JP4793392B2 - 燃料フィルタ - Google Patents

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Description

本発明は、燃料フィルタに関する。
従来、燃料中の異物を捕集する濾過エレメントの上流側に燃料に含まれる水分を分離する水分分離手段を有する燃料フィルタが知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献1に開示されている水分分離手段は、下端部が開口しているケースの側壁に疎水性高分子材料からなる多孔質膜を設けた構造となっている。ケースの下端部には、ケース内に流入する燃料が多孔質膜に向かうように燃料の流れを変更するストッパが設けられている。これにより、ケース内に流入した燃料を多孔質膜に導き水分を分離している。多孔質膜の内周側には水分が凝集され、水分は自重によりケースの開口部を通じてハウジングの底部に落下する。
一方、特許文献2に開示されている水分分離手段は、側壁および底壁に開口部を有するケースの内部に円柱状の疎水性の材料からなる不織布を設けた構造となっている。この構成によれば、ケース内に流入した燃料は、不織布を通ってケースの側壁および底壁の開口部から排出される。不織布にて分離された水分は、凝集して、自重により底壁の開口部より落下し、ハウジングの底部に溜まる。
特開平5−231257号公報 特開2005−147087号公報
しかしながら、特許文献1の水分分離手段のケースの下端部は開口しているため、ケース内に流入した水分を含んだ燃料が多孔質膜を通らずに濾過フィルタエレメントまで達するおそれがある。特にケース内に流入する燃料の圧力が増大するとその可能性が高くなる。
また、特許文献2の水分分離手段のケースに収容されている不織布は、ケースの底壁にまで設けられている。このため、不織布にて凝集された水分が底壁付近の不織布内に留まる可能性がある。また、不織布は、円柱状に形成されているため、円柱状の不織布の上端面に凝集された水分が留まる可能性がある。この結果、水分分離手段における圧損が増大するという問題が発生する。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、確実に燃料に含まれる水分を分離しつつ、圧損の増大を抑制することができる燃料フィルタを提供することである。
請求項1に記載の発明は、ハウジングと、ハウジングに収容され、燃料中の異物を捕集する濾過フィルタエレメントと、濾過フィルタエレメントの上流側に設けられ、かつハウジング内の濾過フィルタエレメントよりも鉛直方向下方の空間に配置され、燃料に含まれる水分を分離する水分分離手段と、を備える燃料フィルタであって、
水分分離手段は、ハウジングに収容され、側壁に内外を貫通する開口部が形成されているケース部材と、ケース部材の開口部を塞ぐようにして設けられる撥水性を有する材料から構成され、略環状に形成された分離フィルタエレメントと、を備え、
ケース部材の内部は、ハウジングの下方の空間から隔離され、かつ、ケース部材内部の分離フィルタエレメントの鉛直方向下方には、凝集された水分を一時的に貯留する貯留部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、分離フィルタエレメントを支持するケース部材の内部は、ハウジングの下方の空間から隔離される構造となっている。このため、ケース部材内に流入する水分を含んだ燃料は、必ず分離フィルタエレメントを通って濾過フィルタエレメントに流入することとなる。これにより、ケース部材内に流入する燃料の圧力が増大したとしても、水分を含んだ燃料が分離フィルタエレメントを通らずに直接、濾過フィルタエレメントに流入してしまうという問題を回避することができる。
また、ケース部材には、略環状の分離フィルタエレメントが開口部を塞ぐように設けられ、さらに、ケース部材内部には、その分離フィルタエレメントの鉛直方向下方に凝集された水分を一時的に貯留する貯留部が形成されている。この構成によれば、ケース部材内に流入した燃料に含まれる水分は、撥水性を有する材料から構成されている分離フィルタエレメントの内周側に凝集される。そして、その凝集された水分は、その自重により落下する。落下した水分は、分離フィルタエレメントの鉛直方向下方に設けられている貯留部に貯留される。凝集された水分は、分離フィルタエレメント中に留まることなく貯留部に移動するため、分離フィルタエレメントにおける圧損を抑制することができる。
