本発明に係る多種燃料内燃機関の実施例1を図1から図3に基づいて説明する。この多種燃料内燃機関とは、性状の異なる少なくとも2種類の燃料の内の少なくとも1種類を燃焼室に導いて又は当該少なくとも2種類の燃料からなる混合燃料を燃焼室に導いて運転される内燃機関である。本実施例1にあっては、後者の多種燃料内燃機関を例に挙げて説明する。
この多種燃料内燃機関は、図1に示す制御手段たる電子制御装置(ECU)1によって燃焼制御等の各種制御動作が実行される。その電子制御装置1は、図示しないCPU(中央演算処理装置),所定の制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory),そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory),予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
最初に、ここで例示する多種燃料内燃機関の構成について図1に基づき説明を行う。尚、その図1においては1気筒のみを図示しているが、本発明は、これに限らず、多気筒の多種燃料内燃機関にも適用可能である。本実施例1においては、複数の気筒を具備しているものとして説明する。
この多種燃料内燃機関には、燃焼室CCを形成するシリンダヘッド11,シリンダブロック12及びピストン13が備えられている。ここで、そのシリンダヘッド11とシリンダブロック12は図1に示すヘッドガスケット14を介してボルト等で締結されており、これにより形成されるシリンダヘッド11の下面の凹部11aとシリンダブロック12のシリンダボア12aとの空間内にピストン13が往復移動可能に配置される。そして、上述した燃焼室CCは、そのシリンダヘッド11の凹部11aの壁面とシリンダボア12aの壁面とピストン13の頂面13aとで囲まれた空間によって構成される。
本実施例1の多種燃料内燃機関は、機関回転数や機関負荷等の運転条件及び燃焼モードに従って空気と燃料を燃焼室CCに送り込み、その運転条件等に応じた燃焼制御を実行する。その空気については、図1に示す吸気通路21とシリンダヘッド11の吸気ポート11bを介して外部から吸入される。一方、その燃料については、図1に示す燃料供給装置50を用いて供給される。
先ず、空気の供給経路について説明する。本実施例1の吸気通路21上には、外部から導入した空気に含まれる塵埃等の異物を除去するエアクリーナ22と、外部からの吸入空気量を検出するエアフロメータ23と、が設けられている。この多種燃料内燃機関においては、そのエアフロメータ23の検出信号が電子制御装置1へと送られ、その検出信号に基づいて電子制御装置1が吸入空気量や機関負荷等を算出する。
また、その吸気通路21上におけるエアフロメータ23よりも下流側には、燃焼室CC内への吸入空気量を調節するスロットルバルブ24と、このスロットルバルブ24を開閉駆動するスロットルバルブアクチュエータ25と、が設けられている。本実施例1の電子制御装置1は、そのスロットルバルブアクチュエータ25を運転条件及び燃焼モードに従って駆動制御し、その運転条件等に応じた弁開度(換言すれば、吸入空気量)となるようにスロットルバルブ24の開弁角度を調節させる。例えば、そのスロットルバルブ24は、運転条件や燃焼モードに応じた空燃比を成す為に必要な吸入空気量の空気が燃焼室CCに吸入されるよう調節される。この多種燃料内燃機関においては、そのスロットルバルブ24の弁開度を検出し、その検出信号を電子制御装置1に送信するスロットル開度センサ26が設けられている。
更に、吸気ポート11bはその一端が燃焼室CCに開口しており、その開口部分に当該開口を開閉させる吸気バルブ31が配設されている。その開口の数量は1つでも複数でもよく、その開口毎に吸気バルブ31が配備される。従って、この多種燃料内燃機関においては、その吸気バルブ31を開弁させることによって吸気ポート11bから燃焼室CC内に空気が吸入される一方、その吸気バルブ31を閉弁させることによって燃焼室CC内への空気の流入が遮断される。
ここで、その吸気バルブ31としては、例えば、図示しない吸気側カムシャフトの回転と弾性部材(弦巻バネ)の弾発力に伴って開閉駆動されるものがある。この種の吸気バルブ31においては、その吸気側カムシャフトとクランクシャフト15の間にチェーンやスプロケット等からなる動力伝達機構を介在させることによってその吸気側カムシャフトをクランクシャフト15の回転に連動させ、予め設定された開閉時期に開閉駆動させる。本実施例1の多種燃料内燃機関においては、このようなクランクシャフト15の回転に同期して開閉駆動される吸気バルブ31を適用する。
但し、この多種燃料内燃機関は、その吸気バルブ31の開閉時期やリフト量を変更可能な所謂可変バルブタイミング&リフト機構等の可変バルブ機構を具備してもよく、これにより、その吸気バルブ31の開閉時期やリフト量を運転条件及び燃焼モードに応じた好適なものへと可変させることができるようになる。更にまた、この多種燃料内燃機関においては、かかる可変バルブ機構と同様の作用効果を得るべく、電磁力を利用して吸気バルブ31を開閉駆動させる所謂電磁駆動弁を利用してもよい。
続いて、燃料供給装置50について説明する。この燃料供給装置50は、性状の異なる複数種類の燃料を燃焼室CCに導くものである。本実施例1にあっては、性状の異なる2種類の燃料(第1燃料タンク41Aに貯留された第1燃料F1と第2燃料タンク41Bに貯留された第2燃料F2)を予め所定の燃料混合比率で混合して、その混合燃料を燃焼室CC内に直接噴射させるべく構成したものについて例示する。
