本発明は、供給空気中に冷却水を直接噴射によって混入させて空気極側に供給する方式の燃料電池に適用して特に有効なものであり、これにより、空気流による冷却と併せて、多孔の放熱板に冷却水が均一に付着しかつ保持されることによって、電極全面にて反応生成熱を利用した均一な潜熱冷却が可能となり、冷却能が一層向上する。
金網部材の開口率は、十分な反応ガスを電極に供給する上で、大きいことが望ましく、機能達成上25〔%〕以上であることが望ましい。
また、前記金網部材の孔径は、反応ガスの拡散を均一化する上で、1〔mm〕以下であることが望ましい。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における燃料電池システムの構成を示す図、図2は本発明の第1の実施の形態における燃料電池の制御系のブロック図、図3は本発明の第1の実施の形態における燃料電池の起動制御の動作を示すフローチャート、図4は本発明の第1の実施の形態における燃料電池の空気供給制御の動作を示すフローチャートである。
図1には、本実施の形態における燃料電池スタック1を用いた車両用燃料電池システムの構成例が示されている。この燃料電池システムは、燃料電池スタック1を主体とし、それに空気を供給する空気供給手段としての空気ファン21を含む空気供給系(図1に実線で示す。)2及び水凝縮器31を含む空気排出系3とから成る燃料電池主体部と、水素供給手段としての水素タンク41を含む燃料供給系(図1に2点鎖線で示す。)4と、反応部の湿潤と冷却のための水供給系(図1に破線で示す。)6とから構成される。
燃料電池の主体部に配置された空気ファン21は、空気供給路20を介して空気マニホールド22に接続され、該空気マニホールド22は、燃料電池スタック1を収容する図示しない筐(きょう)体に接続されている。空気排出系3の水凝縮器31は、前記筐体に接続された排気マニホールド53に一端が接続された空気排出路30の他端に接続されている。空気排出路30には排気温度センサ32が配置されている。
燃料供給系4は、水素タンク41に貯蔵された水素を水素供給路40を介して燃料電池スタック1の水素通路へ送るべく設けられている。水素供給路40には、水素タンク41側から燃料電池スタック1側に向けて、水素圧センサとしての一次圧センサ42、水素供給調圧弁としての調圧弁43A、供給電磁弁44A、水素供給調圧弁としての調圧弁43B、供給電磁弁44B、水素圧センサとしての二次圧センサ45が設けられている。また、水素供給路40には付随的に水素帰還路40aと水素排出路50が設けられている。水素帰還路40aには、燃料電池スタック1側から順に、水素濃度センサ46A及び46B、吸引ポンプ47、逆止弁48が配置され、該逆止弁48の下流が水素供給路40に接続されている。前記水素帰還路40aにおける吸引ポンプ47と逆止弁48との間には、水素排出路50が接続されており、該水素排出路50には、逆止弁51と、水素排気弁52とが配置されている。そして、水素排出路50の他端は排気マニホールド53に接続されている。
水供給系6は、水タンク61に貯蔵された水を水供給路60を介して燃料電池スタック1の前記筐体の空気マニホールド22に配置されたノズル63へ送るべく設けられている。水供給路60には水ポンプ62が配置されている。また、水タンク61には、水位センサとしてのレベルセンサ64が配置されている。水供給系6には更に燃料電池スタック1の前記筐体と水タンク61をつなぐ水帰還路60aが設けられ、該水帰還路60aにはポンプ65と逆止弁66が配置されている。水帰還路60aは、ポンプ65の上流側で水凝縮器31に接続されている。なお、図1において、71は燃料電池の起電圧をモニターする電圧計を示す。
図2において、左列に示されるブロックは、制御のための情報を取得する入力手段であり、右列に示されるブロックは、制御対象となる出力手段である。これらの手段をつなぐコンピュータから成る制御装置8は、メモリ81を備えるものとされ、燃料電池システムのコントロールボックス(図1に示されていない)に収納されている。メモリ81には制御装置8の動作を規定するコントロールプログラム、各種制御を実行するときのパラメータ及びルックアップテーブルが収納されている。
次に、本実施の形態における燃料電池システムの運転制御を説明する。該運転制御は、水素供給量制御と、空気供給量制御と、水供給量制御とで構成される。まず、燃料電池の起動時は、図3に示すフローを参照して、ステップS1で起動スイッチ(図1及び2には図示せず)をオンとすると、ステップS2によって、水ポンプ62がオンとなる。このとき、所定の水噴射量となるように水ポンプ62の運転状態が調節され、ステップS3によって、ノズル63から空気マニホールド22内に水が噴射される。このときの水量は、異常反応から燃料電池スタック1を守るために空気極への供給水量が最大量となるようにされる。次のステップS4によって、空気供給系2がオンとなる。このとき、空気ファン21の風量も最大とされ、単位セルの冷却によって、異常反応の防止が図られる。次いで、ステップS5によって、水素供給系4がオンとなる。こうして、燃料電池スタック1の空気極と燃料極との間に所望の出力が確認されたら、電力が外部に出力される。
