JP4836982B2 - 高周波加熱装置 - Google Patents
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Description
図12は平板上にスロット301を渦巻状に配列してスロットアンテナ300を構成したもの、図13は平板上に複数の異なる孔303、304、305、306を設けてダイポールアンテナ302を構成したものであり、それぞれ円盤310の略中心に設けたアンテナシャフト(回転軸)308から高周波の給電を行い、アンテナ表面に設置されているスロット301またはダイポール307に局所的に強い高周波を発生させることで、被加熱物9の加熱を実現しているものである。
具体的には、スロット301を設置したアンテナ300においてはスロット301部分に、ダイポール307を設けたアンテナ302において、ダイポール先端部分309に高周波を強く伝播することで、被加熱物9を強く加熱する部分が存在することとなる。
この事象は逆説的かつ相対的に表現すると、アンテナ上に強く加熱されない部分が存在することを意味している。すなわち、被加熱物9に対する高周波の照射が強い部分と弱い部分が存在することを示し、被加熱物9はよく加熱される部分と加熱されない部分、すなわち加熱ムラが存在するという課題があった。
さらに、スロットアンテナやダイポールアンテナの寸法は発振する高周波の波長により決まるものであり、効率的に電波を放射しようとした場合、例えばスロットアンテナではスロット部が1/2波長、ダイポールアンテナではダイポール部が給電部であるシャフトから両側に1/4波長ずつ、合計1/2波長の長さが必要となる。
例えば、家庭用電子レンジに使われる高周波の波長である2.45GHzを参照すると、その波長は122.4mmとなり、1/2波長は61.2mmとなる。家庭用の電子レンジの底面の寸法は大型のものでもおおよそ幅400mm×奥行き300mm程度であり、周辺部品の配置をも勘案すると、アンテナ30の平板の大きさは大きくとも直径200mm程度となる。
このようなアンテナにおいて、例えば図12の従来例に示すような、ラジアル状に多数のスロットを配置することは、効率的に高周波を発生する略1/2波長のスロット寸法では配置不可能であるため、結果的に被加熱物への加熱効率が非常に悪いアンテナとなってしまう課題がある。
すなわち、被加熱物へ効率的な高周波の入射・吸収を促し、加熱を促進させるとともに、被加熱物内の加熱ムラを是正するためには、アンテナ上においてできるだけ広範な部分から均等な高周波を発生させることが重要となるが、従来の高周波加熱装置では局所的に強い電界を発生せざるを得ないアンテナ形状となるため、必ずしも十分な加熱効率化や加熱ムラ是正が行われてこなかったという課題がある。
前記アンテナは、高周波を前記加熱室側へ放射するアンテナ平板と、前記アンテナ平板に2分岐されて接続されたループ状の導電径路部と、前記導波管内に位置し、前記導電径路部を介して前記アンテナ平板に給電する給電シャフトと、前記加熱室の底部に設けられたアンテナ室内に当該アンテナを固定するアンテナ固定手段とを備え、
前記ループ状の導電経路部は、前記アンテナ平板と同一平面上で、90゜ずれた位置に略直角に接続されているとともに、一方の導電経路部に対して、他方の導電経路部が、発振される高周波の1/4波長分だけ長くなっており、
さらに、前記アンテナは、前記アンテナ平板と前記ループ状の導電径路部とを1組とした複数組をアームを有する接続部材で前記ループ状の導電径路部と相互に接続し、前記接続部材の中心部に前記給電シャフトを結合したものである。
本発明の実施の形態1を図1〜図5に示す。図1は本発明の実施の形態1に係る高周波加熱装置の断面図であり、図2はこの高周波加熱装置の開扉状態を示す外観斜視図である。図3は高周波伝播のために発明したアンテナの上面図である。図4はこのアンテナによる円偏波発生原理を説明するための表面電流遷移図である。図5は加熱室底面における加熱室内へ高周波を伝播させるための給電部の主要部を示す断面図(a)、(b)と上面図(c)である。
高周波発振器2であるマグネトロンからは例えば電子レンジでは2.45GHzの高周波が発振される。家庭用の電子レンジでは出力約1000Wの高周波が発振されている。発振された高周波は、導電体で閉塞した形態に構成された導波管3内において、空間を伝播する。導波管3と加熱室底壁13はシャフト穴15で結合されており、導波管3内の空間を伝播している高周波は、シャフト穴15(図1、図5参照)を経由して加熱室1内へ伝播する仕組みである。
また、導電経路部A21と導電経路部B22は経路長を違えることで、同時に給電シャフト23上で励起された電流が、それぞれの位相を変化させた状態でアンテナ平板20に流入させることを可能とする。
なお、本発明のアンテナ4は、図3に示すとおり、重心はシャフト上になく偏心していることから、特に加熱室内が高温となった場合の剛性を確保するために、板厚は0.3mm以上、好ましくは0.5〜1mmにて構成する。
