まず、本発明が適用可能な射出成形機の射出装置及び加熱シリンダについて図1乃至図3を参照しながら説明する。図1は射出装置10の断面図である。
射出装置10は、加熱シリンダ(単にシリンダとも称する)11と加熱シリンダ11の中で回転及び前後移動可能なスクリュ13を有する。シリンダ11の先端には、ノズル口106が形成された射出ノズル105が設けられる。シリンダ11の所定の位置に樹脂供給口112が形成される。樹脂供給口112には、接続筒113を介してホッパ12が接続され、ホッパ12内の樹脂ペレット115が接続筒113及び樹脂供給口112を通ってシリンダ11内に供給される。また、シリンダ11の外周には、面状のバンドヒータh1,h2,h3が取り付けられている。バンドヒータh1,h2,h3に通電することによりシリンダ11内で樹脂ペレット115を加熱し、溶融させることができる。
スクリュ13は、フライト部102、フライト部102の前端に設けられたスクリュヘッド107及びシール部108を有する。フライト部102は、スクリュ13本体の外周面に螺旋状に形成されたフライト103を有し、フライト103によって螺旋状の溝104が形成される。また、フライト部102には後方から前方にかけて順に、ホッパ12から落下した樹脂ペレット115が供給され前方に送られる送りゾーンS1、供給された樹脂ペレット115を圧縮しながら溶融させる圧縮ゾーンS2、及び溶融させられた樹脂を一定量計量する計量ゾーンS3が形成される。なお、加熱シリンダ11のゾーン分割は、送りゾーンS1,圧縮ゾーンS2,計量ゾーンS3の3つのゾーンに限ることなく、3つ以上のゾーンに分割してバンドヒータを各ゾーンに独立に設けることとしてもよい。
計量工程時にスクリュ13を正方向に回転させると、樹脂ペレット115は樹脂供給口112から送りゾーンS1に供給され、溝104内を前進(図における左方に移動)させられる。それに伴って、スクリュ13が後退(図における右方に移動)させられ、樹脂がスクリュヘッド107の前方に蓄えられる。なお、溝104内の樹脂は、送りゾーンS1においてペレットの形状のままであり、圧縮ゾーンS2において半溶融状態になり、計量ゾーンS3において完全に溶融させられて液状になる。そして、射出工程時に、スクリュ13を前進させると、スクリュヘッド107の前方に蓄えられた液状の樹脂は、射出ノズル105から射出され、金型装置の固定金型のキャビティ空間に充填される。
図2は、上述の加熱シリンダ11の温度を制御するための温度制御装置の構成を示す図である。図2に示すように、加熱シリンダ11及び射出ノズル105は、冷却シリンダ14から射出ノズル105に至る長手方向沿って、4つのゾーンに区分されている。ここでは、備えられたヒータに対応して4つのゾーンを冷却シリンダ14に隣接したゾーンから順に、第1のゾーン21、第2のゾーン22、第3のゾーン23、第4のゾーン24と称する。したがって、ノズル105は第4のゾーン24を形成している。なお、冷却シリンダ14はホッパ12及びその近傍を冷却するために設けられるシリンダであり、ホッパ12の周囲を一定の温度以下に維持するために設けられている。
第1乃至第3のゾーン21〜23には、図1に示すように、個別に通電されるバンドヒータh1,h2,h3が加熱シリンダ11の外周に配置されている。また、図示はしていないが、ノズル105の周囲にもヒータが設けられており、ノズル105を加熱している。このヒータをヒータh4と称することとする。また、図2に示す例では、第1のゾーン21に、径方向に1組の温度センサである熱電対A−1,A−2が配置されており、同様に、第2のゾーン22には、1組の温度センサである熱電対B−1,B−2が配置され、第3のゾーン23にも1組の温度センサである熱電対C−1,C−2が配置されている。更に、第4のゾーン24には、2組の温度センサである熱電対D−1,D−2;E−1,E−2が設けられている。なお、各ゾーンに設けられた一対の熱電対のうち、シリンダ11の外壁面に近いほうの熱電対A−2〜E−2は少なくとも一個設けられていればよい。
