JP4807646B2 - ジャガイモ澱粉製造過程における廃棄物処理方法 - Google Patents
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Description
この澱粉抽出方法には、大量の清水による精製が必要で、膨大な排水の処理を伴い、特に高濃度タンパク質含有排水(デカンター排水)が環境に及ぼす影響は甚大で、これらの環境対応に多大な費用を費やすことになる。
しかし、ジャガイモ澱粉製造処理費用の節減が望まれている現状では、施設の大規模化による設備投資及び資材費用の犠牲が容認できない。
だからといって、現状の未処理デカンター排水を退避用プールへ退避させ、腐敗臭が漂うなどの環境問題を起しても不都合である。また、未処理デカンター排水を濃度を薄めて圃場に散布するとしても、濃度を薄めたからとて未処理デカンター排水本来の腐敗臭が醸し出され、公害問題を起し、更には、ジャガイモの表皮に罹病するソウカ病菌が圃場に散布されることになって不都合である。
また、デカンター排水から析出分離したタンパク質は栄養価が高いにもかかわらず、飼料として有効利用するための採算的且つ具体的方法が未だ示されていない。
本発明は、ジャガイモ澱粉製造過程におけるデカンター排水の前処理負荷軽減として、PH3の酸による等電点処理を採用し、その際に、副産物の付加価値増に適合するべく酸の選択と使用手段、更には処理後の酸性残排水の中和の際のアルカリ剤の選択、及び処理後の酸性残排水の処理や目的別に中和時期をコントロールすることを特徴とし、もって、プラント周辺の諸問題が合理的に解決される一連の対処方法を目的とする。
また、各現場固有の実情と、現存施設との活用を図りながら、環境、その他不適切な状況を解消してゆく、即ち嫌気発酵処理施設の小規模設計のもとに現存している一時退避用プールや、圃場還元の為に償却期間にあるローリー散布車を活用しながら改善してゆく方法である。よって、最新式プラントへの大幅改造投資以外の手段として、投資現場に選択肢を提供することにある。
そして、今後のエネルギー事情を考慮して、熱源エネルギーの継続使用に基ずく処理方法がコストの高騰を招くことになるので、この熱エネルギーが使用されない酸による等電点処理を採用し、よって、サイレージ化、及び圃場への液肥による資源付加価値の向上を図ることができる。
そこで、絞り粕のポテトパルプに、デカンター排水より析出分離したタンパク質の固形分を混合することによって、高タンパクサイレージにすることができる。
なお、ジャガイモ澱粉製造過程による絞り粕のポテトパルプに水分調整の目的で吸水性豊富な飼料であるフスマが混合されるが、これは酸による析出分離されたミネラル入りタンパク質などの固形分と混合することによって、酸が、この混合でフスマなどの糖化に貢献することになって、良好な高タンパクミネラル入りサイレージを構成することができる。
そして、サイレージ発酵の一般理論によれば、特に、タンパク質はPH4.2以下にて酪酸菌による腐敗分解を免れ、従って、乳酸発酵によるPHダウンが完成する数日間は、タンパク質を低PHで包んでサイレージ化することに意義がある。
また、デカンター排水を酸で調整し、等電点処理することは、PH3.5〜4.5でタンパク質などの固形分の析出が盛んであるが、この領域を越えると析出が減少することになる。しかし、減少したからといっても析出が続けられ、PH3で最高の除去率になる。この領域は、小規模化設備及びランニングコスト軽減などに有効領域となる。また、このPH3領域より高い場合は変敗し易く、抽出タンパク質の保存及び資源化には、熱風エネルギーを採用するなどして水分15%程度まで乾操する必要が生じ、その為の設備投資及びランニングコストが掛り、不都合である。
そこで、本発明は、デカンター排水が蟻酸を使用してPH3に調整され、等電点処理と遠心分離することによって、タンパク質などの固形分を最大量析出分離し、流通・在庫を想定しないでよい地域内酪農家へのサイレージ利用の合理性を見出したことになる。
なお、蟻酸が予めサイレージ添加剤であることを表1に示す。
