JP4822635B2 - 人工毛球部及びその製造方法、並びに、人工毛球部を用いた薬剤の評価方法 - Google Patents

人工毛球部及びその製造方法、並びに、人工毛球部を用いた薬剤の評価方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬剤の新たな評価手段を提供し得る素材に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
育毛剤は、頭髪の成長を促進または刺激するという積極的な効能を有する薬剤であり、高齢化社会を迎えた今日では、年々、その需要は増大するものと考えられ、それに呼応するかのように、新しい発毛ないし脱毛防止の薬剤が開発されつつある。
【0003】
現在、脱毛の原因として、1)男性ホルモン関与による毛包機能の低下、2)毛包、毛球部の新陳代謝機能の低下、3)頭皮生理機能の低下、4)頭皮の緊張による局所血流障害、5)遺伝等が挙げられており、これらの脱毛原因に着目した各種の特徴ある育毛剤の開発のための努力が日夜行われている。
【0004】
育毛剤を開発する際には、当然のことながら、候補物質に育毛効果が認められるか否かを評価するための手段が必要である。
現在、代表的な育毛剤の評価法としては、マウス、ウサギ、ハムスター、サル等の動物の皮膚を用いる方法、ヒトを用いる方法が挙げられる。動物を用いた方法は、動物の毛の成長を、毛の重さや長さ、発毛面積および発毛開始時期等を検討する評価法である。動物の毛の成長の検討を行うに際しては、動物の種、加齢、季節、飼料等に留意をする必要がある。
【0005】
育毛効果の最終的な評価には、ヒトを用いた試験が必要となるが、ヒトにおける育毛効果の評価は、個人的、部位的なばらつき、被験者のコントロールが困難であること、日間、季節的変動が不明なことなど、解決すべき問題点が多く残されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
現在、真に画期的な育毛剤の開発には、発毛や脱毛機構の基礎的な解明と、地道な薬剤の効果追求が必要とされると考えられており、このため、発毛のメカニズムに着目した評価法を提供する試みが行われつつある。例えば、上記の動物やヒトを用いる方法以外に、毛包の器官培養や毛包由来細胞の培養等を用いる方法が試みられており、これらの培養法は、育毛剤の評価のみならず、毛の成長の機序を解明するためにも有用であると考えられている。
【0007】
しかしながら、現状では、これらの培養方法が、実際の毛包や毛球部の状態を正確に反映し切れていないという面が否めない等の、様々な問題点が認められている。
【0008】
そこで、本発明が解決すべき課題は、可能な限り、実際の毛包や毛球部の状態を反映し得る、育毛剤の新たな評価手段を提供し得る細胞培養素材を提供し、かかる培養素材を用いた育毛剤の評価手段を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、発毛機序を念頭に置きつつ、育毛剤の新たな評価手段や、新たな毛髪関連薬剤のスクリーニング手段を提供し得る新たな細胞培養素材について鋭意検討を重ねた。その結果、毛包間葉系細胞の細胞集塊の周りに、細胞選別によって上皮系細胞が細胞接着した状態の二層構造を持つ細胞集塊を形成させることができれば、ヒトの毛球部様構造が再構築された状態で、育毛や発毛効果を検討可能な細胞培養素材を提供可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、生体組織又は生体組織に準じた人工の場に接触していない人工毛球部であって、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に、上皮系細胞が当該細胞集塊を包埋する状態で細胞接着してなる、(以下、本人工毛球部ともいう)を提供すると共に、本人工毛球部を用いて、養毛作用等を有する、毛髪に作用する薬剤を評価する方法をも提供する発明である。
【0011】
なお、上記の細胞選別とは、多細胞生物の異なった組織や器官の細胞を解離して単一細胞とし、これを混合した細胞浮遊液の中で再構成を行うと、同じ種類の細胞同士は接着するが、異なった種類の細胞同士は接着せずに、凝集塊の中で別々の組織構造を再形成する現象のことを意味する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
A.本人工毛球部
上述のように、本人工毛球部は、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に、上皮系細胞が細胞接着している人工毛球部である。この本人工毛球部は、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に、細胞選別によって上皮系細胞が細胞接着した状態の二層構造を持つ細胞集塊を形成させて、毛球部様構造を再構築することにより形成され得る人工毛球部である。
【0013】
上皮系細胞としては、典型的には、外毛根鞘細胞(以下、ORScということもある)を挙げることができるが、毛芽細胞、マトリックス細胞、ジャーミネイティブ細胞、表皮角化細胞等であってもよい。また、毛包間葉系細胞としては、典型的には毛乳頭細胞(以下、DPcということもある)であるが、結合織毛根鞘細胞等であっても良い。
【0014】
本人工毛球部が、毛包間葉系細胞の細胞集塊が、上皮系細胞により包埋された状態で、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に、上皮系細胞が細胞接着している、二層構造の細胞集塊としての態様であることが、より現実の毛根部の構造に準じた状態であり、好適である。
【0015】
