JP4799142B2 - 離隔距離計測器具及び測定方法 - Google Patents
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Description
特に、樹木は成長して送電線との間の距離が経時的に縮まるため、電力会社では一年に一回程度、定期的に電線と樹木頂部との間の離隔距離を確認するための巡視を行い、離隔距離が許容限度を下回っている場合には、地権者の承諾を得てから樹木の頂部を所定長に亘り伐採(剪定)する作業を実施することとなる。なお、通常、樹木との干渉が問題となる送電線の地上高は20m程度までである。送電線と樹木等との間の適正な離隔距離は、送電線の電圧に応じて法定されているが、許容される離隔距離は4〜6mの範囲であり、樹木を対象とする場合にはその成長による距離の短縮分を考慮して大きめに離隔距離を定める。そして、離隔距離が上記許容範囲を越えて短い場合には、樹木を伐採することとなる。
地上、或いは高所から目視、又は望遠鏡による観察によって送電線と樹木との間の離隔距離をある程度の正確さで判定することは、熟練した専門家によれば困難ではないが、熟練者を育てること自体にコストと時間を要するし、判断ミスも有り得る。仮に、50cm単位、1m単位の判断ミスが生じたとしても、一年後の定期的な巡視調査までの間に樹木が危険距離内にまで成長する可能性が高まる。更に、樹木の植生状況や、地形等の環境条件によっては目視観察できない場合もあった。
また、従来、地上巡視において、釣り竿式に伸縮自在な絶縁性伸縮パイプを短縮した状態で携帯し、電線と樹木との離隔距離を測定する際に伸長させて電線まで延ばし距離を測り、樹木との間隔を目視観察する測定方法が行われていた。しかし、この伸縮パイプは短縮時に2m程度の長さとなるために山道、森林等を巡視する際に携帯するには長尺過ぎて運搬に適さないばかりでなく、最長でも15m程度しか伸長しないので、それ以上の高さ位置にある送電線には適用することができなかった。また、長く延ばすとしなりを起こすため、正確な測定ができなくなり、扱いにくいという問題があった。
本発明は、地上巡視に際して携帯するのに障害とならない程度にコンパクト化することができ、離隔距離の測定に際しても計測者の技量等の個人差による測定結果のバラツキを生じることなく、取扱性に極めて優れた離隔距離計測器具を提供することを目的としている。
バルーンはゴム、樹脂等の絶縁材料にて構成したものであり、ガスを封入したときにその浮力によりメジャーを空中に上昇させることができるように構成される。
請求項2の発明は、請求項1において、前記バルーン内に前記気体を出入れ自在に構成したことを特徴とする。
バルーンにガスを注入、排出するための注入口を設けることにより、現場で膨らませることができるので、非使用時には収縮させた状態で携帯することができる。
請求項3の発明は、請求項1、又は2において、前記メジャーは、携帯可能となるように折り畳み自在、或いは巻き取り自在な紐、ワイヤ、帯を含む長尺部材から成り、該長尺部材にはその長手方向に沿って所定ピッチにて目盛りが形成されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2、又は3において、前記目盛りは、少なくとも前記バルーンに取り付けられた前記長尺部材の上部から下方へ向けて所定に範囲に亘って形成されていることを特徴とする。
測定したいのは、送電線と樹木等の送電線近接物頂部との間の離隔距離であるため、送電線の直近にメジャーの上端部(測定始点)を位置させた状態で、当該測定始点から樹木頂部までの距離を目盛りから読み取れればよい。
請求項5の発明は、請求項1乃至4において、前記バルーンの適所、或いは前記メジャーの適所には、送電線に係止するための電線係止手段が設けられていることを特徴とする。
バルーンは風によって安定しないため、電線係止手段を送電線に係止することにより、測定に際してバルーンを固定することが可能となる。
鏡を設けることによって電線や、送電線近接物を別の角度から観察することが可能となる。また、トランシットによる測距に際して鏡により測定光を反射させることができるので、計測地点と送電線までの距離の測定精度を高め、最終的に離隔距離の測定精度を高めることができる。
