネル選択部18の出力である優先伝送チャネル情報CHselにより、送信電力制御部17がその動作を変えるようになされている。
また、第1の実施形態の携帯電話端末は、送信電力制御部17に対しては非優先伝送チャネルについての送信電力比にかかる重み係数のβ値をどの程度小さくできるかを示すパラメータaも、CPU/DSP16から与えられている。
優先チャネル選択部18は、CPU/DSP16を通じて、各係数βc,βd,βhs、CQIの送信周期を示すCQI送信周期情報、次のHS−DPCCHスロット(slot)で何を送信するかを示すACK/NACK/CQI/DTX(Discontinuous Transmission)種別情報、HS−DSCHの受信データレートを示すHS−DSCHデータレート情報、事前に決められる閾値a1,a2,b,cの情報を受け取り、それらに基づいて優先伝送チャネルを選択する。なお、CQI送信周期は、HSDPAサービスの前に事前に基地局から伝送される制御チャネルのデータから得られる。ACK/NACK/CQI/DTX種別は、HS−SCCHデータにある自端末宛のデータかどうかを示す情報、HS−DSCH CRCチェック結果(誤り無しの場合ACK、誤り有りの場合NACK)、及び、CQI送信周期から判断される。HS−DSCHデータレートは、HS−SCCHデータにある関連する情報から得られる。
当該優先チャネル選択部18が、それら各情報等を用いてどのようにして優先伝送チャネルを選択するかについては後述し、それに先立ち、図2のフローチャートを参照しながら送信電力制御部17における送信電力制御の処理を説明する。
〔第1の本実施形態の送信電力制御のフローチャート〕
この図2において、ステップS1では、前述の図6のステップS101と同様、ΔTPC,Pbb,Pmax,Piniが、上記CPU/DSP16から当該送信電力制御部17に供給される。また、本実施形態の場合、ステップS1では、非優先伝送チャネルについての送信電力比にかかる重み係数のβ値をどの程度小さくできるかを示すパラメータaも、CPU/DSP16から送信電力制御部17に与えられる。
次に、ステップS2では、前述の図6のステップS102と同様、CPU/DSP16からTPC_CMD,βc,βd,βhsが送信電力制御部17に供給される。また、本実施形態の場合、当該ステップS2において、送信電力制御部17には、優先チャネル選択部18から、優先伝送チャネルがどれかを示すパラメータである優先伝送チャネル情報CHselが供給される。なお、本実施形態において、各伝送チャネルのうち、DPCCHは常に優先伝送チャネルとなされる。なぜなら、DPCCHは、閉ループパワーコントロールにて受信品質を測定する対象のチャネルであり、例えば当該対象チャネルが優先されないチャネルとなされて送信電力が落とされてしまうと、閉ループパワーコントロールが正常に動作しなくなるためである。また、このDPCCHを利用して、DPDCH、HS−DPCCHの受信処理(位相補正など)が行われているので、例えばDPCCHの送信電力を落としてしまうと、他の伝送チャネル(DPDCH、HS−DPCCH)の受信特性も落ちてしまう。したがって、優先チャネル選択部18から出力される優先伝送チャネル情報CHselは、DPDCHかHS−DPCCHを優先伝送チャネルか非優先伝送チャネルの何れかに選択するパラメータとなっている。当該ステップS2の後、送信電力制御部17は、ステップS20へ処理を進める。
ステップS20の処理に進むと、送信電力制御部17は、優先伝送チャネル情報CHselにより、DPDCHとHS−DPCCHの何れが優先伝送チャネルであるか、また、それらDPDCHとHS−DPCCHの何れも優先伝送チャネルとなされていないか(優先伝送チャネル無し)かを判断し、優先伝送チャネル無しであると判断した場合にはステップS21へ処理を進め、一方、DPDCHが優先伝送チャネルであると判断した場合にはステップS22へ処理を進め、或いは、HS−DPCCHが優先伝送チャネルであると判断した場合にはステップS23へ処理を進める。
ステップS21の処理に進んだ場合、送信電力制御部17は、前述の図6のステップS103〜ステップS110と同様の処理を実行した後、ステップS2へ処理を戻す。
