以下、本発明を実施するための好ましい形態について図面を参照しながら説明する。本発明を適用した動力伝達装置の代表断面図を図2に示し、図3にモータ駆動機構を含む動力伝達装置のスケルトン図を示しており、まずこれらの図面を参照して動力伝達装置1の全体構成から説明する。なお図2では、図面の煩雑化を避けるためメインシャフト等の主要な回転軸とトランスミッションケースのみにハッチングを施している。
動力伝達装置1は、エンジンENGと、このエンジンの出力軸ESにトルクコンバータTCを介して連結された自動変速機(以下トランスミッションという)2と、トランスミッション2の車軸側に配設された第1駆動モータM1と、トランスミッション2とエンジンENGとの間に配設された第2駆動モータM2等を備えて構成され、エンジンENGの回転駆動力をトランスミッション2を介して左右の駆動輪WL,WRに伝達し車両を走行させる。また第1駆動モータM1及び第2駆動モータM2は、電気モータ・ジェネレータであり、車載のバッテリにより駆動されてエンジンENGの駆動力をアシストし、あるいはエンジン停止時にモータの駆動力で走行することが可能であるとともに、エンジン走行時や減速走行時等に発電を行ってバッテリの充電を行うことができるようになっている。すなわち、動力伝達装置の駆動源は、エンジンENGとこれらの駆動モータM1,M2とからなり、ハイブリッド型になっている。
トランスミッション2は、後述する第1オイルポンプP1または第2オイルポンプP2(図4を参照)により発生された油圧を制御することで変速制御がなされる前進5速及び後進1速の平行軸式の変速機構であり、エンジンENGのクランクシャフトESにロックアップ機構LCを有するトルクコンバータTCを介して接続されたメインシャフト10と、このメインシャフト10と平行に延びて配設されるとともに、複数のギヤ列を介してメインシャフト10に接続されたセカンダリシャフト20、サードシャフト30、カウンタシャフト40を備え、トランスミッションケース3の内部に配設される。
メインシャフト10には、メイン3速ギヤ13が結合配設されるとともに、メイン4速ギヤ14、メイン5速ギヤ15、及びメイン5速ギヤ15と一体に連結されたメインリバースギヤ16が相対回転自在に配設されている。またメインシャフト10には、それぞれ相対回転自在に配設されたメイン4速ギヤ14をメインシャフト10に結合させる4速クラッチC4、メイン5速ギヤ15及びこれと一体のメインリバースギヤ16をメインシャフト10に結合させる5速クラッチC5が設けられている。
セカンダリシャフト20には、セカンダリ1速ギヤ21及びセカンダリ2速ギヤ22が相対回転自在に配設され、セカンダリアイドルギヤ23が結合配設されている。またセカンダリシャフト20には、相対回転自在に配設されたセカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合させる1速クラッチC1、セカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介することなく直接セカンダリシャフト20に結合させる1速ホールドクラッチCL、及び相対回転自在に配設されたセカンダリ2速ギヤ22をセカンダリシャフト20に結合させる2速クラッチC2が設けられている。
サードシャフト30には、メイン3速ギヤ13と噛合するサード3速ギヤ33が相対回転自在に配設され、メイン4速ギヤと噛合するサード4速ギヤ34が結合配設されるとともに、相対回転自在に配設されたサード3速ギヤ33をサードシャフトに結合させる3速クラッチC3が設けられている。
カウンターシャフト40には、セカンダリ1速ギヤ21と噛合するカウンタ1速ギヤ41、セカンダリ2速ギヤ22と噛合するカウンタ2速ギヤ42、及びメイン4速ギヤ14と噛合するカウンタ4速ギヤ44が結合配設される。またカウンターシャフト40には、メイン3速ギヤ13及びセカンダリアイドルギヤ23と噛合するカウンタアイドルギヤ43、メイン5速ギヤ15と噛合するカウンタ5速ギヤ45、及びリバースアイドルギヤ36を介してメインリバースギヤ16と噛合するカウンタリバースギヤ46がそれぞれ相対回転自在に配設されている。
カウンターシャフト40上におけるカウンター5速ギヤ45とカウンターリバースギヤ46との間にドグ歯機構を利用したリバースセレクタ47が設けられており、そのセレクタスリーブ47sを図示省略するサーボアクチュエータで軸方向に移動させて、カウンタ5速ギヤ45をカウンタシャフト40に結合させ、あるいはカウンタリバースギヤ46をカウンタシャフト40に結合させることができるようになっている。
