JP4837335B2 - プロリン蓄積型形質転換酵母とその作出方法及び該酵母の利用方法 - Google Patents
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Description
このうち発酵食品とは、カビ・酵母・細菌などの発酵微生物が有機化合物を分解してアルコール類・有機酸類・二酸化炭素などを生成する発酵反応を利用して作られた食品を意味し、醸造食品とは、発酵・熟成によって作られた食品、すなわち醸造によって作られた食品を意味するものである。
1.有胞子酵母(33属、183種);
ビヒア(Pichia)属;56種
ハンゼスラ属(Hansenula)属;30種
チゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属;8種
サッカロミセス(Saccharomyces)属;7種
2.担子菌酵母(10属、36種)
3.不完全酵母(17属、281種)
カンジダ(Candida);196種
プロリン多産生型遺伝子は、サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)由来のγ−グルタミン酸リン酸化酵素遺伝子の変異体であって以下に示す(1)から(16)の変異のうちの1つ以上を有することを特徴とするプロリン蓄積型形質転換酵母。
(1)Glu149のLysへの置換、
(2)Asn142のAspへの置換及びIle166のValへの置換、
(3)Ile150のThrへの置換、
(4)Ser146のProへの置換、
(5)His306のArgへの置換、
(6)Ala105のValへの置換、
(7)Asn309のAspへの置換及びArg428のCysへの置換、
(8)Arg148のGlyへの置換及びGln351のArgへの置換、
(9)Arg148のGlyへの置換、
(10)Thr126のAlaへの置換、
(11)Leu165のSerへの置換及びVal319のIleへの置換、
(12)Thr144のAlaへの置換、
(13)Asn122のAspへの置換、
(14)Asp413のAsnへの置換、
(15)His316のTyrへの置換、
(16)Leu75のSerへの置換、Leu115のGlnへの置換及びVal197のIleへの置換。
2.受託番号FERM P−20616で寄託した酵母、受託番号FERM P−20617で寄託した酵母、又は受託番号FERM P−20618で寄託した酵母であるプロリン蓄積型形質転換酵母。
3.下記工程を含んでなる、サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)由来のプロリン蓄積型形質転換酵母の作出方法。
a)酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)内プロリン代謝経路において、プロリン分解酵素であるプロリン酸化酵素の遺伝子を破壊することからなるプロリン分解系を抑制する工程、
b)酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)内プロリン代謝経路において、プロリン合成酵素であるγ−グルタミン酸リン酸化酵素をコードする遺伝子を、以下に示す(1)から(16)の変異のうちの1つ以上を導入したサッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)由来のγ−グルタミン酸リン酸化酵素遺伝子の変異体であるプロリン多産生型遺伝子に置換することからなるプロリン合成系を強化する工程、及び
c)細胞内にプロリンを蓄積する菌株を選別分離する工程。
(1)Glu149のLysへの置換、
(2)Asn142のAspへの置換及びIle166のValへの置換、
(3)Ile150のThrへの置換、
(4)Ser146のProへの置換、
(5)His306のArgへの置換、
(6)Ala105のValへの置換、
(7)Asn309のAspへの置換及びArg428のCysへの置換、
(8)Arg148のGlyへの置換及びGln351のArgへの置換、
(9)Arg148のGlyへの置換、
(10)Thr126のAlaへの置換、
(11)Leu165のSerへの置換及びVal319のIleへの置換、
(12)Thr144のAlaへの置換、
(13)Asn122のAspへの置換、
(14)Asp413のAsnへの置換、
(15)His316のTyrへの置換、