前記のフローにおいて、空気供給系2の稼動(ステップS4)は、水供給系6の稼動(ステップS2及び3)に先行してなされても良いし、水素供給系4の稼動(ステップS5)の後になされても良い。ただし、水供給系6の稼動は、水素供給系4を稼動させる前になされる必要がある。その理由は、単位セルには空気供給系2の稼動の有無にかかわらず空気が存在しているため、電解質膜が乾燥した状態で水素を供給すると、異常燃焼が発生する可能性があるためである。つまり、この燃焼による異常熱が発生した場合でも、単位セルがダメージを被らないように、水素を供給する前に水を噴射してあらかじめ空気極を濡(ぬ)らしておく。こうすることで、異常熱を水の蒸発熱に換え、更には電解質膜の湿潤を促進して、単位セルのダメージを未然に防止することができる。
前記のようにして起動が完了した後は、水素供給量制御と、空気供給量制御と、水供給量制御とが並列に実行される。水素供給量制御においては、調圧弁43A及び43Bが、爆発限界以下の所定の濃度で水素ガスが燃料極に供給されるように調整される。そして、起動時に閉状態の水素排気弁52をあらかじめ定められた規則に基づいて開放し、水素分圧の低下したガスを排気し、燃料極の雰囲気ガスをリフレッシュする処理が行われる。この際のあらかじめ定められた規則は、メモリ81に保存されており、調圧弁43A及び43Bの調整及び水素排気弁52の開閉は、制御装置8がこの規則をメモリ81から読み出して実行される。このように、水素排気弁52を運転時に適宜開くのは、該水素排気弁52を閉じた状態で燃料電池システムを運転し続けると、空気極より透過するN2 、O2 あるいは生成水の影響で、燃料極で消費される水素の分圧が徐々に低下するため、これに従って出力電圧も低下し、安定した電圧が得られなくなるためである。
次に、空気供給量制御においては、図4のフローを参照して、ステップS11において燃料電池スタック1から排出された直後の排気空気の温度を排気温度センサ32によって検出する。その温度がステップS12の判断で80〔℃〕を超えていると、単位セルが焼き付く恐れがあるため、ステップS13によって空気ファン21の回転数を増やして風量を増大し、熱発生源である空気極の温度を下げる。このとき、単位セル間の冷却ガス流路には80〔℃〕を超えた単位セルを冷却するのに必要な量の水が供給されているものとする。ステップS12の判断で検出された温度が80〔℃〕以下の場合には、ステップS14で単位セルの負荷を検出する。そして、ステップS15で、燃料電池の負荷と、その状態で必要とする風量の関係をメモリ81にテーブル形式で保存されている関係に照らし合わせる風量最適判断を行い、風量最適判断が不成立のときに、ステップS16によって風量調節を行う。
次に、水供給量制御においては、水タンク61の水が水ポンプ62で圧送され、ノズル63から噴霧される。この噴霧の吐出圧力は、水ポンプ62に印加される電圧の調整によってなされる。これにより、所望の水量が得られる。この場合の水の供給量は、排気温度に応じてあらかじめ定められている。この量は、水ポンプ62による動力損をできる限り少なくするため、排気温度を維持するために必要な最小量とされる。なお、排気温度が所定の温度(例えば、30〔℃〕)以下になれば、水の供給を止めることもできる。排気温度とそのときに供給すべき水量、更には水量とポンプ吐出圧の関係は、メモリ81に保存されているルックアップテーブルを参照して演算処理される。
前記水供給量制御については、他の方法もある。例えば、所定の時間経過(例えば、5〜10秒)毎に、一定の水圧で水供給系6を稼動させる方法でもよい。また、水噴出量を一定に保っておいて、排気温度その他の運転状況に応じて、そのオンオフ制御によって水の供給量を制御することもできる。更に、潜熱によるスタックの冷却に必要な水量以上に水を供給してもスタックの冷却能力が低下するものではないので、水ポンプ62のオン時には、最大風量(最大空気供給量)に対応した最大水供給量が常に供給されるようにしてもよい。また、排気温度が所定の温度(例えば、30〔℃〕)以下の場合は、最低量の水を間欠的に噴射させるようにして、水供給系6にかかる負荷をできるだけ小さくすることもできる。
前記の制御において、燃料供給系4では、一次圧センサ42によって水素タンク41側の水素圧がモニターされ、調圧弁43A及び43Bによって、燃料電池スタック1へ供給するのに適した圧力に調整される。そして、供給電磁弁44A及び44Bの開閉によって、水素の燃料電池スタック1への供給が制御される。水素ガスの供給の遮断は、供給電磁弁44A及び44Bの閉鎖によってなされる。また、二次圧センサ45によって、燃料電池スタック1に供給される直前の水素ガス圧がモニターされる。
次に、前記燃料電池スタック1の構成について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールの上面図、図6は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールを空気極側から観た正面図、図7は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールを燃料極側から観た正面図、図8は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールの要部断面図であり図6のB−B矢視要部断面図、図9は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールの要部断面図であり図6のA−A矢視要部断面図、図10は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールのセパレータの要部斜視図である。