このように構成されたトランスミッション2において、1速クラッチC1を係合させてセカンダリ1速ギヤ21をセカンダリシャフト20に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、カウンタアイドルギヤ43、セカンダリアイドルギヤ23、セカンダリ1速ギヤ21、カウンタ1速ギヤ41からなる1速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される1速段が設定される。1速クラッチC1を係合させた1速段では、セカンダリ1速ギヤ21がワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合されるため、アクセルをオフにしたときにワンウェイクラッチ27が滑り急減速しないようになっている。一方、1速ホールドクラッチCLを係合させた1速ホールド段ではギヤ列は同一であるが、セカンダリ1速ギヤ21がワンウェイクラッチ27を介することなく直接セカンダリシャフト20に結合されるため、強力なエンジンブレーキを作動させることができる。
2速クラッチC2を係合させてセカンダリ2速ギヤ22をセカンダリシャフト20に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、カウンタアイドルギヤ43、セカンダリアイドルギヤ23、セカンダリ2速ギヤ22、及びカウンタ2速ギヤ42からなる2速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される2速段が設定される。同様に、3速クラッチC3を係合させてサード3速ギヤ33をサードシャフト30に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、サード3速ギヤ33、サード4速ギヤ34、メイン4速ギヤ14、及びカウンタ4速ギヤ44からなる3速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される3速段が設定される。また4速クラッチC4を係合させると、メインシャフト10の回転が、メイン4速ギヤ14とカウンタ4速ギヤ44とからなる4速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される4速段が設定される。
一方、5速クラッチC5を係合させて一体に形成されたメイン5速ギヤ15及びメインリバースギヤ16をメインシャフト10に結合させると、メインシャフト10の回転がこれらのギヤと噛合するカウンタ5速ギヤ45及びカウンタリバースギヤ46に伝達される。但し、カウンタ5速ギヤ45及びカウンタリバースギヤ46はそれぞれカウンタシャフト40に相対回転自在に配設されており、リバースセレクタ47の作動に応じてカウンタシャフト40と選択的に係脱される。
すなわち、図示省略するサーボアクチュエータによりセレクタスリーブ47sを図3における右方に移動させてカウンタ5速ギヤ45をカウンタシャフト40に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン5速ギヤ15及びカウンタ5速ギヤ45からなる5速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される5速段が設定される。一方、セレクタスリーブ47sを図3における左方に移動させてカウンタリバースギヤ46をカウンタシャフト40に結合させると、メインシャフト10の回転がメインリバースギヤ16、リバースアイドルギヤ36、及びカウンタリバースギヤ46からなるリバースギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達されるリバース段が設定される。
以上のように、1速、2速、3速、4速、5速クラッチC1〜C5及び1速ホールドクラッチCLの係合制御と、サーボアクチュエータによるリバースセレクタ47のセレクタスリーブ47sの移動制御とにより1速〜5速、1速ホールド、及びリバース段の設定がなされ、各ギヤ列を介してメインシャフト10の回転がカウンタシャフト40に伝達される。カウンタシャフト40の回転は、このカウンタシャフト40に結合配設されたファイナルドライブギヤ48、及びファイナルドライブギヤ48と噛合するファイナルドリブンギヤ58を介してディファレンシャル機構DFに伝達され、左右のアクスルシャフトを介して左右の駆動輪WL,WRに伝達される。
