JP4824306B2 - 噴霧ノズルおよびこれを用いた噴霧消火ヘッド - Google Patents

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本発明は噴霧ノズルおよびこれを用いた噴霧消火ヘッドに関し、噴霧された円錐状のミスト噴流の内部全体にミストを形成させる噴霧ノズル、およびこれを用いた油火災などの消火に適した噴霧消火ヘッドに関する。
従来、消火用等に用いられる噴霧ノズルは高圧の水や消火液を多数の小孔から噴出させたり、噴射孔の形状を工夫したりしたものが多かった。そして、噴霧されるミストの粒径や噴霧流の速度、噴霧量等は噴霧流体の流量や噴霧圧力によっても調整していた。例えば、水で油火災を消火するシステムとして、ウォーターミスト消火システムとよばれるシステムが知られている。このウォーターミスト消火システムは非特許文献1に開示されているように高圧の水を1本の配管でヘッドに送り込む高圧一流体ヘッドを用いるか、又は特許文献1で見られるように低圧の水と低圧の空気を別々の配管でヘッドに送り込む低圧二流体ヘッドを用いることで水を微粒化し、消火に用いていた。また、多数の流体噴出口を備えた消火用ノズルとしては特許文献2、特許文献3などが知られている。水中の気泡発生用ノズルとして、ノズル内部に旋回流を生じさせるノズルとしては特許文献4に記載の旋回式微細気泡発生装置も知られている。
特開2004−50128号公報 特開平8−266677号公報 特開2002−17883号公報 特開2000−477号公報 米国特許公報US6,732,808号公報
2流体を利用する噴霧ノズルでは二つの流体の供給設備を設けることが必要であり、また高圧流体による噴霧ノズルでは水圧が高いために耐圧性を考慮し設備を高価なものとすることが必要であった。いずれの場合も設備工事やメンテナンスに関わる工数やユーザーの費用の面で負担となっていた。更に、噴霧状態を良好にするためにノズルヘッドを複雑且つ精密な形状にすると、流体中のゴミや異物による目詰まりや部品の不具合によりトラブルの可能性が増大してしまう。そこで、本発明の噴霧ノズルおよびこれを用いた噴霧消火ヘッドは、流体源が低圧の一流体でも微細なミストを生成することができ、油火災でも好適に消火することができる強力な噴霧流を発生させることができ、単純な構造で故障や詰まりの少ない噴霧ノズルを提供することを目的としている。
(1) 側面に接線方向に向かって流体が流入する第1の流体導入口を備えた円筒の下部に傾斜角15〜80度の縮径部を備え、前記縮径部の最下部中央に直径が1〜50mmの円形の流体出口を備えた渦巻チャンバーを有し、
前記渦巻チャンバー内部の前記流体出口に臨む位置に直径1〜30mmの第2の流体導入口が配置され、
前記流体出口と前記第2の流体導入口の間隔が1〜10mmであり、
前記渦巻チャンバーの流体出口と反対側の円面の中心から中心軸上に前記第2の流体導入口用の導入路が配置され、
前期第2の流体導入口の先端部外側の面取り部分の傾斜角が、前記縮径部の前記面取り部分に臨む部分の傾斜角以上である噴霧ノズルである。
(2) 前記第2の流体導入口の前記流体出口との相対位置を調節可能に配置した(1)に記載の噴霧ノズルである。
(3) (1)または(2)のいずれかに記載の噴霧ノズルを用いた噴霧消火ヘッドである。
本発明の噴霧ノズルは、円錐形の噴霧流の内部にほぼ均一な密度で微細なミストを生成させることができ、油火災等の消火用ノズルとして好適なものである。また、下方へ向けて噴射される円錐形の噴霧流は消火時にミストが火炎を押さえつける力が強く効果的な消火ができる。さらに、高圧流体を用いなくても強力な噴霧流を生成するので供給配管等の消火設備全体の耐圧性を下げることができ、結果的に工事と材料コストの軽減となる。また、油火災に対しても水を使用することができ、薬剤を使わないので環境面や取り扱い上クリーンで安全性の高い消火装置を提供することができる。
また、本発明の噴霧消火ヘッドは家庭におけるてんぷら油火災、工場の工作機の切削油による火災、オイルセラー等の比較的小規模の面積を対象とした固定消火設備用に限らず、地下駐車場等へのより大規模な空間の固定消火設備用、また消防用消火設備や携帯型簡易消火装置等への適用が可能である。
