JP4816792B2 - 質量分析装置 - Google Patents

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本発明は、液体クロマトグラフ質量分析装置、ガスクロマトグラフ質量分析装置等に用いられる質量分析装置に関し、さらに詳しくは、質量分析装置においてイオンを後段に輸送するためのイオン輸送光学系に関する。
質量分析装置では、前段から送られて来るイオンを収束し、場合によっては加速して後段の例えば四重極質量フィルタ等の質量分析器に送り込むために、イオンレンズやイオンガイドと呼ばれるイオン輸送光学系が用いられる。こうしたイオン輸送光学系の1つとして、従来より、四重極、八重極などの多重極ロッド型の構成が利用されている。また、イオンを質量に応じて分離するための質量分析器としてよく用いられる四重極質量フィルタでは、四重極ロッド電極本体へのイオンの導入を円滑に行うために、その本体の前段に短い四重極ロッド電極から成るプレフィルタ(又はプリロッドとも呼ばれる)が配置されることがあるが、このプレフィルタもイオン輸送光学系の一種であるとみることができる。
図15(a)は一般的な四重極ロッド型のイオンガイド710の概略斜視図、(b)はイオン光軸Cに直交する面内でのイオンガイドの平面図である。このイオンガイド710は、円柱(又は円筒)形状の4本のロッド電極711〜714がイオン光軸Cを取り囲むように互いに平行に配置された構造を有している。一般的には、図15(b)中に示すように、イオン光軸Cを挟んで対向する2本のロッド電極711と713には同一の高周波電圧V・cosωtが印加され、これと周方向に隣接する2本のロッド電極712、714には先の高周波電圧V・cosωtと振幅が同一で位相が反転された高周波電圧−V・cosωtが印加される。このように印加される高周波電圧±V・cosωtにより4本のロッド電極711〜714で囲まれる空間に四重極高周波電場が形成され、この電場中でイオンを振動させつつイオン光軸C付近に収束させながら後段に輸送することができる。
図16は八重極ロッド型のイオンガイド720のイオン光軸Cに直交する面内での平面図である。八重極型では円柱又は円筒形状の8本のロッド電極721〜728が内接円に接するようにイオン光軸Cの周りに等角度間隔で配置されている。この場合に各ロッド電極721〜728に印加される高周波電圧も四重極の場合と同様である。
上述のような四重極又はそれ以上の多重極ロッド型イオン輸送光学系では、その極子の数によってロッド電極で囲まれる空間に形成される高周波電場の形状が異なり、それに伴い、イオンビームの収束性、イオン透過性(トランスミッション)、イオン受容性(アクセプタンス)、或いは質量選択性などのイオン光学特性も相違する。一般に、極数の少ない四重極のほうが中性分子との衝突冷却(クーリング)によるビーム収束性や質量選択性が良好であり、極数が増加するに従ってビーム収束性や質量選択性は低下する反面、イオントランスミッションやイオンアクセプタンスは向上すると言える。
このように従来型のイオン輸送光学系では極数によりイオン光学特性が異なるために、そのイオン輸送光学系が使用される雰囲気(例えばガス圧など)や前段、後段に配置されるイオン光学素子との関係などに合わせて適当な極数が選択され、さらにその極数の条件の下でロッド電極の径や長さなどのパラメータを決めるように設計が行われるのが一般的である。しかしながら、従来型のイオン輸送光学系では、パラメータの選択の自由度が小さいために必ずしも用途に応じた最適なイオン光学特性を有するイオン輸送光学系を用いることができず、そのために検出感度や精度を上げることが難しい場合がある。
近年、分析対象物質の種類の多様化や複雑化、或いは迅速な分析の要求などに対応するため、質量分析装置のさらなる高感度化、高精度化やハイスループット化などが求められている。こうした要求に応えるために、イオン輸送光学系においても性能の向上を図る必要があるものの、実際には、上記理由により従来の多重極ロッド型の構成を基本とした性能向上には限界がある。
特開2000−149865号公報 特開2001−351563号公報
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、前段から到来するイオンを収束したり、場合によっては加速又は減速したりして後段に送るイオン輸送光学系の性能を向上させることで、検出感度や分析精度の向上を図ることができる質量分析装置を提供することにある。
本願出願人は、イオンの収束性が比較的良好であるという多重極ロッド型イオンガイドの利点を生かしつつ、イオンを加速することもできるイオン輸送光学系として、図17に示すような仮想ロッド電極を用いるイオン輸送光学系を提案し実用化している(例えば特許文献1、2など参照)。この構成では、図15(a)に示した各ロッド電極711〜714をそれぞれ、イオン光軸Cの方向に沿って並べられた複数(この図の例では4枚だがこの枚数は任意)の平板状の電極素板735で構成した4本の仮想ロッド電極731〜734で置き換えている。
この仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系730では、1本の仮想ロッド電極731〜734を構成する4枚(又はそれ以上)の電極素板735にそれぞれ異なる電圧を印加することが可能であるから、例えばイオンが進行する方向に段階的に増加する直流電圧を高周波電圧に重畳するように印加することで形成する直流電場の作用により、仮想ロッド電極731〜734で囲まれる空間を通過する際にイオンを加速したり逆に減速させたりすることができる。
これまで上記のような仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系において形成される高周波電場については十分な解析が為されておらず、あくまでも極子が同数である多重極ロッド型イオン輸送光学系と同様の高周波電場が形成されるものと考えられていた。これに対し、本願発明者は仮想四重極ロッド型イオン輸送光学系において形成される高周波電場についての解析を行うことにより、一般の四重極ロッド型イオン輸送光学系とは異なり仮想四重極ロッド型イオン輸送光学系では、四重極電場のみならず、さらに高次の多重極場成分を豊富に含むことを見い出した。さらにまた、こうした高次の多重極場成分が、電極素板の厚さやイオン光軸方向において隣接する電極素板の間隔、或いは電極素板の外縁形状などにより変化することも見い出した。
前述のように、多重極場成分はその極数により、イオンビーム収束性、イオントランスミッション、イオンアクセプタンス、質量選択性などのイオン光学特性が相違する。また、仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系では複数枚の電極素板により1本の仮想ロッド電極が構成されるため、その複数枚の電極素板の中で板厚を変えたり隣接する電極素板間の間隔を変えたり、或いは外縁形状を変えたりすることが容易である。そこで本願発明者は、電極素板の厚さや隣接電極素板の間隔といったパラメータをイオン光軸方向で適宜に調整したり各電極素板のイオン光軸に向く外縁形状を適宜に変えたりすることにより、例えばイオン入口側とイオン出口側とで、或いはイオン入出口側とその間の中間部とで異なるイオン光学特性を実現し、この仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系が配置される雰囲気や前段・後段に配置される構成要素に応じた最適又はそれに近い性能を得ることに想到した。
即ち、上記課題を解決するために成された第1発明は、イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板にあってイオン光軸方向に隣接する電極素板の間隔が少なくとも複数存在するようにM枚の電極素板が配置されていることを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された第2発明は、イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板はイオン光軸方向に板厚が相違する電極素板を含むことを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された第3発明は、イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板はイオン光軸方向に向いた外縁形状が相違するものを複数種類含み、イオン入射側では相対的に幅の狭い電極素板が配置され、イオン出射側では相対的に幅の広い電極素板が配置されていることを特徴としている。
また上記課題を解決するために成された第4発明は、イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板はイオン光軸方向に向いた外縁形状が円弧状であり、イオン入射側では相対的にその円弧の曲率半径が小さい電極素板が配置され、イオン出射側では相対的にその円弧の曲率半径が大きな電極素板が配置されていることを特徴としている。
上記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系では、イオン光軸を挟んで対向する2本の仮想ロッド電極には同一の高周波電圧(例えば+V・cosωt)を印加し、イオン光軸の周りに隣接する2本の仮想ロッド電極には互いに位相が反転した高周波電圧(例えば一方が+V・cosωtで他方が−V・cosωt)を印加する。これによって、2N本の仮想ロッド電極で囲まれる空間に高周波電場が形成される。但し、高周波電圧以外に、適宜の直流電圧を重畳して印加することもできる。
本願発明者の上記解析によれば、電極素板の板厚が同一である場合に、隣接電極素板の間隔が狭いよりも広いほうが、四重極場成分は小さくそれよりも高次の多重極場成分は増加する。また、隣接電極素板の間隔が同一である場合には、電極素板の板厚が薄いよりも厚いほうが四重極場成分は増加する。四重極場成分が多いほうがイオンビームの収束性は良いから、1つのイオン輸送光学系の中でもイオンの収束性が重要となる領域、通常は後段へイオンを送り出すイオン出射側に近い領域で、四重極場成分が増加するようにするとよい。一方、四重極よりも高次の多重極場成分が多いほうがイオンアクセプタンスは良いから、1つのイオン輸送光学系の中でもイオンアクセプタンスが重要となる領域、通常は前段から到来するイオンを受け容れるイオン入射側に近い領域で、高次の多重極場成分が増加するようにするとよい。
