JP4803789B2 - 疼痛を処置するための薬学的組成物 - Google Patents

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Description

本願発明は、疼痛を処置するための薬物の分野に関する。
(オンコスタチンMおよびそのレセプター)
オンコスタチンMは、1980年代後半にヒトのA375メラノーマ細胞の増殖を抑制する因子として発見され、癌の阻害因子という意味で名づけられた。ヒトオンコスタチンM遺伝子の単離によって、オンコスタチンMがインターロイキン6(IL−6)ファミリーに属し、活性においても、構造においても特に白血病抑制因(LIF)に類似していることが明らかとなった。しかし、その後、長い間マウスのオンコスタチンMをコードする遺伝子が同定されなかったことなどから、LIF類似のサイトカインという以上には理解が進まなかった。その後、サイトカインのシグナル伝達機構の解析の結果、サイトカイン刺激で活性化される転写因子STAT5により制御される遺伝子の同定の結果、マウスオンコスタチンMのcDNAがクローニング(配列番号4)され、オンコスタチンMの解析が進んだ。オンコスタチンM遺伝子のプロモーター領域には、STAT5の結合配列が存在し、オンコスタチンM遺伝子の発現はサイトカイン刺激によってSTAT5を介して誘導されることが示された。オンコスタチンMの示す生理活性は多種多様であり、胚形成、炎症反応、造血、肝臓発生に関与することが知られており、細胞種によって、増殖促進、増殖抑制、分化誘導などの活性を示す。
オンコスタチンMレセプターは、gp130分子とオンコスタチンMレセプターβ鎖(OSMRβ)とのヘテロ二量体である。これに対して、オンコスタチンMと同様にIL−6ファミリーに属するLIFのレセプターは、gp130分子と白血病抑制因レセプターβ鎖(LIFRβ)とのヘテロ二量体である。これらβ鎖は、リガンドとの結合、およびシグナル伝達に必須であり、gp130分子に相当する長さの細胞内ドメインを有する。
近年、オンコスタチンM特異的生物学的活性(例えば、多能性造血前駆細胞の増殖、および内皮細胞クラスターの形成、肝細胞の分化、および新生児のセルトリ細胞の増殖)が、オンコスタチンMレセプターβ鎖を媒介することが報告された。
本発明者らは、以前にオンコスタチンMレセプターβ鎖が、胚形成の間および、成体マウス内の神経系を含む種々の器官において発現していることを示した。(Tamuraら、Mech Dev 115:127−131(2002);Tamuraら、Neuroscience 119(2003)991−997;Tamuraら、Eur.J.Neurosci 17:2287−2298(2003))。脊髄神経節(DRG)では、オンコスタチンMレセプターβ鎖は、ペプチド作動性の侵害受容性ニューロンにおいて発現することが示された。このペプチド作動性の侵害受容性ニューロンは、バニロイド(vanilloid)レセプター(VR1)およびP2X3プリン作動性(purinergic)レセプターの両方を発現した。(Tamuraら、E.J.Neuorosci、17、2287−2298(2003))。しかし、オンコスタチンMレセプターβ鎖と疼痛との関連は、教示も示唆もされていない。
(神経因性疼痛)
疼痛は、急性痛、炎症性疼痛、および神経因性疼痛に大別される。中でも、神経因性疼痛は、慢性に経過し、非常に難治性の疾患である。鎮痛薬としては現在、非ステロイド性消炎鎮痛薬(non−steroidal anti−inflammatory drugs:NSAIDs)および麻薬(オピオイド)が使用されているが、神経因性疼痛は、これらの薬剤に対する抵抗性を示す。神経性疼痛におけるアロディニア(触覚刺激で誘発される痛みの現象)は持続的であり、脊髄におけるアロディニアの維持には、グルタミン酸レセプター(特にNMDAレセプター)、グルタミン酸トランスポーター、NO(一酸化窒素)、およびプロスタグランジン(特に、PGE、およびPGF2α)が関与すると考えられている(南敏明、土居ゆみ、村谷忠利、西村渉、西澤幹雄、伊藤誠二: 痛覚伝達に対する脊髄でのプロスタグランジンの役割、緒方宣邦、柿木隆介編集、『痛みの基礎と臨床、真興交易医書出版部』、138ー149ページ、2003年)。
神経性疼痛における過敏反応と関連する神経線維として、カプサイシンに非感受性であり、グルタミン酸を伝達物質として、そしてプロスタグラジンI2アゴニストなどが作用する神経線維としてIII型神経線維が提唱されている(植田弘師、井上誠: モルヒネ耐性とモルヒネ非感受性神経因性疼痛、緒方宣邦、柿木隆介編集、『痛みの基礎と臨床、真興交易医書出版部』、152ー165ページ、2003年)、神経因性疼痛を処置するための、抵抗性を示さない薬剤は、未だ開発されていない。また、神経因性疼痛以外の疼痛(例えば、急性痛、炎症性疼痛、癌性疼痛)を処置するための薬剤の開発も、未だ不十分である。例えば、癌性疼痛についてはモルヒネが第一選択であり、初期はよく効くが、しばらくするときかなくなり(耐性)、幻覚などの中枢神経症状を呈してくる。そのため、種々の疼痛に対する効果的な薬剤の開発が望まれている。
疼痛は、脊髄神経節(DRG)を経由して、その信号が伝達する。そのため、例えば、DRGを経由する神経を除去するか、またはシグナルを遮断することによって、疼痛の処置が可能であると考えられる。しかし、物理的に疼痛に関与する神経のみを除去することは、困難である。一方、IB4は、DRGの40%の神経で発現するマーカーであることから、IB4発現神経細胞を特異的に除去することによって、痛感を緩和する方法が提唱されている(非特許文献6)。しかし、DRG神経細胞には、c−ret神経細胞とtrkA神経細胞があるが、IB4は、もっぱらc−ret神経細胞に発現し、しかも全DRG神経細胞の40%もの神経細胞がIB4であることから、IB4の発現を指標にすることは、必要以上にDRG神経細胞を除去する結果を招きかねず、しかも、除去する細胞が偏った集団の神経細胞であることから、その副作用が懸念される。
Tamuraら、Mech Dev 115:127−131(2002) Tamuraら、Neuroscience 119(2003)991−997 Tamuraら、E.J.Neuorosci.、17、2287−2298(2003) 南敏明、土居ゆみ、村谷忠利、西村渉、西澤幹雄、伊藤誠二: 痛覚伝達に対する脊髄でのプロスタグランジンの役割、緒方宣邦、柿木隆介編集、『痛みの基礎と臨床、真興交易医書出版部』、138ー149ページ、2003年 植田弘師、井上誠: モルヒネ耐性とモルヒネ非感受性神経因性疼痛、緒方宣邦、柿木隆介編集、『痛みの基礎と臨床、真興交易医書出版部』、152ー165ページ、2003年 Vulchanovaら、Neuroscience、Vol.108、No.1、143〜155頁、2001
このように、当該分野において、疼痛、特に抵抗性の疼痛(例えば、癌性疼痛、神経因性疼痛、および炎症性疼痛など)を処置するための薬物への需要が高まっている。本発明は、このような需要に応えることを課題とする。
本発明は、本発明者らが上記課題を鋭意検討した結果、意外にもオンコスタチンMレセプターを発現する細胞において、オンコスタチンMによってトリガーされる反応を阻害・抑制することによって、疼痛応答が抑制されることを見出したことによって一部完成された。さらに、驚くべきことに、中枢神経系に対して抹消神経側にオンコスタチンMを投与することによっても、疼痛応答が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、以下を提供する。
1.オンコスタチンMアンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、疼痛を処置するための薬学的組成物。
2.オンコスタチンMアンタゴニストが以下からなる群から選択される、項目1に記載の薬学的組成物:
抗オンコスタチンM抗体、抗オンコスタチンMレセプター抗体、オンコスタチンMレセプターフラグメント、オンコスタチンMレセプターの少なくとも一部を含む融合タンパク質、抗gp130抗体、およびオンコスタチンM変異体。
3.オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体である、項目2に記載の薬学的組成物。
4.前記抗オンコスタチンMレセプター抗体が細胞毒素と結合体を形成している、項目3に記載の薬学的組成物。
5.前記細胞毒素が、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼからなる群から選択される、項目4に記載の薬学的組成物。
6.オンコスタチンMアンタゴニストが、投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように含有される、項目1に記載の薬学的組成物。
7.さらに、細胞毒素と結合体化した抗オンコスタチンMアンタゴニスト抗体を含む、項目1に記載の薬学的組成物。
8.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目1に記載の薬学的組成物:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
9.非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、項目1に記載の薬学的組成物。
10.インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、項目1に記載の薬学的組成物。
11.疼痛を処置するための医薬の製造における、オンコスタチンMアンタゴニストの使用。
12.オンコスタチンMアンタゴニストが以下からなる群から選択される、項目11に記載の使用:
抗オンコスタチンM抗体、抗オンコスタチンMレセプター抗体、オンコスタチンMレセプターフラグメント、オンコスタチンMレセプターの少なくとも一部を含む融合タンパク質、抗gp130抗体、およびオンコスタチンM変異体。
13.オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体である、項目12に記載の使用。
14.前記抗オンコスタチンMレセプター抗体が細胞毒素と結合体を形成している、項目13に記載の使用。
15.前記細胞毒素が、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼからなる群から選択される、項目14に記載の使用。
16.オンコスタチンMアンタゴニストが投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように前記医薬中に含有される、項目11に記載の使用。
17.さらに、細胞毒素と結合体化した抗オンコスタチンMアンタゴニスト抗体の使用を含む、項目11に記載の使用。
18.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目11に記載の使用:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
19.項目1に記載の薬学的組成物を含む、疼痛を処置するためのキット。
20.オンコスタチンMアンタゴニストが以下からなる群から選択される、項目19に記載のキット:
抗オンコスタチンM抗体、抗オンコスタチンMレセプター抗体、オンコスタチンMレセプターフラグメント、オンコスタチンMレセプターの少なくとも一部を含む融合タンパク質、抗gp130抗体、およびオンコスタチンM変異体。
21.オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体である、項目20に記載のキット。
22.前記抗オンコスタチンMレセプター抗体が細胞毒素と結合体を形成している、項目21に記載のキット。
23.前記細胞毒素が、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼからなる群から選択される、項目22に記載のキット。
24.オンコスタチンMアンタゴニストが投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように前記薬学的組成物中に含有される、項目19に記載のキット。
25.さらに、細胞毒素と結合体化した抗オンコスタチンMアンタゴニスト抗体を含む、項目19に記載のキット。
26.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目19に記載のキット:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
27.非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬の少なくとも1つをさらに含む、項目19に記載のキット。
28.インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、項目27に記載のキット。
29.疼痛を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、
(a)遺伝子導入ベクターであって、オンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子の制御領域および該制御領域と作動可能に連結された細胞障害遺伝子とを含むベクター、および
(b)薬学的に受容可能なキャリア
を含む、疼痛を処置するための薬学的組成物。
30.前記オンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子の制御領域が、該遺伝子のプロモーター領域由来である、項目29に記載の薬学的組成物。
31.前記プロモーターの配列が、配列番号1に記載の配列からなる配列である、項目30に記載の薬学的組成物。
32.前記遺伝子導入ベクターが、以下からなる群から選択されるウイルス由来である、項目29に記載の薬学的組成物:レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルス。
33.前記遺伝子導入ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルス由来である、項目32に記載の薬学的組成物。
34.遺伝子導入ベクターがレトロウイルス由来である、項目32に記載の薬学的組成物。
35.前記細胞障害遺伝子が、以下からなる群から選択される遺伝子由来である、項目29に記載の薬学的組成物:ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼ。
36.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目29に記載の薬学的組成物:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
37.非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、項目29に記載の薬学的組成物。
38.インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、項目29に記載の薬学的組成物。
39.疼痛を処置するための医薬の製造における、遺伝子導入ベクターの使用であって、該ベクターはオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子の制御領域および該制御領域と作動可能に連結された細胞障害遺伝子とを含む、使用。
40.前記オンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子の制御領域が、該遺伝子のプロモーター領域由来である、項目39に記載の使用。
41.前記プロモーターの配列が、配列番号1に記載の配列からなる配列である、項目40に記載の使用。
42.前記遺伝子導入ベクターが、以下からなる群から選択されるウイルス由来である、項目39に記載の使用:レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルス。
43.前記遺伝子導入ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルス由来である、項目42に記載の使用。
44.前記遺伝子導入ベクターが、レトロウイルス由来である、項目42に記載の使用。
45.前記細胞障害遺伝子が、以下からなる群から選択される遺伝子由来である、項目39に記載の使用:ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼ。
46.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目39に記載の使用:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
47.項目29に記載の薬学的組成物を含む、疼痛を処置するためのキット。
48.前記オンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子の制御領域が、該遺伝子のプロモーター領域由来である、項目47に記載のキット。
49.前記プロモーターの配列が、配列番号1に記載の配列からなる配列である、項目48に記載のキット。
50.前記遺伝子導入ベクターが、以下からなる群から選択されるウイルス由来である、項目47に記載のキット:レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルス。
51.前記遺伝子導入ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルス由来である、項目50に記載のキット。
52.前記遺伝子導入ベクターが、レトロウイルス由来である、項目50に記載のキット。
53.前記細胞障害遺伝子が、以下からなる群から選択される遺伝子由来である、項目47に記載のキット:ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼ。
54.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目47に記載のキット:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
55.非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、項目47に記載のキット。