具体的に、この燃料供給装置50は、第1燃料F1を第1燃料タンク41Aから吸い上げて第1燃料通路51Aに送出する第1フィードポンプ52Aと、第2燃料F2を第2燃料タンク41Bから吸い上げて第2燃料通路51Bに送出する第2フィードポンプ52Bと、その第1及び第2の燃料通路51A,51Bから各々送られてきた第1及び第2の燃料F1,F2を混ぜ合わせる燃料混合手段53と、この燃料混合手段53にて生成された混合燃料を加圧して高圧燃料通路54に圧送する高圧燃料ポンプ55と、その高圧燃料通路54の混合燃料を夫々の気筒に分配するデリバリ通路56と、このデリバリ通路56から供給された混合燃料を燃焼室CC内に噴射する各気筒の燃料噴射弁57と、を備える。
この燃料供給装置50においては、その第1フィードポンプ52A,第2フィードポンプ52B及び燃料混合手段53を電子制御装置1の燃料混合制御手段に駆動制御させ、これにより、所定の燃料混合比率の混合燃料が燃料混合手段53で生成されるように構成する。例えば、この燃料供給装置50は、その第1フィードポンプ52Aと第2フィードポンプ52Bの夫々の吐出量を電子制御装置1の燃料混合制御手段に加減させることによって混合燃料の燃料混合比率を調節してもよく、その燃料混合制御手段の指示に従って燃料混合手段53に第1及び第2の燃料F1,F2の夫々の混合割合を増減させて混合燃料の燃料混合比率を調節してもよい。ここで、その燃料混合比率は、予め設定されている一定値であってもよく、運転条件や燃焼モードに応じて変わる変動値であってもよい。
また、この燃料供給装置50は、その高圧燃料ポンプ55及び燃料噴射弁57を電子制御装置1の燃料噴射制御手段に駆動制御させ、これにより、所望の燃料噴射量,燃料噴射時期及び燃料噴射期間等の燃料噴射条件で上記の生成された混合燃料が噴射されるように構成する。例えば、その電子制御装置1の燃料噴射制御手段には、その混合燃料を高圧燃料ポンプ55から圧送させ、運転条件や燃焼モード等に応じた燃料噴射条件で燃料噴射弁57に噴射を実行させる。
そのようにして燃焼室CCに供給された混合燃料は、上述した空気と相俟って燃焼モードに対応する着火モードの着火動作によって燃焼させられる。そして、その燃焼された後の筒内ガス(燃焼ガス)は、燃焼室CCから図1に示す排気ポート11cへと排出される。ここで、この排気ポート11cには、燃焼室CCとの間の開口を開閉させる排気バルブ61が配設されている。その開口の数量は1つでも複数でもよく、その開口毎に上述した排気バルブ61が配備される。従って、この多種燃料内燃機関においては、その排気バルブ61を開弁させることによって燃焼室CC内から排気ポート11cに燃焼ガスが排出され、その排気バルブ61を閉弁させることによって燃焼ガスの排気ポート11cへの排出が遮断される。
ここで、その排気バルブ61としては、上述した吸気バルブ31と同様に、動力伝達機構を介在させたもの、所謂可変バルブタイミング&リフト機構等の可変バルブ機構を具備したものや所謂電磁駆動弁を適用することができる。
また、本実施例1の多種燃料内燃機関においては、その排気ポート11cに排出された燃焼ガス(以下、「排気ガス」という。)が図1に示す排気通路71を介して大気に放出される。これが為、その排気通路71上には、排気ガス中の有害成分の浄化を行う排気触媒装置72が配設されている。
例えば、この本実施例1の排気触媒装置72には、有害な窒素酸化物(NOx)を無害な窒素(N2),水(H2O)及び二酸化炭素(CO2)へと浄化するNOx触媒が備えられている。ここでのNOx触媒としては、NSR(NOx Storage Reduction)又はDPNR(Diesel Particulate−NOx Reduction System)が適用される。ここで、NSRとは、通常の希薄領域(リーン領域)での運転時にNOxを硝酸塩の形で触媒中に吸蔵し、その硝酸塩を還元雰囲気で窒素に還元するNOx吸蔵還元型触媒のことである。また、DPNRとは、PMとNOxを共に浄化するシステムのことである。
ところで、内燃機関においては、一般に、拡散燃焼モードと火炎伝播燃焼モードとに燃焼モードが大別され、その夫々に対応する着火モードとして圧縮自着火モードと予混合火花点火モードとが用意される。以下においては、それらを一括して燃焼モードと総称し、各々圧縮自着火拡散燃焼モード、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードと称する。
先ず、圧縮自着火拡散燃焼モードとは、圧縮行程の燃焼室CC内で形成された高温の圧縮空気の中に高圧の燃料を噴射することによって燃料の一部を自己着火させ、その燃料と空気を拡散混合させながら燃焼を進行させる燃焼形態のことである。ここで、燃焼室CC内の圧縮空気と燃料は瞬時に混合され難いので、燃料の噴射開始直後においては、所々で空燃比に濃淡が生じてしまう。一方、拡散燃焼させる際には一般的に下記の如き着火性に優れた燃料を使用することが好ましく、そのような着火性の良好な燃料は、全噴射量が噴射し終わるのを待つことなく、燃焼に適した空燃比の部分において自ら発火してしまう。これが為、この圧縮自着火拡散燃焼モードにおいては、燃焼に適した空燃比の部分の燃料が先に自己着火し、これにより形成された火炎が残りの燃料と空気を巻き込みながら徐々に燃焼を進行させる。
この圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させる為には、通常、発火点が圧縮空気の圧縮熱よりも低い着火性の良好な燃料が必要とされる。例えば、その着火性の良い燃料としては、軽油やジメチルエーテルなどが考えられる。更に、近年、軽油の代替燃料としてGTL(Gas To Liquids)燃料が注目されており、このGTL燃料は、所望の性状のものとして生成し易い。これが為、着火性の良い燃料には、着火性を高めるべく生成されたGTL燃料を使用することもできる。このような着火性の良好な燃料は、圧縮自着火拡散燃焼を可能にするだけでなく、圧縮自着火拡散燃焼モードで運転する際にNOxの発生量を減少させ、更に、燃焼時の騒音や振動を抑えることができる。
一方、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードとは、燃料と空気を予め混ぜ合わせた燃焼室CC内の予混合気に火花点火にて火種を与え、その火種を中心にして火炎を伝播させながら燃焼を進行させる燃焼形態のことである。この予混合火花点火火炎伝播燃焼モードには、均質に混ぜ合わされた予混合気に対して点火を行う均質燃焼や、点火手段の周囲に濃度の高い予混合気を形成すると共に更にその周囲に希薄予混合気を形成し、その濃い予混合気に対して点火を行う成層燃焼などの燃焼形態も含む。
この予混合火花点火火炎伝播燃焼モードに適している燃料としては、一般に、ガソリンに代表される蒸発性の高い燃料が考えられる。ここで、蒸発性の高い燃料は、空気と混合され易いので、圧縮自着火拡散燃焼させる際の燃料の過濃領域を減少させ、PMやスモーク、NOxや未燃HCの抑制に寄与する。このような蒸発性の高い燃料としては、ガソリン以外に、蒸発性の高い性状のものとして生成されたGTL燃料やジメチルエーテルなどが知られている。
本実施例1の多種燃料内燃機関は、その双方の燃焼モードでの運転を可能にすべく構成する。従って、本実施例1の多種燃料内燃機関には、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードでの運転を可能にする為、予混合気に対して火花点火させる図1に示す点火プラグ81を配設する。この点火プラグ81は、電子制御装置1の指示に従い、予混合火花点火火炎伝播燃焼モード時の運転条件に応じた点火時期になると火花点火を実行する。
また、本実施例1の電子制御装置1には、燃焼モードを設定する燃焼モード設定手段が用意されている。ここで例示する燃焼モード設定手段には、運転条件(機関回転数Ne及び機関負荷Kl)をパラメータにした図2に示す如き燃焼モードマップデータを利用して、運転条件に応じた最適な燃焼モードを選択させる。例えば、この燃焼モードマップデータは、中高負荷・低回転や高負荷・高回転等の運転条件のときに圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させ、低負荷・低回転や低中負荷・高回転等の運転条件のときに予混合火花点火火炎伝播燃焼モードで運転させるように、予め実験やシミュレーションに基づき設定されたものである。その機関回転数Neについては、図1に示すクランク角センサ16の検出信号から把握することができる。このクランク角センサ16は、クランクシャフト15の回転角度を検出するセンサである。一方、機関負荷Klについては、上述したエアフロメータ23の検出信号から把握することができる。
ここで、圧縮自着火拡散燃焼モードにおいては、圧縮空気中に燃料が噴射されるので蒸発性の低い燃料を使用した場合に燃料と空気の混合状態が均一になり難く、更に、拡散燃焼期間と後燃え期間で燃焼室CC内の温度と圧力が低下する為に、不完全燃焼を引き起こしてPMやスモークが発生され易くなってしまう。特に、そのPMやスモークの発生量は、燃料の蒸発性が低ければ低いほど増加していく。これが為、この圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させる際には、高い着火性だけでなく高い蒸発性も有している燃料を使用すればよく、これにより、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性が高まって空気との混合が促進されるので、燃料の過濃領域が減少されてPMやスモークの発生量を減少させることができる。他方、その燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性が高くなるにつれて当該燃料の着火性は低下していくので、そのような燃料を用いて圧縮自着火拡散燃焼モードで運転すると、燃料の着火性の低下に伴う急峻な燃焼によってNOxの発生量が増大してしまう可能性がある。
