JP4830203B2 - アクティブマトリックス型表示用プラスチック基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクティブマトリックス型表示用プラスチック基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶,プラズマディスプレイ,エレクトロルミネッセンス(EL),蛍光表示管,発光ダイオ−ド等のディスプレイ基材としてはガラス板が多く用いられているが、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向き等の問題から、近年、ガラス板の代わりにプラスチック素材を用いる試みが数多く行われるようになってきた。しかし、プラスチックではいかなる樹脂においてもガスを吸収・透過する性質を持ち、ガラス板に比べ、水蒸気の吸収による基板寸法変化、酸素ガスの透過による液晶の劣化が問題であった。そこで、酸化ケイ素、酸化アルミニウムを初めとする透明な金属酸化被膜をガス・水蒸気バリアとしてプラスチックに積層する事が行われているが、バリア性能は酸素で0.1cm3/m2・24h・atm (JIS K7126のB法(等圧法))、水蒸気で0.1g/m2・dayを(JIS K7129のB法(赤外センサー法))安定して維持させることが困難であった。
【0003】
近年の表示素子の高品位化により、TFT(薄膜トランジスタ)液晶表示装置、有機EL表示装置等のより高精細な回路パターンが要求されるようになると、基板に含まれるわずかな水分量による寸法変化が、画質に影響するようになり、水蒸気透過率としては、さらに高いバリア性能が要求されるようになってきている。また、酸素透過率に関しても、液晶の酸化による劣化から規定されているが、この値にしてもより高寿命な液晶基板が求められるようになっており、この値も同様に0.1cm3/m2・24h・atm以下が要求されている。この動きに併せてアクティブマトリックス型においてもプラステック化の検討を行ったところ、従来のパッシィブ型とは根本的にプロセスが異なるため、従来のSiO2によるガスバリア層では、アクティブマトリックス型作製工程中でバリア値が維持出来ないことが判明した。具体的にはアクティブマトリックス型のTFT,TFD(薄膜ダイオード)ではCVD膜形成のため最低でも180℃以上の耐熱性が必要であり、ホトリソグラフプロセスでもレジスト剥離工程では煮沸環境下にさらされる。この温度−吸水サイクルが最低でも2回以上繰り返される為、この環境下にさらされた場合、内在している残留応力により、クラックや剥離が生じるものと考えられる。また、アクティブマトリックス型の作製プロセスには酸素およびフッ素プラズマに暴露されるドライエッチング工程があり、SiO2酸化物系は酸素プラズマには耐性があるが、フッ素プラズマには浸食され表面が乱反射により白化されることによる透過率の低下、コントラストの低下が生じる。また、最外層が有機層である構造では酸素、フッ素プラズマ双方に浸食されるため、同じく最外層として有機物は使用できない。さらに、液晶に代表されるアクティブ型表示デバイスではレジスト剥離に用いられる、DMSO(ジメチルスルホキシド)、配向材に含まれるNMP(N−メチルピロリドン)の耐薬品性は不可欠である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高いガス・水蒸気バリア性を有し、高品位・高寿命のプラスチック表示用基板を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
これらの欠点を補うため、本発明者らは、プラスチツク基板上の最外層に酸素・フッ素プラズマ耐性と酸素・水蒸気バリア性の両方を有する層を設けた事を特徴とするアクティブマトリックス用表示用プラスチック基板見出したものである。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)プラスチツク基材上の最外層に酸素・フッ素プラズマ耐性と酸素・水蒸気バリア性とを兼ね備える層を設けた事を特徴とするアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
(2)最外層が、フッ化物の生成エネルギーが1600kJ/mol以上である元素群(以下A群)の内1種類以上の酸化物と、酸化珪素あるいは、酸化珪素と窒化珪素の複合物からなる無機層である(1)のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
(3) A群がTa、Hf、Zr、Nb、Tiである(2)のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
(4)前記最外層を構成する原子の原子比が珪素26〜34atom%、窒素16〜21atom%、A群3〜12atom%の範囲である(2)、(3)のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
(5)最外層の酸素透過度が0.1cm3/m2・24h・atm未満、水蒸気透過度が0.1g/m2・day未満である(1)〜(4)のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
(6)プラスチック基材がTgあるいは熱分解温度が180℃以上であり線膨張係数係数は100ppm未満の樹脂を含む(1)〜(5)のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
(7)最外層無機膜の全光線透過率が88%以上である(1)〜(6)何れか1項記載のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、最外層に酸素・フッ素プラズマに耐え、なお且つ酸素・水蒸気バリア性を備える層を設けるものである。上述のように、酸素プラズマに対しては、従来より用いられている酸素・水蒸気バリアの構成でも耐性を持たせることができるが、対フッ素プラズマに対しては、特別の層構成が必要である。本発明者らは、フッ化物の生成エネルギーが高い元素に着目し、検討を行った結果、フッ化物の生成エネルギーが1600kJ/mol以上であれば、対フッ素プラズマ耐性があることを見いだし、本発明に至った。すなわち、酸素・フッ素プラズマに耐え、なお且つ酸素・水蒸気バリア性を備えるアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板を提供するには、最外層にこうした対フッ素プラズマ耐性のある金属の酸化物と酸素・水蒸気バリア性のある酸化珪素あるいは酸化珪素、窒化珪素の複合物からなる無機層を設けることが好ましい。フッ化物の生成エネルギーが1600kJ/mol以上である元素としては、Ta、Hf、Zr、Nb、W、Ti、Mo等があげられるが、これらの内、酸化物も透明もしくは白色等の薄い色であるTa、Hf、Zr、Nb、Tiがより好ましい。
