本発明の撮影装置及びその制御方法、並びにプログラムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の撮影装置は、例えばビデオカメラに適用される。
[第1の実施の形態]
<全体的な概略構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮影装置の構成を示す全体的な概略図である。
同図に示すように、ビデオカメラ本体11には、屈曲光学系14が設けられている。この屈曲光学系14の主光軸14aは、ビデオカメラ本体11の鉛直方向(水平面に対して略直交する軸)に揃えて設けられている。そして主光軸14aは、初期位置で該主光軸14aを90deg屈曲させるミラー(反射面)14cにより曲げられて、物体光軸14bとなって被写体方向に向く。被写体光は、ミラー14cにより折り曲げられてCCDなどの撮像素子14iに結像する。
パンニングを行う時には、屈曲光学系14全体をパンアクチュエータ15fにより主光軸14a回りに回転させる。このようにパンニング時に回転する部材はレンズの様な円形状であるので、パンニング角度を大きくしても撮影鏡筒がビデオカメラ本体11からはみ出すことはない。
チルティングを行う時には、チルトアクチュエータ15fがミラー14d及び対物レンズ(前玉)14fを軸14d回りに回転させる。
光軸の向きを変えるために反射面の反射角を変更することは一般的である。しかしながら、本発明では反射面であるミラー14cの角度を変更するばかりではなく、その回動に併せて前玉14fを回動させている。このことを以下に詳しく説明する。
<屈曲光学系>
図2は、図1中の屈曲光学系14を示す構成図である。
この屈曲光学系14は、全体で4群の高倍率ズーム光学系を形成している。ここで、前玉14fとミラー14c及び貼り合せレンズ群14jにより第1群が構成されている。この第1群とさらに、変倍のために主光軸14aに沿って移動する第2群14kと、常時固定の第3群14lと、ピント調整のために主光軸14aに沿って移動する第4群14mとにより、屈曲光学系14は成り立っている。
物体光軸14bをチルトさせるためには、ミラー14c及び前玉14fを軸14d回りに回動(矢印14e)させる。
ミラー14cの被写体側にも前玉14fが設けられている理由は、前玉14fで被写体からの主光線の傾角を小さくしてミラー14cに導くので、ミラーを小さく抑えることができるためである。
本実施の形態においては、ミラー14cを回動させることでチルティングを行う構成であるが、チルティング(例えば上下10deg)を行う時に、その撮影画角全てを十分にカバーするミラー14cを設定するとミラー14cが更に大きくなってしまう。そのため、被写体からの主光線の傾角を小さくしてミラー14cに導くレンズが極めて重要になる。
このようにミラー14cの対物側に前玉14fを設けると、ミラー14cを回動したときの物体光軸14bは前玉14fの中心を通らなくなり、画質が大幅に劣化する。それを解決するためには、ミラー14cによる対物光軸14bの変化に前玉14fの中心を追従させる様にミラー14cを駆動すればよい。
ここでミラー14cの回動角度をθとすると、それによる物体光軸14bの角度変化は2θになる(反射系のため)。そこで、それを補正するためには前玉14fをミラー14cの回動軸中心に2θ回動させることで画質の劣化を防ぐことができている。
ところで、反射面の対物側にレンズを配置した屈曲光学系自体は、従来より知られている(例えば、特開平8−248318号公報、特開2000−75138号公報、特開2003−219236号公報)。これら文献では、撮影方向のチルティングは想定していないので、本実施の形態のように反射面を回動したり、それに合わせて前玉を回動させる構成は開示されていない。さらに、これらの特許文献においては、反射面が全てプリズムで構成されている。これは、プリズムの様な光学ブロックを用いた方が光路が短くできてコンパクトになるメリットがあるためである。
しかし、本実施の形態の様に反射面を回動させる場合には、ミラー14cを用いないと光学的な画質管理は難しい。つまり、プリズムを用いると光学的に成り立たせることが極めて難しくなる。この点について図3を用いて説明する。
図3は、屈曲光学系の別の例を示す構成図であり、図2の屈曲光学系14のミラー14cの代わりにプリズム14nを用いた例を示している。同図において、貼り合せレンズ群14jとプリズム14nの対抗面の形状、及び前玉14fとプリズム14nの対抗面の形状は、プリズム14nを軸14d回りに回動させると変化してしまう。これは、プリズム14nの回動により光学劣化が起きることを意味する。
図4は、図3の問題点を解決する方法を説明する説明図である。ここで、例えば図4の様に、プリズム14nと前玉14fの対向面の両端面、及びプリズム14nと貼り合せレンズ群14jの対抗面の両端面を、軸14dを中心とする曲率面とすると、プリズム14nの回動に併せて両対向面形状は変化しないので、プリズムの回動による画質劣化は起きないことになる。
しかし、そのような面形状を規定すると、その補正のためのレンズ面などが必要であり、小型な高倍率ズーム撮影系として光学的に成り立たせることは難しくなる。
そのような理由により本実施の形態では、プリズム14nではなく、ミラー14cを用いてチルティングを行う様にしている。
<テルティング駆動連動機構>
次に、テルティング駆動連動機構について説明する。
