JP4821509B2 - 集合住宅用インターホンシステム - Google Patents

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Description

本発明は、集合住宅の共用玄関に設置された共用部装置と各住戸にそれぞれ設置される住戸機の何れか1台との間で択一的に通信路を確立して通話可能とする集合住宅用インターホンシステムに関し、特に共用部装置と1台の住戸機とが一対一で通話する個別通話の他に、集合住宅の共用部や管理人室などに設置された一斉放送装置により複数の住戸機へ音声を一斉に放送することができる集合住宅用インターホンシステムに関するものである。
従来、集合住宅の共用玄関に設置され音声の入出力が可能な共用部装置(ロビーインターホン)と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され共用部装置とは伝送線路を介して接続されるとともに共用部装置が有する選択手段(テンキーなど)を来訪者が操作することにより選択されると共用部装置との間で通信路を確立する複数台の住戸機(インターホン親機や住宅情報盤など)と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され住戸機とは通話用の子器接続線を介して接続されるドアホン子器と、集合住宅の共用部若しくは管理人室に設置され各住戸機とは伝送線路を介して接続されるとともに一部又は全部の住戸機に対して一斉に音声を放送する一斉放送装置とを備えた集合住宅用インターホンシステムが提供されている(例えば、特許文献1又は2参照)。
特開平6−14125号公報 特開2003−16557公報
ところで、集合住宅の規模によっては一斉放送装置から各住戸機までの伝送線路の配線長が数百メートルから数キロメートルにも及ぶ場合があり、また住戸機の接続台数及び、幹線機器(共用部装置や一斉放送装置)の台数も集合住宅の規模によって異なるため、配線、住戸機、幹線機器のインピーダンスに起因した伝送線路の伝送ロスも悪化して住戸機における一斉放送の音量が低下してしまい、住戸機間に音量のばらつきが生じるという問題があった。尚、音量の低下に対しては一斉放送用音声信号を増幅することで対処可能であるが、個々の住戸機間における音量のばらつきを抑えることはできない。ここで、「伝送ロス」とは、伝送系の2地点間(上述の例では一斉放送装置と各住戸機の間)において、送信信号に対する受信信号の振幅や位相の変化及びその変化量と定義される。
また、一斉放送装置から各住戸機へ伝送される一斉放送用の音声信号に外来のノイズが重畳した場合、各住戸機において一斉放送の音声が聞き取り難くなるという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、複数の住戸機間における一斉放送の音量のばらつきを抑えるとともにスピーカから送出されるノイズの影響を低減することができることができる集合住宅用インターホンシステムを提供することにある。
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、集合住宅の共用玄関に設置され音声の入出力が可能な共用部装置と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され共用部装置とは伝送線路を介して接続されるとともに共用部装置が有する選択手段を来訪者が操作することにより選択されると共用部装置との間で通信路を確立する複数台の住戸機と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され住戸機とは通話用の子器接続線を介して接続されるドアホン子器と、集合住宅の共用部若しくは管理人室に設置され各住戸機とは伝送線路を介して接続されるとともに一部又は全部の住戸機に対して一斉に音声を放送する一斉放送装置とを備え、伝送線路は、少なくとも選択手段の操作に伴って発生し個別通話の開始を指示する制御信号を伝送する制御線と、音声信号を伝送する信号線とからなり、住戸機は、共用部装置並びにドアホン子器との間で各々信号線及び子器接続線を介した通話を行う通話手段と、少なくとも一斉放送の音声を鳴動するスピーカと、信号線を通話手段に接続する状態とスピーカに接続する状態とを択一的に切り換える個別通話/一斉放送切換手段と、個別通話/一斉放送切換手段とスピーカの間に設けられ一斉放送の音量が所定