【0008】
最外層を形成する構成要素の成分割合は、透明性、酸素・水蒸気バリア性、酸素・フッ素プラズマ耐性を兼ね備える条件を満たすために、珪素、窒素、酸化物A群の金属原子の原子比が各々、26〜34atom%、16〜21atom%、3〜12atom%の範囲である事が好ましい。
最外層の厚みは600Å 以上が耐久性、信頼性から好ましい。しかしながら1500Å を越えると全光線透過率88%を確保するのが難しい。
【0009】
本発明の基材層はTgあるいは熱分解温度が180℃以上であり150℃から180℃の線膨張係数係数が100ppm未満の樹脂を少なくとも含むのが好ましい。これは液晶基板の製造工程に耐えうる耐熱性が必要であると共に、線膨張係数が100ppmを越える様な基板ではバリア膜にストレスが内在し、初期値は目的のバリア値を確保出来ても経時変化でバリア特性が劣化するためである。好ましい樹脂の例としては、ポリアクリレート樹脂、カルドポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂の他にシリカ、アルミナ、ジルコニア等の無機フィラーを含有しても良い。
【0010】
【実施例】
(実施例1)
Tg323℃、厚さ95μのカルドポリカーボネートフィルムを用い、両面に浸漬法にてTg223℃のエポキシ樹脂を2.0μコートし200℃2時間焼成した。更にRFスパッタ法を用いシリコンターゲット、5酸化タンタルターゲットの2源同時成膜法により酸素、窒素のガス導入を行い成膜した。但し、シリコンターゲット、5酸化タンタルターゲット上に面積比7:3の比率で開口したマスクを設置し成膜条件は初期真空度3x10-6Torrまで引き、酸素分圧6x10-4Torr、窒素分圧2x10-4Torrに設定し、Arを導入、全圧を3x10-3Torrで1000Å成膜した。
得られた膜をESCAにより元素分析したところ珪素原子、窒素原子、タンタル、酸素原子の原子比は26atom%、16atom%、8.6atom%、49.4atom%であった。
更に得られた膜の特性は550nmでの透過率は基材込みで90.6%、酸素透過度(JIS K7126のB法(等圧法))が0.06cm3/m2・24h・atm、水蒸気透過度(JIS K7129のB法(赤外センサー法))が0.09g/m2・dayであった。
【0011】
(実施例2)
Tg323℃、厚さ95μのカルドポリカーボネートフィルムを用い、両面に浸漬法にてTg223℃のエポキシ樹脂を2.0μコートし200℃2時間焼成した。更にRFスパッタ法を用いシリコンターゲット、酸化ジルコニュウムターゲットの2源同時成膜法により酸素、窒素のガス導入を行い成膜した。但し、シリコンターゲット、酸化ジルコニュウム上に面積比8:2の比率で開口したマスクを設置し、成膜条件は初期真空度3x10-6Torrまで引き、酸素分圧6x10-4Torr、窒素分圧4x10-4Torrに設定し、Arを導入、全圧を3x10-3Torrで1000Å成膜した。
得られた膜をESCAにより元素分析したところ珪素原子、窒素原子、ジルコニュウム、酸素原子の原子比は30atom%、18atom%、7atom%、45atom%であった。
更に得られた膜の特性は550nmでの透過率は基材込みで90.3%、酸素透過度が0.05cm3/m2・24h・atm、水蒸気透過度が0.1g/m2・dayであった。
【0012】
尚、プラズマ耐性は以下の様に評価した。
Tg323℃、厚さ100μのカルドポリカーボネートフィルムを用い、両面に浸漬法にてTg223℃のエポキシを2.0μコートし、200℃で2時間焼成した。
更にRFスパッタ法を用いSiO2ターゲットにより初期真空度3x10-6Torrまで引き、酸素を導入し酸素分圧6x10-4Torrに設定した。
更に、Arを導入し全圧2x10-3Torrにし、SiO2を200Å成膜した。
以上の様に作製したシートをフッ素プラズマ槽に設置し、550nmの透過率が30%下がる条件を決定した。この条件に実施例1,2で得られたシートを投入して透過率の低下を測定した。
その結果、実施例1で得られたシートは90.0%と0.6%の低下で目標をクリア出来た。
同じく実施例2で得られたシートでは89.5%と0.8%の低下で目標をクリア出来た。
【0013】
【発明の効果】
以上の様に本発明によればプラズマ耐性とガスバリアの両方の特性を満足させる事ができ、この特性としては従来にない特性であり、本発明は、アクティブマトリックス型表示用プラスチック基板として、産業上極めて有用である。
Claims (6)
- プラスチック基材上の最外層に酸素・フッ素プラズマ耐性と酸素・水蒸気バリア性とを兼ね備える層を設けたアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板であって、
前記酸素・フッ素プラズマ耐性と酸素・水蒸気バリア性とを兼ね備える層が、フッ化物の生成エネルギーが1600kJ/mol以上である元素群(以下A群)の内1種類以上の酸化物と、酸化珪素あるいは、酸化珪素と窒化珪素の複合物からなる無機層であるアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。 - A群がTa、Hf、Zr、Nb、Tiである請求項1記載のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
- 前記最外層を構成する原子の原子比が珪素26〜34atom%、窒素16〜21atom%、A群3〜12atom%の範囲である請求項1または2記載のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
- 最外層の酸素透過度が0.1cm3/m2・24h・atm未満、水蒸気透過度が0.1g/m2・day未満である請求項1〜3何れか1項記載のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
- プラスチック基材がTg(ガラス転移温度)あるいは熱分解温度が180℃以上であり線膨張係数係数は100ppm未満の樹脂を含む請求項1〜4何れか1項記載のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
- 最外層無機膜の全光線透過率が88%以上である請求項1〜5何れか1項記載のアクティブマトリックス型表示用プラスチック基板。
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