JP4823722B2 - 基材処理装置及び基材処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材の表面への透光性膜の成膜、又は基材の表面に成膜された透光性膜の膜処理を行う基材処理装置、及びこの装置を用いた基材処理方法に係り、特に透光性膜の膜物性制御に関するものである。
陽極酸化は、アルミニウム等の基材を陽極として陰極と共に電解液に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで、アルミナ等の金属酸化物膜を成膜する技術である。陽極酸化ではナノオーダーの微細孔が規則配列した膜を成膜できることから、電子デバイスや光学デバイスの出発材料等への陽極酸化の応用が検討されている(特許文献1等)。
従来、陽極酸化における膜厚制御は、電流密度や電解時間等の陽極酸化条件をある条件に設定して陽極酸化を実施し、実際に成膜された金属酸化物膜の膜厚を実測し、この値を陽極酸化条件にフィードバックすることで実施されている。すなわち、実験を繰り返して所望厚の金属酸化物膜を成膜できる陽極酸化条件を導き、この条件で陽極酸化を実施することで膜厚を制御している。また、所望厚の金属酸化物膜が成膜されたか否かは、成膜終了後の膜厚測定により確認している。
陽極酸化により成膜されるアルミナ等の金属酸化物膜は透光性を有する。透光性膜の膜厚測定装置としては、透光性膜の表面で反射される第1反射光と、透光性膜と基材(陽極酸化では非陽極酸化部分)との界面で反射される第2反射光との干渉効果を検出し、ピークバレー法により透光性膜の膜厚を測定する装置が開示されている(特許文献2等)。
特開2002−4087号公報 特開平9−243332号公報
上記従来の膜厚制御では、所望厚の金属酸化物膜を成膜できる陽極酸化条件が導かれるまで実験を繰り返す必要があり、所望厚が変わると新たな実験を行う必要があり、非効率的である。
また、電子デバイスや光学デバイスでは、ナノスケールレベルの寸法精度が求められるようになってきている。しかしながら、所望厚の金属酸化物膜を成膜できる条件を導いても、陽極酸化反応は種々の影響を受けるため、同一条件を完全に再現することは難しく、膜厚をナノスケールレベルで制御することは難しい。
膜厚を高精度に制御するには、成膜中に膜厚をリアルタイム測定し、所望厚になった時点で反応を停止することが好ましい。しかしながら、特許文献2等に記載の従来の膜厚測定装置は、成膜終了後あるいは成膜中に成膜を停止して膜厚を測定することはできるが、膜厚のリアルタイム測定はできない。
また、成膜された金属酸化物膜に対して溶液エッチングを実施することで、微細孔の孔径を大きくすることができる。この場合にも、孔径のリアルタイム測定を実施できることが好ましい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、基材の表面への透光性膜の成膜、又は基材の表面に成膜された透光性膜の膜処理を行うに際して、透光性膜の膜厚又は孔径等の膜物性をリアルタイム測定でき、高精度な膜物性制御が可能な、基材処理装置及び基材処理方法を提供することを目的とするものである。
本発明の基材処理装置は、基材の表面への透光性膜の成膜、又は基材の表面に成膜された透光性膜の膜処理を行う基材処理装置において、
前記成膜中又は前記膜処理中の前記基材に対して、前記透光性膜側から光を照射する光照射手段と、
前記成膜中又は前記膜処理中の前記基材からの前記光の反射光を受光し、該反射光に含まれる、前記透光性膜の表面で反射される第1反射光と、前記透光性膜と前記基材との界面で反射される第2反射光との干渉光を検出し、ピークバレー法により前記成膜中又は前記膜処理中の前記透光性膜の膜物性を測定する膜物性測定手段とを備えたことを特徴とするものである。
本明細書における「透光性膜の成膜」には、基材を化学変化させて基材の一部を透光性膜とする場合(例えば陽極酸化による成膜)と、基材は変化させずに透光性膜を堆積させる場合の双方が含まれるものとする。基材を化学変化させて基材の一部を透光性膜とする場合、「透光性膜と基材との界面で反射される第2反射光」は、透光性膜と透光性膜に変化せずに残っている基材との界面で反射される光のことを意味する。