請求項1に記載の発明によれば、上述したこれらの作用により、確実に燃料に含まれる水分を分離しつつ、圧損の増大を抑制することができる。
ここで、請求項1に記載の構成では、ケース部材内部には水分を貯留する貯留部が形成されているため、水位が上昇するとケース部材に流入する燃料の圧力によって貯留部に溜まっている水分が押し出されてケース部材の外部に排出されてしまう可能性がある。ケース部材の外部に排出された、水分はハウジングの底部に溜まる。この底部に溜まった水分量が多いと、燃料フィルタが揺さぶられたときに、水分が舞い上がり、新たに流入する燃料の流れに乗って濾過フィルタエレメントに流入するおそれがある。
これに対し、請求項2に記載の発明は、ケース部材の内側には、ハウジングの内部に溜まった水分の量を計測するレベルスイッチが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、ハウジングの内部にどの程度の水分が溜まっているのかを把握することができる。このため、上述したような問題が発生する前に、燃料フィルタの交換や、内部の水分を排水するといった処置を採ることができる。
請求項3に記載の発明は、ケース部材は、貯留部とハウジングの外部とを連通する第一通路と、第一通路を開閉する開閉手段とを備える通路部を有していることを特徴としている。
この構成によれば、開閉手段を開放するだけで、ケース部材をハウジングから取り出すことなく、第一通路を通じて貯留部に溜まっている水分を燃料フィルタのハウジングの外部に排水することができる。
請求項4に記載の発明は、通路部には、ケース部材とハウジングによって形成されるハウジングの底部の空間と第一通路とを連通する第二通路が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、万が一、貯留部に溜まった水分が分離フィルタエレメントを介して押し出され、ハウジングの底部の空間に水分が溜まった状態にあっても、その水分を燃料フィルタのハウジングの外部に排水することができる。
請求項5に記載の発明は、通路部は、ケース部材内部の水位を計測するレベルスイッチを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、ケース部材内部にどの程度の水分が貯留されているのかを把握することができるため、燃料の圧力によって水分が押し出される前に開閉手段を開放するだけで、ケース部材内部の水分を容易に燃料フィルタのハウジングの外部に排水することができる。
請求項6に記載の発明は、ケース部材は、分離フィルタエレメントを保持するケース、および通路部を有し、ケースの底部側に形成されている開口部を塞ぐとともに、ハウジングの底部側に形成されている開口部を塞ぐ通路部材から構成されており、通路部材は、互いがネジ部によって結合される環状部材および環状部材の内周側に設けられる柱状部材より構成され、環状部材の外周部は、ケースおよびハウジングのそれぞれの開口部に支持され、柱状部材の側壁には、第一通路となる凹溝が形成されており、開閉手段は、環状部材および柱状部材によって形成され、柱状部材をねじ回すことにより、環状部材の下方から凹溝の下方の端部をハウジングの外部に露出させることにより、第一通路を開放することを特徴としている。
この構成によれば、環状部材にネジ部によって結合されている柱状部材をねじ回すだけで、容易に第一通路である凹溝の下方の端部をハウジングの外部に露出させ、ケース内部とハウジング外部とを連通することができ、貯留部に溜まった水分を排水することができる。
請求項7に記載の発明は、ケース部材は、分離フィルタエレメントを保持するケース、および通路部を有し、ケースの底部側に形成されている開口部を塞ぐとともに、ハウジングの底部側に形成されている開口部を塞ぐ通路部材から構成されており、通路部材の外周部は、ケースおよびハウジングのそれぞれの開口部に支持され、開閉手段は、第一通路のハウジングの外部側の端部から第一通路の内壁に羅合されるドレンコックであって、ドレンコックをねじ回すことにより、第一通路が開閉されることを特徴としている。
この構成によれば、通路部材に設けられるドレンコックをねじ回すだけで、容易に第一通路を開閉することができ、貯留部に溜まった水分を排水することができる。
