JP4830029B2 - 新規有機化合物およびそれを有する有機発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は新規有機化合物およびそれを有する有機発光素子に関する。
有機発光素子は、一対の電極とそれらの間に配置される有機化合物層とを有する素子である。これら一対の電極から電子および正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態にもどる際に光を放出する。
有機発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子、あるいは有機EL素子とも呼ばれる。
特許文献1には、発光層を構成する有機化合物の一例として以下に示すIK−12が記載されている。この化合物は以下に示すベンゾ[k]フルオランテンを基本骨格として有している。このベンゾ[k]フルオランテンはそれ自体、即ち無置換体では紫外領域の発光をするだけで可視光を発しない。基本骨格に置換基としてtert−ブチル基を設けることでIK−12は青色発光することが記載されている。IK−12は7位および12位にフェニル基を、2位、5位および9位にtert−ブチル基を導入している。これは、分子会合による濃度消光を抑制するためである。
特開平9−241629号公報
特許文献1に記載の1K−12はベンゾ[k]フルオランテンを基本骨格として有し、さらに置換基を有することで青色発光を可能としている。しかし、tert−ブチル基のような置換基を設けると化合的な安定性が損なわれる場合がある。そこで、本発明は基本骨格自体を新しく創出し、それ自体で青色発光ができかつ化学的に安定性の高い新規な有機化合物を提供することを目的とする。
よって、本発明は下記一般式〔2〕で示されることを特徴とする有機化合物を提供する。
一般式〔2〕において、RおよびRは水素原子、フェニル基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記アルキル基はメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれかである。
前記アリール基はフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フェナンスレニル基、アントラセニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、フルオレニル基のいずれかである。
前記アルキル基および前記アリール基は置換基を有してよく、前記置換基は、アルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環基、アミノ基、シアノ基、アルコキシル基、ハロゲン原子のいずれかである。
本発明によれば、基本骨格のみで青色発光が可能な新規有機化合物を提供することができる。そして、これら新規有機化合物を有する有機発光素子を提供することができる。
有機発光素子と有機発光素子と接続するスイッチング素子とを示す断面模式図である。
本発明に係る新規有機化合物は、下記一般式〔1〕に示されることを特徴とする有機化合物である。
一般式〔1〕において、
乃至Rは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基から選ばれる。これらは置換基を有するものも含まれる。
アルキル基は例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基であり、好ましくはtert−ブチル基である。というのも立体障害によりスタック抑制効果が高いためである。
アリール基は例えば、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナンスレニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、ペリレニル基であり、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基である。というのもスタック抑制効果が高く、かつ発光波長に与える影響が小さいためである。
アルキル基およびアリール基はさらに置換基を有してよい。その置換基とは例えばメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナンスレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基などのアリール基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基などの複素環基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジアニソリルアミノ基などのアミノ基、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、フェノキシル基などのアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、フッ素、塩素などのハロゲン原子である。アリール基が有する置換基で好ましいのはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基である。中でもメチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
本発明に係る有機化合物は以下の特徴を有する。
本発明に係る有機化合物は基本骨格のみで青色発光が可能である。ここで基本骨格とは縮環のみで形成された骨格のことである。つまり、本発明における基本骨格とは一般式〔1〕からRを除く環で表現される部分のことである。
基本骨格のみで所望の発光波長が得られることは安定性の高い化合物を得るために必要である。なぜならば、所望の発光波長を得るために基本骨格に置換基を設けることが知られているものの、発光波長を変えるための置換基は化合物の安定性を損なう場合があるからである。
なお、本発明において青色発光の領域の発光波長とは430nm以上480nm以下である。
本発明に係る有機化合物は化学的安定性が高い。というのも本発明に係る有機化合物の基本骨格に結合する置換基が存在しないためである。
本発明に係る有機化合物はスピロ構造を有する。具体的には、一般式[1]における平面aと平面bとが交差、具体的には直交する構造である。