各組の熱電対の加熱シリンダ11及びノズル105に対する位置は、同様であるので、図3に示す熱電対A−1,A−2を例に取って説明する。熱電対A−1は加熱シリンダ11の内壁近傍の温度を検出するために、加熱シリンダ11の内壁近傍までの深さを有する孔内に埋設されている。熱電対A−2は、熱電対A−1よりヒータh1に近い位置に埋設されている。熱電対A−1とA−2とは、加熱シリンダ11の同一断面上で、半径方向に互いに異なる位置に設けられており、図3(a)に示す例では、熱電対A−1とA−2とは半径方向に反対側の位置、即ち、180°離れた位置に設けられている。
図3(b)に示すように、周方向内における同一の位置であり、同一ヒータ領域内で軸方向にずらした位置に、熱電対A−1とA−2とを設けてもよい。この場合、内壁近傍の熱電対センサA−1とそれより外側の温度を検出する熱電対A−2とは、それぞれの配設孔に設けられる。その結果、一つの配設孔に一つの熱電対を配置することができるので、熱電対の組み付けやメンテナンスが容易となる。
また、図3(c)に示すように、周方向内における同一の位置であり、軸方向にも同一の位置に熱電対センサA−1とA−2とを設けてもよい。この場合、内壁近傍の熱電対A−1とそれより外側の温度を検出する熱電対A−2とが、同一の配設孔に設けられる。熱電対センサA−1,A−2の両方共に内壁近傍に設けることが好ましい。その結果、径方向の熱移動量を正確に検出することができ、内壁近傍の熱流束を正確に把握することができる。
以上のように、射出ノズル105及び加熱シリンダ11の長手方向に沿って同一ヒータによるゾーン内に複数の熱電対が設けられ、また、同一断面の異なった深さに複数の熱電対が設けられている。
図2に示すように、各組の熱電対(例えば、A−1,A−2)は、制御装置であるコントローラ130に接続されている。コントローラ130は、各熱電対からの入力信号(電圧信号)が与えられ、検出値に基づいて演算を行い、演算結果を操作量としてPWM信号、アナログ信号などの形で出力する信号処理部301、当該操作量に基づいてオンオフを行うスイッチ302−1〜302−4、及び、スイッチ302−1〜302−4を介して、第1乃至第4のゾーン21〜24に設けられたヒータh1,h2,h3,h4に通電する電源303とを備えている。
信号処理部301は、温度センサからの検出値を表示すると共に、温度設定値を入力して信号処理部301に与える表示入力装置(単に表示装置とも称する)135に接続されている。表示入力装置135は、好ましくはディスプレイ装置であり、図示されたような表示設定画面を表示する。図示された表示設定画面には、各ゾーンにおける熱電対からの電圧信号に基づいて求められた温度検出値をゾーン毎に表示する温度検出値表示部351、各ゾーンの温度を設定値として設定する温度設定部352などが表示される。
表示設定画面には、各熱電対により求められた検出温度が全て表示され、検出温度に基づいて演算により求められた熱流束も表示される。表示装置135には、ノズル105及び加熱シリンダ11の各ゾーンの温度制御を同一ゾーン内に設置された複数の熱電対のうち、どの熱電対を用いて制御するかを選択できるスイッチが具備されている。
一方、信号処理部301は、表示装置135で選択された熱電対による検出温度と設定された温度との差に基づいて制御演算を行い、演算結果を操作量として、各ゾーンのヒータに対応して設けられたスイッチ302−1〜302−4に出力する。即ち、信号処理部301からの操作量は、スイッチ302−1〜302−4のオン期間を決定する信号であり、スイッチ302−1〜302−4がオンしている時間の割合を表すオン・デューティを制御する。この結果、各ゾーンにおける通電時間が制御され、ノズル105及び加熱シリンダ11の選択された熱電対が配置された位置の温度が設定された温度に保たれる。
図2に示す熱電対A−1〜E−2と、コントローラ130と、表示入力装置135とにより、後述するように加熱シリンダ11の各部の熱流束又は熱流量を表示してシリンダ11内の樹脂の状態を監視する監視装置が構成される。