請求項8に記載の発明は、レベルスイッチの上方には、レベルスイッチに向かう燃料の流れを妨げる障壁部が設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、レベルスイッチに向かう燃料の流れを妨げる障壁部がレベルスイッチの上方に設けられているため、レベルスイッチが誤作動を起こす可能性を低くすることができる。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料フィルタを図1に示す。図1は、燃料フィルタ10の断面図である。
燃料フィルタ10は、ディーゼル機関(図示せず)用の燃料供給システムに用いられる。燃料フィルタ10は、ディーゼル機関側へ燃料を圧送する燃料噴射ポンプ(図示せず)に対し燃料流れの上流側に設置され、燃料タンク(図示せず)内の燃料を濾過して燃料噴射ポンプに吸入させる。
燃料フィルタ10は、ハウジング20、カバー30、通路部40、水分分離部50、異物捕集部80などから構成されている。
ハウジング20は、金属または樹脂などより筒状に形成されている。ハウジング20は、軸方向がほぼ鉛直方向に一致するように車両に設置される。ハウジング20の軸方向の中央部には、内周側に突出する支持部21が形成されている。
カバー30は、金属または樹脂などにより板状に形成されている。カバー30の外周縁部は、ハウジング20上方の開口部22の内周側に嵌合固定されている。カバー30は、中央部に入口部31を有している。
カバー30の上方には、入口部31に接続される燃料通路34が形成されているキャップ33が設けられている。キャップ33に形成される燃料通路34の途中には、プライミングポンプ35が設けられている。
カバー30は、入口部31の外周側に複数の出口部32を有している。各出口部32は、燃料ポンプに繋がる配管(図示せず)に接続されており、燃料ポンプ側へ向かって燃料を流出させる。
通路部40は、燃料通路部材41および板ばね43を備えている。燃料通路部材41は樹脂などより筒状に形成されている。燃料通路部材41は、内部に燃料通路42を形成し、図中上方における一方の端部がシール部材を介して入口部31と接続されている。燃料通路部材41は、カバー30から鉛直方向下方に向かって延びるように設置されている。燃料通路部材41の図中下方における他方の端部には、板ばね43が取り付けられている。
板ばね43は、金属により板状に形成されている。板ばね43の中央部には開口部が形成されており、開口部には燃料通路部材41の他方の端部が嵌め込まれている。板ばね43の外周縁部はハウジング20の支持部21に支持されている。板ばね43には、開口部から外周縁部に向かって放射状に延びるスリットが形成されており、板ばね43の下方と上方とを連通している。
板ばね43は、ハウジング20内に収容することにより、自身の弾性変形の結果生じる復元力により燃料通路部材41をカバー30側へ付勢し、入口部31からの燃料通路部材41の離脱を防止している。
水分分離部50は、燃料通路部材41に対し燃料流れの下流側、かつ板ばね43よりも下方の空間内に設置されている。水分分離部50は、キャップ33および燃料通路部材41を通じて流入する燃料に含まれる水分を分離し、水分を分離除去した燃料を水分分離部50よりも燃料流れの下流側に設けられる異物捕集部80に供給する。水分分離部50については後ほど詳細に説明する。
異物捕集部80は、水分分離部50に対し燃料流れの下流側、かつ板ばね43よりも上方の空間内に設置されている。異物捕集部80は、水分分離部50にて水分が分離除去された燃料に含まれる細かな異物を捕集する。異物捕集部80は、芯部材81および濾過フィルタエレメント82を備えている。
芯部材81は樹脂などにより筒状に形成されている。芯部材81は、Oリングを介して燃料通路部材41の外周側に嵌め込まれている。濾過フィルタエレメント82は、芯部材81に巻装されたハニカムフィルタで構成され、板ばね43とカバー30の出口部32との間に設置されている。板ばね43のスリットを水分分離部50側から通過した燃料は、出口部32へ向かって濾過フィルタエレメント82をほぼ鉛直方向に通過する。その通過により、燃料に含まれる細かな異物が濾過フィルタエレメント82に捕集される。
次に、燃料フィルタ10の作動について説明する。燃料噴射ポンプの作動により出口部32に負圧が作用すると、燃料タンク内の燃料が入口部31および燃料通路部材41内に順次流入する。燃料通路部材41内に流入した燃料は、水分分離部50に流入し、水分分離部50にて燃料に含まれる水分が分離除去される。その後、水分分離部50にて水分が分離除去された燃料は、板ばね43を通って異物捕集部80に流入し、異物捕集部80にて燃料に含まれる細かな異物が捕集される。その後、異物捕集部80を通過した燃料は、出口部32を通じて燃料噴射ポンプに送られる。