一方、トランスミッション2の車軸側に、第1駆動モータM1の回転駆動力を駆動輪に伝達するモータ動力伝達機構5が配設されている。モータ動力伝達機構5は、トランスミッション2の上部に設けられており、第1駆動モータM1のスピンドルに結合配設されたモータ駆動ギヤ51、モータ駆動ギヤ51と噛合するモータアイドラギヤ52、モータセカンダリシャフト50に結合配設されてモータアイドラギヤ52と噛合するセカンダリ従動ギヤ53、モータセカンダリシャフト50に相対回転自在に配設されたセカンダリ駆動ギヤ54、モータカウンタシャフトに結合配設されてセカンダリ駆動ギヤ54と噛合するカウンタ従動ギヤ55、モータカウンタシャフトに結合配設されてファイナルドリブンギヤ58と噛合するモータファイナルドライブギヤ56、セカンダリ駆動ギヤ54をモータセカンダリシャフトに結合させるシンクロクラッチ57、などから構成される。
シンクロクラッチ57は、図示省略するサーボアクチュエータによりシンクロスリーブ57sを軸方向に移動させて、セカンダリ駆動ギヤ54をモータセカンダリシャフト50に結合させ、あるいはセカンダリ駆動ギヤ54とモータセカンダリシャフト50との結合を切り離すことができるようになっている。このため、シンクロクラッチ57が係合されると、第1駆動モータM1の回転がモータ駆動ギヤ51、モータアイドラギヤ52、セカンダリ従動ギヤ53及びセカンダリ駆動ギヤ54、カウンタ従動ギヤ55及びモータファイナルドライブギヤ56からなるモータギヤ列を介して、ファイナルドリブンギヤ58を介してディファレンシャル機構DFに伝達され、左右のアクスルシャフトを介して左右の駆動輪WL,WRに伝達される。
従って、このハイブリッド車両では、第2駆動モータM2をエンジンENGのスタータとして使用しアイドル停止状態(休筒状態)のエンジンを始動させることができ、エンジンENGの駆動時にはエンジン駆動力をアシストさせてトランスミッション2において設定された速度段で車両を走行させることができる。またエンジンENGを停止させ、トランスミッション内のクラッチC1〜C5,CLの係合を解除した状態で、モータ動力伝達機構5のシンクロクラッチ57を係合させ、第1駆動モータM1によりモータ走行が可能になっている。シンクロクラッチ57のサーボアクチュエータの作動制御、及びモータ動力伝達機構5の各部の潤滑も、トランスミッション2と同様に油圧制御装置7から供給される潤滑油により行われる。
油圧制御装置7は、トルクコンバータTCの入力軸側に設けられエンジンENGにより回転駆動される第1オイルポンプP1、図示省略するバッテリの電力を利用して電気モータにより回転駆動される第2オイルポンプP2、及びこれらのオイルポンプP1,P2から吐出された潤滑油を各油圧アクチュエータ(C1〜C5、CL、リバースセレクタ47及びシンクロクラッチ57のサーボアクチュエータ等)やベアリング等の潤滑部位に導くための複数の油圧制御バルブ、及びこれらの間を繋ぐ油路からなり、第2オイルポンプP2、各油圧制御バルブの作動がコントロールユニットECUにより制御される。
コントロールユニットECUには、運転席に設けられたシフトレバー装置において運転者が選択したシフトポジションの選択信号やスロットル開度の信号、車両の走行速度や傾斜角度等の走行状態を検出する検出信号が入力されており、コントロールユニットECUは、これらの信号に基づいた制御信号を油圧制御装置7に出力して1速〜5速クラッチC1〜C5等の作動を制御し、第1駆動モータM1、第2駆動モータM2に制御信号を出力して各駆動モータの作動を制御する。これによりトランスミッション2が選択されたシフトポジションに応じて自動変速されるとともに、第1,第2駆動モータM1,M2を利用した駆動力アシストやモータ走行、バッテリの充電が行われる。
さて、以上のように概要構成される動力伝達装置1において、セカンダリシャフト20の被潤滑部に潤滑油を供給する潤滑油供給装置に本発明が適用されている。図4に油圧制御装置7における潤滑回路の要部構成を示す。
潤滑回路は、エンジンENGにより駆動される第1オイルポンプP1、電気モータM5により駆動される第2オイルポンプP2、これらのオイルポンプから吐出された潤滑油を調圧するレギュレータバルブ81、潤滑油の油温を調整する油温調整装置85、油温調整装置からオイルパンに戻る油路の途中に設けられたオイル溜め90、オイルポンプから排出された潤滑油を動力伝達装置1の各被潤滑部に導くための油路などから構成される。
第1オイルポンプP1には、ストレーナが設けられたオイルパンTから吸入した潤滑油を吐出する第1吐出油路71が接続され、レギュレータバルブ81の二つの入力ポート81a,81bに繋がっている。第1吐出油路71から分岐する油路74は、各油圧アクチュエータ(C1〜C5、CL、リバースセレクタ47及びシンクロクラッチ57のサーボアクチュエータ等)の作動を制御する変速機制御系の油圧回路に繋がっている。
