JP4812252B2 - 無水伝熱流体およびその使用方法 - Google Patents

無水伝熱流体およびその使用方法 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
関連出願
本出願は、米国出願第09/910497号(2001年7月19日出願)の一部継続出願である。
発明の分野
本発明は、一般的に、熱交換システムで使用する実質的に無水性であって毒性が減じられた伝熱流体(または熱媒流体)に関し、例えば内燃機関の冷却液、電気部品もしくは電子部品の冷却液、太陽エネルギー加熱システム用の伝熱流体または工業プロセスで温度を維持するための伝熱流体に関する。また、本発明は、無水伝熱流体を仕込むのに備えて熱交換システムからの残留水を吸収するコンパチブルな(または相溶性の)毒性が減じられた調製流体に関する。
発明の背景
伝熱流体は種々の用途に用いられている。伝熱流体の一般的な用途の1つに、内燃機関の冷却液としての用途がある。現在使用される伝熱流体の殆どは、エチレングリコール(EG、不適当に処分されると環境汚染を引き起こし得る危険物質である)と混合された水を含んでいる。このような流体は、人および他の哺乳類に摂取された場合に、それらの哺乳類の健康に対して危険な影響を引き起こし得る。更に、使用済み伝熱流体が暴露されると、重金属元素の沈殿物(または析出物)および毒作用防止剤(もしくは毒作用抑制剤:水が関連する反応を防ぐために添加されている)に起因したコンタミネーションによって、健康への悪影響が引き起こされ得る。
アメリカ合衆国だけでも毎年およそ7億ガロンの伝熱流体濃厚物が販売されており、世界中では約12億ガロンの伝熱流体濃厚物が販売されている。濃厚物は、実際の伝熱流体を形成すべく多量の水フラクション(または水分)が加えられている組成物(または配合物)である。これらの濃厚物から形成される伝熱流体の殆どは、同様な伝熱流体と交換され、使用済みの伝熱流体が自動車のエンジン冷却システム等の伝熱システムから排出される。相当の割合の濃厚物が不適当に処分されており、それが環境を汚染する結果になると考えられている。消費者による不適当な処分は、このような環境汚染の主な原因である。環境汚染のもう1つの主な原因は、大型車両からのリーク、溢出(またはこぼれること)およびオーバーフローである。経験によると、大型車両ではウォーター・ポンプ、ホース・クランプまたはラジエター・コア等のシステム部品のリークに起因して、12000〜18000マイル運転する毎に10体積%のエンジン用伝熱流体を損失することが一般的であるとされている。このような損失割合は、一般的な高速トラックでは1ヶ月につき約1ガロンの割合で損失することに等しく、1分間に1滴というリーク速度に等しいものである。1分間に1滴という伝熱流体のリーク速度は、おそらく気付くことはないが、総計すると相当な量の損失となり得る。
大型車両に用いられる或る操作において、オーバーフローは、ウォーター・ポンプ、ホース・クランプまたはラジエター・コアでの低いレベルのリークよりも相当多くの伝熱流体の損失をもたらす。オーバーフローは、過熱に起因して生じるか、またはエンジンの冷却システムが過剰な程度に充填される場合に生じる。エンジンの冷却システムが過剰に充填される場合、エンジンの運転によって伝熱流体が加熱され、システム内に含んでおくことができない程に流体の膨張が生じることになる。一般的には、圧力リリーフ弁(または圧力安全弁)のラインによって、過剰の流体はグランド(または外もしくは地面)へと漏れ出ることができる。伝熱流体の溢出およびリークが少量(1ガロンより少ない量)であった場合は、最終的に生物分解され、環境への影響は殆どない。しかしながら、生物分解が起こる前では、かかる溢出およびリークは、ペットおよび野生動物に対して中毒の危険を与える可能性がある。
一般的に、現在のエンジン用冷却液組成物では、水が主な除熱流体として用いられている。エンジン用冷却液の水分は、冬の気候の厳しさに依存するが、一般的に30体積%〜70体積%である。常套のエンジン用冷却液の主な第2成分は、氷点降下剤(または凝固点降下剤もしくは凍結点降下剤)である。最もよく使用される氷点降下剤はEGであり、EGをエンジン用冷却液で30体積%〜70体積%の範囲になるように水に加えて冬期の水の凍結を防止している。EGは、1より多くの水酸基を有する多価アルコールである。多価アルコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびヘキシレングリコール等)の多くは、水に加えられると、水の氷点を降下させると共に水の沸点を上昇させる。EGは、エンジンを冷却させるのに優れた特性を有し、また、多価アルコールの中で最も安価であるという点でエンジン用冷却液組成物に最も一般的に使用されている多価アルコールである。
水およびEGの他に、伝熱流体には数種類の化学薬品を含む添加剤パッケージが含まれている。このような添加剤は、腐食、キャビテーション、沈着物(または析出物)形成および発泡を防止するように設計されており、各々が冷却液濃厚物の0.1重量%〜3重量%の濃度で存在するのが一般的である。一般的に、添加剤を氷点降下剤と混合して不凍液濃厚物を形成し、それを水とブレンドさせてエンジン用冷却液を形成することができる。PGはEGより低い毒性値を有するということが主な理由であるが、EGの代わりとして、多価アルコールのプロピレングリコール(PG)と添加剤とから成る組成物が氷点降下剤として用いられている。
異なる種類のエンジンは異なる条件を有するので、全てのエンジンに対して同じ冷却液組成物が使用されることはない。例えば、大型車両のエンジンでは、キャビテーションに起因したシリンダー・ライナーの鉄腐食(または鉄浸食)を制御するために、高濃度の硝酸ナトリウムが添加剤として必要とされる。エンジン用冷却液の大部分が水で構成されている場合には、シリンダー・ライナーのキャビテーションが生じ得る。例えば、水(50%)とEG(50%)との混合物(EG/Wが50/50である)を大型車両のエンジンに用いる場合、冷却液の操作温度(約200°F、93.3℃)が、冷却液の沸点(10psigで約250°F(121℃))にかなり近くなる。シリンダー・ライナーの振動に起因して、冷却液から遠ざかるようにライナーが移動するとサイクルの一部で低い圧力領域が形成される一方、冷却液の方へとライナーが移動すると高い圧力領域が形成される。サイクルの低い圧力時にて冷却液が蒸発すると、振動サイクルの高い圧力時にて、蒸発した冷却液が即座に液体へとコラプス(collase)してしまう。高い振動の発生および冷却液蒸気のコラプスが繰り返されることによって、ライナーの表面が攻撃され、少量の鉄が腐食されることになる。シリンダー壁に衝撃を与える蒸気量を制限するために硝酸ナトリウムが添加される。大型車両と比較して、軽車両エンジンで硝酸ナトリウムを使用することは、必ずしも必要でなく、必ずしも望ましくない。EG(またはPG)に対する水の種々の割合と種々の添加剤組成物とのバランスは複雑なので、エンジン用冷却液が誤って調合されると氷結防止が不適当となり得、ラジエターおよびヒーター・コアが閉塞し得ることになる。更に、以下で説明するように、これらの問題の多くは、このようなエンジン用冷却液に必要とされる多量の水フラクションによってもたらされる。
大型車両のエンジンと軽車両の自動車エンジンとの間のもう1つの相違は、大型車両のエンジンでは運転で消費される添加剤を補充するために補充用冷却液添加剤を使用することである。20000マイル(32186km)〜30000マイル(48279km)の冷却液寿命を有する乗用車では、補充用冷却液添加剤を使用しておらず、また必要としていない。大型車両では、冷却液を交換するのに200000マイル(321860km)〜300000マイル(482790km)の運転を必要とする。冷却液をより長く使用する必要がある場合では、大型車両のエンジン用冷却液の防止剤(またはインヒビターもしくは抑制剤)を定期的に補充する必要がある。一般的に使用される補充用冷却液添加剤の例示として、亜硝酸ナトリウム、リン酸二カリウム、モリブデン酸ナトリウム二水和物、リン酸が含まれる。
補充用冷却液添加剤を冷却液の体積と化学的にバランスをとる必要があり、適切に制御することは困難であってコストのかかるものと成り得る。添加剤のバランスが不適当になると、冷却システム部品およびエンジンに激しい損傷がもたらされ得る。冷却液での補充用冷却液添加剤の濃度が低すぎる場合、エンジンおよび冷却システム部品に腐食およびキャビテーションという損傷が生じ得る。一方、補充用添加剤の濃度が高すぎる場合には、冷却液溶液(または冷却溶液)から添加剤が析出(または沈殿)し得、ラジエターおよびヒーター・コアが閉塞し得る。補充用冷却液添加剤に関して更に懸念すべきことは、ある条件下では、補充用冷却液添加剤がエンジン用冷却液に適切に溶解しにくいことである。補充用添加剤が完全に溶解しない場合では、エンジン内で更なる閉塞問題が引き起こされることになる。