ここで示す「燃焼室CC内に導かれる燃料」とは、本実施例1の多種燃料内燃機関のように燃料混合手段53で混合された各燃料F1,F2の混合燃料が燃焼室CCへと送られる形態を採っているときにはその混合燃料のことをいう。ここでは、第1燃料タンク41Aに着火性が高く蒸発性の低い燃料(第1燃料F1)を貯留させ、第2燃料タンク41Bに着火性が低く蒸発性の高い燃料(第2燃料F2)を貯留させた場合について例示する。例えば、その第1燃料F1として軽油が貯留され、その第2燃料F2としてガソリンが貯留されている。かかる場合、夫々の燃料F1,F2の様々な燃料特性を総合して勘案しなければならないが、燃焼室CC内に導かれる燃料は、一般に、第1燃料F1の燃料混合割合が多ければ着火性が良好で蒸発性に劣る燃料特性となり、第2燃料F2の燃料混合割合が多ければ着火性に劣り蒸発性が良好な燃料特性となる。尚、後述する図5に示す多種燃料内燃機関のように各燃料F1,F2が個別に燃焼室CCへと供給される形態を採っている場合には、その供給された各燃料F1,F2の全体のことを「燃焼室CC内に導かれる燃料」という。かかる場合には、第1燃料F1の供給割合が多ければ着火性が良好で蒸発性に劣る燃料特性となり、第2燃料F2の供給割合が多ければ着火性に劣り蒸発性が良好な燃料特性となる。
このように、圧縮自着火拡散燃焼モード選択時には、燃焼室CC内における高着火性の第1燃料F1の含有割合を増加させて運転した場合、NOxの発生が抑えられる反面、PM及びスモークの発生量が増大され、また、高蒸発性の第2燃料F2の含有割合を増加させて運転した場合、PM及びスモークの発生が抑えられる反面、NOxの発生量が増大されてしまう。
ここで、本実施例1の多種燃料内燃機関においては、通常、排気ガス中のNOxを上述した排気触媒装置72のNOx触媒で浄化させるので、そのNOxの大気への放出が抑えられている。しかしながら、そのNOx触媒がNOxの浄化性能を発揮する為には触媒温度が活性温度領域に達していなければならず、従って、冷間始動時等の様なNOx触媒が不活性状態のときには、排気ガス中のNOxが浄化されずにそのまま大気へと放出されてしまうので、その触媒温度を上昇させる必要がある。
一方、この排気触媒装置72においては、触媒温度を上昇させ続けることによってNOx触媒や触媒担体が過熱されてしまう虞があり、その場合にNOx触媒や触媒担体が破損してしまうと、NOx触媒の浄化性能を発揮できなくなる。
そこで、本実施例1においては、NOxの浄化性能の確保とNOx触媒や触媒担体の耐久性の向上を図る為に、電子制御装置1に排気触媒装置72の触媒床温を適切に制御させて、NOx触媒の触媒温度を活性温度領域内に保たせる。
具体的に、本実施例1の電子制御装置1は、NOx触媒に対しての昇温要求があるときには触媒暖機運転モードで多種燃料内燃機関を運転させ、NOx触媒に対しての温度低下要求があるときには触媒冷機運転モードで多種燃料内燃機関を運転させる。
ここでのNOx触媒に対しての昇温要求があるときとは、NOx触媒の触媒温度が活性温度に達していないときを指しており、その触媒温度と略同じ温度である排気触媒装置72の触媒床温Tcを利用して判別することができる。本実施例1においては、その触媒床温Tcについて図1に示す床温センサ73を用いて検出させる。例えば、本実施例1の電子制御装置1には、床温センサ73から検出した触媒床温Tcと活性温度領域の下限温度TcLとを比較させ、その触媒床温Tcが下限温度TcLよりも低温であれば「NOx触媒に対しての昇温要求あり」と判断させる。
その判断が為された際に選択される触媒暖機運転モードとは、燃焼温度の高温化を図って相対的に高温寄りの排気ガスを排出させることが可能な運転モードのことをいう。
ここで、予混合火花点火火炎伝播燃焼モードにおいては、燃焼温度が極端に高温になることによって異常燃焼が起こり、これに伴ってノッキングが発生してしまうので、燃焼温度の高温化は難しい。また、本実施例1の排気触媒装置72は活性状態において排気ガス中のNOxの浄化は可能だがHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)を浄化できないので、COの発生を抑えることのできない予混合火花点火火炎伝播燃焼モードでの運転については、低負荷運転等の限られた状況下でのみ行わせることが好ましい。そこで、燃焼温度の高温化を図る為には、HCやCOの発生を抑えることのできる圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させることが好ましい。
しかしながら、圧縮自着火拡散燃焼モードでの運転は、燃焼温度自体が低い。これが為、本実施例1においては、蒸発性を高めることによって燃料が気化し易くなるので、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を高くして燃焼温度の高温化を図る。また、燃焼室CC内の空燃比については、希薄化に伴って燃焼温度が低くなるので、希薄空燃比よりも理論空燃比、理論空燃比よりも過濃空燃比にすることが燃焼温度の高温化を図る上で好ましい。そこで、本実施例1においては、不完全燃焼によりPMやスモークを発生させる過濃空燃比での圧縮自着火拡散燃焼モード運転を避け、理論空燃比で運転して燃焼温度の高温化を図る。
従って、本実施例1の触媒暖機運転モードとは、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を高くし、その燃料と空気の空燃比を理論空燃比にして圧縮自着火拡散燃焼(以下、「ストイキ圧縮自着火拡散燃焼」という。)させる運転モードのことを指している。