また、細胞外マトリックス構成成分で処理(主に、細胞外マトリックス構成成分と毛包間葉系細胞と上皮系細胞を接触させる処理)した毛包間葉系細胞と上皮系細胞を用いた場合、あるいは、本人工毛球部製造時の培養液中に細胞外マトリックス構成成分を添加して製造した本人工毛球部を用いて被験薬剤の評価を行うと、薬剤に対する反応感度が鋭敏になる傾向が認められ、好適である。
【0016】
この細胞外マトリクス構成成分としては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖タンパク質等を挙げることができるが、特に、現実の毛根部に準じた細胞外マトリクス構成成分である、コラーゲンタイプI、IVおよびデルマタン硫酸を選択することが好適である。
【0017】
本人工毛球部は、毛包間葉系細胞と上皮系細胞の共存培養下で、細胞選別によって、毛包間葉系細胞細胞集塊の周りに上皮系細胞が細胞接着した状態の二層構造を持つ細胞集塊であり、毛球部様構造が再構築されていることを特徴とする。
【0018】
本人工毛球部は、調製後、そのまま利用することも可能であり、凍結保存して、用時に解凍して利用することも可能である。
本人工毛球部は、被験薬剤の毛髪に対する効果をスクリーニングするための生体モデルとして用いることができる(これについては後述する)。
【0019】
また、例えば、本人工毛球部と血管内皮細胞との関連性を検討することにより、太毛(硬毛)の毛乳頭内部への血管新生の作用機序を、毛乳頭における内因性物質等と関連させて検討することが可能であり、この知見により、本人工毛球部を、太毛化(産毛→硬毛)薬剤の検索手段に用いることもできる。また、本人工毛球部とメラノサイトとの関連性を検討することにより、白髪の発生機序について、毛乳頭における内因性物質と関連させて検討することが可能であり、この知見により、抗白髪剤の検索手段に用いることもできる。また、本人工毛球部と脂肪細胞との関連性を、毛乳頭における内因性物質と関連させて検討することにより、毛包の毛球部が脂肪組織中に深く貫入し、太毛化する作用機所を検討することが可能であり、この知見により、太毛化(産毛→硬毛)薬剤の検索手段に用いることもできる。また、本人工毛球部を、動物の皮膚に移植して、毛包を誘導させることにより、in vivo の試験をヒトに頼らずに行うことも可能である。また、組織学的、遺伝子工学的手法によって、細胞間相互作用やその関連因子の検討に用いることも可能である。
【0020】
このように、本発明は、本人工毛球部における内因性の物質に関する現象を、その内因性の物質が関わるべき毛髪における現象と関連付けて、毛髪に関連する内因性の物質を見出す、養毛物質等を有する毛髪関連物質の検索方法を提供する発明であり、また、人工毛球部、および、他の細胞種若しくは組織との共存下において、人工毛球部における内因性の物質に関する現象を、その内因性の物質が関わるべき毛髪における現象と関連付けて、養毛作用等を有する毛髪に関連する内因性の物質(養毛作用を有する物質等)を見出す、毛髪関連物質の検索方法を提供する発明である。
【0021】
これらの検索方法の一つは、いいかえれば、本人工毛球部における内因性物質を検出することを特徴とする、本人工毛球部の使用方法であり、この使用方法により、人工毛球部における内因性の物質(養毛作用を有する物質等)に関する現象を、その内因性の物質が関わるべき毛髪における現象と関連付けて、毛髪に関連する内因性の物質を見出すことができる。
【0022】
また、他の一つは、いいかえれば、本人工毛球部、および、他の細胞種若しくは組織との共存下において、人工毛球部における内因性物質を検出することを特徴とする、本人工毛球部の使用方法であり、この使用方法により、人工毛球部における内因性の物質(養毛作用を有する物質等)に関する現象を、その内因性の物質が関わるべき毛髪における現象と関連付けて、毛髪に関連する内因性の物質を見出すことができる。
【0023】
B.本製造方法
本人工毛球部は、毛包間葉系細胞と上皮系細胞とを培養環境において、共存させて自ら細胞選別させて、毛球部様構造を再構築することにより製造することができる(以下、この製造方法を、本製造方法ともいい、特に断わらない限り、後述する2ステップ法と1ステップ法の両者を含む概念として用いる)。
【0024】
本製造方法は、培養環境において、まず、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させた後に、さらに上皮系細胞を播種して共存培養を行うことによって、この毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に上皮系細胞が細胞接着した二層構造の細胞集塊を形成し、毛球部様構造を再構築した、本人工毛球部を製造する方法が、一態様として挙げられる(この方法を、2ステップ法ともいう)。
【0025】
すなわち、本製造方法のうち、2ステップ法は、培養液中(通常は、培養液を満たした培養器の培養部中である)において、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させ、次いで、この細胞集塊と上皮系細胞を、培養液中で共存させて、細胞選別現象により、毛包間葉系細胞の細胞集塊の周囲に上皮系細胞を細胞接着させることにより、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に上皮系細胞が細胞接着している人工毛球部を製造する、人工毛球部の製造方法として提供される。
【0026】
また、本製造方法として、培養環境において、毛包間葉系細胞と上皮系細胞をはじめから共存させた状態で、培養することにより、上記毛球部様構造の再構築を行い、本人工毛球部を製造する方法も、他の態様として挙げられる(この方法を、1ステップ法ともいう)。
【0027】