なお、上述の射出成形機はシリンダ内の射出部材であるスクリュにより、樹脂の溶融、計量、射出が行われるいわゆるスクリュ式射出成形機であるが、本発明はこれに限ることなく、樹脂の溶融とは別に、計量部材であるプランジャにより計量及び射出を行ういわゆるプリプラ式射出成形機にも適用することができる。また、加熱シリンダに樹脂を供給するためのフィードスクリュにも適用することができる。
次に、本発明の第1実施例による監視装置について、図4を参照しながら説明する。図4は本発明の第1実施例による監視装置の全体構成を示す図である。図4において、図2に示す構成部品と同等の部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図4に示す加熱シリンダ11には、熱電対A−1,A−2;B−1,B−2;C−1,C−2;D−1,D−2;E−1,E−2;Fが設けられている。熱電対Fは温度検出用の熱電対であり、単独で加熱シリンダ11に設けられている。熱電対A−1,A−2は対をなし、その一方(A−1)は加熱シリンダ11の内壁近傍に配置され、他方(A−2)は加熱シリンダ11の径方向に異なる位置に配置されている。他の熱電対B−1,B−2;C−1,C−2;D−1,D−2;E−1,E−2についても同様である。また、対となる熱電対A−1,A−2;B−1,B−2;C−1,C−2;D−1,D−2;E−1,E−2;Fは加熱シリンダ11の軸方向に異なる位置に配置されている。
図4に示す監視装置では、対で設けられる2本の熱電対のうち、正極となる線同士又は負極となる線同士が、加熱シリンダ11から出た部分で互いに接続(結線)されている。したがって、対で設けられる2つの熱電対のうち、結線されない2本の正極線又は2本の負極線だけが、信号処理部301に接続される。
この結線方法を熱電対A−1,A−2の対を例にとって説明する。熱電対A−1,A−2は、図3(b)に示す位置に配置されているものとする。図5は熱電対A−1,A−2の結線を示す図である。なお、熱電対A−1,A−2はアルメル・クロメル熱電対とし、一つの熱電対はアルメル線(負極線)とクロメル線(正極線)の2本の線からなるものとする。なお、熱電対の種類はアルメル・クロメル熱電対に限られることなく、他の種類の熱電対であってもよい。他の種類の熱電対として、鉄・コンスタンタン熱電対、銅・コンスタンタン熱電対、クロメル・コンスタンタン熱電対、ナイクロシル・ナイシル熱電対、白金・白金熱電対などがあり、それぞれが固有の比例定数kを有している。
図5において、熱電対A−1のアルメル線A(負極線)と、熱電対A−2のアルメル線A(負極線)とは、加熱シリンダ11から延出した部分で互いに接続されている。一方、熱電対A−1のクロメル線C(正極線)と、熱電対A−2のクロメル線C(正極線)とは、結線されずにそのまま信号処理部301まで延在する。この結線方法によれば、後述のように、熱電対A−1,A−2により各位置での温度を求めることなく、熱電対A−1とA−2の位置での温度の差分(温度差)に相当する電圧信号を2本のクロメル線Cにより信号処理部301に出力することができる。したがって、熱電対A−1,A−2が設けられた位置の温度差を表す電圧信号から、これらの位置の間における熱流束を演算により直接求めることができる。
このように、熱電対A−1,A−2からの出力に基づいて温度を求めてからその温度差を演算して熱流束を求める必要はなく、熱電対A−1,A−2のクロメル線Cからの出力値を用いて熱流束を演算することができる。温度検出値を用いて熱流束を求める場合、温度検出値には後述する冷接点用の温度センサ(サーミスタ305)に起因した誤差が含まれるが、上述のように熱電対A−1,A−2のクロメル線Cからの出力値を用いて熱流束を直接演算することで、熱電対A−1,A−2からの出力に基づいて求める温度に含まれる誤差の影響を排除することができる。
また、熱電対A−1,A−2のアルメル線Aは、信号処理部301まで延在せずに加熱シリンダ11から出た部分で結線されるため、アルメル線Aの途中で入ってくるノイズを無くすことができる。すなわち、従来は一つの熱電対からアルメル線Aとクロメル線Cの2本の線が信号処理部301まで延在していて、その途中で両方の線がノイズを拾う可能性があったのに対し、本実施例では、一つの熱電対からクロメル線Cの1本しか信号処理部301まで延在しないので、ノイズを拾う確率は従来の1/2となる。