常套の不凍液/冷却液濃厚物の95重量%はグリコールから成り、水とブレンドした後では、乗り物に使用する冷却液の約30体積%〜70体積%がグリコールから成る。代替的なグリコールと比べて、EGは比較的豊富に存在し、かつコストが安いので、常套の不凍液はEGを用いて通常調合される。エンジン用冷却液の氷点降下剤としてEGを用いる場合の主な不利益点は、人および他の哺乳類がEGを摂取した場合に高い毒性を有することである。毒性は、LD50評価システムとして知られる評価システムにしたがって一般的に測定される。LD50は、実験用ラットに一回投与した場合、実験用ラットの50%を死亡させる物質量を体重1kgに対してmg(mg/kg)で表したものである。LD50値が低いほど、毒性が高いことを示す(即ち、より少量の物質は致死性を有し得る)。体重1kg当たり5000mg(5000mg/kg)以下のLD50値では、不凍液濃厚物が危険であるものと分類され得る。EGは4700mg/kgのLD50値を有するため、この評価システムでは危険なものと考えられている。更に、EGは、比較的低いレベルで人に対する既知の毒性を有している。
EGに関連する毒性は、EGの代謝産物によってもたらされ、その代謝産物の幾つかは毒性である。EGは摂取されるとアルコール脱水素酵素(ADH)によって代謝され、グリコアルデヒドに変換される。グリコアルデヒドは更にグリコール酸(グリコレート)に代謝される。グリコール酸が蓄積することによって、代謝性アシドーシスが生じる。また、グリコール酸の蓄積は、動脈の重炭酸塩濃度の減少と相関関係がある。グリコール酸の幾らかはグリオキシル酸(グリオキシレート)に代謝され、そのグリオキシル酸は更にシュウ酸(オキサレート)に代謝される。血流にてシュウ酸は結合して血清カルシウムになり、シュウ酸カルシウムの結晶として析出する。
EGの摂取で見られる特徴的症状には、アニオンギャップ代謝性アシドーシス、低カルシウム血症、心不全および急性乏尿性腎不全が含まれる。多くの場合、シュウ酸カルシウム結晶が、体内で見ることができる。腎臓内のシュウ酸カルシウム結晶は、急性腎不全の進行をもたらすか、または急性腎不全の進行と関連を有するものである。
有害物質放出インベントリー報告書(Toxic Release Inventory Reporting);申請書に対する受理の通知(Notice of Receipt of Petition)、連邦政府発行の官報第63巻第27号(Federal Register、Vol.63、No.27)(1998年2月10日)において、人に対するエチレングリコールの致死量は、体重1kg当たりおよそ1570mg(1570mg/kg)と報告されている。その結果、EGは多くの取締機関によって危険物質として分類されている。また、EGは、甘い匂いと甘い味という種々の併合する性質を更に有するので、動物および子供にとって魅力あるものとなっている。
EGの毒性に起因して、近年、PG(約95%)と添加剤とを有する基礎流体濃厚物が、多くの不凍液組成物中のEG(添加剤を有している)の代わりに用いられている。EGの4700mg/kgというLD50値と比較して、PGは20000mg/kgというLD50値を有している。PGは、毒性が実質的に無いと考えられており、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)によって食品添加物として認可されている。不凍液濃厚物の基礎流体として、PGをより広範に使用することの最大の障害は、EGと比べて比較的コストが高いことである。
EG系またはPG系にかかわらず、全ての常套の不凍液濃縮物は、その組成物中に水を含んでいる。EG自体は、水が存在しない状態で+7.7°F(−13.5℃)で凍結するので、EG系不凍液濃厚物は、その組成物中に水を少ない割合で必要とする。氷点を降下させるために少量の水を加える必要がある。エチレングリコールに4体積%の水を加えることによって、混合物の氷点が−3°F(−19.4℃)まで降下する。PG(水を含んでいないPG自体)の氷点は、−76°F(−60℃)と比較的低いものである。しかしながら、必要な添加剤の幾つかは、EGまたはPGに容易に溶解しないので、全ての常套の濃厚物の混合物(または濃縮混合物)に水が加えられる。グリコールに溶解しない或る添加剤を溶解させるために、冷却液濃厚物に3〜5重量%の水が含まれているのが一般的である。常套の濃厚物にとって、加えられる水は、特に濃厚物の長期保存ができるように添加剤の溶解を保持する点で重要である。
水溶性添加剤を溶解させるために、EGおよびPG系濃厚物に3〜5%の水を意図的に加えるが、水を加えただけでは、長期にわたって溶液中で添加剤を維持するのに効果的ではない。長期保存のためには、常套の冷却液濃厚物を定期的に攪拌して添加剤を溶液中に保持させる必要があり、濃厚物と水とがブレンドされるまで攪拌を行なって最終的な冷却液混合物を形成している。かなり長い期間(6〜8ヶ月)濃厚物として貯蔵する場合、1種類またはそれ以上の添加剤が溶液から析出して容器の底に蓄積し、ゲルが形成されることがある。ゲル化した添加剤は、攪拌しても溶液中に戻ることはない。例えば、EG/水(50/50)のようなエンジン用冷却液において水溶性添加剤が水と混合される場合、エンジンの運転により定期的に攪拌しない場合でも、水溶性添加剤はゲルを形成し得る。このことは、固定式緊急ポンプおよびジェネレーター(または発電機)ならびに軍事用および他の限定的な用途に使用されるエンジンにとっては、深刻な問題と成り得る。
また、エンジン用冷却液を形成すべく濃厚物に加えられる水によって、潜在的に危険な生成物が形成され得る。高温の水は、冷却システムの金属表面と高い反応性を有し得る。水は、ラジエター(真鍮および鉛ハンダが含まれる)から生じる鉛および銅材料と反応し得る。その結果、鉛および銅等の重金属の沈殿物が、エンジン内で循環する冷却液に浮遊され得る。また、水はアルミニウム等の軽合金と高い反応性を有し、特により高い冷却液温度では、冷却液の水フラクションによって多量のアルミニウム沈殿物が生じ得る。このような反応を制御するために添加剤を加えた場合であっても、EGと水との混合物(EG/水が略50/50である)を含んだ常套のエンジン用冷却液からアルミニウムが絶えず失われることになる。
また、ピルビン酸、乳酸、ギ酸および酢酸等の有機酸が冷却液内で生成することによって、グリコール/水から成る常套の冷却液を用いたエンジン冷却システムの金属表面に腐食がもたらされる。高温の金属表面、取り込まれた空気もしくは水または激しい通気に起因する酸素および酸化プロセスを触媒する金属イオンが存在する場合、水溶液中のEGまたはPG等の多価アルコールによって酸性の酸化生成物が生じ得る。更に、200°F(93.3℃)以上の冷却液溶液では、銅の存在下で乳酸および酢酸の生成が促進される。更に、200°F(93.3℃)以上の冷却液溶液では、アルミニウムの存在下で酢酸の生成が促進される。このような酸によって、冷却液のpHは低下し得る。エンジン冷却システムで見られる金属および合金のうち、鉄およびスチールは、有機酸を含んだ溶液に対して最も反応性に富む一方で、アルミニウム等の軽金属および合金は反応性にかなり乏しい。
有機酸の効果を中和する(もしくは打ち消す)ために、常套のEGまたはPG系濃厚物には、その組成物中に緩衝剤が含まれている。緩衝剤は、有機酸が形成される場合、エンジン用冷却液のpHをおよそ10〜11の範囲に維持するように機能する。一般的に使用される緩衝剤の例示として、四硼酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム十水和物、安息香酸ナトリウム、リン酸およびメルカプトベンゾチアゾールナトリウムが含まれる。また、これらの緩衝剤が溶液中に入って溶液中で維持されるために、緩衝剤には水が必要とされる。冷却液溶液中の緩衝剤が時間の経過と共に消耗されるにつれ、熱により冷却液の水フラクションは空気およびエンジンの金属と反応し、その結果、生じる酸によってpHが減少することになる。
緩衝剤に加えて、全ての現在使用されているエンジン用冷却液および以前より知られているエンジン用冷却液は、冷却液中の水分に起因した腐食効果を制御する防止剤を必要とする。防止剤の個々の効果を減少させる相互作用を回避するため、防止剤のバランス(または均衡)をとる必要がある。例えば、ホスフェートおよび硼酸塩は、シリケートによってアルミニウムに供された腐食防止効果を減少させ得る。更に、ラジエターおよびヒーターのコア・チューブに閉塞をもたらす沈殿によってシステム部品に損傷がもたらされ得るので、防止剤を過剰な濃度(消耗時間を延ばすために用いられる濃度)で用いる必要はない。更に、シリケート、シリコーン、硼酸およびホスフェートは化学的に研磨性を有しており、熱交換チューブおよびポンプのインペラーを浸食(または腐食)し得る。このようなことにもかかわらず、防止剤が全ての金属を保護するのに適当な濃度で存在する必要性が依然存在する。