本発明に係る有機化合物は有機発光素子の発光材料として好ましく用いることができる。
このことは、本発明に係る有機化合物は基本骨格中に回転する結合を有さないため、量子収率が高く、かつ非平面構造を有するため分子同士の会合を抑制できるためである。
そのため、本発明の有機化合物を有機発光素子中の発光材料に利用する際に、高濃度で使用することができる。
分子軌道計算によって算出した平面aと平面bとのニ面角は89.9度であった。つまり、二つの平面は直交することが確認された。
分子軌道計算では以下の手法を用いて最安定化構造を求めることを行った。
上記に示した分子軌道計算は、現在広く用いられているGaussian03(Gaussian 03, Revision D.01,M. J. Frisch, G. W. Trucks, H. B. Schlegel, G. E. Scuseria,M. A. Robb, J. R. Cheeseman, J. A. Montgomery, Jr., T. Vreven,K. N. Kudin, J. C. Burant, J. M. Millam, S. S. Iyengar, J. Tomasi,V. Barone, B. Mennucci, M. Cossi, G. Scalmani, N. Rega,G. A. Petersson, H. Nakatsuji, M. Hada, M. Ehara, K. Toyota,R. Fukuda, J. Hasegawa, M. Ishida, T. Nakajima, Y. Honda, O. Kitao,H. Nakai, M. Klene, X. Li, J. E. Knox, H. P. Hratchian, J. B. Cross,V. Bakken, C. Adamo, J. Jaramillo, R. Gomperts, R. E. Stratmann,O. Yazyev, A. J. Austin, R. Cammi, C. Pomelli, J. W. Ochterski,P. Y. Ayala, K. Morokuma, G. A. Voth, P. Salvador, J. J. Dannenberg,V. G. Zakrzewski, S. Dapprich, A. D. Daniels, M. C. Strain,O. Farkas, D. K. Malick, A. D. Rabuck, K. Raghavachari,J. B. Foresman, J. V. Ortiz, Q. Cui, A. G. Baboul, S. Clifford,J. Cioslowski, B. B. Stefanov, G. Liu, A. Liashenko, P. Piskorz,I. Komaromi, R. L. Martin, D. J. Fox, T. Keith, M. A. Al-Laham,C. Y. Peng, A. Nanayakkara, M. Challacombe, P. M. W. Gill,B. Johnson, W. Chen, M. W. Wong, C. Gonzalez, and J. A. Pople,Gaussian, Inc., Wallingford CT, 2004).を用いて、DFT基底関数6−31+G(d)の計算手法を使った。
(本発明の含スピロ構造化合物A1と他の有機化合物との比較)
ベンゾ[k]フルオランテンと本発明に係るスピロ構造を有する有機化合物とを比較する。
比較対象のベンゾ[k]フルオランテンは以下の構造式で示される。
また本発明に係る有機化合物であるA1は以下の構造式で示される。
本発明に係る有機化合物であるA1の最大発光波長は442nmである。一方でベンゾ[k]フルオランテンの最大発光波長は410nmである。すなわち本発明に係る有機化合物の最大発光波長は、最大発光波長は青発光領域である430nm以上480nm以下の範囲に含まれる。一方で比較対象の有機化合物の最大発光波長は青領域から短波長側に外れる。
このことは本発明に係るA1がそれ自体で最大発光波長が430nm以上480nm以下の光を発光することを意味する。すなわち本発明に係る有機化合物は基本骨格のみで青領域である430nm以上480nm以下の範囲内に収まり更にそれよりも狭い範囲において青色の発光が可能である。
本発明に係る有機化合物であるA1とベンゾ[k]フルオランテンの最大発光波長と半値幅の実測値を以下の表1に示す。
表1より、A1の溶液中と薄膜下における最大発光波長の差は41nmであった。一方で、ベンゾ[k]フルオランテンの最大発光波長の差は77nmであった。つまり、A1の方が波長の変化は小さい。
また、半値幅を比較すると、ベンゾ[k]フルオランテンは薄膜下では発光波形が大きくブロード化し半値幅が73nm広がった。一方で、A1は発光波形のブロード化の程度が小さく半値幅が16nmしか広がらなかった。
上記結果は、本発明に係る有機化合物であるA1の方が、ベンゾ[k]フルオランテンよりも薄膜下のような凝集状態において分子間の会合が抑制されていることを意味する。
なぜならば分子間の距離が密になっていると会合が起こりやすく、新たなエネルギー準位が生成することで発光波形がブロード化すると考えられるからである。
従って、青色発光素子に用いる場合本発明の方が好ましい。
本発明に係る有機化合物は基本骨格のみで非平面構造を有し、分子間の会合を抑制することが可能である。
次に、特許文献1に記載のIK−12と本発明に係るスピロ構造を有する有機化合物とを比較する。比較化合物のIK−12は以下の構造式で示される。
実施例2に示したように、有機発光素子中の発光ドーパントとしてA1を用いた場合に、初期輝度が7000cd/mで半減寿命が400時間であった。上記比較化合物では初期輝度300cd/mで半減寿命660時間であるため、明らかに本発明のA1を用いた素子の方が高耐久性を有し半減寿命が長い。
このことは、上記比較化合物よりも、本発明に係る化合物のほうが安定であることを意味する。すなわち、本発明に係る化合物の基本骨格は回転する結合を有しておらず、有機発光素子中の発光材料などに利用することで長寿命化が可能である。
IK−12は、青発光を得るために基本骨格に電子供与性であるターシャリブチル基を3つ有している。結合解離エネルギーを考慮すると、C(アリール基)−C(アルキル基)結合はC=C(芳香環)よりも低いことが知られている。特に、青色発光材料においては高いエネルギーをやり取りするため、安定性の高い結合を有することが好ましい。