すなわち、本製造方法のうち、1ステップ法は、培養液中(通常は、培養液を満たした培養器の培養部中である)において、毛包間葉系細胞と上皮系細胞とを共存させて、細胞選別現象により、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させると共に、この細胞集塊の周囲に上皮系細胞を細胞接着させることにより、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に上皮系細胞が細胞接着している人工毛球部を製造する、人工毛球部の製造方法として提供される。
【0028】
本製造方法に用いる毛包間葉系細胞および上皮系細胞の提供源は、哺乳動物一般から選択することが可能であるが、通常の抗白髪薬剤や育毛剤などの毛髪に作用する薬剤は、ヒトを対象とするものであるから、ヒトの毛髪の毛包間葉系細胞および上皮系細胞であることが一般的であり、かつ、好適である。
【0029】
また、毛包間葉系細胞および上皮系細胞は、通常は、培養細胞の形態で、本製造方法において用いられ、これらの培養細胞は、常法により得ることができる。
例えば、毛包間葉系細胞および上皮系細胞は、美容外科手術の副産物として得られた毛包を含むヒトの頭皮から採取することも可能であり、実体顕微鏡下で単離した毛周期における成長期毛包より採取することも可能である。
【0030】
まず、本製造方法において用いられる培養器は、特に限定されないが、静置あるいは旋回培養された細胞が、自ら細胞集塊を作りやすい形態および材質のものを選択することが好ましい。一般的には、自然重力によって、細胞が一か所に集中しやすい形状の底面、具体的には、例えば、丸底型又はすり鉢型等の形状の底面を有するウエルを培養部として有する培養器が好適である。また、かかる培養部のウエル面に細胞接着防止用のコーティング処理が施されていることが、特に、好適である。培養部の材質は、通常の細胞培養を行う培養部に用いられる材質、例えば、プラスチックやガラス等を用いることが可能であり、特に、限定されるものではない。現在、細胞集塊の調製に適した培養プレート〔例えば、スミロンセルタイト スフェロイド96Uプレート(Sumitomo Bakelit co., 製)等が、本製造方法を行うのに好適な培養器として挙げられる〕が、市販品として入手可能であるが、本目的に合致するものであれば、これに限定されるわけではない。
【0031】
また、培養液は、ヒト由来の細胞を培養することが可能なものであれば、特に限定されず、培養の態様に応じて、既知の培地を適宜選択して用いたり、適宜改変して用いることができる。既知の培地としては、例えば、DMEM(GibcoBRL:11965-092)、Keratinocyte-SFM (GibcoBRL:11965-011) 、William's E(GibcoBRL:74N4752)等を挙げることができる。
【0032】
▲1▼2ステップ法
2ステップ法においては、まず、培養環境において、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させる工程を行う。
【0033】
好適には、細胞集塊の調製に適した培養プレートの各ウエルの中に、上述の毛包間葉系細胞を再分散させた培養液を入れ、これをインキュベートすることにより、所望する毛包間葉系細胞の細胞集塊を得ることができる。
【0034】
各ウエルに播種する毛包間葉系細胞の細胞数は、好適には100 〜5000Cells 程度、特に好適には、500 〜4000Cells 程度である。細胞数が、100Cells未満であると、本人工毛球部に用いる十分な大きさの細胞集塊が形成されず、5000Cells を超えると、細胞集塊中心部で壊死が起こり、好ましくない。また、産毛から終毛を含めた現実の頭髪毛球部の大きさを考慮すると、毛包間葉系細胞数は、各ウエル当り、100 〜5000Cells 程度とすることが好適である。
【0035】
また、インキュベートは、一般的な哺乳動物の細胞を培養する条件、具体的には、32〜42℃程度で、5%程度のCO2 下で、静置培養あるいは旋回培養することによりインキュベートを行うことができる。このインキュベートは、十分に毛包間葉系細胞の細胞集塊が形成されるまで行うのが好適であり、概ね24時間程度で完了させることができる。
【0036】
2ステップ法では、次に、この毛包間葉系細胞の細胞集塊に対して、上皮系細胞を共存させてインキュベートすることにより、毛球部様構造の再構築を行い、本人工毛球部を製造する工程を行う。
【0037】
この工程は、上記の工程により毛包間葉系細胞の細胞集塊が形成された培養物に、培養液中に再分散させた上皮系細胞を播種して、毛包間葉系細胞と上皮系細胞を共存させて、インキュベートすることにより行うことができる。
【0038】
各ウエルに播種する上皮系細胞の細胞数は、好適には100 〜5000Cells 程度、特に好適には、500 〜4000Cells 程度である。細胞数が、100Cells未満であると、毛包間葉系細胞の細胞集塊の周囲に十分に上皮系細胞が付着せず、5000Cells を超えると、上皮系細胞層の厚みが厚くなり過ぎ、中心部の細胞が壊死するので、好ましくない。また、現実の毛球部の大きさを考慮すると、上皮細胞数は、各ウエル当り、100 〜5000Cells 程度であり、かつ、毛包間葉系細胞数に対して、同数程度とすることが好適である。
【0039】
また、この工程のインキュベートは、上記の毛包間葉系細胞の細胞集塊を調製する工程における培養条件と同様の条件で行うことが可能であり、上皮系細胞の添加後、概ね48時間程度で完了させることができる。
【0040】
このように、毛包間葉系細胞の細胞集塊と分散した状態の上皮系細胞を共存させた状態でインキュベートすることにより、上皮系細胞が、毛包間葉系細胞の細胞集塊の周囲に細胞接着した状態で細胞選別され、その結果、二層構造を持つ細胞集塊である本人工毛球部を製造することができる。