(16)Leu75のSerへの置換、Leu115のGlnへの置換及びVal197のIleへの置換。
4.上記1又は2に記載のプロリン蓄積型形質転換酵母を用いて発酵又は醸造を行うことを特徴とする発酵食品又は醸造食品の製造方法。
5.上記1又は2に記載のプロリン蓄積型形質転換酵母を用いて醸造を行うことを特徴とする清酒の製造方法。
本発明のプロリン蓄積型形質転換酵母の作出工程は、図1に示した酵母内プロリン代謝経路において、a)分解系を抑制する工程、b)合成系を強化する工程及びc)プロリン蓄積型形質転換酵母の選別分離工程に大きく分けられる。
まず、分解系の抑制工程a)として、最初のプロリン分解酵素であるプロリンオキシダーゼ(プロリン酸化酵素)の遺伝子をコードしているPUT1を破壊する(図2)。
遺伝子破壊の方法は種々の方法が報告されているが、ある特定の遺伝子のみ破壊できるという点で、相同組換え法を用いるのが好ましい。相同組換えの中でも、自然復帰しない破壊株が取得でき、その結果、組換え体を取り扱う上で安全性が高い菌株が得られるという観点からすると、1段階染色体置換破壊法(one-step gene disruption)が好ましい。
次に、合成系の強化工程b)として、上記工程a)で得られたPUT1破壊株を用いて野生型PRO1を変異型PRO1に置換させる(図3)。変異型PRO1を作成する方法としては、PCR法により野生型PRO1遺伝子にランダム変異を導入する方法が好ましいが、特にこの方法に限定されるものではない。
最後に、上記工程b)で得られた形質転換酵母をYPD完全培地と5-フルオロオロト酸(5-FOA)培地で培養することにより、野生型PRO1を含む領域を脱落させ、変異型PRO1のみが染色体に残る、プロリン蓄積株(AZC耐性)を分離する(図3)。
(1)酵母 Saccharomyces cerevisiae;
INVDput1pro1 (S288C系統株, MATα his3-Δ1 leu2 trp1-289 ura3-52 put1::URA3 pro1::CgHIS3 )を使用した。
・DH5α;
F- λ- φ80dlacZΔM15 Δ(lacZYA argF)U169 deoR recA1 endA1
hsdR17 (rk - mk +) phoA supE44 thi-1 gyrA96 relA1
・JM109;
recA1 endA1 gyrA96 thi-1 hsdR17 (rk - mk +) e14- (mcrA-) supE44 relA1 Δ(lac-proAB) /F’[traD36 proAB+ lacIq lacZΔM15 ]
・Rosetta (DE3)(Merck社);
F- ompT hsdSB (rB - mB -) gal dcm (DE3) [pRARE (argU, argW, ileX, glyT, leuW, proL) (CmR) ]
真核生物のタンパク質を効率的に発現するために、大腸菌内では使用頻度の低いコドンに対応するtRNA遺伝子をコードするプラスミド(pRARE)を保持している。また、選択マーカーとしてクロラムフェニコール耐性(CmR)遺伝子も含んでいる。
「pBlue-PUT1」は、E. coliでの複製起点と選択マーカーのアンピシリン耐性遺伝子を含むpBluescriptIISK+(東洋紡社)のSalI-SacIサイトにPUT1断片を含む約2.6 kbの断片を組み込んでなるプラスミドである。
使用した培地は、以下のとおりである。
グルコース 2%
ポリペプトン 2%
酵母エキス 1%
必要に応じて寒天(2%)を添加した。
グルコース 2%
Yeast nitrogen base w/o amino acids (Difco 社) 0.67%
必要に応じて各菌株の要求物質(L-Leucine、L-Histidine-HCl、L-Tryptophan を各40 mg/L、0.1% L-Proline)または寒天(2%)を添加した。
グルコース 2%
Yeast nitrogen base w/o (NH4)2SO4, amino acids(Difco Laboratories社)0.67%
必要に応じて窒素源を0.1%プロリンまたはグルタミン酸ナトリウムとし、寒天(2%)も添加した。
Yeast nitrogen base w/o amino acids (Difco 社) 0.67%
グルコース 2%
Drop-out mixture 0.2%
必要に応じて寒天(2%)を添加した。上記「Drop-out mixture」 は、表1の物質から必要に応じて特定の物質を除き、残りをよく混合したものである。
