JP4827512B2 - 炭素材料の精製方法及びその精製装置 - Google Patents

炭素材料の精製方法及びその精製装置 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナノチューブと呼ばれるナノレベルの立体構造を有する新規な炭素材料の精製方法及びその精製装置に関する。
炭素材料は、温度や圧力環境の違いにより種々の立体構造をとることが知られており、煤のように特定の結晶構造をもたない非晶質、雲母に代表される平面層状の六員環グラファイト構造や三次元立体ダイヤモンド構造などがある。これらはミリメートル以上の大きさまで連続した構造をとることが可能である。ところが最近では、複数の炭素原子がボール状の構造を成すフラーレンや、カーボンナノチューブと呼ばれるチューブ状の構造を成す新規なナノレベル立体構造が発見された。このナノレベル立体構造は、前記炭素材料がもつ構造と比較して顕著な特異性を有している。すなわち、ナノレベル立体構造の径が極端に小さいため、物性の量子化が予想され、従来の炭素材料にない新機能の発現が期待できる。これらがどのような温度・圧力環境で構造的に安定かについてはまだ研究段階にあるものの、工業材料としての応用を目的にそれらの製造方法については幾つかの提案がなされている。
従来のフラーレン及びカーボンナノチューブの製造法を大別すると次の三通りになる。第一に、金属触媒を含浸させた二本の黒鉛棒を突き合わせて通電することにより、接触部分から炭素を気化させて、同時に気化したナノメートルサイズの炭素を金属触媒粒子上に成長させるアーク放電法がある。第二に、アーク放電させるかわりにレーザビームを照射して炭素原子を気化させ、同様の金属触媒を利用して立体構造に成長させるレーザアブレーション法がある。第三に、ガス状の炭化水素を熱分解して、触媒金属板上に再成長させるCVD(Chemical Vapor Deposition)法がある。
いずれの方法も、炭素を一度ガス化させた後、触媒上に再び固相成長させる方法であり、固相状態にある炭素原子を一度気相(ガス)にした後、再び固相の立体構造を得るようにしている。
カーボンナノチューブを工業材料として使用した代表例としては、電子放出装置がある(特許文献1〜5参照)。カーボンナノチューブはナノメートルサイズの炭素の管であり、優れた電気伝導性を有する。そのため、カーボンナノチューブに電界を加えると、管の端部などで電界集中が生じ、電子を外部に容易に引き出すことができる。引き出された電子を蛍光板に当てると発光するので、光源やディスプレイとして使用できる。従来の電子放出源と比べると、カーボンナノチューブはその断面サイズが小さいため、電界集中が効果的に生じると考えられている。このため、電子放出に必要とされる電圧が小さく、高真空環境を必要としないなど、電子放出装置の電子放出源として優れた特徴を有している。その他の用途としては、高導電性、高熱伝導性、高耐摩耗性の特長を生かした様々な電子材料や工業材料がある。
しかしながら、従来のカーボンナノチューブの製造法によると、反応の過程で生成されたカーボンナノチューブは触媒寸法の違い、反応管中の流速や温度差などの影響で所望の寸法を得ることが難しいという問題があった。また、従来の製造法では、カーボンナノチューブは生成されるものの、安定に生成されるとは限らず、そのためカーボンナノチューブと不純物カーボン粒子が混在してしまい、同一径のカーボンナノチューブを多量に得ることは難しいという問題があった。一般的には、カーボンナノチューブの分離・精製手段として液体クロマトグラフィーや電気泳動法等の分析技術が用いられる。その際、分離対象物は分離に使用する溶媒に可溶化する必要がある。しかし、カーボンナノチューブは可溶化が困難であるため、液体クロマトグラフィーや電気泳動法等の分離技術を用いることはできなかった。
最近、様々な可溶化物質とクロマトグラフィーを組み合わせてカーボンナノチューブを可溶化する試みがなされている。その中で可溶化剤として界面活性剤、分離方法として分子ふるいクロマトグラフィー(Size exclusion chromatography)を用いて単層カーボンナノチューブを分離する方法(非特許文献1参照)や、GTの繰り返し塩基配列を有するDNAを用いて可溶化後、陽イオン交換クロマトグラフィーでカーボンナノチューブを分離(金属性と半導体性)する方法(非特許文献2参照)が提案されている。しかし、クロマトグラフィーは操作にある程度のスキルが必要で、しかも煩雑な上、一回に使用できるサンプル量が限られているため、大量精製には適していなかった。さらに、分離後の最終的なカーボンナノチューブの精製過程でカーボンナノチューブ複合体からの可溶化物質を脱離する方法が提示されていなかった。