本発明に係る有機化合物は、発光層のゲスト材料またはホスト材料として用いられる。
本発明に係る有機化合物は、有機発光素子の発光層のゲスト材料として好ましく用いることができる。特に青色発光素子のゲスト材料として用いられることが好ましい。また、アシスト材料として用いることもできる。さらに発光層以外の各層、即ちホール注入層、ホール輸送層、ホール・エキシトンブロッキング層、電子輸送層、あるいは電子注入層のいずれの層に用いても良い。
本発明に係る有機化合物は基本骨格自体でバンドギャップが広いので、緑色や赤色の発光層のホスト材料としても用いることができる。
ここで、ホスト材料とは発光層中で最も重量比が大きい材料であり、ゲスト材料とは発光層中で重量比がホスト材料よりも小さく主たる発光をする材料である。
(本発明に係る有機化合物の例示)
上記一般式(1)における化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
これら例示化合物は基本骨格にアリール基が置換した場合のものである。不図示ではあるが基本骨格にアルキル基を必要なら設けてもよい。
(例示化合物の性質)
基本骨格と直交するような置換基を基本骨格に導入をすれば、構造がさらに立体的になり、分子同士の重なり(スタック)を抑制でき、濃度消光を抑制することができる。
すなわち例示化合物のうちA1とC1を除く全ての化合物が該当する。
これら化合物は、一般式〔1〕におけるR1とR6の位置にアリール基を導入することにより分子のスタックを抑制することができるが、置換位置によってその効果が異なる。
一般式〔1〕中、R1,R6>R2,R4,R5>R3の順で分子のスタック抑制効果が大きい。つまり、R1またはR6の位置に置換基を導入すると、最も濃度消光を抑制する効果が高いため好ましい。
また、発光波長の調整の観点からは、R1,R6<R2,R4,R5<R3の順で長波長化する。つまり、R3の位置に置換基を導入すると、発光が最も長波長化した化合物を得ることができるため好ましい。このように導入する置換基の種類と位置を変えることで、発光波長の微調整が可能である。
中でも下記一般式[2]で示される有機化合物がさらに好ましい。この置換位置は上記の通り発光波長に大きな影響を与えない置換位置であり、分子スタックを抑制する効果が高いため好ましい。
一般式[2]のR1およびR6はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基である。これらは置換基を有するものも含む。
このアルキル基とはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
このアリール基はフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基である。
このアリール基はさらに置換基を有してよく、その置換基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
アリール基は基本骨格に対して直角に近い角度で設けられるため、分子間の会合を抑制し濃度消光を抑制する効果を有する。アルキル基も同様の効果を有するがアリール基の効果の方が高い。
アリール基として挙げたフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基はその嵩高さから濃度消光を抑制する効果が高く、分子の共役長に与える影響が小さいので、発光波長が長波長化しにくいため好ましい。
ターフェニル基よりも嵩高いアリール基を用いても同様の効果が得られるが、ターフェニル基以上の効果はないと考えられる。なぜならば、分子構造が大きく基本骨格からの距離が大きくなるからである。
アリール基がアルキル基を有する場合はさらに嵩高くなり、濃度消光抑制の効果を高めることができる。
A群は、A1を除いてR1またはR6の位置に置換基を導入した化合物で、最も濃度消光の抑制の効果が大きい。また、本発明に係る化合物の中ではより短波長の発光を得ることができる。A群の中でもフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基を置換基とすることが好ましい。というのも分子会合は抑制するが発光波長に与える影響は小さいためである。
B群は、R2,R4,R5の位置に置換基を導入した化合物で、A群よりも長波長でC群よりも短波長な発光を得ることができる。B群の中でもナフチル基、ビフェニル基、フェナンスレニル基を有するものが好ましい。というのも共役を伸ばして発光波長を変えるためである。
C群は、R3の位置に置換基を導入した化合物で、発光が最も長波長化した化合物を得ることができる。さらに例示化合物C9乃至C16に関しては、R1の位置にも置換基を導入しているため、長波長の発光を得ることができ、かつ、濃度消光の抑制の効果も大きいため好ましい。中でもフルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基、フェナンスレニル基を有するものが好ましい。というのも発光波長を大きく変えられるからである。
以上のように例示化合物をA乃至C群として挙げた。これら化合物は基本骨格自体で青色発光するものである。また本発明に係る有機化合物の基本骨格は置換基を設けることにより青から更に長波長化、具体的には緑色に発光しうる。また一般式〔1〕で示す有機化合物は有機発光素子のゲスト材料に限らず有機発光素子のホスト材料や電子輸送層や電子注入層やホール輸送層やホール注入層やホールブロッキング層等に用いても良い。その場合有機発光素子の発光色は青に限らずより具体的には緑や赤でも良いし、白色でも良いし、中間色でもよい。また緑色を発光する有機発光素子の発光層のホスト材料に用いることもできる。
(合成ルートの説明)
本発明に係る有機化合物の合成ルートの一例を説明する。以下に反応式を記す。
中間体D2は、例えばトルエン溶媒中、トリエチルアミンおよび触媒としてNi(dppp)Cl存在下、ハロゲン体と4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボランを反応させることにより合成することができる。