トリプトン 1%
酵母エキス 1%
NaCl 0.5%
必要に応じて アンピシリン(Amp)(最終濃度50μg/ml)、クロラムフェニコール(Cm)(最終濃度34μg/ml)、寒天 (2%)を添加した。
表2の通り。
Yeast nitrogen base w/o amino acids (Difco Laboratories 社) 1.5%
硫酸アンモニウム 5%
Casamino acid 940ml
20×M9 5ml
グルコース(40%) 10ml
1M MgSO4 0.8ml
なお、必要に応じてアンピシリン(最終濃度50μg/ml)、クロラムフェニコール(最終濃度34μg/ml)を添加した。
Na2HPO4 67.8g
KH2PO4 30g
NaCl 5g
NH4Cl 10g
以上の成分を水に溶かし、500mlに調整したものである。
本実験で用いたDNAオリゴマーは以下に示した通りであり、各配列は配列表に示した。各オリゴマーの合成は北海道システムサイエンス社に委託した。
pro1-SacI/2:配列番号2
pETUpstream:配列番号3
DuetDOWN1 primer:配列番号4
DuetUP2 primer:配列番号5
T7 Terminator:配列番号6
Duet downdown:配列番号7
Duet upup:配列番号8
pro2-NdeIprimer:配列番号9
PRO2-KpnI:配列番号10
pro1-HindIII.lib (+):配列番号11
pro1-SacI.lib (-):配列番号12
PRO1-1:配列番号13
PRO1-2:配列番号14
PRO1-3:配列番号15
PRO2-1:配列番号16
PRO2-2:配列番号17
PRO2-3:配列番号18
(1)細胞内プロリン含量の測定
(1)-1.乾燥重量の測定
培養後の吸光度 (OD600) を測定し、
X=y/978.45
の式(X;5mlあたりの乾燥重量(g)、y=OD600)を用いて菌体の乾重量を算出した。
各菌株を5mlのSD培地で30℃で48時間培養した後、遠心分離機(3,500回転/分)に10 分間かけて集菌し、さらに洗浄し、0.5mlの滅菌水で菌体を懸濁した後、100℃で10分間熱水処理した。遠心分離(12,000回転、5分)の後、上清を0.02N HClで5〜10倍に希釈し(ただし、清酒に関しては50倍希釈)、フィルターろ過後、アミノ酸アナライザー(日立社製:L-8500A 高圧アミノ酸分析計)に供した。スタンダードにはアミノ酸混合標準液(各アミノ酸2nmol/20μl含有)を用いた。
各菌株を10mlのYPD培地で30℃、48時間振とう培養後(前培養)、SD(9ml)+前培養液(1ml)[エタノールfinal 0%(v/v)]、SD+10%エタノール(9ml)+前培養液(1ml)[エタノールfinal 9%(v/v)]、SD+20%エタノール(9ml)+前培養液(1ml)[エタノールfinal 18%(v/v)]を調製し、30℃に静置して本培養を行った。0、2、5及び8日後に各培養液を希釈し、YPDプレートに塗り広げ、30℃、2日間培養した。生じたコロニー数を数え、培養0日の生菌数を100%として生存率を算出した。また、5mlの前培養液を用いて細胞内プロリン含量を測定した。
各菌株を5mlのSD培地で30℃、48時間培養し、遠心分離(3,600回転/分、6分)によって回収した細胞を滅菌水に懸濁後、0.1mlを滅菌水で103〜105倍希釈し、各0.1mlずつをYPD寒天培地に塗布した。30℃で2〜3日培養後に生育してきたコロニー数を計測し、冷凍前の生菌数を算出した。また、細胞懸濁液を0.1mlずつ数本のマイクロチューブにとり、-20℃のフリーザー内で保存した(冷凍ストレス処理)。各サンプルは一定時間後に30℃で15分間静置することによって解凍し、冷凍前サンプルと同様に生菌数を測定した。なお、冷凍後の生存率は、冷凍前の生菌数を100%として、冷凍後の生菌数を冷凍前の生菌数で割ることにより算出した。
各菌株を5mlのSD培地で30℃、48時間培養し、培養液を101〜104に段階希釈後、各3μlをSD寒天培地にスポッティングし、すぐに50℃で一定時間の熱ショックを与え、その後30℃で培養した。
各菌株を5mlのSD培地で30℃、48時間培養し、培養液を101〜104に段階希釈後、各3μlをソルビトール含有SD寒天培地にスポッティングし、30℃で培養した。
50mlのSD液体培地で30℃、48時間培養後、フィルター上に集菌し、液体窒素に10秒間浸した。
(7)-1. 酵母の細胞抽出液の調製