緩衝剤、腐食防止剤および消泡剤として用いる添加剤を溶解させるために、現在用いられている全ての冷却液組成物に水を加える必要がある。更に、このような水溶性添加剤は、水と反応して溶解するのに、加熱、激しい攪拌および長い時間を必要とする。かかる要件によって、コストが相当に増加し、不凍液濃厚物の組成物およびパッケージが更に複雑化することになる。パッケージする前のブレンドに要するエネルギー・コストおよび時間は、処理コストにとって重量なファクターとなる。また、これらの添加剤の多くは、相互に干渉し得、不完全な溶液および調合プロセスの失敗をもたらすので、適当なブレンドを確保すべく調合プロセスを絶えずモニターする必要がある。
従って、既知の冷却液濃厚物の組成物に含まれる添加剤パッケージは、5〜15種類の化学薬品、典型的には8〜15種類の化学薬品から成り得る。これらの添加剤は、エンジン用冷却液組成物で用いる量によって、メジャーなカテゴリー(またはより多量のカテゴリー)とマイナーなカテゴリー(またはより少量のカテゴリー)とに分けられる。
Figure 0004812252
更に、例えば、硼酸、ホスフェートおよびニトリット等の添加剤は、それ自体毒性を有すると考えられている。従って、水と反応して溶解するのに、加熱、激しい攪拌および長い時間を必要とするだけでなく、それ自体、時として毒性を有する添加剤が、既知の冷却液濃厚物の組成物の全てに含まれていることになる。更に、添加剤には複雑なバランスが必要であり、それによって、添加剤間の干渉を防止し、また、冷却液中でいずれかの添加剤が過剰に存在することを防止する。
出願人は、米国特許第08/991155号(1997年12月17日出願)の同時継続出願(それは、米国特許第08/409026号(1995年3月23日出願)の一部継続特許出願である)を有しており、各々は、引用によって本明細書に具体的に組み込まれている。
従って、本発明の課題は、従来技術の1またはそれ以上の不利益点および欠点を克服して、毒性が減じられた無水伝熱流体を供することである。
発明の要旨
本発明は、多価アルコール、好ましくはプロピレングリコール(PG)またはプロピレングリコール(PG)とエチレングリコール(EG)との混合物(それらは、水が加えられていない基礎流体であるために無水性または非水性と呼ばれている)に関する。使用される唯一の添加剤は、ストレートなPGおよびEGに溶解する腐食防止剤なので、無水伝熱流体では添加剤を溶解させる手段として、水を使用する必要がない。溶解させるための水を必要とする腐食防止剤の使用が回避されているので、本発明の組成物のブレンドが、より容易となり、またブレンドが相当に短い時間となり、従って、ブレンドにかかるコストが減じられる。本発明の無水性多価アルコール系伝熱流体(好ましくはPGまたはEGが加えられたPG)では、ユニークな調合プロセスが用いられている。そのプロセスによって、十分に調合され安定化した無水性の伝熱流体であって、エンジン用冷却液として使用するのに適当な伝熱流体がもたらされることになる。
本発明の第2の要旨では、無毒なEG系無水伝熱流体が供される。本発明者らは、PGがADH酵素インヒビター(またはアルコール脱水素酵素抑制剤)として機能し、EG代謝でEG毒性に関連するEG毒性代謝物が生じることを遅らせまたは防止することを見出すと共に、PGがEGと混合される場合、EGの割合が99重量%までであってもPGとEGとの混合物が実質的に無毒になることを見出した。また、本発明者らは、多価アルコールがADH酵素インヒビターとして機能すると共に、グリセロールがEGと混合される場合、生じる混合物が同様に実質的に無害になることを見出した。
本発明の1つの利点は、多価アルコールの選択に依存するものの、周囲温度が130°F(54.4℃)またはそれより高い温度であっても、生じる全ての無水伝熱流体はエンジン用冷却液として使用するのに適当であり、また周囲温度が−76°F(−60℃)と低い温度あっても無水伝熱流体をエンジン用冷却液としてブレンドすることができるということに存する。
本発明のもう1つの利点は、米国特許第4550694号、同5031579号、同5381762号、同5385123号、同5419287号、同5868105号および同6053132号に開示されているような冷却システムに無水伝熱流体を用いる場合およびたとえ水系冷却液と共に使用されるように設計された冷却システムに無水伝熱流体を用いる場合であっても、冷却システムを相当に低い圧力で運転(または作動)することができ、従って、エンジン・システムの部品にかかるストレスが減じられることに存する。本発明の無水冷却液の潤滑性は、ゴムに対して良好であり、ポンプ・シール、ホースおよびシステム部品が通常150000マイル(241395km)以上であっても耐えることが可能なので、リークに起因した環境への冷却液の損失が著しく低下すると共に、過熱状態も減少することになる。
本発明の更なる利点は、長年貯蔵する場合であっても、攪拌することなく腐食防止添加剤が溶解したままであることに存する。もう1つの利点は、本発明の無水冷却液によって、シリンダー・ライナーのキャビテーションがもたらされることはなく、それゆえ、大型車両のエンジン用に別個の組成物が必要とされないことに存する。例えば、シリンダー・ライナーのキャビテーション腐食を防止するのに、亜硝酸ナトリウムを加える必要はない。
更に本発明のもう1つの利点は、十分に調合された本発明の無水伝熱流体では水が存在してないので、鉛および銅等の重金属の析出による汚染の問題が実質的に減少していることであり、大抵の場合では排除されていることである。また、無水で調合された本発明の冷却液ではpH(酸性度)が重要ではないので、硼酸塩およびホスフェート等の添加物を必要としない。
本発明のもう1つの利点は、冷却液組成物が実質的に無水性であるので、他の水、空気、熱および金属に基づいた反応が排除され、また、これらの反応を制御するために必要な添加剤が排除されていることに存する。排除される反応および添加剤としては、以下のものが含まれる:
1.消泡反応/シリコーンおよびポリグリコール添加剤
2.アルミニウムの腐食/シリケート
3.キャビテーションによる腐食/ニトリット
4.スケール防止剤/ポリアクリレート、および
5.汚れ防止剤/洗剤(または洗浄剤)
本発明のもう1つの利点は、電気部品または電子部品を冷却する熱交換システムに使用するのに適当な、毒性が減じられた無水性伝熱流体を発明したことに存する。本発明の更なるもう1つの利点は、太陽エネルギーを使用可能な熱に変換する熱交換システムに使用するのに適当な、毒性が減じられた無水性伝熱流体を発明したことに存する。本発明の毒性が減じられた伝熱流体を太陽エネルギー変換の用途に用いる場合、伝熱流体から生じる汚染を防止するために、特別な二重壁を有する熱交換機を使用することを必要としない。
2種類の方法によって、本発明の無水伝熱流体を調製することができる。第1の方法では、PGまたはPG+EG等の多価アルコール基礎流体に添加剤を混合することによって溶解させ、添加剤/基礎流体の濃厚物を形成する。添加剤の完全溶液を達成した後、濃縮された溶液(または濃厚溶液)を工業用グレードPGまたはPG+EGで充填されたバルク・タンクにてブレンドさせる。第2の方法では、工業用グレードPGまたはPG+EGで充填されたブレンド用バルク・タンクに添加剤を粉状形態で直接的に供給する。この2つの方法のいずれの方法も、エンジンに使用する伝熱濃厚物を水と混合するために現在用いられる方法と比べて簡易でありコスト的に高くない。
また、本発明は、無水伝熱流体を仕込むのに備えて、熱交換システムからの残留水を吸収するコンパチブルな毒性が減じられた調製流体を提供する。調製流体はEGとPGとから成る。かかる調製流体では、EGがより多く含まれており、PGがADH酵素インヒビターとして機能している。かかる調製流体は、予め使用されていた水系伝熱流体を本発明の伝熱流体と入れ替える場合に特に有用である。
発明の詳細な説明を参照することによって、本発明の組成物および方法に関する他の利点がより容易に明確になるであろう。