図5(a),(b)は、第1の実施の形態におけるチルティング駆動連動機構を示す機構図である。このチルティング駆動連動機構は、上記ミラー14cと前玉14fを駆動する機構であり、同図(a)は図2で示した屈曲光学系の方向から見た側面図、同図(b)はその上面図である。
図5(a),(b)において、前玉14fを保持する前玉保持枠15aは、軸14dで軸支されており、前玉14fと共に軸14d回りに矢印14e方向に回転可能である。
前玉保持枠15aの一方の側面には、フラットコイル15bが固定されている。このフラットコイル15bと対向して、対の永久磁石15c及び対の永久磁石15cの磁路を形成するヨーク15dが設けられており、対の磁石15c及びヨーク15dは、チルティング方向14eには固定されているが、パンニング方向14gには屈曲光学系14と共に回動する固定部に取り付けられている。そのため、フラットコイル15bに電流を与えると、前玉保持枠15aは矢印14e方向に回動駆動される。即ち、フラットコイル15b、対の永久磁石15c及び対のヨーク15dにより、チルティングアクチュエータ15fは構成されている。
ミラー14cは、ミラー保持枠16aの取り付け部16cに取り付けられており、前玉保持枠15aと同様に軸14dで軸支されて、ミラー14cと共に軸14d回りに矢印14e方向に回転可能である。
伝達レバー(連動機構)17aは、軸17b回りに回転可能に軸支されている。この伝達レバー17aの先端近傍に設けられている長穴17cには、前玉支持枠15aから延出する駆動ピン15e、及びミラー保持枠16aから延出する被駆動ピン16bが共に嵌合している。
そして、伝達レバー17aは、駆動ピン15eの軸14d回りの回動につれて軸17b回りに回転させられ、それにつれて長穴17cが被駆動ピン16bを押すことでミラー保持枠16aも軸14d回りに回転させられる。
ここで、軸17bと駆動ピン15eまでの距離と軸17bと被駆動ピン16bまでの距離の比(レバー比)と、軸14dと駆動ピン15eまでの距離と軸14dと被駆動ピン16bまでの距離の比(半径比)を例えば、
レバー比は、√2:1
半径比は、 1:√2
というように適切に設定すると、前玉保持枠15aの回動に対してミラー保持枠16aの回転を半分に減速できる。
前述した様に、ミラー14cの回動角度をθとすると、その反射による物体光軸14bの角度変化は2θになる。そのため、前玉14fの位置を物体光軸と揃えるためには前玉を2θ回動させる必要があるので、上記レバー比、半径比でミラー14cと前玉14fの回転量を調節している。
ここで、回転量の多い前玉保持枠15aの方に駆動源(フラットコイル15b)を設け、それを減速してミラー保持枠16aに伝達している理由について説明する。
駆動源は、例えば不図示の位置検出センサなどで位置フィードバック制御すれば精密に駆動制御することができるし応答性も高い。しかしながら、回転量の少ないミラー保持枠16a側に駆動源を設けると、回転量が少ない分、駆動誤差が大きくなり、その誤差を更に伝達レバー17aで拡大するために前玉保持枠15aの駆動誤差が大きくなってしまう。
後述するが、ミラー14c及び前玉14fには、ビデオカメラ本体11に設けられた角速度センサなどの振動検出手段で手ブレを検出してその出力に基づいて駆動する機能も設けられており、これによって、チルティング方向の手ブレの影響による画質劣化を小さくしている。
そのためには、前玉14f及びミラー14cを精密且つ高応答に駆動制御する必要があり、駆動量の多い前玉保持枠15aを駆動して、それを減速してミラー保持枠16aに伝えるようにしている。
<パンニング駆動連動機構>
次に、パンニング駆動連動機構について説明する。
図6及び図7(a),(b)は、パンニング駆動連動機構を示す機構図である。このパンニング駆動連動機構は、屈曲光学系14が内包された鏡筒18を駆動する機構であり、図6は、屈曲光学系14を図2と同じ方向から見た外形側面図であり、図7(a)は図6のA−A断面図であり、図7(b)は図7(a)の上面図である。
図6で明らかなように、図5(a),(b)で示した前玉保持枠15a、及びミラー保持枠16a(図6では見えない)は、鏡筒18の回転保持部18aにおいて軸支されており、同時に回転保持部18aは伝達レバー17aを軸17b回りに軸支している。
また、回転保持部18aには、図6では不図示である永久磁石15cと、永久磁石15cが吸着されたヨーク15dとが取り付けられているので、前玉保持枠15aに取り付けられたフラットコイル15bとの関連により前玉保持枠15aを軸14d周りに回動させることができる。
鏡筒18の底部には、パンニングアクチュエータ19が設けられている。パンニングアクチュエータ19は、ハウジング19aに保持された基盤19bを有し、コイル基盤19bにはフラットコイル19cが設けられている。
図8(a),(b)は、パンニングアクチュエータの構成図であり、同図(a)は、コイル基盤19bを上面より見たコイル配置図、同図(b)はその着磁配置図である。コイル基盤19bには、4個のフラットコイル19cが円周に並んで配置されている。フラットコイル19cと対向して永久磁石19dが設けられており、永久磁石19dは、図8(b)に示す様に着磁されている。
19e、19fは、各々永久磁石19dの磁束を効率的に利用するためのヨークであり、このヨーク19e、19fにより永久磁石19dは閉じた磁路を形成し、フラットコイル19bはその磁路内に配置されることになる。軸19gは、ハウジング及びコイル基盤の軸受け部19h、19iに回転可能に軸支されており、ヨーク19e、19fと固定されている。そのため、ヨーク19e、19fと永久磁石19dは、ハウジング19aに対して軸19g回りに回転可能になっている。