【0041】
▲2▼1ステップ法
1ステップ法は、培養液を満たした培養器の培養部中において、毛包間葉系細胞と上皮系細胞とを播種して共存させ、これをインキュベートすることにより行われる。
【0042】
すなわち、毛包間葉系細胞と上皮系細胞は、混合後、好適には、培養液中に分散させた状態で、細胞集塊の調製に適した培養プレートのウエルの中に、添加して、これを培養することにより、1ステップ法のインキュベートを行うことができる。
【0043】
分散させた毛包間葉系細胞と上皮系細胞の細胞数は、2ステップ法において示した条件と同様の条件で行うことができる。また、毛包間葉系細胞と上皮系細胞の1培養物当りの混合割合は、上皮系細胞数が毛包間葉系細胞数に対して、同数程度とすることが好適である。
【0044】
また、インキュベートは、一般的な哺乳動物の細胞を培養する条件、具体的には、32〜42℃程度で、5%程度のCO2 下で、静置あるいは旋回培養することによりインキュベートを行うことができる。このインキュベートは、概ね48から72時間程度で完了させることができる。
【0045】
このように、分散した状態の毛包間葉系細胞と上皮系細胞を共存させた状態でインキュベートすることにより、毛包間葉系細胞の細胞集塊の形成が行われると同時に、上皮系細胞が、この毛包間葉系細胞の細胞集塊の周囲に細胞接着した状態で細胞選別され、二層構造を持つ細胞集塊である本人工毛球部を製造することができる。
【0046】
また、本人工毛球部の製造過程において、細胞外マトリクス構成成分を単独または複数含む培養液で37℃、10分間処理した毛包間葉系細胞と上皮系細胞を用いるか、あるいは、通常の培養液の替わりに、細胞外マトリクス構成成分を単独または複数含む培養液を用いることができる。培養液中の細胞外マトリックス構成成分の濃度は、物質によって最適濃度が異なるが、概ね、培養液に対して0.00001 〜1 質量%の範囲で添加することができる。
【0047】
このようにして、細胞外マトリクス構成成分で処理した細胞、あるいは細胞外マトリクス構成成分存在下で人工毛球部を製造する、本製造方法が提供される。
C.本評価方法等
本発明は、本人工毛球部に対して被験薬剤を作用させた場合の人工毛球部における現象を、被験薬剤の毛髪に対する作用と関連付けて、毛髪に対する作用(育毛作用等)を有する被験薬剤を評価する、被験薬剤の評価方法を提供し、さらに、本人工毛球部、および、他の細胞種若しくは組織との共存下で、被験薬剤を作用させた場合の人工毛球部における現象を、被験薬剤の毛髪に対する作用と関連付けて、毛髪に対する作用(育毛作用等)を有する被験薬剤を評価する、被験薬剤の評価方法を提供する発明である(これらの発明を、以下、共に、本評価方法ともいう)。
【0048】
なお、本評価方法の一つは、いいかえると、本人工毛球部に対して被験薬剤を作用させることを特徴とする、本人工毛球部の使用方法(本使用方法1ともいう)であり、この使用方法を行うことにより、人工毛球部における現象と、被験薬剤(育毛剤等)の毛髪に対する作用との関連付けが可能となり、被験薬剤の評価を行うことができる。
【0049】
また、本評価方法の他の一つは、いいかえると、本人工毛球部を、他の細胞種若しくは組織との共存下で、被験薬剤を作用させることを特徴とする、本人工毛球部の使用方法(本使用方法2ともいう)であり、この使用方法を行うことにより、人工毛球部における現象と、被験薬剤の毛髪に対する作用との関連付けが可能となり、被験薬剤(育毛剤等)の評価を行うことができる。
【0050】
本評価方法は、このような本人工毛球部の生体モデルとしての、特に好適な態様の一つである。
本評価方法において選択可能な被験薬剤の毛髪に対する作用は、特に限定されず、発毛誘導作用、毛髪の成長期の延長作用等の育毛作用は勿論のこと、脱毛作用を有する被験薬剤や抗白髪作用を有する被験薬剤も、本評価方法を用いて、in vitroで選択することができる。また、被験薬剤は、例えば、上記の本人工毛球部の製造工程の終了後、直ちに、培養系に添加して本評価方法を行うことも可能であり、一旦、冷凍保存した本人工毛球部を、一般的な凍結細胞における解凍法に従い解凍して、これに被験薬剤を作用させることも可能である。
【0051】
被験薬剤の人工毛球部における現象と、毛髪に対する作用を関連付ける手段は、選択対象となる被験薬剤の作用に応じて選択を行うことができ、例えば、培養学的、生化学的、組織学的、遺伝子工学的、免疫学的手法など各種検出手段を用いることが可能である。
【0052】
例えば、選択対象となる被験薬剤の作用が、発毛誘導作用の場合には、人工毛球部における呼吸量の増加(アラマーブルーを用いる方法等により検出可能)、DNA 量の増加、PCNA量の増加、ヴァーシカンやWnt mRNA量の発現量の増加(RT−PCR法等により検出可能)等を挙げることができる。
【0053】
また、選択対象となる被験薬剤の作用が、毛髪の成長期の延長作用の場合には、人工毛球部におけるTGF βmRNA量の発現量の減少(RT−PCR法等により検出可能)等を挙げることができる。
【0054】
例えば、本評価方法で、発毛誘導作用を有する被験薬剤を選択する場合に、通常よりも、本人工毛球部における呼吸量が増加していれば、人工毛球部の代謝が亢進していることを意味し、この現象と生体内で休止状態の休止期毛球部が成長期に移行するとともに代謝活性が急激に高くなる現象、すなわち、被験薬剤の発毛誘導作用を関連付けられる。逆に、本人工毛球部における呼吸量を抑制する被験薬剤は、脱毛作用を有する薬剤として、本評価方法により選択され得る。
【0055】
このようにして、本評価方法により、毛髪に対する作用を有する被験薬剤を選択することができる。