発明の課題に関連する当業者には、発明の課題および引例が図面に含まれ得ることをより容易に理解されよう。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、実質的に完全に多価アルコールに溶解する添加剤(かかる添加剤の溶解には水を必要としない)を含んだ多価アルコール系無水伝熱流体に関する。無水伝熱流体の多価アルコール・フラクション(または多価アルコール分)には、ADH酵素インヒビターとして機能する多価アルコールが少なくとも1種類含まれている。本明細書および特許請求の範囲において、「ADH酵素インヒビターとして機能する」とは、その物質がEGと混ぜられた場合または摂取された場合、EG毒性に関するEGの種々の毒性代謝物が現れることがないこと、また、そのような毒性代謝物の生成が実質的に減じられることを意味する。EGは代謝物の作用を必要とし、それによって、EG毒性をもたらす毒性生成物が生成されることになる。EGの代謝の第1過程は、EGからグリコアルデヒドへの変換であり、それに引き続いて、更なる代謝によって毒性の高い代謝物が生じる。EG系伝熱流体にADH酵素インヒビターとして機能する物質が含まれることによって、伝熱流体が摂取された際にEGの毒性代謝物の生成が減じられるか、またはそれが完全に防止されることになる。本発明者は、PGおよびグリセロールの双方がADH酵素インヒビターとして機能することを見出した。
好ましくは、多価アルコール・フラクションには、PGとEGとの混合物またはPGが含まれる。以下にて本発明の好ましい態様を説明する。本明細書で開示する好ましい態様は、本発明の原理の例示と考えられるものであり、説明する態様に本発明を限定するものではない。種々の変更は、本明細書で開示する発明の概念または範囲から逸脱することなく、本明細書の教示事項に基づいていることが当業者に明らかであろう。
本発明の1つの態様において、PGとEGとの混合物は、無水伝熱流体の基礎流体として用いられる。無水伝熱流体は、流体中にてEGとPGとの総重量の0重量%〜約99重量%のEGを含み得る。特に好ましい態様において、EGは流体中のEGとPGとの総重量の約70重量%であり、EGは流体中のEGとPGとの総重量の約30重量%である。以下に説明する方法でPGとEGとをブレンドすることによって、大抵の気候でエンジン用冷却液として使用するのに望ましい物性(氷点、粘度および比熱等)を有した無水伝熱流体を生成することができる。
PGとEGとの混合物の物性
PGとEGとは、化学構造が非常に似ており、2種類の流体(PG流体およびEG流体)が実質的にいずれの割合であっても、2種類の流体の組み合せで均質的な混合物が形成されることになる。PG流体とEG流体とを混合した後で、それらの流体は化学的に安定に維持され、いずれの流体も他方の流体から分離することはない。その結果、ブレンドした時の安定性が維持される流体がもたらされ、長期的に保存するのに重要な流体がもたらされることになる。
無水伝熱流体においてPGとEGとを混合するもう1つの利点は、EGおよびPGは、混合された場合、ほぼ同じ割合で蒸発するということに存する。このことは、2種類の流体のもう1つの類似する物性(蒸気圧)に起因している。EGは、200°F(93.3℃)において10mmHgの蒸気圧を有する一方、PGは、同じ温度にて16mmHgという比較的同様の蒸気圧を有する。従って、2種類の流体は、ほぼ同じ速度で蒸発することになる。EGまたはPGと比較すると、水は200°Fで600mmHgの蒸気圧を有しており、従って、周囲の環境に暴露されると、EGまたはPGよりも急激に蒸発することになる。
ストレートな(または純粋な)PGは、−76°F(−60℃)で凍結する一方、ストレートなEGは7.7°F(−13.5℃)で凍結する。EGの割合が増えるにつれて、EGとPGとの混合物の氷点は増加することになる。それとは対照的に、PGは、より低い温度ではEGよりも実質的に高い粘性を有する。しかしながら、PGとEGとの混合物では、EGの割合が増加するにつれて、いずれの所定温度であっても粘度が減少することが見出された。
PG/EG(30/70)混合物を含んだ伝熱流体の好ましい態様において、氷点は−35°F(−37.2℃)であり、最も厳しい北極地方の環境を除く全ての環境に満足のいくものとなっている。図5に示すように、EGがPGと混合される場合、伝熱流体の粘度に予期せぬ向上が見られた。−35°F(−37.2℃)でのストレートなPGの粘度が略10000センチポイズ(cp)であるに対して、その温度でのPG/EG(30/70)の混合物の粘度は略1500センチポイズである。PGのみが冷却液の無水伝熱流体の基礎流体として用いられる態様では、より高い粘度に対応させるために、システム装置の冷却液通路のサイズおよび流速を変えることがおそらく必要であろう。本発明の態様において、PG/EGの30/70という重量比および低い温度での粘度によって、冷却液通路のサイズまたは流速を変えずに無水伝熱流体を用いることができる。エンジン用冷却液システム(100%の無水性PGを用いて低温度(または冷温)で操作する場合に制限された冷環境となり、従来から、ラジエター、ヒーター・コア、ポンプを再設計することが必要とされていたエンジン用冷却液システム)内において、PG/EG(30/70)系無水伝熱流体およびエンジン用冷却液を試験した。ラジエター、ヒーター・コアまたはポンプを再設計することなく、最小限−20°F(−28.8℃)までの周囲温度にてPG/EG(30/70)系無水流体が適切に機能することが判った。
また、エンジン内で生じ得る高い温度のために、基礎流体の沸点、熱伝導率および比熱が、エンジン用冷却液に使用する無水伝熱流体を調合する上で重要なファクターとなる。PGは大気圧下で369°F(187.2℃)の沸点を有しており、エンジン用冷却液として満足のいくものである。大気圧下でのEGの沸点は、387°F(197.3℃)であり、これもまたエンジン用冷却液として満足のいくものである。エンジン用冷却液として使用する無水伝熱流体の大気圧下の沸点に関して、許容可能な上限は約410°F(約210℃)である。大気圧下の沸点が410°Fより相当に高い場合、冷却液および臨界エンジンの金属温度は高温になり過ぎることがある。多価アルコールの多くは、それ自体を無水冷却液として使用するには容認できない程の高い沸点を有する。例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびトリプロピレングリコールの沸点は、それぞれ472.6°F(244.8℃)、545.9°F(285.5℃)および514.4°F(268℃)である。これらの多価アルコールは、それ自体では無毒性冷却液としては容認できないが、それらのいずれもが、低い濃度(例えば、約10重量%)でEGおよび/またはPGと組み合わされることによって容認できる沸点を有した無水伝熱流体を形成することができる。好ましくは、本発明の無水伝熱流体は、PGおよびEGのみを含んでいる。PGとEGとの混合物は、ストレートなPGの沸点とストレートなEGの沸点との間に相当する沸点(それら全ては無水性エンジン用冷却液として満足のいくものである)を有している。例えば、好ましいPG/EG(30/70)混合物は、375°F(190.5℃)の沸点を有する。
伝熱流体組成物内に存在する多価アルコールは、低すぎる沸点を有するものであってはならない。流体の性能は、流体の操作温度と流体の沸点との実質的な温度差(100°F(55.6℃)以上のオーダー)を維持することに依存する。また、ADH酵素インヒビターの蒸気圧に起因して、混合物からのADH酵素インヒビターの蒸発がもたらされてしまうので、ADH酵素インヒビターである多価アルコールの沸点は、EGの沸点(387°F、197.3℃)よりも相当に低すぎるものであってはならない。このような2つの理由によって、多価アルコールが、約302°F(150℃)よりも低い沸点を有してはならない。
また、PG/EG(30/70)から成る無水伝熱流体の熱伝導率(または熱伝導度)は、純粋なPGの熱伝導率よりも改善される。図6は、100%の無水性PGの熱伝導率とPG/EG(30/70)混合物の熱伝導率とを比較した試験の結果を示している。図6に示すように、0°F(−17.8℃)〜250°F(121.1℃)の操作温度範囲において、PG/EG(30/70)混合物は、PGが100%である場合の熱伝導率よりも約25%向上した熱伝導率を有する。
図7において、PG/EG(30/70)の混合物の比熱が、PGが100%の比熱よりも僅かに低いことが示されている。このような比熱の減少分は、PGが100%の場合よりもPG/EG(30/70)の密度を増加させることによって相殺される。図8に示すように、PG/EG(30/70)混合物の密度は、PGが100%の場合の密度よりも約5%大きく、従って、所定体積の伝熱流体ではPG/EG(30/70)ブレンドの質量が増加し、その増加分が、比熱の僅かな減少分を相殺するのに余りある程度となっている。
PGと組み合わされたEGの毒性試験