なお、図5に示す例では、2つの熱電対のアルメル線A(負極線)同士を互いに結線しているが、クロメル線C(正極線)同士を互いに結線し、アルメル線A(負極線)を信号処理部301に接続することとしてもよい。
図4に戻って説明を続けると、上述の熱電対A−1,A−2以外の熱電対B−1,B−2、熱電対C−1,C−2、熱電対D−1,D−2,熱電対E−1,E−1についても、熱電対A−1,A−2と同様の結線とされ、熱流束を直接求めることができる。
このように、熱電対A−1,A−2、熱電対B−1,B−2、熱電対C−1,C−2、熱電対D−1,D−2,熱電対E−1,E−2のいずれも、温度差に対応した出力電圧が得られるように結線されている場合、熱流束を容易に求めることはできるが、各熱電対の位置における加熱シリンダ11の温度を求めることはできない。そこで、本実施例では、温度測定用の熱電対Fを一つだけ加熱シリンダ11に取り付けている。また、この熱電対Fで温度を検出するための冷接点用の温度センサとしてサーミスタ305が、信号処理部301内に設けられている。熱電対Fからの出力とサーミスタ305での温度測定値から、加熱シリンダ11の熱電対Fが配置された位置での温度を求めることができ、この温度を基準として、他の熱電対の出力から求められた熱流束を用いて加熱シリンダ11の温度分布を推測することができ、加熱シリンダ11内の樹脂の加熱状態を監視することができる。
ここで、上述の熱電対A−1,A−2の結線で、温度差に相当する出力電圧を得ることができる理由について説明する。図6は熱電対により温度を求める原理を説明する図であり、図7は熱電対A−1,A−2の結線により温度差を求める原理を説明する図である。
図6に示す熱電対は、負極線としてアルメル線Aが用いられ、正極線としてクロメル線Cが用いられる。正極線と負極線の先端は結線されて電気的に短絡されている。この短絡部分を温度測定対象に近接あるいは接触させ、温度測定対象と同じ温度とすることにより熱起電力が発生する。この熱起電力により、短絡部分から離れた位置における正極線と負極線との間に電圧Vthが発生する。短絡部分を高温Thとし、熱起電力による電圧を測定する部分を低温Tcとすると、Vth=1/k(Th−Tc)という関係が成立する。ここで、kは比例定数であり(クロメル・アルメル熱電対の場合、kは約24℃/mV)、(Th−Tc)は高温Thと低温Tcの温度差であるから、電圧Vthは温度差(Th−Tc)に比例するということがわかる。
ここで、低温Tcの値がわかれば、電圧Vthを測定することで、上式を用いた演算により高温Th、すなわち温度測定対象の温度を求めることができる。通常、低温Tcとして、電圧を測定する部分の近傍に設けられた温度センサにより測定した温度検出値が用いられる。この温度センサは図4におけるサーミスタ305に相当する。
図7は図5に示す熱電対A−1,A−2の結線を示す図である。図7に示すように、2つの熱電対の負極線同士は結線されて短絡されている。ここで、熱電対A−1の短絡部分での温度を高温Th1とし、熱電対A−2の短絡部分での温度を高温Th2とし、2つの熱電対の負極同士の結線部分での温度を低温Tcとすると、負極線の短絡部分における熱電対A−1での電圧Vc1はVc1=1/k(Th1−Tc)となり、負極線の短絡部分における熱電対A−2での電圧Vc2はVc2=1/k(Th2−Tc)となる。
ここで、短絡されていない2本の正極線の間で得られる電圧をVcとすると、Vc=Vc1−Vc2となることがわかる。この式に上記2つの式を代入すると、Vc=Vc1−Vc2=1/k(Th1−Th2)となり、電圧Vcは、熱電対A−1により測定される高温Th1と熱電対A−2により測定される高温Th2との温度差(Th1−Th2)に比例することがわかる。温度差(Th1−Th2)は熱流束に比例するから、電圧Vcを用いることで熱流束を演算することにより直接求めることができる。すなわち、温度差に比例する電圧を測定することで、温度を直接求めなくても、温度差に比例する熱流束を求めることができる。誤差が含まれる可能性のある温度検出値を用いないため、温度測定誤差の影響が排除され、熱流束を精度よく求めることができる。