本発明の噴霧ノズル1は、図1に示すように、接線方向に向けて流体が流入する第1の流体導入口4を備えた円筒形の旋回流発生部と、その下に円形部分が次第に縮径していく形状、例えば円錐形の旋回流加速部を配置した独楽形容器を備えている。この独楽形容器の内部を渦巻チャンバー2という。渦巻チャンバー2の円錐形の頂点の部分には流体出口9を備えている。また、渦巻チャンバー2内部の流体出口9に臨む位置には第2の流体導入口7が配置されている。この第2の流体導入口7は、渦巻チャンバー2の上部から中心軸上を通る導入ノズル3により流体を導入するように配置することが望ましい。さらに、第2の流体導入口7は流体出口9との相対位置を調節可能に配置することが好ましい。なお、縮径部は代表的な円錐形で説明するが、縮径部はその他の形状でもよい。例えば、朝顔状や、お碗形あるいは階段状に円筒が小さくなりながらつながっていてもよい。極端な場合として縮径部がなくなり、円筒底面の中央部に流体出口9を備えた構造でもよい。
本発明の噴霧ノズル1は、第1の流体導入口4から流体を導入すると渦巻チャンバー上部の旋回流発生部において旋回流が発生し、旋回流加速部すなわち渦巻チャンバー傾斜部5において更に強力な旋回流となり流体の旋回速度が増す。そして、旋回流は渦巻チャンバー2下端の流体出口9を通過すると圧力が一気に解放され、旋回回転数が減り中空円錐形状の噴霧流6として噴霧される。この旋回回転数の変化する流体出口9付近の旋回切断点に第2の流体導入口7から流体を噴射ことによって、中空円錐形状の噴霧流6の内部に2つ目の旋回噴流が発生する。この際、内部の旋回噴流がミスト化し、中空円錐形状の外側噴霧流6の内側にもミスト噴霧流8が形成される。このミスト噴霧流8は中空円錐形状の外側噴霧流6の内側を満たすように噴霧され、噴霧ノズル1から噴射される噴霧流は全体として充円錐形状のミスト噴霧流を形成する。図2は二つの噴霧流が回転しながらミスト化し噴霧される様子の説明図である。なお、第1の流体導入口4は図1では渦巻チャンバー2上部に一箇所示してあるが、複数個の第1の流体導入口としてもよい。また、導入箇所は、渦巻チャンバー2の円周の接線方向に向かって導入しておれば、渦巻チャンバー2内のどの部分からでも良い。
渦巻チャンバー縮径部5の円錐の場合の傾斜角は、特に制限はないが、通常は水平に対する傾斜角を0〜90度、好ましくは15〜80度、さらに好ましくは30〜70度とすることが望ましい。渦巻チャンバーの大きさ、旋回流の流量、噴霧粒の所望のミスト粒径等とのバランスで傾斜角を決めればよい。図1および図2は渦巻チャンバー傾斜部5の傾斜角を約70度としたものであるが、図3はこれを約30度とした場合の例である。噴霧される円錐噴霧流6の形状、すなわち噴霧流円錐の傾斜角は、この渦巻チャンバー傾斜部5の傾斜角および流体出口9の形状、流体出口付近における第1の流体の旋回速度により調整すればよい。
通常、渦巻チャンバー2の円筒部分の直径が10〜100mm、高さが1〜50mm、好ましくは5〜30mmとすることが望ましい。流体出口9は円形で直径が1〜50mm、好ましくは2〜30mmとし、外側に向かって0〜45度の角度で広がっていることが望ましい。流体出口9の直径および外側への拡がり角度は噴霧される円錐の角度調節に利用できる。なお、噴霧流体の噴霧角度および粒子径は、流体出口部分の肉厚、噴霧流体の噴霧流速、流体粘度、第1の流体と第2との流体の流量比等他の要素との関係にも注意する必要がある。
第2の流体導入口7は流体出口9に臨む位置に配置されるが、渦巻チャンバー2の中心軸上で流体出口9に相対するように配置し、ここから導入する流体が流体出口9の中心の旋回切断点に効率よく噴射されることが望ましい。一方で、流体出口9または導入ノズル3が旋回流を遮るほど渦巻チャンバー傾斜部5に近づくことは好ましくない。旋回切断点はおよそ流体出口9部分であるので、第2の流体導入口7の位置は流体出口9の上部1〜10mmが好ましい。第2の流体導入口7の位置は、渦巻チャンバー傾斜部5の傾斜角、流体出口9の形状、流体出口9の肉厚、旋回流の流量、第2の流体の流量などを勘案して調節することが望ましい。このため、第2の流体導入口7の位置は流体出口9に対して相対的に上下に位置を調整できる構造としておくと便利である。流体導入口7の直径は流体出口9より小さく1〜30mm程度が好ましく、導入ノズル3は5〜60mmとなる場合が多い。さらに、導入ノズル3の先端部分外側は面取りをしておくとよい。その面取り角度は、渦巻チャンバー2の傾斜部5の導入ノズル3の先端部分外側の面取り部分に臨む部分の傾斜角と同じ角度またはそれより尖った角度にしておくと旋回流の邪魔になりにくく都合がよい。導入ノズル3は渦巻チャンバー2にねじ込み式等で着脱可能かつ相対位置調節可能としておくと、噴霧状態の調節や渦巻チャンバー2内の清掃や詰まり除去に都合がよい。