56.インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、項目47に記載のキット。
57.オンコスタチンMまたはオンコスタチンMホモログの少なくとも1つと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、疼痛を処置するための薬学的組成物であって、
ここで、オンコスタチンMホモログは、配列番号4、6または8に記載の核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によってコードされ、そしてオンコスタチンM活性を有するポリペプチドであって、ここで、オンコスタチンM活性は、多能性造血前駆細胞の増殖促進活性、内皮細胞クラスターの形成促進活性、肝細胞分化促進活性、新生児のセルトリ細胞の増殖促進活性、肝細胞からの急性期タンパク質の産生誘導活性、TIMP1の発現誘導活性、および肝再生促進活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、薬学的組成物。
58.オンコスタチンMまたはオンコスタチンMホモログが、投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように含有される、項目57に記載の薬学的組成物。
59.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目57に記載の薬学的組成物:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
60.非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、項目57に記載の薬学的組成物。
61.インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、項目57に記載の薬学的組成物。
62.皮下投与または筋肉内投与に適するように処方される、項目57に記載の薬学的組成物。
63.前記疼痛が、以下からなる群から選択される、項目57に記載の薬学的組成物:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
64.非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、項目57に記載の薬学的組成物。
65.インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、項目57に記載の薬学的組成物。
66.疼痛を処置するための医薬の製造における、オンコスタチンMまたはオンコスタチンMホモログの使用。
67.項目57に記載の薬学的組成物を含む、疼痛を処置するためのキット。
68.疼痛を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、
(a)オンコスタチンM遺伝子またはオンコスタチンMホモログ遺伝子を含む遺伝子導入ベクターであって、
ここで、オンコスタチンMホモログは、配列番号4、6または8に記載の核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によってコードされ、そしてオンコスタチンM活性を有するポリペプチドであって、ここで、オンコスタチンM活性は、多能性造血前駆細胞の増殖促進活性、内皮細胞クラスターの形成促進活性、肝細胞分化促進活性、新生児のセルトリ細胞の増殖促進活性、肝細胞からの急性期タンパク質の産生誘導活性、TIMP1の発現誘導活性、および肝再生促進活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、遺伝子導入ベクター、
および
(b)薬学的に受容可能なキャリア
を含む、疼痛を処置するための薬学的組成物。
69.前記遺伝子導入ベクターが、以下からなる群から選択されるウイルス由来である、項目68に記載の薬学的組成物:レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルス。
70.前記遺伝子導入ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルス由来である、項目69に記載の薬学的組成物。
71.遺伝子導入ベクターがレトロウイルス由来である、項目70に記載の薬学的組成物。
本発明の薬学的組成物は、疼痛、特に抵抗性の疼痛(例えば、癌性疼痛、神経因性疼痛、および炎症性疼痛など)を処置し得るという効果を奏する。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
(用語の定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
本明細書において使用される場合、「オンコスタチンM」とは、特に言及しない限り、配列番号4の核酸配列によってコードされるマウスタンパク質、配列番号6の核酸配列によってコードされるヒトタンパク質、配列番号8の核酸配列によってコードされるラットタンパク質、ならびにそのタンパク質のホモログ、およびオルソログ、ならびにこれらタンパク質、ホモログ、およびオルソログの、改変体、および対立遺伝子変異体の全てを言う。
本明細書において使用される場合、「オンコスタチンMホモログ」とは、例えば、配列番号4、6または8に記載の核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によってコードされるタンパク質であって、少なくとも1つのオンコスタチンM活性を有するポリペプチドをいうか、または、天然のオンコスタチンMのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸残基が欠失、付加、置換したアミノ酸配列を有し、かつ少なくとも1つのオンコスタチンM活性を有するポリペプチドをいう。オンコスタチンM活性としては、多能性造血前駆細胞の増殖促進活性、内皮細胞クラスターの形成促進活性、肝細胞分化促進活性、新生児のセルトリ細胞の増殖促進活性、肝細胞からの急性期タンパク質の産生誘導活性、TIMP1の発現誘導活性、肝再生促進活性、正常な乳房上皮細胞および正常な胸部上皮細胞の増殖阻害活性、AIDS関連カポジ肉腫細胞およびミエローマ細胞およびプラズマ細胞腫細胞の増殖促進活性、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)依存性経路を介した皮膚の線維芽細胞を刺激する活性、AGM由来細胞の初代培養における内皮様細胞の増殖刺激活性、肝細胞癌および肝実質細胞における急性期タンパク質(APP)合成を刺激する活性、培養内皮細胞においてIL−6の産生を刺激する活性、HepG2細胞においてIL−6レセプターの産生を刺激する活性、滑膜線維芽細胞および肺線維芽細胞においてIL−8およびGM−CSFのIL−1性誘導発現の阻害活性、ヒト内皮細胞におけるケモカイン・増殖関連サイトカインαおよびβmRNAの誘導活性、ヒト内皮細胞におけるPセレクチンおよびEセレクチンの長期発現誘導活性、内皮細胞による細胞間接着分子(ICAM−1)およびVCAM−1の発現を誘導する活性、ヒト肺細胞および滑膜起源の線維芽細胞においてTMIP−1発現を増加する活性、培養ヒト滑膜管壁細胞においてTMIP−1発現を増加する活性、培養ヒト滑膜管壁細胞においてIL−1β誘導性TMIP−3発現を阻害する活性、星状細胞においてMMP−1およびMMP−3の発現を増強する活性、線維芽細胞においてMMP−1およびMMP−9の発現を増強する活性、NIH−3T3細胞においてTIMP−1 mRNAを刺激する活性、肺由来の上皮細胞においてα1−アンチキモトリプシン合成を刺激する活性、肺由来の上皮細胞においてα1−アンチキモトリプシンのレベルを上方制御する活性、HepG2細胞において低比重リポ蛋白レセプターおよびプロテインSの発現を上方制御する活性、ヒト肝実質細胞において転写レベルでCYP1A2およびCYP3A4(シトクロムP450のアイソザイム)の発現を下方制御する活性、コラーゲンmRNAの誘導することなく肝星細胞のコラーゲン産生を増加する活性、K−Rasを介して肝実質細胞のEカドヘリンに基づく細胞接着形成の増強する活性、STAT3を介して胎児肝実質細胞におけるD1サイクリンおよびD2サイクリンの発現を下方制御する活性、再生した肝臓の成熟した肝実質細胞においてDサイクリンの発現を上方制御する活性、胎児肝臓においてCD45陽性の造血細胞の発現を誘導する活性、マウスAGM細胞の初代培養における内皮様細胞の増殖刺激活性、および骨髄増殖性の表現型を誘導する活性が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において使用する場合、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェントな条件」とは、最も高いT値に相当する(例えば、50%ホルムアミド、5×または6×SSC)ハイブリダイゼーション条件である。核酸配列のTの決定方法は、周知である。
本明細書において使用される場合、「アンタゴニスト」とは、ある生体作用物質(例えば、オンコスタチンMのようなリガンド)のレセプターへの結合に拮抗的に働き、それ自身はそのレセプターを介した生理作用を現わさない因子をいう。拮抗薬、遮断剤(ブロッカー)、阻害剤(インヒビター)などもこのアンタゴニストに包含される。抗オンコスタチンMレセプター抗体、抗オンコスタチンMレセプター抗体もまた、オンコスタチンMのアンタゴニストとして作用し得る。
本明細書において使用される場合、「オンコスタチンMアンタゴニスト」とは、オンコスタチンMのオンコスタチンMレセプターに対する結合に拮抗的に働くが、それ自体は、オンコスタチンM様の作用をしない物質をいう。オンコスタチンMアンタゴニストとしては、以下に列挙する種々の周知の物質が存在するが、これらに限定されない:抗オンコスタチンM抗体、抗オンコスタチンMレセプター抗体、オンコスタチンMレセプターフラグメント、オンコスタチンMレセプターの少なくとも一部を含む融合タンパク質、抗gp130抗体、およびオンコスタチンM変異体。
本明細書において使用する場合、「抗体」とは、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、抗体フラグメント、一本鎖抗体、ヒトおよびキメラ抗体を含み、そして、ファージ外皮もしくは細胞表面タンパク質に融合した抗体または抗体フラグメント、および当該分野で公知である本明細書中に記載の他の抗体を含む、抗原と特異的に結合するポリペプチドをいう。本明細書の抗体とは、化学的に改変された(例えば、グリコシル化など)抗体、およびトキシンのような他のタンパク質(例えば、ジフテリアトキシン、およびリシン)と融合体化した抗体をも含む。本発明の抗体は、少なくとも約106、107、108、109または1010-1の、抗原に対する特異的結合親和性を示し得、そしてこれはポリクローナル、モノクローナル、組換えまたは他の産物であり得る。本発明の抗体を産生するための抗原として使用し得るポリペプチドとしては、オンコスタチンM、オンコスタチンMレセプター、オンコスタチンMレセプター、もしくはgp130、またはこれらの変異体、あるいはこれらポリペプチドのフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、種々の市販の抗体を使用することができる。例えば、抗マウスオンコスタチンM抗体(R&D社;カタログ番号AF−495−NA)、または抗ヒトオンコスタチンM抗体(R&D社;カタログ番号AF−295−NA、またはMAB295)、あるいは、抗マウスオンコスタチンMレセプターβ抗体(R&D社;カタログ番号AF662)、または抗マウスオンコスタチンMレセプターβ/Fc キメラ抗体(R&D社;カタログ番号662−OR−100)を、本発明のオンコスタチンMアンタゴニストとして使用することができる。また、以下に記載する種々の周知の手法を用いて、本発明のオンコスタチンMアンタゴニストとして使用可能な抗体を調製することができる。
抗体の産生については、ヤギ、ヒツジ、ウシ、モルモット、ウサギ、ラットまたはマウスのような宿主を、抗原タンパク質または免疫原性特性を保持するその任意の部位、フラグメントまたはオリゴペプチドでの注射によって免疫化し得る。抗体誘導のための抗原ポリペプチドの選択において、生物学的活性を保持する必要はない;しかし、タンパク質フラグメントまたはオリゴペプチドは、免疫原性、および好ましくは抗原性でなければならない。免疫原性は、ポリペプチドおよびアジュバントを動物(例えば、ウサギ)に注射し、そして注射したポリペプチドに対して指向する抗体の出現をアッセイすることにより測定し得る(例えば、HarlowおよびLane,ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, COLD SPRING HARBOR LABORATORY, New York (1988)参照。すべての目的のために本明細書中に全部が参考として援用される)。特異的抗体を誘導するために使用されるペプチドは、典型的には、少なくとも5個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも10個のアミノ酸から成るアミノ酸配列を有する。通常、それらは、天然のタンパク質のアミノ酸配列の全てまたは隣接部分を模倣するか、またはそれと実質的な配列同一性を有する。抗原タンパク質アミノ酸の短い領域は、キーホールリンペットヘモシアニン、およびキメラ分子に対して産生された抗体のような別のタンパク質の領域に融合され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫学的反応を増大し得る。
抗原は、動物に適した方法によって決定された様式で免疫系に対して提示される。これらのおよび他のパラメーターは、一般に、免疫学者に周知である。典型的には、注射は肉趾、筋肉内、皮内、リンパ節周辺または腹腔内に投与する。アフィニティー精製を含む日常的な方法によって、宿主によって産生された免疫グロブリンを沈殿し、単離し、精製し得る。
本発明に従って、オンコスタチンMレセプターを発現する細胞を特異的に除去するために、細胞毒素と結合体化した抗オンコスタチンMレセプター抗体を用いることができる。あるいは、本発明に従って、オンコスタチンMレセプターを発現する細胞を特異的に除去するために、抗オンコスタチンMレセプター抗体に結合する二次抗体であって、細胞毒素と結合体化した抗体を用いることができる。そのような二次抗体は、例えば、抗オンコスタチンMレセプター抗体がラット由来の抗体である場合には、ラット抗体のFc部分を特異的に認識する抗体である。例えば、細胞毒素であるサポリンと結合体化した抗体は、市販されている(フナコシ株式会社、東京)。
A)モノクローナル抗体:
抗原タンパク質およびペプチドに対するモノクローナル抗体は、培養中の連続する細胞株による、抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いる本発明の方法に従って調製し得る。これらは、KoehlerおよびMilstein(Nature 256:495 [1975])によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosborら,1983,Immunol.Today 4:72;Coteら, 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:2026)、およびEBVハイブリドーマ技術(Coleら,MONOCLONALANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R Liss Inc., New York, NY, 77-96頁[1985])を含むがこれらに限定されない。
ある実施態様において、適切な動物を選択し、適切な免疫化プロトコルを続けて行う。非ヒトモノクローナル抗体(例えば、ネズミ、ウサギ、ウマ)の産生は周知であり、そして例えば、抗原またはそのフラグメントを含有する調製物で動物を免疫化することによって達成し得る。ある方法において、適切な時間の後、動物の脾臓を切り出し、個々の脾臓細胞を、典型的には、適切な選択条件下で不死化骨髄腫細胞に融合する。その後、細胞をクローンに分離し、各クローン(例えば、ハイブリドーマ)の上清を、抗原の所望の領域に対して特異的な適切な抗体の産生につき試験する。抗体を産生する技術は当該分野で周知である。例えば、Godingら,MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND PRACTICE (第2版)Acad. Press, N.Y.およびHarlowおよびLane(前出)を参照のこと(そのそれぞれにつき、その全部は全ての目的で本明細書に援用される)。他の適切な技術は、抗原性ポリペプチドに対する、あるいは、ファージまたは同様のベクターにおける抗体のライブラリーの選択に対するリンパ球のインビトロ暴露を含む。
B)ヒト抗体:
本発明の別の局面において、抗原ポリペプチドに対するヒト抗体が提供される。ヒト免疫系のエレメントを有するトランスジェニック動物を用いて(例えば、米国特許第5,569,825号および第5,545,806号参照、これらの両方は全目的のためそれらの全部が本明細書中に参考として援用される)、あるいはヒト末梢血液細胞を用いて(Casaliら,1986,Science 234:476)、既知の抗原に対するヒトモノクローナル抗体をまた作成し得る。いくつか
のヒト抗体は、競合結合実験によって、あるいは特定のマウス抗体と同一のエピトープ特異性を有するように選択される。
別の実施態様において、抗原ポリペプチドに対するヒト抗体は、Huseら, 1989, Science 246:1275(本明細書中に参考として援用される)によって概説されている一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより生産し得る。抗原ポリペプチドに結合する抗体を選択する。次いで、このような抗体(または結合フラグメント)をコードする配列をクローン化し、そして増幅する。Huseによって記載されているプロトコルは、しばしばファージティスプレイ技術とともに使用される。
C)ヒト化もしくはキメラ抗体:
本発明はまた、キメラ、ヒト様またはヒト化されて、それらの標的に対するそれらの親和性を低下させることなく、それらの潜在的抗原性を低下させた抗体を提供する。キメラ、ヒト様およびヒト化抗体の調製は当該分野で記載されている(例えば、米国特許第5,585,089号および第5,530,101号;Queenら,1989,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,86:10029;およびVerhoeyanら, 1988, Science 239:1534を参照;その全部は全目的のために本明細書中に参考として援用される。ヒト化免疫グロブリンは、実質的にヒト免疫グロブリン由来の可変フレームワーク領域(アクセプター免疫グロブリンという)および実質的に非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリン由来の相補性決定領域(ドナー免疫グロブリンという)を有する。もし存在すれば、定常領域は実質的にヒト免疫グロブリン由来である。
ヒト患者への投与のようないくつかの適用において、本発明のヒト化(ならびにヒト)抗体は、ネズミまたは他の種由来の抗体よりも優れたいくつかの利点を提供する:(1)ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワークまたは定常領域を外来性のものとして認識するはずがなく、従って、このような注射された抗体に対する抗体応答は、全体的に外来性のマウス抗体または部分的に外来性のキメラ抗体に対して、より低いはずである;(2)ヒト化抗体のエフェクター部分はヒト由来であるため、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用し得る;および(3)注射されたヒト化抗体は、天然に生じるヒト抗体と実質的に等しい半減期を有し、他の種の抗体よりも少量で、より低い頻度の用量を可能とする。前述のことから示されるように、抗体を含む薬学的組成物は疼痛を処置するために使用され得る。
D)ファージディスプレイ:
本発明はまた、ファージディスプレイ法(例えば、Dowerら, WO91/17271およびMcCaffertyら, WO92/01047;およびVaughanら,1996,Nature Biotechnology,14:309;その全部は全目的のために本明細書中に参考として援用される)によって生産された抗体を提供する。これらの方法において、ファージのライブラリーが生産される。ここで、メンバーはそれらの外表面上に異なる抗体を提示する。抗体は、通常、FvまたはFabフラグメントとし
て提示される。所望の特異性を有する抗体を表示するファージは、抗原ポリペプチドに対する親和性の豊富さによって選択される。
ファージディスプレイ法の変形において、選択されたネズミ抗体の結合特異性を有するヒト化抗体が生産され得る。この方法において、選択されたネズミ抗体の重鎖または軽鎖可変領域のいずれかを出発物質として用いる。もし、例えば、軽鎖可変領域が出発物質として選択される場合、メンバーが同一の軽鎖可変領域(すなわち、ネズミ出発物質)および異なる重鎖可変領域を示すファージライブラリーが構築される。重鎖可変領域は、再編成されたヒト重鎖可変領域のライブラリーから得られる。抗原ポリペプチドに対する強力な特異的結合を示すファージ(例えば、少なくとも108-1および好ましくは少なくとも109-1)が選択される。次いで、このファージ由来のヒト重鎖可変領域は、さらなるファージライブラリーを構築するための出発物質として働く。このライブラリーにおいて、各ファージは同一の重鎖可変領域(すなわち、最初のディスプレイライブラリーから同定された領域)、および異なる軽鎖可変領域を表示する。軽鎖可変領域は、再編成されたヒト可変軽鎖領域のライブラリーから得られる。再度、強力な特異的結合を示すファージが選択される。これらのファージは完全な抗体の可変領域を表示する。これらの抗体は、通常、ネズミ出発物質と同一または同様のエピトープ特異性を有する。
E)ハイブリッド抗体:
本発明はまた、抗原ポリペプチドに対する抗体の特異性を共有するが、第2の部位にも特異的に結合し得るハイブリッド抗体を提供する。このようなハイブリッド抗体において、一方の重鎖および軽鎖対は、通常、第1の抗原に反応性の抗体由来であり、他の対は第2の抗原に反応性の抗体由来である。この結果、多機能価の特性、すなわち、少なくとも2つの異なるエピトープに同時に結合する能力が得られる。このようなハイブリッドは、各成分抗体を生産するハイブリドーマの融合によって、あるいは組換え技術によって形成され得る。このようなハイブリッドは化合物(すなわち、薬物)をオンコスタチンMまたはオンコスタチンMレセプターを発現する細胞に運搬するために使用され得る(すなわち、細胞傷害薬剤が特異的に送達される)。
本発明の免疫グロブリンをまた、他の遺伝子由来の機能的領域(例えば、酵素)に融合させて、有用な特性を有する融合タンパク質(例えば、イムノトキシン)を生産し得る。
F)一般:
本発明の抗体は任意のイディオタイプ、例えば、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEであり得、IgG、IgAおよびIgMがしばしば好ましい。ヒト化抗体は1より多いクラスまたはイソタイプ由来の配列を含み得る。
本発明の別の実施態様において、上述のインタクトな抗体のフラグメントが提供される。典型的には、これらのフラグメントは、それらが由来するインタクトな抗体と抗原ポリペプチドへの特異的結合について競合し得、少なくとも106、107、108、109-1、または1010-1の親和性で結合し得る。抗体フラグメントは別々の重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、(ab’)2、Fabc、およびFvを含む。フラグメントは、インタクトな免疫グロブリンの酵素的
または化学的分離によって生じ得る。例えば、F(ab’)2フラグメントは、HarlowおよびLane(前出)に記載されたような標準的な方法を用い、pH3.0〜3.5においてペプシンでタンパク消化することによってIgG分子から得ることができる。Fabフラグメントは、限定的還元によってF(ab’)2フラグメントから、あるいは還元剤の存在下でのパパインでの消化によって全抗体から得ることができる(一般には、Paul,W.編,FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY第2版 Raven Press, N.Y., 1989, 第7章を参照,その全部はすべての目的のために参考として援用される)。フラグメントはまた、組換えDNA技術によって産生され得る。選択されたフラグメントをコードする核酸のセグメントは、制限酵素での全長コード配列の消化によって、あるいはデノボ合成によって産生される。フラグメントはしばしば、ファージ外皮融合タンパク質の形態で発現される。
上述の免疫グロブリンの多くは、結合特異性あるいはエフェクター機能の損失、または結合親和性の過剰な低下(すなわち、約106-1未満または約107-1未満)の欠失なしに、可変および定常領域双方において、重要でないアミノ酸置換、付加または欠失を受けることができる。通常、このような改変を取り入んだ免疫グロブリンは、それらが由来する参照免疫グロブリンに対して実質的な配列同一性を示す。それが由来する参照免疫グロブリンと比較して同一の特異性および増加した親和性を有する、変異免疫グロブリンを選択し得る。ファージディスプレイ技術はこのような免疫グロブリンを選択するための有用な技術を供する。例えば、Dowerら,WO91/17271McCattertyら, WO 92/01047;およびHuse, WO 92/06204を参照のこと。
本発明の抗体は、修飾を施しても施さなくても使用し得る。しばしば、抗体は、検出可能な標識に共有結合的または非共有結合的のいずれかで結合することによって標識される。
本発明の抗体は、周知の方法を用いて精製し得る。本発明の全抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン形態は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動等を含む当該分野の標準的な手順に従って、本発明の方法および試薬を用いて精製し得る(一般には、Scopes,PROTEIN PURIFICATION; PRINCIPLES ANDPRACTICE 第3版,(Springer-Verlag, N.Y., 1993)を参照)。少なくとも約90〜95%、または98〜99%さえの、またはそれを以上の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましい。
本発明のポリペプチドを製造する方法としては、例えば、そのポリペプチドを産生する初代培養細胞または株化細胞を培養し、培養上清などから単離または精製することによりそのポリペプチドを得る方法が挙げられる。あるいは、遺伝子操作手法を利用して、そのポリペプチドをコードする遺伝子を適切な発現ベクターに組み込み、これを用いて発現宿主を形質転換し、この形質転換細胞の培養上清または細胞抽出物から組換えポリペプチドを得ることができる。上記宿主細胞は、生理活性を保持するポリペプチドを発現するものであれば、特に限定されず、従来から遺伝子操作において利用される各種の宿主細胞(例えば、大腸菌、酵母、動物細胞など)を用いることが可能である。このようにして得られた細胞に由来するポリペプチドは、天然型のポリペプチドと実質的に同一の作用を有する限り、アミノ酸配列中の1以上のアミノ酸が置換、付加および/または欠失していてもよく、糖鎖が置換、付加および/または欠失していてもよい。
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol. 157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
本明細書において、用語「変異体」と「改変体」とは互換可能に使用され得る。変異体または改変体とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、本発明のオルソログもまた、本発明において有用であり得る。
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本明細書において使用される用語「ペプチドアナログ」とは、ペプチドとは異なる化合物であるが、ペプチドと少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、ペプチドアナログには、もとのペプチドに対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。ペプチドアナログは、その機能が、もとのペプチドの機能(例えば、pKa値が類似していること、官能基が類似していること、他の分子との結合様式が類似していること、水溶性が類似していることなど)と実質的に同様であるように、このような付加または置換がされている。そのようなペプチドアナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、ペプチドアナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。
本明細書において使用されるポリペプチドの核酸形態は、そのポリペプチドのタンパク質形態を発現し得る核酸分子をいう。上述のようにその核酸の配列の一部が欠失または他の塩基により置換されていてもよく、あるいは他の核酸配列が一部挿入されていてもよい。あるいは、5’末端および/または3’末端に他の核酸が結合していてもよい。また、ポリペプチドをコードする遺伝子をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、そのポリペプチドと実質的に同一の機能を有するポリペプチドをコードする核酸分子でもよい。このような遺伝子は、当該分野において公知であり、本発明において利用することができる。
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
本明細書において使用される場合、「アゴニスト」とは、ある生体作用物質(リガンド)のレセプターに結合し、その物質のもつ作用と同じ(あるいは類似の)作用を現わす因子をいう。
本明細書において使用される場合、「レセプター」とは、1個以上のリガンドと可逆的、かつ特異的に複合体化する1個以上の結合ドメインを備える生物学的な構造であって、ここで、この複合体化は生物学的な構造を有する。
本発明において使用される場合、「オンコスタチンMレセプター」とは、オンコスタチンMと可逆的かつ特異的に結合するポリペプチドであって、特に言及しない限り、配列番号10の核酸配列によってコードされるマウスタンパク質、配列番号12の核酸配列によってコードされるヒトタンパク質、配列番号14の核酸配列によってコードされるラットタンパク質、ならびにそのタンパク質のホモログ、およびオルソログ、ならびにこれらタンパク質、ホモログ、およびオルソログの、改変体、および対立遺伝子変異体の全てを言う。
本明細書において使用される用語「リガンド」とは、特異的なレセプターに対する結合パートナーである。リガンドは、レセプターに対する内因性のリガンドであるか、またはその代わりに、薬剤、薬剤候補、もしくは薬理学的手段のようなレセプターに対する合成リガンドであり得る。
本明細書において使用される場合、「オンコスタチンMレセプター」とは、オンコスタチンMに特異的に結合するレセプターをいう。代表的なオンコスタチンMレセプターは、gp130分子とオンコスタチンMレセプターβ鎖(OSMRβ)とのヘテロ二量体である。
一般に痛覚は、身体部分に傷害・炎症などの強い侵害があるとにき生じる感覚である。しかし、痛覚を引き起こすためには、必ずしも傷害・炎症は必須ではなく、傷害も炎症もない場合であっても、同様の感覚を生じることがある。従って、本明細書において使用される場合、用語「疼痛」は、傷害・炎症などの強い侵害によって生じる痛覚、ならびにそれらの強い侵害によって生じる痛覚と同様の感覚ではあるが、傷害・炎症などの強い侵害を伴わずに生じる痛覚をいう。疼痛は、急性痛、炎症性疼痛、および神経因性疼痛に大別される。
本明細書において使用される場合、「神経因性疼痛」とは、急性の外的な刺激(例えば、熱刺激、化学的刺激、または機械的刺激)によることなく、また生体内の炎症も伴わない疼痛であり、例えば、神経細胞の異常、欠陥などによって生じる疼痛である。
本明細書において使用される場合、予防または処置上「有効な量」とは、予防、または処置(もしくは治療)において、医療上有効であると認められる程度の量をいう。このような量は、当該分野において周知の技法を用いて当業者が種々のパラメータを参酌しながら決定することができる。
本明細書において使用される場合、「鎮痛薬」とは、疼痛を処置して痛覚を低減するための薬剤をいう。本発明の薬学的組成物は、鎮痛薬として作用する。
本明細書において使用される場合、「遺伝子治療」とは、外来遺伝子を生体内に導入することによって行われる治療をいう。
本明細書で使用される場合、「遺伝子導入」とは、生体内またはインビトロにおいて、標的細胞内に、天然、合成または組換えの所望の遺伝子または遺伝子断片を、導入された遺伝子がその機能を維持するように、導入することをいう。本発明において導入される遺伝子または遺伝子断片は、特定の配列を有するDNA、RNAまたはこれらの合成アナログである核酸を包含する。また、本明細書において使用される場合、遺伝子導入、トランスフェクション、およびトランスフェクトは、互換可能に使用される。
本明細書で使用される場合、「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」は互換可能に使用される。「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。「遺伝子導入ベクター」および「遺伝子ベクター」としては、ウイルス由来のベクターが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なウイルス由来のベクターとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルス。
本明細書で使用される場合、「外来遺伝子」とは、遺伝子導入ベクター内に含まれ、遺伝子導入ベクターによって遺伝子が導入される宿主細胞以外の起源の核酸をいう。本発明の1つの局面において、この外来遺伝子は、遺伝子導入ベクターによって導入された遺伝子が発現するために適切な調節配列(例えば、転写に必要なプロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびポリA付加シグナル、ならびに翻訳に必要なリボゾーム結合部位、開始コドン、終止コドンなど)と作動可能に連結される。本発明の別の局面において、外来遺伝子は、この外来遺伝子の発現のための調節配列を含まない。本発明のさらなる局面において、外来遺伝子は、オリゴヌクレオチドまたはデコイ核酸である。
遺伝子導入ベクター内に含まれる外来遺伝子は、代表的にはDNAまたはRNAの核酸分子であるが、導入される核酸分子は、核酸アナログ分子を含んでもよい。遺伝子導入ベクター内に含まれる分子種は、単一の遺伝子分子種であっても、複数の異なる遺伝子分子種であってもよい。
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。
本明細書において、核酸分子の「断片(フラグメント)」とは、参照核酸分子の全長よりも短く、本発明の薬学的組成物の製造に充分な長さを有するポリヌクレオチドをいう。したがって、本明細書におけるフラグメントは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。
本明細書において使用される場合、「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において「生物学的活性」は、「機能的性質」と互換可能に用いられる。本明細書において、「生物学的活性」および「機能的性質」とは、ある因子(例えば、核酸)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子が増殖因子をコードする遺伝子である場合、その機能的性質は、その増殖因子を宿主細胞内で発現させ、好ましくは、その発現によって細胞の増殖を促進することを包含する。例えば、ある因子が酵素をコードする遺伝子である場合、その機能的性質は、その酵素活性を宿主細胞内で発現させ、好ましくは、その酵素活性が検出可能になることを包含する。別の例では、ある因子がリガンドをコードする遺伝子である場合、そのリガンドが対応するレセプターへ結合するリガンドの発現させ、好ましくは、そのリガンドの発現によって、そのリガンドに対応するレセプターを有する細胞を変化させることを包含する。