本実施例1においては、NOx触媒に対しての昇温要求があったときに、燃焼室CC内に導かれる燃料が高蒸発性の燃料となるような燃料混合比率に設定し、これを満たすべく燃料混合手段53等が駆動制御されるよう電子制御装置1の燃料混合制御手段を構成しておく。ここでは、燃焼室CC内に導かれる燃料中においての高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合が低蒸発性燃料(第1燃料F1)の含有割合よりも多くなるように燃料混合比率を設定して、その燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を高くする。更に、本実施例1においては、NOx触媒に対しての昇温要求があったときに、ストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードが選択されるよう電子制御装置1の燃料混合制御手段を構成しておく。
また、上述したNOx触媒に対しての温度低下要求があるときとは、NOx触媒が過熱に伴って触媒破損限界温度TcHを超えているときを指す。その触媒破損限界温度TcHとは、例えば、NOx触媒が破損を来さない上限温度のことである。この温度低下要求についても排気触媒装置72の触媒床温Tcを利用して判別することができ、例えば、本実施例1の電子制御装置1は、床温センサ73から検出した触媒床温Tcと触媒破損限界温度TcHとを比較し、その触媒床温Tcが触媒破損限界温度TcHよりも高温であれば「NOx触媒に対しての温度低下要求あり」と判断する。
その判断が為された際に選択される触媒冷機運転モードとは、燃焼温度の低温化を図って相対的に低温寄りの排気ガスを排出させることが可能な運転モードのことをいう。
ここで、燃焼温度の低温化を図る為には、燃焼温度の低い圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させることが好ましい。また、ここでは、触媒暖機運転モードの場合とは逆の観点に立って、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を低くし、且つ、希薄空燃比にして燃焼温度の低温化を図る。
従って、本実施例1の触媒冷機運転モードは、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を低くし、その燃料と空気の空燃比を希薄空燃比にして圧縮自着火拡散燃焼(以下、「リーン圧縮自着火拡散燃焼」という。)させる運転モードのことを指しており、これによって燃焼温度の低温化が可能になるので、相対的に低温寄りの排気ガスが排出されて、排気触媒装置72の触媒担体の温度を低下させる。ここでは、燃焼室CC内における低蒸発性燃料(第1燃料F1)の含有割合を高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合よりも増加させて、その燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を低くする。
一方、本実施例1の電子制御装置1には、NOx触媒に対しての昇温要求も温度低下要求も無いとき(換言すれば、NOx触媒の触媒温度が活性温度領域内にあるとき)に、本実施例1の多種燃料内燃機関に設定されている通常運転モードで運転させる。例えば、この通常運転モードとは、上述した運転条件に応じて図2に示す燃焼モードマップデータから選択された燃焼モードでの運転のことを指す。
以下に、本実施例1の多種燃料内燃機関の動作の一例を図3のフローチャートに基づき説明する。
先ず、本実施例1の電子制御装置1には、床温センサ73の検出信号が送られて排気触媒装置72の触媒床温Tcが入力される(ステップST1)。そして、この電子制御装置1は、その触媒床温Tcと活性温度領域の下限温度TcLとを比較する(ステップST2)。
ここで、触媒床温Tcが下限温度TcL以上の場合、電子制御装置1は、床温センサ73から検出した触媒床温Tcと触媒破損限界温度TcHとを比較し(ステップST3)、その触媒床温Tcが触媒破損限界温度TcH以下であれば、「NOx触媒は活性温度領域内にあり」と判断し、通常運転モードを選択して適宜運転させる(ステップST4)。
一方、触媒床温Tcが下限温度TcLよりも低温であれば、電子制御装置1は、「NOx触媒に対しての昇温要求あり」と判断して触媒暖機運転モードを選択し、燃焼室CC内における高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合を低蒸発性燃料(第1燃料F1)の含有割合よりも多くして、その燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を高める(ステップST5)。
本実施例1においては、第1フィードポンプ52A,第2フィードポンプ52B及び燃料混合手段53を駆動制御して、そのような第1燃料F1と第2燃料F2の燃料混合比率を満たす混合燃料を生成する。その燃料混合比率は、予め設定されている固有の値であってもよく、また、触媒床温Tcと下限温度TcLの差に応じて設定される変動値であってもよい。例えば、前者の場合には、エミッション性能を悪化させずに最も燃焼温度を高くすることが可能な燃料混合比率を予め実験やシミュレーションによって求めておけばよい。また、後者の場合には、触媒床温Tcと下限温度TcLの差が大きいほど燃焼温度が高くなるように、高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合を多くしていけばよい。