一方、ステップS22の処理に進んだ場合、送信電力制御部17は、優先伝送チャネルについての送信電力比にかかる重み係数βprをDPDCHの係数βdに置き換えると共に、非優先伝送チャネルについての送信電力比にかかる重み係数βnprをHS−DPCCHの係数βhsに置き換え、ステップS3へ処理を進める。
また、ステップS23の処理に進んだ場合、送信電力制御部17は、優先伝送チャネルの係数βprをHS−DPCCHの係数βhsに置き換えると共に、非優先伝送チャネルの係数βnprをDPDCHの係数βdに置き換え、ステップS3へ処理を進める。
ステップS3の処理に進むと、送信電力制御部17は、このステップS3に示す演算式により、βc,βd,βhsの各値がどのような値でもPbbが一定値になるようにKcとKhsの値を求める。但し、本実施形態の場合、ステップS3にて送信電力制御部17が求めるのは、DPCCHの伝送チャネルとステップS20で選択された優先伝送チャネルのK値であるKc,Kprのみである。このステップS3の処理後、送信電力制御部17は、ステップS4へ処理を進める。
ステップS4の処理に進むと、送信電力制御部17は、初回の送信か否かを判定し、初回の送信であるときはステップS5へ、そうでないときにはステップS6へ処理を進める。
ステップS5の処理に進むと、送信電力制御部17は、PiniからPbbを引くことによりGを求め、次のステップS7へ処理を進める。
一方、ステップS6の処理に進むと、送信電力制御部17は、前回の電力制御時の送信電力値であるGprevと、現在のKc及び前回の電力制御時のゲイン設定に用いられたKc_prevと、上記TPC_CMD、ΔTPCとを用いて、可変ゲインアンプ6に与えるゲインGの値を求める。なお、ステップS6中の式において、第1項は前回の電力制御時のゲイン設定値、第2項は各βの値が変化した時にそれに応じてKcが変化することによるゲインを相殺するための項、第3項はTPC_CMDの受信結果に応じてゲインをアップ/ダウンするための項である。すなわち、ステップS6では、最大送信電力Pmaxの制御を受けずに基地局の要求通りの電力制御をすると仮定したときのゲインGの値を求めている。このゲインGの値は、最大送信電力Pmaxを越えた場合に優先伝送チャネルに対してどの程度電力配分量を増やすかを示すためにある。当該ステップS6の処理後、送信電力制御部17は、ステップS7へ処理を進める。
ステップS7の処理に進むと、送信電力制御部17は、今回の電力制御時のゲイン設定に用いられたKcの値を次回に用いるゲイン設定用の値Kc_prevとして保管する。
次に、送信電力制御部17は、ステップS8にて、今回の電力制御時のゲインGの値を次回の電力制御に用いるゲインGprevとして保管し、ステップS9へ処理を進める。
ステップS9の処理に進むと、送信電力制御部17は、PmaxからPbbを差し引いた値よりも今回決定したGの値が大きくなるか否か、つまり、ゲインGの値によりゲイン調整がなされた後の出力電力が最大送信電力Pmaxを越えるかどうかを判断し、越えるときにはステップS10へ処理を進め、そうでないときにはステップS15へ処理を進める。
ステップS10の処理に進むと、送信電力制御部17は、ステップS3で得られたKc,Khsの値に対し、現在のゲインGの値で、最大送信電力Pmaxを越えた分のゲインを可変ゲインアンプ6に与える。これにより、優先伝送チャネルは、基地局から要求された電力による伝送がなされることになる。
但し、この場合、非優先伝送チャネルの電力が足りていることが必要となるので、送信電力制御部17は、その点をステップS11の演算式を用いて確認している。送信電力制御部17は、当該ステップS11において、非優先伝送チャネルの電力が足りていないと判断した場合にはステップS12へ処理を進め、足りていると判断した場合にはステップS14へ処理を進める。
ステップS12の処理に進むと、送信電力制御部17は、非優先伝送チャネルの電力配分を事前に決めている最低の値にし、残りの電力をDPCCHと優先伝送チャネルに配分する。
次に、ステップS13において、送信電力制御部17は、ステップS12でKc値を変化させた分、次回の電力制御時に使用するゲインの値Gprevを変化させる。
そして、送信電力制御部17は、ステップS24において、ステップS12での変化後のKc’の値をKcとし、ステップS14へ処理を進める。