図5において、10は、燃料電池スタック1を構成する単位ユニットとしてのセルモジュールである。図5に上面(以下、セルモジュール10の配置姿勢に即して上下及び縦横の関係を説明する。)を示すように、セルモジュール10は、単位セル(MEA:Membrane Electrode Assembly)10Aと、該単位セル10A同士を電気的に接続するとともに単位セル10Aに導入される水素ガスの流路と空気の流路とを分離するセパレータ10Bと、単位セル10Aとセパレータ10Bを支持する2種類のフレーム17及び18とを1セットとして、板厚方向に複数セット(図5に示される例では10セット)重ねて構成されている。なお、単位セル10Aは、フレーム18の内側に位置するため、図5には明確に表されていない。セルモジュール10は、単位セル10A同士が所定の間隙(げき)を隔てて配置されるように、単位セル10Aとセパレータ10Bとが、2種類のフレーム17及び18を交互にスペーサとして多段に重ねられて積層されており、積層方向の一端(図5における上端面側)は、図6に示すように、セパレータ10Bの縦方向凸条形成面と一方のフレーム17の端面とで終端し、他端(図5における下端面側)は、図7に示すように、セパレータ10Bの横方向凸条形成面と他方のフレーム18の端面とで終端している。
図8及び9に拡大した断面構造が示されるように、単位セル10Aは、固体高分子電解質膜11、該固体高分子電解質膜11の一側に設けられた酸化剤極である空気極12、及び、前記固体高分子電解質膜11の他側に設けられた燃料極13で構成されている。前記空気極12及び燃料極13は、前述の反応ガスを拡散しながら透過する導電性材料から成る電極拡散層と、この電極拡散層上に形成され、固体高分子電解質膜11と接触させて支持される触媒物質を含む反応層とから成る。これらの部材のうち、空気極12と燃料極13は、それらの支持部材としてのフレーム18の開口部の幅より若干長い横方向寸法と、開口部の高さより若干短い縦方向寸法を有するものとされている。また、固体高分子電解質膜11は、開口部の縦横方向寸法より一回り大きな縦横寸法とされている。
セパレータ10Bは、単位セル10A間のガス遮断部材としてのセパレータ基板16と、該セパレータ基板16の一側に設けられ、単位セル10Aの空気極12側の電極拡散層に接触して集電するとともに空気と水との混合流を透過する多数の開口が形成された網目状の導電体であり、放熱板として機能する空気極側コレクタ14と、セパレータ基板16の他側に設けられ、単位セル10Aの燃料極13側の電極拡散層に接触して同じく電流を外部に導出するための網目状の導電体である燃料極側コレクタ15とで構成されている。そして、これらを単位セル10Aも含めて所定の位置関係に保持すべく、空気極側コレクタ14の左右両側に配置されたフレーム17(最外側のもののみ上下端を相互にバックアッププレート17a及び17bで連結されて枠状(図6参照)を成す。)と、燃料極側コレクタ15及び単位セル10Aの周縁部にフレーム18が設けられている。空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、図示される例では、金属薄板、例えば、板厚が0.2〔mm〕程度のもので構成されている。また、セパレータ基板16は、板厚が更に薄い金属薄板で構成される。この構成金属としては、導電性と耐蝕(しょく)性を備えた金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケル合金、チタン合金等に金メッキ等の耐蝕導電処理を施したものが挙げられる。また、フレーム17及び18は、適宜の絶縁材料で構成される。
空気極側コレクタ14は、図6に示すように、全体形状を横長の矩(く)形(ただし、底辺だけが水切り効果の向上のために傾斜辺とされている。)とされ、図10に一部を拡大して詳細を示すように、開口率59〔%〕の網目状の開口143を有する(板面形状の参照を容易にすべく、一部のみに網目形状を表記。)エキスパンドメタル板材から成り、プレス加工によって形成された細かい凸条14aを有する波板とされている。これら凸条14aは、板材の縦辺(図示される例における短辺)に平行に等間隔で、板面を完全に縦断する配置とされている。これら凸条14aの断面形状は、大まかには矩形波状断面とされ、プレス加工の型抜きの関係から、根元側が若干裾(すそ)広がりの形状とされている。これら凸条14aの高さは、フレーム17の厚さに実質上等しい高さとされ、それにより、積層状態で両側のフレーム17間を縦方向に貫通する所定の開口面積の空気流路を確保している。各凸条14a間の底部141の平面は、空気極12側拡散層が接触する当接部となっており、凸条14aの頂部142は、セパレータ基板16との当接部とされている。
なお、空気極側コレクタ14には、親水性処理が施されている。処理方法としては、親水処理剤を、表面に塗布する方法が採られる。塗布される処理剤としては、ポリアクリルアミド、ポリウレタン系樹脂、酸化チタン(TiO2 )等が挙げられる。この他の親水性処理としては、金属表面の粗さを粗化する処理が挙げられる。例えば、プラズマ処理などがその例である。親水性処理は、最も温度が高くなる部位に施すことが好ましく、例えば、単位セル10Aに接触している凸条14a間の底部141、特に、空気流路側に施される。このように、親水性処理を施すことによって、空気極側コレクタ14と空気極12側の拡散層との当接面の濡れが促進され、水の潜熱冷却による効果が向上する。また、これにより、網目の開口部に水が詰まりにくくなるため、水が空気の供給を阻害する可能性も一層低くなる。