レギュレータバルブ81は、バルブボディの内部に軸方向に摺動自在に配設されたスプールと、スプールを図における左方に付勢するスプリングとを備え、第1,第2入力ポート81a,81bと、第1,第2出力ポート81c,81dとを有する調圧弁である。スプールには左端のランド部を貫通して信号圧を反力油室に導入する内部油路が形成されており、第1入力ポート81aに供給された潤滑油の油圧に応じてスプールを右方に摺動させ、第1吐出油路71の油圧及びこの第1吐出油路から分岐する油路74の油圧を調圧する。レギュレータバルブ81の設定圧は、例えば9.5kgf/cm2程度に設定される。
レギュレータバルブの第1出力ポート81cは、油路75が接続されてトルクコンバータ系の油圧回路に繋がり、油路77を介して油温調整装置85に接続されている。油温調整装置85の下流側にはフィルタ86が設けられてオイル溜め90に繋がり、ここから溢れ出た潤滑油が戻り油路95を経由してトランスミッションケース下端のオイルパンTに戻るようになっている。オイル溜め90は、トランスミッション2の上部に配設されたモータ動力伝達機構5のギヤボックス内に液面開放形態で形成されており、このオイル溜め90に接続された油路91を介してモータ駆動機構5の被潤滑部60に繋がるとともに、油路92を介してセカンダリシャフト20の被潤滑部64に繋がっている。油路75にはクーラチェックバルブ84が設けられている。
レギュレータバルブの第2出力ポート81dに油路93が接続されている。油路93には、リリーフバルブ87と潤滑コントロールバルブ88が接続されるとともに、途中から分岐して複数の油路93a、93b、93c、93d、93eに分割されており、トランスミッション各部の被潤滑部61〜65に導かれる。ここで被潤滑部61〜65は、ファイナルドライブギヤ48の噛合部61、メインシャフト10に配設されたクラッチC4,C5やベアリング等の被潤滑部62、カウンターシャフト40上のベアリング等の被潤滑部63、セカンダリシャフト20上のクラッチC1,CL,27,C2及びベアリング等の被潤滑部64、サードシャフト30上のクラッチC3やベアリング等の被潤滑部65があり、回転軸上の被潤滑部には各シャフトの内部に設けられた軸内潤滑油路を介して潤滑油が供給される。
なお、油路93dはオイル溜め90に繋がる油路92と合流されて油路134を介してセカンダリシャフト20の被潤滑部64に繋がっており、油路92を通ってオイル溜め90から供給される潤滑油供給と、油路93を通ってオイルポンプから直接導かれる潤滑油供給の両方が可能な共通被潤滑部になっている。このため、油路92には、オイル溜め90側からセカンダリシャフトの被潤滑部64方向への重力による潤滑油の流下を許容し、油路93d側からオイル溜め90方向への潤滑油の逆流を防止するチェック弁94が設けられている。また、油路93dには、オイル溜め90とセカンダリシャフト20の軸内潤滑油路との間の高さ位置を通り、高低差により油路92側から油路93d方向への潤滑油の逆流を抑制する水頭差形成部93hが形成されている。なお、油路93dと油路93eとの間に潤滑チェックバルブ89が設けられている。
一方、第2オイルポンプP2には、オイルパンTから吸入した潤滑油を吐出する第2吐出油路72が接続されてリリーフバルブ82に接続され、油路76を介して油路77に繋がっている。また第2吐出油路72は、途中で分岐する油路73を介して第1吐出油路71に接続されている。油路73には第1吐出油路71側から第2吐出油路72の方向に流れないように逆止弁73cが設けられている。リリーフバルブ82の設定圧は、比較的低吐出圧である第2オイルポンプP2の吐出圧に合わせて、レギュレータバルブ81の設定圧よりも低い圧力、例えば3kgf/cm2程度に設定される。
このため、エンジン駆動時に第1オイルポンプP1から第1吐出油路71に吐出された高圧の潤滑油が、油路73及び油路75,76を介して油路72方向に流れることがない一方、エンジン停止時に第2オイルポンプP2から吐出された潤滑油が油路73,74を介して変速機制御系の油圧回路に供給されるとともに、油路76,77を介して油温調整装置85で温度調整された潤滑油がオイル溜め90に供給され、オイル溜め90から重力により流下する潤滑油が油路91を介してモータ動力伝達機構5の被潤滑部60、油路92,134を介してセカンダリシャフト20の被潤滑部64に供給される。
さて、このような潤滑回路構成にあって、セカンダリシャフト20の被潤滑部に潤滑油を導く潤滑油供給構造に本発明に係る潤滑油供給装置が適用されている。図2におけるセカンダリシャフト20近傍部を拡大した断面図を図5に示しており、まず第1実施形態の潤滑油供給装置100について説明する。