範囲の値となるように補正する音量補正手段と、制御線を介して伝送される制御信号に基づいて個別通話/一斉放送切換手段を制御する制御手段とを備え、各住戸機では、制御線を介して一斉放送開始を指示する制御信号が伝送され、当該制御信号を受信したときに制御手段が個別通話/一斉放送切換手段を制御して信号線をスピーカに接続する状態に切り換えさせる集合住宅用インターホンシステムであって、一斉放送装置は、信号線を介してトレーニング信号を送信するトレーニング信号送信手段を有し、音量補正手段は、信号線を介して受信するトレーニング信号に基づいて一斉放送装置から住戸機に至るまでの信号線経路の伝送ロスを推定する伝送ロス推定手段と、一斉放送用音声信号に対して伝送ロス推定手段で推定した伝送ロスを補償する伝送ロス補償手段と、一斉放送用音声信号を含む入力信号の無音区間を検出するとともに無音区間を検出している間は入力信号を減衰させる無音区間減衰手段と、一斉放送用音声信号を含む入力信号の一斉放送用音声信号以外のノイズ成分を推定するノイズ成分推定手段とを有し、無音区間減衰手段は、無音区間を検出している間は入力信号の減衰量を所定値まで徐々に増大させるとともに、イズ成分推定手段で推定されたノイズ成分の増大従って、減衰量を所定値まで増大させるのに要する推移時間を短くすることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、一斉放送の音量が所定範囲の値となるように補正する音量補正手段を各住戸機が備えているため、一斉放送の対象となる住戸機の台数や各住戸機までの配線長に応じて一斉放送装置で一斉放送用音声信号の増幅度を調整することなく、複数の住戸機間における一斉放送の音量のばらつきを抑えることができ、しかも、音量補正手段においては、無音区間減衰手段が一斉放送用音声信号を含む入力信号の無音区間を検出するとともに無音区間を検出している間は入力信号を減衰させるので、一斉放送用音声信号以外のノイズが増幅されるのを防いでスピーカから送出されるノイズの影響を低減することができる。さらに、イズ成分推定手段で推定されたノイズ成分の増大従って、減衰量を所定値まで増大させるのに要する推移時間を短くするので、有音区間から無音区間へ移行したときに伝送ロス補償手段によりノイズ成分が増大されるのを抑制し、一斉放送を聞き取りやすくできる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の集合住宅用インターホンシステムの構成例を図1に示す。本実施形態では、集合住宅の共用玄関に設置される共用部装置(ロビーインターホン)1と、各住戸にそれぞれ設置される複数台の住戸機2とを備え、ロビーインターホン1と住戸機2とが伝送線路を介して接続されている。伝送線路は、ロビーインターホン1に接続される幹線L1と、各住戸機2にそれぞれ接続される分岐線L2とを含み、さらに幹線L1を複数系統(図示せず)に分配するための幹線制御装置3が設けられている。この伝送線路としては、3対以上のペア線をシース内に備える多対ツイストペアケーブルを用いており、図示例ではロビーインターホン1と住戸機2との間で音声信号を伝送する通話線Laと、ロビーインターホン1が具備するカメラ(図示せず)で撮像された映像信号を伝送する映像線Lbと、ロビーインターホン1が有する選択手段(後述する)により選択された住戸機2を指定する制御信号を伝送する制御線Lcとにそれぞれペア線を用いている。つまり、図示例の伝送線路では3対のペア線を用いている。ここで、映像線Lbを介して伝送される映像信号はロビーインターホン1において周波数変調され、後述するように各住戸機2に設けた映像処理部12で周波数復調されてモニタ部13に表示される。
図示は省略するが、ロビーインターホン1は音声を入出力するマイクロホン及びスピーカと、来訪者を撮像するカメラと、住戸番号を指定するための番号キーと呼出釦を有する選択手段とを備え、来訪者が番号キーを操作して訪問先の住戸番号を選択した後に呼出釦を操作すると住戸番号に対応する住戸機2を選択したことになる。ここで、ロビーインターホン1には通話線La及び制御線Lcを介して一斉放送装置(警報監視盤)5が接続されており、ロビーインターホン1で選択された住戸番号が制御線Lcを介して警報監視盤5に伝送されると、警報監視盤5が当該住戸番号に対応する住戸機2に対して制御線Lcを介して制御信号(呼出コマンド)を送出する。