燃料極側コレクタ15は、空気極側コレクタ14と同様の寸法で網目状の開口153を有する(板面形状の参照を容易にすべく、一部のみに網目形状を表記。)エキスパンドメタルの矩形の板材から成り、プレス加工によって、複数の凸条15aが押出形成されている。凸条15aは、凸条間の底部151が平坦(たん)で、断面形状も、先の凸条14aの場合と同様に実質上矩形波状とされているが、この燃料極側コレクタ15の場合の凸条15aは、横方向に板面を完全に横断して延びるものとして縦方向に一定のピッチで設けられている。これら凸条15a間の底部151の平面は、燃料極13が接触する当接部となっており、凸条15aの頂部152がセパレータ基板16との当接部とされている。これら凸条15aの断面形状も、大まかには矩形波状断面とされ、プレス加工の型抜きの関係から、根元側が若干裾広がりの形状とされている。これら凸条15aの高さは、単位セル10Aの厚さと合わせてフレーム18の厚さに実質上相当する高さとされ、それにより、積層状態でフレーム18の内側を横方向に貫通する所定の開口面積の燃料流路を確保している。
上記の構成から成る空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15は、各底部141及び151がともに外側となるようにセパレータ基板16を間に挟んで配置される。このとき、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の頂部142及び152がセパレータ基板16と当接した状態となり、相互に通電可能な状態となる。また、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15がセパレータ基板16と重ね合わせることによって、セパレータ基板16の一方側に反応ガス供給流路と冷却空間を兼ねる空気流路(図10に流れ方向を矢印Aで示す。)が構成され、他方側に燃料流路(同じく、図10に流れ方向を矢印Hで示す。)が構成されることになる。そして、この縦方向の空気流路Aから、単位セル10Aの空気極12に空気と水とが供給され、同様に、横方向の燃料流路Hから単位セル10Aの燃料極13に水素が供給される。
前記の構成から成るセパレータ10Bの外側には、フレーム17及び18がそれぞれ配置される。図8及び9に示すように、空気極側コレクタ14を囲むフレーム17は、外端(図8において最上部、図9において左端)のものを除き、空気極側コレクタ14の短辺に沿う両側を囲う縦枠部171のみを備えるものとされ、これら縦枠部171を板厚方向に貫通する長孔172が燃料流路形成のために設けられている。フレーム17の板厚は、前記のように波板状とされた空気極側コレクタ14の厚みに匹敵する厚さとされている。したがって、フレーム17が空気極側コレクタ14に組み合わされた状態では、空気極側コレクタ14の凸条間の底部141は、単位セル10Aの空気極12に接触し、頂部142はセパレータ基板16を介して燃料極側コレクタ15に接触する位置関係となる。なお、セパレータ基板16は、フレーム17の高さと全体幅に相当する外形寸法とされ、フレーム17の前記長孔172と重なる位置に同様の長孔162を備える構成とされている。かくして、フレーム17の両縦枠部171の間には、単位セル10Aの空気極12面とセパレータ基板16とで囲われた縦方向に全通する空気流路が画定される。
燃料極側コレクタ15と単位セル10Aを囲むフレーム18は、フレーム17と同じ大きさに構成されているが、フレーム17とは異なり、左右縦枠部(図8では記載範囲より更に右外側に位置するため示されていないが、フレーム17の両縦枠部171の左右両側端と同じ位置に両側端を有する横方向幅が上下横枠部と略同じ枠部)と上下横枠部182を備える完全な枠状とされている。そして、フレーム18は、外端(図5において最下部、図7に示す面)のものを除き、左右縦枠部と平行に延び、燃料極側コレクタ15の左右端に重なる薄板状のバックアッププレート18aと厚板状のバックアッププレート18bを備えるものとされ、これらバックアッププレート18aと縦枠部171で囲われる空間が前記フレーム17を板厚方向に貫通する長孔172と整列する燃料流路形成のための空間を構成している。フレーム18の板厚は、前記のように波板状とされた燃料極側コレクタ15の厚みと単位セル10Aの厚みにほぼ匹敵する厚さとされている。したがって、フレーム18が燃料極側コレクタ15に組み合わされた状態では、燃料極側コレクタ15の凸条間の底部151は、単位セル10Aの燃料極13に接触し、頂部152はセパレータ基板16を介して空気極側コレクタ14に接触する位置関係となる。かくして、フレーム18の両縦枠部171とバックアッププレート18aとの間には、フレーム17の縦枠部171の長孔172と整列するフレーム積層方向の燃料流路が形成され、かつ、個々のフレーム18の内部において、燃料極側コレクタ15の波形によってセパレータ基板16とバックアッププレート18aに挟まれる横方向流路としての燃料流路が画定される。
以上のように、構成されたフレーム17及び18によって空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15並びにセパレータ基板16を保持してセパレータ10Bが構成され、該セパレータ10Bと単位セル10Aを交互に積層して、セルモジュール10が構成される。こうして積層されたセルモジュール10には、図5に示すように、フレーム18で挟まれる間の部分に、セルモジュール10の上面から縦方向にセルモジュール10の下面まで全通するスリット状の空気流路が形成される。