ここで、フラットコイル19cに電流を流すと、図8(a)のフラットコイル19cの放射状にコイルが配列された駆動発生領域19c1と永久磁石の着磁方向の関係により、軸19g回りに回転駆動力が発生する。但し、このままでは永久磁石19dの回転につれて駆動発生領域19cと対向する着磁方向が変わってくるので、いずれは回転が止まってしまう。
図8(a)に示す様に、コイル基盤19bには、ホール素子などの磁気検出素子19jが設けられており、軸検出素子19jが永久磁石19dの回転を検出すると、それに併せてフラットコイル19cに流す電流の向きを逆にする。これによって、ヨーク19e、19fは回転を継続する。
このような構成のパンニングアクチュエータ19は、ハウジング19aが不図示のビデオカメラ本体11に固定されており、ヨーク19eが鏡筒18に固定されているために、フラットコイル19cに電流を流すことで鏡筒18はパンニング駆動を行う。
図7(a)の断面図において、第1群の中の貼り合せレンズ群14jは1群鏡筒18bに保持される。同様に第2群は2群鏡筒18c、第3群は3群鏡筒18d、第4群は4群鏡筒18eに保持されている。ローパスフィルタ14oはフィルタ枠18fに取り付けられ、撮像素子14iに固着されて撮像素子14iを密閉状態にしてゴミの侵入を防いでいる。
撮像素子14iは撮像基盤113に取り付けられており、撮像基盤113はパンニングアクチュエータ19と同様な構成の補正アクチュエータ114により鏡筒18内で主光軸14a回りに回動可能に支持されている。
ここで、補正アクチュエータ114は、画面の傾きを補正する目的で設けられており、後述する姿勢センサ120でビデオカメラ本体の傾き(鉛直方向に対する傾き)を検出し、その出力に基づいて作動することで画面の傾き補正を行う。
パンニングアクチュエータ19は、本発明の目的である自動パンニングのために設けられているが、ビデオカメラ本体11に設けられた角速度センサなどの振動検出手段で手ブレを検出し、その出力に基づいて作動する機能も設けられており、これによって、パンニング方向の手ブレの影響による画質劣化も小さくしている。
3群鏡筒18dは鏡筒18に固定されているが、2群鏡筒18c及び4群鏡筒18eはガイド軸110a上を摺動可能に支持されている。ガイド軸110aは鏡筒18内で図示されるように支持されており、また鏡筒18に支持される回り止め軸110bによって、2群鏡筒18c及び4群鏡筒18eはガイド軸110a回りの回転を規制されている。
2群鏡筒18cは、リードスクリュー111bと噛み合っており、ズームアクチュエータ111aによりリードスクリュー111bが回転させられるのにつれて主光軸14aに沿って変倍のための移動を行う。ズームアクチュエータ111aは例えばステップモータなどであり、入力する駆動パルスを制御することで2群鏡筒18cを任意の位置に精密に移動、停止させることができる。
4群鏡筒18eには、断面コの字型のヨーク112c(実際には円環形状)とその内部に吸着された永久磁石112bを有しており、ヨーク112cと永久磁石112bで形成される磁路内にボイスコイル112aが配置されている。ボイスコイル112aは、固定されている3群鏡筒18dに取り付けられており、ボイスコイル112aに電流を流すことで4群鏡筒18eは主光軸14aに沿ってフォーカスのための駆動を行う。
ここで、3群鏡筒18dには、ホール素子などの磁気検出素子112dが設けられており、4群鏡筒18eに設けられた永久磁石112bの磁気を検出することで4群鏡筒18eの位置を監視している。そして、磁気検出素子112dの出力を負帰還してボイスコイル112dに与えることで4群鏡筒18eの駆動制御を行っている。
<ビデオカメラ本体の外観>
図9は、上記した屈曲光学系14を有するビデオカメラ本体11の外観図である。前玉14fとミラー14c(図9では不図示)とで形成される屈曲光学部は、透明の保護部115に保護されており、保護部115の中鏡筒18は主光軸14a回りのパンニング動作を行うと共に、前玉14f及びミラー14cはチルティング動作を行う。
パンニングを行う時には、パンニングスイッチ116a、116aを操作する。これらスイッチ116a、116bはその操作力も検出しており、例えばスイッチ116aを弱く押すと撮影方向はゆっくりと右回りに変化していき、強く押すと高速に右回りに変化する。同様にスイッチ116bを弱く押すと、撮影方向はゆっくりと左回りに変化していき、強く押すと高速に左回りに変化する。
チルティングスイッチ117a、117bに関しても同様であり、スイッチ117aを弱く押すと撮影方向はゆっくりと上方向に変化していき、強く押すと高速に上方向に変化する。また、スイッチ117bを弱く押すと撮影方向はゆっくりと下方法に変化していき、強く押すと高速に下方法に変化する。
このような外観を有する本実施の形態の撮影装置の最大の特徴は、手持ちで安定したパンニング撮影が行えることであり、撮影者はビデオカメラ本体11を手持ちで一定方向に構えてパンニングスイッチ116a、116bを操作すると極めて滑らかなパンニング、チルティング撮影がビデオカメラ本体11を動かさずに行える。
また、手持ちの時の手ブレに関しても、パンニングアクチュエータ19及びチルティングアクチュエータ15fが補正してくれるので、安定した画面を得ることができる。
<第1の実施の形態に係る電気的なシステム構成>