予期せぬことであったが、PGをEGに加えることによって、実質的に無毒な伝熱流体がもたらされることを見出した。PG/EG混合物の最終LD50値を見積もるために、限界試験(または限界値試験、limit test)および範囲試験(または範囲確認試験、range test)を行なった。限界試験によって、LD50値が特定の投与量よりも多く存在するか否か、またはそれよりも少なく存在するか否かが確かめられる。範囲試験は、LD50値が存在する範囲を確定する一連の限界試験である。LD50値の確定した物質の混合物を用いてラット試験を行なう前に、LD50値を数学的に見積もった。
毒性物質の摂取が少ないと、その毒性の影響は減少する。従って、毒性物質と無毒性物質との混合物が摂取される場合では、毒性物質の濃度は減少するが、より多くの混合物が摂取されると、純物質と同様な毒性効果が生じることになる。例えば、EG自体は、4700mg/kgという(ラットに対する)急性経口LD50値を有する。混合物の1/2がEGとなるように、EGを完全に無毒な物質と混合させた場合、混合物の(ラットに対する)急性経口LD50値は、9400mg/kgとなって、EG自体の(ラットに対する)急性経口LD50値の2倍であると見積もられる。これは、同じ量の混合物には、単に1/2の量のEGが含まれているので合理的な見積もりである。
PGは、20000mg/kgの(ラットに対する)急性経口LD50値を有する。世界保健機関(World Health Organization)の殺虫剤(または農薬)の危険分類(Classification of Pesticides by Hazard)および分類のガイドライン(Guidelines to Classification(1998−99))に記載されているように、既知のLD50値を有する物質を含んだ混合物のLD50値は、次式によって見積もることができる:
/T+C/T+・・・+C/T=100/TMxtr

ここで、
C=混合物中におけるA,B・・・,Z成分の濃度%
T=A,B・・・,Z成分の(ラットに対する)急性経口LD50
Mxtr=混合物の(ラットに対する)見積り急性経口LD50
である。
上述の式を用いて、EGとPGとの種々の混合物および防止剤(またはインヒビター)に対する(ラットに対する)急性経口LD50値の予測値を計算した。計算結果は図2にグラフで示す。
急性経口毒性試験を行なって、本発明のPGとEGとの混合物の毒性を決定した。米国食品医薬品庁規則(United States Food and Drug Administration Regulation)の連邦規則集第21巻パート58(21 C.F.R. Part 58)に記載されている標準的な「GLP」試験方法および連邦規則集第40巻パート792(40 C.F.R. Part 792)のEPA優良試験所基準(EPA Good Laboratory Practice Standards)を用いて、米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency(EPA))に承認された実験室で試験を行なった。以下に示すように、この試験の結果によって、PGとEGとの混合物が、混合物に対する標準的な毒性の計算に基づいて予測されるよりも実質的に低い毒性を有するということが予想外にも示された。
試験に用いた組成物は、68.95重量%のEG、29.55重量%のPGおよび総計1.5重量%の腐食防止剤を含んで成っていた。多価アルコールの総計に対する混合物中のPGフラクションは30%であり、EGフラクションは70%であった。図2を参照すると、この組成物に対する予測LD50値は、5762mg/kgであり、4700mg/kgというエチレングリコールのLD50値よりも約23%高い。範囲試験は、およそ21000mg/kg(ラットの胃が完全に満たされる量)という最大限の可能投与量までラットに投与することによって行なった。ラットの死亡に関する報告はなく、試験期間で全てのラットの体重は実際に著しく増加した。
この結果は完全に予測できないものであり、(EGの濃度は十分であったにもかかわらず)試験の組成物の毒性が低いためにLD50値を決定することができなかった。即ち、この組成物に対するLD50値は存在しない。PGは、LD50値(ラットの半数がPGの20000mg/kgの投与量で死亡した)を有するので、本発明に従って調製され、試験に用いられた無水冷却液組成物は、PG自体よりも実際に毒性が低い。
範囲試験は、95重量%のEGと5重量%のPGとから成る組成物を用いて実施した。図3を参照すると、この組成物の予測LD50値は、4904mg/kgであり、4700mg/kgというEGのLD50値よりもわずかに4%多いものとなっている。範囲試験において、5000mg/kgおよび10000mg/kgの投与量で死亡することがなく、20000mg/kgの投与量および25000mg/kgの投与量では全てのラットが死亡し、そして、15000mg/kgの投与量では2匹のラットのうち1匹が死亡した。実施された試験では、LD50値が略15000mg/kgに近いことが示され、その値により非常に低い毒性を流体が有することが示される。
EGとPGとの混合物の毒性試験の結果は、驚くべきことに予測を超えるものであった。発明者らは、特定の理論に限定されることなく、PGがADH酵素であると現在信じている。PGがEG組成物に含まれることによって、摂取された際にEGのグリコアルデヒドへの変換が相当に減じられるか、またはそれが完全に防止されることになる。グリコアルデヒドが生成しなければ、グリコール酸、グリオキシル酸およびシュウ酸という更なる毒性代謝物は生じない。アシドーシス、シュウ酸カルシウム結晶の析出、低カルシウム血症、腎不全、およびEG毒性に関する他の全ての特性(または症状)が生じることがない。EGが体から排出されるまでPGによる抑制が維持されることになる。
PGがたとえ少量であってもEGに混ぜられることによって混合物が無害になるという発見で重要なことは、今まで適当と考えられていた割合よりも相当に多い割合のEGを、毒性問題を引き起こすことなくPGとEGとの無水冷却液に加えることができるということである。
5000mg/kgの限界試験は、全ての多価アルコールのうちPGとEGとの割合が、10%/90%、5%/95%、4%/96%、3%/97%、2%/98%および1%/99%である混合物について実施された。どのような割合であっても、ラットが死ぬことはなかった。EG自体のLD50値が4700mg/kgであり、そのような投与量では試験用ラットの半分が死亡することが示されることに留意されたい。約6回の試験でラットの全てに5000mg/kg投与量が付された場合では、ラットが死亡することはなかった。このような事実で重要なことは、冷却液の全ての多価アルコールのうちの95重量%がEGとなるように調製された無水冷却液は、毒性になることなくEGが加えられるキャパシティーを依然有していることである。
グリセロールと組み合わされたEGの毒性試験
20重量%のグリセロールと80重量%のEGとの混合物について限界試験を実施した。図4を参照すると、この組成物の予測LD50値が5374mg/kgであって、4700mg/kgというEGのLD50値よりも14%多いものとなっている。限界試験は8000mg/kgの投与量で行った。一匹のラットが死亡したものの、残りの全ての9匹のラットが生き延び、2週間の試験期間で体重が21%〜53%増加したので、その死亡したラットが特異であったと思われる。
95重量%のEGと5重量%のグリセロールとを含んで成る組成物を用いて、範囲試験を実施した。図4を参照すると、この組成物の予測LD50値が4852mg/kgであり、4700mg/kgというEGのLD50値よりもわずかに3%多いものとなっている。範囲試験において、5000mg/kgおよび10000mg/kgの投与量では死亡することがなく、20000mg/kgおよび25000mg/kgの投与量では、全てのラットが死亡し、そして、15000mg/kgの投与量では2匹のラットのうち1匹が死亡した(95%のEGと5%のPGを用いた同様の試験とまったく同じ結果である)。実施された試験では、EG/グリセロール(95%/5%)混合物のLD50値が略15000mg/kgに近いものであることが示され、その値によって非常に低い毒性を流体が有することが示される。従って、たとえ小さい濃度であってもグリセロールによって、グリセロールを含むEGの混合物の毒性が非常に低くなることを見出した。発明者らは、PGと同じようにグリセロールが有効にADH酵素インヒビターとして機能するものと現在信じている。
