JP4799451B2 - フェライト中空体およびそれを使用した電波吸収体 - Google Patents
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Description
また、電磁波遮蔽材料として、フェライトの中空粒子を使用することが知られている。例えば、特許文献2には、樹脂粉末と、樹脂粉末より小径のフェライト粒子とを圧接させながら混合し、フェライト粒子がその一部を埋め込んだ状態で樹脂粉末の表面を被覆してなるフェライト粉末被覆粒子としたのち、焼成し樹脂粉末を焼失させ、フェライト粉末同士を焼結させて中空構造を形成してなる、フェライト中空粒子の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、従来よりも殻厚が厚く、球形に近く、粒径の揃った高強度のフェライト中空粒子が得られ、電磁波遮蔽材料として用いることができるとしている。
子に接触させて、吸水膨潤した高吸収性ポリマーの球状粒子の全表面にセラミック原料粉
末層を形成させた後、乾燥、焼成して得られたセラミックの球状殻の内部に球状空間を有
してなるセラミック造粒体が記載されている。このセラミック造粒体は電波吸収体にも用
いることができるとされる。特許文献4に記載された技術で製造されたセラミック造粒体
は、直径6mm、殻厚1mm、中空内径4mm程度の焼結体で、粒子外径に対する膜厚の
比は、0.17程度になると推定される。
また、本発明者らは、中空体をフェライト焼結体で構成することにより、中空体の外面側の気孔量が内面側の気孔量に比べて少なくすることができ、中空体の割れ発生を顕著に防止できるという知見を得た。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)殻の内部に空間を有し、前記殻がフェライト焼結体からなる中空体であって、該中空体の平均直径が0.5〜10mm、前記殻の平均厚さと前記中空体の平均直径との比、殻平均厚さ/中空体平均直径、が0.01〜0.1であり、前記殻の外表面側に存在する気孔の量が、該殻の内表面側に存在する気孔の量より少ないことを特徴とするフェライト中空体。
(2)(1)に記載のフェライト中空体を体積%で20〜70%含有することを特徴とする電波吸収体。
(3)(2)において、前記フェライト中空体を除く領域が、体積%で10%以上のフェライトを含むことを特徴とする電波吸収体。
フェライト中空体の平均直径が0.5mm未満では、単位体積当たりの質量が大きくなり、所望の軽量化を達成できなくなるとともに、相対的に殻厚さが薄くなり、割れなどの欠陥が多発するという問題に加えて、殻作成時に欠陥が発生しやすくなるという問題もある。一方、フェライト中空体の平均直径が10mmを超えると、単位体積当たりのフェライト量が少なくなり、電波吸収特性が低下する。このようなことから、フェライト中空体の平均直径を0.5〜10mmの範囲に限定した。なお、好ましくは0.7〜8mmである。なお、ノギス、マイクロメータ等を使用して、当該中空体の複数の箇所(3箇所以上)で中空体の直径を測定し、それらの算術平均値をその中空体の平均直径とする。
球形発泡スチロールに、フェライト粉末とバインダとしてのポリビニルアルコール(PVA)を含む水スラリーを、例えばスプレーコーティング等で塗布する。なお、塗布方法はスプレーコーティングに限定されない。ミキサー中で混合する方法でもよい。また、コーティング厚さは、スプレー時間や、スラリー中のフェライト濃度で調整できる。また、フェライト中空体の直径は、使用する発泡スチロールの直径で調整できる。また、フェライト中空体の殻厚さは、コーティング厚さで調整できる。
すき間材は、フェライト中空体を支持することが可能な物質であればよく、とくに限定されないが、例えば、セメントなどの無機系材料、樹脂などの有機系材料がいずれも好適である。すき間材としての無機系材料には、フェライト中空体と同じ組成のフェライト焼結体を用いても良い。