本明細書において使用される場合、遺伝子の「制御領域」とは、遺伝子の発現を制御する領域をいう。代表的な制御領域としては、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびポリA付加シグナル、ならびに翻訳に必要なリボゾーム結合部位、開始コドン、終止コドンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において使用される場合、遺伝子の「プロモーター」とは、そのプロモーターと作動可能に連結された遺伝子の転写を開始し得る核酸配列をいう。本発明において、細胞障害遺伝子と連結するプロモーターとして好ましいプロモーターは、ヒトオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子プロモーター配列(配列番号1)、マウスオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子プロモーター配列(配列番号2)、ラットオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子プロモーター配列(配列番号3)、またはこれらプロモーター配列のフラグメントであって、作動可能に連結された遺伝子をオンコスタチンMレセプターβ鎖同様の組織特異的様式において発現するフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において使用される場合、「細胞障害遺伝子」とは、宿主哺乳動物細胞内において発現した場合に、その宿主哺乳動物細胞を示すさせる遺伝子をいう。細胞障害遺伝子としては、例えば、以下の種々の遺伝子が周知である:ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼ。なお、ヘルペスチミジンキナーゼは、カンシクロビル存在下で、細胞障害遺伝子として作用する。
本明細書において使用される場合、「キット」とは、複数の容器、および製造業者の指示書を含み、そして各々の容器が、本発明の薬学的組成物、その他の薬剤、およびキャリアを含む製品をいう。
本明細書において使用される場合、「被検体」とは、本発明の薬学的組成物が投与される対象であり、ヒト、マウス、ウシ、ニワトリなどの動物が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において「薬学的に受容可能なキャリア」は、医薬または動物薬のような農薬を製造するときに使用される物質であり、有効成分に有害な影響を与えないものをいう。そのような薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、以下が挙げられるがそれらに限定されない:抗酸化剤、保存剤、着色料、風味料、および希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝剤、送達ビヒクル、賦形剤および/または薬学的アジュバント。
本明細書において「細胞毒素」とは、細胞に適用した場合に、細胞の増殖を阻害、抑制、および/または遅延するか、ならびに/あるいは細胞を死滅させる因子をいう。種々の毒素が公知であり、例えば、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の処置方法において使用される薬剤の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被検体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被検体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1週間−1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。
必要に応じて、本発明の治療では、2種類以上の薬剤が使用され得る。2種類以上の薬剤を使用する場合、類似の性質または由来の物質を使用してもよく、異なる性質または由来の薬剤を使用してもよい。このような2種類以上の薬剤を投与する方法のための疾患レベルに関する情報も、本発明の方法によって入手することができる。
(レトロウイルスベクターの調製および使用)
レトロウイルスは、外来の遺伝子挿入のためのベクターとして用いられている。そして、この使用の一般的なパラメーターは、現在全くよく理解されている:レトロウイルスは、タンパク外被の内部に閉じ込められた一本鎖RNAゲノムから成る。5’末端から3’末端に読むそのゲノム自体は、以下を含む。これらは、キャップ、5’翻訳領域、「ψ」と命名されたRNA区分すなわちパッケージ部位(このRNA区分は、タンパク中に包装され得るRNAに必要である)、そしていくつかのタンパク−−そのレトロウイルスの核タンパク(gag)のためのコード配列:DNAの翻訳(pol)からなる中間段階を促進する逆転写酵素および頭殻タンパク(env)のウイルス性外被、およびいくつかの3’非翻訳配列によって行われる全ての領域である。3つのウイルスタンパクは、ウイルスゲノムの感染に必要である。このパッケージング部位は、添加した感染性ウイルスを生産するのに必要である。
レトロウイルスは、そのタンパクをコードするRNA領域の2重鎖cDNAコピーを含む「プロウイルス」段階を経験する。しかしながら、この段階では、その転写されない3’領域および5’領域は、このタンパクをコードするcDNAのいずれかの末端にて、長い末端繰り返し配列(LTR)を含むべく修飾される。この長い末端繰り返し配列は、DNAの転写を生じる適当なプロモーター配列およびエンハンサー配列だけでなく、このコード部分に関して、作動可能な位置にて転写を終了させる配列を供給する。
普通の感染では、プロウイルスの2重鎖cDNAは、宿主細胞のゲノムの中に吸収され得る。そして、これらの効果から、RNAゲノムを含む追加のウイルス粒子の生産物は、そのタンパクカプセルにパッケージされた。行われるこの手順では、このプロウイルス中にψパッケージ部位が存在することは、重大である。
レトロウイルスのタンパクをコードする配列は、その修飾されたウイルスが宿主細胞に感染するとき、そのウイルスの発現系を使用するように、所望のタンパクに対する配列と置き換えられることが、他にもあった。例えば、米国特許4,405,712号およびLang(前述)を参照のこと。しかしながら,これを達成するには,この修飾されたウイルスゲノムは,頭殻タンパクを合成し得、かつ外来DNAのRNA転写をパッケージし得るヘルパーウイルスを必要とする。
それゆえ、遺伝子治療のためには、プロウイルスDNA形は、適当なベクターの中に挿入され、複写され、そしてヘルパーウイルスの援助をうけてウイルス外被にパッケージされる。一般的な総説としては、Anderson,W.F.Science(1984)226:401−409:Coffin,J.,「Genome Structure」、in RNA Tumor Viruses, Vol2,Weiss et al,eds,2d ed,(1985),Cold Spring Harbor,NYを参照のこと。
遺伝子治療の研究に対して最も一般的に用いられるレトロウイルスは、ネズミ科の肉腫ウイルス(MSV)またはモロニーネズミ科の白血病ウイルス(MoMLV)である(Mann.R.ら,Cell(1983)33:153 −159)。これらのレトロウイルスのプロウイルス形は、単離され、そして増幅のためにほぼ標準的な細胞のクローニングベクターに挿入される。パッケージ部位に沿ったプロウイルスの挿入(これは、コントロール配列を含む長い末端繰り返し配列に隣接するgag、polおよびenvをコードしているmRNAを含む)は、このタンパクをコードするRNAを含む領域を所望の外来遺伝子に置き換えるように扱われる。このDNAが、完全なウイルス、またはパッケージ部位のみが欠けている欠損ウイルスで感染された宿主細胞にトランスフェクトされるなら、修飾されたプロウイルスから合成されるRNAは、そのとき、他の細胞に再感染するためのウイルス粒子にパッケージされる。このことにより、感染によって、所望の活性成分または薬剤をコードするDNAを細胞に導入するための作用機構が供給される。
これに着手するのに2つの方法がある。一つの方法では、修飾されたプロウイルスDNAは、その細胞中に共存する修飾されていないウイルスからの感染に耐える細胞にトランスフェクトされる。正常なウイルスベクターは、パッケージする材料を合成し、そして、修飾されたプロウイルスによって生成するmRNAのいくつかは、正常なビリオンに類似の方法で、パッケージされる。次いで、これはタンパクの生産のために、標的細胞に感染させるべく用いられ得る。しかしながら、これらの集められたウイルス外被に加えて、再パッケージされた正常ウイルスもある数で存在するだろう。このウイルスは、「供給物運搬用」ウイルスから分離されないなら、ビリオン生産過程の生成物に感染された宿主細胞にて、さらにウイルス感染を簡単に引き起こすだろう。
もっと有用な方法では、所望の遺伝子を含むプロウイルスのクローニングベクターは、欠損ウイルス外被を生産するように、遺伝コード的に修飾された細胞をトランスフェクトするのに用いられる(この欠損ウイルス外被は、実際には、空の供給運搬物である)。これらの細胞は、ψパッケージ部位を欠いている変異体レトロウイルスのプロウイルス型の統合によって得られる。そして、いくつかのこのような細胞系列は、それらを求める全ての技術に利用できる。ψ−1またはψ−2と命名されたこれら2つの系列は、Mann.Rら、Cell(1983)33:159−159に、広範囲に記述されている。これは、MoMLVプロウイルス挿入物を含むプラスミドを用いて、宿主NIH−3T3繊維芽細胞をトランスフェクトすることにより作られる。この挿入物からは、ψパッケージ部位が削除されている。このψ−2細胞は、一世代の中で固有のウイルスのウイルス外被に相当する細胞あたり、いくらかの空のウイルス外被を明らかに生産する。これらの細胞が、外来遺伝子位とパッケージ部位(ψ)の両方を含んでいるプロウイルスのDNAでトランスフェクトされるとき、それらは、修飾されたウイルスを産むように、外来遺伝子を含むプロウイルスDNAからこれらの空の外被に、mRNAの転写物をパッケージする。この修飾されたウイルスは、普通はMoMLVに対する宿主である(この場合ではネジミ科の動物の)細胞を感染させる、しかしながら、この組み換え体(修飾されたウイルス)は、それが「感染させる」細胞中にさらに修飾されたビリオン(または他の)ビリオンの産生の引き起こし得ない点で欠損があることは注目されるべきである。この組み換え体は、「感染された」細胞において、この遺伝子がコードするタンパクの産生を引き起こし得る。しかし、その感染は、追加のビリオンが全く生産されないので、付加的な細胞を広げることができない。
人間に対する薬剤の調製のために、ψ2よりも有用であるのは、ψ−AM系列である。この系列は、Cone,R.D.,ら,Proc Natl Acad Sci USA(1984)81:6349−6353から得られる。これらの系列は、NIH−3T3細胞をトランスフェクトすることによっても得られる。しかし、pMAV−ψ−と命名されるベクターを用いねばならない。このベクターも、ψパッケージング部位を欠く欠損プロウイルスの挿入物を含む。しかし、pMAV−ψ−は、MoMLVのgag−pol配列をコードするハイブリッドであり、そして外被配列は、両性のウイルス4070Aに由来する。これらの細胞系列によって生産された空の頭殻は、偽ウイルスを生産するような共トランスフェクトされ修飾されたプロウイルスDNAのRNA転写物をパッケージする。この偽ウイルスは、人間、野ネズミおよびハツカネズミの細胞を認識し感染させる。
(界面活性剤を用いる不活性化HVJエンベロープベクターの調製および使用)
ウイルスベクターの一例として、HVJエンベロープベクターの調製方法が公知である(特開2001−286282)以下にその概略を示す。
(1:HVJの増殖)
HVJは鶏の受精卵への種ウイルスの接種により増殖されたものが一般に使用され得るが、サル、ヒトなどの培養細胞、培養組織へのウイルスの持続感染系(トリプシンなどの加水分解酵素を培養液中に添加)を利用して増殖させたもの、クローニングされたウイルスゲノムを培養細胞に感染させ持続感染をおこさせて増殖させたもの、全てが利用可能である。
HVJの増殖は、以下のように行う。
HVJの種ウイルスを、SPF(Specific pathogen free)の受精卵を使って増殖させ分離・精製したHVJ(Z種)を細胞保存用チューブに分注し、10% DMSOを加えて液体窒素中に保存し、調製する。
受精直後のニワトリ卵を入荷し、インキュベーター(SHOWA−FURANKI P−03型;約300鶏卵収容)にいれ、36.5℃,湿度40%以上の条件で10〜14日飼育する。暗室中で、検卵器(電球の光が口径約1.5cmの窓を通して出るようになっているもの)を用いて、胚の生存及び気室と漿尿膜を確認し、漿尿膜の約5mm上方に鉛筆でウイルス注入箇所の記しをつける(太い血管を除いた場所を選定する)。ポリペプトン溶液(1%ポリペプトン、0.2% NaClを混合し、1M NaOHでpH7.2に調整してオートクレーブ滅菌し、4℃保存したもの)で種ウイルス(液体窒素からとりだしたもの)を500倍に希釈し、4℃においた。卵をイソジン及びアルコールで消毒し、ウイルス注入箇所に千枚通しで小孔をあけ、希釈した種ウイルス0.lmlを26ゲージの針付き1mlシリンジを用いて、漿尿腔内に入るように注入する。溶かしたパラフィン(融点50〜52℃)をパスツールピペットを用いて孔の上に置きこれをふさぐ。卵をインキュベーターにいれ、36.5℃、湿度40%以上の条件で3日飼育した。次に、接種卵を一晩4℃におく。翌日、卵の気室部分をピンセットで割り、18ゲージの針を付けた10mlシリンジを漿尿膜の中にいれて、漿尿液を吸引し、滅菌ボトルに集め、4℃に保存する。
(2:HVJの精製)
HVJは、遠心分離による精製方法、カラムによる精製方法、または当該分野において公知のその他の精製方法によって、精製され得る。
(2.1:遠心分離による精製方法)
手短には、増殖させたウイルス液を回収し低速遠心で培養液や漿尿液中の組織・細胞片を除去した。その上清を高速遠心(27,500×g,30分間)とショ糖密度勾配(30〜60%w/v)を利用した超遠心(62,800×g,90分間)により精製する。精製の間にウイルスをできるだけ穏和に扱い、4℃で保存することに注意すべきである。
以下の方法によってHVJを精製する。
HVJ含有漿尿液(HVJ含有のニワトリ卵の漿尿液を集め4℃にて保存)の約100m1を広ロの駒込ピペットで50mlの遠心チューブ2本に入れ(Saeki,Y.,およびKaneda,Y:Protein modified liposomes(HVJ−1iposomes)for the delivery of genes,oligonucleotides and proteins. Cell Biology;A laboratory handbook(第2版)J.E.Celis編(Acadcmic Press Inc.,SanDiego)第4巻、127〜135,1998を参照のこと)、低速遠心機で3000rpm,10分、4℃で遠心し(ブレーキはオフ)、卵の組織片を除去する。
遠心後、上清を35ml遠心チューブ4本(高速遠心用)に分注し、アングルローターで27,000g,30分遠心する(アクセル、ブレーキはオン)。上清を除き、沈殿にBSS(10mM Tris−HCl(pH7.5)、137mM NaC1、5.4mM KC1;オートクレーブし、4℃保存)(BSSのかわりにPBSでも可能)をチューブ当たり約5ml加え、そのまま4℃で一晩静置した。広ロの駒込ピペットでゆるやかにピペッテイングして沈殿をほぐし1本のチューブに集め、同様にアングルローターで27,000g、30分遠心する。上清をのぞき沈殿にBSS約10mlを加え、同様に4℃で一晩静置した。広ロの駒込ピペットでゆるやかにピペッテイングして沈殿をほぐし、低速遠心機で3000rpm,10分、4℃で遠心し(ブレーキはオフ)、除ききれなかった組織片やウイルスの凝集塊をのぞく。上清を新しい滅菌済みチューブに入れ精製ウイルスとして4℃で保存する。
このウイルス液0.lmlにBSSを0.9ml加え、分光光度計で540nmの吸収を測定し、ウイルス力価を赤血球凝集活性(HAU)に換算する。540nmの吸収値1がほぼ15,000HAUに相当した。HAUは融合活性とほぼ比例すると考えられる。また実際にニワトリ赤血球液(0.5%)を用いて、赤血球凝集活性を測定してもよい(動物細胞利用実用化マニュアル、REALIZE INC.(内田、大石、古沢編集)P259〜268、1984を参照のこと)。
さらにショ糖密度勾配を用いたHVJの精製も必要に応じて行い得る。具体的には、ウイルス懸濁液を60%、30%のショ糖溶液(オートクレーブ滅菌)を重層した遠心チューブにのせ、62,800×gで120分間密度勾配遠心を行う。遠心後、60%ショ糖溶液層上にみられるバンドを回収する。回収したウイルス懸濁液をBSSもしくはPBSを外液として4℃で透析を一晩行い、ショ糖を除去する。すぐに使用しない場合は、ウイルス懸濁液にグリセロール(オートクレーブ滅菌)と0.5M EDTA液(オートクレーブ滅菌)をそれぞれ最終濃度が10%と2〜10mMになるように加えて−80℃で穏やかに凍結し、最終的に液体窒素中で保存する(凍結保存はグリセロ一ルと0.5M EDTA液の代わりに10mM DMSOでも可能)。
(2.2:カラムおよび限外濾過による精製方法)
遠心分離による精製方法に代えて、カラムによるHVJの精製も本発明に適用可能である。
手短には、分子量カットオフが50,000のフィルターによる限外濾過による濃縮(約10倍)とイオン交換クロマトグラフィー(0.3M〜lM NaCl)による溶出を用いて精製する。
具体的には、本実施例において、以下の方法を使用して、HVJをカラムによって精製する。
漿尿液を採集した後、80μm〜10μmのメンブランフィルターにてろ過した。0.006〜0.008% β−プロピオラクトン(BPL)(最終濃度)を漿尿液に加え(4℃、1時間)、HVJを不活性化する。漿尿液を37℃、2時間インキュベートすることによって、BPLを不活性化する。