また、本発明は、本評価方法や、それと実質的に同一の、本使用方法1および2を行うためのキット(以下、本評価用キットともいう)をも提供する発明である。
【0056】
すなわち、本評価用キットは、本人工毛球部を、構成要素として含む、本評価方法または本使用方法1若しくは2を行うためのキットである。
本評価用キットには、本人工毛球部と共に培養器、培養液、添加薬剤等が含まれ得る。また、細胞外マトリックス構成成分を構成要素として含めることも可能である。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに具体的に説明する。
初代外毛根鞘培養細胞の調製
ヒトの美容整形手術により入手した頭皮から単離した単離毛包の毛球部を切除した後、1000unit/ml dispase + 0.2% cllagenase を含む Keratinocyte-SFM 培地(GibcoBRL:11965-011)中で、37℃で30分間酵素処理した後、注射針(27G )の先を用いて、結合織毛根鞘などの余分な毛包間葉系組織を取り除き、コラーゲンコーティングした培養器の培養部中に静置して、抗菌剤を含むKeratinocyte-SFM培地中で、explant culture を行った。培養約1週間後に細胞の増殖が確認できた時点で、培地を交換した。サブコンフルエントまで増殖した細胞を、PBS(-)+0.05%trypsin で37℃で3 分間処理した後、等量以上のPBS(-)+0.1%trypsin inhibitor(Sigma) で反応を停止させ、遠心分離(1200rpm X 5min)によって細胞を回収した。回収した細胞をPBS(-)に再懸濁した後、遠心分離(1200rpm X 5min)によって、細胞を回収し、細胞の洗浄を行った。洗浄した細胞をセルバンカーII(ダイアヤトロン社:ZCB-201(100))を用いて、液体窒素中で凍結保存を行い、初代外毛根鞘培養細胞を得た。
【0058】
初代培養毛乳頭細胞の調製
ヒトの美容整形手術により入手した頭皮から単離した単離毛包から切除して得た毛球部から、注射針(27G )の先を用いて、毛乳頭部分を実体顕微鏡下で単離し、コラーゲンコーティングした培養器の培養部中に静置して、抗菌剤を含む10%FBS添加DMEM培地(GibcoBRL:11965-092)中で、explant culture を行った。培養約2週間後に細胞の増殖が確認できた時点で培地を交換した。サブコンフルエントまで増殖した細胞を、PBS(-)+0.05%trypsin で37℃で3分間処理した後、等量以上のPBS(-)+0.1%trypsin inhibitor(Sigma) で反応を停止させ、遠心分離(1200rpm X 5min)によって細胞を回収した。回収した細胞を、PBS(-)に再懸濁した後、遠心分離(1200rpm X 5min)によって細胞を回収し細胞の洗浄を行った。洗浄した細胞をセルバンカーII(ダイアヤトロン社:ZCB-201(100))を用いて、液体窒素中で凍結保存を行い、初代毛乳頭培養細胞を得た。
【0059】
本人工毛球部の製造
(1)2ステップ法
上記により得られた初代毛乳頭培養細胞を、Type I collagen コートした75cm2 培養フラスコ中、10%FBS添加DMEM(GibcoBRL:11965-092)培地で3回継代培養(37℃、5%CO2 )し、セルバンカーII(ダイアヤトロン社:ZCB-201(100))を用いて、液体窒素中で凍結保存を行った。
【0060】
また、上記により得られた初代外毛根鞘細胞を、Type I collagen コートした75cm2 培養フラスコ中、Keratinocyte-SFM (GibcoBRL:11965-011) 培地で3回継代培養(37℃、5%CO2 )し、セルバンカーII(ダイアヤトロン社:ZCB-201(100))を用いて、液体窒素中で凍結保存を行った。
【0061】
次に、凍結保存したDPcを解凍し、氷冷したKeratinocyte-SFM培地で洗浄後、同培地の中に再分散させ、血球計算板を用いて細胞密度を計測した。次いで、細胞の細胞密度を、5×104Cells/ml に調整し、得られたDPc懸濁 Keratinocyte SFM(+)培地を40μl (2 X 103cells/well )を、スミロンセルタイト スフェロイド96Uプレート(Sumitomo Bakelit co., 製)の各ウエルに播種し、1日間培養した(37℃、5%CO2 )。DPc の細胞集塊が形成されていることを確認し、凍結保存したORScを解凍後、上記のDPcと同様に、細胞密度を5×104Cells/ml に調整したORSc懸濁KeratinocyteSFM(+)培地を40μl (2 X 103cells/well )を、各ウエルに播種して、さらに1日間培養(37℃、5%CO2 )を行い、DPcの細胞集塊の周囲にORScが細胞接着した状態に細胞選別された本人工毛球部を、2ステップ法で製造した。
【0062】
(2)1ステップ法
上記(1)と同様に凍結保存したDPcおよびORScを解凍し、氷冷したKeratinocyte-SFM培地で洗浄後、KeratinocyteSFM(+)培地に分散させ、血球計算板を用いてそれぞれの細胞密度を計測した。次いで、それぞれの細胞の細胞密度を、5×104Cells/ml に調整後、氷冷下、等量ずつ混合した。混合した細胞懸濁KeratinocyteSFM(+)培地を、80μl ずつ、スミロンセルタイト スフェロイド96Uプレート(Sumitomo Bakelit co., 製)の各ウエルに播種し、2 日間培養(37℃、5%CO2 )し、DPc の細胞集塊の周囲にORSc が細胞接着した状態に細胞選別された本人工毛球部を、1ステップ法で製造した。
【0063】
(3)単層・単一/共存培養法(比較例)