セカンダリシャフト20は、ボールベアリング及びローラベアリングによりトランスミッションケース3に回転自在に支持されており、シャフト上には、セカンダリアイドルギヤ23がスプライン嵌合により結合配設され、セカンダリ1速ギヤ21及びセカンダリ2速ギヤ22がそれぞれ針状コロ軸受を介して相対回転自在に支持されるとともに、セカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合させる1速クラッチC1、セカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介することなく直接セカンダリシャフト20に結合させる1速ホールドクラッチCL、及びセカンダリ2速ギヤ22をセカンダリシャフト20に結合させる2速クラッチC2が設けられている。
すなわちセカンダリシャフト20上には、油圧制御対象として1速クラッチC1、1速ホールドクラッチCL、及び2速クラッチC2があり、潤滑対象である被潤滑部64として上記クラッチ、ワンウェイクラッチ27、及び上記針状コロ軸受等のベアリングがある。そこでセカンダリシャフト20の軸内には、左右両端からそれぞれ軸穴が穿設されて軸内油路が形成されている。
このうち、図5における左端側の軸内油路は、1速クラッチC1または1速ホールドクラッチCLに制御油圧(クラッチ圧)を供給する軸内制御圧油路である。軸方向に延びる軸穴はセカンダリシャフト20の軸心に位置し、先端側が細く中間部から左端側が太い段付き状に形成されるとともに、軸穴先端部から1速クラッチC1に向けて放射状に延びる制御圧供給穴と、軸穴中間部から1速ホールドクラッチCLに向けて放射状に延びる制御圧供給穴とが形成されている。
一方、シャフト左端側のトランスミッションケース3には、軸端外方に取り付けられたリテーナリング175を挟んで左側の軸端外方油室176と右側の軸端側部油室177とが形成され、リテーナリング175から軸穴中心を通って先端部に延びるパイプ178により、軸端外方油室176からパイプ内部を通って1速クラッチに繋がる1速クラッチ圧軸内油路171と、軸端側部油室からパイプの外周側を通り1速ホールドクラッチCLに繋がる1速ホールドクラッチ圧軸内油路172が形成される。
このため、コントロールユニットからの指令信号に基づき油圧制御装置7から軸端外方油室176に制御油圧が供給されると、1速クラッチ圧軸内油路171を介して制御油圧が1速クラッチC1に供給され、1速クラッチC1が摩擦係合されてセカンダリ1速ギヤ21がワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合される。また油圧制御装置7から軸端側部油室177に制御油圧が供給されると、1速ホールドクラッチ圧軸内油路172を介して制御油圧が1速ホールドクラッチCLに供給され、1速ホールドクラッチCLが摩擦係合されてセカンダリ1速ギヤ21がセカンダリシャフト20に直接結合される。
セカンダリシャフトの右端側には、2速クラッチC2に制御油圧(クラッチ圧)を供給する2速クラッチ圧軸内油路180と、この軸上の被潤滑部に潤滑油を供給する第1軸内潤滑油路110及び第2軸内潤滑油路120が設けられている。このうち、2速クラッチ圧軸内油路180は、セカンダリシャフト20の軸心に位置して軸方向内部に延びる軸穴181と、この軸穴の先端部から2速クラッチC2に向けて放射状に延びる制御圧供給穴182、軸穴の右端側中間部から軸外周に向けて放射状に延びる制御圧導入穴183、及び制御圧導入穴183の開口位置にリング溝状に形成された制御圧導入溝などから構成される。軸穴の右端部はシャフト右端面の開口部にプラグ186が圧入されて密閉されている。
シャフト右端近傍のトランスミッションケース3には、セカンダリシャフト20の外周面に形成された制御圧導入溝と位置整合して側部導入油路188が形成され、ここに油圧制御装置7から供給される2速クラッチ圧が供給されるようになっている。このため、コントロールユニットからの指令信号に基づき油圧制御装置7から側部導入油路188に制御油圧が供給されると2速クラッチ圧軸内油路を介して制御油圧が2速クラッチC2に供給され、2速クラッチC2が摩擦係合されてセカンダリ2速ギヤ22がセカンダリシャフト20に結合される。
第1軸内潤滑油路110は、セカンダリシャフト20の軸端面に開口する第1軸端開口115を有し軸線に沿って軸方向内部に延びる第1軸穴111と、この第1軸穴111と連通して軸外周方向に延びセカンダリ1速ギヤ21のボス部内周に繋がる第1潤滑穴112、及び第1潤滑穴112の開口位置にリング溝状に形成された潤滑油溝113などから構成される。セカンダリ1速ギヤ21のボス部には、潤滑油溝113と位置整合して放射方向に延びる潤滑油供給穴114が複数形成されワンウェイクラッチ27に繋がっている。