本発明の基材処理装置において、前記膜物性測定手段により測定される膜物性としては、膜厚又は孔径が挙げられる。
本発明の基材処理装置は、前記膜物性測定手段により測定された膜物性値が所望値に達した時、前記成膜又は前記膜処理を停止する停止手段をさらに備えたものであることが好ましい。
本発明の基材処理装置は、前記基材が被陽極酸化金属体であり、前記透光性膜が陽極酸化により生成される金属酸化物膜である場合などに好ましく適用できる。
本発明の好適な態様としては、前記光照射手段が単波長光を照射するものであり、前記膜物性測定手段が前記干渉光の光強度を検出するものが挙げられる。他の好適な態様としては、前記光照射手段がブロード光を照射するものであり、前記膜物性測定手段が前記反射光を分光して干渉ピーク又は干渉バレーを有する波長を検出し、該波長から前記透光性膜の膜物性を測定するものが挙げられる。
本明細書では、半値幅が中心波長±0.5nmの範囲である波長分布を持つ光を「単波長光」と定義し、それよりも広い波長分布の光を「ブロード光」と定義する。
本発明の基材処理方法は、基材の表面への透光性膜の成膜、又は基材の表面に成膜された透光性膜の膜処理を行う基材処理方法において、
前記成膜中又は前記膜処理中の前記基材に対して、前記透光性膜側から光を照射し、
前記成膜中又は前記膜処理中の前記基材からの前記光の反射光を受光し、
該反射光に含まれる、前記透光性膜の表面で反射される第1反射光と、前記透光性膜と前記基材との界面で反射される第2反射光との干渉光を検出し、
ピークバレー法により前記成膜中又は前記膜処理中の前記透光性膜の膜物性を測定し、
測定された膜物性値が所望値に達した時、前記成膜又は前記膜処理を停止することを特徴とするものである。
本発明の基材処理装置では、成膜中又は膜処理中の基材に対して光を照射する光照射手段と、成膜中又は膜処理中の基材からの反射光を受光し、ピークバレー法により透光性膜の膜物性を測定する膜物性測定手段とを備える構成としている。
かかる構成の基材処理装置及びこれを用いた基材処理方法によれば、成膜中又は膜処理中に透光性膜の膜物性をリアルタイム測定することができ、所望の膜物性の透光性膜が成膜された時点で反応を停止することができる。例えば、透光性膜の膜物性として、膜厚又は孔径をリアルタイム測定することができる。
本発明によれば、事前に所望の膜物性の透光性膜を得る反応条件を導く必要がなく、簡易に透光性膜の膜物性を制御できる。事前に反応条件を導く必要がないので、所望の膜物性が変わっても迅速に対応できる。また、基材処理を実施するごとに透光性膜の膜物性をリアルタイム測定するので、高精度に透光性膜の膜物性を制御でき、ナノスケールレベルの膜物性制御も可能である。所望の膜物性の透光性膜を確実に成膜できるので、基材処理終了後に膜物性を検査する工程も不要となる。
図面を参照して、本発明に係る実施形態の基材処理装置及びこれを用いた基材処理方法について説明する。陽極酸化によりアルミナ膜を成膜する場合を例として説明する。本実施形態の基材処理装置には、アルミナ膜の膜物性をリアルタイム測定し、膜物性を制御する膜物性制御機構が備えられている。
図1(a)は装置の全体構成を示す斜視図(透視図)、図1(b)は光照射手段の構成例を示す図である。図2(a)、(b)は陽極酸化工程を示す斜視図である。図3は膜物性測定の原理を示す概略断面図である。通常、被陽極酸化金属体の非陽極酸化部分に対して生成されるアルミナ膜は薄いが、図2及び図3ではアルミナ膜を大きく図示してある。
図1に示す如く、本実施形態の基材処理装置1は、被陽極酸化金属体(基材)10を陽極とし陰極(対向電極)13と共に電解液31に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加して被陽極酸化金属体10を陽極酸化し、表面にアルミナ膜11(金属酸化物膜、図2(b)参照)を成膜するものである。