図8は、本実施例で用いられる熱電対の具体的な構成を示す簡略図である。本実施例で用いられる熱電対は、一対の負極線Aと正極線C(例えばアルメル線とクロメル線)の先端が一つのシース400内に入れられた構成とすることができる。シース400は例えばステンレス鋼(SUS304)により円筒状に形成される。シース400内には熱伝導性の電気絶縁材402としてマグネシアが充填され、内部の負極線Aと正極線Cとをシース400から電気的に絶縁している。マグネシアを充填する代わりに、マイカやガラス布で負極線Aと正極線Cの各々を覆うこととしてもよい。シース400の先端は例えば半田404を盛ることで閉じられる。シース自体を先端が閉じられた円筒状の形状としてもよい。
図8に示す熱電対は非接地型の熱電対であり、負極線Aと正極線Cとの短絡部を含めた全体が、絶縁材402によりシース400から電気的に絶縁されている。したがって、熱電対A−1と熱電対A−2のシース400が電気的に導通状態となっていても(例えば両方のシース400が金属製の加熱シリンダに接触していても)、シース400内の負極線Aと正極線Cにより形成された回路が短絡されることがなく、所望の回路を維持することができる。
上述の実施例では、2つの熱電対が設けられた位置の間の熱流束を求める構成であり、一点に1つの熱電対を設けているが、一点に対して2つの熱電対を設けて図9に示すように結線することで、温度差により得られる電圧を2倍にすることができる。これにより、温度差の分解能を大きくすることができ、より精度よく温度差を検出して熱流束を精度よく求めることができる。
図9において、上側の2つの熱電対が高温Th1になり、下側2つの熱電対が高温Th1よりは低い高温Th2となったとすると、点P1と点P2の間には電圧Vcが現れる。また、点P1と点P3との間にも電圧Vcが現れる。したがって、両端の正極線Cの間には、Vc+Vc=2Vcの電圧が現れることとなり、温度差(Th1−Th2)を2倍の電圧2Vcで検出することができる。
図10は、図9に示す同じ位置に設けられる一対の熱電対の具体的な構成を示す図である。図10に示す熱電対は、シース400の中に2つの熱電対が挿入されている。シース400、正極線C、負極線Aは絶縁材402により互いに電気的に絶縁され、シース400の先端は半田404により閉じられている。
次に、本発明の第2実施例による監視装置について、図11を参照しながら説明する。図11は本発明の第2実施例による監視装置の全体構成を示す図である。図11において、図4に示す構成部品と同等の部品には同じ符号を付し、その説明は省略する。
図11に示す監視装置では、対で設けられる2本の熱電対のうち、正極となる線同士又は負極となる線同士が、加熱シリンダ11から出た部分で互いに接続(結線)されている。結線された2本の負極又は正極となる線は、一本の線となって温度制御部に接続される。したがって、対で設けられる2つの熱電対のうち、結線されない2本の正極線又は2本の負極線及び結線された1本の負極線又は1本の正極線が、信号処理部301に接続される。
この結線方法を熱電対A−1,A−2の対を例にとって説明する。熱電対A−1,A−2は図3(b)に示す位置に配置されているものとする。図12は熱電対A−1,A−2の結線を示す図である。
図12において、熱電対A−1のアルメル線A(負極線)と、熱電対A−2のアルメル線A(負極線)とは、加熱シリンダ11から延出した部分で互いに接続され、一本のアルメル線(負極線)となって信号処理部301まで延在する。一方、熱電対A−1のクロメル線C(正極線)と、熱電対A−2のクロメル線C(正極線)とは、結線されずにそのまま信号処理部301まで延在する。この結線方法によれば、上述の第1実施例と同様に、熱電対A−1,A−2により各位置での温度を求めることなく、熱電対A−1とA−2の位置での温度の差分に相当する電圧信号を2本のクロメル線Cにより温度御装部301に出力することができる。したがって、熱電対A−1,A−2が設けられた位置の温度差を表す電圧信号から、これらの位置の間における熱流束を演算により直接求めることができる。