これは紙面右側から流入する導電経路部B22においても同じ現象となるが、電流源である給電シャフト23から、アンテナ平板20への流入距離を違えているために、アンテナ平板20へ流入する多さは変化することとなる。
すなわち電流の動きに伴い発生する紙面鉛直方向に発生される電磁波は、強電界部分を円環状に位相に伴って移動していくこととなる。
被加熱物9を加熱する際にこの時間オーダーは通常数十秒〜数十分である加熱時間や通常5〜6rpm程度で回転するアンテナの回転速度と比較して、はるかに小さいオーダーであるため、被加熱物9に与えられる高周波は、事実上、平板において円環状に強い電界を与えているのと同様となる。
前述したように、アンテナ4は重心位置が給電シャフト23から偏心しているので、給電シャフト23を鉛直に、アンテナ4を水平に保持するために、給電シャフト23の周りのアンテナ室14底面上に、一定以上の径を有する、例えばセラミックなどからなる高周波透過性の円筒状の支持部材5aを給電シャフト23と同軸上に嵌合して設置する。より好ましくは、シリコーンなどの耐熱性接着剤を用いて、支持部材5aの上下面をループ状導電径路部A21とB22の下面およびアンテナ室底面(加熱室底壁13)に接着固定するとよい。
このような固定手段5でアンテナ4を固定することにより、アンテナ4は加熱室底壁13や導波管3に触れることなく設置が可能となる。また、従来のようにアンテナを回転させるアンテナ駆動モータを必要としないので、その分コスト低減が可能となる。
図6はアンテナ4のアンテナ平板20を方形形状とした変形例を示す上面図である。その他の構成は実施の形態1と同様であり、同一の構成部分には同一符号を付し、それについての説明は省略する。
方形状のアンテナ平板20は、少なくとも1辺(例えば、図6に示す横辺)の長さを発振される高周波の略1/2波長の長さとする。他方の辺(図6に示す縦辺)の長さは高周波の1/2波長以上の長さであればよい。また、導電径路部A21と導電径路部B22は、それぞれ辺の中央部に略直角に接続される。径路長については、前述したとおり、例えば一方の導電径路部A21に対して、他方の導電径路部B22を高周波の1/4波長分だけ長くする。また、アンテナ平板20の角部や導電径路部の直角曲げ部分の角部には2mm程度のアール26をつける。これにより、高出力時に電界が集中してスパークを起こすおそれを低減することができる。
図7は本発明の実施の形態3に係る高周波加熱装置のアンテナの上面図で、前記円偏波発生原理を元に複数のアンテナ平板20とそれに対応する数のループ導電経路部を接続した2つの例を示すものである。
図7(a)に示す複合アンテナ4Aは、アンテナ平板20とループ状の導電径路部A21および導電径路部B22とを1組として4組を円周方向に配し、これらを十字状のアーム27aを有する接続部材27により相互に接続したものである。接続部材27の中心部には給電シャフト23を垂直に結合するためのシャフト結合部24が設けられている。
図7(b)に示す複合アンテナ4Bは、アンテナ平板20とループ状の導電径路部A21および導電径路部B22とを1組として6組を上下方向に配し、これらを短冊状のアーム27bを有する接続部材27により相互に接続したものである。接続部材27の中心部には上記と同様に、給電シャフト23を垂直に結合するためのシャフト結合部24が設けられている。複合アンテナ4A、4Bのいずれも、高周波加熱装置の大きさに対応して選ばれる。また、複合アンテナ4A、4Bは金属板のプレス加工により形成される。また、十字状のアーム27aおよび短冊状のアーム27bは、一方の導電径路部A21に対する他方の導電径路部B22の経路長が、発振される高周波の1/4波長分だけ長くなる位置に接続される。そして、中心部のシャフト結合部24には給電シャフト23が鉛直方向に接続されており、さらに図5にて説明したように、高周波透過性の円筒状の支持部材5aを給電シャフト23に同軸上に嵌合することにより、複合アンテナ4A、4Bを加熱室底壁13(アンテナ室14底面)上に固定設置する構成となっている。なお、複合アンテナ4A、4Bにおける単体のアンテナ4の形状は円形に限らず、図6に示した方形形状とすることもできる。
以下、本発明に係る高周波加熱装置のアンテナ固定方法の別例について説明する。
図8は実施の形態4におけるアンテナ固定部5の拡大断面図である。本実施の形態は、加熱室1底部より円筒状の高周波透過部材である積層マイカなどをアンテナ4や、複合アンテナ4A、4Bの形状に合わせ、水平方向に重心が安定するように積層する。該積層された高周波透過部材上面とループ状導電径路部の下面とを貼り合わせて、アンテナ4や複合アンテナ4A、4Bを前述したように加熱室底壁13や導波管3と接触することなく任意の高さに固定している。なお、円筒状の積層支持部材の厚みは全て同じであってもよく、異なっていてもよい。
図9は実施の形態5におけるアンテナ固定部5の拡大断面図である。本実施の形態は、加熱室1の底面(アンテナ室14の上面)に具備されている高周波透過板8の裏面にアンテナ平板20の上面部を接着し、アンテナ4や、複合アンテナ4A、4Bを固定するアンテナ固定方法である。