500KMWCO(A/G Technology、Needham、Massachusetts)を用いたタンジェンシャルフロー限外ろ過法により約10倍濃縮する。緩衝液として、50mM NaCl、1mM MgCl、2%マンニトール、20mM Tris(pH 7.5)を用いる。HAUアッセイにより、ほぼ100%のHVJ回収率であり優れた結果がえられる。
QSepharoseFF(アマシャムファルマシアバイオテクKK、Tokyo)によるカラムクロマトグラフィー法(緩衝液:20mM TrisHCl(pH7.5)、0.2〜1M NaCl)でHVJを精製する。一般に、回収率は40〜50%であり、純度は99%以上である。
500KMWCO(A/G Technology)を用いたタンジェンシャルフロー限外ろ過法によりHVJの画分を濃縮する。
(3:HVJの不活性化)
HVJの不活性化が必要な場合、以下に記載するように、紫外線照射またはアルキル化剤処理により行う。
(3.1:紫外線照射法)
HVJ懸濁液1mlを30mm径のシャーレにとり、99または198ミリジュール/cmを照射した。ガンマー線照射も利用可能である(5〜20グレイ)が完全な不活性化がおこらない。
(3.2:アルキル化剤による処理)
使用直前に、10mM KHPO中に0.01% β−プロピオラクトンの調製をした。作業中は低温下に保ち素早く作業を行う。
精製直後のHVJの懸濁液に最終0.01%になるようにβ−プロピオラクトンを添加し、氷上で60分間でインキュベートした。その後2時間、37℃でインキュベートする。エッペンドルフチューブにチューブあたり10,000HAU分ずつ分注し、15,000rpm,15分遠心し、沈殿を−20℃で保存する。上記の不活性化法によらず、沈殿を−20℃で保存せず、そのまま界面活性剤処理によりDNAを取り込ませ、ベクターを作成することも可能である。
(4:HVJエンベロープベクターの作成)
保存してあったHVJに外来DNA200〜800μgを含む溶液92μlを加えてピペッティングでよく懸濁する。この溶液は、−20℃で、少なくとも、3ヶ月保存可能である。HVJとの混合前にDNAに硫酸プロタミンを添加すると、発現効率が2倍以上増強する。
この混合液を氷上に1分間置き、オクチルグルコシド(10%)を8μl加えて15秒氷上でチューブを振盪し、45秒氷上に静置した。界面活性剤での処理時間は、1〜5分間が好ましい。オクチルグルコシド以外に、Triton−X100(t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸)、NP−40(ノニルフェノキシポリエトキシエタノール)などの界面活性剤も使用し得る。Triton−X100、NP−40およびCHAPSの好ましい最終濃度は、それぞれ、0.24〜0.80%、0.04〜0.12%および1.2〜2.0%である。
冷BSSを1ml添加し、すぐに15,000rpmで15分遠心した。生じた沈殿にPBSまたは生理食塩水などを300μl加えて、ボルテックス、ピペッティングで懸濁する。懸濁液は直接遺伝子導入に使用することも、−20℃で保存後に遺伝子導入に使用することも可能である。このHVJエンベロープベクターは、少なくとも2ヶ月間の保存後、同程度の遺伝子導入効率を維持し得る。
(遺伝子治療)
遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspielら,Clinical Pharmacy 12:488−505(1993);WuおよびWu,Biotherapy 3:87−95(1991);Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573−596(1993);Mulligan,Science 260:926−932(1993);ならびにMorganおよびAnderson,Ann.Rev.Biochem.62:191−217(1993);May,TIBTECH 11(5):155−215(1993)を参照のこと。遺伝子治療において使用される一般的に公知の組換えDNA技術は、Ausubelら(編),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);およびKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)に記載される。
遺伝子治療に使用される核酸構築物は、周知の遺伝子導入ベクターを用いて局所的にまたは全身的にのいずれかで投与され得る。そのような核酸構築物がタンパク質のコード配列を包含する場合、そのタンパク質の発現は、内因性の哺乳類のプロモーターまたは異種のプロモーターの使用により誘導され得る。コード配列の発現は、構成的であり得るか、または調節され得る。
種々の周知の遺伝子導入ベクターを遺伝子治療のための組成物として使用する場合、ベクターの投与は、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)または生理食塩水などに懸濁したベクター懸濁液の局所(例えば、癌組織内、肝臓内、筋肉内および脳内など)への直接注入か、または血管内(例えば、動脈内、静脈内および門脈内)への投与によりなされる。
1つの実施態様において、遺伝子導入ベクターは、一般には、この遺伝子導入ベクターを単位用量注入可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で、薬学的に受容可能なキャリア(すなわち、使用された投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、そして処方物の他の成分と適合性であるもの)とを混合することによって処方され得る。例えば、処方物は、好ましくは、酸化剤および遺伝子導入ベクターにとって有害であることが公知である他の化合物を含まない。
キャリアは、等張性および化学的安定性を増強する物質のような微量の添加物を適宜含む。このような物質は、使用された投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、そしてリン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖、二糖および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);対イオン(例えば、ナトリウム);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポロキサマー)、またはPEGを含み得る。
遺伝子導入ベクターを含む薬学的組成物は、代表的には、単位または多用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルにおいて、水溶液として貯蔵され得る。
遺伝子導入ベクターを含む薬学的組成物は医療実施基準(good medical practice)に一致した様式で、個々の患者の臨床状態(例えば、予防または処置されるべき状態)、遺伝子導入ベクターを含む組成物の送達部位、標的組織、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮しつつ処方され、そして投与される。
例えば、マウスにHVJ(センダイウイルス)遺伝子ベクターを投与する場合、マウス一匹あたり、20〜20,000HAU相当の、好ましくは60〜6,000HAU相当の、より好ましくは200〜2,000HAU相当の遺伝子ベクターが投与される。投与される遺伝子ベクター中に含有される外来遺伝子の量は、マウス一匹あたり、0.1〜100μg、好ましくは0.3〜30μg、より好ましくは1〜10μgである。
また、ヒトににHVJ(センダイウイルス)遺伝子ベクターを投与する場合、被験体あたり、400〜400,000HAU相当の、好ましくは1,200〜120,000HAU相当の、より好ましくは4,000〜40,000HAU相当の遺伝子ベクターが投与される。投与される遺伝子ベクター中に含有される外来遺伝子の量は、被験体あたり、2〜2,000μg、好ましくは6〜600μg、より好ましくは20〜200μgである。
(一般的手法)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、糖鎖科学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.,et al. eds,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL
Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac ,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in
Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
(処方)
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与による、疾患または障害(例えば、感染症)の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤は、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
治療剤を、個々の患者の臨床状態(特に、治療剤単独処置の副作用)、送達部位、投与方法、投与計画および当業者に公知の他の因子を考慮に入れ、医療実施基準(GMP=good medical practice)を遵守する方式で処方および投薬する。従って、本明細書において目的とする「有効量」は、このような考慮を行って決定される。
一般的提案として、用量当り、非経口的に投与される治療剤の合計薬学的有効量は、患者体重の、約1μg/kg/日〜10mg/kg/日の範囲にあるが、上記のようにこれは治療的裁量に委ねられる。さらに好ましくは、本発明の細胞生理活性物質について、この用量は、少なくとも0.01mg/kg/日、最も好ましくはヒトに対して約0.01mg/kg/日と約1mg/kg/日との間である。連続投与する場合、代表的には、治療剤を約1μg/kg/時間〜約50μg/kg/時間の投薬速度で1日に1〜4回の注射かまたは連続皮下注入(例えばミニポンプを用いる)のいずれかにより投与する。静脈内用バッグ溶液もまた使用し得る。変化を観察するために必要な処置期間および応答が生じる処置後の間隔は、所望の効果に応じて変化するようである。
治療剤を、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与し得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、経口的、直腸内、非経口的、槽内(intracistemally)、膣内、腹腔内、局所的(粉剤、軟膏、ゲル、点滴剤、または経皮パッチによるなど)、口内あるいは経口または鼻腔スプレーとして投与され得る。「薬学的に受容可能なキャリア」とは、非毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材または任意の型の処方補助剤をいう。本明細書で用いる用語「非経口的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
本発明の治療剤はまた、徐放性システムにより適切に投与される。徐放性治療剤の適切な例は、適切なポリマー物質(例えば、成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックス)、適切な疎水性物質(例えば、許容品質油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂、および貧可溶性誘導体(例えば、貧可溶性塩)を包含する。
徐放性マトリックスとしては、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号、EP58,481)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら、Biopolymers 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langerら、J.Biomed.Mater.Res.15: 167−277(1981)、およびLanger,Chem.Tech.12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(Langerら、同書)またはポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP133,988)が挙げられる。
徐放性治療剤はまた、リポソームに包括された本発明の治療剤を包含する(一般に、Langer,Science 249:1527−1533(1990);Treatら,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(編),Liss,New York,317−327頁および353−365(1989)を参照のこと)。治療剤を含有するリポソームは、それ自体が公知である方法により調製され得る:DE3,218,121;Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688−3692(1985);Hwangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030−4034(1980);EP52,322;EP36,676;EP88,046;EP143,949;EP142,641;日本国特許出 願第83−118008号;米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号ならびにEP第102,324号。通常、リポソームは、小さな(約200〜800Å)ユニラメラ型であり、そこでは、脂質含有量は、約30モル%コレステロールよりも多く、選択された割合が、最適治療剤のために調整される。
なおさらなる実施態様において、本発明の治療剤は、ポンプにより送達される(Langer、前出;Sefton、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987);Buchwaldら、Surgery 88:507(1980);Saudekら、N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照のこと)。
他の制御放出系は、Langer(Science 249:1527−1533(1990))による総説において議論される。
非経口投与のために、1つの実施態様において、一般に、治療剤は、それを所望の程度の純度で、薬学的に受容可能なキャリア、すなわち用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、かつ処方物の他の成分と適合するものと、単位投薬量の注射可能な形態(溶液、懸濁液または乳濁液)で混合することにより処方される。例えば、この処方物は、好ましくは、酸化、および治療剤に対して有害であることが知られている他の化合物を含まない。
一般に、治療剤を液体キャリアまたは微細分割固体キャリアあるいはその両方と均一および緊密に接触させて処方物を調製する。次に、必要であれば、生成物を所望の処方物に成形する。好ましくは、キャリアは、非経口的キャリア、より好ましくはレシピエントの血液と等張である溶液である。このようなキャリアビヒクルの例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液およびデキストロース溶液が挙げられる。不揮発性油およびオレイン酸エチルのような非水性ビヒクルもまた、リポソームと同様に本明細書において有用である。
キャリアは、等張性および化学安定性を高める物質のような微量の添加剤を適切に含有する。このような物質は、用いる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性がなく、このような物質としては、リン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酢酸および他の有機酸またはその塩類のような緩衝剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基より少ない)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはアルギニンのようなアミノ酸;セルロースまたはその誘導体、ブドウ糖、マンノースまたはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような対イオン;および/またはポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEGのような非イオン性界面活性剤が挙げられる。
治療剤は、代表的には約0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1〜10mg/mlの濃度で、約3〜8のpHで、このようなビヒクル中に処方される。前記の特定の賦形剤、キャリアまたは安定化剤を使用することにより、塩が形成されることが理解される。
治療的投与に用いられるべき任意の薬剤は、有効成分としてのウイルス以外の生物・ウイルスを含まない状態、すなわち、無菌状態であり得る。滅菌濾過膜(例えば0.2ミクロンメンブレン)で濾過することにより無菌状態は容易に達成される。一般に、治療剤は、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、皮下用注射針で穿刺可能なストッパー付の静脈内用溶液バッグまたはバイアルに配置される。
治療剤は、通常、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルまたはバイアルに、水溶液または再構成するための凍結乾燥処方物として貯蔵される。凍結乾燥処方物の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した1%(w/v)治療剤水溶液5mlを充填し、そして得られる混合物を凍結乾燥する。凍結乾燥した治療剤を、注射用静菌水を用いて再構成して注入溶液を調製する。