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る電気的なシステム構成を示すブロック図であり、本発明と関係ない要素に関しては省略して図示している。
制御マイコン118はビデオカメラ本体11の全体の制御を行う。制御マイコン118には、パンニングスイッチ116a、116b、及びチルティングスイッチ117a、117bの信号が入力される。
さらに、ビデオカメラ本体11に加わるパンニング方向のブレを検出する振動ジャイロなどの角速度計で構成された振動検出手段であるパンジャイロ118aの出力、及びチルティング方向のブレを検出する振動ジャイロなどの角速度計で構成された振動検出手段であるチルトジャイロ118bの出力も、適宜増幅、DCカットなどのアナログ演算処理を行った後で、制御マイコン118に入力される。
また、ビデオカメラ本体11が重力方向に対してどの程度傾いているかを判別する傾斜センサなどで構成された姿勢センサ120の出力も、制御マイコン118に入力されている。
そして、制御マイコン118は、入力されるパンニングスイッチ116a、116b、チルティングスイッチ117a、117b、パンジャイロ118a、及びチルトジャイロ118bなどからの情報に基づいて、パンドライバ119aを指示してパンニングアクチュエータ19を駆動し、同様にチルトドライバ119bを指示してチルティングアクチュエータ15fを駆動する。また、姿勢センサ120の信号に基づいて、補正ドライバ190cを指示して補正アクチュエータ114を駆動する。
前述した様に、制御マイコン118は、パンニングスイッチ116a、116b及びチルティングスイッチ117a、117bの信号により、パンニング撮影やチルティング撮影を行うばかりでなく、パンジャイロ118aの信号に基づいてパンニングアクチュエータ19を駆動してパンニング方向のブレ補正を行い、チルトジャイロ118bの信号に基づいてチルティングアクチュエータ15fを駆動してチルティング方向のブレを補正している訳であるが、パンニングジャイロ118a、チルティングジャイロ118bの役割は単にブレを検出するだけではなく、新たな機能も付加されている。この新たな機能について、以下図11を参照して説明する。
<第1の実施の形態のパンニング動作>
図11は、第1の実施の形態に係るパンニング動作を説明する説明図である。
撮影開始時には、ビデオカメラ本体11は撮影光軸を14a1方向に向けており、その後、被写体を追うにつれて撮影者自身がビデオカメラ本体11を回して撮影光軸が14a2に移ったとする。その後、元の撮影位置に復帰させたいと思っていても、例えば撮影背景の模様が少なく且つ望遠撮影を行っている場合には、ビデオを覗きながらの初期位置復帰は大変困難である。
そのような撮影シーンとして例えば、野球を録画しており、ホームベースからランナーが一塁に疾走したのを追尾した後で、直ぐに構図をホームベースに復帰させる、といった撮影シーンがある。このようなシーンでは、多くの場合かなり望遠の撮影をしており、観察画角が狭く且つ背景無地であるので、ホームベースに復帰させることは大変難しい。
それを解決する方法としては、一塁録画が終わった後で一旦画角を広くして(ズームワイドにする)ホームポジションを確認し、再パンニングを行った後で画角を元に戻せば良い。しかし、そのような方法では毎回画角を変更する手間が必要であるし、再生された画像も見苦しいものになってしまう。
そこで、図11では、始めのパンニング(一塁に追うまで)を撮影者が自分で行っていた時、それを初期位置に戻す要求が来た場合にはパンニングアクチュエータ19により撮影方向を初期位置(撮影光軸14a1)に復帰させる様にしている。
より具体的には、撮影者の手動パンニング121aの時にそのパンニング方向と量をパンジャイロ118a及びチルトジャイロ118bで計測しておき、初期位置復帰時にはその方向と逆方向に同量だけ撮影光軸が戻るようにパンニングアクチュエータ19を駆動している。そのため、撮影画角が狭くて(望遠のため)初期位置が確認できないような撮影の条件でも、正確に且つ高速に撮影方向を初期位置に戻すことができる。
図12は、第1の実施の形態に係るパンニング検出及びパンニング復帰動作のタイミングチャートであり、上記動作時の各信号の状態を表している。横軸は経過時間であるが縦軸は各項目ごとに異なっているので項目ごとに説明する。
先ず、ジャイロ角速度については、縦軸は角速度であり、波形122は、手動パンニングの開始と共に加速し、その後一定速度になった後でパンニング終了に伴って減速している状態を示している。
次の演算角度は、上記角速度の積分値(パン角度)であり、縦軸は角度である。上記波形122を積分すると波形123の様に次第に角度が変化し、最後は一定角に収まる。
パン角記憶信号124は、ジャイロ角速度が増大(加速)し、その後減速して所定値以下になった時に発生するようになっており、パン記憶信号124が発生すると、その時の演算角度123の値を記憶する様にしている。
一般に、ジャイロなどの角速度計の信号はパンニングをしやすくする目的や信号安定化の目的でDCカットを行っている。そのために波形123はこの後の経過時間と共に再び減少し、ゼロになってしまう。そこで、初期位置復帰信号125が発生するまで、波形123で求められた演算角度を保持するためにパン記憶信号124を発生させて、演算角度の記憶を行っている。