そして、この電子制御装置1は、その燃焼モード設定手段によって触媒暖機を行う際のストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードを選択し(ステップST6)、蒸発性の高い燃料を用いてストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させる。
これにより、本実施例1の多種燃料内燃機関においては、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性が高まって気化し易くなるので、燃焼室CC内の燃焼温度が上昇させられる。これが為、この多種燃料内燃機関においては、用意されている各種燃焼モードの内で相対的に高温寄りの排気ガスが排出されるので、排気触媒装置72のNOx触媒を素早く昇温させることができる。また、ここでは、その際に燃焼室CC内に導かれる燃料中の高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合を多くして圧縮自着火拡散燃焼させているので、その燃料と圧縮空気の混合状態が均一になり、更に、拡散燃焼期間と後燃え期間での燃焼室CC内の温度と圧力の低下が防がれるので、不完全燃焼が抑制されてPMやスモークの排出量を軽減することができる。また、ここでは、その際にストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードで運転しているので、HCやCOだけでなく、NOxの発生をも抑えることができる。このように、この多種燃料内燃機関は、PMやスモーク、更にはNOx等の排気ガス中の有害成分の発生を抑えつつも排気ガスの高温化が可能なので、良好なエミッション性能を確保しながら排気触媒装置72のNOx触媒を早期活性化させることができる。従って、この多種燃料内燃機関においては、エミッション性能の悪化を抑制しつつ、例えば、機関冷間時における排気ガス中のNOxの浄化性能を早い段階から発揮させることができる。
また、上記ステップST3において触媒床温Tcが触媒破損限界温度TcHよりも高温であれば、電子制御装置1は、「NOx触媒に対しての温度低下要求あり」と判断して触媒冷機運転モードを選択し、燃焼室CC内における低蒸発性燃料(第1燃料F1)の含有割合を高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合よりも多くして、その燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を低下させる(ステップST7)。
その際の第1燃料F1と第2燃料F2の燃料混合比率は、予め設定されている固有の値であってもよく、また、触媒床温Tcと触媒破損限界温度TcHの差に応じて設定される変動値であってもよい。例えば、前者の場合には、エミッション性能を悪化させずに最も燃焼温度を低くすることが可能な燃料混合比率を予め実験やシミュレーションによって求めておけばよい。また、後者の場合には、触媒床温Tcと触媒破損限界温度TcHの差が大きいほど燃焼温度が低くなるように、低蒸発性燃料(第1燃料F1)の含有割合を多くしていけばよい。
そして、この電子制御装置1は、その燃焼モード設定手段によって触媒冷機を行う際のリーン圧縮自着火拡散燃焼モードを選択し(ステップST8)、蒸発性の低い燃料を用いてリーン圧縮自着火拡散燃焼モードで運転させる。
これにより、本実施例1の多種燃料内燃機関においては、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性が低下して、燃焼室CC内の燃焼温度を低下させる。これが為、この多種燃料内燃機関においては、用意されている各種燃焼モードの内で相対的に低温寄りの排気ガスが排出されるので、排気触媒装置72のNOx触媒や触媒担体を素早く冷却させ、これらの過熱を回避することができる。また、ここでは、その際に燃焼室CC内に導かれる燃料中の低蒸発性(高着火性)の第1燃料F1の含有割合を多くしてリーン圧縮自着火拡散燃焼させているので、不完全燃焼が抑制されてPMやスモーク、更にはHCやCOの発生を抑えることができる。このように、この多種燃料内燃機関は、PMやスモーク等の発生を抑えつつも排気ガスの低温化が可能なので、良好なエミッション性能を確保しながら排気触媒装置72におけるNOx触媒や触媒担体の温度を早期に低下させることができる。従って、この多種燃料内燃機関においては、エミッション性能の悪化を抑制しつつ、排気触媒装置72の破損防止に伴い耐久性が向上する。尚、そのリーン圧縮自着火拡散燃焼時にはNOxを発生させる虞があるが、このNOxについては、活性状態にある排気触媒装置72のNOx触媒によって浄化されるので、大気への放出は回避される。
以上示したように、本実施例1の多種燃料内燃機関によれば、排気触媒装置72のNOx触媒が不活性状態又は破損の懸念される状態にあるときには、良好なエミッション性能を確保しながら触媒温度を素早く活性温度領域内に導くことができ、更には、そのNOx触媒の触媒温度を活性温度領域内に保つことができる。従って、この多種燃料内燃機関においては、排気触媒装置72の浄化性能と耐久性の双方を向上させることができる。
次に、本発明に係る多種燃料内燃機関の実施例4を図6から図8に基づいて説明する。
本実施例4の多種燃料内燃機関は、図6に示す如く前述した実施例1の多種燃料内燃機関において点火プラグ81を取り除いたものであり、これに伴ってストイキ圧縮自着火拡散燃焼モード又はリーン圧縮自着火拡散燃焼モードでのみ運転させるように構成したものである。