ここで、燃料フィルタ10の上流側に例えば電動ポンプからなる燃料ポンプを設置しても良い。燃料ポンプは例えば燃料タンク内に設置されている。燃料ポンプを燃料噴射ポンプとともに作動させることにより、上述したように燃料フィルタ10の出口部32に負圧の発生を抑制することができる。負圧の発生を抑制することができると、燃料に含まれる微小な気泡が成長することを防止できる。
次に、本実施形態の特徴部分である水分分離部50について説明する。図1に示すように、水分分離部50は、ケース部材51、分離フィルタエレメント52、およびレベルスイッチ53などから構成されている。
ケース部材51は、樹脂などより筒状に形成されているケース60と、樹脂などより柱状に形成されている蓋部70とから構成されている。ケース60は、板ばね43よりも下方の空間内に設置されている。ケース60は、上壁部61を有し、上壁部61の中央部には燃料通路部材41に向かって延びる通路62が形成されている。通路62は、Oリング63を介して燃料通路部材41の内壁に差し込まれて固定されている。これにより、燃料通路部材41を通る燃料は、通路62を通ってケース60内に全て流入する。ケース60は、底部に開口部64を有している。開口部64の内周側には、後述する蓋部70がOリング65を介して嵌め込まれている。ケース60の側壁部66には、ケース60の軸方向に延び、ケース部材51の内外を連通するスリット67が全周に亘り複数個形成されている。
分離フィルタエレメント52は、撥水性を有する材料よりシート状に形成され、ケース60のスリット67を塞ぐように設けられている。具体的には、分離フィルタエレメント52は、例えば撥水性を有する材料であるPBT(ポリブチレンテレフタラート)、PP(ポリプロピレン)またはPA(ポリアミド)などを化繊化したものをシート状にした不織布である。不織布の孔径は、濾過フィルタエレメント82の孔径よりも大きいことが望ましい。これにより、不織布にて燃料に含まれる異物を捕集することを抑制することができ、圧損が増大するのを抑制できる。
ケース部材51内に流入した水分を含んだ燃料は、分離フィルタエレメント52を通過してケース部材51の外部に流出しようとするが、分離フィルタエレメント52は撥水性を有する材料で構成されているため、水分の通過が阻害される。通過が阻害された水分は、分離フィルタエレメント52の内周側で凝集する。凝集した水分は、比重が燃料よりも大きいため、その自重により鉛直方向下方に落下する。
水分が分離除去された燃料は、分離フィルタエレメント52を通過して、ケース部材51の外部に排出される。排出された燃料は、板ばね43を通じて濾過フィルタエレメント82に流入する。
このようにして組み付けられた水分分離部50のケース60の底部には、分離フィルタエレメント52にて凝集した水分を貯留する貯留部68が形成される。
蓋部70は、環状部材71および柱状部材74を備え、ケース60の底部に形成されている開口部64およびハウジング20の下方の開口部23を塞ぐ。また、柱状部材74には、レベルスイッチ53が一体的に設けられている。
このように、ケース60、蓋部70およびハウジング20が組付けられることにより、ケース部材51の内部は、ハウジング20の下方の空間から隔離される構造となる。なお、本実施形態において、ケース60および蓋部70は、特許請求の範囲に記載のケース部材を構成する。
環状部材71と柱状部材74は、同心円上に配置され、互いがネジ部78によって結合されている。環状部材71は、軸方向両端が開口しており、外周側にOリング65を介してケース60の底部に形成されている開口部64を支持している。環状部材71の下方の端部には、外周側に突出するフランジ部72が形成されている。フランジ部72には、ハウジング20の下方の開口部23の外周縁部がかしめ固定されている。また、環状部材71には、外周側と内周側を連通する連通路73が形成されている。連通路73の外周側の端部は、ハウジング20とケース60とによって形成される空間に開口している。
柱状部材74は、ネジ部78によって環状部材71にねじ込まれて固定されている。柱状部材74の下方の端部には、外周側に突出するフランジ部75が形成されている。フランジ部75の上方の面は、上記環状部材71のフランジ部72の下方の面と対向している。フランジ部72とフランジ部75との間には、Oリング76が設けられている。Oリング76は、柱状部材74を環状部材71にねじ込むことにより、フランジ部72、75に挟まれる。これにより、ハウジング20の内部と外部とのシール性を確保することができる。