特開平6―157016号公報 特開平7―61803号公報 特開平11―43316号公報 特開2000―86217号公報 特開2000―95509号公報 Appl. Phys. A, Vol.67,(1998)117-119 Science, Vol.302,(2003)1545-1548
本発明の目的は、カーボンナノチューブを選択的に可溶化し、カーボンナノ粒子などが混在している原料からカーボンナノチューブを径の大きさ又は長さの違いによって篩い分けし、分離後のカーボンナノチューブ複合体から可溶化物質を容易に離脱し、所望の大きさのカーボンナノチューブを得る方法及びその精製装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明では、煤と呼ばれる固体状のカーボンナノ粒子とカーボンナノチューブとを含む混合物から、親水部(親水性アミノ酸)と疎水部(疎水性アミノ酸)を有する両親媒性直鎖ペプチドを用いてカーボンナノチューブのみを選択的に可溶化し、カーボンナノチューブをその寸法径もしくは長さの違いによって篩い分け(精製)する。用いられる両新媒性直鎖ペブチドは、酵素処理あるいはアルカリ処理により、カーボンナノチューブから容易に分離され、単体となったカーボンナノチューブは不溶化するため、簡単に精製することができる。
すなわち、本発明は、カーボンナノチューブを含む炭素化合物を分散した溶液とペブチドを有する化合物を含む溶液とを混合する工程と、前記工程で得られるカーボンナノチューブとペブチドを有する化合物の可溶化複合体と不溶物を分離する工程と、前記可溶化複合体のカーボンナノチューブとペブチドとの結合を特異的に切断する工程と、前記工程で切断されたペプチド断片とカーボンナノチューブとを分離する工程とを有することを特徴とするカーボンナノチューブ精製方法を提供する。
本発明の精製方法において、前記ペブチドは、少なくとも2個以上の親水性アミノ酸と少なくとも1個以上の疎水性アミノ酸を有することが好ましい。この場合、親水性アミノ酸としては、少なくとも2個以上のGlyを有することが好ましく、疎水性アミノ酸としては、Phy、Leu、Ile、及びValから選ばれるいずれか1又は2以上を含むことが好ましい。
前記ペプチドの好適な一例としては、例えば、Lys-Phe又はLys-Pheの繰り返し構造を有するペプチドを挙げることができる。
また、前記ペプチドのC末端には、芳香族誘導体がエステル結合で結合していてもよい。
本発明の精製方法において、カーボンナノチューブとペブチドの結合を特異的に切断する工程は、酵素処理あるいはアルカリ処理によって行うことができる。酵素としては、キモトリプシン、E.Coli プロテアーゼI、スブチリシン、カテプシンG等のタンパク分解酵素を用いることができる。
また、可溶化複合体と不溶物を分離する工程は、ろ過、遠心分離、又は電気泳動によって行うことができる。
本発明はまた、カーボンナノチューブを選択的に可溶化するためのペブチドを有する化合物を含む溶液と、前記ペプチドのアミノ酸結合を特異的に切断する酵素あるいは試薬を含む溶液を必須の構成要素とするカーボンナノチューブ精製キットも提供する。
前記キットにおいて、酵素としては、キモトリプシン、E.Coli プロテアーゼI、スブチリシン、カテプシンG等のタンパク分解酵素を用いることができる。また、試薬としてはアルカリ溶液を用いることができる。
本発明はまた、カーボンナノチューブ精製装置も提供する。前記装置は、カーボンナノチューブを含む試料を収める試料槽と、ペプチドを有する化合物を含む溶液を収めるペプチド溶液槽と、前記ペプチドを切断する酵素又は試薬を収める試薬槽と、前記試料槽にペプチド溶液槽からペプチドを有する化合物を含む溶液を注入する注入手段と、カーボンナノチューブとペブチドを有する化合物の可溶化複合体を不溶物と分離し、回収槽に移動させる手段と、前記回収槽に前記試薬槽から酵素又は試薬を注入する注入手段と、前記酵素又は試薬によって切断されたペプチド断片と前記カーボンナノチューブとを分離する分離手段とを有する。前記装置において、可溶化複合体と不溶物を分離する手段は、例えば、ろ過、遠心分離、又は電気泳動によって行うことができる。