第2軸内潤滑油路120は、セカンダリシャフト20の軸端面に開口する第2軸端開口125を有し軸線に沿って軸方向内部に延びる第2軸穴121と、この第2軸穴と連通して軸外周方向に延びセカンダリシャフト20上の各ベアリング内周部、及び2速クラッチC2の摩擦係合部に繋がる複数の第2潤滑穴122などから構成される。
ここで、図5中のI−I矢視方向に見たセカンダリシャフト20の右端部の側面図を図1に示すように、第1軸内潤滑油路110の第1軸穴111と、第2軸内潤滑油路の第2軸穴121とは、セカンダリシャフト20の径方向において第1軸穴111の方が第2軸穴121よりも半径方向外側に形成されており、第1軸端開口115の方が第2軸端開口125よりも半径方向外側に位置して開口している。すなわち、第1軸端開口115の位置半径をR1、第2軸端開口125の位置半径をR2としたときに、R1>R2の関係を有して構成されている。
一方、セカンダリシャフト20の右端部では、トランスミッションケース3の内壁面がセカンダリシャフト20の右端面と所定間隔を隔てて軸端部外形よりも幾分大きめの有底円筒状に形成されており、セカンダリシャフト20の右端面との間に軸端面を覆う円盤状の軸端油室130が形成される。軸端油室130には、前述した油路92及び油路93dが合流された油路134が接続されており、セカンダリシャフト20の軸端面20fと対峙するトランスミッションケース3の内壁面に、軸心から半径方向にオフセットして開口された油路開口135から軸端面20fに向けて潤滑油が供給されるようになっている。
すなわち、軸端油室130内に開口する第1軸端開口115及び第2軸端開口125を介して第1軸内潤滑油路110及び第2軸内潤滑油路120が軸端油室130と連通し、この軸端油室130に油路134を介して油圧供給源(第1オイルポンプP1または第2オイルポンプP2)から供給された潤滑油が、第1軸内潤滑油路110及び第2軸内潤滑油路を通って上記したセカンダリシャフト20上の各被潤滑部に供給される。
このように構成される潤滑油供給装置100では、エンジンENGが駆動し第1オイルポンプP1が作動しているときには、第1オイルポンプP1から吐出された潤滑油が、第1吐出油路71を通ってレギュレータバルブ81の第1及び第2入力ポート81a、81bに供給され、レギュレータバルブ81の調圧機能により調圧された潤滑油が油路74を介して変速機制御系の油圧回路に供給される。またレギュレータバルブ81の調圧作用に伴って排出された潤滑油のうち第2出力ポート81dに排出された潤滑油が、油路93から分割油路93a〜93eを通ってトランスミッション各部の被潤滑部61〜65に供給され、第1出力ポート81cに排出された潤滑油は、トルクコンバータの制御油圧回路、油温調整装置85、オイル溜め90、及び油路91を介してモータ動力伝達機構5の被潤滑部60に供給される。
なおオイル溜め90は、油路92及び油路134を介してセカンダリシャフトの軸端油室130(セカンダリシャフト上の被潤滑部64)に繋がっているが、第1オイルポンプP1の作動時には、第1オイルポンプP1から吐出された潤滑油が導かれる油路93dの内圧の方がオイル溜めとの高低差に基づく重力を利用した油路92の内圧よりも高いためチェック弁94が閉止状態になり、オイル溜め90から軸端油室130への潤滑油供給は行われない。
油路93d及び油路134を通ってセカンダリシャフトの右端部に導かれた潤滑油は、軸端油室130に開口形成された油路開口135からセカンダリシャフト20の軸端面20fに向けて流れ込み、通常では所定の油室内圧を有した状態で軸端油室130を充満させる。このため、充満された潤滑油はこの油室内に開口する第1軸端開口115及び第2軸端開口125から第1軸内潤滑油路110及び第2軸内潤滑油路120に流入し、第1軸内潤滑油路110の第1潤滑穴112からワンウェイクラッチ27に供給され、第2軸内潤滑油路120の複数の第2潤滑穴を通ってセカンダリ2速クラッチC2及び軸上の各ベアリングに供給される。
なお、図3に示したスケルトン図から明らかなように、エンジン駆動中にはメイン3速ギヤ13、カウンタアイドルギヤ43、セカンダリアイドルギヤ23のギヤ列を介してエンジンENGの回転駆動力が伝達されており、セカンダリシャフト20は回転駆動されている。このため、軸心から半径方向にオフセットして穿設された第1軸穴111、第2軸穴121を流れる潤滑油に遠心力が作用し軸端油室130に作用する油室内圧が低圧の場合でも各潤滑穴112,122から吸い出されるようにして潤滑油が供給される。