柱状部材74の側壁には、上端面から中央部にかけて、軸方向に延びる凹溝77が形成されている。図1に示すように、凹溝77の下端部は、柱状部材74を環状部材71にねじ込み、柱状部材74と環状部材71とを結合した状態で、環状部材71に形成されている連通路73と連通しないようになっている。
図1に示す状態から、柱状部材74をねじ回し、柱状部材74を、凹溝77の下方の端部が環状部材71の下方の端部から露出するまで移動させると、ケース60の底部に形成されている貯留部68とハウジング20の外部とが連通する。これにより、貯留部68に溜まっている水分を、凹溝77を通してハウジング20の外部に容易に排水することができる。
それと同時に、連通路73は、凹溝77に接続される。これにより、ハウジング20の底部に溜まっている水分も連通路73、凹溝77を介してハウジング20の外部に排水することができる。柱状部材74をねじ回すという一つの動作で、貯留部68およびハウジング20の底部に溜まっている水分をハウジング20の外部に排水することができる。
柱状部材74の上方の端面には、レベルスイッチ53がケース60内部に向けて突出して設けられている。レベルスイッチ53は、貯留部68に溜まった水分の水位を計測するものであって、所定の水位に達すると所定の信号を発信する。この信号に基づき図示しない制御装置が運転席に設置されている警告灯などを点灯させ、運転者に燃料フィルタ10の交換または燃料フィルタ10内部に溜まった水分の排水を促す。
レベルスイッチ53は、フロート式のもので中空状の軸部材54およびフロート58から構成されている。軸部材54の下方の端部は、柱状部材74と一体となっている。上方の端部には、傘状のストッパ部55が形成されている。軸部材54の内部には、リード線56が連結されるスイッチ部57が設置されている。スイッチ部57は、不活性ガスが封入されたガラス管の内部に通常では互いが離れている可動接点と固定接点を設置することによって構成されている。
フロート58は樹脂などからリング状に形成されており、内部に中空部を有する。フロート58は軸部材54に沿って上下方向に移動可能となっている。フロート58の下端部には、リング状の磁石59が設けられている。
フロート58は、貯留部68に溜まった水分の量に応じて上下動する。フロート58が移動して磁石59がスイッチ部57の可動接点を固定接点側に引き寄せ、両接点を接触させる。するとレベルスイッチ53から所定の信号が発信され、それに基づいて制御装置が運転席の警告灯を点灯させる。
次に、本実施形態の特徴部分である水分分離部50の作用効果について説明する。本実施形態のケース部材51の内部は、ハウジング20の下方の空間から隔離された構造となっている。燃料通路部40および通路62を介してケース部材51の内部に流入する水分を含んだ燃料は、分離フィルタエレメント52にて水分が分離除去され、燃料のみが水分分離部50の外部に排出されることとなる。これにより、ケース部材51の内部に流入する燃料の圧力が増大したとしても、水分を含んだ燃料が分離フィルタエレメント52を通らずに直接、濾過フィルタエレメント82に流入してしまうという問題を回避することができる。
また、略環状に形成されている分離フィルタエレメント52がケース60の側壁部66に形成されているスリット67を塞ぐように設けられ、さらに、ケース60の底部、つまり分離フィルタエレメント52の鉛直方向下方には、分離フィルタエレメント52の内周側で凝集され、落下した水分を一時的に貯留する貯留部68が形成されている。
これによれば、分離フィルタエレメント52にて凝集された水分は分離フィルタエレメント52に留まることなく貯留部68に移動するため、分離フィルタエレメント52の圧損の増大を抑制することができる。
本実施形態のような構造となっている水分分離部50によれば、確実に燃料に含まれる水分を分離しつつ、圧損の増大を抑制する燃料フィルタ10を提供することができる。
また、水分分離部50のケース部材51は、ハウジング20の下方の空間から隔離されているため、燃料フィルタ10を車両に搭載し、車両が悪路などを走行して燃料フィルタ10が激しく揺さぶられ、水分分離部50に凝集された水分が舞い上がったとしても、その水分が直接、濾過フィルタエレメント82に流入することがない。