各菌株を50mlのSD培地で30℃、OD600=3.0程度まで振とう培養し、遠心集菌(3,500回転/分、10分、4℃)後、細胞を1mlの冷却滅菌水に懸濁し、再度遠心分離(12,000回転/分、1分、4℃)した。次に、細胞体積の3倍量の抽出バッファーとProtease Inhibitor Cocktails(Sigma社;湿重量20gあたり1ml)を加えて懸濁後、懸濁液と等量のガラスビーズ(安井器械社;YGBLA-05 0.5mm)を加え、マルチビーズショッカーを用いて菌体を破砕(2,500回転/分、on time 60秒・off time 60秒、5cycles)し、遠心分離(15,000回転/分、30分、4℃)後の上清を細胞抽出液とした。
Tris-HCl (pH 7.5) 20mM
EDTA (pH 8.0) 1mM
MgCl2 5mM
グリセロール 5%
<Hydroxamate法>
反応液として
A液(250mM Tris base、500mM Hydroxylamine-HCl (pH 7.0))、
B液(250mM L-Glutamic acid(ワコー社)、100mM MgCl2)、
C液(50mM ATP (pH 7.0)(ワコー社))、
D液(dH2O(フィードバック阻害を調べるときはL-Prolineを添加))
及び反応停止液液として
FeCl3・6H2O 5.5g、TCA 2g、12N HCl 2.1mlを滅菌水で溶解し、100mlに調整したもの
を調製する。
反応液
1M Tris-HCl (pH 7.5) 100μl
1M MgCl2 25μl
1M Na・Glutamate 75μl
100mM ATP 50μl
40mM NADPH 10μl
dH2O 690μl
反応液をマイクロチューブ内で混合後、25℃、5分間プレインキュベートした。次に、50μlの細胞抽出液を添加し、OD340の減少を測定した。なお、酵素活性は、1分間に1nmolのNADPHを減少する酵素量を1unitとした。
プロリンを蓄積する清酒酵母の作製は、清酒酵母の一倍体であるXUW-14 (MATα ura3 trp1)をTRP1でPUT1破壊して得られるXUDput1を変異型PRO1(D154N)で置換することによってプロリン蓄積株XUDput1-MTを得た。以下、これについて具体的に順を追って説明する。
図2に示したように、プラスミドpBlue-PUT1を制限酵素BalIとAatIで切断し、電気泳動によりPUT1のORFの一部を除去した断片(3.9kb)を回収し、プラスミドpRS414(Stratagene社より購入)を制限酵素NaeIとScaIで切断して得られたTRP1含有断片(2.6kb)をこれに連結した後、大腸菌JM109株に導入した。アンピシリン耐性を示す形質転換体からプラスミドを調製し、これをpBlue-Dput1-TRP1と命名した。
より詳しくは、PUT1の破壊の確認は、以下4つの方法によって確認された。
一般に、酵母はグルタミン酸やプロリンを唯一のN源として生育できるが、PUT1破壊株はプロリンを資化できないことが知られている。そこで、本実験では、SD寒天培地でリフレッシュした各菌株を0.1%グルタミン酸ナトリウム(MSG)、またはプロリンを唯一の窒素源に用いた寒天培地(C源は2%グルコース)にそれぞれストリーク後、30℃で培養し、生育度を比較した。その結果、野生株(XUW-TRP)はプロリンを唯一のN源として生育したが、プロリンオキシダーゼをコードするPUT1を破壊した菌株(XUWDput1)では生育できないことが確認された。
先に述べた方法によって得られたコロニーから染色体DNAを調製し、各プライマーを用いたPCRによってPUT1の破壊を確認した。TRP1内部のプライマーを片側に用いると、XUW-TRP(野生株)では増幅は見られなかったが、XUDput1(PUT1破壊株)では特異的なバンドが増幅しており、PUT1破壊が確認できた。
次に、各菌株から細胞抽出液を調製し、プロリンオキシダーゼ活性を測定した。測定結果を表4に示す。この測定結果をみると、野生株(XUW-TRP)はいずれの培地でもプロリンオキシダーゼ活性が検出できた。特に、プロリン添加培地では約3倍に活性値が上昇しており、プロリンによってPUT1の発現が誘導されていることが確認できた。一方、PUT1破壊株(XUDput1)では、活性はほとんど検出されなかった。