中間体D5またはD6の合成は、例えばトルエンとエタノールと蒸留水の混合溶媒中、炭酸ナトリウムおよび触媒としてPd(PPh存在下、対応するハロゲン体D3またはD4とピナコールボラン体D2を反応させることにより行うことができる。
中間体D7は、例えば中間体D5をピリジン溶媒中、無水トリフルオロメタンスルホン酸を反応させることにより合成することができる。
中間体D6またはD7を、例えばDMF溶媒中、DBU、LiClおよび触媒としてPd(PPhCl存在下で反応させることにより、一般式〔1〕で示されるD8を合成することができる。
(その他有機化合物と原料)
上記反応式のうちD3またはD4をかえることで種々の有機化合物を合成することができる。その具体例を表2に合成化合物として示す。
中間体D1の合成ルートの一例を説明する。以下に反応式を記す。
中間体D11の合成は、例えばトルエンとエタノールと蒸留水の混合溶媒中、炭酸ナトリウムおよび触媒としてPd(PPh存在下、D9とD10を反応させることにより行うことができる。
中間体D13の合成は、例えばテトラヒドロフラン中D11をノルマル−ブチルリチウムによりリチオ化した後D12と反応させ、粗精製後、酸中で加熱攪拌することにより行うことができる。
中間体D1の合成は、D13を四塩化炭素中で臭素と反応させることにより行うことができる。
(有機発光素子の説明)
次に本実施形態に係る有機発光素子を説明する。
本実施形態に係る有機発光素子は一対の電極である陽極と陰極とそれらの間に配置される有機化合物層とを有し、この有機化合物層が一般式〔1〕で示される有機化合物を有する素子である。
本実施形態に係る有機発光素子は、有機化合物層が複数層で構成されてもよい。この複数層としてはホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホールブロッキング層、エキシトンブロッキング層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。これらの層を適宜組み合わせて用いることができる。
なお、本実施形態に係る有機化合物をゲスト材料として用いる場合、ホスト材料に対するゲスト材料の濃度は0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。
本発明者らは種々の検討を行い、本発明の前記一般式〔1〕で表される有機化合物を発光層のホスト材料またはゲスト材料、特にゲスト材料として用いた素子が高効率で高輝度な光出力を有し、極めて耐久性が高いことを見出した。
本実施形態に係る有機発光素子は本発明に係る有機化合物以外にも、必要に応じて従来公知の低分子系及び高分子系のホール注入性材料あるいは輸送性材料あるいはホスト材料あるいはゲスト材料あるいは電子注入性材料あるいは電子輸送性材料等を一緒に使用することができる。
以下にこれらの化合物例を挙げる。
ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料としては、ホール移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
ホスト材料としては、具体的な構造式を表3に示す。ホスト材料は表3に示す構造式で示される化合物の誘導体であってもよい。またそれ以外に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、及びトリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
電子注入性材料あるいは電子輸送性材料としては、ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は単独で使用してもよいし複数併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で使用してもよいし、複数併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
本実施形態に係る有機発光素子において、本実施形態に係る有機化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により層を形成する。ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で形成する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
(有機発光素子の用途)
本発明に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどがある。
表示装置は本実施形態に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部は複数の画素を有する。この画素は本実施形態に係る有機発光素子と発光輝度を制御するためのスイッチング素子の一例としてTFT素子とを有し、この有機発光素子の陽極または陰極とTFT素子のドレイン電極またはソース電極とが接続されている。表示装置はPC等の画像表示装置として用いることができる。
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの情報を入力する画像入力部を有し、入力された画像を表示部に出力する画像出力装置でもよい。また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部として、外部から入力された画像情報に基づいて画像を表示する画像出力機能と操作パネルとして画像への加工情報を入力する入力機能との両方を有していてもよい。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
次に、本実施形態に係る有機発光素子を使用した表示装置について図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る有機発光素子と、有機発光素子に接続するスイッチング素子の一例であるTFT素子とを示した断面模式図である。本図では有機発光素子とTFT素子との組が2組図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
図1の表示装置は、ガラス等の基板1とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜2が設けられている。また符号3は金属のゲート電極3である。符号4はゲート絶縁膜4であり、5は半導体層である。