ステップS14の処理に進むと、送信電力制御部17は、ゲインGの値を制限する。すなわち、可変ゲインアンプ6のゲインは、最大送信電力Pmaxを越えさせる値に設定することはできないので、当該ステップS14にて当該ゲインGの値が制限される。
次に、ステップS15の処理に進むと、送信電力制御部17は、各伝送チャネルの電力和が可変ゲインアンプ6の入力側でPbbに等しくなるように、非優先伝送チャネルのK値であるKnprを求める。
その後、ステップS25の処理に進むと、送信電力制御部17は、優先伝送チャネル情報CHselにより、DPDCHとHS−DPCCHの何れが優先伝送チャネルとなされているかを判断し、DPDCHが優先伝送チャネルであると判断した場合にはステップS26へ処理を進め、一方、HS−DPCCHが優先伝送チャネルであると判断した場合にはステップS27へ処理を進める。
ステップS26の処理に進むと、送信電力制御部17は、優先伝送チャネルのKprをDPDCHのKdに置き換えると共に、非優先伝送チャネルのKnprをHS−DPCCHのKhsに置き換えた後、ステップS2へ処理を戻す。
一方、ステップS27の処理に進んだ場合、送信電力制御部17は、優先伝送チャネルのKprをHS−DPCCHのKhsに置き換えると共に、非優先伝送チャネルのKnprをDPDCHのKdに置き換えた後、ステップS2へ処理を戻す。
〔第1の実施形態における優先伝送チャネルの選択〕
次に、優先チャネル選択部18が、DPDCHとHS−DPCCHの何れを優先伝送チャネルにするか選択する際の優先伝送チャネルの判断材料について説明する。
本発明の第1の実施形態の携帯電話端末の優先チャネル選択部18は、以下に述べる第1の判断材料〜第4の判断材料を用いて、DPDCHとHS−DPCCHの何れを優先伝送チャネルに選択するかを決定している。なお、第1の判断材料〜第4の判断材料は、それぞれ個々に用いられても良いし、それらのうち二つ以上を複合させて用いても良い。
本実施形態において、第1の判断材料としては、HS−DPCCHのACK/NACK/CQI/DTXの種別が用いられ、第2の判断材料としては、HS−DPCCHがACKの際にそれに対応したHS−DSCHデータのレートが用いられ、第3の判断材料としては、HS−DPCCHのCQIの送信周期、第4の判断材料としては、各伝送チャネルの電力配分比が用いられる。
以下、それぞれを順に説明する。
先ず、優先チャネル選択部18は、第1の判断材料として、HS−DPCCHのACK/NACK/CQI/DTXの種別(つまりHS−DPCCHで送信されている内容)を用い、当該第1の判断材料に基づいて優先伝送チャネルを選択する。例えば、HS−DPCCHで送信されている内容がNACKである場合、優先チャネル選択部18は、DPDCHを優先伝送チャネルとする。すなわちNACKの場合、携帯電話端末の送信電力が下がり、基地局が当該携帯電話端末からの信号を受信できなくなった場合、基地局から携帯電話端末に対してDPDCHの再送が行われることになるため、優先チャネル選択部18は、NACKが基地局に送られた場合にはDPDCHを優先伝送チャネルとする。
HS−DPCCHで送信されている内容がACKとなっている場合、優先チャネル選択部18は、第2の判断材料として、HS−DPCCHに対応するHS−DSCHデータの伝送レートを用い、その伝送データレートが所定の閾値よりも高いときには、HS−DPCCHを優先伝送チャネルとする。すなわち、例えばACKが基地局で受信できない場合、基地局から携帯電話端末に対してデータが再送されることになり、特に伝送レートが高い場合に当該再送による影響が大きくなり、HSDPAサービスの平均データレートの低下につながってしまうため、優先チャネル選択部18は、第2の判断材料であるHS−DSCHデータの伝送レートが所定の閾値よりも高いときには、HS−DPCCHを優先伝送チャネルとする。