最後に、各菌株を最少培地で2日間培養後、細胞内のプロリン含量を測定した。その測定結果を表5に示す。この測定結果をみると、通常のSD培地では両菌株ともプロリンはほとんど検出されなかったが、プロリンを添加した培地では、PUT1破壊株(XUDput1)はプロリンを分解できないため、細胞内にプロリンが蓄積していた(約0.7%乾燥重量)。
プラスミドpRS-D154NPRO1を制限酵素HindIIIとSacIで切断し、電気泳動により変異株PRO1遺伝子(D154N)を含む断片(1.8kb)を回収し、プラスミドpR406(Stratagene社より購入)を制限酵素HindIIIとSacIで切断して得られたURA3含有断片(4.3kb)と連結した後、大腸菌JM109株に導入した。アンピシリン耐性の形質転換体から変異型PRO1を組み込んだプラスミドを抽出し、PRO1内に一ヶ所存在するXbaIで切断した直鎖状断片を調製した後、上記a)で得られたXUDput1を形質転換し、SC-Uraプレートに塗り広げ、30℃で2〜3日間培養した。
こうして得られた5-FOA耐性コロニーをAZC(100μg/ml)を含むSD培地にストリークし、AZC耐性コロニーを変異株PRO1遺伝子(D154N)が染色体に残った菌株として選別し、XUDput1-MTとして命名し、この形質転換酵母(XUDput1-MT)はFERM P−20171として独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した。
pAD-WTPRO1をテンプレートに、プライマー(pro1-HindIII.lib(+)、pro1-SacI.lib(-))を用いてerror-prone PCRを行い、5’末端にHindIIIサイト、3’末端にSacIサイトを付加したPRO1を含むDNA断片を増幅した。error-prone PCRは、通常のPCRよりdNTPやMgCl2が低濃度(×1/2 dATP、×1/2 dTTP、×1/5 dCTP、×1/5 dGTP、×1/2 MgCl2)の各反応系でPCRを行い、変異の導入を促した。その後、DNA断片をHindIII、SacIで切断し、pAD4のHindIII、SacIサイトに連結して大腸菌DH5αに導入後、生じたアンピシリン耐性コロニーからプラスミドを調製した。また、アンピシリン耐性コロニーをランダムに数個ずつ選択し、DNA sequencingにより各PCR反応系での塩基置換頻度を確認した。最終的に、約12,000個のコロニーからプラスミドを調製し、これをPRO1のPCRランダム変異ライブラリーとした。
PRO1のPCRランダム変異ライブラリーを、染色体上のPRO1と分解系酵素proline oxidaseの遺伝子PUT1を破壊し、PRO2を多コピーで導入した株INVDput1pro1 (pTV-PRO2) に導入後、AZC(15μg/ml)含有SDプレートに塗布した。また、pAD-WTPRO1、pAD-D154NPRO1による形質転換も同時に行い、各形質転換体をAZCに対するそれぞれnegative controlとpositive controlとした。AZC含有プレート上で野生型PRO1を有するINVDput1pro1 (pAD-WTPRO1, pTV-PRO2) より生育が早いコロニーを選択し、再度AZC含有プレートにストリークし培養した。その結果、最終的に約21,000個の形質転換体から、23個のAZC耐性クローンを取得した。
PRO1にランダム変異を導入した結果、プロリンを過剰合成すると考えられるAZC耐性クローンを多数取得できた。そこで、これらのクローン(GK変異株)が細胞内にプロリンを蓄積しているかどうかを調べるため、5mlのSD培地で48時間培養後、細胞内のプロリン含量を測定した(表8)。その結果、Asp154Asn置換よりもプロリン含量を増加させる変異型GKが9種類得られ、特にプロリン含量が高いアミノ酸置換は、Asp154の比較的近傍に集中している傾向が見られた。プロリン含量が高かった菌株については、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、FERM P−20616(Saccharomyces cerevisiae INVDput1pro1-E149K; Glu149のLysへの置換体)、FERM P−20617(Saccharomyces cerevisiae INVDput1pro1-I150T; Ile150のThrへの置換体)、FERM P−20618(Saccharomyces cerevisiae INVDput1pro1-N142D/I166V; Asn142のAspへの置換体及びIle166のValへの置換体)として、寄託した。
