JP4811848B2 - 自動車のクロスメンバー及びそれを用いたフレーム構造 - Google Patents
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Description
このようなクロスメンバーは、必要とされる強度、形状制約により、種々の断面形状が選択されるとともに、他部品との干渉を回避するために長手方向に曲げ、つぶし加工などが施される場合もある。
一方、自動車の車体用クロスメンバーでは、一般に、室内空間あるいは車高方向のスペースを確保するために、車体上下方向の高さが制限される。このため、このクロスメンバーは、特許文献3に示すように、車体上下方向ではなく、前後方向に幅広の形状になることが多い。
MP=σ0.2∫ydA ・・・・(1)
ここで、yは曲げの中立軸からの距離であり、MPはこれを面積積分(面積:A)したものと素材耐力の積で表される。上式からわかるように、MPを高くするためには、中立軸からの距離yが大きい部位の面積Aが大きいほど高い値を示すことになる。いいかえれば、中立軸からの距離yが小さい部位にたくさんの面積を持つような断面形状の場合には、面積の増加(重量の増加)に対するMPの増加効果は小さい。
つまり、クロスメンバーの重量増加を最小限に抑え、かつ車体上下方向への曲げ強度を高くするためには、中立軸近傍の面積を最小限にとどめ、中立軸からできるだけ遠い位置、すなわちyの大きい位置に多くの面積を配した断面形状が望ましい。しかし、前記車体上下方向へのスペース制約により、この方向へのクロスメンバーの高さの増大は制限されることになる。
一般に板の座屈限界応力σcrは次式(2)で定義されることが知られている(下記参考文献参照)。
σcr={kπ2E/12(1−ν2)}(t/b)2 ・・・・(2)
ここで、kは座屈係数、Eは弾性率、νはポアソン比、tは断面を構成する板の肉厚、bは板幅である。つまり、断面を構成する板の座屈限界応力σcrは、板材の幅bと肉厚tの比である幅厚比(b/t)の逆数の2乗に比例することになる。
参考文献:構造力学公式集,土木学会,1986,P.367
例えば、前記特許文献3では、車体用クロスメンバーの断面形状例として、フランジ幅bを2本の中リブで分割した目型断面形状を持つアルミ押出形材を実施例としてあげている。
しかし、この断面形状は、凹部の無い断面形状に比べて、より曲げ中立軸に近い部位に多くの面積を持つ断面形状となる。つまり、凹みの設置により、フランジ板の座屈は抑制できるものの、曲げ強度は若干低下し、結果として軸圧縮強度も低下することになる。
t≦T ・・・・(3)
b/t ≦0.5(B/T)・・・・(4)
図1に示すように、フランジ7のうち、ウエブ9,10の内側の部分の板幅がB、その肉厚がT、フランジ7の端部に形成された突出フランジ3の板幅がb、その肉厚がtである。なお、フランジ8、突出フランジ4〜6の板幅、肉厚についても同様である。
図2に示すように、フランジ19のうち、ウエブ21,22の内側の部分の板幅がB、その肉厚がT、フランジ19の端部に形成された突出フランジ15の板幅がb、その肉厚がtである。なお、フランジ20,23,24、突出フランジ16〜18の板幅、肉厚についても同様である。
また、前記クロスメンバーにおいて、突出フランジの板幅bと肉厚tの比b/tが、次式(5)の関係を満たすことが望ましい。
b/t≦{1.59π2E/12(1−ν2)σ0.2}1/2 ・・・・(5)
ここで、Eは前記アルミニウム押出形材の弾性率、νはポアソン比、σ0.2は耐力である。ポアソン比νは、アルミニウム押出形材の場合、ν=0.3と置けばよい。
なお、本発明においてアルミニウムという用語は、アルミニウム合金を含む意味で用いられる。
また、本発明に係るクロスメンバーにおいて、閉断面部を構成するフランジの肉厚Tとそのフランジの端部に形成した突出フランジの肉厚tが前式(3)の関係を満たし、かつ閉断面部を構成するフランジのウエブの内側の部分の幅厚比B/Tと、そのフランジの端部に形成した突出フランジの幅厚比b/tの関係が前式(4)を満たすことで、閉断面部を構成するフランジの座屈限界応力の低下を抑制可能とし、重量増加を最小限に抑え、かつ高い軸圧縮荷重を得ることができる。
図1に示す本発明に係るクロスメンバー1と、クロスメンバー1と同一幅で突出フランジのないクロスメンバー31(図3)を比較すると、クロスメンバー1では、第一に閉断面部2を構成するフランジ7,8の板幅Bを、クロスメンバー31の閉断面部32を構成するフランジ33,34の板幅B0より短くすることができる(B<B0)。これにより、前式(2)からわかるように、閉断面部を構成するフランジの座屈限界応力を高くすることができるという効果が生じる。
突出フランジがない場合(図4(a))、座屈による断面の変形形態は、サインカーブに近い形状を示す。これに対して、突出フランジを設定した場合(図4(b))には、コサインカーブに近い変形形態となり、フランジ板の変形に要するエネルギが高くなることで、閉断面部を構成するフランジ板の座屈限界応力を向上させることができるという効果が生じる。