図4は、第1の流体と第2の流体を同じ供給源から供給することを示す本発明の噴霧ノズルの図である。本発明の噴霧ノズルは、第1の流体と第2の流体の相対的な圧力に制限がない。そこで、現実的には両者を同じ供給源から得ることが好都合である場合が多い。第1の流体供給路13と第2の流体供給路14とを同じ流体供給源に接続すればよい。流体の供給圧力も特に制限はない。通常、大気中に噴霧する場合が多いので、0.01〜1.0MPa(ゲージ圧、以下同じ)、好ましくは0.03〜0.5MPa程度の圧力で供給すればよい。また、第1の流体と第2の流体の相対的な流量比も制限はない。第2の流体の流量が0になると噴霧流はほぼ中空円錐状のミスト流となる。図5の22にイメージ図的に断面図として表しているが、噴霧面の外周部、図では両端に流体が噴霧される。第2の流体を導入すると噴霧流円錐の内部にもミスト流ができ、図5の21のように噴霧面の内部全体に流体が噴霧される。噴霧面外周部と内部との流体量の比率は、第1の流体と第2の流体の相対的な流量比により調整できる。
本発明の噴霧ノズルを用いた噴霧消火ヘッドは、充円錐形状の噴霧流を発生させ、火炎に対し効率的に水等の消火剤を噴霧することができる。図8にそのイメージを示す。火炎が油によるものであっても、噴霧流によって円錐形状の噴霧流外部から噴霧流内側に多くの空気が巻き込まれ、下方向へ向かう空気速度が増し、火災の上昇気流による微細な水滴の排除現象を緩和し、多くの微細な水滴を可燃物の表面まで到達させることができる。このように、火災によって発生する上昇気流12に煽られることなく火災の表面にミストが到達し、ミストの蒸発による冷却効果と水蒸気による窒息効果で火災を消火することが可能である。また、ミストの粒子径を調整することにより、燃焼中の燃焼物の付近の高温域で蒸発し吸熱効果および酸素遮断効果を効率的に発揮する。このため、本発明の噴霧消火ヘッドは安全で効率的な油火災消火用設備に使用することができる。通常、消火用噴霧流の水ミストの粒径は0.1〜0.3mm、好ましくは0.15〜0.25mmとするとよい。本発明の消火用噴霧ヘッドでは供給流体圧力、噴霧ノズルの噴霧流量等の設計条件に合わせて好適なミストを噴霧する噴霧消火ヘッドとすることができる。
(実施例1)
図1を本発明の水噴霧消火ヘッドとみなして説明する。図示のように、この水噴霧消火ヘッド1は渦巻チャンバー2と第2の流体導入口用の導入ノズル3を備え、渦巻チャンバー2は旋回流発生用の円筒部と旋回流加速を目的とする円錐形の傾斜部5を持つ。渦巻チャンバー2の円筒部の直径は30mm、高さ10mmで、円錐部の高さ約30mm、傾斜角は水平に対し70度である。流体出口9は6mmの直径の円形である。第1の流体導入口4から圧力0.35MPa(ゲージ圧)、流量15.6L/分で導入した水は、図2に示すように、この渦巻チャンバー2内で回転し、渦巻チャンバー傾斜部5で更にその旋回速度が加速される。そして、渦巻チャンバー2下端の流体出口9から一気に圧力が解放されることで旋回回転数が減り、中空円錐形状の旋回噴霧流6として放出される。これにより、渦巻チャンバー2内部の流体出口9付近に旋回回転数が変化する旋回切換点が発生する。