そして、撮影者操作により初期位置復帰信号が発生すると記憶してある演算角度に対応する信号でパンニングアクチュエータ19を作動させることで、撮影光軸を元に戻し(波形126、縦軸はパンニング角度)、記憶されている演算角度だけ撮影光軸を復帰させると、ジャイロの演算信号をリセットする信号127を出力して、演算値をリセットする。これは、実際にはビデオカメラ本体11は動いていないのに撮影光軸だけが変わっているので、今まで演算してきたジャイロの演算値と食い違いが生じてしまうのを防ぐためである。
なお、実際は、パンジャイロ118aとチルトジャイロ118b共に同様な処理を行い、各々の方向に関して演算角度の記憶を行っているためにパンニングとチルティングの合成の様な撮影光軸変更が行われた場合においても、初期位置への復帰は安定して行える。
以上の動作について図13のフローチャートを参照して説明する。
図13は、第1の実施の形態に係るパンニング復帰動作を示すフローチャートであり、このフローは、ビデオカメラ本体11の電源が入った時点でスタートする。
ステップS101では、パンニング開始まで待機し、パンニング開始と共にステップS102に進む。なお、パンニング開始の検出はジャイロで行っており、ジャイロ角速度が所定値以上であり、且つその積分値(角度)が所定値に達した時点でパンニングが開始されたと判定する。
ステップS102では、パンニングが終了するまで待機しており、パンニングが終了するとステップS103に進む。パンニングの終了は、ジャイロの角速度が所定値以下になることで検出している。
ステップS103では、パン角記憶信号を発生させて、パンニングの角度(角速度の積分値)を制御マイコン118に記憶する。続くステップS104では、初期位置復帰操作がなされたか否かを判別し、操作がなされた場合はステップS105に進み、操作されない場合はステップS108に進む。
ステップS105では、初期位置復帰操作を受けてパンニングアクチュエータ19やチルティングアクチュエータ15fを駆動して復帰を開始する。次のステップS106では、復帰が完了するまで待機し、復帰完了でステップS107に進む。ステップS107では、ジャイロ演算のリセットを行いステップS101に戻る。
一方、ステップS104で初期位置復帰操作がなされていない場合は、ステップS108に進む。ステップS108では、更にパンニングが開始されているか否かを判別しており、更にパンニングが開始されている場合にはステップS102に戻ってパンニング終了まで待機し、更にパンニングが開始されていない場合にはステップS104を循環して初期位置復帰操作まで待機する。
更なるパンニングが開始された場合には、ステップS103でパンニング角度を記憶するときに、前回の記憶値に対して累積したパンニング角度を記憶する様にしている。
このような構成を採ることで、高速且つ確実に初期位置に復帰できる構成になっている。
<パンニング補正>
次に、図10で姿勢センサ120が設けられている理由を説明する。
ビデオカメラ本体11を構えて手持ちで撮影している場合には、ビデオカメラ本体11は鉛直方向に対して若干傾いていても気づかない場合がある。しかし、このような傾きは大きなモニタで再生するときには非常に気になってしまう。ビデオカメラ本体11の小型化に伴い上記の様な傾きに気づかない撮影が増えてきており問題になっているが、本実施の形態においては、姿勢センサ120を搭載して傾きを検出し、それに合わせて補正アクチュエータ114を主光軸14a回りに補正駆動して傾き補正を行っている。そのため、常に安定した撮影ができ、良好な再生画面が得られる。
更に、ビデオカメラ本体11が鉛直方向に対して傾いている場合には以下の問題も出てくる。
図14(a),(b)は、正常なパンニングを説明する説明図である。即ち、ビデオカメラ本体11が鉛直に沿った状態で本実施の形態のパンニング撮影(パンニングアクチュエータ19を駆動した自動パンニング)を行った場合において、その撮影コマを抜き出して表した図である。図14(a)に示す例では、背景142に関して各コマ128a〜128dは水平方向にパンニングを行うことができている。
しかし、例えばビデオカメラ本体11を鉛直方向から若干傾いて保持した状態でパンニング撮影を行った場合には、図14(b)に示すように、パンニングにつれて撮影コマが水平からずれていき、コマ129dでは背景142に対して大きくずれてしまっている。
そこで、本実施の形態では、このように鉛直方向に関して傾いた状況でパンニング撮影を行った場合でも、画面を補正する構成になっている。姿勢センサ120は、ビデオカメラ本体11が鉛直方向に対してどの程度傾いているかを検出できるので、パンニング角度に応じて各コマがどれだけ水平からずれていくかを演算することができる。そのため、その演算結果に応じてチルティングアクチュエータ15fを補正駆動して画面のズレを補正する。更に、補正アクチュエータ114により、撮像素子18fを主光軸14a回りに補正駆動することで画面の傾きを補正している。
図14(b)において、各コマ129a〜129dは、チルティングアクチュエータ15fを用いて矢印141b、141c、141d方向に移動させられ、補正アクチュエータ114を用いて矢印130a〜130d方向に回転補正させられる。そのため、破線で示す画面の様に、図14(a)と同じパンニング撮影を行うことができる。
図15は、第1の実施の形態に係るパンニング補正動作を示すフローチャートである。
このフローは、ビデオカメラ本体11の電源を入れると同時にスタートしている。
先ずステップS111では、パンニングスイッチ116a、116bが操作されるまで待機している。次のステップS112では、姿勢センサ120の信号を制御マイコン118が読み込み、鉛直方向に対してどれだけ傾いているかを求める。