こうしたことから、第1発明の好ましい一実施態様として、前記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、イオン入射側で相対的に隣接電極素板の間隔が広く、イオン出射側で相対的に隣接電極素板の間隔が狭い配置である構成とするとよい。
また第2発明の好ましい一実施態様として、前記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、イオン入射側で相対的に板厚の薄い電極素板が配置され、イオン出射側で相対的に板厚が厚い電極素板が配置されている構成とするとよい。
こうした実施態様の構成によれば、前段から到来したイオンは高いアクセプタンスにより効率良く仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系に取り込まれ、そして高いビーム収束性で以てイオン光軸近傍に収束された状態で後段に向けて送り出される。従って、この仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系において、前段の構成要素から到来したイオンは無駄なく取り込まれるとともに、後段の構成要素に無駄なくイオンが導入されるようにすることができる。これにより、従来よりも多くの量のイオンを質量分析に供することが可能となり、分析の高感度化、高精度化を図ることができる。
例えば液体クロマトグラフ質量分析装置では質量分離器やイオン検出器が配置された分析室内を高真空状態に維持するために多段差動排気系の構成が採られることが多いが、そうした構成ではガス圧の相違する各室を連通する開口部は非常に小さい。上記のようにイオン出射側においてイオンの収束性が高いイオン輸送光学系は、そうしたごく小さな開口部を通して後段にイオンを送り込むのに特に有用である。
また、上記実施態様とは逆に、イオン入射側で相対的に隣接電極素板の間隔を狭く、イオン出射側で相対的に隣接電極素板の間隔を広い配置としたり、イオン入射側で相対的に板厚の厚い電極素板を配置し、イオン出射側で相対的に板厚が薄い電極素板を配置したりしてもよい。この場合には、前半部で収束したイオンを高い通過効率で後段に送り出すことができる。さらにまた、イオン輸送光学系のイオン入射側及び出射側とその間の中間部とで隣接電極素板の間隔や各電極素板の厚さを変えるようにしてもよい。こうした構成により、例えば、イオン輸送光学系の中間部付近にイオンを一時的に蓄積する、イオントラップに近い作用を持たせることが可能となる。
また、各電極素板においてイオン光軸方向に向いた外縁形状を変えることによっても、上述のように電極素板の厚さや隣接間隔を変えるのと同様の作用を生じさせることが可能であるから、第3及び第4発明に係る質量分析装置によっても第1発明及び第2発明と同等の効果を達成することができる。
なお、上記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、質量分析装置においてイオンを後段に輸送する必要がある個所であれば広く利用することができるが、例えば四重極質量フィルタ本体の前段にプレフィルタとして配設された構成とすることができる。
一般に、四重極質量フィルタは真空度の高い(ガス圧の低い)分析室内に配置されるため、この前段に配設されるプレフィルタではクーリングによるイオンビームの収束があまり期待できない。その場合でも、上記構成によれば電場の作用によりイオンを収束させて効率良く四重極質量フィルタ本体に導入することができる。
また、上記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、イオンを衝突誘起解離させるためのガスが供給される衝突セル内に配設されている構成とすることもできる。この構成によれば、前段の例えば四重極質量フィルタで質量選別されたプリカーサイオンを効率良く取り込んで衝突誘起解離により開裂させ、それにより生成されたプロダクトイオンをイオン光軸付近に収束させて効率良く後段の例えば四重極質量フィルタに導入することができる。
また、第1乃至第発明に係る質量分析装置において、Nは2以上の任意の整数とすることができるが、四重極場成分による高いイオンビーム収束性や質量選択性といったイオン光学特性を利用するために、Nは2であるものとするとよい。
また、第1乃至第発明に係る質量分析装置において、「イオン光軸方向に互いに分離されたM枚の電極素板」は、それらで囲まれるイオン光軸を中心とする空間に形成される多重極高周波電場に影響を与える範囲で、つまりイオン光軸から径方向に所定範囲内で、イオン光軸方向に互いに分離されていればよい。換言すれば、それよりも遠い位置ではM枚の電極素板は互いに連結又は接続されていてもよい。したがって、例えば1本の柱状の導体体ロッドを切削加工することにより、柱状体の周面にM枚の電極素板に相当するM枚の舌片体が突出した形状としてもよい。但し、この場合には、イオン光軸方向に並ぶM枚の実質的な電極素板(舌片体)は互いに電気的には接続されているから、イオン光軸方向に異なる直流電場を形成したい場合には不向きである。