次に、前記単位セル10Aの構成について説明する。
図11は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの単位セルの構成を示す模式断面図である。
図11に示されるように、単位セル10Aは、燃料反応層131と電極拡散層としての燃料拡散層132とを備える燃料極13と、酸素反応層121と電極拡散層としての酸素拡散層122とを備える空気極12と、かかる燃料極13と空気極12との間に設けられ、燃料反応層131と酸素反応層121とに接する固体高分子電解質膜11とを有する。そして、燃料極13にはセパレータ10Bの燃料極側コレクタ15が接し、セパレータ基板16と燃料極13との間に燃料流路73が形成され、空気極12にはセパレータ10Bの空気極側コレクタ14が接し、セパレータ基板16と空気極12との間に空気流路72が形成されている。また、燃料拡散層132は、燃料拡散層核部132aと燃料極外側撥水性材料含有層132bと燃料極内側撥水性材料含有層132cとを有している。さらに、酸素拡散層122は、拡散層核部としての酸素拡散層核部122aと撥水層としての酸素極外側撥水性材料含有層122bと撥水層としての酸素極内側撥水性材料含有層122cとを有している。
図示される例においては、固体高分子電解質膜11と、該固体高分子電解質膜11の一方の面に接合された燃料反応層131と、固体高分子電解質膜11の他方の面に接合された酸素反応層121とで、化学反応を起こして電気を発生させる部分である反応部111が構成されている。また、燃料極13と、空気極12と、かかる燃料極13と空気極12との間に設けられた固体高分子電解質膜11とで、単位セル10Aが構成されている。なお、本実施の形態においては、説明の便宜上、単位セル10Aにおいて、固体高分子電解質膜11に相対的に近い位置を「内側」、固体高分子電解質膜11から相対的に遠い位置を「外側」という。
本実施の形態においては、燃料拡散層132の撥水性を、酸素拡散層122の撥水性よりも高くした。より具体的には、燃料極内側撥水性材料含有層132c及び燃料極外側撥水性材料含有層132bの撥水性を酸素極内側撥水性材料含有層122c及び酸素極外側撥水性材料含有層122bの撥水性よりも高くすることによって、燃料拡散層132の撥水性を、酸素拡散層122の撥水性よりも高くした。
これにより、単位セル10A内の水のバランスを、発電に適した状態に保つことができるようになる。さらに、燃料拡散層132及び酸素拡散層122の撥水性を調節すると、燃料反応層131及び酸素反応層121の電気抵抗を増大させずに、単位セル10A内の水のバランスを、発電に適した状態に保つことができるようになる。
単位セル10Aは、燃料反応層131で水素を酸化し、酸素反応層121で酸素を還元することによって、電気を発生させる。このとき、酸素反応層121では、水が発生する。また、燃料反応層131では、水素イオンが発生する。この水素イオンは、水分子を引きつれて、固体高分子電解質膜11を通り、酸素反応層121内に移動する。そのため、燃料反応層131では水が減少し、酸素反応層121では水が増大する傾向にある。ところが、酸素反応層121で水が過多になると、酸素は、酸素拡散層122から酸素反応層121内に移動しにくくなる。すなわち、酸素反応層121で水が過多になると、酸素反応層121に酸素が供給されにくくなる。また、燃料反応層131で水が過少になると、水素イオンの発生効率が低下する。したがって、効率よく電気を発生させるためには、酸素反応層121中の水の量が過度に増大するのを防止し、燃料反応層131中の水の量が過度に減少するのを防止する必要がある。そこで、本実施の形態においては、燃料拡散層132の撥水性が酸素拡散層122の撥水性よりも高くなっている。
燃料拡散層132の撥水性を酸素拡散層122の撥水性よりも高くすると、すなわち、酸素拡散層122の撥水性を燃料拡散層132の撥水性よりも低くすると、酸素反応層121中の水は、酸素拡散層122を通って、空気極12の外に効率よく排出されるようになる。また、燃料反応層131中の水は、燃料拡散層132内に進入しにくく、さらには、燃料拡散層132内を通り抜けにくくなる。このため、燃料反応層131内では、水が留まりやすくなる。
したがって、酸素反応層121中の水の量が過度に増大することが防止され、しかも、燃料反応層131中の水の量が過度に減少することが防止されるようになる。そのため、単位セル10Aでは、燃料反応層131及び酸素反応層121で反応が効率よく進むようになり、電池出力が向上する。しかも、燃料拡散層132及び酸素拡散層122の撥水性を調整すると、燃料反応層131及び酸素反応層121の撥水性をあまり調整しなくても、単位セル10A内の水のバランスを好適に保つことができるようになる。