本発明の精製方法及び精製装置によれば、煤と呼ばれる固体状のナノ粒子炭素からカーボンナノチューブを安定かつ高い回収率で容易に精製することができる。しかも、寸法径の揃ったカーボンナノチューブを表面層の汚染のない精製された状態で提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のカーボンナノチューブの精製方法を示すフロー図である。使用するサンプルは、カーボンナノチューブを含む炭素化合物であり、アーク放電法又はCVD法で作製したもの、又は市販品である。
最初、前処理としてカーボンナノチューブを含む炭素化合物を溶液に分散する。その際、煤等の大きな不溶物は遠心分離等で取り除く。カーボンナノチューブが分散した溶液にカーボンナノチューブと複合体を形成する両親媒性直鎖ペプチドを添加・混合して、カーボンナノチューブを可溶化する。可溶化したカーボンナノチューブと両親媒性直鎖ペプチドとの複合体から不溶物をろ過等で除去して、カーボンナノチューブと両親媒性直鎖ペプチドの複合体のみを含む溶液を得る。得られたカーボンナノチューブと両親媒性直鎖ペプチドの複合体を含む溶液に、アミノ酸結合を切断する酵素を加えて、カーボンナノチューブと両親媒性直鎖ペプチドとの複合体を壊して、カーボンナノチューブを再び不溶化させる。なお、この両親媒性直鎖ペプチドの脱離によるカーボンナノチューブの不溶化は、アルカリ溶液を加えることにより、ペプチド結合を加水分解して行なうこともできる。不溶化したカーボンナノチューブは、ろ過等で単離した後、蒸留水、メタノール洗浄して、精製する。
本発明で使用するペプチドは直鎖ペプチドを基本骨格(基本構造)とし、親水部(親水性アミノ酸)と疎水部(疎水性アミノ酸)を有する両親媒性直鎖ペプチドである。前記親水部は、すくなくとも2個以上のGlyを含むことが望ましく、これにより、1個の親水性アミノ酸しか含まない場合に比べて、親水部のフレキシブリティが増大し、ペプチドはカーボンナノチューブの周りを容易に取り囲み、カーボンナノチューブを可溶化しやすくする。
図2(a)、(b)、(c)は、前記両親媒性直鎖ペプチドの一例として、Gly-Gly-Gly-Phe-Obzl(配列番号1)、Gly-Gly-Gly-Phe-Phe-Obzl(配列番号2)、Gly-Gly-Gly-Phe-Gly-Phe-Obzl(配列番号3)の構造を示す。本両親媒性直鎖ペプチドは、親水部としてGly-Gly-Gly(配列番号4)を、疎水部(疎水性アミノ酸)としてPhe-OBzlを用いている。このように、ベンジルエステルを有するPhe-OBzlを用いることにより、Pheに加えてベンジルエステルの構成部であるベンゼン環により疎水性を増大させることができる。さらに、この結合はキモトリプシンを用いた酵素切断処理以外にアルカリ処理によっても容易に切断することができる。同様の効果は、ベンジルエステルの代わりにPhe-NH2を用いても得ることができる。上記の例では、疎水性アミノ酸としてPheを用いたが、Pheの代わりに他の疎水性アミノ酸であるVal、Ile、Leuを用いても同じ効果が得られる。
本発明の1つの実施例として、両親媒性直鎖ペプチド(配列番号2)を用いたカーボンナノチューブの精製方法を図3に示す。
まず、カーボンナノチューブを含む炭素化合物(約1mg)が入っている試料槽31に水1.0mLを加え、超音波により懸濁して分散した。その際、煤等の大きな不溶物は遠心分離等で取り除くことが望ましい。カーボンナノチューブが分散した溶液槽32にディスペンサー33を用いて、ペプチド溶液槽34から両親媒性直鎖ペプチド溶液を(1.0%水溶液)1.0mLを加えて、超音波により攪拌して1時間放置した。使用した両親媒性直鎖ペプチドは、Gly-Gly-Gly-Phe-Phe-Obzl(配列番号2)である。可溶化したカーボンナノチューブ複合体と不溶物との分離は、ろ過により行なった。得られたろ液中には、可溶化したカーボンナノチューブ複合体と過剰の両親媒性直鎖ペプチドが溶解している。