この旋回切換点に第2の流体導入口3からの噴流を衝突させることによって、中空円錐形状の噴霧流6の下部内部に2つ目の旋回噴霧流8が発生する。第2の流体導入口3は、渦巻チャンバー2内部の旋回流を妨げないように先端ができるだけ肉薄の形状にする。第2の流体導入口3は外径8mm内径3mmであり、流体出口9の上部9mmの位置に流体出口9に向けて設置した。第2の流体も0.35MPaで導入すると5.4L/分相当の水量となる。この第2の流体導入口7からの水の衝突により噴流がミスト化するとともに、充円錐形状のミスト噴霧流を形成する。消火に当たっては、旋回切換点と第二の流体導入口7との距離を9mm、第二の流体導入口7の内径を3mmとすることで、水による冷却効果を発揮させるヘッド直下の流量を増やし、且つ最も消火に適したミスト噴霧流を形成することが可能であった。図5の21に示すようなミスト噴射面の円形部分の全面に充円錐状に噴霧流が形成された。
(実施例2)
図6はX軸5位置、Y軸S5位置の上部に実施例1で示した噴霧ノズルのX軸およびY軸方向の採水升による受水量を表したものである。Z軸方向が受水量である。第1の流体導入口4および第2の流体導入口7からはで水をそれぞれ0.35MPaで導入した。中心部の受水量は周りの受水量のほぼ6〜8割程度となっている。また、全体に均一な入水量を実現できた。
図7は上記噴霧ノズルから第2の流体導入口用の導入ノズル3を取り除いた噴霧ノズルによる上記同様の受水量テスト結果である。導入水は第1の流体導入口4から0.35MPaで導入した。中心部の受水量はほぼ0となり、周りの受水量は方向によりばらついており、図6よりも多い部分もある。
本発明の噴霧ノズルは、化学工業、食品工業等の流体噴霧、スラリーや溶液の噴霧乾燥をはじめ、塗装や農業用、家庭用水噴霧など各種用途の噴霧用ノズルとして使用できるが、消火用ノズルとして特に効果的である。噴霧流内部のミストの大きさ、流速などを調整して油火災にも有効な消火用噴霧ノズルとすることができる。
図1は本発明の噴霧ノズルの構成を表す例の断面図である。 図2は本発明の噴霧ノズルの構成を表す断面図であり、噴霧流のイメージを附記している。 図3は本発明の噴霧ノズルの構成を表す断面図であり、渦巻チャンバーの円錐部分の傾斜角度を変更した形状の例である。 図4は本発明の噴霧ノズルの構成を表す断面図であり、第1の流体と第2の流体とを同じ供給源から供給する例である。 図5は本発明の噴霧ノズルによる噴霧ミストと、渦巻チャンバーのみの噴霧ノズルによる噴霧ミストの円錐状噴霧流の軸に垂直な断面のミスト密度のイメージ図である。 図6は本発明の噴霧ノズルによる噴霧水量分布図である。なお、本図の数字は符号ではなく、グラフ中の座標を表す。 図7は中空円錐噴霧ノズルによる噴霧水量分布図である。なお、本図の数字は符号ではなく、グラフ中の座標を表す。 図8は本発明の噴霧ノズルによる消火状況を示すイメージ図である。
符号の説明
1,本発明の噴霧ノズル
2,渦巻チャンバー
3,第2の流体導入口用の導入ノズル
4,第1の流体導入口
5,渦巻チャンバー傾斜部
6,中空円錐状の旋回噴霧流
7,第2の流体導入口
8,2つ目の旋回噴霧流
9,流体出口
10,渦巻チャンバーのみの噴霧ノズル
11,円錐の外部から巻き込まれる空気
12,火炎によって発生する上昇気流
13,第1の流体供給路
14,第2の流体供給路
21,本発明の噴霧ノズルによる噴霧ミストの作る噴霧断面の噴霧水量のイメージ図
22,渦巻チャンバーのみの噴霧ノズルによる噴霧ミストの作る噴霧断面の噴霧水量のイメージ図

Claims (3)

  1. 側面に接線方向に向かって流体が流入する第1の流体導入口を備えた円筒の下部に傾斜角15〜80度の縮径部を備え、前記縮径部の最下部中央に直径が1〜50mmの円形の流体出口を備えた渦巻チャンバーを有し、
    前記渦巻チャンバー内部の前記流体出口に臨む位置に直径1〜30mmの第2の流体導入口が配置され、
    前記流体出口と前記第2の流体導入口の間隔が1〜10mmであり、
    前記渦巻チャンバーの流体出口と反対側の円面の中心から中心軸上に前記第2の流体導入口用の導入路が配置され、
    前期第2の流体導入口の先端部外側の面取り部分の傾斜角が、前記縮径部の前記面取り部分に臨む部分の傾斜角以上である噴霧ノズル。
  2. 前記第2の流体導入口の前記流体出口との相対位置を調節可能に配置した請求項1に記載の噴霧ノズル。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の噴霧ノズルを用いた噴霧消火ヘッド。
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