グリセロールは、3つの水酸基を含む多価アルコール(沸点554°F、290℃)であるものの、伝熱流体成分としてPGよりも勝るとは本発明者らは考えていない。グリセロールは、例えば、PGよりもコストがかかると共に粘性を有し、低い温度の用途にとっては氷点が高すぎる。しかしながら、伝熱流体中のEGとグリセロールとの重量が1%〜10%となるような濃度では、低い温度とならない状態で毒性を減じるために満足のいくようにグリセロールを用いることができる。また、グリセロールをPGと混合させること、およびEGとブレンドされた混合物と混合させることができる。そうであっても、ほとんどの用途にとって、EGとPGとの混合物は、EGとグリセロールとの混合物よりも好ましいものとなり得る。
EGがPGとブレンドされるかグリセロールとブレンドされるかに関わらず、あらゆる貯蔵状態および使用状態であっても、EG、PGおよびグリセロール系流体の高い飽和温度および低い蒸気圧に起因して混合物は「安全」な状態を維持する。排水もしくはリークにより環境に入ってしまう流体または本発明の冷却液を用いるエンジン冷却システムによる他の意図しない排出により環境に入ってしまう流体には、ブレンドされた濃厚物中の割合に近い割合で多価アルコールが維持され得、従って、実質的に環境にとって無害である。更に、不注意により本発明の無水伝熱流体にEGが加えられる場合、生じる混合物では毒性が減じられ(希釈のみで予測されるよりもはるかに毒性が減少する)、環境にとって実質的に無害になる可能性がある。また、PGとEGとの混合物またはグリセロールとEGとの混合物では、実質的に無害な無水伝熱流体の特性を変えることなく、他の多価アルコールが低濃度で存在し得る。
腐食防止添加剤
本発明の無水伝熱流体では、PG+EGまたはグリセロール+EGに溶解する添加剤だけが用いられており、従って、添加剤が溶液中に入るための水または溶液中で添加剤を保持するための水が必要とされない。選択される添加剤の各々は、EG+PGまたはEG+グリセロールに溶解することに加えて、エンジン内に存在し得る1またはそれ以上の特定の金属に対して腐食防止剤となる。硝酸ナトリウム等の硝酸化合物は、鉄または鋳鉄等の鉄含有合金の腐食を防止する添加剤として用いられる。硝酸ナトリウムの主な機能は鉄の腐食を防止することであるものの、ハンダおよびアルミニウムの腐食をも僅かに防止する。トリルトリアゾール等のアゾール化合物は、銅および真鍮の双方に対して腐食防止添加剤として機能する。モリブデン酸ナトリウム等のモリブデン酸化合物は、鉛(ハンダから生じる鉛)に対して腐食防止剤として主に機能するものの、多くの他の金属の腐食をも減少させる点で有益である。とりわけ、ニトリットは、無水伝熱流体の組成物では必要とされない。
従って、PGおよびEG溶解性添加剤の選択は、金属表面の腐食に関係のある金属に依存する。エンジンの冷却システム部品に鉄、ハンダ、アルミニウム、銅および/または真鍮がよく使用されるので、典型的には硝酸ナトリウム、トリルトリアゾールおよびモリブデン酸ナトリウムを添加することによって、広範に使用可能な伝熱流体が調合される。しかしながら、添加剤が作用する特定の金属が排除されている場合では、添加剤を減少させることまたは排除することが可能である。例えば、鉛系のハンダが排除されている場合では、モリブデン酸ナトリウム分を減らすことまたは全くモリブデン酸ナトリウムを用いないことも可能である。
腐食防止添加剤は、調合された伝熱流体の約0.05重量%〜約5.0重量%の濃度範囲で存在し得、好ましくは3.0重量%よりも低い濃度で存在する。約0.1重量%よりも低い溶液では、長期にわたる防止(または抑制)に効果的ではない一方、約5.0%よりも大きい溶液では添加剤が析出する結果となり得る。好ましい態様において、各々の腐食防止添加剤は、冷却液の有効寿命に依存して約0.3重量%〜約0.5重量%の濃度で存在する。本発明のもう1の利点は、軽合金は、PG系流体またはPG+EG系無水流体中で腐食がほとんどまたは全く生じないことに存する。従って、マグネシウムおよびアルミニウム等の金属は腐食をほとんどまたは全く呈することがなく、これらの金属の腐食を制限する添加剤が排除できる。
腐食防止添加剤として硝酸ナトリウム、トリルトリアゾールおよびモリブデン酸ナトリウムを用いることは、多くの利点を有する。例えば、これらの添加剤は運転中で急激に消耗されることはなく、従って、エンジン用冷却液が変化せずまたは添加剤が補充されず、これまで得ることができなかった運転期間(多くの形態のエンジンおよび乗り物では約10000時間または400000マイル(643720km)までの運転期間)に耐えるべく調合できる。このようなPGまたはPG+EG溶解性添加剤のもう1つの利点は、極めて高い濃度でも、添加剤が溶液中または懸濁液中へと容易に入り込み、溶液中または懸濁液中で維持されることに存する。このような添加剤は、各々の添加剤が5.0重量%までの濃度で存在する場合であっても溶液から析出することはない。更に、これらの添加剤は、相互作用の結果、性質がそれほど低下することはない。また、添加剤は研磨性を有さない。更に、添加剤および冷却液は、同じ運転期間でマグネシウムを含む全ての金属を保護する。
本発明の無水性PGまたはPG+EG溶解性添加剤は、長時間の使用または走行によっても消耗されることがなく、従って、補充用冷却液添加剤の必要性が排除されるのが一般的である。しかしながら、補充的冷却液添加剤を加えることが望ましい場合、本発明では、水性冷却液における場合と比較して、補充用冷却液添加剤が安定な溶液または懸濁液により容易に入り込む点で無水組成物は利点を供する。更に、約0.05重量%〜約5.0重量%の可能な幅広い濃度において補充的冷却液添加剤の適切なバランスを維持することは、より容易である。
添加剤を補充的に添加することが必要である場合、乾燥粉末形態の補充剤または濃厚物に溶解させた補充剤を冷却システムに直接的に添加してもよい。冷却エンジン(50°Fまたはそれより高い温度)に補充剤を添加してもよく、補充剤は、エンジンを単にアイドリングさせるだけで溶液に溶解し、ラジエターまたはヒーター・コアを閉塞させることはない。また、好ましい目標とする基礎溶液では、各々の添加剤は約0.5重量%である一方、飽和限界が約5.0%なので、容認できない量の補充用添加剤が不本意に加えられるということは殆どない。それに対して、現在の水系添加剤(または水性添加剤)は、熱い冷却液に添加する必要があり、その後、(溶液に入れるために)過度の運転により容易に過飽和になって、ラジエターおよびヒーターの損傷を引き起こし得る。
本明細書および特許請求の範囲で用いる場合、「無水」という用語は、好ましくは、無水伝熱流体において約0.5重量%の出発濃度よりも高くない濃度で水が単に不純物として存在することを意味する。より好ましくは、無水伝熱流体には、実質的に水が含まれていない。使用中に水が増加することは望ましくないが、本発明では、僅かな水の存在は許容できる。PGは吸湿性物質であるので、水が大気中から冷却液へと入ってしまうことがあり、また、冷却チャンバーへの燃焼ガスケットのリークに起因して燃焼チャンバーから冷却液へと水が散逸することがある。本発明の本質は水が回避されていることであるが、本発明では、僅かな水は不純物として許容され得る。しかしながら、用いられる冷却液の水フラクションは、好ましくは約5.0重量%以下、より好ましくは約3.0重量%以下に制限される。更に、本発明および関連する冷却システムでは、使用中の吸収に起因した水を最大限約10重量%の濃度まで許容することができ、合理的に容認され得る運転特性(または作動特性)が保持される。
本発明の伝熱流体には、実質的に水分が含まれていないので、水性伝熱流体に関連する問題の幾つかが排除されている。例えば、水性冷却液では、冷却システム中で激しい蒸気泡(キャビテーション)が形成され、蒸気/ガスの効果および水と金属との反応によって鉛および銅の浸食がもたらされる。本発明は非水性に存しているので、冷却液の蒸気泡は実質的に最小限度となり、水の蒸気泡が実質的に除去され、従って、冷却液での重金属の析出量が減少することになる。
常套の水系冷却液では、冷却液の酸性度が重要である。冷却液が酸性である場合、金属表面の腐食は増加し得る。酸性条件を回避するために、常套の水系冷却液では、冷却液をより塩基性にさせる緩衝剤(例えば、pHを10〜14まで増加させる緩衝剤)が必要とされる。これらの緩衝剤(例えば、ホスフェート、硼酸塩およびカーボネート等)を溶解させるために、常套の不凍液濃厚物の少なくとも約5%が水である必要がある。存在する酸無水物が、酸を形成するために水の存在を必要としているので、本発明の無水伝熱流体では緩衝作用を必要としない。水が存在しなければ、無水冷却液は腐食性がなく、緩衝剤を必要としない。
以下において、好ましい態様の無水伝熱流体を常套の冷却液の組成物と比較する:
Figure 0004812252
PG/EG混合物中のPGおよびEGの重量%は、氷点防止を達成するのに必要なPGの割合が最も少なくなるように通常設定される(図1参照)。−35°F(−37.2℃)の氷点に対して、例えば、多価アルコールの混合物中のPGの割合は30重量%であり、EGの割合は70%である。混合物の全重量%は98.4%より大きいので、十分に調合された冷却液では、PGの割合が約29.5重量%となり、EGの割合が約68.9重量%となり得る。残りの組成物は腐食防止剤であり、おそらく微量の水が単に不純物として存在する。