仮想四重極ロッド型イオン輸送光学系の一例の構成図。 仮想四重極ロッド型イオン輸送光学系の他の例の構成図。 本発明の一実施例の質量分析装置の要部の構成図。 図3中のプレフィルタとして利用されるQアレイの一例を示す構成図。 図3中のプレフィルタとして利用されるQアレイの他の例を示す構成図。 図3中のプレフィルタとして利用されるQアレイの他の例を示す構成図。 図3中のプレフィルタとして利用されるQアレイの他の例を示す構成図。 図4に示したQアレイの変形例を示す構成図。 図4に示したQアレイの変形例を示す構成図。 図5に示したQアレイの変形例を示す構成図。 図5に示したQアレイの変形例を示す構成図。 図3中のプレフィルタとして利用されるQアレイの他の例を示す構成図。 本発明の他の実施例によるMS/MS型質量分析装置の要部の構成図。 図13中の衝突セル内に配設されるQアレイの一例を示す構成図。 従来の一般的な四重極ロッド型イオンガイドの概略構成図。 従来の一般的な八重極ロッド型イオンガイドの概略構成図。 従来の仮想四重極ロッド型イオン輸送光学系の概略構成図。
符号の説明
1…ノズル
2…サンプリングコーン
3…第1イオンレンズ
4…第2イオンレンズ
5…分析室
6…プレフィルタ
7…四重極質量フィルタ
8…イオン検出器
10、20、30、40、50、70、80、90…Qアレイ
111〜14M、311〜34M、411〜44M、511〜54M、811〜843、911〜943…電極素板
30A、40A、50A…前半領域
30B、40B、50B…後半領域
60…第1段四重極質量フィルタ
61…衝突セル
611…入口側アパーチャ開口
612…出口側アパーチャ開口
63…第2段四重極質量フィルタ
C…イオン光軸
まず、本発明に係る質量分析装置における仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系の原理を説明する。いまここで、図1に示す構成の仮想四重極ロッド型のイオン輸送光学系(以下「Qアレイ」と呼ぶ)を考える。図1(a)はQアレイ10のイオン光軸Cに直交する面内での概略平面図、(b)は(a)をy軸で切断した概略断面図である。
イオン光軸Cの方向(つまりz軸方向)に所定間隔dずつ離間されて1列に並ぶM枚の電極素板111〜11Mが1本の仮想ロッド(図には記載しないが、これを仮想的に11とする)を構成し、この仮想ロッドが4本(11、12、13、14)、イオン光軸Cの周りに90°角度間隔離れて回転対称に配置されて四極を構成している。また、イオン光軸Cに直交するx軸−y軸平面上に、イオン光軸Cとの交点を中心に90°回転対称に配置される4枚の電極素板(例えば111、121、131、141)が1段と数えられ、これがz軸方向にM面並んでM段を構成している。従って、このQアレイ10は全部で4×M枚の電極素板を有している。
これら電極素板は全て板厚がtである金属板(又は金属と同等の他の導電性部材)から成り、一端が円弧状に形成された、幅が2rである細長い形状となっている。各電極素板の円弧状の部分がイオン光軸Cを中心とする円に内接するように配置される。この内接円の半径、つまり、イオン光軸Cから各電極素板までの最短距離はRである。
一般に、多重極ロッド電極により生成されるポテンシャルは、次の多重極展開による表現が可能であることが知られている。
Φ(r,Θ)=Σ(K/R)r・cos(nΘ) …(1)
但し、Σはnについての総和であって、nは多重極場の次数を表す正の整数である。また、Kが多重極展開係数である。そこで、図1に示した構成において電極素板の幅2r、内接円半径Rを或る一定値とし、隣接電極素板の間隔d、電極素板の厚さtを変化させたときのポテンシャルを(1)式に従って多重極展開した際の展開係数を計算により求めた。その計算結果を表1に示す。また、参考として、図8に示したような一般的な四重極型ロッド電極を用いたイオン輸送光学系に対する多重極展開係数の計算値を表2に示す。
Figure 0004816792
Figure 0004816792
ここでKは2n重極場の成分に対応した係数である。従って、例えばKは四重極場の成分の展開係数であり、Kは十二極場の成分の展開係数である。K、K 10、K14を選んだのはこれらの展開係数がゼロとはみなせない有意な値を示すからである。表1と表2とを比較すれば分かるように、Qアレイは一般の四重極ロッド型に比べて高次の多重極展開係数の値が大きいことが分かる。これは、Qアレイにより形成される高周波電場は、図1に示したような四重極の構成であっても四重極場のみならず高次の多重極場成分を多く有することを意味している。また、同じ電極素板の厚さtであれば、隣接電極素板の間隔dが大きいほうが四重極展開係数Kは減少し、その代わりに高次の多重極展開係数K、K10、K14が増加することが分かる。また、同じ隣接電極素板の間隔dであっても、電極素板の厚さtが異なれば展開係数が明確に変化することも分かる。