TFT素子8は半導体層5とドレイン電極6とソース電極7とを有している。TFT素子8の上部には絶縁膜9が設けられている。コンタクトホール10を介して有機発光素子の陽極11とソース電極7とが接続されている。表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
有機化合物層12は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしている。陰極13の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層14や第二の保護層15が設けられている。
本実施形態に係る表示装置においてスイッチング素子に特に制限はなく、単結晶シリコン基板やMIM素子、a−Si型の素子等を用いてもよい。
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
[例示化合物A1の合成]
E1 2.0g(12mmol)、E2 4.0g(14mmol)をトルエン50ml、エタノール25ml、20w%炭酸ナトリウム水溶液25ml中に入れた。さらに、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0) 0.32g(0.23mmol)を加え、90度に加熱して3時間半攪拌を行った。冷却後、水、トルエンを加え、トルエンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:ヘプタン=1:7)で精製し、E3を3.2g(収率97%)得た。
E3 1.9g(6.7mmol)をテトラヒドロフラン(100ml)に溶解させ、−78℃まで冷却し、ノルマル−ブチルリチウム4.6ml(7.4mmol)をゆっくり滴下して1時間攪拌した。そこに、8.5mlのテトラヒドロフランに溶解させた9−フルオレノン1.5g(8.0mmol)を−78℃でゆっくり滴下し、徐々に室温に戻しながら3時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去後、残渣に酢酸25mlと希塩酸0.5mlを加え、6時間加熱還流した。冷却後、水を加え、沈殿物をろ別した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:ヘプタン=1:4)で精製した後、メタノールで分散洗浄を行い、E5を2.0g(収率81%)得た。
E5 1.3g(3.5mmol)を四塩化炭素35mlに溶解させ、臭素0.18ml(7.4mmol)をゆっくり滴下して4時間攪拌した。そこにメタノールを加え沈殿物をろ別し、メタノールで洗浄した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;ヘプタン)に通した後、トルエン/ヘプタンで再結晶を行い、E6を1.1g(収率68%)得た。
E6 1.0g(2.3mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン 0.68g(2.7mmol)を1,4−ジオキサン20mlに溶解させた。そこにPdCl(dppf)92mg(0.11mmol)と酢酸カリウム0.33g(3.4mmol)を加え、90℃で3時間攪拌した。冷却後、トルエンと水を加え、トルエンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;ジクロロメタン:ヘプタン=1:2)で精製し、E7を0.80g(収率72%)得た。
E7 0.73g(1.5mmol)、E8 0.40g(1.8mmol)をトルエン7ml、エタノール3ml、20w%炭酸ナトリウム水溶液3ml中に入れた。さらに、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム(0) 0.21g(0.18mmol)を加え、95度に加熱して2時間攪拌を行った。冷却後、水、トルエンを加え、トルエンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:ヘプタン=1:7)で精製し、E9を0.35g(収率46%)得た。
E9 0.35g(0.69mmol)をピリジン6mlに溶解させ0℃にした後、無水トリフルオロメタンスルホン酸0.15ml(0.89mmol)をゆっくり滴下した。反応溶液の温度を徐々に室温に上げながら2時間攪拌した。水、トルエンを加え、トルエンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム:ヘプタン=1:3)で精製し、E10を0.25g(収率56%)得た。
炭酸ナトリウム1.9g(1.8mmol)、オルトギ酸トリメチル0.40ml(3.7mmol)、DBU0.11ml(0.73mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド3mlに溶解させ、90℃で1時間攪拌した。冷却後、そこにビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)77mg(0.11mmol)とE10 0.24g(0.37mmol)を加え、140℃で3時間半攪拌した。冷却後、トルエンと水を加え、トルエンで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;ジクロロメタン:ヘプタン=1:4)で精製し、トルエン/メタノールで再結晶を行った。結晶を110℃で真空乾燥後、昇華精製を行い淡黄色結晶の例示化合物A1を66mg(収率37%)得た。
また、NMR測定によりこの化合物の構造を確認した。
H NMR(CDCl,500MHz) σ(ppm):8.67(d,1H,J=8.5Hz),8.41(d,1H,J=7.5Hz),8.26(s,1H),8.07(d,1H,J=7.0Hz),8.01(s,1H),7.95(d,2H,J=7.5Hz),7.84−7.89(m,2H),7.75(d,1H,J=8.0Hz),7.48(t,1H,J=8.0,7.5Hz),7.39−7.45(m,4H),7.29(s,1H),7.16(t,1H,J=7.5Hz),7.12(t,2H,J=7.5Hz),6.83(d,1H,J=8.5Hz),6.80(d,2H,J=7.5Hz).