ろ液が入った回収槽35にディスペンサー36を用いて、試薬槽37から1N水酸化ナトリウム溶液を1mL加えて、約1時間放置し、アルカリ処理を行った。アルカリ処理により不溶化したカーボンナノチューブは、ろ過して捕集し、蒸留水、エタノール洗浄後、乾燥することにより精製することができた。なお、アルカリ処理によるカーボンナノチューブの不溶化処理は、酵素を用いて行っても良い。例えば、酵素試薬としてキモトリプシン溶液(1mg/mL)を50μL加えて、37℃、1時間反応させれば、アルカリ処理と同様にカーボンナノチューブを不溶化することができる。
カーボンナノチューブの評価法としてはラマン散乱法が良く知られているが、溶液中でカーボンナノチューブと両親媒性直鎖ペプチドが複合体を形成したかどうかの情報は得られない。そこで今回は吸光度法を用いて、カーボンナノチューブと両親媒性直鎖ペプチドとの複合体形成を測定した。以下に原理を簡単に説明する。今回使用する両親媒性直鎖ペプチドは、疎水部(疎水性アミノ酸)に260nmに吸収のあるPheを用いている。一方、親水部(親水性アミノ酸)のGlyには260nmには吸収がない。そのため、水溶液中で両親媒性直鎖ペプチドがフリーである場合には、260nmの吸収ピークが見られる。両親媒性直鎖ペプチドのPheのベンゼン環(本実施例の場合にはベンジルエステルのベンゼン環も260nm付近に吸収がある)とカーボンナノチューブが静電的に結合するとベンゼン環の電子雲が変化(すなわち、電子状態変化)して、吸収波長が長波長側にシフトする。つまり、両親媒性直鎖ペプチドとカーボンナノチューブが複合体を形成すると吸収スペクトルが260nmから長波長側にシフトするので、そのシフト量を測定することにより、カーボンナノチューブの可溶化状態を判断することができる。当然、可視化されるため、目視により可溶化か分散(あるいは懸濁)の違いを見分けることによっても判定することができる。そこで今回の実験では、吸光度法と可視化法を併用して精製状態を判断して、最後に透過型電子顕微鏡で乾燥状態での形態を観察した。
今回用いた両親媒性直鎖ペプチド溶液及びカーボンナノチューブ可溶化溶液から得られた吸光スペクトルを図4に示す。使用した両親媒性直鎖ペプチドは、Gly-Gly-Gly-Phe-Phe-Obzl(配列番号2)である。両親媒性直鎖ペプチドのみの溶液のスペクトル41は、260nm付近にPhe由来のピークのみが見られる。カーボンナノチューブ可溶化溶液のスペクトル42は、260nm付近から長波長側へピークが大きくテーリングしている。このピークは、Phe由来の260nm付近のピークと260nmから長波側にシフトしたブロードなピークの2つ以上のピークから形成されていると考えられる。すなわち、カーボンナノチューブ可溶化溶液のスペクトルからカーボンナノチューブにPheやベンシルエステル(ベンセン環)が結合していることが分かる。一方、カーボンナノチューブ可溶化溶液をアルカリ処理して、不溶化物をろ過して取り除いたろ液の吸収スペクトルは、両親媒性直鎖ペプチド溶液のみのスペクトルと同じであった。
次に、今回使用した原料のカーボンナノチューブ及び精製後のカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を各々図5と図6に示す。図5中、原料のカーボンナノチューブは大きな塊51であり、お互いが絡み合った状態にある。本発明を用いた精製により、図6に示すように、絡み合った状態から解きほぐされたカーボンナノチューブ61を得ることができたことが分かる。
別の両親媒性直鎖ペプチドを使用した他の実施例を以下に説明する。本実施例では、面構造認識に優れている二次構造(すなわち、β構造)を有する両親媒性直鎖ペプチドを用いた。今回用いた両親媒性直鎖ペプチドは、Lys-Pheの繰り返し配列を有するものである。
上記の実施例の場合と同様に、カーボンナノチューブを含む炭素化合物(約1mg)に水1.0mLを加え、超音波により懸濁して分散した。カーボンナノチューブが分散した溶液にディスペンサーを用いて、両親媒性直鎖ペプチド溶液を(1.0%水溶液)1.0mLを加えて、超音波により攪拌して1時間放置した。使用した両親媒性直鎖ペプチドは、Lys-Phe-Lys-Phe-NH2(配列番号5)、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2(配列番号6)、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2(配列番号7)である。可溶化したカーボンナノチューブ複合体と不溶物との分離は、ろ過により行なった。得られたろ液に、ディスペンサーを用いて1N水酸化ナトリウム溶液を1mL加えて、約1時間放置し、アルカリ処理を行った。アルカリ処理により不溶化したカーボンナノチューブは、ろ過して捕集し、蒸留水、エタノール洗浄後、乾燥して精製した。