請求項7の発明は、請求項1乃至6において、前記メジャーの適所に着脱可能な重りを備えたことを特徴とする。
重りを用いて計測器具を地上の適所に安定させることにより、離間した見やすい位置から離隔距離を確認することが可能となる。
請求項8の発明は、請求項1乃至7において、前記メジャーは巻き尺式にバネ付勢されたリールによって巻取り巻出し自在に構成されていることを特徴とする。
巻出し、巻き取り操作が容易化するので、操作性を高め、またコンパクト化できるので、携帯性を高めることができる。
請求項9の発明に係る方法は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の離隔距離計測器具を用いて送電線と送電線近接物との間の離隔距離を測定する方法において、前記絶縁性伸縮パイプの上端開口から引き出したメジャー先端部の前記バルーンを前記送電線に向けて上昇させるステップと、前記メジャー先端部が前記送電線と同等の高さ位置に達した状態で停止させるステップと、前記メジャーを構成する目盛りを手掛かりに前記離隔距離を測定するステップと、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ガスを封入したバルーンの浮力を利用して長尺のメジャーを送電線まで上昇させることにより、離隔距離を目視、望遠鏡、トランシット等を用いて正確に測定することができる。このため、個人差がなく、常に安定した精度で測定できる。また、折り畳みによりコンパクト化できるので、山岳地帯、森林遅滞を巡視する場合にも携帯した離隔距離計測器具が邪魔となることがない。
図1(a)及び(b)は夫々本発明の一実施形態に係る離隔距離計測器具の使用状態、及びコンパクト化状態を示す図である。
この離隔距離計測器具1は、電力会社の巡視員等が高圧送電線とその下方に位置する樹木等の送電線近接物との間の距離が安全上許容される程度に十分に離隔しているか否かを判断するための手段である。
離隔距離計測器具(以下、計測器具、という)1は、空気よりも比重の小さい気体(以下、ガス、という)を封入したバルーン2と、バルーン2に取付けられてバルーンが大気中に浮上しているときに地上へ向けて垂れ下がるメジャー10と、を備えている。
バルーン2は、ゴム等の弾力性と十分な強度を有した材料にて構成され、その内部にはヘリウムガス等の空気よりも比重の小さい気体が封入されることによって十分な浮力を発生させるように構成されている。バルーンの適所に設けた注入口3から(b)に示した如き携帯用のガスボンベ15を用いてガスを注入することにより使用可能な状態となる。注入口3には逆止弁を設けるか、キャップを設けたガスが漏れ出ないように構成する。即ち、巡視員が山岳地帯や森林地帯を移動する際には、バルーン2にガスを注入しない状態でメジャー10と共にコンパクト化してバッグ等に収納して携帯する。一方、離隔距離を測定する場合にはガスボンベ15からバルーン2内にガスを注入して十分な浮力を発生させた上で実使用に供する。バルーン内のガスを抜く場合には、注入口3から排出させればよい。
なお、バルーン2中に常時ガスを封入した構成とし、現場でのガスの注入作業を省略できるようにしてもよい。
目盛り12は、メジャー10の上端部から下方に向けて記載されており、例えば20m程度離間した位置から目視、或いは望遠鏡等を使用して確認できる程度の大きさ、目立つ着色を備えた目盛り線や数字から構成する。また、目盛り12の間隔は、例えば10cm間隔、20cm間隔等々、任意に設定する。
許容される離隔距離が通常4〜6m程度であるとすれば、10cm程度の誤差は許容範囲内であるが、20cm程度の誤差は許さない程度の精度にて測定するようにすれば、一年に一回の巡視により、送電線の放電による樹木等の火災を十分に防止することが可能となる。
メジャー10の下端部には必要に応じて把持部20を設けて、バルーンが浮上している際に巡視員が保持できるようにする。
更に、図2(b)のように把持部20をフック等の係止手段22とし、この係止手段22を巡視員のベルト、衣服、或いは測定位置近傍の樹木等にメジャー10の下端部を係止し、バルーンの浮力により飛翔して行かないように構成してもよい。