実験室酵母(MB329-17C、FH515)では、γ-GKのアミノ酸置換(D154N)によってFH515ではプロリンを蓄積し、かつエタノール存在下での生存率も高いことが判明した。
Claims (5)
- プロリン分解酵素遺伝子が破壊され、かつ、野生型プロリン合成酵素遺伝子がプロリン多産生型遺伝子で置き換られてなるサッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)由来のプロリン蓄積型形質転換酵母であって、
プロリン多産生型遺伝子は、サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)由来のγ−グルタミン酸リン酸化酵素遺伝子の変異体であって以下に示す(1)から(16)の変異のうちの1つ以上を有することを特徴とするプロリン蓄積型形質転換酵母。
(1)Glu149のLysへの置換、
(2)Asn142のAspへの置換及びIle166のValへの置換、
(3)Ile150のThrへの置換、
(4)Ser146のProへの置換、
(5)His306のArgへの置換、
(6)Ala105のValへの置換、
(7)Asn309のAspへの置換及びArg428のCysへの置換、
(8)Arg148のGlyへの置換及びGln351のArgへの置換、
(9)Arg148のGlyへの置換、
(10)Thr126のAlaへの置換、
(11)Leu165のSerへの置換及びVal319のIleへの置換、
(12)Thr144のAlaへの置換、
(13)Asn122のAspへの置換、
(14)Asp413のAsnへの置換、
(15)His316のTyrへの置換、
(16)Leu75のSerへの置換、Leu115のGlnへの置換及びVal197のIleへの置換。 - 受託番号FERM P−20616で寄託した酵母、受託番号FERM P−20617で寄託した酵母、又は受託番号FERM P−20618で寄託した酵母であるプロリン蓄積型形質転換酵母。
- 下記工程を含んでなる、サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)由来のプロリン蓄積型形質転換酵母の作出方法。
a)酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)内プロリン代謝経路において、プロリン分解酵素であるプロリン酸化酵素の遺伝子を破壊することからなるプロリン分解系を抑制する工程、
b)酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)内プロリン代謝経路において、プロリン合成酵素であるγ−グルタミン酸リン酸化酵素をコードする遺伝子を、以下に示す(1)から(16)の変異のうちの1つ以上を導入したサッカロマイセス(Saccharomyces)属セレビシエ(cerevisiae)由来のγ−グルタミン酸リン酸化酵素遺伝子の変異体であるプロリン多産生型遺伝子に置換することからなるプロリン合成系を強化する工程、及び
c)細胞内にプロリンを蓄積する菌株を選別分離する工程。
(1)Glu149のLysへの置換、
(2)Asn142のAspへの置換及びIle166のValへの置換、
(3)Ile150のThrへの置換、
(4)Ser146のProへの置換、
(5)His306のArgへの置換、
(6)Ala105のValへの置換、
(7)Asn309のAspへの置換及びArg428のCysへの置換、
(8)Arg148のGlyへの置換及びGln351のArgへの置換、
(9)Arg148のGlyへの置換、
(10)Thr126のAlaへの置換、
(11)Leu165のSerへの置換及びVal319のIleへの置換、
(12)Thr144のAlaへの置換、
(13)Asn122のAspへの置換、
(14)Asp413のAsnへの置換、
(15)His316のTyrへの置換、
(16)Leu75のSerへの置換、Leu115のGlnへの置換及びVal197のIleへの置換。 - 請求項1又は2に記載のプロリン蓄積型形質転換酵母を用いて発酵又は醸造を行うことを特徴とする発酵食品又は醸造食品の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のプロリン蓄積型形質転換酵母を用いて醸造を行うことを特徴とする清酒の製造方法。
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