なお、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合にはカーボンナノチューブを得ることができたが、Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合にはカーボンナノチューブを得ることが出来なかった。この結果は、Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合には用いたカーボンナノチューブに比較してβ構造の大きさが小さくてカーボンナノチューブと結合できず、可溶化できなかったためであると考えられる。
両親媒性直鎖ペプチドのみの水溶液と両親媒性直鎖ペプチドとカーボンナノチューブの混合溶液から得られた吸光スペクトルを図7(a)、(b)に示す。図7(a)は、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合の吸光スペクトルを、図7(b)は、Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合の吸光スペクトルを示している。尚、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合の吸光スペクトルは示していないが、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合と同じ傾向であった。図7(a)に示すように、Lys-Phe-Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合の両親媒性直鎖ペプチドのみの水溶液のスペクトル71は、260nm付近にPhe由来のピークのみが見られた。両親媒性直鎖ペプチドとカーボンナノチューブの混合溶液のスペクトル72は、260nm付近から長波長側へピークが大きくテーリングしている。また、透過型電子顕微鏡の評価結果は、図6に示す結果とほぼ同じであった。一方、図7(b)に示すように、Lys-Phe-Lys-Phe-NH2の場合の両親媒性直鎖ペプチドのみの水溶液のスペクトル73と両親媒性直鎖ペプチドとカーボンナノチューブの混合溶液のスペクトル74は共に260nm付近にPhe由来のピークのみが見られた。この結果は、Lys-Phe-Lys-Phe-NH2はカーボンナノチューブと結合しにくいことを示すものである。すなわち、面構造認識に優れている二次構造(すなわち、β構造)を有する両親媒性直鎖ペプチドでカーボンナノチューブを可溶化する場合には、繰り返し構造が3個以上(すなわち6個以上のアミノ酸配列)必要であることが分かる。
本発明の他の実施例である両親媒性直鎖ペプチド(配列番号3)を用いたカーボンナノチューブの精製方法を図8により以下に説明する。
最初、カーボンナノチューブを含む炭素化合物(約1mg)の試料槽81に0.1M Tris‐HClバッファー(10mM CaCl2、pH8.2)1.0mLを加え、超音波により懸濁して分散した。その際、煤等の大きな不溶物は遠心分離等で取り除くことが望ましい。カーボンナノチューブが分散した溶液槽82にディスペンサー83を用いて、試薬槽84から両親媒性直鎖ペプチド溶液を(1.0%水溶液)1.0mLを加えて、超音波により攪拌して1時間放置した。使用した両親媒性直鎖ペプチドは、Gly-Gly-Gly-Phe-Gly-Phe-Obzl(配列番号3)である。溶液槽82と回収槽85の間は内径100μm、長さ10cmのキャピラリー86を介して接続されている。溶液槽と回収槽の間に高圧電源87により100V/cmの電圧を印加して、電気浸透流により可溶化したカーボンナノチューブ複合体のみを回収槽85に泳動し、可溶化したカーボンナノチューブ複合体と不溶物を分離した。なお、本発明では使用した両親媒性直鎖ペプチドを電気浸透流を用いて泳動したが、使用するペプチドの電荷に応じて電気泳動と電気浸透流を使い分け、印加する電圧の向きを適宜設定すれば電気泳動法を用いても問題はない。その後、回収槽85にディスペンサー88を用いて、試薬槽89からキモトリプシン溶液(1mg/mL)を 50 μL 加えて、37℃、1時間反応させた。キモトリプシン処理により不溶化したカーボンナノチューブは、ろ過して捕集し、蒸留水、エタノール洗浄後、乾燥して得ることができた。