そしてステップS113では、求めた傾き角に関して画面の補正が必要か否かを判定し、補正が必要な場合にはステップS114に進み、そうでない時にはステップS116に進む。
ステップS114では、求められた傾きに関して各パンニングコマに対して画面をどれだけチルティング(矢印141b〜141d)及びローリング(矢印130a〜130d)すればよいかを演算する。さらに、ステップS115では、その演算結果に基づいて、撮影鏡筒18に対する、パンニング駆動、チルティング駆動、及びローリング駆動を行う。
ステップS117では、パンニングスイッチ116a、116bのオフ操作まで待機する。即ち、この間、撮影鏡筒18に対する、パンニング駆動、チルティング駆動及びローリング駆動を行っている。ステップS117でパンニングスイッチ116a、116bのオフ操作が行われると、ステップS118に進む。
ステップS118では、パンニング撮影及びその補正(チルティング、ローリング)を停止する。ステップS113で求めた傾き角に関して画面の補正が不要の場合はステップS116に進む。ステップS116では、通常のパンニング撮影(パンニングアクチュエータ19だけを使用した撮影)を開始し、ステップS117に進む。
このように、ビデオカメラ本体11を傾けて保持している場合においても、それを補正するパンニング撮影を行うので、常に安定した画面を得ることができる。
以上のように本実施の形態においては、屈曲光学系を採用して撮影光軸とパンニング回転軸とを揃えることでパンニングした時にも撮影鏡筒12がビデオカメラ本体11よりはみ出ない様にできることに着目し、更にチルティングに関しても光軸屈曲用の反射面と撮影レンズとを協調駆動することで撮影鏡筒の小型化を実現している。
詳細には、複数のレンズ(前玉14f、貼り合せレンズ14j、第2群レンズ14k、第3群レンズ14l、第4群レンズ14m)とその間に配置されるミラー14cとにより構成される撮影光学系(屈曲光学系14)を有する撮影装置において、複数のレンズの中で所定のレンズ(前玉14f)或いは所定レンズ群(今までは前玉14fの様に単レンズで説明していたが、ミラーの物体側に複数のレンズがあっても良い)をミラーの倍回動させて撮影方向を変更する構成になっており、所定のレンズ或いは所定レンズ群をミラーの倍回動連動させる連動機構(図5(b)、伝達レバー17a)を設けている。
また、連動機構は、ミラーと所定のレンズ或いは所定レンズ群のうち可動量の多い部材(前玉保持枠15a)を減速して可動量の少ない部材(ミラー保持枠16a)に伝達させる構成であり、例えば所定のレンズ或いは所定レンズ群の駆動を半分に減速してミラーの回動に用いる構成になっている。
これらによりパンニング時にも大型化せず、更に小型で高性能なチルティング撮影鏡筒を実現した。
また、撮影光学系(屈曲光学系14)と、撮影光学系を光軸(物体光軸14b)と直交する平面の異なる第1(パンニング方向)、第2(チルティング方向)の方向に走査する第1(パンニングアクチュエータ19)、第2(チルティングアクチュエータ15f)の走査手段と、撮像面を光軸回りに回動させる第3(補正アクチュエータ114)の走査手段と、撮影光学系の光軸回りの姿勢を検出する姿勢検出手段120とを有し、姿勢検出手段信号に基づき第1、第2、第3の走査手段を協調動作させる駆動制御手段を設けて安定したパンニングを実現した。
また、撮影方向の軌跡を記録する軌跡記録手段(パンジャイロ118a、チルトジャイロ118b)と、光学系を走査して撮影方向を変更する撮影方向変更手段(パンニングアクチュエータ19、チルティングアクチュエータ15f)と、軌跡記録手段の信号に基づいて撮影方向変更手段を駆動制御することで撮影方向を初期位置に復帰させる撮影方向復帰手段(制御マイコン118)と、軌跡記録手段に記録される軌跡情報を撮影方向が初期位置に復帰する動作に伴いリセットする情報リセット手段(制御マイコン118)を撮影装置に設けることでパンニング撮影の失敗を未然に防ぐことができた。
また、撮影光軸に沿って配列された複数のレンズ(貼り合せレンズ14j、第2群レンズ14k、第3群レンズ14l、第4群レンズ14m)により構成される主光学部と、撮影光軸を屈曲させる反射面を有する屈曲光学部(前玉14f、ミラー14c)と、主光学部からの光束が結像する撮像部(撮像素子14i)とで構成される光学系を有する撮影装置において、主光学部及び屈曲光学部を撮影光軸回りに一体的に回動させる第1の回動手段(パンニングアクチュエータ19)と、撮像部を撮影光軸回りに回動させる第2の回動手段(補正アクチュエータ114)と、第1、第2の回動手段を連動させて駆動制御する駆動制御手段(制御マイコン118)とを撮影装置に設けることで、パンニングやブレの補正を各々確実に行うと共に、撮影光軸回りの傾き補正も行えて安定したパンニング撮影を行うことができた。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、チルティング駆動連動機構とパンニング駆動連動機構のみが上記第1の実施の形態と異なる。
<チルティング駆動連動機構>
図16(a),(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る撮影装置のチルティング駆動連動機構の機構図である。このチルティング駆動連動機構は、ミラー14cと前玉14fを連動駆動する機構であり、同図(a)は図2で示した屈曲光学系の方向から見た側面図、同図(b)はその上面図である。