本発明はまた、本発明の治療剤の1つ以上の成分を満たした一つ以上の容器を備える薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関が定めた形式の通知が、このような容器に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売に関する政府機関による承認を表す。さらに、治療剤を他の治療用化合物と組み合わせて使用し得る。
本発明の治療剤は、単独または他の治療剤と組合わせて投与され得る。組合わせは、例えば、混合物として同時に;同時にまたは並行してだが別々に;あるいは経時的のいずれかで投与され得る。これは、組み合わされた薬剤が、治療用混合物として共に投与されるという提示、およびまた、組み合わされた薬剤が、別々にしかし同時に、例えば、同じ個体に別々の静脈ラインを通じて投与される手順を含む。「組み合わせて」の投与は、一番目、続いて二番目に与えられる化合物または薬剤のうち1つの別々の投与をさらに含む。
特定の実施態様において、本発明の薬学的組成物は、非ステロイド性消炎鎮痛薬および/または麻薬との組み合わせで投与される。
さらなる実施態様において、本発明の治療剤は、単独または抗炎症剤と組合わせて投与される。本発明の治療剤とともに投与され得る抗炎症剤としては、グルココルチコイドおよび非ステロイド抗炎症剤、アミノアリールカルボン酸誘導体、アリール酢酸誘導体、アリール酪酸誘導体、アリールカルボン酸、アリールプロピオン酸誘導体、ピラゾール、ピラゾロン、サリチル酸誘導体、チアジンカルボキサミド、e−アセトアミドカプロン酸、S−アデノシルメチオニン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、アミキセトリン(amixetrine)、ベンダザック、ベンジドアミン、ブコローム、ジフェンピラミド、ジタゾール、エモル ファゾン、グアイアズレン、ナブメトン、ニメスリド、オルゴテイン、オキサセプロール、パラニリン、ペリゾキサル、ピフオキシム、プロキアゾン、プロキサゾール、およびテニダップが挙げられるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、本発明の治療剤は、他の治療レジメまたは予防レジメ(例えば、放射線治療)と組合わせて投与される。
以下に実施例等により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1:オンコスタチンM−/−マウスにおけるニューロンの発生および疼痛挙動)
(組織の調製)
C57BL/6J種のマウス胚(11.5日目、14.5日目、および17.5日目の胚)、雌性新生児マウス(0日齢、7日齢、および14日齢)、および雌性成体マウス(8週齢)を用いた(Nihon SLC、浜松市)。胚を帝王切開によって取り出し、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を含む氷冷した0.1Mのリン酸緩衝液(PB)に浸漬し、4℃で一晩放置した。新生児マウスおよび成体マウスを、氷冷0.85%NaClで心臓から灌流した。その後、免疫組織染色化学染色をする場合には、氷冷Zamboni固定液(2% PFA、0.1M PB中の0.2%ピクリン酸、pH7.4)で灌流し、インサイチュハイブリダイゼーションをする場合には、0.1Mリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の4%PFAを用いて灌流した。すべての灌流による固定化は、ジエチルエーテルによる深い麻酔を行ったマウスを用いて行った。DRG(L4/L5)および脊髄を迅速に取り出し、その後、4℃で3時間、後固定し、最後に0.1M PBS中の20%スクロースを用いて灌流した。組織をO.C.T.培地(Miles社、Elkhart、米国インディアナ州)に包埋し、そしてドライアイス上のn−ヘキサン内で迅速に凍結して、−80℃で保存した。
全ての動物実験は、和歌山県立医科大学の動物実験ガイドラインおよび日本国政府の動物飼育に関する通達に従い、和歌山県立医科大学動物実験委員会の管理のもとで行った。全ての実験は、使用する動物数および動物が受ける苦痛を最小限にするように行われた。
(RNAプローブの調製)
マウス由来のオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子の275bpのAsp718−XhoI cDNAフラグメント(コード領域)を、pBluescriptII SK+(−)ベクターに連結した。アンチセンスプローブを調製するために、この連結したベクターを、Asp718で切断した。センスプローブを調製するために、この連結したベクターを、XhoIで切断した。アンチセンスプローブの調製のためにはT3RNAポリメラーゼを用い、インビトロでの転写を行った。センスプローブの調製のためにはT7RNAポリメラーゼを用い、インビトロでの転写を行った。プローブ調製の際には、[α−35S]UTPを放射性標識のために用いた。
(インサイチュハイブリダイゼーション分析)
インサイチュハイブリダイゼーションを、Tamuraら、Mech Dev 115:127−131(2002);Tamuraら、Neuroscience 119(2003)991−997に記載のように行った。簡単にその実験を以下に記載する。
凍結した切片をクリオスタットを用いて6μmの厚さに切断した。センスおよびアンチセンスの35S−標識したcRNAプローブを用いて、55℃で16時間ハイブリダイゼーションした後、スライドをKodak NTB−2液体エマルジョン(Kodak、Rochester、米国ニューヨーク州)に浸漬した。浸漬したオートラジオグラムを、14日後に現像し、固定した。切片を、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて対比染色し、そして明視野顕微鏡および暗視野顕微鏡(XF−WFL、ニコン、東京)を用いて観察した。
(免疫組織化学的手法)
免疫組織化学染色を、Tamuraら、Mech Dev 115:127−131(2002);Tamuraら、Neuroscience 119(2003)991−997に記載のように行った。スライドにマウントした、DRG(L4/L5)由来の6μmのクリオスタット組織切片、およびマウス脊髄の20μm切片を、免疫組織化学的手法によって処理した。切片を、10%の健常なロバ血清を含む0.1MのPBS中で、室温(RT)にて1時間、プレインキュベーションを行い、次に、一次抗体溶液(0.5%
ウシ胎児血清アルブミン(BSA)、および0.3% Triton X−100を含む溶液)中で、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体を、以下の希釈で使用した;ヤギ抗オンコスタチンMレセプターβ鎖抗体 1:50(Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、米国カリフォルニア州);ウサギ抗VR1抗体 1:500(Oncogene、San Diego、米国カリフォルニア州);ウサギ抗CGRP抗体 1:1000(Amersham、Arlington Heights、米国イリノイ州);ウサギ抗TrkA抗体 1:100(Upstate Biotechnology、Lake Placid、米国ニューヨーク州);ウサギ抗c−Ret抗体 1:100(Tamuraら、Tamuraら、Eur.J.Neurosci 17:2287−2298(2003));モルモット抗P2X3抗体 1:1000(Neuromics、Minneapolis、米国ニューヨーク州)。翌日、切片を、0.1% Triton X−100を含む0.1M PBSで洗浄し、そしてCy2−/Cy3−結合体化二次抗体(Jackson ImmunoResearch、West Grove、米国ペンシルベニア州)(2%の正常なマウスの血清、および0.3%のTriton X−100を含む1:400倍希釈した抗体)とともに、室温で1時間インキュベートした。アビジン−ビオチン複合体法のために、一次血清とのインキュベーションの後、切片を、ビオチン化したロバ抗ヤギIgG抗体(Jackson
ImmunoResearch社;0.5% BSAおよび0.3% Triton X−100溶液中で1:400に希釈して使用)とともに、室温で1時間インキュベートした。0.1M PBSで洗浄した後、切片を7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸結合体化ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch社;0.1M PBS中)とともに室温で1時間インキュベートした。免疫蛍光イメージを、Nikon VFM顕微鏡を、蛍光アッタチメントを用いて、得た。
(定量アッセイ)
立体解析学的な細胞計数のために、4匹の灌流したマウス由来のL4/L5 DRGを、プールし、そして切片化のために処理した。DRG全体を、6μmの連続切片とし、そしてNeuroTrace(Molecular Probe、Eugene、米国オレゴン州)を1:500に希釈したものを用いて20分間、または4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールジヒドロクロリドを用いて5分間、二次抗体とのインキュベーション後に、核染色のために染色した。染色後、各切片のカラーデジタル化イメージを、カラー3CCDカメラ(C5810、浜松フォトニクス、浜松市)を備えたエピ蛍光(epifluorescent)顕微鏡(Eclipse E800、Nikon)を用いて得た。蛍光標識した細胞の数を、Adobe Photoshopソフトウェア(Adobe Systems、San Jose、米国カリフォルニア州)を用いて、観察者−ブラインド条件下で計数した。
脊髄神経節(DRG)ニューロン全体について、およびVR1標識ニューロンまたはP2X3標識ニューロン全体について、NeuroTraceを用いて偏りのない推定値を得るために、物理的解剖器具の原理を用いて、切片内のニューロンを計数した(Coggeshall、(1992)Neurosci.15:9−13)。手短には、各DRGにおいて、隣接する切片の対を比較した(参照切片、および索引切片)。この切片の測定した領域内において、参照切片内に、明確に可視的な核(単一の核および複数の核)を有するニューロンのみを計数し、次にニューロンの密度[細胞数/(測定された面積×切片の厚さ)]を計算した。各DRGについて、1から10の間のランダムに選択した切片から開始して、10番目毎の切片を分析した。
ニューロンによって覆われる断面積を、DRGについて測定し(NIHイメージ、バージョン1.61)、ニューロンによって占められる各神経節の容積(μm×10)を測定した面積、切片の厚さ、および各神経節を含む切片の総数から推定した。次に、DRG内の、NeuroTrace染色したニューロンの総数、およびVR1標識ニューロンまたはP2X3標識ニューロンの数を、総DRG容量にニューロンの密度を掛けることによって、決定した(Gundersonら、Acta.Pathol.Microbiol.Immunol.Scand.96:379−394)。
細胞のサイズを測定するために、コンピュータのマウスを用いて手動で細胞の輪郭を描き、そして輪郭を描いた細胞のプロファイルの断面積をNIHイメージ(1.61)を用いて定量した。次に、サイズ−頻度のヒストグラムを計数したニューロンから作成した。示される値は、平均±標準誤差である。全ての統計学的分析を、スチューデントのt−検定を用いて行った。p<0.05の場合に有意であるとした。
(オンコスタチンM遺伝子座のジーンターゲッティング)
マウスオンコスタチンM cDNAにハイブリダイズするゲノムクローンを、λファージ129/Svマウスゲノムライブラリーから得て、そのクローンを、BamHI、MboI、BglII、またはSau3AIを用いて部分消化した。ターゲッティングベクターを、選択した15.8kbクローン(マウスオンコスタチンM遺伝子座全体を含む)をpJMM4プラスミド(ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーターによって駆動されるネオマイシン耐性カセットを含む)中にクローニングすることによって構築した。ジーンターゲッティング用のベクターを、内在性のエクソンIIおよびエクソンIIIのコード領域、ならびに介在するイントロンを、PGKNeo遺伝子で置換し、診断用のXbaI部位およびSphI部位をゲノムの遺伝子座に導入するように、設計した。
サザン分析および/またはPCRを用いて、後代の遺伝子型決定を行った。サザン分析のために、ゲノムDNAをSphIを用いて消化し、そして5’外部プローブ(600bp長)を用いてハイブリダイズした。野生型対立遺伝子を、9kbのバンドとして検出した。一方、変異型対立遺伝子は、7kbのバンドを生じた。PCRによる遺伝子型決定のために、2セットのプライマーを、同一の反応混合物中で使用した。野生型オンコスタチンM遺伝子座の420bpのフラグメントを増幅するために、プライマーOSMs(CAA GGG AAC CCG CAG AAT CTG:配列番号16)およびプライマーOSMa(TGA ATC AGC TTG TGT CAT CAG:配列番号17)を使用した。585bpのフラグメントをターゲッティングされた遺伝子座内のNeo遺伝子より増幅するために、プライマーNEOs(GAA CAA GAT GGA TTG CAC GCA G:配列番号18)、およびプライマーNEOa(CCA TGA TAT TCG GCA AGC AG:配列番号19)を使用した。PCR条件は、95℃ 2分間、ならびに94℃ 30秒間、59℃ 1分間、および72℃ 1分間を30サイクル、そして72℃ 10分間の伸長であった。
OSM+/−雄性マウスを、C57BL/6雌性マウスに対して、少なくとも6世代戻し交配し、オンコスタチンM欠損マウスを、ほとんど同遺伝子系のバックグラウンドとした。ヘテロ接合異種交配によって生じたOSM+/+およびOSM−/−同腹子マウスを、全ての実験に使用した。
(行動試験)
これらの実験は、和歌山県立医科大学動物実験委員会の認可を得て行った。
化学的疼痛は、カプサイシン、α,β−メチレンATP(αβ−meATP)、およびホルマリン試験によって評価した(DickensonおよびSullivan、(1987)Neurosci.Lett.83:207−211;Caoら、(1998)Nature 392:390−394);Caterinaら、(2000)Sciecnce 288:306−313;Tsudaら、(2002)Eur.J.Neurosci.15:1444−1450)。試験の前4日間、毎日2時間、マウスを試験プラットホームに順化させた。試験を行なう日、マウスを1時間、試験プラットホームに配置し、その後各試験において、10μlのカプサイシン(Sigma−Aldrich、10mlの生理食塩水/10% エタノール/0.5 Tween 80中に1〜5mg)、10μlのαβ−meATP(Sigma−Aldrich、10μmol/l)、および10μlの5%ホルマリンを、左足の足底表面に投与した。注入された足を舐めるか、または持ち上げるかのいずれかの時間を記録した。ホットプレートアッセイ(Caoら、(1998)Nature 392:390−394;Caterinaら、(2000)Sciecnce 288:306−313)において、マウスを、最初に45℃に設定したホットプレート装置に2分間慣らせた。その後、マウスをホットプレート(48℃〜58℃)上に配置し、そして後足を舐めるまで、またはジャンプするまでの応答潜伏時間を記録した。52℃のホットプレートについてカットオフ時間は60秒であり、58℃のホットプレートについてカットオフ時間は30秒であった。機械的な感度を、尾部ピンチ試験(tail pinch test)(Caoら、(1998)Nature 392:390−394)によって評価した。本発明者らは、激しい機械的刺激に対する応答の潜伏時間を、尾部に適用したクリップによって測定した。内臓の刺激に対する応答を、0.6%酢酸(5ml/kg)(炎症を伴う内蔵の疼痛)、またはMgSO(120mg/kg)(炎症を伴わない内臓の疼痛)の腹腔内注入後の腹部伸展の数として評価した。伸展応答の頻度を、酢酸について20分間、MgSOについて5分間計数した。運動機能を、ローターロッドトレッドミル(Ugo Basile、Comerio、Italy)を用いて評価した。最初に、マウスを、4rpmのスピードで3分間、回転するロッドの上を歩くように訓練した。試験のために、スピードを4rpmに設定し、その後、40rpmに加速した。加速開始後、マウスが落ちるまでの時間を記録した。
(結果)
(DRGニューロンの発生におけるオンコスタチンMレセプターβ鎖の発現パターン)
DRGニューロンの発生におけるオンコスタチンMレセプターβ鎖の発現パターンを試験するために、発生段階(14.5日目の胚〜出生後14日)の少数のDRGを用いてハイブリダイゼーションを行って、オンコスタチンMレセプターβ鎖のmRNAのニューロンおける発現を同定した。オンコスタチンMレセプターβ鎖のmRNAは、胚の段階でのDRGでは、いずれの細胞においても発現していなかった(データ示さず)。オンコスタチンMレセプターβ鎖のmRNAは、出生後10日目において初めて、少数の細胞において検出され、少しずつ増加し、そして出生後14日目において、成体での発現レベルに達する(図1)。
(成体オンコスタチンM−/−マウスにおける疼痛DRGニューロンの減少)
マウスDRGの発生におけるオンコスタチンMの役割を見出すために、本発明者らは、オンコスタチンM欠損マウスを用いた。オンコスタチンM−/−マウス(OSM−/−マウスとも記載する)は、正常に発生し、そして、その発生の間のいかなる時点においても、マウスの大きさ、または体重に関して、+/+同腹子または+/−同腹子を区別することができなかった(データ示さず)。成体マウスにおいて、総DRGニューロンのおよそ13%がオンコスタチンMレセプターβ鎖陽性の小型ニューロンであり、この小サイズニューロンは、VR1およびP2X3を発現した。感覚ニューロンマーカーについての免疫組織化学染色は、VR1陽性(OSM+/+、46.8±1.4%;OSM−/−、24.0±1.0%;p<0.001)DRGニューロン、およびP2X3陽性(OSM+/+、56.3±0.9%;OSM−/−、46.5±1.2%;p<0.001)DRGニューロンが、成体のオンコスタチンM−/−のDRGにおいて、有意に減少したことを示した(図2)。TrkA陽性ニューロンおよびc−Ret陽性ニューロンについては、優位な変化が観察されなかった。CGRP陽性DRGニューロンの変化もまた、成体オンコスタチンM−/−マウスにおいて観察されなかった(図2)。さらに、総ニューロン、VR1陽性ニューロン、およびP2X3陽性ニューロンのサイズ−頻度分析は、オンコスタチンM−/−マウスのDRGにおけるVR1およびP2X3を発現する小サイズニューロンの減少を示した(図3)。