本実施形態では、ケース部材51の内部に水分の水位を計測するレベルスイッチ53が設けられているため、内部の水分の水位が貯留部68の上端を超えて分離フィルタエレメント52の一部にかかり、流入する燃料の圧力によって水分が分離フィルタエレメント52から押し出され、外部に排出される状態に陥る前に、内部の水分を排水することができる。また、燃料フィルタ10内に濾過フィルタエレメント82、水分分離部50、およびレベルスイッチ53を並べて配置させても、燃料フィルタ10の長手方向の寸法を極力抑えることが可能となる。
もし、万が一、水分がケース部材51の外部に排出されても、ケース部材51と、ハウジング20との間に形成される空間に水分を貯留することができる。この部分に貯留された水分もまた、蓋部70の柱状部材74をねじ回し、凹溝77のか端部をハウジング20の外部に露出させることにより、連通路73および凹溝77を通じてハウジング20の外部に排水することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図2に示す。第1実施形態と実質的に同一構成部分には、同一符号を付与し、説明を省略する。
図2に示す第2実施形態では、ケース部材51の内部、およびハウジング20の底部とハウジング20の外部とを連通する通路を開閉する手段としてドレンコック79を用いている。ドレンコック79は、柱状部材74aに設けられている。以下、水分分離部50およびハウジング20の底部と、ハウジング20の外部とを連通する通路の開閉機構について詳細に説明する。
柱状部材74aには、上下の両端面を貫通する通路77aが形成されている。通路77aは、上端部側から上端部771、中間部772および下端部773の三つの部位から構成されている。各部位の通路径は、上端部771が最も小さく、下端部773が最も大きい。下端部773には雌ネジ部774が形成されている。通路77aには、下端部773側から通路77a塞ぐドレンコック79が設けられている。
柱状部材74aには、柱状部材74aの側壁と中間部772とを連通する連通路775が形成されている。そして、環状部材71aには、ハウジング20の底部と柱状部材74aの連通路775とを連通する連通路73aが形成されている。
コック79は、外径が中間部772の内径とほぼ同じである小径部791および外径が下端部773とほぼ同じである大径部792から構成されている。小径部791の先端には、上端部771と中間部772との間に形成される段差部776に当接するテーパ部793が形成されている。大径部792には、雌ネジ部774と螺合する雄ネジ部794が形成されている。また、コック79には、大径部792の端面と、小径部791の側面とを連通する連通路795が形成されている。
雌ネジ部774に雄ネジ部794を螺合させコック79を通路77aに取り付けると、テーパ部793が段差部776に当接し、通路77aが閉鎖される。また、小径部791と中間部772との間には、Oリング777が設けられ、確実に通路77aが閉鎖される。連通路775は、Oリング777よりも上方に開口しているため、連通路775も閉鎖される。
このように形成されているコック79をねじ回し、通路77aからコック79を下方に移動させると、テーパ部793から段差部776が離れ、そして、小径部791が中間部772から抜ける。
小径部791が中間部772まで移動すると、貯留部68およびハウジング20の底部に溜まっている水分が上端部771と、連通路775および連通路73aとを通じて中間部772に流入する。中間部772に流入した水分は、コック79の連通路795を通じてハウジング20の外部に排水される。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図3に示す。第1、第2実施形態と実質的に同一構成部分には、同一符号を付与し、説明を省略する。
図3に示す第3実施形態では、水分分離部50のケース部材51aの構造が第1、第2実施形態のものと異なる。
ケース部材51aは、上壁部61aを有し、上壁部61aの中央部には燃料通路部41の内壁に差し込まれて固定される通路62aが形成されている。上壁部61aの外周縁部には、下方に向かって延びる環状の外周側壁部661が形成されている。外周側壁部661には、ケース51aの軸方向に延び、ケース部材51aの内外を連通するスリット671が全周に亘り複数個形成されている。
外周側壁部661とレベルスイッチ53との間には、内周側壁部662が配置されている。内周側壁部662には、外周側壁部661と同様、ケース部材51aの軸方向に延び、ケース部材51aの内外を連通するスリット671が全周に亘り複数個形成されている。