発明の態様を用いた腐食試験
実施例1
ASTM#D−1384等の試験方法等を用いて腐食試験を行なった(なお、当該試験方法を変更している)。エンジン冷却システムに存在する金属として典型的な6つの試料をガラス容器内の試験用冷却液に全部浸漬させた。冷却液「A」は、本発明の無水伝熱流体であった(PGが多価アルコール分として100%であった)。冷却液「B」は、水と混合させたEG系不凍液濃厚物から成る常套のエンジン用冷却液組成物であった。
ASTM試験方法では、冷却液は、ガラス容器を通るように空気をバブリングさせることによって通気させ、それを190°F(88℃)の試験温度にて336時間維持する。使用中のエンジン冷却システム内の金属が受け得る条件をより正確に反映させるため、この試験方法を変更した。厳しい使用状況をシミュレートするために、215°F(101.6℃)の制御温度で試験を行なった。例えば、米国特許第4550694号;同4630572号;同5031579号;同5381762号;同5385123号;同5419287号;同5868105号;同6053132号で開示されるエンジン冷却システム等の無水性エンジン冷却システムで冷却液が機能する状態により近づけるため、冷却液「A」を通気することなく試験を行なった。ASTM#D−1384試験の通常の方法で冷却液「B」の常套の不凍液組成物を通気した。試験が完了した時点の各金属試料の重量損失によって腐食を測定した。試験結果は次の通りであった:
Figure 0004812252
試験に用いた他の試料から生じる中間体がプレートアウトするために、重量が増える結果となり、中間体重量が増えたこれらの金属では、腐食自体に起因して重量が減少することは実質的になかった。
実施例2
このような腐食試験を実施して、断熱条件下でのエンジン用冷却液中の鋳造アルミニウムまたはマグネシウム合金の腐食量を決定した。鋳造アルミニウム合金の試料(鋳造アルミニウム合金は、エンジンのシリンダー・ヘッドまたはブロックに一般的に使用されている)を暴露することによってエンジン用冷却液溶液の試験を実施した。冷却液「A」は、PGが100%の本発明の無水冷却液であった。無水冷却液を用いた冷却液システムの操作条件をシミュレートするために、冷却液「A」を使用した試験は、275°F(135℃)の温度、2psig(13.79kPa)の圧力(周囲圧力(もしくは大気圧)よりも僅かに高い圧力である)にて実施した。試験用冷却液「B」は、ASTMで規定される腐食水(EG/水(50/50)の冷却液における水分を構成するために用いられる)を含んでいた。水性冷却液用のエンジン冷却システムの条件をシミュレートする冷却液Bの試験条件は、温度が275°F(135℃)で、圧力が28psig(193kPa)であった。
各試験において、試料中でヒート・フラックス(または熱流束)を設定し、試験用試料を168時間(1週間)にわたって試験条件下に維持した。試験用試料の腐食は、試料の重量変化(ミリグラム)によって測定した。試験によって、アルミニウムおよびマグネシウムの放熱表面での腐食を防止する冷却液溶液の性能が評価された。この試験結果は次の通りであった:
Figure 0004812252
実施例3−フィールド試験
55000マイル(88511.5km)の試験期間にわたって、3.8LのV−6エンジンを路上にて作動させた。乗り物(または自動車)のエンジン冷却システムは、米国特許第5031579号に開示されているような構成であった。冷却液「A」は、上記の実施例1に開示されている無水冷却液と同じものであった。試験期間中は、冷却液をドレインせず、交換することもなかった。エンジン用冷却液ストリームの全流部(下方のホース部)に束状の金属試料を置き、その金属試料を冷却液内で常時浸漬させた。試験期間の終わりでの試料の損失結果(ミリグラムで表される)とASTM試験の基準値とを比較することによって、金属の腐食を防止できる試験用冷却液の性能を評価した。
Figure 0004812252
製造方法
本発明の無水伝熱流体は、以下に説明する方法によって製造され得る。バッチ・プロセスによって無水伝熱流体が形成され得る。まず、成分の所要量を決定するために計算を行なう必要がある。例えば、次の計算を行なって各々の成分量を決定してから、6500ガロンの無水伝熱流体の混合を行なう:
1.ほぼ6500ガロンの最終生成物に相当する量を決定する。
a.調合した冷却液の多価アルコール分中のPGの所望の重量百分率(%PG、1%〜100%の範囲である)から、混合される多価アルコールの密度(ポンド/ガロン)を次式によってコンピューターで計算する:
混合される多価アルコール=100/((%PG/8.637)+((100−%PG)/9.281))
b.6500ガロンに対する見積り重量(ポンド)は、次式によって計算される:
見積りWt6500(または見積り重量6500)=D混合された多価アルコール×6500

2.バッチに加える無水伝熱流体の各成分の重量をコンピューターで計算する:
a.3つの添加剤の各々は、総重量の0.5%である。
1.トリルトリアゾールの重量は、0.005×見積りWt6500となる。
2.硝酸ナトリウムの重量は、0.005×見積りWt6500となる。
3.モリブデン酸ナトリウムの重量は、0.005×見積りWt6500となる。
b.全多価アルコールの重量(Wt全多価アルコール)は、(1−0.015)×見積りWt6500となる。
c.PGの重量(ポンド)は、%PG×Wt全多価アルコール/100となる。
d.EGの重量(ポンド)は、(100−%PG)×Wt全多価アルコール/100となる。
各々の成分量を計算した後、種々の方法を用いて無水伝熱流体が一体的に混合され得る。例えば、添加剤は、無水伝熱流体の主成分として使用される1種類またはそれ以上の多価アルコールの一部に予め混合され得る。冷却液の多価アルコール分が全てPGであって、製造量が6500ガロンである本発明の1つの態様において、本発明の方法は、少なくとも次の工程を用いて行なわれる:
1.3300ポンドの工業用グレードPGを添加剤タンクに供給し、次に示す防止剤を加える。
a.トリルトリアゾール 281ポンド
b.硝酸ナトリウム 281ポンド
c.モリブデン酸ナトリウム 281ポンド
2.標準的なパドルもしくはプロペラまたは空気攪拌を用いて、60°F〜70°Fの室温で20分間ブレンドする。
3.52000ポンドの工業用グレードPGを6500ガロン以上のメイン・タンクに供給する。
4.添加剤タンクの内容物をメイン・タンクに加える。
5.標準的なパドルもしくはプロペラまたは空気攪拌を用いて、60°F〜70°Fの室温にて30分間メイン・タンクの内容物をブレンドする。
伝熱流体が30重量%のPGおよび70重量%のEGから成る本発明の態様において、添加剤を多価アルコールと予備混合することによって伝熱流体を製造する方法は、次の通りとなり得る:
1.3300ポンドの工業用グレードEGを空の添加剤タンクに供給し、次に示す防止剤を加える。
a.トリルトリアゾール 295ポンド
b.硝酸ナトリウム 295ポンド
c.モリブデン酸ナトリウム 295ポンド
2.標準的なパドルもしくはプロペラまたは空気攪拌を用いて、60°F〜70°Fの室温にて20分間ブレンドする。
3.17435ポンドの工業用グレードPGを6500ガロン以上の空のメイン・タンクに供給する。
4.37385ポンドの工業用グレードEGをメイン・タンクに加える。
5.添加剤タンクの内容物をメイン・タンクに加える。
6.標準的なパドルもしくはプロペラまたは空気攪拌を用いて、60°F〜70°Fの室温にてメイン・タンクの内容物を30分間ブレンドする。
伝熱流体を製造するもう1つの方法において、添加剤を1種類またはそれ以上の多価アルコール中へと直接的に混合させることによって、予備混合工程を省いてもよい。この方法は、PGが100%から成る伝熱流体に対して少なくとも次に示す工程を用いて実施される:
1.55300ポンドの工業用グレードPGを6500ガロン以上のメイン・タンクに供給し、次に示す防止剤を加える。
a.トリルトリアゾール 281ポンド
b.硝酸ナトリウム 281ポンド
c.モリブデン酸ナトリウム 281ポンド
2. 標準的なパドルもしくはプロペラまたは空気攪拌を用いて、60°F〜70°Fの室温にて1.5時間ブレンドする。
この方法は、PGとEGとの混合物から成る伝熱流体を製造するのに用いてもよい。例えば、30重量%のPGと70重量%のEGとから成る伝熱流体に対して、少なくとも次に示す工程が実施される:
1.17435ポンドの工業用グレードPGを空の6500ガロン以上のメイン・タンクに供給する。
