JP4826215B2 - 可撓性ブイ - Google Patents

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Description

本発明は、海中での係留索の保持や係留索の自重を軽減するためなどに用いられる可撓性ブイに関し、さらに詳しくは、衝撃緩和性能に優れ、高い安全性を有するとともに、安定した余剰浮力を得ることができる可撓性ブイに関するものである。
海上に設置される石油掘削リグ等の海上構造物を、一端部を海底に固定した複数の係留索によって、海上の所定の位置に係留する方法は、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。代表的な係留方法を図5(a)、図5(b)で示す。石油掘削リグ12は、中途に剛性ブイ11を介した係留索8、即ち、剛性ブイ11で接続された上部係留索8aと下部係留索8bとからなる係留索8によって、海上に係留される。係留索8は、一端部を海底に固定したアンカー10に接続し、他端部を石油掘削リグ12に接続して剛性ブイ11の浮力によって所定形状で海中に保持される。
この石油掘削リグ12を点検や改修、移動等する際には、剛性ブイ11と上部係留索8aとが切り離されるが、この際に下部係留索8bは、海上に浮上する剛性ブイ11によって、海底に沈むことなく海中に保持される。したがって、上部係留索8aと下部係留索8bとを再度、接続して係留する際には、作業が容易になる。
また、水深が大きくなると係留索8が長くなり、これに伴い係留索8の自重が大きくなるため、係留索8の自重による張力を軽減するためにも、このような剛性ブイ11が用いられていた。
ところが、剛性ブイ11は海中での外水圧に耐える必要があるために、剛性の高い金属や樹脂等から形成されている。したがって、剛性ブイ11が何らかの原因で所定の水深よりも深く沈んだ場合に、外水圧によって塑性変形してその内容積が減少する。内容積の減少により、益々余剰浮力が減少し、さらに深く沈んで最終的に破損して使用不可能になるという問題があった。
剛性ブイ11は、石油掘削リグ12の移動とともに、作業船上に引き揚げて移動させ、移動先で海中に投入される。この際に剛性ブイ11が作業船等に衝突して、剛性ブイ11自体や作業船等が損傷するという問題があった。
樹脂発泡体を浮力部材として、その外側をゴム等で被覆するブイも提案されているが(例えば、特許文献2、3参照)、ゴム等の被覆によって内部に空気が密封されている構造ではないので、衝突の衝撃を吸収するのは主に樹脂発泡体であり、その衝撃を十分緩和することが困難であるという問題があった。
特開平11−268684号公報 特開昭61−129392号公報 特開昭61−291289号公報
本発明の目的は、衝撃緩和性能の優れ、高い安全性を有するとともに、安定した余剰浮力を得ることができる可撓性ブイを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明の可撓性ブイは、開閉可能な口金部を有し、弾性材から形成される内部に気体を密封可能な可撓性外殻体と、該可撓性外殻体の内部に遊動可能に収容された見掛け比重0.8以下の容積保持体とを備え、前記可撓性外殻体の内部に気体を密封した状態での内容積に対する前記容積保持体の全容積比率が40%以上95%以下であり、可撓性外殻体の内部に気体を密封して使用することを特徴とするものである。
本発明の可撓性ブイによれば、開閉可能な口金部を有し、弾性材から形成される内部に気体を密封可能な可撓性外殻体の内部に見掛け比重0.8以下の容積保持体を遊動可能に収容することで、内部に密封された気体および可撓性外殻体の弾性により外力に対して優れた衝撃緩和性能を発揮する。これにより、係留索から切り離された可撓性ブイが海上に浮上して船舶と衝突すること等があっても、衝突の衝撃を緩和して船舶や可撓性ブイの損傷を最小限に抑えることができ、安全性の高いものとなる。容積保持体は、可撓性外殻体の内部を遊動するので、衝突時に可撓性外殻体の変形を規制することがなく、可撓性ブイの優れた衝撃緩和性能が損なわれることがない。
また、可撓性外殻体の内部に見掛け比重0.8以下の軽量の容積保持体を遊動可能に収容することで、何らかの原因で可撓性ブイが所定水深よりも沈み、より大きな外水圧が作用した場合には、容積保持体が可撓性外殻体の変形を内部から支え、可撓性外殻体の内容積の減少を抑えることができる。したがって、このような不慮の事態にも、可撓性ブイの余剰浮力の大幅な減少を防止でき、安定した余剰浮力を確保することができる。