例示化合物A1の1×10−5mol/Lにおけるトルエン溶液の発光スペクトルは、日立製F−4500を用いて、350nmの励起波長においてフォトルミネッセンスの測定を行った結果、442nmに最大強度を有する青色発光のスペクトルを得た。
(実施例2)
本実施例では、有機発光素子の構成を順次(陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホール・エキシトンブロッキング層/電子輸送層/陰極)とした。ガラス基板上に100nmのITOをパターニングした。そのITO基板上に、以下の有機層と電極層を10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着して連続形成し、対向する電極面積が3mmになるようにした。
ホール輸送層(30nm) G1
発光層(30nm) ホストF11、ゲスト:A1 (重量比 5%)
ホール・エキシトンブロッキング層(10nm) G2
電子輸送層(30nm) G3
金属電極層1(1nm) LiF
金属電極層2(100nm) Al
得られた有機発光素子について、その特性を測定し評価した。具体的には、素子の電流電圧特性をヒューレッドパッカード社製・微小電流計4140Bで測定し、素子の発光輝度は、トプコン社製BM7で測定した。その結果、発光効率が7.0cd/Aの良好な青色発光が観測された。さらに、初期輝度7000cd/mで連続駆動させたときに、半減寿命が400時間であった。
(実施例3)
[例示化合物A2の合成]
実施例1で用いられる有機化合物E8をE11に変更した以外は実施例1と同様の反応、精製を行った。
例示化合物A2の、1×10−5mol/lにおけるトルエン溶液の発光スペクトルは、日立製F−4500を用いて、350nmの励起波長においてフォトルミネッセンスの測定を行った結果、444nmに最大強度を有するスペクトルであった。
(実施例4)
本実施例では、実施例2で用いられる有機化合物A1をA2に変更した以外は実施例2と同様の構成の有機発光素子を作製した。
得られた有機発光素子について、その特性を測定し評価した。測定法は、実施例2のものと同様に行った。その結果、発光効率が7.4cd/Aの良好な青色発光が観測された。さらに、初期輝度7000cd/mで連続駆動させたときに、半減寿命が430時間であった。
(結果と考察)
本発明に係わる有機化合物は高い量子収率と青に適した発光を有する新規化合物であり、有機発光素子に用いた場合、良好な発光特性を有する発光素子を作ることができる。
8 TFT素子
11 陽極
12 有機化合物層
13 陰極

Claims (6)

  1. 下記一般式〔2〕で示されることを特徴とする有機化合物。

    一般式〔2〕において、RおよびRは水素原子、フェニル基からそれぞれ独立に選ばれる。
    前記フェニル基は、炭素数1以上4以下のアルキル基を有してよい。
  2. 一対の電極と前記一対の電極の間に配置される有機化合物層とを有し、
    前記有機化合物層は請求項1に記載の有機化合物を有することを特徴する有機発光素子。
  3. 前記有機化合物層は発光層であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
  4. 青色発光することを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
  5. 複数の画素を有し、前記画素は請求項2乃至4のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するスイッチング素子とを有することを特徴とする表示装置。
  6. 画像を入力するための画像入力部と画像を出力するための表示部とを有し、前記表示部は複数の画素を有し、前記画素は請求項2乃至4のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続するスイッチング素子とを有することを特徴とする画像出力装置。
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