被陽極酸化金属体10としては、アルミニウム(Al)を主成分とし不純物を含んでいてもよい金属体が使用される。被陽極酸化金属体10の形状は制限されず、板状等が挙げられる。また、支持体の上に被陽極酸化金属体10が層状に成膜されたものなど、支持体付きの形態で用いることも差し支えない。陰極13としてはカーボンやアルミニウム等が使用され、陰極13の形状も適宜設計できる。本明細書において、「主成分」は純度90%以上と定義する。
基材処理装置1には、被陽極酸化金属体10及び陰極13の少なくとも一部が収容され、成膜が行われる反応容器30が備えられている。反応容器30内には陽極酸化用の電解液31が充填され、被陽極酸化金属体10及び陰極13は各々、少なくとも先端部分が電解液31に浸漬するようホルダ21、22に把持されている。ホルダ21、22は導電性を有し、被陽極酸化金属体10と陰極13との間に電圧を印加する電圧印加電源14に各々接続されている。
電解液31としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。反応容器30は恒温槽(図示略)内に載置され、恒温槽はマグネティックスターラ(図示略)上に載置され、電解液31が攪拌及び調温されるようになっている。電解液31の攪拌及び調温の機構については適宜設計できる。
被陽極酸化金属体10を陽極酸化すると、図2に示す如く、アルミナ形成側の表面10s(図2では上面)から該面に対して略垂直方向に酸化反応が進行し、アルミナ膜11が生成される。陽極酸化により生成されるアルミナ膜11は、多数の平面視略正六角形状の微細柱状体11aが隙間なく配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体11aの略中心部には、表面10sから深さ方向に略ストレートに延びる微細孔11bが開孔され、各微細柱状体11aの底面は丸みを帯びた形状となる。陽極酸化により生成されるアルミナ膜の構造は、益田秀樹、「陽極酸化法によるメソポーラスアルミナの調製と機能材料としての応用」、材料技術Vol.15,No.10、1997年、p.34等に記載されている。
陽極酸化条件は制限されず、アルミナ膜11の用途等に応じて設計される。規則配列構造のアルミナを生成する場合の好適な条件例としては、電解液としてシュウ酸を用いる場合、電解液濃度0.5M、液温14〜16℃、印加電圧40〜40±0.5V等が挙げられる。
以下、アルミナ膜11の膜物性制御機構について説明する。
本実施形態では、基材である被陽極酸化金属体10がアルミニウムを主成分とし透光性を有しないのに対し、生成されるアルミナ膜11は透光性を有することを利用して、ピークバレー法によりアルミナ膜11の膜物性をリアルタイム測定する。
図1に示す如く、本実施形態には、成膜中の被陽極酸化金属体10に対してアルミナ膜11側から光Lを照射する光照射手段50と、成膜中の被陽極酸化金属体10からの光Lの反射光Rを受光し、反射光Rの物理特性を検出してアルミナ膜11の膜物性を測定する膜物性制御手段60とが備えられている。
膜物性測定手段60により測定される膜物性としては特に制限なく、膜厚d等が挙げられる。
光照射手段50及び膜物性制御手段60はいずれも反応容器30の外側に配置され、反応容器30は少なくとも照射光Lと反射光Rが通る部分は透光性を有するよう構成されている。すなわち、光照射手段50は、反応容器30の外側から反応容器30の透光性部分を介して被陽極酸化金属体10に対して光Lを照射するものであり、膜物性制御手段60は、反応容器30の透光性部分を透過した反射光Rを受光するものである。
光照射手段50/膜物性制御手段60の組合せは適宜設計できる。
図1(b)に示す如く、光照射手段50は例えば、1個の光源51と光源51からの出射光を測定に適した光Lに調光する調光系55とから構成される。光源51としては制限なく、単波長光を出射するレーザや、ブロード光を出射する白色光源(タングステンランプ等)等が用いられる。