一方、住戸機2は、音声を入出力するマイクロホン21及びスピーカ22を備え、マイクロホン21とスピーカ22とはそれぞれ増幅器23a,23bを介して通話処理部24に接続されている。また、通話処理部24には受話側並びに送話側の各伝送経路と2線の通話線Laとを2線4線変換する2線4線変換部25が増幅器26a,26bを介して接続されている。通話処理部24は、通話線Laを介して伝送されてくる音声信号(受話信号)とマイクロホン21から出力される音声信号(送話信号)のレベルを比較することで通話状態(受話状態又は送話状態)を推定し、受話状態と推定したときには送話信号の伝送経路に損失を挿入し、送話状態と推定したときには受話信号の伝送経路に損失を挿入することで受話モードと送話モードを切り換える音声スイッチや、マイクロホン21とスピーカ22の音響結合によって生じる音響エコーを消去するためのエコーキャンセラなどを具備する。但し、このような音声スイッチやエコーキャンセラは従来周知であるから詳細な構成及び動作の図示並びに説明は省略する。したがって、ロビーインターホン1と住戸機2との間で通話線Laを通して音声信号を授受することができ、来訪者がロビーインターホン1を用いるとともに居住者が住戸機2を用いることによって、来訪者と居住者との間で音声通話が可能となる。
また住戸機2には、分岐線L2の通話線Laと映像線Lbをそれぞれ通話信号(受話信号及び送話信号)の伝送経路(以下、「通話路」と呼ぶ。)と映像信号の伝送経路に分離する幹線インタフェース部14が設けられている。映像信号の伝送経路は映像処理部12に接続され、通話路は通話/一斉放送切換部15に接続されている。通話/一斉放送切換部15は、幹線インタフェース部14に接続された通話路を、通話路切換部16に接続する状態と、後述する音量補正部30に接続する状態とを択一的に切り換えるものである。また通話路切換部16は、2線4線変換部25に接続された通話路を、通話/一斉放送切換部15に接続する状態と、後述する子器インタフェース部18に接続する状態と、同一住戸内に設置された別の住戸機(図示せず)に接続する状態とを択一的に切り換えるものである。
通話路切換部16に接続された子器インタフェース部18には子器接続線L3を介してドアホン子器6が接続される。ドアホン子器6は集合住宅の各住戸の玄関先に配置されるものであってマイクロホン及びスピーカを備える。したがって、通話路切換部16が2線4線変換部25に接続された通話路を子器インタフェース部18に接続する状態に切り換えられているときにドアホン子器6と住戸機2との間での通話が可能になっている。また、ドアホン子器6にはテレビカメラが設けられ、子器インタフェース部18では子器接続線L3を介して伝送される音声信号と映像信号を分離し、分離した映像信号を伝送線路を介して映像処理部12に出力してモニタ部13に表示することができるようになっている。さらにドアホン子器6には呼出釦が設けられ、呼出釦が操作されたときに子器接続線L3に呼出信号を送出する機能を有し、住戸機2では呼出信号を検出したときに報知音生成部27で生成された呼出音がスピーカ22から送出されるようになっている。
住戸機2において、モニタ部13には液晶表示器あるいはCRTが用いられる。映像線Lbを通して住戸機2に入力される映像信号は、幹線インタフェース部14で平衡−不平衡変換され、さらに増幅器で増幅された後に映像処理部12において周波数復調される。また、子器接続線L3を通して住戸機2に入力される映像信号も、子器インタフェース部18で平衡−不平衡変換され、さらに増幅器で増幅された後に映像処理部12において周波数復調される。そして、映像処理部12から出力された映像信号は、モニタ部13に入力されることによってモニタ部13の画面に映像を表示する。つまり、ロビーインターホン1やドアホン子器6のカメラにおいて撮像された来訪者の映像が住戸機2のモニタ部13に表示されるから、住戸内の居住者が来訪者を確認することができるのである。
また報知音生成部27は、ロビーインターホン1やドアホン子器6からの呼出等を報知するための報知音を生成し、生成した報知音を増幅器28aを介してスピーカ22に出力するとともに当該報知音をバックトーンとして分岐線L2又は子器接続線L3にも出力する。すなわち、報知音生成部27には増幅器28bを介してバックトーン送出路切換部17が接続されており、このバックトーン送出路切換部17がバックトーンの送出先を分岐線L2と子器接続線L3とに択一的に切り換えるようになっている。