全てのオンコスタチンMレセプターβ鎖陽性ニューロンは、VR1/P2X3陽性であった。VR1およびP2X3二重免疫蛍光染色によって、オンコスタチンM−/−マウス内のDRGにおけるVR1/P2X3二重陽性ニューロンの有意な減少が明らかとなった(図4、矢印;OSM+/+、26.4±1.8%;OSM−/−、7.8±1.3%;p<0.01)。さらに、オンコスタチンMレセプターβ鎖陽性DRGニューロンもまた、オンコスタチンM−/−マウスにおいて減少していた(OSM+/+、15.2±1.8%;OSM−/−、7.6±0.6%;p<0.03)。このことは、VR1/P2X3/オンコスタチンMレセプターβ鎖三重陽性ニューロンの減少を示す。
成体オンコスタチンM−/−マウスの、腰椎脊髄において、VR1およびP2X3がどの層に局在するのかを決定するために、本発明者らは、VR1およびP2X3についての二重−免疫蛍光染色を行った。VR1(図5、緑色)およびP2X3(図5、赤色)を発現する一次求心性線維は、それぞれ、I層−II層内、およびII層の内部(IIi層)に分布することが公知である。図5に示すように、オンコスタチンM−/−マウスの脊髄のIIi層内において、VR1/P2X3二重陽性繊維はほとんど検出できなかった(黄色)。これは、オンコスタチンM+/+マウスの脊髄のIIi層内においてVR1/P2X3二重陽性繊維が検出されたことと、対照的である。
(成体オンコスタチンM−/−マウスにおける疼痛感受性の欠損)
オンコスタチンM−/−マウスは、運動の共調における欠陥を、全く示さなかった。ローターロッド試験を用いた保持時間は、オンコスタチンM+/+マウス(OSM+/+マウスとも記載する)について98±.1秒であり、オンコスタチンM−/−マウスについては104±4.7秒であった(グループあたりn=6)。
侵害受容機能を実験的に評価するために、本発明者らは、成体オンコスタチンM−/−マウスについて、挙動のバッテリー試験を行った(図6)。最初に、カプサイシン、αβ−meATP、およびホルマリンを含む化学的刺激に対する疼痛応答を評価した。なぜなら、VR1陽性ニューロンおよびP2X3陽性ニューロンは、図3および4に示されるように減少したからである。本発明における上記結果から予測されたように、カプサイシン刺激を行った場合、オンコスタチンM+/+マウスおよびオンコスタチンM+/−マウス(OSM+/−マウスとも記載する)は、足を旺盛に舐めた。しかし、オンコスタチンM−/−マウスの場合は、カプサイシンに対する挙動の応答が、有意に減少した(図6AおよびB)。さらに、αβ−meATP(図6C)またはホルマリン(図6D)の後足への注入によって生じた疼痛挙動(舐める)もまた、オンコスタチンM−/−マウスにおいて有意に減少した。
次に、オンコスタチンM+/+マウスおよびオンコスタチンM+/−マウスにおける熱応答挙動を比較した。なぜなら、VR1は、有害な熱についてのセンサーであることが公知であるからである(Caoら、(1998)Nature 392:390−394)。急な熱刺激に対する応答の潜伏時間を、52℃および58℃のホットプレートを用いて測定した。52℃および58℃の両方において、オンコスタチンM−/−マウスは、オンコスタチンM+/+マウスと比較して、有意により長い応答潜伏時間を示した(図6E)。さらに、より強烈な機械的刺激(尾部のクリップ)に対する応答の潜伏時間もまた、オンコスタチンM−/−マウスにおいて有意に長くなっていた(図6F)。
オンコスタチンM−/−マウスにおける疼痛応答の減少が、他の組織に対する有害な刺激の場合にも同様に生じるのか調べるために、MgSOの腹腔内注射(炎症とは独立して、即時型の内臓の疼痛応答(腹部の苦悶)を生じる)および酢酸の腹腔内注射(炎症反応に対して二次的な疼痛を誘導する)による、急性の内臓疼痛挙動を評価した。オンコスタチンM−/−マウスは、内臓の疼痛の両試験において、野生型と比較して、腹部苦悶の数が顕著に減少した(図6GおよびH)。
従って、挙動における急性侵害受容の閾値が、オンコスタチンMの非存在によって顕著に影響を受けた。
(考察)
LIFレセプターβ鎖は、神経系の種々の細胞において発現していたが、LIF−/−マウスにおいて、神経系の発生異常は報告されていない。LIF−/−マウスは、未分化胚芽細胞の着床異常、出生後の成長遅延、ならびに造血および胸腺細胞増殖の欠陥に起因する雌性生殖不能を示した(Escaryら、(2000)Nature 363:361−364)。オンコスタチンM−/−マウスにおいて、VR1/P2X3−二重陽性ニューロンが、顕著に減少した。この結果は、オンコスタチンMのオンコスタチンMレセプターへの結合が、VR1/P2X3−二重陽性ニューロンの正常な量の発生に必須であることを示す。従って、オンコスタチンMのアンタゴニストを生体に投与することによっても、VR1/P2X3−二重陽性ニューロンを顕著に減少させることができる。
オンコスタチンM欠損がVR1/P2X3−二重陽性ニューロンの顕著な減少を生じる正確なメカニズムは明らかでないが、以下の可能性が考慮される。1つは、オンコスタチンMがVR1およびP2X3の発現を調節するという可能性である。DRGにおけるVR1およびP2X3の発現が、抹消での炎症によって増加することが報告されている(Jiら、(2002)Neuron 36:57−68;XuおよびHuang、(2002)Neurosci.、22:93−102)。さらに、オンコスタチンMは、局所的な炎症に関与する、活性化T細胞、マクロファージ、多形核好中球、および好酸球によって産生される(Modurら、(1997)J.Clin.Invest.100:158−168;Grenierら、(1999)Blood 93:1413−1421;Wallaceら、(1999)J.Immunol.162:2247−5555;Tamuraら、(2002)Dev.Dyn.225:327−331)。これらの知見は、オンコスタチンMが侵害受容ニューロンにおけるVR1およびP2X3の発現を制御することを示唆する。別の可能性は、オンコスタチンMが侵害受容ニューロンの特定の一部に対する生後の生存因子として作用し得るというものである。実際に、総DRGニューロンに対する小サイズニューロンの割合は、オンコスタチンM−/−マウスにおいて顕著に減少していた。なお、オンコスタチンM欠損がVR1/P2X3−二重陽性ニューロンの顕著な減少を生じる正確なメカニズムが不明であっても、本明細書に記載される実験結果は、オンコスタチンMのアンタゴニストを生体に投与することによって、VR1/P2X3−二重陽性ニューロンを顕著に減少させることができることを示す。
組織学的結果と一致して、本明細書に記載の実験結果は、オンコスタチンM−/−マウスが、急性の熱疼痛、化学的疼痛、および内臓の疼痛のモデルにおいて、有害応答が顕著に減少されたことを実証した。この結果は、オンコスタチンMが、急性疼痛に対する有害応答に必要であり、オンコスタチンMレセプターに対するオンコスタチンM刺激が減少した場合に、急性疼痛に対する有害応答が顕著に減少することを示す。従って、オンコスタチンMのアンタゴニストを含む薬剤を用いて、疼痛を処置することができる。
さらに、疼痛処置効果は、オンコスタチンMのアンタゴニストを用いてオンコスタチンMによるオンコスタチンMレセプターへの刺激の遮断によってもたらされるのみならず、オンコスタチンMレセプターを発現する細胞を選択的に除去することによってももたらされる。なぜなら、オンコスタチンMレセプターを発現する細胞を選択的に除去することは、オンコスタチンM刺激による生理作用をもたらさないという点で、オンコスタチンM−/−と同様であるからである。
興味深いことに、機械的疼痛に対する応答の減少もまた、オンコスタチンM−/−マウスにおいて観察された。これに対して、VR1−/−マウスまたはP2X3−/−マウスは、機械的疼痛にたいして正常に応答した(Caterinaら、(2000)Science 288:306−313;Souslovaら、(2000)Nature 407:1015−1017)。この結果を説明する正確なメカニズムは不明であるが、この結果は、オンコスタチンMによる刺激の減少またはオンコスタチンMレセプター発現細胞の減少によって、機械的刺激に対する応答もまた同様に減少することができることを示す。
上記の本明細書に示される結果は、有害な刺激を検出する神経経路のアセンブリの生後の段階において、オンコスタチンMが重要な役割を担うことを示す。さらに、これらの結果は、オンコスタチンMのアンタゴニストを、オンコスタチンMレセプターβ鎖陽性ニューロンを標的とした鎮痛剤として用いることができることを示す。
(実施例2:オンコスタチンMアンタゴニストによる疼痛の処置)
実施例1の結果から、オンコスタチンMアンタゴニストを用いて疼痛を処置することができることが示された。このことを確認するために、実際にマウスをオンコスタチンMアンタゴニストを投与して、マウスにおける疼痛挙動の変化を調べる。
(オンコスタチンMアンタゴニストの調製)
本実施例において用いるオンコスタチンMアンタゴニストとして、抗オンコスタチンM抗体、または抗オンコスタチンMレセプター抗体を選択する。使用する抗体の量は、抗体の親和性に依存して変化するが、通常1〜1000μg/mlの濃度の抗体溶液を用いる。この抗体溶液を、リン酸緩衝生理食塩水に溶解し、5〜20μlをマウスの皮下または髄腔内に投与する。
(オンコスタチンMアンタゴニストによる疼痛感受性の低下)
オンコスタチンMアンタゴニストを投与されるマウスが、運動の共調における欠陥を、全く示さないことを確認する。このことを、ローターロッド試験を用いる保持時間によって確認する。
侵害受容機能を実験的に評価するために、本発明者らは、オンコスタチンMアンタゴニスト投与マウスについて、挙動のバッテリー試験を行う。次に、オンコスタチンMアンタゴニスト投与マウスと非投与マウスの両方において、カプサイシン、αβ−meATP、およびホルマリンを含む化学的刺激に対する疼痛応答を評価する。本発明における上記結果から予測されるように、カプサイシン刺激を行う場合、オンコスタチンMアンタゴニスト投与を受けないマウスは、足を旺盛に舐めるが、オンコスタチンMアンタゴニスト投与を受けるマウスは、足を舐める頻度が低下する。このことは、オンコスタチンMアンタゴニスト投与マウスにおいて、カプサイシンに対する挙動の応答が有意に減少することを示す。さらに、αβ−meATPまたはホルマリンを用いた場合にも、カプサイシンの場合と同様の結果が得られる。
次に、オンコスタチンアンタゴニストの投与を受けるマウスと受けないマウスにおける熱応答挙動を比較する。具体的には、急な熱刺激に対する応答の潜伏時間を、52℃および58℃のホットプレートを用いて測定する。52℃および58℃の両方において、オンコスタチンMアンタゴニストの投与を受けるマウスが、投与を受けないマウスと比較して、有意により長い応答潜伏時間を示す。さらに、より強烈な機械的刺激(尾部のクリップ)に対する応答の潜伏時間もまた、オンコスタチンMアンタゴニストの投与を受けるマウスにおいて有意に長くなる。
このことは、挙動における急性侵害受容の閾値が、オンコスタチンMアンタゴニストの投与によって顕著に影響を受けることも示す。
(実施例3:オンコスタチンMレセプター発現細胞の選択的除去による疼痛の処置)
実施例1の結果から、オンコスタチンMレセプター発現細胞の減少によって疼痛を処置することができることが示された。このことを確認するために、実際にマウスに遺伝子治療を行い、オンコスタチンMレセプター発現細胞を選択的に除去し、マウスにおける疼痛挙動の変化を調べる。
本実施例においては、オンコスタチンMレセプター発現細胞を選択的に除去するために、ヒトオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子のプロモーターの下流に、細胞傷害性遺伝子であるジフテリアトキシン遺伝子を連結し、複製欠損レトロウイルスベクターに連結して組換えレトロウイルスベクターを構築し、オンコスタチンMレセプターβ鎖を発現している細胞でその細胞障害遺伝子を特異的に発現させ、その細胞を死滅させる。
(オンコスタチンMレセプター発現細胞を選択的に除去するための遺伝子治療ベクターの構築)
細胞障害遺伝子をオンコスタチンMレセプターβ鎖を発現する細胞において特異的に発現させるためのプロモーター領域として、配列番号1のヒトオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子プロモーター配列を用いる。このプロモーター配列と連結する細胞傷害性遺伝子として、ジフテリアトキシン遺伝子を用いる。
(パッケージング細胞のトランスフェクションによる遺伝子治療ベクターの調製)
パッケージング細胞のトランスフェクションによるウイルスベクター調製の具体的手法は、例えば、「実験医学別冊、注目のバイオ実験シリーズ、必ず上手くいく遺伝子導入と発現解析プロトコール、仲嶋一範・北村義浩編、羊土社」および「実験医学別冊、改訂第4版、新遺伝子工学ハンドブック、村松正實・山本雅編、羊土社」に記載される。具体的には、以下のとおりである。
パッケージング細胞として、PLAT−E細胞を用いる。PLAT−E細胞をPBSによって静かに洗浄し、2mlのPBS(0.1%トリプシン、1mM EDTA添加)を加え、37℃で10分間放置する。細胞をやさしくはがし、DMEM(+10% FCS)溶液にサスペンジョンする。1500rpmで5分間遠心し、細胞ペレットを丁寧にサスペンドして、60mm培養皿に2×10個の細胞を播種する。12〜16時間後、100μlのDMEMに3μgのDNAとFuGene(Roche社)9μlを入れてよく混ぜる。室温に5分間放置後、DNA溶液をPLA−E細胞を培養している培養皿に滴下して軽く混ぜる。24時間の培養後、培養液を静かに交換し、さらに24時間の培養後、上清を集め、4℃で1500rpm5分間遠心し、上清を再度4℃3000rpm5分間遠心し、その上清をウイルスストック溶液とする。
(遺伝子治療ベクターの投与)
上記の遺伝子治療ベクターストックを、5〜20ml、マウスの皮下または髄腔内に投与する。投与の1〜2週間後、実施例1に記載の行動試験と同一の試験を行う。
(レトロウイルスベクターによるオンコスタチンMレセプターβ鎖発現ニューロンの減少)
実施例1と同様の手法を用いて、オンコスタチンMレセプターβ鎖の発現パターンを試験する。マウス脳を用いてハイブリダイゼーションを行い、オンコスタチンMレセプターβ鎖のmRNAのニューロンおける発現を同定する。レトロウイルスベクターを導入したマウスにおいて脳全体におけるオンコスタチンMレセプターβ鎖のmRNAが、減少する。このことは、レトロウイルスベクターの導入によって、オンコスタチンMレセプター発現細胞が選択的に除去され、オンコスタチンMレセプターβ鎖を発現する細胞の割合が減少することを示す。
(オンコスタチンMレセプター発現細胞の選択的除去による疼痛感受性の低下)
レトロウイルスベクターを投与されるマウスが、運動の共調における欠陥を、全く示さないことを確認する。このことを、ローターロッド試験を用いる保持時間によって確認する。
侵害受容機能を実験的に評価するために、本発明者らは、レトロウイルスベクター投与マウスについて、挙動のバッテリー試験を行う。次に、レトロウイルスベクター投与マウスと非投与マウスの両方において、カプサイシン、αβ−meATP、およびホルマリンを含む化学的刺激に対する疼痛応答を評価する。本発明における上記結果から予測されるように、カプサイシン刺激を行った場合、オンコスタチンMアンタゴニスト投与を受けないマウスは、足を旺盛に舐めるが、オンコスタチンMアンタゴニスト投与を受けるマウスは、足を舐める頻度が低下する。このことは、オンコスタチンMアンタゴニスト投与マウスにおいて、カプサイシンに対する挙動の応答が有意に減少することを示す。さらに、αβ−meATPまたはホルマリンを用いた場合にも、カプサイシンの場合と同様の結果が得られる。
次に、レトロウイルスベクターの投与を受けるマウスと受けないマウスにおける熱応答挙動を比較する。具体的には、急な熱刺激に対する応答の潜伏時間を、52℃および58℃のホットプレートを用いて測定する。52℃および58℃の両方において、レトロウイルスベクターの投与を受けるマウスが、投与を受けないマウスと比較して、有意により長い応答潜伏時間を示す。さらに、より強烈な機械的刺激(尾部のクリップ)に対する応答の潜伏時間もまた、レトロウイルスベクターの投与を受けるマウスにおいて有意に長くなる。
このことは、挙動における急性侵害受容の閾値が、レトロウイルスベクターの投与によって顕著に影響を受けることも示す。
(実施例4:オンコスタチンMレセプター発現細胞の選択的除去による疼痛の処置)
実施例1の結果から、疼痛に関連する神経を減少することによって、疼痛を緩和・治癒することは可能であることが示された。そこで、次に、神経因性疼痛モデルマウスにおいて、疼痛に関連する神経を減少することによる処置効果を確認した。
神経因性疼痛モデルマウスとして、マウスの第5腰髄神経を絹糸で結紮することにより、アロディニアを惹起する神経因性疼痛モデル(chronic constriction injury; CCIモデル)を作成した。アロディニアが惹起されたときに後根神経節のニューロンに誘導されるといわれているATF3の発現を免疫組織染色により検討した(図7、上段)。正常のC57BL/6マウスでは非手術側の後根神経節のニューロンにはATF3の発現はほとんどみられなかったが、手術側の後根神経節のニューロンには非常に多数のATF3の発現がみられた。さらに、行動学的にアロディニアを検討するために、von Frey試験を行ったところ(図7、下段)、逃避行動を開始する際にかけられた力(グラム)が著しく減少した(左側:手術側での結果)。このことから、このモデルにより組織学的、行動学的にアロディニアが惹起されていることが確認された。
次に、CCIモデルにおける脊髄での変化を検討した。ミクログリアのマーカーであるIba1に対する抗体で免疫染色を行ったところ、手術側の脊髄後角でミクログリアの増加を認め(図8、上段)、さらにオンコスタチンM(OSM)に対する抗体で免疫染色を行ったところ、同じく手術側の脊髄後角で染色性の増加を認めた(図8、下段)。このことから、CCIモデルでは、Iba1およびオンコスタチンMの発現の増加が確認された。