また、サイレージについては、第一に適度な水分、第二に適度な糖質、第三に適度なタンパク質の含有である。そこで、最適な調整水分は70%程度であり、また適度な澱粉質もしくは糖質があるとより良いとされている。即ち、通性嫌気性菌である乳酸菌発酵の繁殖良好な条件として示されている。これをもとに吸水性及び糖質も兼ね備えたフスマ(水分約10%)を選択したことになる。
ここで、現実のジャガイモ澱粉製造過程においては、絞り粕であるポテトパルプの抽出吐き出し口には一般的にスクリューコンベアが既設されており、これをそのまま活用し、そこを流れるポテトパルプ(水分80%)の手前にて重量比14%程度のフスマを落下させることでスクリュー回転にて混合しながら押し出される結果、均一良好に混合された水分70%のサイレージベースが製造できる。
尚、ポテトパルプの水分の調整材としての有効なものは、必ずしもフスマに限るものではなく、即ち、各単体飼料の糖質及びタンパク含有率などに配慮し、吸水性の豊富な飼料を使用することであればより好ましい。
流通のフスマは、水分10%程度の粉状物であり、しかも粗タンパク質は約18%程度であることから配合飼料のタンパク質含有に近い上に適度な糖質が含まれる為、乳酸発酵にも良好である。また、その他の方法として、コーングルテンミール、またはタンパク質濃度をより高レベルにすることを重視する場合は、市販のポテトプロテインなどのタンパク源飼料を使用することにより、効率の良いタンパク質含有率アップが期待できる。
以上の反応の具体例としては、例えば、硫酸で酸調整された場合、水酸化ナトリウムで中和すれば、硫酸ナトリウムとなる。
H2SO4(硫酸) + 2NaOH(水酸化ナトリウム)
→ Na2SO4(硫酸ナトリウム) + 2H2O
なお、硫酸ナトリウムは飼料添加物のミネラルとして定められたものである(表1)。
以上によって、硫酸もしくは塩酸でPH3に調整され、デカンター排水より析出分離された固形物は、使用した酸のそれぞれに対応したアルカリ剤をもって中和することにより、固形物中の硫酸根もしくは塩酸根が飼料添加物として定められたミネラルを生成し、これらを含有するサイレージとなり、これをジャガイモ澱粉製造過程での廃棄物である絞り粕のポテトパルプに混合すれば、更に、望ましい高タンパクミネラル入りサイレージが造られる。
このフスマ調整によるサイレージベースを、20トン規模2ヶ所にて密閉保管し、その30日経過後開封し、発酵サンプリング調査をした。一般的には、乳酸は1%以上、酪酸は未検出が理想とされるが、これによれば、乳酸濃度は2.01%と1.29%となり、不良発酵の目安である酪酸濃度は未検出であった。このことより単価の高い高泌乳牛用配合飼料に近づけるべくタンパク質濃度を添加することが可能となる。
これについては、デカンター排水を2点サンプリングし、常圧加熱乾燥法により固形分含有率4.54%をえた(図2)。またこの乾燥物を窒素定量換算法により推定した含有タンパク質は、2者平均で同固形物中50.35%となった(図3)ことから、全デカンター排水中に占めるタンパク質の乾物重量は、
概ね、 4.54%×50.35%=2.3%
となり、他の文献および調査報告と非常に近似する値になった。
一方、工場間によって多少の格差はあるものの、乾物換算のポテトパルプ排出トン数の約34〜38倍程度のデカンター排水が排出されることから、乾物ポテトパルプ重量の82.8%(2.3%×36倍)程度のタンパク質資源がデカンター排水中に存在すると推定される。
さてここで、サイレージベースには、ポテトパルプ自体が保持しているタンパク質(乾物比4〜6%)およびフスマタンパク質(乾物比18%)がすでに含まれていることを考慮し、高泌乳牛用配合飼料(市価44円/kg相当)の約20%含有率に匹敵するサイレージ製造の為に、追加を要するタンパク質回収量を求めると以下の通りとなる。
ポテトパルプ(水分80%)の原物重量を8600トン、フスマ(水分10%)原物重量を1400トンでサイレージベースを製造した場合
{8600トン×0.2(乾物比)×4%(蛋白)+1400トン×0.9(乾物比)×18%(蛋白)+排水回収蛋白乾物重}÷{8600トン×0.2(乾物比)+1400トン×0.9(乾物比)+排水回収蛋白乾物重}=20%
よって、排水タンパク質の要回収量は375トンとなり、デカンター排水中の全タンパク質推定重量である