1ステップあるいは2ステップ法で用いたスミロンセルタイト スフェロイド96Uプレート(Sumitomo Bakelit co., 製)の代わりに、一般的なコラーゲンコート平底96穴マイクロプレートを用い、すべての実験条件は、2ステップ法および1ステップ法と同様に行った。
【0064】
(4)本評価方法(呼吸量の変化を指標とした場合の例)
上記(1)、(2)、(3)で調製した、各培養物に対して、被験薬剤を含むWilliam's E(+)培地[10 μg/mlトランスフェリン、10ng/ml ハイドロコルチゾン、10μg/mlインスリン、10ng/ml sodium selenite を補充] を、80μl ずつ添加し、37℃、5%CO2 下で、2日間さらに培養を行った。
【0065】
培養後、アラマーブルー(Biosource:DAL1100) 、Keratinocyte-SFM培地、William's E(+)培地を、それぞれ、2:1:1(容量比)の割合で混合し、37℃に温めた後、40μl ずつ、各ウエルに添加し、37℃で6時間の反応を行った。反応終了後、各ウエルから100μl ずつ反応液を採取し、蛍光測定用白色96穴プレート(Opaque Plate)(Coster:3912)の各ウエルに分注した。
【0066】
各ウエルの蛍光強度を、励起波長544nm、蛍光波長590nmに設定した、Labsystems Fluoroskan II(大日本製薬社)で測定し、細胞を培養していない反応液(培地そのもの)の蛍光強度を差し引いて、各条件下での呼吸量を求めた。
【0067】
相対呼吸量(%)は、下記の計算式により算出した。
〔呼吸量(被験薬剤)〕/〔呼吸量(陰性コントロール)〕×100(%)
本人工毛球部の評価
(1)被験薬剤を含まない場合の評価(第1図)
▲1▼試験方法:被験薬剤を含まない条件下における、本人工毛球部の有用性を確認するために、i)上記の1ステップ法と同様の条件で集塊培養を行って得られた毛乳頭細胞の細胞集塊、ii) 上記の単層培養法と同様の条件で単層培養を行って得られた毛乳頭細胞の単層培養物(以上、第1図のDP)、iii)上記の1ステップ法と同様の条件で集塊培養を行って得られた外毛根鞘細胞の細胞集塊、iv) 上記の単層培養法と同様の条件で単層培養を行って得られた外毛根鞘細胞の単層培養物(以上、第1図のORS)、v)1ステップ法を用いて得た、本人工毛球部、vi) 1ステップ法に準じて得た、比較例の複合培養物(以上、第1図のDP+ORS)を使用して、被験薬剤を含まない条件下において、本評価方法〔上記の(4)に示した本評価方法の実施態様、ただし、被験薬剤を含まない培地を用いた〕を行い、本人工毛球部と比較例における呼吸量の違いを比較した。
【0068】
第1図のグラフにおいて、同一ウエルに播種した細胞の種類を、縦軸に蛍光強度の実測値を示した。また、各棒グラフの左側は単層培養法の、右側は集塊培養法の結果を示している。
【0069】
▲2▼結果:単層培養したDPc、ORSc、およびDPcとORScの共存培養での呼吸量は、集塊培養した場合と比較していずれも高くなっており、特にDPcを含む培養系ではその差が顕著であった。また、本人工毛球部の呼吸量は極めて少ないことが明らかとなった。このことは、本人工毛球部に対して、毛髪に対して何らかの作用を及ぼす被験薬剤を接触させた場合、鋭敏にこれを検出可能であることを示唆している。また、この呼吸量が少ない状態は、休止期の毛包部の状態に準じた状態であり、特に、本人工毛球部が、休止期の毛包部の活動を活性化させる物質の検出に適していることを示唆している。
【0070】
(2)被験薬剤を用いた評価(第2図)
さらに、本人工毛球部の鋭敏性について検討するために、公知の発毛促進物質である、サイクロスポリンA(CysA)に対する、本人工毛球部の反応性を、単層培養物との比較において検討した。
【0071】
▲1▼試験方法:上記の(4)に示した本評価方法の実施態様に準じて、被験薬剤であるCysAを0 、1.5 、5 、15μM 含有した培地を調製し、上記の(1)の試験と同様に、培養法による呼吸量の違いを検討した。
【0072】
第2図のグラフにおいて、横軸に、同一ウエルに播種した細胞の種類とCysAの濃度を、縦軸に相対呼吸量を示した。また、各棒グラフの左側は単層培養法の、右側は集塊培養法の結果を示している。
【0073】
▲2▼結果:単層培養したDPc、ORSc、およびDPcとORScの共存培養での呼吸量は、CysAの濃度に依存して低下していく傾向が認められたが、集塊培養した場合、DPcの単一培養の時を除き、CysAによって呼吸量が増加する現象が認められた。その傾向は、DPcとORScが共存した場合により強く現れ、通常の細胞培養法では検出が難しい、CysAの発毛促進効果を検出できていると考えられた。この結果により、本人工毛球部は、単層培養物と比較して、極めて鋭敏に、発毛促進物質に対して反応することが明らかとなった。
【0074】
(3)細胞外マトリックス構成成分を用いた効果の検討(第3図)
さらに、細胞外マトリックス構成成分の被験培地における添加が、本人工毛球部の鋭敏性を向上させるかどうかについて検討するために、コラーゲンTypeIとデルマタン硫酸を用いて、サイクロスポリンA(CysA)に対する、本人工毛球部の反応性の比較を行った。
【0075】
▲1▼試験方法:上記の1ステップ法による本人工毛球部の製造例において、初代毛乳頭細胞及び/又は初代外毛根鞘細胞を細胞選別を行うためにインキュベートする培地を、10μg/ml コラーゲンTypeI、1 μg/mlデルマタン硫酸を含有させた、細胞外マトリックス構成成分の添加培地として(対照は、コラーゲンTypeIと1 μg/mlデルマタン硫酸を含有しないKeratinocyteSFM 培地)、1ステップ法により、細胞外マトリックス構成成分処理を行った本人工毛球部(以下、マトリックス処理本人工毛球部ともいう)を製造した。このマトリックス処理本人工毛球部に対して、上記(2)に記載した、サイクロスポリンA(CysA)に対する試験を行った。なお、被験培地は、CysAを、0又は5μM 含有させて、試験を行った。