ここで、潤滑油が高温になって潤滑油の粘度が低下すると、油圧制御装置7に設けられた変速機制御系の各種制御バルブにおいてバルブボディとスプール間でオイルリークが増大し、またサーボバルブ等の油圧アクチュエータにおけるオイルリークや潤滑油の消費量が増大して、レギュレータバルブ81から油路93dを介して軸端油室130に供給される潤滑油量が減少する状況が発生する。一方、軸端油室130内に供給された潤滑油は、上述した遠心力の作用により吸い出されるようにして各被潤滑部に供給される。従って、軸端油室130に供給される潤滑油量が減少し各被潤滑部に消費される潤滑油量よりも少なくなると、軸端油室130は潤滑油で充満されない状態になってくる。
このような状況下では、油路開口135からセカンダリシャフト20の軸端面20fに向けて軸端油室130に流れ込んだ潤滑油が、回転するセカンダリシャフトの軸端面との接触により連れ廻りされ、遠心力によりセカンダリシャフトの半径方向外側に付勢されて軸端油室130の外周側に偏った円環状の液面分布になる。軸端油室130に供給される潤滑油の流量が変化したときの液面分布を図6(a)〜(c)に示す。
軸端油室130に供給される潤滑油の流量が少量のときには、供給された潤滑油が(a)図に示すように軸端油室130の外周壁面に張り付くような液面分布S1となる。ここで、前述したように軸端油室130に開口する二つの軸端開口は、第1軸端開口115の方が第2軸端開口125よりも半径方向外側に位置して開口している。このため、(a)図に示す液面分布S1の状態では、軸端油室内の潤滑油が第2軸内潤滑油路120に流れ込むことなく第1軸内潤滑油路110に流入し、この油路先端の第1潤滑穴112からワンウェイクラッチ27に供給される。すなわち、軸端油室130への潤滑油量の供給量が少ないときには、このシャフト上で常時潤滑油が必要な被潤滑部であるワンウェイクラッチ27に優先的に供給される。従って、潤滑油量が低下した場合でも、ワンウェイクラッチ27の摩耗を防止することができる。
なお、油路開口135が軸心から半径方向外側にオフセットして形成されるとともに、潤滑油がセカンダリシャフト20の軸端面20fに向けて流れ込むように構成されており(図1を参照)、セカンダリシャフト20の回転に伴い第2軸端開口125が油路開口135の前方を通過するときに潤滑油が第2潤滑油路120にも間欠的に供給され、ベアリング等の被潤滑部に供給されるようになっている。
軸端油室130に供給される潤滑油の流量が(a)図の状態よりも増加し、(b)図に示す液面分布S2の状態になると、第2軸端開口125も回転液面内に位置し第2軸内潤滑油路120にも潤滑油が流れ込むようになり、この第2軸内油路の各部に形成された第2潤滑穴122から2速クラッチC2及び各部のベアリングに供給されるようになる。但し液面分布S2に対する軸端開口115,125の接液面積の対比からも明らかなように、軸内潤滑油路に流れ込む潤滑油量は第1軸内潤滑油路110の方が多く、ベアリング等よりも比較的潤沢な潤滑油量を必要とするワンウェイクラッチ27に相対的に多量の潤滑油が供給される。
軸端油室130に供給される潤滑油の流量がさらに増加し、(c)図に示す液面分布S3の状態になると、第1軸端開口115及び第2軸端開口125の両方が全体的に回転液面内に位置する状態になり、第1及び第2潤滑油路110,120に流れ込んだ潤滑油がワンウェイクラッチ27,2速クラッチC2,ベアリング等の各被潤滑部に供給される。
一方、アイドリングストップ制御等によりエンジンENGが停止され、第1駆動モータM1の回転駆動力で走行するような場合には、第1駆動モータM1の回転駆動力がモータ動力伝達機構5及びカウンタシャフト40を介して駆動輪に伝達される。一方、変速機内のクラッチC1〜C5,CLは開放されているが、いわゆるクラッチの引きずり効果によりカウンタシャフト40の回転がセカンダリシャフト20に伝達されセカンダリシャフト20が回転する。そこで、エンジンENGの停止とともに作動が停止する第1オイルポンプP1に代わって電気モータM5駆動の第2オイルポンプP2が作動する。第2オイルポンプP2が作動すると、このポンプから吐出された潤滑油が逆止弁73cを開弁させ油路73及び74を介して制御油圧が変速機制御系の油圧回路に供給される。また第2吐出油路72に設けられたリリーフバルブを開弁させ油路76,77を介して油温調整装置85に供給されたうえオイル溜め90に供給され一時貯留される。
オイル溜め90に貯留された潤滑油は、重力に従って油路91を自然流下し、モータ駆動機構の被潤滑部60、すなわちモータ駆動ギヤ51、モータアイドラギヤ52、モータセカンダリ従動ギヤ53、セカンダリ駆動ギヤ54、シンクロクラッチ57などの各被潤滑部に供給される。このモータ駆動機構5に対する潤滑油供給はオイル溜め90の油面高さと上記各被潤滑部との高低差及び流路抵抗によって定まる一定流量となり、攪拌抵抗を生じさせない流量に設定されている。