分離フィルタエレメント521、521は、第1、第2実施形態と同様、撥水性を有する材料よりシート状に形成され、外周側壁部661および内周側壁部662のスリット671、671を塞いでいる。これによれば、水分分離部50の外径が同じであれば、第1、第2実施形態のものよりも分離フィルタエレメントの面積を大きくすることができる。
底壁部663は、外周側壁部661および内周側壁部662のそれぞれの下端部を接続する。この底壁部663の上方に分離フィルタエレメント521、521にて凝集された水分を一時的に貯留する貯留部68が形成される。
また、内周側壁部662の上端部には、内周側壁部662の内周側を覆う内周側上壁部664が形成されている。この内周側上壁部664は、レベルスイッチ53の上方に配置されている。この内周側上壁部664は、燃料通路部材41から下方に排出される燃料がレベルスイッチ53のフロート58に直接あたるのを回避している。これにより、燃料通路部材41から排出される燃料によるレベルスイッチ53の誤動作の発生を抑制することができる。内周側上壁部664が特許請求の範囲に記載の障壁部に相当する。
貯留部68に溜められた水分が所定量を超えると、水分の液面が分離フィルタエレメント521、521の下端部を越えると、水分はケース部材51a内部に流入する燃料の圧力によって押し出され、ケース部材51aの外部に排水される。
底壁部663の外側には、下方、つまりハウジング20の底部に向かって延びる複数の突起部665が設けられている。ケース部材51aの外部に排水された水分は、この突起部665間の隙間を通ってハウジング20の底部に流入する。
ハウジング20の底部に流入した水分は、柱状部材74aに設けられているドレンコック79をねじ回すことで通路77aが開放され、ハウジング20の外部に排水される。なお、この実施形態では、コック79により通路77aを開放し、水分を排水しているが、ハウジング20の底部に設けられている環状部材71aおよび柱状部材74aを第1実施形態のもののような構造としても良い。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態を図4および図5に示す。第1〜第3実施形態と実質的に同一構成部分には、同一符号を付与し、説明を省略する。
図4および図5に第4実施形態の水分分離部50を示す。図4は水分分離部50の部分断面図であり、図5は水分分離部50の平面図である。
図4、5に示すように、第4実施形態では、第3実施形態(図3を参照)における水分分離部50のケース部材51aにおける外周側壁部661と、内周側壁部662とに、切欠き部666、666が形成されている。各切欠き部666、666は、外周側壁部661の外側と、内周側壁部662の内側とが連通するように配置されている。
ケース部材51aの内周側壁部662の内周側に空気などが溜まると、この空間に配置されているレベルスイッチ53が誤作動を起こす可能性がある。ケース部材51aに図4、5に示すような切欠き部666、666が形成されていると、内周側壁部662の内周側に空気などが溜まってしまった場合であっても、切欠き部666、666を介して空気などの誤作動となる原因を容易に取り除くことができる。
また、第3実施形態のようなケース部材51aの構造では、外周側壁部661および内周側壁部662はそれぞれ独立しているため、シート状の分離フィルタエレメント521、521が少なくとも二枚必要となる。
一方、本実施形態では、図5に示すように、ケース部材51aには、切欠き部666、666が形成されているため、一枚の分離フィルタエレメント52にて各側壁部661、662のスリット671、671を覆うことができ、部品点数を第3実施形態のものに比べ減らせる。
本発明の第1実施形態に係る燃料フィルタを示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る燃料フィルタを示す断面図である。 本発明の第3実施形態に係る燃料フィルタを示す断面図である。 本発明の第4実施形態に係る燃料フィルタに用いる水分分離部の部分断面図である。 図4に示す水分分離部の平面図である。
符号の説明