このように、熱電対A−1,A−2からの出力に基づいて温度を求めてからその温度差を演算し、熱流束を求める必要はなく、熱電対A−1,A−2のクロメル線Cからの出力値を用いて熱流束を演算することができる。このため、熱電対A−1,A−2からの出力に基づいて求める温度に含まれる誤差に影響されることはない。
また、熱電対A−1,A−2の2本のアルメル線Aは、加熱シリンダ11から出た部分で結線されて一本のアルメル線Aとなって信号処理部301まで延在するため、アルメル線Aの途中で入ってくるノイズを低減することができる。
なお、図12に示す例では、2つの熱電対のアルメル線A(負極線)同士を互いに結線しているが、クロメル線C(正極線)同士を互いに結線して1本とし、2本のアルメル線A(負極線)と1本のクロメル線C(正極線)を信号処理部301に接続することとしてもよい。
上述の熱電対A−1,A−2以外の熱電対B−1,B−2、熱電対C−1,C−2、熱電対D−1,D−2,熱電対E−1,E−1についても、熱電対A−1,A−2と同様の結線とされ、熱流束を直接求めることができる。
本実施例では、熱電対A−1,A−2、熱電対B−1,B−2、熱電対C−1,C−2、熱電対D−1,D−2,熱電対E−1,E−2のいずれも、温度差に対応した出力電圧が得られるように結線されているため、熱流束を求めることができる。また、各熱電対について見ると、正極線も負極線も温度検出部に接続されているため、各熱電対の位置における温度を検出することができる。したがって、熱電対で温度を検出するための冷接点用の温度センサとしてサーミスタ305が、信号処理部301内に設けられている。各熱電対からの出力とサーミスタ305での温度測定値から、加熱シリンダ11の熱電対が配置された位置での温度を求めることができる。この温度を基準として、他の熱電対との出力差から求められた熱流束を用いて加熱シリンダ11の温度分布を推測することができ、加熱シリンダ11内の樹脂の加熱状態を監視することができる。
なお、熱流束の求め方は上述の第1実施例と同様であるため、その説明は省略する。また、熱電対の具体的な構成に関しても上述の第1実施例と同様であるため、その説明は省略する。
図13は、図12に示す結線の変形例を示す図である。熱電対A−1のクロメル線C1は、加熱シリンダ11から信号処理部301までの間で分岐して2本となり、一方の先が信号処理部301の温度検出部301aに接続され、他方の先が熱流束演算部301cに接続されている。同様に、熱電対A−2のクロメル線C2も、加熱シリンダ11から信号処理部301までの間で分岐して2本となり、一方の先が信号処理部301の温度検出部301bに接続され、他方の先が熱流束演算部301cに接続されている。また、熱電対A−1のアルメル線A1は、信号処理部301の温度検出部301aに接続されている。同様に、熱電対A−2のアルメル線A2は、信号処理部301の温度検出部301bに接続されている。そして、熱電対A−1のアルメル線A1と熱電対A−2のアルメル線A2は、信号処理部301までの間で結線されている。
以上の構成によれば、信号処理部301の温度検出部301aにおいて熱電対A−1により温度が検出され、信号処理部301の温度検出部301bにおいて熱電対A−2により温度が検出される。また、信号処理部301の熱流束演算部301cにおいて熱流束を直接演算することができる。
なお、図13に示す例では、2つの熱電対のアルメル線(負極線)A1,A2同士を互いに結線しているが、クロメル線(正極線)C1,C2同士を互いに結線し、クロメル線(正極線)C1,C2及びアルメル線A1,A2(負極線)を信号処理部301に接続することとしてもよい。
上述の熱電対A−1,A−2以外の熱電対B−1,B−2、熱電対C−1,C−2、熱電対D−1,D−2,熱電対E−1,E−1についても、熱電対A−1,A−2と同様の結線とされ、温度及び熱流束を直接求めることができる。
上述の結線方法及び温度差に対応した電圧を求める方法は、2つの熱電対を用いた場合の例であるが、3つ以上の熱電対を用いて3点の間での熱流束を求める場合にも適用できる。すなわち、図13に示すように複数の熱電対を互いに直列に結線する方法と、図14に示すように複数の熱電対を互いに並列に結線する方法とがある。