本発明の精製装置の構成を以下に説明する。
本装置構成を図9に示す。本装置は、カーボンナノチューブを含む試料を収める試料槽91、両親媒性直鎖ペプチドを含む試薬を納めるペプチド溶液槽92を備えたディスペンサー93、両親媒性直鎖ペプチドを切断する酵素を含む試薬を納める試薬槽94を備えたディスペンサー95、両親媒性直鎖ペプチドで可溶化したカーボンナノチューブ複合体を電気泳動で泳動するキャピラリー96、電気泳動で可溶化したカーボンナノチューブ複合体を回収する回収槽97、から構成させる。最初、カーボンナノチューブを含む試料を収める試料槽91に両親媒性直鎖ペプチドを含む試薬を納めるペプチド溶液槽92を備えたディスペンサー93で試薬を注入する。その後、試料槽91と回収槽97の間にキャピラリー96を介して電気を印加して、電気泳動を行う。電気泳動の結果、回収されたカーボンナノチューブ複合体を含む回収槽97に酵素試薬をディスペンサー95により注入して、両親媒性直鎖ペプチドを分解して、カーボンナノチューブを不溶化する。不溶化したカーボンナノチューブは、ろ過して捕集し、蒸留水、エタノール洗浄後、乾燥して分離・回収することができる。
本発明の精製方法及び精製装置によれば、煤と呼ばれる固体状のナノ粒子炭素からカーボンナノチューブを安定かつ高い回収率で容易に精製することができる。しかも、寸法径の揃ったカーボンナノチューブを表面層の汚染のない精製された状態で提供することができる。したがって、本発明の精製方法及び精製装置は、カーボンナノチューブの工業的製造において有用な精製手段となる。
図1は、本発明に係るカーボンナノチューブの精製方法を示すフロー図である。 図2は、本発明に係る両親媒性直鎖ペプチドの例(配列番号1〜3)を示す。 図3は、本発明に係る両親媒性直鎖ペプチド(配列番号2)を用いたカーボンナノチューブの精製方法(実施例1)の手順を示す。 図4は、本発明に係る両親媒性直鎖ぺプチド(配列番号2)のみの水溶液及びカーボンナノチューブ可溶化溶液から得られた吸光スペクトルを示す。 図5は、精製前のカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を示す。 図6は、本発明に係る両親媒性直鎖ペプチド(配列番号2)を用いて精製したカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を示す。 図7は、両親媒性直鎖ペプチド(配列番号5〜7)とカーボンナノチューブの混合溶液の吸収スペクトルを示す。 図8は、本発明に係る両親媒性直鎖ペプチド(配列番号3)を用いたカーボンナノチューブの精製方法(実施例3)の手順を示す。 図9は、本発明の精製装置の一例を示す。
符号の説明
31、81、91…試料槽、
32、82…溶液槽、
33、36、83、93、95…ディスペンサー、
34、84、92…ペプチド溶液槽、
35…回収槽、
37、89、94…試薬槽、
41…両親媒性直鎖ペプチドのみの溶液のスペクトル、
42…カーボンナノチューブ可溶化溶液のスペクトル、
51…大きな塊、
61…カーボンナノチューブ、
71、73…両親媒性直鎖ペプチドのみの水溶液のスペクトル、
72、74…両親媒性直鎖ペプチドとカーボンナノチューブの混合溶液のスペクトル、
85、97…回収槽、
86、96…キャピラリー、
87…高圧電源
配列番号1−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号2−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号3−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号4−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号5−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号6−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号7−人工配列の説明:合成ペプチド