また、燃料極内側撥水性材料含有層132c及び酸素極内側撥水性材料含有層122cが多孔質の場合、燃料極内側撥水性材料含有層132cの空孔率を酸素極内側撥水性材料含有層122cの空孔率よりも低くすることが好ましい。例えば、燃料極内側撥水性材料含有層132c及び燃料極外側撥水性材料含有層132bの空孔率は、20〜70〔%〕程度とすることが好ましく、35〜55〔%〕程度とすることがより好ましい。さらに、酸素極内側撥水性材料含有層122c及び酸素極外側撥水性材料含有層122bの空孔率は、30〜80〔%〕程度とすることが好ましく、45〜65〔%〕程度とすることがより好ましい。また、酸素拡散層核部122aの空孔径は数〔μm〕〜数100〔μm〕、酸素極内側撥水性材料含有層122cの空孔径は10〔nm〕〜数10〔μm〕であり、酸素拡散層核部122aよりも酸素極内側撥水性材料含有層122cの空孔径が小さく形成されている。これにより、燃料極13では、水が燃料反応層131内により好適に留まるようになり、空気極12では、不要な水が好適に酸素反応層121から排出されるようになる。この場合、燃料極内側撥水性材料含有層132cの空孔率を酸素極内側撥水性材料含有層122cの空孔率よりも5〔%〕以上低くすると、このような効果がより効果的に得られるようになる。なお、燃料極内側撥水性材料含有層132cの空孔率と酸素極内側撥水性材料含有層122cの空孔率は、同じものとしてもよい。また、燃料極内側撥水性材料含有層132cの空孔率を酸素極内側撥水性材料含有層122cの空孔率よりも高くしてもよい。
こうした構成から成るセルモジュール10を筐体内に複数個並べて配置することで構成される燃料電池スタック1(図1参照)は、その上部から空気マニホールド22で混合された空気と水を供給し、側方から水素を供給することで、発電作動する。空気流路に供給される空気と水は、空気流中に水滴が霧状に混入した状態(以下、この状態を混合流という。)で空気流路の上部に入る。燃料電池の定常運転状態では、単位セル10Aが反応によって発熱しているため、空気流路内の混合流が加熱される。該混合流中の水滴は、親水性処理によって一部が空気極側コレクタ14の網目状部分と単位セル10Aの空気極12側に付着し、空気極側コレクタ14の網目状部分に付着しなかった水滴は、大部分は空気極側コレクタ14と電極拡散層との間の気相中で加熱されることによって、蒸発して空気極側コレクタ14から熱を奪う潜熱冷却作用が生じる。こうして蒸気となった水は、空気極12側からの固体高分子電解質膜11中の水分の蒸発を抑えて保湿させる。また、その気相中で蒸気とならなかった水は、酸素極内側撥水性材料含有層122cの空孔径が酸素拡散層核部122aよりも小さいため、酸素極内側撥水性材料含有層122cで遮断されて酸素拡散層核部122aに入り込まない。そして、空気流路に入った余剰の空気と蒸気は、燃料電池スタック1の下方の空気流路開口から排出される。
一方、燃料流路への水素の供給は、図7に示す最外側のフレーム18の縦枠部の長孔から、順次積層されたセパレータ基板16の長孔162、フレーム17の縦枠部171の長孔172を経て各フレーム18の縦枠部及びバックアッププレート18aによって囲まれる空間に流入し、セパレータ基板16とバックアッププレート18aによって挟まれる空間を経て単位セル10Aの燃料極13側に供給される。これにより、単位セル10Aの燃料極13への水素の供給が行われる。そして、燃料極13に沿って横方向に流れる水素のうち、反応に関与しなかった余剰分が、反対側の燃料流路に排出され、この燃料流路につながる図1に示す配管によって循環され最終的に排気マニホールド53に排出される。
かくして、燃料電池スタック1に空気とともに送り込まれた水は、先に説明したように、一部は空気極側コレクタ14の網目状部分に付着して蒸発し、それ以外は気相中で網目状部分に付着せずに蒸発して潜熱を奪うので、空気極12側の固体高分子電解質膜11からの水分の蒸発が防止される。したがって、固体高分子電解質膜11はその空気極12側で乾燥することなく、生成水によって常に均一な湿潤状態を維持する。また、空気極12の表面に供給された水は、空気極12自体からも熱を奪いこれを冷却する。これにより、燃料電池スタック1の温度を制御することができる。
燃料電池スタック1内での水素の流れは、先に説明した通りである。燃料供給系4において、燃料電池スタック1の燃料流路から吸引ポンプ47の吸引によって排出される水素ガスは、水素濃度センサ46A及び46Bによって濃度を計測され、所定の濃度以上のときは、水素排気弁52の閉鎖によって逆止弁48を経て水素供給路40に還流される。また、所定の濃度に満たないときは、水素排気弁52の間歇(けつ)的開放によって逆止弁51及び水素排気弁52を経て排気マニホールド53に水素が排出され、排出空気と混合して水素濃度を低下させた後、大気へ放出される。
ここで、本実施の形態における燃料電池のストイキ比について説明する。
図12は本発明の第1の実施の形態における燃料電池スタックの各ストイキ比における電流密度と空気排気温度との関係を示す図である。なお、図12において、横軸には電流密度〔A/cm2 〕を採ってあり、縦軸には空気排気温度〔℃〕を採ってある。
ここで、ストイキ比とは、燃料電池反応で消費される理論上の酸素量を含むプロセス空気量を基準として空気極12に供給される空気量を規定したものである。したがって、ストイキ比が1の場合は、理論上必要な最小限の空気量が送られる場合であり、ストイキ比が2になると、空気供給量はストイキ比1のときの2倍となる。図12から分かるように、ストイキ比が小さいほど、すなわち、空気供給量が少ないほど同じ負荷を得るのに高い温度で燃料電池スタック1を運転することができることがわかる。燃料電池スタック1の運転温度は、これが高ければ高いほど効率が高くなる。また、その高温運転によって排出空気の温度も上がるので水凝縮器31の容量を小さくすることもできる。したがって、要求される負荷を賄える最も高い温度で燃料電池スタック1を運転することが好ましい。負荷と燃料電池スタック1の温度とはストイキ比によって一義的に決められるので、負荷と温度の一方を検出してストイキ比、すなわち、空気供給量(厳密には空気室入口に供給される量)を決めればよいことになる。