住戸機2には、CPUを主構成要素とし内部回路を制御する主制御部10が設けられ、主制御部10には制御線Lcとのインタフェースとなる制御信号送受信部11が接続される。制御信号送受信部11は、主制御部10から出力された制御信号を制御線Lcに送出し、制御線Lcから受信した制御信号を主制御部10に引き渡す機能を有する。
ところで、分岐線L2は分岐器7を介して幹線L1から分岐され、幹線制御装置3においては各系統の幹線L1を直結している。したがって、ロビーインターホン1から送出された制御信号は制御線Lcに接続されるすべての住戸機2に伝送される。ここに、住戸機2の主制御部10には個別にアドレス(たとえば、住戸番号)が設定されており、ロビーインターホン1においてアドレスを選択することによって、アドレスを指定する制御信号(呼出コマンド)が警報監視盤5から制御線Lcを介して全ての住戸機2に伝送することが可能になっている。住戸機2の主制御部10は、制御信号に含まれるアドレスが自己のアドレスであれば映像処理部12やモニタ部13を起動してロビーインターホン1のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ部13に表示させるとともに、報知音生成部27に生成させた報知音(呼出音)をスピーカ22から送出させる。そして、呼出音に応じて居住者が住戸機2の応答釦(図示せず)を押操作すれば、主制御部10が通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を通話路切換部16に接続する状態に切り換えさせるとともに通話路切換部16を制御して2線4線変換部25に接続された通話路を通話/一斉放送切換部15に接続する状態に切り換えさせてロビーインターホン1との間に通信路を確立することにより、ロビーインターホン1と選択された住戸機2との間でのみ通話可能にすることができるとともに、選択された住戸機2でのみカメラで撮像された来訪者をモニタ部13に表示することが可能になる。尚、ロビーインターホン1において選択された住戸機2がロビーインターホン1との間で通信路を確立している状態は、ロビーインターホン1または住戸機2において適宜の操作釦を用いた通話終了が検出されると終了する。
また、ドアホン子器6の呼出釦が押操作されて子器接続線L3に呼出信号が送出されると、呼出信号を検出した住戸機2の主制御部10が映像処理部12やモニタ部13を起動してドアホン子器6のカメラにおいて撮像された来訪者の映像を住戸機2のモニタ部13に表示させるとともに、報知音生成部27に生成させた報知音(呼出音)をスピーカ22から送出させる。そして、呼出音に応じて居住者が住戸機2の応答釦(図示せず)を押操作すれば、主制御部10が通話路切換部16を制御して2線4線変換部25に接続された通話路を子器インタフェース部18に接続する状態に切り換えさせてドアホン子器6との間に通信路を確立することにより、ドアホン子器6と住戸機2との間で通話可能にすることができるとともカメラで撮像された来訪者をモニタ部13に表示することが可能になる。
一方、警報監視盤5は集合住宅の管理人室などに設置され、通話線Laを介して各住戸機2との間で通話並びに一斉放送を行う機能や、制御線Lcを介して各住戸機2に一斉放送の開始及び終了を指示する機能などを有している。例えば、警報監視盤5から全ての住戸機2に対して一斉放送を行う場合、警報監視盤5から一斉放送の開始を指示する制御信号(一斉放送開始コマンド)が制御線Lcを介して各住戸機2に送信され、この制御信号を受信した各住戸機2では、一斉放送開始コマンドに応じて主制御部10が通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を音量補正部30に接続する状態に切り換えさせて警報監視盤5との間に通信路が確立され、警報監視盤5から送出される一斉放送の音声信号(以下、「一斉放送用音声信号」と呼ぶ。)が通話線Laを介して各住戸機2に伝送される。そして、各住戸機2においては音量補正部30で一斉放送用音声信号の音量が自動的に補正され、音量補正された一斉放送用音声信号がスピーカ22から送出される。