10 燃料フィルタ、20 ハウジング、22 開口部、23 開口部、30 カバー、31 入口部、32 出口部、33 キャップ、34 燃料通路、35 プライミングポンプ、40 通路部、41 燃料通路部材、50 水分分離部、51 ケース部材、52 分離フィルタエレメント、53 レベルスイッチ、57 スイッチ部、58 フロート、59 磁石、60 ケース、61 上壁部、62 通路、63 Oリング、64 開口部、65 Oリング、66 側壁部、67 スリット、68 貯留部、70 蓋部(通路部材)、71 環状部材、73 連通路(第二通路)、74 柱状部材、76 Oリング、77 凹溝(第一通路)、78 ネジ部、80 異物捕集部、81 芯部材、82 濾過フィルタエレメント

Claims (8)

  1. ハウジングと、前記ハウジングに収容され、燃料中の異物を捕集する濾過フィルタエレメントと、前記濾過フィルタエレメントの上流側に設けられ、かつ前記ハウジング内の前記濾過フィルタエレメントよりも鉛直方向下方の空間に配置され、燃料に含まれる水分を分離する水分分離手段と、を備える燃料フィルタであって、
    前記水分分離手段は、
    前記ハウジングに収容され、側壁に内外を貫通する開口部が形成されているケース部材と、
    前記ケース部材の前記開口部を塞ぐようにして設けられる撥水性を有する材料から構成され、略環状に形成された分離フィルタエレメントと、を備え、
    前記ケース部材の内部は、前記ハウジングの前記下方の空間から隔離され、かつ、前記ケース部材内部の前記分離フィルタエレメントの鉛直方向下方には、凝集された水分を一時的に貯留する貯留部が形成されていることを特徴とする燃料フィルタ。
  2. 前記ケース部材の内側には、前記ハウジングの内部に溜まった水分の量を計測するレベルスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の燃料フィルタ。
  3. 前記ケース部材は、前記貯留部と前記ハウジングの外部とを連通する第一通路と、前記第一通路を開閉する開閉手段とを備える通路部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料フィルタ。
  4. 前記通路部には、前記ケース部材と前記ハウジングによって形成される前記ハウジングの底部の空間と前記第一通路とを連通する第二通路が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の燃料フィルタ。
  5. 前記通路部は、前記ケース部材内部の水位を計測するレベルスイッチを備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の燃料フィルタ。
  6. 前記ケース部材は、前記分離フィルタエレメントを保持するケース、および前記通路部を有し、前記ケースの底部側に形成されている開口部を塞ぐとともに、前記ハウジングの底部側に形成されている開口部を塞ぐ通路部材から構成されており、
    前記通路部材は、互いがネジ部によって結合される環状部材および前記環状部材の内周側に設けられる柱状部材より構成され、
    前記環状部材の外周部は、前記ケースおよび前記ハウジングのそれぞれの前記開口部に支持され、
    前記柱状部材の側壁には、前記第一通路となる凹溝が形成されており、
    前記開閉手段は、前記環状部材および前記柱状部材によって形成され、前記柱状部材をねじ回すことにより、前記環状部材の下方から前記凹溝の下方の端部を前記ハウジングの外部に露出させることにより、前記第一通路を開放することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の燃料フィルタ。
  7. 前記ケース部材は、前記分離フィルタエレメントを保持するケース、および前記通路部を有し、前記ケースの底部側に形成されている開口部を塞ぐとともに、前記ハウジングの底部側に形成されている開口部を塞ぐ通路部材から構成されており、
    前記通路部材の外周部は、前記ケースおよび前記ハウジングのそれぞれの前記開口部に支持され、
    前記開閉手段は、前記第一通路の前記ハウジングの外部側の端部から前記第一通路の内壁に羅合されるドレンコックであって、前記ドレンコックをねじ回すことにより、前記第一通路が開閉されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の燃料フィルタ。
  8. 前記レベルスイッチの上方には、前記レベルスイッチに向かう燃料の流れを妨げる障壁部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の燃料フィルタ。
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