JP4790548B2 - 真空成膜方法および真空成膜装置 - Google Patents

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Description

本発明は、真空成膜装置および真空成膜方法に係り、更に詳しくは、基板に形成される鉛フリー半田合金膜の反射特性を改善する技術に関する。
車両用(例えば自動車用)のドアミラーは、通常、クロム膜を反射膜にしたガラス基板を備えてなるが、このようなガラス製ドアミラーは、重量や価格の点で改善の余地がある。このため、ドアミラーの大幅な軽量化が図れ、かつ経済的に見合う樹脂製(例えば、ポリカーボネート樹脂やABS樹脂)のドアミラー用基板の開発が望まれている。
ところが、樹脂基板の表面全域に亘り従来のクロム膜をベタ状に形成した場合、周辺環境(温度や湿度)の変化に起因する樹脂基板の伸縮や、外部衝撃に起因する樹脂基板の変形により、当該クロム膜中にクラックや剥れが生じるという欠点がある。
そこで、インジウム(In)等を含有する金属薄膜、乃至、合金薄膜を、各種の方法により予め微細な間隙に区画されるアイランド状にさせ、上記樹脂基板の伸縮や変形を、このアイランド状の金属薄膜間に存在する微細な間隙で吸収するという反射金属膜の形成技術が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。これにより、金属薄膜中に視認されるレベルのクラック等の発生が防止できる。
例えば、鉛、アルミニウム、錫、インジウム又はこれらの合金からなる金属薄膜層を、スパッタリング法により形成した後、この金属薄膜層を酸またはアルカリ溶液に浸すというウエットエッチングにより、予め谷部(間隙)を生成する手法がある(例えば、特許文献2)。
また、クロム、ニッケル、アルミニウム、インジウム、鉛、チタン、鉄、金および銀のうちの何れか又はこれらの合金からなる金属微粒子層を、真空蒸着法により形成した後、基材全体を熱膨張させることにより、被覆した金属微粒子層に、予め微細な溝状クラックを生成する手法もある(例えば、特許文献4)。
特開2006−5515号公報 特許第3299133号公報 特開2002−212324号公報 特開平11−131213号公報
本件発明者等は、上記特許文献1〜4に例示の高価なインジウムや環境上問題視されている鉛に代えて、安価な鉛フリー半田を用いて、適正な反射特性を有する合金膜(反射膜)を樹脂基板に形成するプロセス開発に取り組んでいる。
ところで、真空蒸着法やスパッタリング法により、基板に半田を成膜する技術を記載した公知文献には、例えば、特開2006−110626号公報、特開昭60−258482号公報、特開昭61−124563号公報、特開平5−69190号公報、および特開平6−53639号公報がある。しかし、これらの公報に記載の技術は、反射膜の用途に適合する膜の形成を意図したものではない。
また、上記特許文献1〜4に記載の装置は何れも、鉛フリー半田合金膜の真空成膜プロセスに特化した類のものではなく参考にならない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、適正な反射特性を有する鉛フリー半田合金膜を樹脂製の基板に形成可能な真空成膜方法および真空成膜装置を提供することを目的とする。
本発明の真空成膜方法は、真空槽内の基板ホルダに樹脂製の基板を配置し、前記真空槽内の材料ホルダに鉛フリー半田を配置し、その後、前記真空槽内を減圧し、前記鉛フリー半田からなるアイランド状の合金膜を前記基板に形成する際に、前記合金膜の反射特性を前記合金膜の膜厚に基づき調整し、前記鉛フリー半田として、錫−銀−ビスマス−銅系半田が用いられる方法である。なおここで、本明細書における「鉛フリー半田」とは、環境保護のため鉛の使用を減じた半田を指すものとし、例えば、鉛を含んでも鉛含有量が不純物濃度レベルの半田である。
このような合金膜を、例えば車両用の樹脂製ドアミラーの反射膜の用途に使用する場合には、基板に対する環境変化による伸縮や外部衝撃による変形を、このアイランド状の合金膜間に存在する微細な間隙で吸収できる。よって、上記基板の伸縮や変形に伴う鉛フリー半田合金膜中に視認されるレベルのクラック発生が防げる。
なおここで、前記反射特性の一例は前記合金膜により反射される反射光の反射率であり、前記合金膜の膜厚に基づく調整例として、平面視した前記合金膜のアイランドのサイズを前記合金膜の膜厚により調整する。
これにより、鉛フリー半田からなるアイランド状の合金膜の厚みを変更することにより、可視波長光の合金膜反射率の多少を調整できる。
また、鉛フリー半田の材料組成の適切な選定により、可視波長の変化に対する鉛フリー半田からなる合金膜の反射率変化量を改善できる。例えば、前記鉛フリー半田として錫−銀−ビスマス−銅系の半田を用いることが、可視波長の変化に対する反射率変化の好ましい量になる場合がある。