警報監視盤5は、図1に示すようにCPUを主構成要素とする制御部50と、制御部50と制御線Lcとのインタフェースとなる制御信号送受信部51と、通話用のハンドセット(送受話器)52と、送話信号及び受話信号を増幅する増幅器53a,53bと、受話側並びに送話側の各伝送経路と2線の通話線Laとを2線4線変換する2線4線変換部54と、制御部50からの指示に応じて後述するトレーニング信号を送信するトレーニング信号送信部55と、2線4線変換部54の送話側の伝送線路をハンドセット52に接続する状態とトレーニング信号送信部55に接続する状態とに択一的に切り換える音声/トレーニング信号切換部56と、音声/トレーニング信号切換部56を2線4線変換部54を介して通話線Laに接続する状態と2線4線変換部54を介さずに増幅器58を介して通話線Laに接続する状態とに択一的に切り換える通話/一斉放送切換部57と、ロビーインターホン1に接続された通話線Laと幹線制御装置3に接続された通話線Laとの間に挿入された開閉スイッチ部59とを備えている。尚、図示は省略するが、警報監視盤5には住戸番号を指定するための番号キーと呼出釦を有する選択手段とが設けられ、管理人が番号キーを操作して何れかの住戸番号を選択した後に呼出釦を操作することで住戸番号に対応する住戸機2を選択すれば、選択した住戸機2との間に通信路が形成されてハンドセット52により当該住戸機2との間でのみ通話を行うことができる。また、かかる通話時には、制御部50によって音声/トレーニング信号切換部56が2線4線変換部54の送話側の伝送線路をハンドセット52に接続する状態に切り換えられるとともに通話/一斉放送切換部57が音声/トレーニング信号切換部56を2線4線変換部54を介して通話線Laに接続する状態に切り換えられ、且つ開閉スイッチ部59が開成されてロビーインターホン1が幹線L1から切り離される。
トレーニング信号送信部55は、単一周波数のトーン信号からなるトレーニング信号を生成して出力するものであって、トレーニング信号は音声/トレーニング信号切換部56から通話/一斉放送切換部57を経て増幅器58で増幅された後に通話線Laを介して各住戸機2に伝送される。
音量補正部30は、図2(a)に示すように通話線Laを介して受信したトレーニング信号に基づいて警報監視盤5から住戸機2に至るまでの通話線Laの伝送ロスを推定する伝送ロス推定手段と、一斉放送用音声信号に対して伝送ロス推定手段で推定した伝送ロスによる損失を補償する伝送ロス補償手段と、入力信号X(n)の無音区間を検出するとともに無音区間を検出している間は入力信号X(n)を減衰させる無音区間減衰部42と、一斉放送用音声信号を含む入力信号の一斉放送用音声信号以外のノイズ成分を推定するノイズ成分推定手段と、トレーニング信号を無音区間減衰部42を通さずに伝送ロス推定手段に入力する手段(切換スイッチ43)とを備える。伝送ロス補償手段は一斉放送用音声信号を増幅する増幅器39からなり、伝送ロス推定手段は、入力信号(トレーニング信号)X(n)の信号パワー(瞬時パワー)を推定するパワー推定部40と、パワー推定部40で推定されたトレーニング信号の信号パワーPsに基づいて増幅器39の増幅度Gを算出する増幅度算出部41とからなる。パワー推定部40は、図2(b)に示すように入力信号X(n)の絶対値の時間平均値(絶対平均値)PX(n)を求める絶対平均値算出部401と、絶対平均値算出部401で算出される時系列の絶対平均値PX(n)を平滑化する絶対平均値平滑部402とで構成される。尚、本実施形態における音量補正部30は、通話処理部24並びに報知音生成部27とともにDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)のハードウェアをソフトウェアで制御することによって実現されているが、これに限定されるものではなく、DSPの代わりにCPUを用いたり、あるいはアナログ回路やディジタル回路で構成することも可能である。
絶対平均値算出部401は、所定のサンプリング時間でサンプリングされた入力信号X(n)を周波数弁別するバンドパスフィルタ401aと、周波数弁別後の入力信号X(n)の絶対値を求める絶対値算出部401bと、入力信号X(n)の絶対値を所定の時間フレーム(サンプリング数M)で除する除算部401cと、サンプリング数Mで除算された入力信号X(n)の絶対値の総和を求める総和算出部401dとからなり、結局のところ、絶対平均値算出部401では下記の式(1)の演算を行っている。
Figure 0004821509
また絶対平均値平滑部402は、正の定数α(<1)を絶対平均値Px(n)に乗算する乗算器402aと、遅延シフトレジスタ402bと、遅延シフトレジスタ402bで遅延させた瞬時パワー推定値Ps(n-1)に正の定数(1−α)を乗算する乗算器402cと、2つの乗算器402a,402cの出力を加算する加算器402dとからなり、結局のところ、絶対平均値平滑部402では下記の式(2)の演算を行っている。