以下、本発明の可撓性ブイを図に示した実施形態に基づいて説明する。図1に示すように可撓性ブイ1は、円筒状の可撓性外殻体2の内部に多数の球状の容積保持体7を収容している。
可撓性外殻体2の上下端部に設けた口金部4は、図示しない気密性を有する密閉蓋により開閉可能であり、それぞれの口金部4には上方接続部6a、下方接続部6bが設置され、上部係留索8a、下部係留索8bが接続されている。下端部の口金部4には、気体注入口5が備わっている。口金部4は、可撓性外殻体2の気体洩れの危険性を低減するために下端部のみに設けるようにしてもよい。可撓性外殻体2は、チェーンとチェーンを被覆するゴムスリーブ等からなるネットで被覆され、係留索8との連結はネットにより行なわれてもよい。
可撓性外殻体2は、内層ゴムと外層ゴムとの間に有機繊維や金属ワイヤ等からなる補強層3を積層して構成されている。
容積保持体7は、樹脂製の球状の中空体であり、その見掛け比重は0.8以下となっている。これにより、可撓性外殻体2に収容される容積保持体7の量が多くても、重量増加を抑えることができる。
樹脂としては、硬質ポリエチレン、硬質ポリプロピレン、シンタクティクフォーム等を用いることが好ましく、容積保持体7が容易に変形しない強度を有する材質を用いる。容積保持体7には、必要な耐圧強度を有し、見掛け比重を0.8以下にできれば、他の材質を使用してもよい。同様の理由により、中実体を使用してもよく、シンタクティクフォームを用いることが好ましい。
容積保持体7の形状は、実施形態に示した球状の中空体に限定されることはなく、例えば、図3に例示する構造にすることができる。図3(a)に例示する容積保持体7は、1つの貫通孔7aを有する球状の中空体である。この球状の中空体は、ブロー成形によって製造できるので、多数の容積保持体7を安価に、早く製造することができる。図3(b)に例示する容積保持体7は、貫通孔7aを複数有しており、見掛け比重をより小さくすることができ、射出成形等で製造される。
尚、本発明において容積保持体7の見掛け比重とは、容積保持体7の重量をその容積保持体7の外郭形状で画される体積と同じ容積の水の重量で除した比で表わされるものをいう。即ち、図1に示した球状の中空体の容積保持体7と図3に示した容積保持体7とは、貫通孔7aの有無だけが相違点であれば、外郭形状で画される体積は同じとなり、貫通孔7aの部分の重量の差が見掛け比重の差となる。
容積保持体7には、可撓性外殻体2の内部を傷つけるような尖った部分がなければ、例示した以外の形状を採用することができる。例えば、長尺の円筒ホース状などにしてもよい。
容積保持体7の樹脂厚さは、容積保持体7が容易に変形しないように、球径、材質、形状、可撓性ブイ1の使用条件等によって決定されるが、例えば、上記のような硬質樹脂を使用した球状の中空体の場合、外径0.1m程度であれば6mm〜12mm程度にして、見掛け比重は0.4〜0.7程度になる。
可撓性ブイ1の上端部の口金部4を開口し、所定量の容積保持体7を予め投入し、口金部4を閉口して容積保持体7を収容しておく。大きさや形状の異なる容積保持体7を混合して収容してもよい。その後、下端部の口金部4の空気注入口5から可撓性外殻体2の内部に空気等の気体を注入、密封して所定の内部圧力にする。
例えば、可撓性外殻体2が内径2.5m、長さ5.5m、内容積25mの円筒状の場合、外径0.1mの中空球体を3万個程度収容する。水深20mに可撓性ブイ1を位置させる場合には、水深20mの外水圧200kPaと同等もしくはそれ以上の内部圧力にして必要な余剰浮力を確保する。
次いで、海中に可撓性ブイ1を投入して、上方接続部6a、下方接続部6bにそれぞれ上部係留索8a、下部係留索8bを接続する。係留している際に、何らかの原因で、可撓性ブイ1が所定の水深よりも深く沈んだ場合は図2に示すように、外水圧Fによって圧縮される。この際に容積保持体7が可撓性外殻体2の変形を内部から支え、可撓性外殻体2の内容積の減少が抑制される。
可撓性外殻体2が圧縮されても、容積保持体7が変形しない限り、可撓性外殻体2の内容積は容積保持体7の容積よりも減少することがなく、最小限の余剰浮力を確保でき、更に深く沈むことがない。また、容積保持体7の見掛け比重が0.8以下となっているので、容積保持体7による増加重量によって損なわれる余剰浮力も少なくて済む。
本発明の可撓性ブイ1では、このような不慮の事態にあっても安定した余剰浮力を確保することができる。所定の水深に戻ると、再度、可撓性外殻体2の形状が復元するので、従来の剛性ブイ11のように破損して使用不可能となることはない。
また、可撓性ブイ1を上部係留索8aと切り離して移動させる際に、可撓性ブイ1が急激に海上に浮上し、船舶等と衝突することがあっても、内部に密封した気体および可撓性外殻体2の弾性によって衝突の衝撃が大幅に緩和されるので、船舶等および可撓性ブイ1の破損を最小限にすることができ、高い安全性を有している。