なお、電極幅2rや内接円半径Rといったパラメータを変化させても展開係数は変化する。これらパラメータの変化による展開係数の変化は、電極素板の厚さtや隣接電極素板の間隔dといったパラメータの変化に伴う展開係数の変化の度合いに比べると小さいものの、電極素板の厚さtや隣接電極素板の間隔dとの併用により、或いは単独で利用することもできる。
上述のように、Qアレイは通常の四重極ロッド型のイオン輸送光学系に比べて高次の多重極場成分を多く含んでおり、しかも、電極素板厚さtや電極素板間隔dといったパラメータを変えることで高次の多重極場成分の量を調整することが可能である。極数の小さな四重極場成分は高次の多重極場成分よりもイオンビームの収束性に優れるとともに質量選択性も強く、逆に高次の多重極場成分は四重極場成分に比べてビーム収束性や質量選択性は劣るものの、ビームアクセプタンスやイオントランスミッションなどの点では優れる。Qアレイでは、1本の仮想ロッドの中でそれを構成するM枚の電極素板の間隔や厚さ、或いは幅といったパラメータを変えることができるから、例えば前段や後段に配置されているイオン光学素子の種類やこのQアレイが配置される雰囲気条件(例えばガス圧など)に合わせて、イオン光軸C方向にそれらパラメータを相違させる(つまり一定でなくする)ことにより、目的とするイオンをより良好に後段に送ることができる。
なお、図1(a)に対応する図2に示すように、電極素板の形状は一端が半円状ではない単なる長方形状の電極素板(例えば211〜241)でも同様に、電極素板の厚さtやイオン光軸C方向の隣接電極素板の間隔dを相違させることで、多重極場成分の大きさを調整してイオンをより良好に後段に送ることが可能となる。さらにまた、イオン光軸Cに面する電極素板の外縁形状を、イオン光軸Cに沿って、半円状、矩形状、尖頭状など適宜に変えることによっても多重極場成分の大きさが変化する。Qアレイでは、1本の仮想ロッドの中でそれを構成するM枚の電極素板毎に外縁形状を変えることも容易であるから、電極素板の厚さtや隣接電極素板の間隔dを変える以外に、電極素板の外縁形状を変えるようにしてもよい。
次に、本発明に係る質量分析装置の一実施例である質量分析装置を図面を参照して説明する。図3は本実施例の質量分析装置の要部の構成図である。
この質量分析装置はイオン源にエレクトロスプレイイオン源を用いた大気圧イオン化質量分析装置であって、前段には液体クロマトグラフが設けられ、液体クロマトグラフのカラムで成分分離された試料液がノズル1に導入される。ノズル1から片寄った電荷を付与されつつ略大気圧雰囲気中に噴霧(エレクトロスプレイ)された試料液の液滴から溶媒が気化する過程で試料に含まれる各種成分はイオン化され、サンプリングコーン2を通過して後段へと送られる。このイオンは、第1イオンレンズ3及び第2イオンレンズ4を通過する際に収束され、場合によっては加速されて高真空雰囲気に維持される分析室5に導入される。
この分析室5内には、特定の質量(厳密には質量電荷比m/z)を有するイオンのみを選択的に通過させる4本のロッド電極から成る四重極質量フィルタ7が配設されているが、その四重極質量フィルタ7の直前にはプレフィルタ6が設けられ、このプレフィルタ6により、四重極質量フィルタ7の4本のロッド電極で囲まれる空間にイオンが効率良く導入されるようにしている。四重極質量フィルタ7を通り抜けたイオンはイオン検出器8に導入され、到達したイオン量に応じた検出信号が出力される。
従来、プレフィルタとして四重極質量フィルタ7のロッド電極よりも短いロッド電極(プレロッドと呼ばれる)を四重極配置したものが利用されているが、本実施例の質量分析装置では、このプレフィルタ6として上述したような原理に基づくQアレイを利用している。
図4はプレフィルタ6として利用されるQアレイの一例を示す図である。このQアレイ30はイオン光軸Cに直交するx軸−y軸平面内での電極素板(例えば311〜341)の配置は図1(a)と同じであり、また全ての電極素板の形状(つまり電極2r)や厚さtも図1に示したものと同じである。従って、全ての電極素板について電極幅2rや厚さtは同一である。これに対し、イオン光軸C方向の隣接電極素板の間隔は一定ではなく、間隔がd1である前半領域30Aと間隔がd1よりも狭いd2である後半領域30Bとに分けられる。即ち、1本の仮想ロッド電極の中で、隣接電極素板の間隔についてd1、d2という異なる2種類の間隔が存在している。
前述のように隣接電極の間隔が広いほうが狭い場合に比べて高次の多重極場成分が相対的に大きくなるから、イオンのアクセプタンスが高くなる。本実施例の質量分析装置において、分析室5の前段の中間真空室から分析室5に送り込まれたイオンは略円錐形状に拡がりつつ進行するが、Qアレイ30の前半領域30Aのイオンアクセプタンスを高くしておくことにより、イオンを無駄なく受け容れることができる。高次の多重極場成分が大きいほうがイオンのトランスミッションも良くなるから、上記のように高い効率で受け容れたイオンを無駄なく後半領域30Bに送ることができる。