Figure 0004821509
また、増幅度算出部41では、予め設定した信号パワーの基準値Prをパワー推定部40で推定された信号パワーの推定値Ps(n)で除算することによって増幅度G(=Pr/Ps)を算出し、算出した増幅度Gを増幅器39に設定する。
ノイズ成分推定部44は、図3に示すように入力信号(一斉放送用音声信号)x(n)の瞬時パワーの短時間平均値Xsを算出する短時間平均値算出部44aと、瞬時パワーの長時間平均値Xnを算出する長時間平均値算出部44bと、短時間平均値Xsと長時間平均値Xnを比較することで入力信号x(n)が音声成分を含んでいる音声区間を検出する音声区間検出部44cと、入力信号x(n)に含まれるノイズ成分レベルの推定値Xn’を算出するノイズ成分レベル算出部44dとを有する。
短時間平均値算出部44aは、入力信号の瞬時値(絶対値)X(n)に正の定数ρ1(<1)を乗算した値と、遅延させた短時間平均値Xs(n−1)に正の定数(1−ρ1)を乗算した値とを加算する処理、すなわち、下記の式(3)の演算処理を行うことで短時間平均値Xs(n)を算出している。
Xs(n)=(1-ρ1)×Xs(n−1)+ρ1×X(n)…(3)
また長時間平均値算出部44bは、入力信号の瞬時値X(n)に正の定数ρ2(0<ρ2<ρ1<1)を乗算した値と、遅延させた長時間平均値Xn(n−1)に正の定数(1−ρ2)を乗算した値とを加算する処理、すなわち、下記の式(4)の演算処理を行うことで長時間平均値Xn(n)を算出している。
Xn(n)=(1-ρ2)×Xn(n−1)+ρ2×X(n)…(4)
音声区間検出部44cは、短時間平均値Xs(n)と長時間平均値Xn(n)との比(=Xs(n)/Xn(n))を所定の閾値δと比較し、δ<Xs(n)/Xn(n)ならば音声区間、Xs(n)/Xn(n)≦δならば非音声区間と判定し、音声区間と判定した場合に音声区間検出フラグSDF1を1とし、非音声区間と判定した場合に音声区間検出フラグSDF1を0とする。
ノイズ成分レベル算出部44dは、音声区間検出フラグSDF1が0のとき、つまり、入力信号x(n)の非音声区間が検出されているときに入力信号の瞬時値X(n)に正の定数ρ3(ρ3<1、但し、ρ3はρ2と異なる値でも同じ値でも構わない)を乗算した値と、遅延させたノイズ成分レベルXn’(n−1)に正の定数(1−ρ3)を乗算した値とを加算する処理、すなわち、下記の式(5)の演算処理を行うことでノイズ成分レベルXn’(n)を算出している。但し、音声区間検出フラグSDF1が1のとき、つまり、入力信号x(n)の音声区間が検出されているときには下記の式(5)の処理は行わずにノイズ成分レベルXn’(n)を更新しない(下記式(6)参照)。
Xn’(n)=(1-ρ3)×Xn’(n−1)+ρ3×X(n)…(5)
Xn’(n)=Xn’(n−1)…(6)
無音区間減衰部42は、入力信号X(n)の信号レベルが所定値未満である区間を無音区間、所定値以上である区間を有音区間として検出するとともに、有音区間を検出している間は減衰量を0dBとし、無音区間を検出した場合は、図4に示すように推移時間Tm秒(m=1,2,…)で0dBからLdB(>0dB)まで徐々に減衰量を増加しながら入力信号X(n)を減衰させる(図4における実線参照)。また無音区間が継続する場合、無音区間減衰部42は減衰量をLdBに固定して入力信号X(n)を減衰させ、有音区間を検出したら直ちに減衰量を0dBに戻している(図4における破線参照)。さらに無音区間減衰部42では、伝送ロス推定手段で推定された伝送ロス(増幅度算出部41で算出する増幅度G)の増大、若しくはノイズ成分推定部44で推定されたノイズ成分レベルの増大の少なくとも何れか一方に従って推移時間Tmを短くしている(T2<T1)。つまり、伝送ロスが相対的に大きいときは増幅度Gも大きくなり、有音区間から無音区間に移行したときに無音区間に存在するノイズ(例えば、外来の輻射ノイズや住戸機2等の機器から発生するノイズなど)が増幅器39で大きく増幅されてしまい、一斉放送の音声が聞き取りにくくなってしまう虞があり、また、そもそもノイズが大きい場合にも一斉放送の音声が聞き取りにくくなってしまう虞がある。そこで、上述のように増幅度Gが増大するに従って推移時間Tmを短くするか、あるいは、ノイズレベルの推定値が増大するに従って推移時間Tmを短くすれば、有音区間から無音区間へ移行したときにノイズが増大されるのを抑制して一斉放送を聞き取りやすくできる。なお、入力信号X(n)をパワー推定部40に入力する状態と無音区間減衰部42に入力する状態とを択一的に切り換える切換スイッチ43が無音区間減衰部42及びパワー推定部40の入力側に設けられる。