負荷変動の激しい車両用の燃料電池では、要求される負荷に応じて空気供給量を変化させる。そのとき、同時に燃料電池スタック1の温度を検出して、要求された負荷を実現することができる最高温度、すなわち、最小のストイキ比(空気供給量)となるように空気供給量を調整することが好ましい。一方、ほとんど負荷が変動しない環境で使用される燃料電池においては、実質的に燃料電池スタック1の温度のみを監視して、その温度が変動したときのみこれが所望の温度となるように空気供給量を調節すればよい。すなわち、燃料電池スタック1の温度が所望の温度範囲より低くなった場合には、空気供給量を低減させて水の潜熱を利用した冷却効果を下げ、他方、燃料電池スタック1の温度が所望の温度範囲より高くなった場合には、空気供給量を増大して水の潜熱を利用した冷却効果を上げる。
また、ストイキ比を上げるほど水の潜熱だけではなく、空気供給量が増えることによる電極の空冷効果も増大することになり、冷却能力が向上する。図12を見ると、ストイキ比の値は10までになっているが、これら縦軸のストイキ比の値や横軸の電流密度の値は、電極の発電能力や面積、更には燃料電池の出力値によって必要な冷却量が変わってくるので、この値に限られるものではなく、燃料電池の設計によって変化する値である。また、冷却性能において水の潜熱を重視するか空気の流れによる空冷効果を重視するかによっても、ストイキ比の値は変化するものと予想することができる。
外部の環境や補機の性能によって燃料電池の運転条件には様々な制限が課せられる。場合によっては、燃料電池スタック1の運転条件が図12における運転可能条件領域において四角で示した領域に限られることがある。この領域では、燃料電池スタック1の運転温度はストイキ比1のラインを超えることはない(燃料電池スタック1を常に稼動させておくため、常に少なくともストイキ比1に対応した空気量が供給されているものとする。)。したがって、燃料電池スタック1の温度を監視する必要はない。これにより、負荷のみを監視して当該負荷を出力可能な最低量の空気が供給されるようにする。
このように、本実施の形態における燃料電池では、燃料電池スタック1へ、特に、冷却水系を付設しなくても、空気流に乗せて水を供給することで、燃料電池スタック1を十分に湿潤し、かつ、冷却することができる。この際、燃料電池スタック1の温度は、排気温度センサ32で検出された排出空気の温度に対応して水ポンプ62の出力や運転間隔を適宜制御することで、ノズル63から空気マニホールド22内に噴出させる水の噴射量が制御され、所望の温度に維持される。具体的には、燃料電池スタック1内に供給する水量を増やせば蒸発量が増え、水量を減らせば蒸発量が減るとともに、風量を増やせば温度が下がり、風量を減らせば温度が上がるので、供給水量と風量とを制御することで、運転温度を制御することができる。なお、燃料電池スタック1から空気とともに排出される水は、大部分が液体の状態を維持したまま排出されるため、水帰還路60aに流れポンプ65に吸引されて逆止弁66経由で水タンク61に戻され、蒸発して水蒸気状になったものや水帰還路60aに回収されなかったものについては、水凝縮器31で凝縮されて液状とされ、あるいはそのまま水凝縮器31を通って同様にポンプ65による吸引で水タンク61に戻される。なお、排気空気に含まれる水蒸気には燃料電池スタック1の発電反応に伴う反応水に起因するものもあると考えられる。この水タンク61の水位は、レベルセンサ64でモニターされる。
そして、本実施の形態における燃料電池では、単位セル10Aの空気極12に直接当接する空気極側コレクタ14が多孔の網目状とされているので、冒頭に挙げた従来技術のように、孔部の重なり合いによって空気極12への空気の供給が規制されることがない。また、空気極側コレクタ14と供給空気の接触面とが孔の形成と矩形波波板状の屈曲とによって広くなるため、空気極側コレクタ14における空気極12で発生する熱を冷却空間を流れる空気流に伝達する放熱フィンとしての機能が向上する。このため、空気極12側に供給する空気を利用して単位セル10Aを冷却する方式の燃料電池において、単純な構成で空気の拡散性と冷却効率を併せて向上させることができる。
さらに、空気極側コレクタ14が細かい網目状となっており、電極拡散層との接触面にも開口が形成されていることで、空気と水との混合流がこの開口を通過する際に攪拌(かくはん)されるとともに、電極拡散層の空気極側コレクタ14との接触面にも混合ガスが供給されるので、燃料電池スタック1における電極全面に均一に空気を供給することができ、それにより、濃度分極を少なくすることができる。また、電極と空気極側コレクタ14との網目状の接触によって、電極全体から均一に集電することができるため、集電抵抗が減少する。さらに、電極全体の触媒を有効に使用することができるため、活性化分極が少なくなる。また、電極の有効面積を大きくすることができる利点も得られる。
さらに、空気極12の酸素極外側撥水性材料含有層122b及び酸素極内側撥水性材料含有層122cの撥水性が高いので、混合流中の水滴が空気極12に付着しても、単位セル10Aに吸収されることがなく、該単位セル10Aの冷却に効果的に使用される。そのため、冷却効率が向上し、冷却水等の冷媒を循環させる冷却システムを別途設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。また、冷媒を循環させる循環ポンプ等の補機類を駆動する必要がないので、動力損失を低減することができ、効率の高いシステムを得ることができる。