光源51として白色光源を用いる場合、調光系55は例えば、光源51からの出射光を平行光束とするコリメータレンズ52、及び必要に応じて、出射光を特定の偏光に制御する偏光子53/特定波長光だけを透過する狭帯域のバンドパスフィルタ54/集光レンズ(図示略)等により構成される。光源51としてレーザを用いる場合、調光系55の構成は同様であるがバンドパスフィルタ54は不要である。
膜物性制御手段60は、ピークバレー法によりアルミナ膜11の膜厚d等の膜物性を測定するものである。
図3に示す如く、成膜中の被陽極酸化金属体10から反射される反射光Rには、アルミナ膜11の表面で反射される第1反射光R1と、アルミナ膜11と被陽極酸化金属体10(アルミナ膜11に変化せずに残っている非陽極酸化部分)との界面で反射される第2反射光R2とが含まれる。第2反射光R2はアルミナ膜11内を往復する分だけ第1反射光R1より光路が長くなり位相がずれるので、第1反射光R1と第2反射光R2との干渉光が生じる。
第1反射光R1と第2反射光R2の位相差φは、一般式φ=4πndcosθ/λで表される。式中、λは入射光の波長、nはアルミナ膜の平均屈折率(1.77)、θはアルミナ膜の屈折角(cosθ=0.975)である。ここでは説明の簡略化のため、空隙であるアルミナ膜内の微細孔の存在は無視して、アルミナそのものの屈折率を平均屈折率nの値として記載してある。
実際の反射では反射による位相のずれも考慮する必要があるが、説明の簡略化のため、第1反射光R1と第2反射光R2はいずれも反射の際に位相がπずれるものとする。
第1反射光R1と第2反射光R2の位相差φ=2mπの時に干渉光の光強度が最大(明状態)となり(干渉ピーク)、位相差φ=(2m+1)πの時に干渉光の光強度が最小(暗状態)となる(干渉バレー)。mは整数(0、±1、±2、・・・)である。
アルミナ膜11の膜厚dに応じて、第1反射光R1と第2反射光R2の位相差φ=4πndcosθ/λが変化するので、干渉条件が変化する。
ピーク波長=λ1とすれば、アルミナ膜11の膜厚d=m×λ1/(2ncosθ)となる。例えばピーク波長λ1=600nmでは、アルミナ膜11の膜厚d=173.8×m(nm)となる。mは干渉ピークが計測された回数に相当する。ピーク波長及び干渉ピークが計測された回数mとアルミナ膜11の膜厚dとの関係は、例えば図4に示すものとなる。以上のように、ピーク波長から膜厚dを測定することができ、同様にバレー波長からも膜厚dを測定することができる。
照射光Lをピーク波長又はバレー波長の単波長光とし、図1(a)に示す如く、膜物性制御手段60を、反射光Rを受光しその光強度を検出するフォトダイオード等の検出器61と、検出器61による検出データから膜厚d等の膜物性を算出するデータ処理部63を有する膜物性測定装置62とから構成し、反射光R(干渉光)の光強度の変化をリアルタイム検出すれば、膜厚d等の膜物性をリアルタイム測定することができる。
照射光Lがブロード光の場合、反射光R(干渉光)を分光し、分光された光の強度を各々検出して干渉ピーク又は干渉バレーを示す波長を求めることで、膜厚d等の膜物性をリアルタイム測定することができる。この場合、膜物性制御手段60は、反射光Rを分光し分光スペクトルを得る分光器(図示略)と、分光された光の強度を各々検出するCCD(Charge Coupled Device)等の検出器61と、検出器61による検出データから膜厚d等の膜物性を算出するデータ処理部63を有する膜物性測定装置62とから構成すればよい。
また、ピーク波長及びバレー波長以外の任意の波長からも膜厚dを求めることができる。
図5に異なる膜厚のアルミナ膜11に対して反射光強度の測定を行った時の測定例を示す。図5は、膜厚d=150nm(サンプルA)、215nm(サンプルB)、285nm(サンプルC)の測定例であり、膜厚0nmのサンプルをリファレンスとして反射光強度をスペクトル化したものである。膜厚変化に伴って、ピーク波長及びバレー波長は変化している。例えば、任意の波長633nmに着目すれば、膜厚値の変化150nm→215nm→285nmに伴い、光強度は1.14→0.93→1.05と変化している。すなわち、ある任意の特定波長に着目すれば、膜厚の変化に伴って光強度は振幅しながら変化する。したがって、振幅の回数と光強度によって膜厚dを測定できる。