なお、第2オイルポンプP2の吐出圧力は比較的低圧のため、レギュレータバルブ81を開弁させることができず、第1オイルポンプP1が停止した状態では、油路93に潤滑油圧が立たない。一方、油路134には油路92を介してオイル溜め90の油面高さと軸端油室130との高低差(水頭)に応じた重力による自然供給圧が作用する。このため、オイル溜め90に貯留された潤滑油が、チェック弁94を開弁させ、油路92及び油路134を通ってセカンダリシャフトの軸端油室130に供給される。この供給油量もオイル溜め90の油面高さと被潤滑部64との高低差、及び流路抵抗によって定まる一定流量となる。
そして、この軸端油室130に供給される潤滑油量は、図6における(a)〜(b)程度の潤滑油量に設定されている。このため、軸端油室130に供給された潤滑油は軸端油室130の外周壁面側に偏った円環状の液面分布となり、軸端油室内の潤滑油がほとんど第2軸内潤滑油路120に流れ込むことなく第1軸内潤滑油路110に流入し、供給油量の大部分が第1潤滑穴112からワンウェイクラッチ27に供給される。また油路開口135からセカンダリシャフト20の軸端面20fに向けて流れ込む潤滑油は、第2軸端開口125が油路開口135の前方を通過するときに第2潤滑油路120に流入し、ベアリング等の被潤滑部に間欠的に供給される。
従って、第1駆動モータM1によるモータ走行時には、軸端油室に供給された潤滑油の大部分がエンジン停止状態でも潤滑を必要とするワンウェイクラッチ27に供給されてローラ(またはスプラグ)の摩耗を防止するとともに、2速クラッチC2やベアリング等には過熱を防止する程度の少量の潤滑油が供給され、余分な潤滑油供給にともなう攪拌抵抗の発生を防止して損失を低減することができる。
なお、セカンダリシャフト20は、トランスミッション2に配設された4本の回転軸10,20,30,40のうちで最も高い位置に配設されており、このセカンダリシャフト20の軸内潤滑油路から軸上の各被潤滑部を潤滑した潤滑油が、他の各軸上のギヤやクラッチに拡散滴下して、エンジン停止時において動力伝達を行っていないトランスミッション2に対して、再始動時に向けた最小限の潤滑が確保されるようになっている。
従って、以上説明した本発明の潤滑油供給装置100によれば、軸端油室130を共有する第1及び第2軸内潤滑油路110,120に対して、軸端油室130に供給される潤滑油量に応じて供給油量を配分することができ、潤滑を必要とする被潤滑部の優先順位に応じた潤滑油供給が可能な潤滑油供給装置を提供することができる。
次に、本発明に係る第2実施形態の潤滑油供給装置200について、図7を参照して簡潔に説明する。図7は図1と同様に潤滑油供給装置200におけるセカンダリシャフト20の右端側の軸端面を、図5中のI−I矢視方向に見た側面図であり、セカンダリシャフトに形成された第1及び第2軸内潤滑油路の構成を除いて軸端油室130等の構成は前述した潤滑油供給装置100と同様である。そこで以下では第1及び第2軸内潤滑油路210,220の構成について説明し、それ以外の構成及び作用についての重複説明を省略する。なお、前述した実施形態の潤滑油供給装置と共通部分について同一番号を付している。
潤滑油供給装置200では、セカンダリシャフト20の軸内に延びる第1軸内潤滑油路210の第1軸穴211と、第2軸内潤滑油路220の第2軸穴221とは、セカンダリシャフト20の径方向において同一半径R上に形成されている。但し、第1軸穴211と第2軸穴221の軸端面20fにおける開口部には、それぞれ異なる半径位置部分に遮蔽板216が溶接等の手段により固定されており、潤滑油が流入可能な第1軸内潤滑油路210の第1軸端開口215及び第2軸内潤滑油路220の軸端開口225は、図7に示す構成例においては、それぞれ半円状になっている。そして、この半円状の第1軸端開口215は第2軸端開口225よりも半径方向の外側に位置して開口している。すなわち、第1軸端開口215の開口位置半径をr1、第2軸端開口225の開口位置半径をr2としたときに、r1>r2の関係を有して構成されている。
このため、軸端油室130に供給される潤滑油量が減少して回転液面になった場合に、図6(a)〜(c)を参照して説明した潤滑油供給装置100と同様の作用が生じ、第1軸内潤滑油路210に優先的に潤滑油が供給される。従って本構成の潤滑油供給装置200においても前述した潤滑油供給装置100と同様の効果を得ることができる。
なお、実施形態では、本発明をハイブリッド車両における自動変速機内のセカンダリシャフト20に適用した場合を例に説明したが、以上の説明から明らかなように、軸上に複数の被潤滑部を有する回転軸であれば他の車両形態、他の回転軸であっても同様に適用し同様の効果を得ることができる。