本発明の真空成膜装置は、内部を減圧可能な真空槽と、前記真空槽内において、樹脂製の基板を保持する基板ホルダと、前記真空槽内において、鉛フリー半田を配置する材料ホルダと、前記鉛フリー半田を放出させる放出手段と、を備え、前記放出された前記鉛フリー半田からなるアイランド状の合金膜が前記基板に形成される際に、前記合金膜の反射特性は、前記合金膜の膜厚に基づき調整され、前記鉛フリー半田として、錫−銀−ビスマス−銅系半田が用いられる装置である。
上記真空成膜装置の一例として、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置があり、この場合、前記材料ホルダは、前記鉛フリー半田を溜めるハースであり、前記放出手段は、前記ハース内の前記鉛フリー半田を加熱および蒸発させる電子ビームを放出する電子銃を備えても良い。
このような合金膜を、例えば車両用の樹脂製ドアミラーの反射膜の用途に使用する場合には、基板に対する環境変化による伸縮や外部衝撃による変形を、このアイランド状の合金膜間に存在する微細な間隙で吸収できる。よって、上記基板の伸縮や変形に伴う鉛フリー半田合金膜中に視認されるレベルのクラック発生が防げる。
なおここで、前記反射特性の一例は前記合金膜により反射される反射光の反射率であり、前記合金膜の膜厚に基づく調整例として、平面視した前記合金膜のアイランドのサイズを前記合金膜の膜厚により調整する。
これにより、鉛フリー半田からなるアイランド状の合金膜の厚みを変更することにより、可視波長光の合金膜反射率の多少を調整できる。
また、鉛フリー半田の材料組成の適切な選定により、可視波長の変化に対する鉛フリー半田からなる合金膜の反射率変化量を改善できる。例えば、前記鉛フリー半田として錫−銀−ビスマス−銅系の半田を用いることが、可視波長の変化に対する反射率変化の好ましい量になる場合がある。
本発明によれば、適正な反射特性を有する鉛フリー半田合金膜を樹脂製の基板に形成可能な真空成膜方法および真空成膜装置が得られる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態による真空成膜装置の内部の一構成例を示した図である。
図1では、樹脂製の基板10aの搬入出用の扉(不図示)を開き、この基板10aを基板ホルダ10にセットし、基板10aに蒸着させる光学反射膜用の鉛フリー半田11aをハース11(材料ホルダ)の材料溜め部にセットした状態の真空成膜装置100(ここでは電子ビーム加熱による真空蒸着装置100)の内部の様子が図示されている。
なお、この真空蒸着装置100の構成および動作(真空度や基板温度)は既存技術に倣ったものであり、これらの説明については、以下に概説する。
真空蒸着装置100は、接地状態の真空槽16を有する。この真空槽16の内部は、真空槽16の右側壁に設けられた排気孔16aに連通する真空ポンプ15により適宜の真空度に減圧可能になっている。
真空槽16内の上部には、基板10aをその裏面から保持する基板ホルダ10が配設されている。なお、真空槽16の上壁にはヒータ14が設けられ、これにより、基板10aの温度が適温にコントロールされる。また、真空槽16の適所には、光学式の公知の膜厚計13が配置され、これにより、基板10aに蒸着される薄膜の厚みが監視される。
真空槽16内の下部には、鉛フリー半田11aを格納するハース11および、鉛フリー半田11aの蒸発手段(鉛フリー半田11aの放出手段)が配設されている。この蒸発手段は、蒸着用の鉛フリー半田11aの粒子を、その上方に位置する基板10aに向けて放出させる各種の機器からなる。この蒸発手段の一例は、図1に示す如く、真空槽16の左壁近傍に設けられ、電子ビーム17aを放出する電子銃17と、電子銃17に所定の電力を給電する電源(不図示)と、ハース11の材料溜め部を真上に配置されたシャッタ部材12とを備える。電子銃17は、カソード(不図示)からハース11の材料溜め部に電子ビーム17aを誘導可能に構成され、この電子ビーム17aのエネルギーにより、ハース11の材料溜め部内の鉛フリー半田11aが加熱されて蒸発される。蒸発された鉛フリー半田11aの粒子は、図1の点線で示したようなシャッタ部材12の開閉動作により、基板10aへの飛散を制御される。シャッタ部材12が開いた状態では、基板10aに、蒸発された鉛フリー半田11aからなる合金膜(以下、「鉛フリー半田合金膜」と略す)が蒸着される。
なお、上記真空蒸着装置100は、電子銃17による電子ビーム蒸着法に限らず、これに代えて、高融点金属のボート状ヒータに直接蒸発材料を置くという抵抗加熱蒸着法を採用した装置であっても良い。