また、重量は板幅bに応じて増加することから、重量増加に対する最大荷重の増加率も、σcr=σyとなる幅厚比条件を境界に減少し、これよりもb/tが大きい突出フランジを設定することは重量増加に対する荷重増加の割合という観点からは非効率的であるといえる。
一端が自由端となる突出フランジの座屈限界応力σcrは、突出フランジの形材長手方向長さを無限大に近い条件と考え、先に挙げた参考文献の記載に基づき、座屈係数k=1.59とし、前式(2)から算出される。つまり、突出フランジの幅厚比は、前式(5)の関係を満足することが望ましい。
図6(a)は、閉断面部2内に上下のフランジ7,8を連結する中リブ41がウエブ9,10に平行に形成されたもの、図6(b)は、閉断面部2内に上下のフランジ7,8を連結する2本の中リブ42,43がウエブ9,10に平行に形成されたもの、図6(c)は、上側のフランジ7の端部から車体前後方向外向きに突き出す突出フランジ3,4が形成されているが、下側のフランジ8の端部には突出フランジが形成されていないもの、図6(d)は、さらに閉断面部2に中リブ44が形成されたもの、図6(e)は、上側のフランジ7の端部に突出フランジが形成されていないもの、図6(f)は、突出フランジ3〜6の肉厚が、閉断面部2を構成するフランジ7,8よりかなり薄肉に形成されたものを示す。
なお、閉断面部内に形成する中リブは、閉断面部を構成するフランジの幅に応じて、必要な部品強度あるいは形状精度確保の観点から、1本又は複数本設けることができる。
図7(a)は、上側のフランジ19,23の端部から車体前後方向外向きに突き出す突出フランジ15,16が形成されているが、下側のフランジ20,24の端部には突出フランジが形成されていないもの、図7(b),(c)は、上側のフランジ19,23の端部から車体前後方向外向きに突き出す突出フランジ15,16のほかに、さらに車体前後方向内向きに突き出す突出フランジ45,46が形成されたもの、図7(d)は、両側の閉断面部12,13を連結する開断面の壁状リブ14が直線的でなく、他部品との取りつけなどのために、凹凸部47が形成されたもの、図7(e)は、壁状リブ14が両閉断面部12,13の上端を連結し、壁状リブ14の上面が上側のフランジ19,23の上面と面一で、フランジ19,23と突出フランジ15,16及び壁状リブ14が、それぞれ1つのフランジのようになっているもの、図7(f)は、壁状リブ14が両閉断面部12,13の中間高さ位置を連結しているものである。
図8(a)は、上下のフランジ7,8の端部から車体前後方向の右側外向きに突き出す突出フランジ3,5が形成されているが、左側外向きには突出フランジが形成されていないもの、図8(b)は、上下のフランジ19,20の端部から車体前後方向外向き(右側)に突き出す突出フランジ3,5が形成されているが、フランジ23,24の端部には車体前後方向外向き(左側)に突き出す突出フランジが形成されていない。さらに、上下のフランジの一方にのみ突出フランジが形成されたもの(図8(a)のクロスメンバーであれば、例えば突出フランジ5が形成されていないもの)も例示できる。
2,12,13 閉断面部
3〜6、15〜18 突出フランジ
7,8,19,20,23,24 閉断面部を構成するフランジ
9,10,21,22,25,26 ウエブ
B 閉断面部を構成するフランジの板幅
T 閉断面部を構成するフランジの肉厚
b 突出フランジの板幅
t 突出フランジの肉厚
Claims (14)
- 自動車の車体幅方向に延在して両端が車体フレーム部品に連結されるアルミニウム押出形材製のクロスメンバーであり、押出方向に垂直な断面でみたとき、互いに略平行で車体上側及び下側に配置される一対のフランジとそれに略垂直で車体上下方向を向く一対のウエブからなる略矩形の閉断面部、及び前記閉断面部を構成する上側又は/及び下側のフランジの端部から車体前後方向の両側外向きに突き出す突出フランジからなり、前記閉断面部を構成するフランジの肉厚Tとそのフランジの端部に形成した突出フランジの肉厚tが次式(1)の関係を満たし、かつ前記閉断面部を構成するフランジのウエブの内側の部分の板幅Bと肉厚Tの比B/Tと、そのフランジの端部に形成した突出フランジの板幅bと肉厚tの比b/tが、次式(2)の関係を満たすことを特徴とする自動車のクロスメンバー。
t≦T ・・・・(1)
b/t ≦0.5(B/T)・・・・(2) - 自動車の車体幅方向に延在して両端が車体フレーム部品に連結されるアルミニウム押出形材製のクロスメンバーであり、押出方向に垂直な断面でみたとき、互いに略平行で車体上側及び下側に配置される一対のフランジとそれに略垂直で車体上下方向を向く一対のウエブからなる2組の略矩形の閉断面部、車体前後方向に間隔を置いて配置された前記閉断面部の間を連結するソリッドな壁状リブ、及び両閉断面部の上側又は/及び下側のフランジの端部から車体前後方向の両側外向きに突き出す突出フランジからなり、前記閉断面部を構成するフランジの肉厚Tとそのフランジの端部に形成した突出フランジの肉厚tが次式(1)の関係を満たし、かつ前記閉断面部を構成するフランジのウエブの内側の部分の板幅Bと肉厚Tの比B/Tと、そのフランジの端部に形成した突出フランジの板幅bと肉厚tの比b/tが、次式(2)の関係を満たすことを特徴とする自動車のクロスメンバー。
t≦T ・・・・(1)