或いは、メジャー10の適所に図示しない重りを着脱自在に取り付けることにより、測定時にメジャー10の一部が地上、その他の場所に定置されるように構成すれば、計測器具1を浮上させた位置よりも十分に離間した見やすい位置から離隔距離を目視測定できる。
この計測器具1を用いた電線と樹木頂部との離隔距離の測定は、図3のようにして実施される。即ち、地面30に植立した樹木31の上方に送電線35が通っている場合、巡視員が離隔距離Lを、計測器具1を用いて測定するためには、バルーン2内にガスが注入された状態にある計測器具1のメジャー10の適所、或いは把持部20を把持した状態でバルーン2を送電線35に向けて浮上させる。そして、図示のようにバルーン2の下部(メジャー10の上端部)が電線35の高さ位置に達した状態で、メジャー10に表示された目盛り12を目視により確認することにより、離隔距離Lを確認することができる。具体的には、送電線の高さ位置にあるメジャー10の上端部から、樹木31の頂部に相当する位置にある目盛り12までの距離を読取ることにより、離隔距離Lを高い精度で正確に知ることができる。
また、バルーン2の適所、或いはメジャー10の適所に、送電線35に一時的に係止するためのフック等の電線係止手段5を設けることにより、図2に示した測定時にメジャー10に設けた各目盛り12の上端部(ゼロ目盛りの部分)が送電線35と同等の高さ位置に固定され得るように構成するのが好ましい。また、電線係止手段5を送電線35に係止することにより、メジャー10に対してテンションを付与し易くなり、離隔距離を正確に測定することが可能となる。なお、電線係止手段5は、測定時には送電線35に対して容易に係止できる一方で、測定終了時には送電線からの取り外しが容易となるように構成する。電線係止手段5がフック形状の場合には、測定時にはフックが送電線に引っ掛かった状態を維持して測定を行い、測定終了時にはバルーンを少し浮上させて送電線からフックを離脱させてからメジャー1を下方へ引き戻すことにより回収する。
なお、上記実施形態に係る本発明の計測器具を用いた離隔距離の測定方法では、バルーン2を浮上させて送電線35の高さ位置をメジャー10の上端部に合わせた状態を維持しつつ、目視により樹木頂部に相当する目盛りを読取ったが、これ以外の測定方法も実施可能である。即ち、例えばメジャー10の上端部を送電線の高さ位置に合わせた状態で巡視者の手元の目盛りを見て送電線の高さ位置を割り出してから、メジャー上端部を樹木頂部まで下降させた状態で巡視者の手元の目盛りを見て樹木頂部の高さ位置を割り出し、送電線の高さから樹木頂部の高さを減じることにより、離隔距離Lを算出することができる。
直接目視によって送電線や樹木頂部の状況を確認しにくい場合であっても、鏡6の面に投影される上方、或いは直近位置から見た樹木頂部の状況を目視、或いは望遠鏡を用いて確認することにより正確な状況把握が可能となる。
例えば、鏡を樹木や電線に近づけて観察することにより、樹木が焦げてないか、電線が損傷してないか等をより容易、且つ正確に確認することができる。
なお、バルーン2の外面に鏡6を取り付ける場合にはバルーンの外周面全体に渡って設ける。鏡6の材質としては樹脂からなるシート状の鏡面部材が好ましい。
図4(b)(c)は鏡の他の構成例を示しており、メジャー10の上端部に多角柱状の多面鏡から成る鏡6を設けることにより、鏡6を中心とした360°の範囲を観察することが可能となる。
図5は図4に示した鏡付きの計測器具を利用してトランシット(光波測距儀)40により離隔距離を測定している状態を示す図である。この実施形態では、トランシット40を設置した基準位置から照射した測定光によって、基準位置と鏡6(送電線35)との間の距離L1、基準位置と樹木頂部との間の距離L2を夫々測定し、各測定結果に基づいて離隔距離Lを算出することができる。基準位置と鏡6との間の距離は、鏡6にて反射しトランシットに戻ってくる光に基づいて高精度に測定することができる。また、基準位置と樹木頂部との間の距離は、樹木頂部にて反射しトランシットに戻ってくる光に基づいて測定することができる。