図10は実施の形態6におけるアンテナ固定部5の拡大断面図である。本実施の形態のアンテナ固定方法は、セラミックなどの高周波透過性の台座28と給電シャフト23をネジなどで結合し、該台座28底面を導波管3底面と接着し、アンテナ4や複合アンテナ4A、4Bを固定する方法である。アンテナ平板20の下面より台座28底面までの距離が長く、重心が上方に偏りやすい傾向があるため、外乱などにより台座28が倒れないよう、導波管3へ台座28を固定する絞り凹部29を設けている。
また、使用環境や経年劣化により、高周波透過性の支持部材が溶けたり、割れるなど劣化や不具合が生じ、アンテナ4や複合アンテナ4A、4Bを鉛直方向に支持することが出来なくなり、アンテナ4や複合アンテナ4A、4Bが傾いたり倒れたりする可能性がある。このような不具合が生じた場合には、アンテナが傾いたり倒れて、加熱室底部や導波管3へ接触してしまい、導波管3より高周波が効率よく伝送できなくなり効率が低下したり、局所集中を起こす可能性がある。このような場合には、加熱室1上部に設置された温度検知装置7により加熱室1内の温度検知を行い、単位時間当たりの温度上昇が一定の値以下すなわち加熱不足、もしくは局所集中加熱を検知した場合には、前記不具合が生じたと判断し、運転停止、もしくは故障を報告するメッセージを操作パネル10に設置された表示部に表示を行う故障報告機能を有するものとする。また、異常が生じた場合、放射した高周波が高周波発振器2に反射して戻り、自己発熱をする場合もあるため、高周波発振器2の温度も同時にモニタリングが出来るよう検知装置を設けることが望ましい。
Claims (11)
- 被加熱物を収容する加熱室と、被加熱物を加熱するための高周波を発振する高周波発振器と、前記加熱室に接続され、前記高周波発振器から発振された高周波を前記加熱室に導く導波管と、前記導波管内を伝播する高周波を前記加熱室へ伝播するアンテナとを備え、
前記アンテナは、高周波を前記加熱室側へ放射するアンテナ平板と、前記アンテナ平板に2分岐されて接続されたループ状の導電径路部と、前記導波管内に位置し、前記導電径路部を介して前記アンテナ平板に給電する給電シャフトと、前記加熱室の底部に設けられたアンテナ室内に当該アンテナを固定するアンテナ固定手段とを備え、
前記ループ状の導電経路部は、前記アンテナ平板と同一平面上で、90゜ずれた位置に略直角に接続されているとともに、一方の導電経路部に対して、他方の導電経路部が、発振される高周波の1/4波長分だけ長くなっており、
さらに、前記アンテナは、前記アンテナ平板と前記ループ状の導電径路部とを1組とした複数組をアームを有する接続部材で前記ループ状の導電径路部と相互に接続し、前記接続部材の中心部に前記給電シャフトを結合した
ことを特徴とする高周波加熱装置。 - 前記アンテナ平板は、直径を、発振される高周波の略1/2波長とする円形状であることを特徴とする請求項1記載の高周波加熱装置。
- 前記アンテナ平板は、少なくとも1辺の長さを、発振される高周波の略1/2波長とする方形形状であることを特徴とする請求項1または2記載の高周波加熱装置。
- 前記導電経路部の直角曲げ部分にはアールをつけることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波加熱装置。
- 前記方形形状のアンテナ平板の角部にはアールをつけることを特徴とする請求項3記載の高周波加熱装置。
- 前記アンテナ平板および前記導電経路部の厚みは0.3mm以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高周波加熱装置。
- 前記アンテナ固定手段は、高周波透過性の円筒状支持部材を前記給電シャフトと同軸上に前記アンテナ室底面上に設置して、前記円筒状支持部材により前記アンテナを支持する構成であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の高周波加熱装置。
- 前記アンテナ固定手段は、前記アンテナ平板の上面部を前記アンテナ室上面の高周波透過板の裏面に接着する構成であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の高周波加熱装置。
- 前記アンテナ固定手段は、前記給電シャフトの下部に高周波透過性の台座を設け、前記台座を前記導波管の底部にて支持する構成であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の高周波加熱装置。
- 前記円筒状支持部材が複数積層されていることを特徴とする請求項7記載の高周波加熱装置。
- 前記加熱室内に温度検知手段を設け、該温度検知手段により温度不足または局所加熱を検知したときには、運転停止または故障を告げる報知手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の高周波加熱装置。
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