Claims (15)

  1. カーボンナノチューブを含む炭素化合物を分散した溶液とペブチドを有する化合物を含む溶液とを混合する工程と、
    前記工程で得られるカーボンナノチューブとペブチドを有する化合物の可溶化複合体と不溶物を分離する工程と、
    前記可溶化複合体のカーボンナノチューブとペブチドとの結合を特異的に切断する工程と、
    前記工程で切断されたペプチド断片とカーボンナノチューブとを分離する工程とを有することを特徴とするカーボンナノチューブ精製方法。
  2. 前記ペブチドが、少なくとも2個以上の親水性アミノ酸と少なくとも1個以上の疎水性アミノ酸を有することを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  3. 前記親水性アミノ酸が、少なくとも2個以上のGlyを含むことを特徴とする請求項2に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  4. 前記疎水性アミノ酸が、Phy、Leu、Ile、及びValから選ばれるいずれか1又は2以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  5. 前記ペプチドが、Lys-Phe又はLys-Pheの3以上の繰り返し構造を有することを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  6. 前記ペプチドのC末端に芳香族誘導体がエステル結合で結合していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  7. 前記カーボンナノチューブとペブチドの結合を特異的に切断する工程が、酵素を用いて行なわれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  8. 前記酵素がキモトリプシン、E.Coli プロテアーゼI、スブチリシン、又はカテプシンGであることを特徴とする請求項7に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  9. 前記カーボンナノチューブとペブチドの結合を特異的に切断する工程が、アルカリ条件下で行なわれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  10. 前記可溶化複合体と不溶物を分離する工程が、ろ過、遠心分離、又は電気泳動によって行われることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ精製方法。
  11. カーボンナノチューブを選択的に可溶化するためのペブチドを有する化合物を含む溶液と、前記ペプチドのアミノ酸結合を特異的に切断する酵素あるいは試薬を含む溶液とを、必須の構成要素とすることを特徴とするカーボンナノチューブ精製キット。
  12. 前記酵素がキモトリプシン、E.Coli プロテアーゼI、スブチリシン、又はカテプシンGであることを特徴とする請求項11に記載のカーボンナノチューブ精製キット。
  13. 前記試薬がアルカリ溶液であることを特徴とする請求項11又は12に記載のカーボンナノチューブ精製キット。
  14. カーボンナノチューブを含む試料を収める試料槽と、
    ペプチドを有する化合物を含む溶液を収めるペプチド溶液槽と、
    前記ペプチドを切断する酵素又は試薬を収める試薬槽と、
    前記試料槽にペプチド溶液槽からペプチドを有する化合物を含む溶液を注入する注入手段と、
    カーボンナノチューブとペブチドを有する化合物の可溶化複合体を不溶物と分離し、回収槽に移動させる手段と、
    前記回収槽に前記試薬槽から酵素又は試薬を注入する注入手段と、
    前記酵素又は試薬によって切断されたペプチド断片と前記カーボンナノチューブとを分離する分離手段とを有することを特徴とするカーボンナノチューブ精製装置。
  15. 前記可溶化複合体と不溶物を分離する手段が、ろ過、遠心分離、又は電気泳動によって行われることを特徴とする請求項14に記載のカーボンナノチューブ精製装置。
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