測定地点における風が強いためにバルーンが煽られたり、樹木などの障害物があってバルーンを上昇させにくい場合に、所定長に伸長させた絶縁性伸縮パイプ40内にメジャー10を挿通させ、絶縁性伸縮パイプ40の上端部から延びるメジャーを介してバルーン2を上昇させる。このような使用方法を実施することにより、メジャー10が風によって煽られて離隔距離を測定できなくなったり、樹木等に引っ掛かりを起こすことを回避しつつ、バルーン2を含むメジャーの上部を送電線35まで浮上させることが可能となる。例えば、風力により計測器具1を垂直に上昇させて送電線まで届かせることができない場合であっても、メジャー10を途中まで絶縁性伸縮パイプ40によってサポートすることによって、絶縁性伸縮パイプ40の上端部から上方に延びたメジャー10の先端に止着されたバルーン2に設けた電線係止手段5を送電線に引っ掛けてメジャー10の姿勢を垂直に制御した上で測定することが可能となる。また、測定者と送電線との間に樹木の枝葉等が突出しているために計測器具1を送電線まで届かせることができない場合であっても、樹木の枝葉が密集している範囲を絶縁性伸縮パイプを貫通させることにより、枝葉が密集していない高所より上方にてバルーンを上昇させて送電線に達するように操作することが可能となる。
従って、この場合、絶縁性伸縮パイプ40の伸長時の長さは、送電線、或いは樹木の頂部に至らない長さで十分であり、短縮時のパイプ長を従来寸法である2mよりも大幅に短くすることができるので運搬時に障害となることが少なくなる。
なお、上記実施形態では送電線近接物として成長することによって送電線との間の離隔距離が経時的に短縮する樹木を例示したが、送電線の高さ位置が経時的に、或いは事故等によって低下するケースもあり得る。この場合には、建造物等の高さが変動しない物体との間の離隔距離が問題となり、測定する必要が生じる。本発明の測定器具はこのような場合にも適用することができる。
Claims (9)
- 空気よりも比重の小さい気体を封入したバルーンと、該バルーンに取付けられて該バルーンが大気中に浮上しているときに地上へ向けて垂れ下がるメジャーと、該メジャーの一部を挿通させて保持する絶縁性伸縮パイプと、を備えたことを特徴とする離隔距離計測器具。
- 前記バルーン内に前記気体を出入れ自在に構成したことを特徴とする請求項1に記載の離隔距離計測器具。
- 前記メジャーは、携帯可能となるように折り畳み自在、或いは巻き取り自在な紐、ワイヤ、帯を含む長尺部材から成り、該長尺部材にはその長手方向に沿って所定ピッチにて目盛りが形成されていることを特徴とする請求項1、又は2に記載の離隔距離計測器具。
- 前記目盛りは、少なくとも前記バルーンに取り付けられた前記長尺部材の上部から下方へ向けて所定に範囲に亘って形成されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の離隔距離計測器具。
- 前記バルーンの適所、或いは前記メジャーの適所には、送電線に係止するための電線係止手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の離隔距離計測器具。
- 前記バルーンの適所、或いは前記メジャーの適所には、鏡が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の離隔距離計測器具。
- 前記メジャーの適所に着脱可能な重りを備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の離隔距離計測器具。
- 前記メジャーは巻き尺式にバネ付勢されたリールによって巻取り巻出し自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の離隔距離計測器具。
- 請求項1乃至8の何れか一項に記載の離隔距離計測器具を用いて送電線と送電線近接物との間の離隔距離を測定する方法において、
前記絶縁性伸縮パイプの上端開口から引き出したメジャー先端部の前記バルーンを前記送電線に向けて上昇させるステップと、
前記メジャー先端部が前記送電線と同等の高さ位置に達した状態で停止させるステップと、
前記メジャーを構成する目盛りを手掛かりに前記離隔距離を測定するステップと、を備えたことを特徴とする離隔距離測定方法。
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