優先チャネル選択部18は、第3の判断材料としてHS−DPCCHで送信されるCQIの送信周期を用い、当該CQIの送信周期が所定の閾値より長い場合には、HS−DPCCHを優先伝送チャネルとする。ここで、CQIは携帯電話端末の受信品質情報であり、携帯電話端末はネットワークから指定される時間間隔でCQIを送信し、基地局はCQIが送信されていない間の受信品質をDPCCHの制御情報で推定している。このため、CQIの送信周期が長くなり、基地局がCQIを受信できない期間が長くなると、基地局にてDPCCHの制御情報から推定される受信品質の誤差が大きくなってしまい、その結果としてHSDPAサービスの平均データレートが低下してしまう虞がある。一方、CQIの送信周期が長くなれば、CQIが送信されていない時間が長くなるため、CQIが送信されている時間にDPDCHの電力を下げてもその影響は小さいと考えられる。したがって、第1の実施形態の優先チャネル選択部18は、HS−DPCCHのCQI送信周期が長い場合、HS−DPCCHを優先伝送チャネルに選択する。
優先チャネル選択部18は、第4の判断材料として、各伝送チャネルの電力配分比率を用い、それら各伝送チャネルのうち、元々の電力配分比率の小さい伝送チャネルを優先伝送チャネルにする。すなわち、電力配分比率の元々小さい伝送チャネルを例えば優先して送信電力を要求通りに上げたとしても、非優先伝送チャネルである電力配分比率の大きい伝送チャネルの電力減少量は小さいと考えられる。このため、本実施形態の優先チャネル選択部18は、元々の電力配分比率の小さい伝送チャネルを優先伝送チャネルとする。
〔第1の実施形態における優先伝送チャネル選択処理のフローチャート〕
次に、図3に示すフローチャートを参照して、上記第1の判断材料〜第4の判断材料を全て複合した場合の優先伝送チャネル選択処理について説明する。
図3において、優先チャネル選択部18は、先ずステップS30の処理として、βd/βhsの値を閾値a1と比較し、βd/βhsの値が閾値a1以下であればステップS31にてDPDCHを優先伝送チャネルとする。一方、βd/βhsの値が閾値a1より大きい場合、優先チャネル選択部18は、ステップS32へ処理を進める。
ステップS32の処理に進むと、優先チャネル選択部18は、βd/βhsの値を閾値a2と比較し、βd/βhsの値が閾値a2以下であれば、つまりβd/βhsの値がa1より大きく且つa2以下であるときには、ステップS33にて優先チャネル無しとする。一方、βd/βhsの値が閾値a2より大きい場合、優先チャネル選択部18は、ステップS34へ処理を進める。
ステップS34の処理に進むと、優先チャネル選択部18は、HS−DPCCHにてACKが送信されているか否か判断し、ACKが送信されていると判断したときにはステップS35へ処理を進め、そうでないときにはステップS38へ処理を進める。
ステップS35の処理に進むと、優先チャネル選択部18は、さらにHS−DSCHのデータレートと閾値bとを比較し、HS−DSCHのデータレートが閾値bより大きいときには、ステップS36にてHS−DPCCHを優先伝送チャネルに選択する。
一方、ステップS35にて、HS−DSCHのデータレートが閾値b以下であると判断した場合、優先チャネル選択部18は、ステップS37にて優先伝送チャネル無しとする。
また、ステップS34にてACKが送信されていないと判断してステップS38の処理に進んだ場合、優先チャネル選択部18は、HS−DPCCHにてCQIが送信されているか否か判断し、CQIが送信されていると判断したときにはステップS39へ処理を進め、そうでないときにはステップS42へ処理を進める。
ステップS39の処理に進むと、優先チャネル選択部18は、さらにCQIの周期と閾値cとを比較し、CQIの周期が閾値cより長いときには、ステップS40にて、HS−DPCCHを優先伝送チャネルに選択する。
一方、ステップS39にて、CQIの周期が閾値c以下であると判断した場合、優先チャネル選択部18は、ステップS41にて、優先伝送チャネル無しとする。
また、ステップS38にてCQIが送信されていないと判断してステップS42の処理に進んだ場合、優先チャネル選択部18は、HS−DPCCHにてNACKが送信されているか否か判断し、NACKが送信されていると判断したときにはステップS43へ処理を進め、そうでないときにはステップS44へ処理を進める。
ステップS43の処理に進むと、優先チャネル選択部18は、DPDCHを優先伝送チャネルに選択する。
一方、ステップS42にて、NACKが送信されていないと判断した場合、優先チャネル選択部18は、ステップS44にて、優先伝送チャネル無しとする。
〔第1の実施の形態のまとめ〕