一方、Qアレイ30の後半領域30Bでは前半領域30Aに比べると隣接電極の間隔が狭くなって、その代わりに四重極場成分が相対的に大きくなるから、イオンの収束性が高まり、イオン流はイオン光軸C付近に集中し易くなる。つまり、図4に示した構成によれば、前段から送られて来たイオンを高いアクセプタンスにより効率良く4本の仮想ロッドで囲まれる空間に取り込み、そして、イオンが進行する間にイオンビームの拡がりを絞り、次段の四重極質量フィルタ7に効率良く入射するように送り出すことができる。これにより、従来のように単なる四重極のプリロッドを使用した場合に比べてより多量の目的イオンを四重極質量フィルタ7に入射させることができ、それによって四重極質量フィルタ7で選別されてイオン検出器8に到達するイオンの量も多くなり、質量分析の感度や精度を向上させることができる。
図5はプレフィルタ6として利用されるQアレイの別の例を示す図である。このQアレイ40では、1本の仮想ロッド電極の中で、隣接する電極素板の間隔dは一定であるものの、電極素板の厚さについてt1、t2という異なる2種類の厚さが存在している。即ち、前半領域40Aでは電極素板の厚さは薄いt1であり、後半領域40Bでは電極素板の厚さはt1よりも厚いt2である。
前掲の表1を見れば分かるように、電極素板の厚さが厚いほうが薄い場合に比べて四重極場成分が大きくなるから、イオンの収束性が良くなる。そのため、Qアレイ40に入射したイオンが後半領域40Bに入ると、イオン光軸C付近にイオンが集中し易くなる。従って、従来のように単なるプリロッドを使用した場合に比べて四重極質量フィルタ7により多量の目的イオンを入射させることができ、それによって質量分析の感度、精度を向上させることができる。
図6はプレフィルタ6として利用されるQアレイのさらに別の例を示す図である。このQアレイ80では、1本の仮想ロッド電極の中で、隣接する電極素板の間隔及び各電極素板の厚さは一定であるが、各電極素板の幅、即ち、広い意味でのイオン光軸Cに向いた外縁形状が相違している。即ち、イオン入射側の4枚の電極素板811、821、831及び841の幅は最も狭く、イオン出射側に向かって順に電極素板の幅が広くなっている。これにより、図4、図5の構成と同様の効果を奏する。なお、この例では、イオン光軸Cに向いた各電極素板の外縁形状は半円形状であるため、幅の相違はその半径形状の円弧の曲率半径が相違することと同じである。
図7はプレフィルタ6として利用されるQアレイのさらに別の例を示す図である。このQアレイ90では、1本の仮想ロッド電極の中で、隣接する電極素板の間隔及び各電極素板の厚さは一定であるが、各電極素板にあってイオン光軸Cに向いた外縁形状が相違している。即ち、イオン入射側の4枚の電極素板911、921、931及び941の外縁形状は尖頭状であり、その後方の4枚の電極素板912、922、932及び942の外縁形状は半円形状であり、イオン出射側の4枚の電極素板913、923、933及び943の外縁形状は矩形状である。これにより、図4、図5、図6の構成と同様の効果を奏する。
上述の図4〜図7に示した構成のQアレイは、特にイオン出射側におけるイオンの収束性を重視したものである。これは、図3に示したような多段差動排気系の構成を有する大気圧イオン化質量分析装置に特に有用である。何故なら、こうした多段差動排気系の構成では、隣接する真空室を隔てる隔壁に形成された開口部が微小であって、その開口部の通過効率を高めるにはイオンをできるだけイオン光軸C近傍に収束させる必要があるからである。これに対し、このQアレイから送り出されたイオンが比較的広い範囲で受容される場合には、イオン出射側におけるイオンの収束性はあまり重要でなく、イオンの透過性を重視したほうが総合的なイオンの輸送効率は向上する。
そうした目的のためには、例えば図8又は図10に示すQアレイ30’、40’の構成とするとよい。図8に記載のQアレイ30’は、図4に示したQアレイ30とは逆に、前半領域30Aにおいてイオン光軸C方向に隣接する電極素板の間隔をd2とし、後半領域30Bにおいてその間隔をd2よりも広いd1としている。即ち、この場合にも、1本の仮想ロッド電極の中で、隣接電極素板の間隔についてd1、d2という異なる2種類の間隔が存在している。図10に記載のQアレイ40’は、図5に示したQアレイ40とは逆に、前半領域40Aにおいて各電極素板の厚さをt2とし、後半領域40Bにおいて各電極素板の厚さをt2よりも薄いt1としている。即ち、この場合にも、1本の仮想ロッド電極の中に板厚の相違する電極素板を含んでいる。
Qアレイ30’、40’の構成によれば、前半領域30A、40Aではイオンのアクセプタンスが相対的に狭いが、もともとイオン光軸C近傍に収束された状態でイオンが入射してくれば問題がなく、後半領域30B、40Bに達した後には相対的に高い透過性で以てイオンを後段へと送り出すことができる。