【0076】
第3図は、横軸に、10μg/mlコラーゲンTypeIと1 μg/mlデルマタン硫酸(ECM)の添加の有無を示し、縦軸に相対呼吸量を示した。また、各棒グラフの左側は陰性コントロールであるCysA無添加(EtOH 0.1% )の、右側は陽性コントロールである、5μM CysA添加時の結果を示している。
【0077】
▲2▼結果:細胞外マトリックス成分の有無により、陰性コントロールに対する陽性コントロールの相対呼吸量(%)は、それぞれ134.72±14.53 、119.87±12.67 でであり、細胞外マトリックス成分の添加によって、相対呼吸量が増加した。また、陰性コントロールに対する両側t検定のp値はそれぞれ、p=0.0005 、p=0.0109 であり、有意差の程度も増加した。陽性コントロール同士の比較でも、両側t検定のp値はp=0.034であり、細胞外マトリックス成分による、上皮系細胞及び毛包間葉系細胞の接触処理により、本人工毛球部の被験薬剤に対する感度を有意に向上させることができることが明らかとなった。
【0078】
(4)本評価方法の一般的な有用性についての検討−1(第4図)
さらに、本評価方法の一般性な有用性について検討するために、公知の多毛副作用薬剤であるVerapamil 、Diazoxide 、Pinacidil 、Latanoprost 、Minoxidil に対する、本人工毛球部の反応性を、呼吸量の変化を指標に検討した。
【0079】
▲1▼試験方法:上記の(2)に示したサイクロスポリンAを用いた試験において、サイクロスポリンAに代えて、被験薬剤として、Verapamil (0.001 、0.01、0.1 、1 、10μM )、Diazoxide (0.001 、0.01、0.1 、1 、10μM )、Pinacidil (0.01、0.1 、1 、10、100 μM )、Latanoprost (0.00001 、0.0001、0.001 、0.01、0.1nM )、Minoxidil (0.3 、1 、3 、10、30μM )を用いて、本評価方法における、本人工毛球部の反応性を検討した。なお、陰性コントロールとして、0.1%エタノールを、陽性コントロールとして、5μM CysAエタノール溶液を含有する上記のWilliam's E(+)培地を用いた。
【0080】
第4図のグラフの横軸に、被験薬剤の種類と濃度を、縦軸に相対呼吸量(%)を示した。
▲2▼結果:Diazoxide およびPinacidil を除き、両側t検定で、CysA、Verapamil 、Latanoprost 、Minoxidil に有意な呼吸量の増加が認められ、作用機序の異なる多毛副作用薬剤が、呼吸量の変化といった簡易な指標を適用した本評価方法で選択可能なことが見いだされ、本評価法の有用性が証明された。
【0081】
(5)本評価方法の一般的な有用性についての検討−2(第5図)
育毛主剤として知られているオタネニンジンエキス(丸善製薬社製)を、被験薬剤として、本評価方法と被験薬剤自体の有用性について検討した。
【0082】
1ステップ法または2ステップ法により得た本人工毛球部が形成されている、96穴プレートの各ウエルに、オタネニンジンエキスを含有する、William's E(+)培地を、80μl ずつ、各ウエルに添加し、37℃、5%CO2 下で、2日間さらに培養を行った。
【0083】
なお、陰性コントロールとして、0.1%エタノールを、陽性コントロールとして、5μM CysAエタノール溶液を含有する上記のWilliam's E(+)培地を用いた。
【0084】
アラマーブルー(Biosource:DAL1000) 、SFM培地、William's E(+)培地を、それぞれ、2:1:1(容量比)の割合で混合し、37℃に温めた後、40μl ずつ、各ウエルに添加し、37℃で6時間の反応を行った。反応終了後、各ウエルから、100μl ずつの反応液を採取し、蛍光測定用白色96穴プレート(Opaque Plate)(Coster:3912) の各ウエルに分注した。
【0085】
各ウエルの蛍光強度を、励起波長544nm、蛍光波長590nmに設定した、Labsystems Fluoroskan II(大日本製薬社)で測定し、細胞を培養していない反応液(培地そのもの)の蛍光強度を差し引いて、各条件下での相対呼吸量(%)を求めた。
【0086】
被験薬剤であるオタネニンジンエキスの最終濃度を、0.1、1.0、10.0ppm として評価を行った結果、0.1および1.0ppm で、相対呼吸量が、それぞれ、118±14%、110±11%に増加した。両側t検定を行った結果、0.1%で傾向差(0.05<p<0.1)が認められた(第5図)。
【0087】
この結果により、本人工毛球部を用いた本評価方法により、オタネニンジンエキスの育毛効果を検出できたことがわかる。これにより、オタネニンジンエキスに代えて、育毛効果が未知の物質を被験薬剤として用いた場合も、被験薬剤が育毛効果を有する場合には、この被験薬剤が本評価方法により検出され得ることが明らかとなった。
【0088】
なお、上記の本人工毛乳頭の製造工程における本人工毛乳頭の顕微鏡写真(4倍)を第6図(2ステップ法)および第7図(1ステップ法)に示す。
第6図においては、はじめは分散していた毛包間葉系細胞が1日で細胞集塊を形成し、これに外毛根鞘細胞を添加すると、添加後1日程度で、外毛根鞘細胞が毛包間葉系細胞の細胞集塊の周りに細胞接着した状態で細胞選別されることが示されており、2ステップ法の有用性が明らかとなっている。
【0089】