次に、本実施形態において警報監視盤5より複数台の住戸機2に対して一斉放送を行う際の警報監視盤5並びに各住戸機2の動作を図5のフローチャートを参照しながら説明する。まず、一斉放送の開始に当たって管理人が警報監視盤5に設けられた一斉放送釦(図示せず)を押操作すると(ステップS11)、警報監視盤5では、制御部50が一斉放送の開始を指示する制御信号(一斉放送開始コマンド)を制御信号送受信部51から制御線Lcを介して各住戸機2に対して伝送し、さらに、制御信号の送信完了から第1の所定時間が経過したら、音声/トレーニング信号切換部56を制御してトレーニング信号送信部55を通話/一斉放送切換部57に接続する状態に切り換えるとともに通話/一斉放送切換部57を2線4線変換部54を介さずに通話線Laに接続する状態に切り換えた後、トレーニング信号送信部55からトレーニング信号を送信させる(ステップS12)。
警報監視盤5から送信された制御信号は、一斉放送の対象である全ての住戸機2で受信される。制御信号を受信した住戸機2では、主制御部10が一斉放送開始コマンドに応じて一斉放送開始のための準備を行う。すなわち、主制御部10は、通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を音量補正部30に接続する状態に切り換えさせてトレーニング信号の受信可能状態とするとともに音量補正部30を動作させ(ステップS21)、警報監視盤5から通話線Laを介して伝送されるトレーニング信号を受信すれば伝送ロスの推定処理を開始する。音量補正部30では、主制御部10から動作開始の指示を受けると切換スイッチ43が無音区間減衰部42からパワー推定部40に切り換わる。そして、パワー推定部40が入力信号X(n)の信号パワーの推定を行い、推定値Ps(n)が所定の閾値を超えたときにトレーニング信号を受信したと判断し(ステップS22)、トレーニング信号の受信時点から第2の所定時間経過後の推定値Ps(n)をトレーニング信号の信号パワーPsとし(ステップS23,S24)、増幅度算出部41が基準値Prを信号パワーPsで除算して求めた増幅度Gを増幅器39に設定する(ステップS25)。なお、増幅器39に増幅度Gが設定された後、切換スイッチ43がパワー推定部40から無音区間減衰部42に切り換わる。
警報監視盤5では、送信開始から第3の所定時間経過後に制御部50がトレーニング信号送信部55によるトレーニング信号の送信を停止させ(ステップS13)、さらに、音声/トレーニング信号切換部56を制御してハンドセット52を通話/一斉放送切換部57に接続する状態に切り換える。そして、管理人がハンドセット52を使って一斉放送を行えば(ステップS14)、ハンドセット52から出力される一斉放送用音声信号が音声/トレーニング信号切換部56から通話/一斉放送切換部57及び増幅器58を経て通話線Laに送出される。そして、警報監視盤5から通話線Laを介して伝送される一斉放送用音声信号は、幹線インタフェース部14から通話/一斉放送切換部15を介して音量補正部30に入力され、増幅器39で増幅することによって音量が補正されるため、スピーカ22からは適切な音量で一斉放送の音声が出力される(ステップS26)。
そして、一斉放送を終了するにはハンドセット52をオンフックすればよい。ハンドセット52がオンフックされると(ステップS15)、警報監視盤5の制御部50は、一斉放送の終了を指示する制御信号(一斉放送終了コマンド)を制御信号送受信部51から制御線Lcを介して各住戸機2に対して伝送した後、開閉スイッチ部59を閉成して待機状態に戻る。また、制御信号を受信した住戸機2では、主制御部10が音量補正部30の動作を停止させるとともに、通話/一斉放送切換部15を制御して幹線インタフェース部14に接続された通話路を通話路切換手段16に接続する状態に切り換えさせて待機状態に戻る。