2つの波長(例えば633nmと785nm)について上記と同様の計測を実施すれば、両方の波長について強度が一致した時にその中心波長に吸収波長があることが容易に分かるなど測定効率がよい。また、微弱な強度変化についても、より高精度な測定が実施できる。
ピーク波長又はバレー波長ではなく、ピーク波長とバレー波長の間の任意の波長(変曲点)について反射光強度を測定する場合には、ピーク波長又はバレー波長について反射光強度を測定する場合よりも、光強度変化が大きく観測され、高感度な測定が可能であると推察される。
本実施形態ではさらに、膜物性制御手段60により測定された膜物性値(例えば膜厚値)が所望値に達した時、成膜を自動停止する停止手段70が備えられている。
具体的には、停止手段70として、膜物性測定装置62には、測定された膜物性値が所望値に達した際に信号伝達線72を介して電圧印加電源14に信号を伝達し、電圧印加電源14を自動的にオフする制御部71が搭載されている。
また、電圧印加を停止しても、被陽極酸化金属体10が電解液31に浸漬された状態では成膜反応が僅かながらも進行する恐れがあるため、停止手段70としてさらに、測定された膜物性値が所望値に達した時、被陽極酸化金属体10を電解液31から自動的に引き上げて反応を完全に自動停止する機構(図示略)が備えられていることが好ましい。
本実施形態の基材処理装置1では、成膜中の被陽極酸化金属体(基材)10に対して光Lを照射する光照射手段50と、成膜中の被陽極酸化金属体10からの光Lの反射光Rを受光し、ピークバレー法によりアルミナ膜(透光性膜)11の膜厚d等の膜物性を測定する膜物性制御手段60とを備える構成としている。
かかる構成の基材処理装置1によれば、成膜中の被陽極酸化金属体10に対して光Lを照射し、成膜中の被陽極酸化金属体10からの反射光Rを受光し、反射光Rに含まれる、アルミナ膜11の表面で反射される第1反射光R1と、アルミナ膜11と被陽極酸化金属体10との界面で反射される第2反射光R2との干渉光を検出し、ピークバレー法により成膜中のアルミナ膜11の膜厚d等の膜物性をリアルタイム測定し、測定された膜物性値が所望値に達した時点で成膜を停止することができる。
本実施形態によれば、事前に所望の膜物性のアルミナ膜11を成膜できる反応条件を導く必要がなく、簡易にアルミナ膜11の膜物性を制御できる。事前に反応条件を導く必要がないので、所望の膜物性が変わっても迅速に対応できる。また、基材処理を実施するごとにアルミナ膜11の膜物性をリアルタイム測定するので、高精度にアルミナ膜11の膜物性を制御でき、ナノスケールレベルの膜物性制御も可能である。所望の膜物性のアルミナ膜11を確実に成膜できるので、基材処理終了後に膜物性を検査する工程も不要となる。
本実施形態では特に、膜物性制御手段60により測定された膜物性値が所望値に達した時、電圧印加電源14を自動的にオフし成膜を自動停止する停止手段70を備える構成としているので、膜物性値が所望値になった時点で直ちに反応を停止することができ、高精度な膜物性制御が可能である。
なお、このように膜物性制御手段60の測定結果に基づいて成膜を自動停止することは好ましいが、膜物性制御手段60の測定結果に基づいて、作業者が電圧印加電源14を手動でオフし、被陽極酸化金属体10を電解液31から引き上げるようにしてもよい。この場合、測定された膜物性値が所望値に達した時、膜物性制御手段60が作業者に反応停止を知らせるサインを自動発信する構成とすることが好ましい。
本実施形態では、光照射及び受光を反応容器30の外側から行う場合についてのみ説明したが、光照射及び/又は受光は反応容器の30の内側から行うこともできる。