(8600トン×0.2)×82.8%(乾物ポテトパルプ重量の概ね82.8%)=1424トンのうちの
375÷1424=26%
以上の回収率を要する。この数値は、これまでの様々な文献における等電点処理にて充分可能な数値であり、またカロリー他栄養素や消化率も考慮した結果、配合飼料(市価44円/kg相当)製品原物の約3800トン程度の栄養価値と試算できる。このことは処理に必要な酸及び通常の中和処理剤、およびフスマなどランニングコストを多大に上回る栄養価値額であることから、熱風乾燥による資源化方式に充分勝る経済的証明といえると伴に、エタノール問題に端を発する国際的な穀物価格の上昇や原油情勢などに鑑みたプラントとして、将来的利点が期待できる。
例えば、塩酸にてPH2.0、3.0、4.0、5.0に調整したデカンター排水と未処理デカンター排水を対比した場合で、処理後24時間経過の上清水タンパク質濃度をブラッドフォード法により定量した場合、各上清水1mg中に残存するPH2.0、3.0、4.0、5.0、および未処理区のタンパク質量の平均値(μg)は、それぞれ1091、819、4565、5572、及び未処理の6086となり(図4A、図4B)、PH3.0で除去率が最高になった。
また、同実験方法によって、塩酸・硫酸・蟻酸・乳酸・酢酸、及び未処理区のタンパク質量の平均値(μg)は、それぞれ739、738、801、901、527、および未処理の5717となった。そして、それぞれの除去率は、87%、87%、86%、84%、91%となって、残存値が少なく好ましいと考えられるが、総じて酸の経費では一般的に硫酸が有利であり、サイレージ処理としては蟻酸に特殊有利性が認められる。
尚、微粒子専用の高速連続遠心分離機などは、一般的に単位時間当たり処理能力に比して高価な為、別途反応待機槽を設置の上、一定反応時間経過後に上清水部分を排除した沈殿エリアのみの遠心分離処理が有利な場合も考えられる。この点、硫酸、塩酸は沈降速度と圧密度の両面において非常に良好であり、続いて蟻酸が有利であった。また、酢酸は沈降速度が極端に遅く、好ましいとは云えない。
2 酸
3 攪拌機
4 PH計
5 タンパク析出反応槽
6 レベルセンサー
7 上清水
8 沈殿物
9 遠心分離機
10 タンパク質など固形分
11 分離液
12 定量ポンプ
13 ベルトコンベア
14 タンク
15 ポテトパルプ
16 スクリューオーガー
17 混合飼料
18 プール
19 ライムケーキ
20 圃場
21 中和(NaOH)
22 嫌気処理施設
23 表面バッキ
24 河川
Claims (3)
- デカンター排水が、予めサイレージ添加剤として有効な蟻酸を使用して、PH3に調整され、等電点処理と遠心分離によってタンパク質などの固形分を析出分離してサイレージ化し、該サイレージ化したタンパク質などの固形分と、澱粉製造過程にて別途排出される廃棄物である絞り粕のポテトパルプを吸水性豊富な飼料であるフスマと混合調整したサイレージベースとが二次混合されて、高タンパクサイレージとすることを特徴とするジャガイモ澱粉製造過程における廃棄物処理方法。
- デカンター排水が、予め硫酸を使用してPH3に調整され、等電点処理と遠心分離によってタンパク質などの固形分を析出分離し、この固形分の分離物に対して、析出分離に使用した硫酸に対応したアルカリ剤の水酸化ナトリウムをもって中和し、硫酸と水酸化ナトリウムによる硫酸ナトリウムが得られるように飼料添加物として定められたミネラルを含有するサイレージとすることを特徴とするジャガイモ澱粉製造過程における廃棄物処理方法。
- 析出分離したタンパク質など固形分の分離物内の硫酸と水酸化ナトリウムによる硫酸ナトリウムが得られるように飼料添加物として定められたミネラルを得る為の中和反応が施され、この分離物と、澱粉製造過程にて別途排出される廃棄物である絞り粕のポテトパルプを吸水性豊富な飼料であるフスマと混合調整したサイレージベースとが二次混合されて、高タンパクミネラル入りサイレージとすることを特徴とする請求項2記載のジャガイモ澱粉製造過程における廃棄物処理方法。
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