換言すると、本実施の形態における燃料電池は、供給水量と風量とを制御するとともに、空気極12に直接当接する空気極側コレクタ14が多孔の網目状とされ、かつ、空気極12の撥水性が高くなっている。
そのため、水詰まりが発生することがない。すなわち、供給水量及び風量の制御に撥水性が高い空気極12が組み合わされているので、撥水性が高い空気極12の表面が水をはじくために水膜を生成することがなく、空気の供給が阻害されず、燃料電池の性能が向上する。また、供給水量及び風量の制御に網目状の空気極側コレクタ14が組み合わされているので、空気流路中の水が網目状の空気極側コレクタ14によって落とされ、空気流路中に水が溜まることがなく、空気の供給が行き渡り、燃料電池の性能が向上する。
さらに、温度分布が発生することがない。すなわち、供給水量及び風量の制御に網目状の空気極側コレクタ14が組み合わされているので、空気極12の熱交換面積が広がり、空気や水と接触しない部分がなくなるので、冷却効果が向上する。
さらに、圧力損失を小さくすることができる。すなわち、供給水量及び風量の制御に網目状の空気極側コレクタ14が組み合わされているので、空気極12の全面が空気流路となり、流路抵抗が減少する。また、空気流路中の水が網目状の空気極側コレクタ14によって落とされ、空気流路中に水が溜まることがなく、流路抵抗が減少する。
さらに、供給水量及び風量の制御に網目状の空気極側コレクタ14と撥水性が高い空気極12とが組み合わされているので、供給水量と風量とを低減することができ、補機による動力の損失が減少する。
なお、本実施の形態においては、セパレータの電極拡散層との接触側、すなわち、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15をエキスパンドメタルで構成した場合について説明したが、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15の素材として、金属繊維や、金属多孔体、二次元金属織布、金属不織布、波状金属体、溝状金属体、金網、パンチングメタルなど、他のものを用いることもできる。そこで、コレクタ素材を変更した例について説明する。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図13は本発明の第2の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールのセパレータの要部斜視図である。
図13には、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15をパンチングメタルで構成した例が示されている。更にこの例では、両コレクタ素材を共通化すべく波状寸法、すなわち、波の高さ及びピッチを第1の実施の形態における燃料極13側の燃料極側コレクタ15と同一のものとしている。そして、この構成の採用に伴い、波高が低くなった空気極12側の流路断面積を確保すべく、セパレータ基板16にも空気極側コレクタ14の頂部142の配置ピッチに合わせたピッチで空気極側コレクタ14側に突出する凸条16aを形成して、セパレータ基板16も波板状としている。
この例では、前記第1の実施の形態における空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15と同様の板厚の素材にパンチによる多数の孔を一面に形成している。ちなみに図示の例では、板厚0.2〔mm〕の板に縦横幅0.l〔mm〕の孔を0.1〔mm〕の間隔をおいて形成している。なお、図面では開口143及び153の形状の向きを縦横平行としているが、この向きは、特に規制されるものではなく、前記第1の実施の形態と同様に斜め向きとすることも含めていかなる向きの配置も可能である。本実施の形態におけるセパレータ基板16の凸条16aの高さは、この高さと空気極側コレクタ14の凸条14aの高さとの和が前記第1の実施の形態における空気極側コレクタ14の凸条14aの高さと等しくなる設定とすることで、空気極12側の流路断面積を第1の実施の形態と同様とすることができる。
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様に、電極拡散層に接する空気極側コレクタ14が細かい網目状かつ波板状となっているので、前記第1の実施の形態と同様の効果を達成することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1及び第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1及び第2の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図14は本発明の第3の実施の形態における燃料電池スタックのセルモジュールのセパレータの要部斜視図である。
図14には、空気極側コレクタ14及び燃料極側コレクタ15を前記第2の実施の形態と同様のパンチングメタルで構成しているが、燃料極13側の燃料極側コレクタ15を波状を有しない平板で構成した例が示されている。この例の場合は、空気極12側と燃料極13側の流路断面積をともに確保すべく、セパレータ基板16は、該セパレータ基板16の基準面に対して空気極12側と燃料極13側にともに突出する凸条16a及び16bを形成した波板で構成されている。その他の点の構成については、前記第2の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。