第7図においては、はじめは分散していた毛包間葉系細胞と外毛根鞘細胞が、時間経過と共に、毛包間葉系細胞が中心部で細胞集塊を形成しつつ、外毛根鞘細胞は、細胞選別によってその周りに細胞接着しており、この再構成過程は、2日間程度で完了することが示されている。
【0090】
【発明の効果】
本発明により、可能な限り、実際の毛包や毛球部の状態を反映し得る、育毛剤の新たな評価手段を提供し得る細胞培養素材と、この培養素材を用いた育毛剤の評価手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】単層培養法と細胞集塊培養法(本評価方法)による呼吸量の違いについて示した図面である。
【図2】単層培養法と細胞集塊培養法(本評価方法)によるCysAに対する反応性の違いを相対呼吸量(%)で示した図面である。
【図3】本評価方法における細胞外マトリックス成分の添加の有用性について検討した結果を示した図面である。
【図4】ヒトで多毛副作用が知られている薬剤を被験薬剤として、本評価方法の有用性について検討した結果を示した図面である。
【図5】育毛主剤として知られているオタネニンジンエキスを被験薬剤として、本評価方法の有用性について検討した結果を示した図面である。
【図6】2ステップ法による本人工毛球部の製造工程における細胞集塊の外観を示した図面である。
【図7】1ステップ法による本人工毛球部の製造工程における細胞集塊の外観を示した図面である。

Claims (15)

  1. 生体組織又は生体組織に準じた人工の場に接触していない人工毛球部であって、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に、上皮系細胞が当該細胞集塊を包埋する状態で細胞接着してなる、人工毛球部。
  2. 上皮系細胞及び毛包間葉系細胞が、細胞外マトリクス構成成分で接触処理された上皮系細胞及び毛包間葉系細胞である、請求項1記載の人工毛球部。
  3. 毛包間葉系細胞が毛乳頭細胞である、請求項1又は2記載の人工毛球部。
  4. 上皮系細胞が外毛根鞘細胞である、請求項1〜3のいずれかの請求項記載の人工毛球部
  5. 培養液中において、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させ、次いで、この細胞集塊と上皮系細胞を、培養液中で共存させて、細胞選別現象により、毛包間葉系細胞の細胞集塊の周囲に上皮系細胞を細胞接着させることにより、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に上皮系細胞が細胞接着している人工毛球部を製造する、人工毛球部の製造方法。
  6. 培養液中において、毛包間葉系細胞と上皮系細胞とを共存させて、細胞選別現象により、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させると共に、この細胞集塊の周囲に上皮系細胞を細胞接着させることにより、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に上皮系細胞が細胞接着している人工毛球部を製造する、人工毛球部の製造方法。
  7. 培養液中に細胞外マトリクス構成成分が含まれている、請求項5又は6記載の人工毛球部の製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれかの請求項記載の人工毛球部に対して被験薬剤を作用させた場合の人工毛球部における現象を、被験薬剤の毛髪に対する作用と関連付けて、毛髪に対する作用を有する被験薬剤を評価する、被験薬剤の評価方法。
  9. 請求項1〜4のいずれかの請求項記載の人工毛球部、及び、他の細胞種若しくは組織との共存下で、被験薬剤を作用させた場合の人工毛球部における現象を、被験薬剤の毛髪に対する作用と関連付けて、毛髪に対する作用を有する被験薬剤を評価する、被験薬剤の評価方法。
  10. 請求項1〜4のいずれかの請求項記載の人工毛球部における内因性の物質に関する現象を、その内因性の物質が関わるべき毛髪における現象と関連付けて、毛髪に関連する内因性の物質を見出す、毛髪関連物質の検索方法。
  11. 請求項1〜4のいずれかの請求項記載の人工毛球部、及び、他の細胞種若しくは組織との共存下において、人工毛球部における内因性の物質に関する現象を、その内因性の物質が関わるべき毛髪における現象と関連付けて、毛髪に関連する内因性の物質を見出す、毛髪関連物質の検索方法。
  12. 請求項1〜4のいずれかの請求項記載の人工毛球部を構成要素として含み、被験薬剤を作用させた場合の人工毛球部における現象を、被験薬剤の毛髪に対する作用と関連付けて、毛髪に対する作用を有する被験薬剤を評価する方法を行うためのキット。
  13. 培養液中において、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させ、次いで、この細胞集塊と上皮系細胞を、培養液中で共存させて、細胞選別現象により、毛包間葉系細胞の細胞集塊の周囲に上皮系細胞を細胞接着させることにより製造される、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に上皮系細胞が細胞接着している人工毛球部
  14. 培養液中において、毛包間葉系細胞と上皮系細胞とを共存させて、細胞選別現象により、毛包間葉系細胞の細胞集塊を形成させると共に、この細胞集塊の周囲に上皮系細胞を細胞接着させることにより製造される、毛包間葉系細胞の細胞集塊の外側に上皮系細胞が細胞接着している人工毛球部
  15. 培養液中に細胞外マトリクス構成成分が含まれている、請求項13又は14記載の人工毛球部
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