b/t ≦0.5(B/T)・・・・(2) - 押出方向に垂直な断面でみたとき、さらに、前記両閉断面部の上側又は/及び下側のフランジの端部から内向きに車体前後方向に突き出す突出フランジを有することを特徴とする請求項2に記載された自動車のクロスメンバー。
- 前記閉断面部を構成するフランジの上下の面と前記突出フランジの上下の面がそれぞれ面一に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された自動車のクロスメンバー。
- 前記閉断面部内に上側及び下側のフランジを連結する中リブが車体上下方向を向いて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載された自動車のクロスメンバー。
- 前記突出フランジの板幅bと肉厚tの比b/tが、次式(3)の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載された自動車のクロスメンバー。
b/t≦{1.59π2E/12(1−ν2)σ0.2}1/2 ・・・・(3)
ここで、Eは前記アルミニウム押出形材の弾性率、νはポアソン比、σ0.2は耐力である。 - 前記クロスメンバーがルーフパネルの下で車幅方向に延在するルーフリーンフォースであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載された自動車のクロスメンバー。
- 自動車の車体幅方向の所定位置に配置された車体フレーム部品と、車体幅方向に延在して両端が前記車体フレーム部品に連結されたクロスメンバーからなる自動車のフレーム構造において、前記クロスメンバーはアルミニウム押出形材からなり、押出方向に垂直な断面でみたとき、互いに略平行で車体上側及び下側に配置される一対のフランジとそれに略垂直で車体上下方向を向く一対のウエブからなる略矩形の閉断面部、及び前記閉断面部を構成する上側又は/及び下側のフランジの端部から車体前後方向の両側外向きに突き出す突出フランジからなり、前記閉断面部を構成するフランジの肉厚Tとそのフランジの端部に形成した突出フランジの肉厚tが次式(1)の関係を満たし、かつ前記閉断面部を構成するフランジのウエブの内側の部分の板幅Bと肉厚Tの比をB/Tと、そのフランジの端部に形成した突出フランジの板幅bと肉厚tの比b/tが、次式(2)の関係を満たすことを特徴とする自動車のフレーム構造。
t≦T ・・・・(1)
b/t ≦0.5(B/T)・・・・(2) - 自動車の車体幅方向の所定位置に配置された車体フレーム部品と、車体幅方向に延在して両端が前記車体フレーム部品に連結されたクロスメンバーからなる自動車のフレーム構造において、押出方向に垂直な断面でみたとき、互いに略平行で車体上側及び下側に配置される一対のフランジとそれに略垂直で車体上下方向を向く一対のウエブからなる2組の略矩形の閉断面部、車体前後方向に間隔を置いて配置された前記閉断面部の間を連結するソリッドな壁状リブ、及び両閉断面部の上側又は/及び下側のフランジの端部から車体前後方向の両側外向きに突き出す突出フランジからなり、前記閉断面部を構成するフランジの肉厚Tとそのフランジの端部に形成した突出フランジの肉厚tが次式(1)の関係を満たし、かつ前記閉断面部を構成するフランジのウエブの内側の部分の板幅Bと肉厚Tの比B/Tと、そのフランジの端部に形成した突出フランジの板幅bと肉厚tの比b/tが、次式(2)の関係を満たすことを特徴とする自動車のフレーム構造。
t≦T ・・・・(1)
b/t ≦0.5(B/T)・・・・(2) - 前記クロスメンバーは、押出方向に垂直な断面でみたとき、さらに、前記両閉断面部の上側又は/及び下側のフランジの端部から内向きに車体前後方向に突き出す突出フランジを有することを特徴とする請求項9に記載された自動車のフレーム構造。
- 前記クロスメンバーは、閉断面部を構成するフランジの上下の面と前記突出フランジの上下の面がそれぞれ面一に形成されていることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載された自動車のフレーム構造。
- 前記クロスメンバーは、閉断面部内に車体上下方向を向き上側及び下側のフランジを連結する中リブを有することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載された自動車のフレーム構造。
- 前記クロスメンバーの突出フランジの板幅bと肉厚tの比b/tが、次式(3)の関係を満たすことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載された自動車のフレーム構造。
b/t≦{1.59π2E/12(1−ν2)σ0.2}1/2 ・・・・(3)
ここで、Eは前記アルミニウム押出形材の弾性率、νはポアソン比、σ0.2は耐力である。 - 上記クロスメンバーがルーフパネルの下で車幅方向に延在するルーフリーンフォースであることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載された自動車のフレーム構造。
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