また、単に前半領域と後半領域とで隣接電極素板間隔や電極素板厚さを変えるのではなく、より複雑な組み合わせとすると、Qアレイに別の機能を付加することもできる。図9に記載のQアレイ30''は、イオン光軸C方向に、前半領域30A、中間領域30C、後半領域30Bに分け、イオン入射側の前半領域30Aとイオン出射側の後半領域30Bでは隣接電極素板間隔を相対的に狭いd2とし、中間領域30Cでは隣接電極素板間隔を相対的に広いd1としている。このような構成では、中間領域30Cにおけるイオンアクセプタンスが相対的に大きくなるので、入射して来たイオンをこの中間領域30Cに一時的に蓄積し易くなる。したがって、或る程度の時間幅の間に生成されたイオンを一旦このQアレイ30''の中に溜め、その後に、溜めておいたイオンをまとめてイオントラップなどに導入することができる。
また、これと同様の機能を発揮させるために、図11に示すようなQアレイ40''の構成としてもよい。即ち、図11に記載のQアレイ40''は、イオン入射側の前半領域40Aとイオン出射側の後半領域40Bでは電極素板の厚さを相対的に厚いt2とし、中間領域40Cでは電極素板の厚さを相対的に薄いt1としている。
また、上述した各種形態のQアレイ30、30’、30''、40、40’、40''、80、90はいずれも、1本の仮想ロッド電極を構成する複数の電極素板がイオン光軸Cの方向に完全に分離されているが、その効果は多重極高周波電場によるポテンシャルの変化により達成されるものであるので、多重極高周波電場の形成に実質的に影響を及ぼさない部位において複数の電極素板は接続されていてもよい。その一例として、図12に示すような構造のQアレイ70とすることができる。図12(a)はQアレイ70のイオン光軸Cに直交する面内での概略平面図、(b)は(a)をy軸で切断した概略端面図である。
1本の柱状体の金属(又は他の導電性材料)ロッドを切削加工することで、間に空隙を有してイオン光軸C方向に隣接するM枚の舌片体(例えば711〜71M)を有する電極ブロック(例えば71)が形成され、4本の電極ブロック71〜74をイオン光軸Cの周りに配置することでQアレイ70が構成されている。1本の電極ブロック71に含まれるM枚の舌片体711〜71Mが実質的に電極素板となり、多重極高周波電場に関しては、図4などのように、電極素板が完全に分離された構造とほぼ同じ状態を達成し得る。但し、この構造の場合、イオン光軸Cの方向に並ぶM枚の舌片体は同電位となるので、イオン光軸Cの方向に隣接する電極素板に異なる直流電圧を印加することで直流的な電位勾配を持たせることはできない。
上記実施例では、四重極質量フィルタ7のプレフィルタ6に本発明の特徴であるQアレイを利用していたが、イオンを収束したり輸送したりするための機能を有する他のイオン輸送光学系にも利用できることは当然である。
図13は本発明の他の実施例であるMS/MS型質量分析装置の概略構成図である。図13中、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。この質量分析装置では、分析室5内にイオンの進行の順に第1段四重極質量フィルタ60、衝突セル61、第2段四重極質量フィルタ63が配設されている。衝突セル61内に上述したようなQアレイが配設されている。分析室5において第1段四重極質量フィルタ60には様々な質量を有するイオンが導入されるが、特定の質量(厳密には質量電荷比m/z)を有する目的イオン(プリカーサイオン)のみが第1段四重極質量フィルタ60を選択的に通過して次段の衝突セル61に送られ、それ以外のイオンは途中で発散してしまう。
衝突セル61内にはアルゴンガス等の所定の衝突誘起解離(CID)ガスが導入されており、上記目的イオンは衝突セル61内に配設されたQアレイ50により形成される電場を通過する際にCIDガスに衝突すると開裂し、各種のプロダクトイオンが生成される。これら各種のプロダクトイオンや開裂しなかった目的イオンは衝突セル61から出て第2段四重極質量フィルタ63に導入され、特定の質量を有するプロダクトイオンのみが第2段四重極質量フィルタ63を選択的に通過してイオン検出器8に送られ、それ以外のイオンは途中で発散してしまう。
こうしてイオン検出器8には特定の質量を有するプロダクトイオンのみが到達し、そのイオンの量に応じた検出信号が出力される。第2段四重極質量フィルタ63に印加する電圧を走査することにより、該四重極質量フィルタ63で選択されるプロダクトイオンの質量を走査することができる。また、第1段四重極質量フィルタ60に印加する電圧を変化させることにより、該四重極質量フィルタ60で選択されるイオン、つまりプリカーサイオンの質量を変更することができる。
図14は衝突セル61内に配置されるQアレイ50の構成を示す図である。衝突セル61に穿設された入口側アパーチャ開口611と出口側アパーチャ開口612との間に配設されたQアレイ50では、1本の仮想ロッド電極の中で、電極素板の間隔がd1、d2という異なる2種類、電極素板の厚さもt1、t2という異なる2種類が存在している。前半領域50Aにおいては電極素板の厚さはt1で電極間隔はd1であり、後半領域50Bでは電極素板の厚さはt1よりも厚いt2で電極間隔はd1よりも狭いd2である。従って、このQアレイ50は図4に示したQアレイ30と図5に示したQアレイ40とを合わせたような作用となり、前半領域50Aでは多重極場成分の作用が強く、後半領域では四重極場の作用がより強くなる。