上述のように本実施形態によれば、一斉放送の音量を増幅度算出部41によって基準値Prに略等しくなるように補正する音量補正部30を各住戸機2が備えているため、一斉放送の対象となる住戸機2の台数や各住戸機2までの配線長に応じて一斉放送装置(警報監視盤5)で一斉放送用音声信号の増幅度を調整したり、あるいは施工時に配線長に応じて各住戸機2毎に伝送線路のインピーダンスを調整するといった手間をかけることなく、複数の住戸機2間における一斉放送の音量のばらつきを抑えることができる。しかも、音量補正部30においては、無音区間減衰部42が一斉放送用音声信号を含む入力信号X(n)の無音区間を検出するとともに無音区間を検出している間は入力信号X(n)を減衰させるので、一斉放送用音声信号以外のノイズが増幅器39で増幅されるのを防いでスピーカ22から送出されるノイズの影響を低減することができる。さらに、伝送ロス推定手段で推定された伝送ロスの増大若しくはノイズ成分推定部44で推定されたノイズ成分の増大の少なくとも何れか一方に従って、無音区間減衰部42が減衰量を所定値まで増大させるのに要する推移時間Tmを短くするので、有音区間から無音区間へ移行したときに伝送ロス補償手段(増幅器39)によりノイズが増大されるのを抑制し、一斉放送を聞き取りやすくできる。
本発明の実施形態を示すシステム構成図である。 (a)は同上における音量補正部のブロック図、(b)はパワー推定部のブロック図である。 同上におけるノイズ成分推定部のブロック図である。 同上における音量補正部の動作説明図である。 同上の一斉放送時の動作を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
1 ロビーインターホン(共用部装置)
2 住戸機
5 警報監視盤(一斉放送装置)
21 マイクロホン
22 スピーカ
30 音量補正部
42 無音区間減衰部
44 ノイズ成分推定部

Claims (1)

  1. 集合住宅の共用玄関に設置され音声の入出力が可能な共用部装置と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され共用部装置とは伝送線路を介して接続されるとともに共用部装置が有する選択手段を来訪者が操作することにより選択されると共用部装置との間で通信路を確立する複数台の住戸機と、集合住宅の各住戸にそれぞれ設置され住戸機とは通話用の子器接続線を介して接続されるドアホン子器と、集合住宅の共用部若しくは管理人室に設置され各住戸機とは伝送線路を介して接続されるとともに一部又は全部の住戸機に対して一斉に音声を放送する一斉放送装置とを備え、
    伝送線路は、少なくとも選択手段の操作に伴って発生し個別通話の開始を指示する制御信号を伝送する制御線と、音声信号を伝送する信号線とからなり、
    住戸機は、共用部装置並びにドアホン子器との間で各々信号線及び子器接続線を介した通話を行う通話手段と、少なくとも一斉放送の音声を鳴動するスピーカと、信号線を通話手段に接続する状態とスピーカに接続する状態とを択一的に切り換える個別通話/一斉放送切換手段と、個別通話/一斉放送切換手段とスピーカの間に設けられ一斉放送の音量が所定範囲の値となるように補正する音量補正手段と、制御線を介して伝送される制御信号に基づいて個別通話/一斉放送切換手段を制御する制御手段とを備え、
    各住戸機では、制御線を介して一斉放送開始を指示する制御信号が伝送され、当該制御信号を受信したときに制御手段が個別通話/一斉放送切換手段を制御して信号線をスピーカに接続する状態に切り換えさせる集合住宅用インターホンシステムであって、
    一斉放送装置は、信号線を介してトレーニング信号を送信するトレーニング信号送信手段を有し、
    音量補正手段は、信号線を介して受信するトレーニング信号に基づいて一斉放送装置から住戸機に至るまでの信号線経路の伝送ロスを推定する伝送ロス推定手段と、一斉放送用音声信号に対して伝送ロス推定手段で推定した伝送ロスを補償する伝送ロス補償手段と、一斉放送用音声信号を含む入力信号の無音区間を検出するとともに無音区間を検出している間は入力信号を減衰させる無音区間減衰手段と、一斉放送用音声信号を含む入力信号の一斉放送用音声信号以外のノイズ成分を推定するノイズ成分推定手段とを有し、
    無音区間減衰手段は、無音区間を検出している間は入力信号の減衰量を所定値まで徐々に増大させるとともに、イズ成分推定手段で推定されたノイズ成分の増大従って、減衰量を所定値まで増大させるのに要する推移時間を短くすることを特徴とする集合住宅用インターホンシステム。
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