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態の携帯電話端末によれば、基地局から要求される送信電力が携帯電話端末の最大送信電力Pmaxを越える場合、DPDCH,DPCCH,HS−DPCCHの各伝送チャネルの優先度を判定し、その判定された優先度に応じて電力配分比を変更し、優先伝送チャネルの送信電力を要求通りに制御すると共に、非優先伝送チャネルの送信電力を総送信電力が最大送信電力を越えないように制御することで、受信側基地局での優先伝送チャネルの特性を劣化させることなく信号を伝送することが可能となっている。
また、本実施の形態の携帯電話端末によれば、優先伝送チャネルの情報がHS−DPCCHのACKである場合には基地局からの不要な再送を避けることができ、また、HS−DPCCHのCQIである場合には基地局に正確な受信品質情報を伝送することができるため、HSDPAサービスによるダウンリンク高速データの伝送レートの劣化を避けることができる。
〔第2の実施形態の携帯電話端末の構成〕
次に、図4には、本発明の第2の実施の形態の携帯電話端末の構成例を示す。なお、この図4の構成は主要部のみを示し、フィルタ等のその他の構成については省略している。また、当該第2の実施形態の携帯電話端末の各構成要素において、前述の図1に示した第1の実施形態の携帯電話端末と基本的に同一の構成要素については、それぞれ図1と同じ指示符号を付して、それらの説明は省略する。
図4に示す第2の実施形態の携帯電話端末において、CPU/DSP36は、図1で説明したCPU/DSP16と同様に、RLCでの再送訂正処理の機能を備え、HS−DSCHデコーダ12からのデコード結果のデータがRLCで再送訂正可能なものである場合、RLCでの再送訂正処理を行う。また、CPU/DSP36は、メモリ40の残容量により送信バッファ及び受信バッファの使用量を認識する機能を有すると共に、後述する所定の閾値A,Bの情報を内部メモリ等に保持している。さらに、当該第2の実施形態におけるCPU/DSP36は、DPDCHが再送訂正可能かどうかを示すDPDCH再送可能フラグ、HS−DSCHがRLC層で再送訂正可能かどうかを示すHS−DSCH RLC再送可能フラグ、RLC層でDPDCHの再送訂正を実現するための送信バッファ使用量、RLC層でHS−DSCHの再送訂正を実現するための受信バッファ使用量、及び、所定の閾値A,Bの情報を、適宜、優先チャネル選択部38へ送る機能を備えている。
そして、詳細については後述するが、本実施形態における優先チャネル選択部38は、上記CPU/DSP36から供給された各情報に基づいて、優先伝送チャネルの選択を行うようになされている。
〔第2の実施形態における優先伝送チャネルの選択〕
以下、第2の実施形態において、優先チャネル選択部38が、DPDCHとHS−DPCCHの何れを優先伝送チャネルにするか選択する際の優先伝送チャネルの判断材料について説明する。
本発明の第2の実施形態の携帯電話端末の優先チャネル選択部38は、以下に述べる第5の判断材料,第6の判断材料に基づいて、DPDCHとHS−DPCCHの何れを優先伝送チャネルに選択するかを決定している。なお、第5の判断材料と第6の判断材料は、それぞれ個々に用いられても良いし、それらを複合させて用いても良い。
第2の実施形態において、優先チャネル選択部38は、第5の判断材料として、DPDCHに割り当てられているデータがRLCで再送可能かどうか、また、再送可能である場合には、再送に使用する送信バッファに余裕があるかどうかの情報を用いる。具体的には、上記CPU/DSP36から送られてくる上記DPDCH再送可能フラグと上記送信バッファ使用量及び閾値Aの情報を用い、先ず、上記DPDCH再送可能フラグによりDPDCHが再送訂正可能かどうかを判断し、さらに、DPDCHが再送訂正可能であるときには、上記送信バッファ使用量と閾値Aの情報により再送に使用する送信バッファに余裕があるかどうかを判断する。そして、DPDCHに割り当てられているデータがRLCで再送できないか、若しくは、送信バッファに余裕がなく再送困難である場合に、優先チャネル選択部38は、DPDCHを優先伝送チャネルとする。