2.40685ポンドの工業用グレードEGをメイン・タンクに加える。
3.次に示す防止剤をメイン・タンクに加える。
a.トリルトリアゾール 295ポンド
b.硝酸ナトリウム 295ポンド
c.モリブデン酸ナトリウム 295ポンド
4.標準的なパドルもしくはプロペラまたは空気攪拌を用いて、60°F〜70°Fの室温にて1.5時間ブレンドする。
上述のいずれかの方法を用いることによって、常套のエチレングリコールまたはプロピレングリコール系不凍冷却液濃厚物を適当に調合するのに一般的に必要とされる時間の1/6程の短い時間でもって、十分に調合された安定な無水伝熱流体が形成されることになる。
本発明の更なる態様において、熱交換システムからの水を吸収する調製流体であって、水系伝熱流体を本発明の伝熱流体と入れ替える場合に特に有用となる調製流体が供される。上述の無水伝熱流体を仕込むのに先立って、調製流体を熱交換システムに一時的に仕込んだ後、それを排出させる。調製流体は、ADH酵素インヒビターとして機能する多価アルコール(好ましくはPG)とEGとから成り、EGの毒性が減じられている。調製流体が熱交換システムに一時的に用いられるだけなので、典型的には腐食防止剤を必要としないものの、必要であれば腐食防止剤を調製流体に含ませてもよい。調製流体によって、熱交換機からの水が吸収されることになる。調製流体を多数の用途に用いることができ、水により飽和した時点で処分したり、吸収された水を除去するためにリサイクルされる。調製流体中のPGの濃度は、典型的には、流体中のEGとPGとの総重量の約1%〜約50%である。好ましい態様では、PGの濃度は、流体中のEGとPGとの総重量の約5%である。
本明細書の教示事項に基づいて当業者に理解されるように、本発明の概念または範囲から逸脱することなく、本発明の上述の態様に多くの変更および修正を加えることができる。従って、好ましい態様の詳細な説明は、限定的な意味として解釈するのではなく、むしろ例示的なものとして解釈すべきである。
図1は、氷点対PG+EGブレンド中のPGの割合(重量%)を示すグラフである。 図2は、総計1.5重量%の一定濃度の腐食防止剤を含むエチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物の予測LD50値を示すグラフである(エチレングリコールの割合は重量%である)。 図3は、エチレングリコールとプロピレングリコールとの混合物に対する予測LD50値を示すグラフである(エチレングリコールの割合は重量%である)。 図4は、エチレングリコールとグリセロールとの混合物に対する予測LD50値を示すグラフである(エチレングリコールの割合は重量%である)。 図5は、100重量%のPGおよび30重量%/70重量%のPG/EGブレンドに対する粘度対温度を示すグラフである。 図6は、100重量%のPGおよび30重量%/70重量%のPG/EGブレンドに対する熱伝導率対温度を示すグラフである。 図7は、100重量%のPGおよび30重量%/70重量%のPG/EGブレンドに対する比熱対温度を示すグラフである。 図8は、100重量%のPGおよび30重量%/70重量%のPG/EGブレンドに対する密度対温度を示すグラフである。

Claims (14)

  1. 熱交換システムに使用されるエチレングリコール−プロピレングリコール系無水伝熱流体であって、
    (a)エチレングリコール、
    (b)プロピレングリコール、および
    (c)エチレングリコールおよびプロピレングリコールに溶解性を有する少なくとも1種類の腐食防止剤
    を含んで成り、
    エチレングリコールの濃度が、無水伝熱流体中のエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量の70重量%(70重量%を除く)〜99重量%であり、
    プロピレングリコールの濃度が、無水伝熱流体中のエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量の1重量%〜30重量%(30重量%を除く)であり、
    プロピレングリコールが、エチレングリコールと混ぜられた際にエチレングリコールの毒性に対して阻害剤として作用し、
    無水伝熱流体中に溶解して存在するために水を必要とする添加剤は含まれていない、
    無水伝熱流体。
  2. 腐食防止剤が、モリブデン酸塩、硝酸塩およびアゾールから成る群から選択される、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  3. 無水伝熱流体の総重量の85重量%〜99.85重量%がエチレングリコールおよびプロピレングリコールである、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  4. 無水伝熱流体に含まれるエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量の90重量%〜99重量%がエチレングリコールであり、無水伝熱流体に含まれるエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量の1重量%〜10重量%がプロピレングリコールである、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  5. 腐食防止剤が、無水伝熱流体の総重量の0.05重量%〜5重量%の濃度でモリブデン酸塩を含んで成る、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  6. 腐食防止剤が、無水伝熱流体の総重量の0.05重量%〜5重量%の濃度で硝酸塩を含んで成る、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  7. 腐食防止剤が、無水伝熱流体の総重量の0.05重量%〜5重量%の濃度でアゾールを含んで成る、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  8. モリブデン酸塩がモリブデン酸ナトリウムである、請求項5に記載の無水伝熱流体。
  9. 硝酸塩が硝酸ナトリウムである、請求項6に記載の無水伝熱流体。
  10. アゾールがトリルトリアゾールである、請求項7に記載の無水伝熱流体。
  11. 腐食防止剤が、
    (i)無水伝熱流体の総重量の0.05重量%〜5重量%の濃度のモリブデン酸ナトリウム、
    (ii)無水伝熱流体の総重量の0.05重量%〜5重量%の濃度の硝酸ナトリウム、および
    (iii)無水伝熱流体の総重量の0.05重量%〜5重量%の濃度のトリルトリアゾール
    のうちの少なくとも1種類を含んで成る、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  12. (a)エチレングリコールの濃度が、無水伝熱流体に含まれるエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量を基準として99重量%であり、
    (b)プロピレングリコールの濃度が、無水伝熱流体に含まれるエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量を基準として1重量%であり、
    (c)モリブデン酸ナトリウムの濃度が、無水伝熱流体の総重量を基準として0.5重量%であり、
    (d)硝酸ナトリウムの濃度が、無水伝熱流体の総重量を基準として0.5重量%であり、また
    (e)トリルトリアゾールの濃度が、無水伝熱流体の総重量を基準として0.5重量%である、請求項1に記載の無水伝熱流体。
  13. エチレングリコール系無水伝熱流体の毒性を減じる方法であって、
    (a)エチレングリコール系無水伝熱流体を供する工程、および
    (b)エチレングリコール系無水伝熱流体に対してプロピレングリコールを十分に加え、それによって、エチレングリコール系無水伝熱流体の毒性を減じる工程
    を含んで成り、
    エチレングリコール系無水伝熱流体にプロピレングリコールを加えることによって得られる流体について、エチレングリコール含量を、得られる流体中に含まれるエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量基準で70重量%よりも多くする、
    方法。
  14. プロピレングリコールの含量を、得られる流体に含まれるエチレングリコールとプロピレングリコールとの総重量を基準として少なくとも1重量%にする、請求項13に記載の方法。
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