図16(a),(b)において、前玉14fを保持する前玉保持枠15aは軸14dで軸支されており、前玉保持枠15aは前玉14fと共に軸14d回りに矢印14e方向に回転可能である。
前玉保持枠15aの一方の側面には、前玉保持枠プーリー15gが固定されており、モータ24と直結されたモータプーリー21と前玉保持枠ベルト23と一対一で連結されている。そのため、モータの回転角と等しい角度だけ前玉保持枠15aは回動される。
ミラー14cは、ミラー保持枠16aの取り付け部16cに取り付けられており、前玉保持枠15aと同様に軸14dで軸支されて、ミラー14cと共に軸14d回りに矢印14e方向に回転可能である。ミラー保持枠16aの一方の側面にはミラー保持枠プーリー16dが固定されており、モータ24と直結されたモータプーリー21とミラー保持枠ベルト22と一対ニで連結されている。そのため、モータの回転角の半分の角度だけミラー保持枠16aは回動される。即ち、前玉保持枠プーリー15gの半径に対してミラー保持枠プーリー16dの半径は倍に設定されている。
前述した様にミラー14cの回動角度をθとすると、その反射による物体光軸14bの角度変化は2θになるので、前玉14fの位置を物体光軸と揃えるためには前玉を2θ回動させる必要があるので、上記半径比でミラー14cと前玉14fの回転量を調節している。
モータ24の駆動は制御マイコン118の指示に従っており、チルティングスイッチ116a、116bやチルトジャイロ118bの出力に基づいてチルティングや手ブレ補正を行っている。
<パンニング駆動連動機構>
図17は、第2の実施の形態に係るパンニング駆動連動機構の機構図である。このパンニング駆動連動機構は、屈曲光学系14が内包される鏡筒18を駆動する機構であり、鏡筒18内部の機構は図7(a)で示した構造と同じであるため説明は省く。
ここで、本実施の形態の鏡筒18が図7(a)の鏡筒18と異なる点は、パンニング撮影の時に鏡筒18が固定されて回転しない点である。そのため、パンニングアクチュエータ19は廃止されている。
鏡筒18は、貼り合せレンズ群14j以降で構成される主光学部とミラー14c、前玉14fで構成される屈曲光学部とで分離されており、屈曲光学部を支持する屈曲鏡筒25は、鏡筒18に対して主光軸14a回りに相対的に回転可能に支持されている。そして、鏡筒18に設けられたパンニングモータ26のピニオン27が屈曲鏡筒25の内歯車25aと噛み合っているので、パンニングモータ26の回転に伴って屈曲鏡筒25及びその内部のミラー保持部16a、前玉保持部15aは回転する。
しかし、屈曲光学部だけの回転では撮像素子14iに対して像が主光軸14a回りに回転するだけになってしまうので、屈曲光学部の回転と同じ量だけ同期して補正アクチュエータ114が撮像素子14iを回転する。即ち、屈曲光学部及び撮像素子14iを同時に回転させることでパンニングを行っている。この方法の利点は、重い鏡筒を回動させる必要が無くなることであり、より高速応答のパンニング撮影ができる様になる。
手ブレ補正に関しても、屈曲光学部及び撮像素子14iをパンジャイロ118aの信号に基づいて同時に駆動させることでその効果を上げており、第1の実施の形態に比べて鏡筒を回転させない分だけ高レスポンスの手ブレ補正ができている。そのため、車上での撮影の様な高い周波数のブレに関しても十分な補正が可能になった。
以上の様に本実施の形態においては、複数のレンズの中で所定のレンズ(前玉14f)或いは所定レンズ群をミラーの倍回動させて撮影方向を変更する構成とし、所定のレンズ或いは所定レンズ群をミラーの倍回動連動させる連動機構(図16(b)、前玉保持枠プーリー15g、前玉保持枠ベルト23、ミラー保持枠プーリー16、ミラー保持枠ベルト22、モータプーリー21、モータ24)を設けている。これにより、パンニングした時にも撮影鏡筒12がビデオカメラ本体11よりはみ出ない様にすることができ、更にチルティングに関しても撮影鏡筒の小型化を実現することができる。
また、撮影光軸に沿って配列された複数のレンズ(貼り合せレンズ14j、第2群レンズ14k、第3群レンズ14l、第4群レンズ14m)により構成される主光学部と、撮影光軸を屈曲させる反射面を有する屈曲光学部(前玉14f、ミラー14cで構成)と、主光学部からの光束が結像する撮像部(撮像素子14i)とで構成される光学系を有する撮影装置において、屈曲光学部を主光学部に対して撮影光軸回りに相対的に回動させる第3の回動手段(パンニングモータ26)と、撮像部を撮影光軸回りに回動させる第4の回動手段(補正アクチュエータ114)と、第3、第4の回動手段を連動させて駆動制御する駆動制御手段(制御マイコン118)とを撮影装置に設けることで、安定したパンニング撮影を行うことができると共に撮影装置の小型化、高速応答性を図ることができた。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、チルティング駆動連動機構と電気的なシステム構成のみが上記した第1の実施の形態と異なる。
<チルティング駆動連動機構>
図18(a),(b),(c)は、第3の実施の形態に係るチルティング駆動連動機構を示す機構図である。このチルティング駆動連動機構は、ミラー14cと前玉14fを連動駆動する機構であり、図18(a)は、図2で示した屈曲光学系の方向から見た側面図、図18(b)はその上面図、図18(c)は部分詳細図である。