すなわち、図1(c)に示すように、光照射手段50は、光源51(又は調光系55)からの出射光を導光する、少なくとも光出射端が反応容器30内に挿入された光ファイバ等の導光手段56を介して、反応容器30の内側から光Lを照射するものであってもよい。同様に、膜物性制御手段60は、光入射端が反応容器30内に挿入され、検出器61に反射光Rを導光する光ファイバ等の導光手段64を介して、反応容器30の内側から反射光Rを受光するものであってもよい。図1(c)において、反応容器30とその内部は断面図で示してある。
反応容器30を介さずに光照射及び受光を行う場合には、反応容器30が透光性部分を有する必要がなく、任意の反応容器が使用できる。また、反応容器30での反射や屈折等の影響なく光照射及び受光を実施できるので、より精度の高い測定を実施でき、好ましい。
本実施形態では、膜物性制御手段60をなす検出器61と膜物性測定装置62とが分かれている場合について説明したが、検出器61は膜物性測定装置62に内蔵されていてもよい。
本実施形態の基材処理装置1は、陽極酸化による成膜を行った後、成膜されたアルミナ膜11の膜処理を行う装置としても利用できる。成膜されたアルミナ膜11の膜処理を行う装置として利用する場合にも、アルミナ膜11の膜物性のリアルタイム測定を行うことができる。
例えば、成膜終了後に、反応容器30内に電解液31の代わりにリン酸水溶液等のエッチング液を充填し、電圧を印加せず、常温下又は加熱下で溶液エッチングを実施することで、微細孔11bの孔径を大きくすることができる。電解液31の種類等によってはそのままエッチング液として利用することもできる。
アルミナ膜11の孔径が変化すると、アルミナ膜11内の空隙体積が変化するので、アルミナ膜11の平均屈折率nが変化する。第1反射光R1と第2反射光R2の位相差φ=4πndcosθ/λは、アルミナ膜11の平均屈折率nに応じて変化する。したがって、膜厚dの測定と同様の測定原理で、膜物性制御手段60により、第1反射光R1と第2反射光R2との干渉光を検出することで、アルミナ膜11の孔径をリアルタイム測定することができる。かかる測定では、膜物性制御手段60のデータ処理部63がアルミナ膜11の孔径を算出するように構成すればよい。
上記膜処理を行う場合には、被陽極酸化属体10をエッチング液から引き上げることで、膜処理を停止することができる。基材処理装置1に、測定された孔径が所望値に達した時、被陽極酸化金属体10をエッチング液から自動的に引き上げて反応を完全に自動停止する手段が備えられることが好ましい。
本実施形態においては、被陽極酸化金属体10の主成分としてAlのみを挙げたが、被陽極酸化金属体10の主成分としては、陽極酸化可能で生成される金属酸化物が透光性を有するものであれば、任意の金属が使用できる。Al以外では、Ti、Ta、Hf、Zr、Si、In、Zn等が使用できる。
本発明は、陽極酸化による透光性膜の成膜又はその後の膜処理に限らず、基材の表面に透光性膜を成膜する任意の成膜又はその後の膜処理に適用できる。本発明は、基材を化学変化させて基材の一部を透光性膜とする成膜(陽極酸化等)、基材は化学変化させずに透光性材料を堆積させる成膜(電解メッキや気相蒸着等)、及びこれらの成膜後の膜処理に適用可能である。
本発明は、陽極酸化や電解メッキ等による透光性膜の成膜、又は成膜後の膜処理を行う基材処理装置に好ましく適用できる。
(a)は本発明に係る実施形態の基材処理装置の全体構成を示す斜視図(透視図)、(b)は光照射手段の構成例を示す図、(c)は設計変更例を示す図 (a)は陽極酸化前の被陽極酸化金属体の斜視図、(b)は陽極酸化中の被陽極酸化金属体の斜視図 本発明における膜物性測定の原理を示す概略断面図 膜厚測定例を示す図 膜厚測定例を示す図
符号の説明
1 基材処理装置
10 被陽極酸化金属体(基材)
11 アルミナ膜(金属酸化物膜、透光性膜)
30 反応容器
50 光照射手段
51 光源
56 導光手段
60 膜物性制御手段
61 検出器
64 導光手段
70 停止手段
L 測定光
R 反射光