可撓性外殻体2の内部に収容した容積保持体7は、衝突時に可撓性外殻体2の変形とともに、内部を自由に移動するので可撓性外殻体2の変形が規制されることはない。したがって、可撓性ブイ1の優れた衝撃緩和性能は損なわれず、高い安全性を保つことができる。
また、容積保持体7の見掛け比重が小さいので、可撓性ブイ1の重量増加が抑えられ、発生する衝撃力も小さくなり、移動させる等の取扱いも容易となる。
可撓性外殻体2に収容する容積保持体7の量は、内部に気体を密封した中立状態での可撓性外殻体2の内容積に対する全容積比率が40%以上95%以下にする。容積保持体7の全容積比率が40%未満であると、不慮の際に外水圧によって可撓性外殻体2の内容積が小さくなりすぎて、十分な余剰浮力を確保することが困難になる。一方、全容積比率が95%を超えると、容積保持体7が遊動しにくくなり、衝突時に容積保持体7が可撓性外殻体2の変形を規制して、衝撃緩和性能が損なわれ易くなる。
図4に第2実施形態を示す。この可撓性ブイ1は、第1実施形態の可撓性ブイ1の可撓性外殻体2に内袋9を内装したものである。内袋9は、メッシュ状で通気性を有し、その網目の大きさは容積保持体7よりも小さく、内部に容積保持体7が収容されている。
容積保持体7は、内袋9に収容されているので、可撓性外殻体2が破損した場合にも、海中に散乱することがない。また、内袋9は通気性を有しているので、容積保持体7の遊動を妨げることがない。
本発明の可撓性ブイ1は、単独で係留索8に接続して使用するだけでなく、複数を連結索で連結して用いることもできる。
図1に例示した同構造の可撓性ブイを製造して、可撓性外殻体の内部に容積保持体を収容した場合(実施例)と、収容しない場合(比較例)について、初期内圧を200kPaとして、設置水深を所定水深の20mと所定以上に沈下させた200mの2段階に変えて体積保持率を測定し、容積保持体の有無のみで生じる違いを確認した。それぞれの深さに沈下させた時の可撓性ブイの体積(内容積)を測定し、水深20mでの体積保持率を100%とした。その結果を表1に示す。表1の保持体容積比率とは、可撓性外殻体に空気を密封した中立状態における内容積に対する収容する容積保持体の全容積の割合である。
可撓性外殻体は、上下両端部が内径約0.4m、長さ約1.5mの円筒状で内容積が約0.2m、可撓性ブイの総重量は37kgfとした。容積保持体は、硬質ポリプロピレン製の球状の中空体とし外径約0.1m、樹脂厚さ8mm、見掛け比重は0.47とした。
Figure 0004826215
この結果から、所定水深よりも沈んだ場合であっても内部に収容した容積保持体によって、外水圧による可撓性外殻体の変形を支えて可撓性外殻体の内容積の減少を抑制し、余剰浮力を確保できることが確認できた。また、保持体容積比率に応じた余剰浮力が得られることが推定できる。
本発明の可撓性ブイの第1実施形態を例示する内部透視側面図である。 図1の可撓性ブイが外水圧により変形している状態を例示する内部透視側面図である。 図3(a)は容積保持体の一例を示す断面図、図3(b)は別の容積保持体を示す一部切欠き断面図である。 本発明の可撓性ブイの第2実施形態を例示する内部透視側面図である。 ブイの使用状態を示し、図5(a)は平面図、図5(b)は正面図である。
符号の説明
1 可撓性ブイ
2 可撓性外殻体
3 補強層
4 口金部
5 空気注入口
6a 上方接続部
6b 下方接続部
7 容積保持体
8 係留索
8a 上部係留索
8b 下部係留索
9 内袋
10 アンカー
11 剛性ブイ
12 石油掘削リグ

Claims (4)

  1. 開閉可能な口金部を有し、弾性材から形成される内部に気体を密封可能な可撓性外殻体と、該可撓性外殻体の内部に遊動可能に収容された見掛け比重0.8以下の容積保持体とを備え、前記可撓性外殻体の内部に気体を密封した状態での内容積に対する前記容積保持体の全容積比率が40%以上95%以下であり、可撓性外殻体の内部に気体を密封して使用する可撓性ブイ。
  2. 前記容積保持体が樹脂からなる球状の中空体であり、該容積保持体が前記可撓性外殻体の内部に多数収容されている請求項1に記載の可撓性ブイ。
  3. 前記可撓性外殻体に通気性を有する内袋を内装し、該内袋に前記容積保持体を収容した請求項2に記載の可撓性ブイ。
  4. 前記球状の中空体が複数の貫通孔を有する請求項2または3に記載の可撓性ブイ。
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