次に、オンコスタチンMレセプターの対立遺伝子の両方を欠損する欠損(OSMRKO)マウスでCCIモデルを作成し、脊髄での変化を検討したところ、ミクログリアのマーカーであるIba1に対する抗体で免疫染色から、手術側(CCIモデル側)の脊髄後角でミクログリアの増加を認め、さらにオンコスタチンM(OSM)に対する抗体での免疫染色から、同じく手術側の脊髄後角で染色性の増加を認めた(図9、上段)。ところが、行動学的にアロディニアを検討するために、von Frey試験を行ったところ(図9、下段)、手術側の足底を刺激したときと非手術側の足底を刺激したときの、逃避行動を開始するのに必要な力(グラム)および逃避行動までの反応潜時には差は認められず、行動学的にアロディニアは抑制されていた。これらの事実から、オンコスタチンMレセプター陽性ニューロンの欠損により神経因性疼痛の一種であるアロディニアが抑制されたことを示す。このことは、オンコスタチンMレセプター陽性ニューロンを減少させることによって、神経因性疼痛を処置できることを示す。
そこで、次にオンコスタチンMレセプターの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体を作成し、抗オンコスタチンMレセプター抗体による効果を確認した。得られた5種類の抗オンコスタチンMレセプターラット抗体をカクテル(タンパク質量で5マイクログラム)にし、これをサポリン結合抗ラットイムノグロブリン抗体(3.6マイクログラム)と混合し、マウスの皮下に投与した。その結果、オンコスタチンMレセプター陽性ニューロンの減少を認めた(図10)。
これらのことから、抗オンコスタチンMレセプター抗体の投与は、オンコスタチンMレセプター陽性ニューロンの減少をもたらし、そしてオンコスタチンMレセプター陽性ニューロンの減少によって神経因性疼痛(アロディニア)が処置される。従って、抗オンコスタチンMレセプター抗体によって、疼痛が処置できることが実証された。
(実施例5:オンコスタチンMの投与による疼痛の処置)
アロディニアの発症メカニズムの一つとして、後根神経節のニューロンの神経突起の脊髄での異常伸展が考えられる。この異常進展は、脊髄で本来産生されるべき神経突起の誘因物質の産生に異常が生じる結果であると考えられている。しかし、具体的に実証されてはいない。
CCIモデルの脊髄においてオンコスタチンM(OSM)に対する抗体で免疫染色を行ったところ、手術側の脊髄後角で染色性の増加を認めた(図8、下段)ことから、アロディニアの発症メカニズムに関与する神経突起の誘因物質のひとつがオンコスタチンMである可能性が推定された。オンコスタチンMが神経突起の誘引物質であるならば、オンコスタチンMによって、神経突起の発芽の制御(例えば、抑制)が可能となる。この抑制のための方法として髄腔内にオンコスタチンMの中和抗体を注入するか、後根神経節のニューロンの神経突起の末梢側に高濃度のオンコスタチンMを注入し、末梢側でのオンコスタチンMの濃度を上げるということが想定される。前者が比較的一般であるが、臨床応用を考えたとき、患者への侵襲がおおきいという点もある。そこで、CCIモデル作成3日後に、高濃度のオンコスタチンM(250マイクログラム/10マイクロリッター)をマウスの坐骨神経周辺の筋肉内に注射した。その結果、注射の2日後にはアロディニアが抑制されていた(図11)。この結果は、本発明以前には、全く予測され得なかったものである。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本願発明の組成物によって、疼痛、特に、癌性疼痛、神経因性疼痛、および炎症性疼痛などのような治療抵抗性の疼痛を処置することが可能になる。
図1は、発生中の各段階(PN0=出生後0日目;PN7=出生後7日目;PN14=出生後14日目;および成体)におけるDRG中の、オンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子mRNAを検出するインサイチュハイブリダイゼーションの結果を示す。 図2は、オンコスタチンM−/−マウス内のDRGにおける感覚ニューロンマーカーの発現について、オンコスタチンM+/+マウス、およびオンコスタチンM−/−マウスについて、成体腰部DRGでの一連の切片を示す。スケールバーは、100μmである。 図3は、総DRGニューロン(A)、VR1−陽性DRGニューロン(B)、およびP2X3陽性DRGニューロン(C)の横断面の面積の分布を示す、サイズ−頻度ヒストグラムである。これらニューロンは、4匹のオンコスタチンM+/+マウスおよびオンコスタチンM−/−マウスから調製された。小サイズニューロン(<300μm)以外に、2つの遺伝型の間で、有意な差は確認されなかった。*、P<0.05、n=4。 図4は、オンコスタチンM+/+マウス(左パネル)、オンコスタチンM−/−マウス(右パネル)の成体DRG中の、VR1およびP2X3二重免疫蛍光染色の結果である。結合されたイメージ中のVR1/P2X3−二重陽性細胞(矢印)が有意に減少している。スケールバーは、100μmである。 図5は、オンコスタチンM+/+成体マウス(左パネル)、オンコスタチンM−/−成体マウス(右パネル)の背骨中の、VR1およびP2X3二重免疫蛍光染色の結果である。オンコスタチンM+/+マウスにおいて、強い二重免疫反応性(黄色)が、背骨のII層の内部に局在していた。しかし、オンコスタチンM−/−マウスでは、背骨の二重免疫染色は、ほとんど観察されなかった。スケールバーは、200μmである。 図6は、オンコスタチンM−/−マウスにおける侵害受容刺激に対する感受性の減少を示す結果である。(A〜D)化学的侵害受容試験。(A)カプサイシン(1.0μg;n=6)の足底内部注入に対する応答における、舐める動作の遅延が、野生型マウス(白棒)およびヘテロ接合型マウス(斜線を付けた棒)と比較して、変異型マウス(黒棒)において有意に減少していた;最後の2群は、異ならない。(B)図中に示された用量のカプサイシンに対する応答における、舐める動作の遅延(n=5)。(C)αβ−meATPに対する応答における、舐める動作の遅延(n=6)。(D)ホルマリンの皮下注入後に、後足を舐めた累積時間(n=6)。フェーズI、注入後0−10分;フェーズII、注入後15−50分。(E)ホットプレートアッセイにおける、舐める動作またはジャンプの潜伏時間。(F)尾部のクリップによる急性の機械的刺激に対する応答の潜伏時間。(G、H)MgSOの腹腔内注射(G)または酢酸の腹腔内注射(H)によって生じた内臓疼痛応答(苦悶)(野生型および変異型の両方について、n=8〜9)。NS=有意な結果がない;*、p<0.05;**、p<0.02;***、p<0.01;****、p<0.001。 図7上段の写真は、ATF3の発現を免疫組織染色により検討した写真である。左側は、手術を受けた側の後根神経節のニューロン、右側は、手術を受けなかった側の後根神経節のニューロンである。図7の下段のグラフは、von Frey試験の結果である。縦軸は、逃避行動を開始した際に、足底に加えられた刺激をグラムで示したものである。Ltは、CCIモデルである左足の結果を示し、Rtは、コントロールである右足の結果を示す。 図8上段の写真は、CCIモデルにおける抗Iba1抗体で免疫染色の結果を示す。図8下段の写真は、CCIモデルにおける抗オンコスタチンM抗体で免疫染色の結果を示す。 図9上段の写真は、オンコスタチンMレセプター遺伝子ノックアウトマウスから作成したCCIモデルにおける抗Iba1抗体で免疫染色の結果を示す。図9中段の写真は、オンコスタチンMレセプター遺伝子ノックアウトマウスから作成したCCIモデルにおける抗オンコスタチンM抗体で免疫染色の結果を示す。図9下段のグラフは、von Frey試験の結果である。縦軸は、逃避行動を開始した際に、足底に加えられた刺激をグラムで示したものである。Ltは、CCIモデルである左足の結果を示し、Rtは、コントロールである右足の結果を示す。 図10上段の写真は、抗オンコスタチンMラット抗体と、サポリン結合抗ラットイムノグロブリン抗体とを投与した場合の、オンコスタチンMレセプター陽性細胞の染色結果である。図10下段の写真は、抗オンコスタチンMラット抗体と、サポリン結合抗ラットイムノグロブリン抗体とを投与しなかった場合の、オンコスタチンMレセプター陽性細胞の染色結果である。Ltは、CCIモデルである左足の結果を示し、Rtは、コントロールである右足の結果を示す。 CCIモデルに対して、オンコスタチンMを筋肉内注射した結果を示す。グラフは、von Frey試験の結果である。縦軸は、逃避行動を開始した際に、足底に加えられた刺激をグラムで示したものである。
配列番号1=ヒトオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子プロモーター配列
配列番号2=マウスオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子プロモーター配列
配列番号3=ラットオンコスタチンMレセプターβ鎖遺伝子プロモーター配列
配列番号4=マウスオンコスタチンMのcDNA配列
配列番号5=マウスオンコスタチンMのアミノ酸配列
配列番号6=ヒトオンコスタチンMのcDNA配列
配列番号7=ヒトオンコスタチンMのアミノ酸配列
配列番号8=ラットオンコスタチンMのcDNA配列
配列番号9=ラットオンコスタチンMのアミノ酸配列
配列番号10=マウスオンコスタチンMレセプターのcDNA配列
配列番号11=マウスオンコスタチンMレセプターのアミノ酸配列
配列番号12=ヒトオンコスタチンMレセプターのcDNA配列
配列番号13=ヒトオンコスタチンMレセプターのアミノ酸配列
配列番号14=ラットオンコスタチンMレセプターのcDNA配列
配列番号15=ラットオンコスタチンMレセプターのアミノ酸配列
配列番号16=プライマーOSMs
配列番号17=プライマーOSMa
配列番号18=プライマーNEOs
配列番号19=プライマーNEOa

Claims (34)

  1. オンコスタチンMアンタゴニストおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む、疼痛を処置するための薬学的組成物であって、
    ここで、該オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体、および、抗オンコスタチンM抗体からなる群から選択される、
    薬学的組成物
  2. 前記オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体である、請求項に記載の薬学的組成物。
  3. 前記抗オンコスタチンMレセプター抗体が、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼからなる群から選択される細胞毒素と結合体を形成している、請求項に記載の薬学的組成物。
  4. 前記オンコスタチンMアンタゴニストが、投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように含有される、請求項1に記載の薬学的組成物。
  5. 前記疼痛が、以下からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
  6. 非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  7. インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
  8. 疼痛を処置するための医薬の製造における、オンコスタチンMアンタゴニストの使用であって、
    ここで、該オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体、および、抗オンコスタチンM抗体からなる群から選択される、
    使用
  9. 前記オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体である、請求項に記載の使用。
  10. 前記抗オンコスタチンMレセプター抗体が、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼからなる群から選択される細胞毒素と結合体を形成している、請求項に記載の使用。
  11. 前記オンコスタチンMアンタゴニストが投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように前記医薬中に含有される、請求項に記載の使用。
  12. 前記疼痛が、以下からなる群から選択される、請求項に記載の使用:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
  13. 請求項1に記載の薬学的組成物を含む、疼痛を処置するためのキット。
  14. 前記オンコスタチンMアンタゴニストが抗オンコスタチンMレセプター抗体である、請求項13に記載のキット。
  15. 前記抗オンコスタチンMレセプター抗体が、サポリン、ジフテリアトキシン、リシン、およびヘルペスチミジンキナーゼからなる群から選択される細胞毒素と結合体を形成している、請求項14に記載のキット。
  16. 前記オンコスタチンMアンタゴニストが投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように前記薬学的組成物中に含有される、請求項1に記載のキット。
  17. 前記疼痛が、以下からなる群から選択される、請求項1に記載のキット:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
  18. 非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載のキット。
  19. インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、請求項13に記載のキット。
  20. オンコスタチンMまたはオンコスタチンMホモログの少なくとも1つと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、疼痛を処置するための薬学的組成物であって、
    ここで、オンコスタチンMホモログは、配列番号4、6または8に記載の核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によってコードされ、そしてオンコスタチンM活性を有するポリペプチドであって、ここで、オンコスタチンM活性は、多能性造血前駆細胞の増殖促進活性、内皮細胞クラスターの形成促進活性、肝細胞分化促進活性、新生児のセルトリ細胞の増殖促進活性、肝細胞からの急性期タンパク質の産生誘導活性、TIMP1の発現誘導活性、および肝再生促進活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、薬学的組成物。
  21. オンコスタチンMまたはオンコスタチンMホモログが、投与された部位における局所濃度が0.1〜100mg/mlの量になるように含有される、請求項20に記載の薬学的組成物。
  22. 前記疼痛が、以下からなる群から選択される、請求項20に記載の薬学的組成物:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
  23. 非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項20に記載の薬学的組成物。
  24. インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、請求項20に記載の薬学的組成物。
  25. 皮下投与または筋肉内投与に適するように処方される、請求項20に記載の薬学的組成物。
  26. 前記疼痛が、以下からなる群から選択される、請求項20に記載の薬学的組成物:炎症性疼痛、神経因性疼痛、および癌性疼痛。
  27. 非ステロイド性消炎鎮痛薬および麻薬のうち少なくとも1つをさらに含む、請求項20に記載の薬学的組成物。
  28. インドメタシン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、モルヒネ、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、および[D−Ala2,MePhe4,Gly−ol5]−エンケファリンのうち少なくとも1つをさらに含む、請求項20に記載の薬学的組成物。
  29. 疼痛を処置するための医薬の製造における、オンコスタチンMまたはオンコスタチンMホモログの使用。
  30. 請求項20に記載の薬学的組成物を含む、疼痛を処置するためのキット。
  31. 疼痛を処置するための薬学的組成物であって、該組成物は、
    (a)オンコスタチンM遺伝子またはオンコスタチンMホモログ遺伝子を含む遺伝子導入ベクターであって、
    ここで、オンコスタチンMホモログは、配列番号4、6または8に記載の核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸によってコードされ、そしてオンコスタチンM活性を有するポリペプチドであって、ここで、オンコスタチンM活性は、多能性造血前駆細胞の増殖促進活性、内皮細胞クラスターの形成促進活性、肝細胞分化促進活性、新生児のセルトリ細胞の増殖促進活性、肝細胞からの急性期タンパク質の産生誘導活性、TIMP1の発現誘導活性、および肝再生促進活性からなる群から選択される少なくとも1つの活性である、遺伝子導入ベクター、
    および
    (b)薬学的に受容可能なキャリア
    を含む、疼痛を処置するための薬学的組成物。
  32. 前記遺伝子導入ベクターが、以下からなる群から選択されるウイルス由来である、請求項31に記載の薬学的組成物:レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレンチウイルス。
  33. 前記遺伝子導入ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルス由来である、請求項32に記載の薬学的組成物。
  34. 遺伝子導入ベクターがレトロウイルス由来である、請求項33に記載の薬学的組成物。
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