従って、この本実施例4の多種燃料内燃機関においては、燃焼室CC内の燃料に対しての着火性を高めなければ圧縮自着火拡散燃焼モードでの運転を実現し難くなるので、着火性の良好な第1燃料F1を多用しなければならなくなる。このようなことから、この多種燃料内燃機関においては、その第1燃料F1のみが消費し尽くされてしまう可能性が高く、蒸発性の高い第2燃料F2が大量に残存しているにも拘わらず当該第2燃料F2のみでは圧縮空気中で自己着火できないので、それ以降運転できなくなってしまう。これが為、この多種燃料内燃機関においては、第1燃料F1が無くなる前に補給しに行かなければならず、利用者にとっては煩わしいものとなってしまう。
そこで、本実施例4は、かかる図6に示す多種燃料内燃機関において第1燃料F1と第2燃料F2を均等に消費させるよう構成する。
先ず、本実施例4の多種燃料内燃機関においては、第1燃料タンク41Aにおける低蒸発性燃料(第1燃料F1)の残存量と第2燃料タンク41Bにおける高蒸発性燃料(第2燃料F2)の残存量Fを電子制御装置1に把握させるべく、その第1及び第2の燃料タンク41A,41Bに夫々の燃料残存量を検出させる残量計等の燃料残存量検出手段42A,42Bを配設する。
また、本実施例4の多種燃料内燃機関においても触媒暖機運転モードと触媒冷機運転モードが用意されており、これらのモードにおいては、前述した実施例1の多種燃料内燃機関と同様の制御が電子制御装置1によって実行される。
一方、本実施例4の通常運転モードにおいては、運転条件(機関回転数Ne及び機関負荷Kl)をパラメータにした図7に示す如き燃焼モードマップデータを利用して、運転条件に応じた最適な燃焼モードを電子制御装置1の燃焼モード設定手段に選択させる。例えば、この燃焼モードマップデータには、高負荷域にて選択されるストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードの運転領域(以下、「ストイキ圧縮自着火拡散燃焼領域」という。)と、低負荷域にて選択されるリーン圧縮自着火拡散燃焼モードの運転領域(以下、「リーン圧縮自着火拡散燃焼領域」という。)と、が示されており、これらについては予め実験やシミュレーションに基づき設定されている。
ここで、通常運転モード時にストイキ圧縮自着火拡散燃焼領域が選択された場合には、燃焼室CC内に導かれる燃料の蒸発性を高めることによって、触媒暖機させる際のストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードと同様に良好なエミッション性能を得ることができる。これが為、本実施例4においては、かかる場合に触媒暖機時のストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードを選択させる。
また、通常運転モード時にリーン圧縮自着火拡散燃焼領域が選択された場合には、第2燃料タンク41B内の高蒸発性燃料(第2燃料F2)の残存量Fに応じて、その高蒸発性燃料の燃焼室CC内における含有割合を設定する。本実施例4においては、その高蒸発性燃料の残存量Fが少なければ高蒸発性燃料の含有割合を少なくし、その残存量Fが多ければ高蒸発性燃料の含有割合を多くする。
以下に、本実施例4の多種燃料内燃機関の動作の一例を図8のフローチャートに基づき説明する。
先ず、本実施例4の電子制御装置1には、床温センサ73や燃料残存量検出手段42Bの検出信号が送られて、排気触媒装置72の触媒床温Tcや第2燃料タンク41Bにおける高蒸発性燃料(第2燃料F2)の残存量Fが入力される(ステップST11)。そして、この電子制御装置1は、その触媒床温Tcと活性温度領域の下限温度TcLとを比較する(ステップST12)。
ここで、この電子制御装置1は、その触媒床温Tcが下限温度TcLよりも低温であれば、前述した実施例1のステップST5,ST6と同様に、燃焼室CC内における高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合を低蒸発性燃料(第1燃料F1)の含有割合よりも多くし(ステップST13)、触媒暖機時のストイキ圧縮自着火拡散燃焼モードを選択して(ステップST14)、蒸発性の高い燃料を用いたストイキ圧縮自着火拡散燃焼モード運転を実行させる。これにより、本実施例4の多種燃料内燃機関においても、実施例1と同様に、良好なエミッション性能を確保しながら排気触媒装置72のNOx触媒を早期活性化させることができる。
また、上記ステップST12にて触媒床温Tcが下限温度TcL以上と判断された場合、電子制御装置1は、床温センサ73から検出した触媒床温Tcと触媒破損限界温度TcHとを比較する(ステップST15)。
そして、その触媒床温Tcが触媒破損限界温度TcHよりも高温であれば、この電子制御装置1は、前述した実施例1のステップST7,ST8と同様に、燃焼室CC内における低蒸発性燃料(第1燃料F1)の含有割合を高蒸発性燃料(第2燃料F2)の含有割合よりも多くし(ステップST16)、触媒冷機時のリーン圧縮自着火拡散燃焼モードを選択して(ステップST17)、蒸発性の低い燃料を用いたリーン圧縮自着火拡散燃焼モード運転を実行させる。これにより、本実施例4の多種燃料内燃機関においても、実施例1と同様に、良好なエミッション性能が確保されつつ、排気触媒装置72におけるNOx触媒や触媒担体の温度が早期に低下されてこれらの耐久性が向上する。