図13に示す例では、3つの熱電対TC1,TC2,TC3が直列に接続されている。熱電対TC1の負極線と熱電対TC2の負極線が点PN1において結線され、一本の負極線となって温度制御部に接続される。さらに、熱電対TC2の正極線と熱電対TC3の正極線とが点PN2において結線され、一本の正極線となって温度制御部に接続される。
熱電対TC1での温度をT1、熱電対TC2での温度をT2、熱電対TC3での温度をT3とすると、熱電対TC1の位置と熱電対TC2の位置の間の温度差(T1−T2)は熱電対TC1の正極線と熱電対TC2の正極線(すなち、点PN2から延在する正極線)との間の電圧から求めることができる。また、熱電対TC2の位置と熱電対TC3の間の温度差は、熱電対TC2の負極線(すなわち、点PN1から延在する負極線)と熱電対TC3の負極線との間の電圧から求めることができる。
また、冷接点温度Tcがわかっていれば、熱電対TC1での温度T1は、熱電対TC1の正極線と負極線(すなわち、点PN1から延在する負極線)との間の電圧と冷接点温度Tcを用いて求めることができる。また、熱電対TC2での温度T2は、熱電対TC2の正極線(すなわち、点PN2から延在する正極線)と負極線(すなわち、点PN1から延在する負極線)との間の電圧と冷接点温度Tcを用いて求めることができる。さらに、熱電対TC3での温度T3は、熱電対TC3の正極線(すなわち、点PN2から延在する正極線)と負極線との間の電圧と冷接点温度Tcを用いて求めることができる。
図15に示す例では、3つの熱電対TC1,TC2,TC3が並列に接続されている。熱電対TC1の正極線と熱電対TC2の正極線と熱電対TC3の正極線が接続されて1本の正極線となって温度制御部に接続される。各熱電対TC1,TC2,TC3の負極線は結線されずにそのまま温度制御部に接続される。
熱電対TC1での温度をT1、熱電対TC2での温度をT2、熱電対TC3での温度をT3とすると、熱電対TC1の位置と熱電対TC2の位置の間の温度差(T1−T2)は熱電対TC1の負極線と熱電対TC2の負極線との間の電圧から求めることができる。また、熱電対TC2の位置と熱電対TC3の間の温度差は、熱電対TC2の負極線と熱電対TC3の負極線との間の電圧から求めることができる。さらに、熱電対TC3の位置と熱電対TC1の間の温度差は、熱電対TC3の負極線と熱電対TC1の負極線との間の電圧から求めることができる。
また、冷接点温度Tcがわかっていれば、熱電対TC1での温度T1は、熱電対TC1の正極線(すなわち、点PN3から延在する一本の正極線)と負極線との間の電圧と冷接点温度Tcを用いて求めることができる。また、熱電対TC2での温度T2は、熱電対TC2の正極線(すなわち、点PN3から延在する一本の正極線)と負極線との間の電圧と冷接点温度Tcを用いて求めることができる。さらに、熱電対TC3での温度T3は、熱電対TC3の正極線(すなわち、点PN2から延在する正極線)と負極線との間の電圧と冷接点温度Tcを用いて求めることができる。
以上のように、図15に示す結線を用いれば、複数の熱電対の正極線をまとめて一本の正極線とすることで、電圧を求める端子(温度制御部において正極線と負極線が接続された端子)を選定することで、任意の2つの熱電対の位置の間における熱流束と、任意の一つの熱電対の位置での温度を求めることができる。なお、図15に示す例では各熱電対の正極線を1本にまとめているが、各熱電対の負極線を1本にまとめることとしてもよい。
図14及び図15に示すように3つの熱電対を設けた場合は、負極線2本と正極線2本で合計4本の線、あるいは負極線3本と正極線1本で合計4本の線を温度制御部に接続すればよい。例えば、4つの熱電対を設けた場合には、負極線2本と正極線3本で合計5本、あるいは負極線4本と正極線1本で合計5本の線を温度制御部に接続すればよい。すなわち、設けられた熱電対の数Nに1を足した(N+1)本の線を温度制御部に接続すればよいため、(N−1)本の負極線又は正極線を減らすことができる。