また、優先チャネル選択部38は、第6の判断材料として、HS−DSCHに割り当てられているデータがRLCで再送可能かどうか、また、再送可能な場合には、再送訂正に使用する受信バッファに余裕があるかどうかの情報を用いる。具体的には、上記CPU/DSP36から送られてくるHS−DSCH RLC再送可能フラグと上記受信バッファ使用量及び閾値Bの情報を用い、先ず、HS−DSCH RLC再送可能フラグによりHS−DSCHがRLC層で再送訂正可能かどうかを判断し、さらに、HS−DSCHがRLC層で再送訂正可能であるときには、上記受信バッファ使用量と閾値Bの情報により再送訂正を実現するための受信バッファに余裕があるかどうか判断する。そして、HS−DSCHに割り当てられているデータがRLCで再送できないか、若しくは、受信バッファに余裕がなく再送困難である場合、優先チャネル選択部38は、HS−DPCCHを優先伝送チャネルとする。
〔第2の実施形態における優先伝送チャネル選択処理のフローチャート〕
次に、図5に示すフローチャートを参照して、上記第5の判断材料,第6の判断材料を複合した場合の優先伝送チャネル選択処理について説明する。
図5において、優先チャネル選択部38は、先ずステップS50の処理として、上記CPU/DSP36から送られてくるDPDCH再送可能フラグにより、DPDCHに割り当てられているデータがRLCで再送可能かどうかを判断する。当該ステップS50において、再送可能でない(つまり再送不可能)と判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS56にてDPDCHを優先伝送チャネルとする。すなわちこの場合、優先チャネル選択部38は、DPDCHデータの再送訂正が不可能であると判断してDPDCHを優先チャネルに選定する。一方、ステップS50にて再送可能であると判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS51へ処理を進める。
ステップS51の処理に進むと、優先チャネル選択部38は、上記CPU/DSP36から送られてくる送信バッファ使用量と閾値Aの情報により、送信バッファの使用量を確認すると共に、その送信バッファ使用量が規定の閾値Aより少ないかどうかを確認する。具体的には、規定の閾値Aとして送信バッファ使用量がバッファ総量の90%より少ないかどうかを判断する。当該ステップS51において、送信バッファ使用量が閾値Aより少なくない(つまり送信バッファ使用量が閾値A以上になっている)と判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS56にてDPDCHを優先伝送チャネルとする。すなわちこの場合、優先チャネル選択部38は、DPDCHデータの再送訂正が困難であると判断して、DPDCHを優先チャネルに選定する。一方、ステップS51にて送信バッファ使用量が閾値Aより少ないと判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS52へ処理を進める。
ステップS52の処理に進むと、優先チャネル選択部38は、上記CPU/DSP36から送られてくるHS−DSCH RLC再送可能フラグにより、HS−DSCHに割り当てられているデータがRLCで再送可能かどうかを判断する。当該ステップS52において、再送可能でない(つまり再送不可能)と判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS55にてHS−DPCCHを優先チャネルとする。すなわちこの場合、優先チャネル選択部36は、HS−DSCHデータのRLCでの再送訂正が不可能であると判断してHS−DPCCHを優先チャネルに選定する。一方、ステップS52にて再送可能と判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS53へ処理を進める。
ステップS53の処理に進むと、優先チャネル選択部38は、上記CPU/DSP36から送られてくる受信バッファ使用量と閾値Bの情報により、受信バッファの使用量が規定の閾値Bより少ないかどうか判断する。具体的には、規定の閾値Bとして受信バッファ使用量が総量の90%より少ないかどうかを判断する。当該ステップS51において、受信バッファ使用量が閾値Bより少なくない(つまり受信バッファ使用量が閾値B以上になっている)と判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS55にてHS−DPCCHを優先伝送チャネルとする。すなわちこの場合、優先チャネル選択部38は、HS−DSCHデータのRLCでの再送訂正が困難であると判断して、HS−DPCCHを優先チャネルに選定する。一方、ステップS53にて受信バッファ使用量が閾値Bより少ないと判断した場合、優先チャネル選択部38は、ステップS54へ処理を進める。