フェライト中空体の含有量が20%未満では、十分な電波吸収特性が実現できない。一方、70%を超えて多量に含有すると、結合材でもあるすき間材の量が少なくなり、電波吸収体が十分な強度を確保できなくなる。このため、フェライト中空体の含有量を電波吸収体全量に対する体積%で20〜70%の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは40〜60%である。フェライト中空体の含有量は、フェライト中空体の比重、添加量から、電波吸収体中のフェライト中空体の体積を求め、電波吸収体の体積(全量)からフェライト中空体の体積%を求める。
本発明の電波吸収体の好ましい構成の一例を模式的断面図で図1に示す。
すき間材2はセメント等としても、あるいはセメント等にさらにフェライト中空体1と同じ組成のフェライト粉末を含有させてもよい。また本発明では、すき間材2をフェライト粉末全量としてもよい。その際、フェライト中空体1とフェライト粉末とを混合し、焼結して、電波吸収体3とする。
水に、平均粒子径0.7μmのフェライト粉末:30質量%、PVA:2質量%を加えたスラリーを作製した。該スラリーを発泡スチロールとともに、ミキサー中に装入し混合して、発泡スチロール表面にスラリーを塗布した。なお、使用したフェライト粉末は(Ni0.5Zn0.5)Fe2O4(組成1)とした。塗布後、1100℃(大気中)で焼結し、種々の殻平均厚さ、平均直径を有するフェライト中空体とした。
中空体の殻の強度は、1mの高さからコンクリート床に中空体を100個、自然落下させ、割れた中空体の個数を測定し、割れた個数で中空体の殻の強度を評価した。割れた個数の少ないほど高強度のフェライト中空体であると評価する。
得られたフェライト中空体の寸法形状(平均直径、殻平均厚さ/平均直径、気孔分布)および強度を表1に示す。
つぎに、得られたフェライト中空体を使用し、該フェライト中空体が表2に示す含有量となるように、ケイ酸カルシウムを主成分とするセメント(すき間材)に混入し、厚さ5cmの板状材(電波吸収体)に成型した。なお、フェライト中空体を使用せず、(Ni0.5Zn0.5)Fe2O4(組成1)組成のフェライト粉末を、成型し焼結して同一寸法形状の板状材として、従来例(板状体No.9)とした。また、ケイ酸カルシウムを主成分とするセメント(すき間材)に、組成1のフェライト粉末を50体積%混入し、成型して、同一寸法形状の板状材とし比較例(板状体No.10)とした。
ついで、得られた板状材を切断して断面を実体顕微鏡で観察し、フェライト中空体の破損状況を確認した。破損したフェライト中空体の数が、20%未満である場合を○、それ以上の場合を×として評価した。
得られた結果を表2に示す。
(実施例2)
表1に示すフェライト中空体(フェライト中空体No.A)を表3に示す含有量(パネル全量を100%とした場合の体積%)となるように、ケイ酸カルシウムを主成分とするセメント(すき間材)に混入して、パネル(厚さ:50mm)に成型した。なお、すき間材であるセメントには、表3に示す含有量(母材全量を100%とした場合の体積%)のフェライト粉末を混合している。パネルNo.4は、フェライト中空体と、すき間材としてのフェライト粉末とを混合し、1050℃で焼結して、同一寸法のパネルとした。
2 すき間材
3 電波吸収体
Claims (3)
- 殻の内部に空間を有し、前記殻がフェライト焼結体からなる中空体であって、該中空体の平均直径が0.5〜10mm、前記殻の平均厚さと前記中空体の平均直径との比、殻平均厚さ/中空体平均直径、が0.01〜0.1であり、前記殻の外表面側に存在する気孔の量が、該殻の内表面側に存在する気孔の量より少ないことを特徴とするフェライト中空体。
- 請求項1に記載のフェライト中空体を体積%で20〜70%含有することを特徴とする電波吸収体。
- 前記フェライト中空体を除く領域が、体積%で、10%以上のフェライトを含むことを特徴とする請求項2に記載の電波吸収体。
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