R1 第1反射光
R2 第2反射光

Claims (10)

  1. 材の表面に成膜された透光性膜の膜処理を行う基材処理装置において、
    記膜処理中の前記基材に対して、前記透光性膜側から光を照射する光照射手段と、
    記膜処理中の前記基材からの前記光の反射光を受光し、該反射光に含まれる、前記透光性膜の表面で反射される第1反射光と、前記透光性膜と前記基材との界面で反射される第2反射光との干渉光を検出し、ピークバレー法により前記膜処理中の前記透光性膜に設けられている孔の孔径を測定する膜物性測定手段とを備えたことを特徴とする基材処理装置。
  2. 前記膜物性測定手段により測定された孔径の値が所望値に達した時、前記膜処理を停止する停止手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の基材処理装置。
  3. 前記基材が被陽極酸化金属体であり、前記透光性膜が陽極酸化により生成される金属酸化物膜であることを特徴とする請求項1または2記載の基材処理装置。
  4. 前記光照射手段が単波長光を照射するものであり、前記膜物性測定手段が前記干渉光の光強度を検出するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の基材処理装置。
  5. 前記光照射手段がブロード光を照射するものであり、前記膜物性測定手段が前記反射光を分光して干渉ピーク又は干渉バレーを有する波長を検出し、該波長から前記透光性膜の膜物性を測定するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の基材処理装置。
  6. 前記基材の少なくとも一部が収容されて前記成膜又は前記膜処理が行われる、少なくとも一部が透光性を有する反応容器をさらに備え、前記光照射手段が、前記反応容器の外側から該反応容器の透光性部分を介して前記基材に対して前記光を照射するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の基材処理装置。
  7. 前記基材の少なくとも一部が収容されて前記膜処理が行われる、少なくとも一部が透光性を有する反応容器をさらに備え、前記膜物性測定手段が、前記反応容器の透光性部分を透過した前記反射光を受光するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の基材処理装置。
  8. 前記基材の少なくとも一部が収容されて前記膜処理が行われる反応容器をさらに備え、前記光照射手段が、光源と、該光源からの出射光を導光する、少なくとも光出射端が前記反応容器内に挿入された導光手段とを有するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の基材処理装置。
  9. 前記基材の少なくとも一部が収容されて前記成膜又は前記膜処理が行われる反応容器をさらに備え、前記膜物性測定手段が、前記反射光を受光し前記干渉光を検出する検出器と、少なくとも光入射端が前記反応容器内に挿入され、前記検出器に前記反射光を導光する導光手段とを有するものであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の基材処理装置。
  10. 材の表面に成膜された透光性膜の膜処理を行う基材処理方法において、
    記膜処理中の前記基材に対して、前記透光性膜側から光を照射し、
    記膜処理中の前記基材からの前記光の反射光を受光し、
    該反射光に含まれる、前記透光性膜の表面で反射される第1反射光と、前記透光性膜と前記基材との界面で反射される第2反射光との干渉光を検出し、
    ピークバレー法により前記膜処理中の前記透光性膜に設けられている孔の孔径を測定し、
    測定された孔径の値が所望値に達した時、前記膜処理を停止することを特徴とする基材処理方法。
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