ステップS54の処理に進んだ場合、優先チャネル選択部38は、DPDCHデータとHS−DSCHデータの再送訂正が共に可能ということで優先チャネル無しとする。
なお、優先チャネル選択部38によりチャネル選択がなされた後における図4の構成の動作は、図1の例と同様である。
〔第2の実施の形態のまとめ〕
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態の携帯電話端末によれば、基地局から要求される送信電力が携帯電話端末の最大送信電力Pmaxを越える場合に、DPDCHとHS−DPCCHの各伝送チャネルの優先度を判定し、その判定された優先度に応じて電力配分比を変更し、優先伝送チャネルの送信電力を要求通りに制御すると共に、非優先伝送チャネルの送信電力を総送信電力が最大送信電力を越えないように制御することで、受信側基地局での優先伝送チャネルの特性を劣化させることなく信号を伝送することが可能となっている。
特に、第2の実施形態の場合は、優先度を決定するための条件として、データの再送訂正が可能かどうかを用いており、再送がより困難なチャネル若しくはそれに関連したチャネルを優先伝送チャネルに選定するようにしているため、データの伝送に成功する確率を上げることができる。
すなわち、本発明の第2の実施形態において、DPDCHを優先伝送チャネルに選定した場合、例えば送信電力が規定されている最大送信電力Pmaxを越えても、DPDCHに対しては通信相手側からの要求通りの送信電力を割り当てることができるため、その通信相手側での受信特性を劣化させることなく信号を伝送することができる。特に、当該第2の実施形態において、DPDCHが優先伝送チャネルとなるのは、DPDCHデータの再送訂正が不可能か若しくは困難な状態のときであり、したがって、本実施形態によれば、従来の構成よりDPDCHデータの伝送を成功させる確率を上げることができる。
また、本発明の第2の実施形態において、HS−DPCCHを優先伝送チャネルに選定した場合、送信電力が規定されている最大送信電力Pmaxを越えても、HS−DPCCHに対しては通信相手側からの要求通りの電力を割り当てることができるため、その通信相手側での受信特性を劣化させることなく信号を伝送することができる。これにより、HS−DPCCHのACKやCQIを正しく伝送できる確率が上がることになる。すなわち、ACKを正しく伝送できた場合には、不要なHS−DSCHデータの再送を無くし、代わりに必要なHS−DSCHデータの伝送ができることになるため、HS−DSCHの伝送特性を上げることができるようになる。また、CQIを正しく伝送できた場合には、HS−DSCHが妥当な変調度・符号化率で伝送されることになり、その結果、HS−DSCHを正常に受信できる確率が上がることになる。特に、本実施形態において、HS−DPCCHが優先伝送チャネルとなるのは、HS−DSCHデータのRLCにおける再送訂正が不可能か若しくは困難な状態のときであり、したがって、本実施形態によれば、従来の構成よりHS−DSCHの伝送を成功させる確率を上げることができる。
なお、上述した本発明の各実施の形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した各実施の形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。例えば、本発明は、携帯電話端末に限定されず、他の移動体通信端末にも適用することができる。また、本発明は、W−CDMAのHSDPAサービスに限定されず、他の通信方式にも適用可能である。さらに、各実施の形態では、優先チャネル選択部にて、DPDCHとHS−DPCCHの二つのチャネルについて優先選択を行っていたが、本発明は二つのチャネルに限定されず三つ以上の複数のチャネルについて優先選択を行っても良い。