図18(a),(b)において、図5(a)、図5(b)の機構と異なる点は前玉保持枠15aとミラー保持枠16aを連動させる機構である伝達レバー17aが廃止され、代わりにミラー保持枠16aにも専用のアクチュエータが設けられている点である。
ミラー保持枠16aの一方の側面には、フラットコイル16eが固定されており(図18(b)では前玉保持枠15aに隠れており、点線で図示する)、フラットコイル16aと対向して対の永久磁石16fが設けられいる。
図18(c)は、第3の実施の形態に係るチルティングアクチュエータの正面図であり、図18(a)の矢印32方向より見た図である。ミラー保持枠16aに設けられたフラットコイル16eは、前玉保持枠15aに設けられたフラットコイル15bと共にヨーク15d、永久磁石15cに挟まれている。永久磁石15cの着磁方向は、図18(c)のN、Sに示す方向であり、ヨーク15dと共に閉じた磁路を形成している。
フラットコイル15b、16eは共にその磁路内に配置されているので、各々のコイルに電流を流すことで独立に駆動力を発生することができる。即ち、一つの磁気回路で二つのアクチュエータを動かすことができて小型化に貢献している。
ここで、フラットコイル15b、永久磁石15c及びヨーク15dで構成されるアクチュエータを前玉保持枠チルティングアクチュエータ15fと称し、フラットコイル16e、永久磁石15c及びヨーク15dで構成されるアクチュエータをミラー保持枠チルティングアクチュエータ16gと称して区別しておく。
そして、前玉保持枠チルティングアクチュエータ15f及びミラー保持枠チルティングアクチュエータ16gは、その各々に対して設けられた(例えばヨーク15dに取り付けられた)不図示の位置検出センサなどで位置フィードバック制御すれば精密に駆動制御できるし応答性も高い。
<第3の実施の形態に係る電気的なシステム構成>
図19は、第3の実施の形態に係る電気的なシステム構成を示すブロック図である。
本実施の形態の電気的なシステム構成が図10に示したものと異なる点は、チルトドライバが前玉チルトドライバ33とミラーチルトドライバ34に分かれて、各々が制御マイコン118に制御されている点である。
ここで、前玉チルトドライバ33は、前玉保持枠チルティングアクチュエータ15fを駆動制御し、ミラーチルトドライバ34はミラー保持枠チルティングアクチュエータ16gを駆動制御している。
制御マイコン118は、前玉保持枠チルティングアクチュエータ15f及びミラー保持枠チルティングアクチュエータ16gを同期して同じ方向に駆動する訳であるが、前玉保持枠チルティングアクチュエータ15fに対してミラー保持枠チルティングアクチュエータ16gは半分の角度だけ駆動する様に前玉チルトドライバ33及びミラーチルトドライバ34を駆動制御する。これは、第1の実施の形態で述べたように前玉14fとミラー14cの光学関係を良好に保つためである。
チルトスイッチ117a、117bが操作された時に上記動作を行うばかりでなく、チルトジャイロ118bの信号に基づいて手ブレ補正を行う場合においても、同様に前玉保持枠チルティングアクチュエータ15fに対してミラー保持枠チルティングアクチュエータ16gは半分の角度だけ駆動して精度の高いブレ補正駆動を行う。
このように、前玉14f及びミラー14cのチルティング駆動に専用のアクチュエータを設けることにより、各々を連動させる機構が不要になり、それによる摩擦の影響でチルティング駆動精度、応答性が劣化してしまうことが無くなると共に、両者の関係の位置調整を電気的に行うことができる様になる。
以上の様に本実施の形態においては、複数のレンズの中で所定のレンズ(前玉14f)或いは所定レンズ群をミラーの倍回動させて撮影方向を変更する構成とし、所定のレンズ或いは所定レンズ群とミラーの各々に設けられた駆動手段(前玉保持枠チルティングアクチュエータ15f、ミラー保持枠チルティングアクチュエータ16g)と、各々に設けられた駆動手段を連動させて所定のレンズ或いは所定レンズ群をミラーの倍回動する駆動制御手段(制御マイコン118)を設けている。これにより、パンニングした時にも撮影鏡筒12がビデオカメラ本体11よりはみ出ない様にすることができ、更にチルティングに関しても撮影鏡筒の小型化を実現することができる。
なお、上記各実施の形態ではビデオカメラを例にして説明したが、本発明の撮影装置は小型化が可能になるため、ビデオカメラに限られず、デジタルスチルカメラにおける動画撮影や静止画中の流し撮り、監視カメラ、Webカメラ、携帯電話などにも適用することができる。
本発明は、上述した実施形態の装置に限定されず、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器から成る装置に適用しても良い。前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体をシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、完成されることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、不揮発性メモリを用いることができる。
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、次のプログラムコードの指示に基づき、その拡張機能を拡張ボードや拡張ユニットに備わるCPUなどが処理を行って実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。