続いて、本実施例4の電子制御装置1は、上記ステップST15にて触媒床温Tcが触媒破損限界温度TcH以下と判断された場合、「NOx触媒は活性温度領域内にあり」と判断して通常運転モードを選択する。
本実施例4においては、先ず、その電子制御装置1が図7に示す燃焼モードマップデータを参照して、現在の運転条件(機関回転数Ne及び機関負荷Kl)に該当する運転領域がストイキ圧縮自着火拡散燃焼領域であるのか否かを判定する(ステップST18)。
そして、この電子制御装置1は、燃焼モード設定手段によってストイキ圧縮自着火拡散燃焼領域が選択されていれば、上記ステップST13,ST14に進んで蒸発性の高い燃料を用いたストイキ圧縮自着火拡散燃焼モード運転を実行させ、リーン圧縮自着火拡散燃焼領域が選択されていれば、高蒸発性燃料(第2燃料F2)の残存量Fと所定の閾値F0とを比較する(ステップST19)。
その閾値F0は、予め設定されている固有の値であってもよく、また、第1燃料タンク41Aにおける低蒸発性燃料(第1燃料F1)の残存量に応じて設定される変動値であってもよい。例えば、運転条件の変化に伴って排気触媒装置72におけるNOx触媒の触媒温度が過熱させられてしまったときを考えると、触媒冷機運転モードへと所定時間移行して運転できるだけの高蒸発性燃料(第2燃料F2)を残しておく必要がある。これが為、前者の場合には、少なくともその最低限の燃料量を閾値F0として設定しておくことが望ましい。また、後者の場合には、例えば、常に第1燃料F1と第2燃料F2の残存量の均衡を図るべく、低蒸発性燃料(第1燃料F1)の残存量を閾値F0として設定してもよい。
この電子制御装置1は、上記ステップST19にて高蒸発性燃料(第2燃料F2)の残存量Fが閾値F0よりも少なければ、燃焼室CC内における高蒸発性燃料の含有割合を少なくし(ステップST20)、その残存量Fが閾値F0以上残っていれば、燃焼室CC内における高蒸発性燃料の含有割合を多くする(ステップST21)。
そして、この電子制御装置1は、その燃焼モード設定手段によってリーン圧縮自着火拡散燃焼モードを選択し(ステップST22)、そのリーン圧縮自着火拡散燃焼モードでの運転を実行させる。
このように、本実施例4の多種燃料内燃機関によれば、前述した実施例1の多種燃料内燃機関と同様に排気触媒装置72の浄化性能と耐久性の双方を向上させることができるだけでなく、第1燃料F1又は第2燃料F2の偏った消費を回避することができる。特に、閾値F0を上述した後者の条件に設定することによって、この本実施例4の多種燃料内燃機関においては、第1燃料F1と第2燃料F2の均等な消費が可能になる。従って、一方の燃料が大量に残っているにも拘わらず他方の燃料の為に補給しに行かなければならない、という煩わしさを解消することができる。
ところで、上述した各実施例1〜4においては、NOx触媒に対しての昇温要求や温度低下要求の有無について判断する際に排気触媒装置72の触媒床温Tcを利用しているが、例えば、排気触媒装置72に床温センサ73が配設されていない場合には、図1や図4〜図6に示す水温センサ17から検出した多種燃料内燃機関の冷却水温度を利用してもよい。かかる場合、活性温度領域の下限温度TcL及び触媒破損限界温度TcHに対応する多種燃料内燃機関の冷却水温度を夫々の判断時の閾値として用意しておく。
更に、上述した各実施例1〜4においては触媒床温Tcが活性温度領域の下限温度TcLよりも低温のときに「NOx触媒に対しての昇温要求あり」と判断させているが、その触媒床温Tcとの比較対象たる閾値については、その下限温度TcL以外の別の値を使用してもよい。例えば、触媒床温Tcが下限温度TcLよりも僅かにしか高くないときには、運転条件の変化によって排気ガスの温度が少し下がっただけで、触媒床温Tcが低下してNOx触媒を不活性状態にしてしまう可能性がある。これが為、その閾値として活性温度領域の下限温度TcLよりも高めの温度を設定することが好ましく、これによって、NOx触媒は、より確実に活性状態が保たれ、NOxの浄化性能を様々な運転条件において発揮することができるようになる。
また、上述した各実施例1〜4においては触媒床温Tcが触媒破損限界温度TcHよりも高温のときに「NOx触媒に対しての温度低下要求あり」と判断させているが、その触媒床温Tcとの比較対象たる閾値については、その触媒破損限界温度TcH以外の別の値を使用してもよい。例えば、触媒床温Tcが触媒破損限界温度TcHよりも僅かにしか低くないときには、運転条件の変化によって排気ガスの温度が少し上がっただけで、触媒床温Tcが上昇してNOx触媒や触媒担体を破損させてしまう可能性がある。これが為、その閾値として触媒破損限界温度TcHよりも低めの温度を設定することが好ましく、これによって、NOx触媒は、急激な運転条件の変化が起きても破損に至るまでの過熱を回避することができるようになる。
ここで、近年においては、PMやスモークの大気への放出を抑えることが可能なDPF(Diesel Particulate Filter)というPM捕集装置が存在している。これが為、上述した各実施例1〜4において排気触媒装置72のNOx触媒としてNSRが適用された場合には、そのPM捕集装置を車載してもよく、これにより僅かながらでも発生してしまったPMやスモークの大気への放出を抑制することができる。例えば、この場合のPM捕集装置は、排気触媒装置72の内部に包含させたPM捕集装置付きの排気触媒装置72として用意すればよい。