即ち、前半領域50Aでは高いイオンアクセプタンスでプリカーサイオンを収集し、これから発生したプロダクトイオンを高いトランスミッションで後半領域50Bに送り、後半領域50Bではプロダクトイオンをイオン光軸C付近に収束させて出口側アパーチャ開口612を効率良く通過させ、第2段四重極質量フィルタ63に送り込むことができる。これによって、例えばプロダクトイオンの信号強度を高くすることができる。
以上のように、本発明に係る質量分析装置において特徴的な仮想多重極イオン輸送光学系では、1つのイオン光学系において例えばイオン入口側とイオン出口側とで高次の多重極場成分を適宜に調整することができるので、従来の多重極イオン輸送光学系や仮想多重極イオン輸送光学系に比べてより高い効率でイオンを後段イオン光学素子に送り込むことができる。
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願請求の範囲に包含されることは当然である。

Claims (10)

  1. イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
    1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板にあってイオン光軸方向に隣接する電極素板の間隔が少なくとも複数種存在するようにM枚の電極素板が配置されていることを特徴とする質量分析装置。
  2. イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
    1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板はイオン光軸方向に板厚が相違する電極素板を含むことを特徴とする質量分析装置。
  3. イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
    1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板はイオン光軸方向に向いた外縁形状が相違するものを複数種類含み、イオン入射側では相対的に幅の狭い電極素板が配置され、イオン出射側では相対的に幅の広い電極素板が配置されていることを特徴とする質量分析装置。
  4. イオン光軸方向に互いに分離されたM(Mは2以上の整数)枚の電極素板から成る仮想ロッド電極を、イオン光軸を取り囲むように2N(Nは2以上の整数)本配置して成る仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系を具備する質量分析装置において、
    1本の仮想ロッド電極を構成するM枚の電極素板はイオン光軸方向に向いた外縁形状が円弧状であり、イオン入射側では相対的にその円弧の曲率半径が小さい電極素板が配置され、イオン出射側では相対的にその円弧の曲率半径が大きな電極素板が配置されていることを特徴とする質量分析装置。
  5. 請求項1に記載の質量分析装置であって、前記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、イオン入射側で相対的に隣接電極素板の間隔が広く、イオン出射側で相対的に隣接電極素板の間隔が狭い配置であることを特徴とする質量分析装置。
  6. 請求項2に記載の質量分析装置であって、前記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、イオン入射側で相対的に板厚の薄い電極素板が配置され、イオン出射側で相対的に板厚が厚い電極素板が配置されていることを特徴とする質量分析装置。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の質量分析装置であって、前記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、四重極質量フィルタ本体の前段にプレフィルタとして配設されていることを特徴とする質量分析装置。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の質量分析装置であって、前記仮想多重極ロッド型イオン輸送光学系は、イオンを衝突誘起解離させるためのガスが供給される衝突セル内に配設されていることを特徴とする質量分析装置。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の質量分析装置であって、Nは2であることを特徴とする質量分析装置。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の質量分析装置であって、イオン光軸方向に互いに分離されたM枚の電極素板はそれぞれ、1本の柱状体からイオン光軸方向に突出する舌片体から成るものであることを特徴とする質量分析装置。
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