このようにして、ハース11の材料溜め部に入れた、安価な鉛フリー半田11aが電子ビーム17aのエネルギーにより加熱されて蒸発させる。一方、鉛フリー半田合金膜は、ヒータ14により適温に加熱された基板10aに、膜厚計13の監視の下で適切な厚みに堆積される。これにより、従来の高価なインジウム材料に比べて、真空蒸着装置100による蒸発材料コストを抑えることができる。また、従来の高融点のクロム材料に比べて、真空蒸着装置100による蒸発材料の加熱エネルギーを低減することができる。
<鉛フリー半田合金膜の表面性および反射特性と、半田材料組成との間の相関性>
次に、基板に蒸着させた鉛フリー半田合金膜の表面性および反射特性と、当該鉛フリー半田合金膜の材料組成との間の相関性を検証した結果を、図面を参照しながら説明する。
なおここでは、下記表1に記載した材料組成を持つ鉛フリー半田と、下記表2に記載した材料組成を持つ鉛フリー半田と、が選定されている。
表1に示した、錫(Sn)−銀(Ag)−ビスマス(Bi)−銅(Cu)系半田は、規格組成比として、1.80〜2.20重量%の銀と、7.00〜8.00重量%のビスマスと、0.30〜0.70重量%の銅と、不純物を含めてトータルとして100重量%になる残部の濃度の錫と、を含有する材料である。また、本検証実験に用いた錫−銀−ビスマス−銅系半田の試料を分析試験したところ、2.04重量%の銀と、7.61重量%のビスマスと、0.51重量%の銅と、不純物を含めて残部となる濃度の錫と、が検出された。なお、不純物としての鉛(Pb)の濃度は、0.029重量%であり、不純物としてのインジウム(In)の濃度は、0.0035重量%であった。
表2に示した、錫(Sn)−銀(Ag)−ビスマス(Bi)系半田は、規格組成比として、0.80〜1.20重量%の銀と、56.0〜58.0重量%のビスマスと、不純物を含めてトータルとして100重量%になる残部の濃度の錫と、を含有する材料である。また、本検証実験に用いた錫−銀−ビスマス系半田の試料を分析試験したところ、1.00重量%の銀と、56.99重量%のビスマスと、不純物を含めて残部となる濃度の錫と、が検出された。なお、不純物としての鉛(Pb)の濃度は、0.015重量%であり、不純物としての銅(Cu)の濃度は、0.0045重量%であり、インジウム(In)は検出されなかった。
図2は、基板に蒸着された錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜の表面を、走査電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真を示した図である。図2では、400Åの厚みの錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜について、図2(a)に示した2万倍の倍率のSEMによる平面視の写真、図2(b)に示した5万倍の倍率のSEMによる平面視の写真、図2(c)に示した10万倍の倍率のSEMによる平面視の写真、および図2(d)に示した2千倍の倍率のSEMによる平面視の写真が掲載されている。
図3は、基板に蒸着された錫−銀−ビスマス系半田合金膜の表面を、走査電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真を示した図である。図3では、400Åの厚みの錫−銀−ビスマス系半田合金膜について、図3(a)に示した2万倍の倍率のSEMによる平面視の写真、図3(b)に示した5万倍の倍率のSEMによる平面視の写真、図3(c)に示した10万倍の倍率のSEMによる平面視の写真、および図3(d)に示した2千倍の倍率のSEMによる平面視の写真が掲載されている。
なおここでは、図2の錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜および図3の錫−銀−ビスマス系半田合金膜は、図1に示した電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置100により基板に蒸着された膜である。
図2および図3によれば、錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜(鉛フリー半田合金膜)および錫−銀−ビスマス系半田合金膜(鉛フリー半田合金膜)の厚みを約400Åにすれば、鉛フリー半田合金膜を基板にアイランド状(島状)に蒸着できることが分かる。このため、これらの鉛フリー半田合金膜の膜厚の適宜の調整、例えば、鉛フリー半田合金膜がベタ状に成長する膜厚(例えば5000Å程度)よりも薄めの400Å程度に、鉛フリー半田合金膜の膜厚を設定することにより、アイランド状の鉛フリー半田合金膜を簡易かつ適切に形成できる。その結果、ポリカーボネート(PC)樹脂製やABS樹脂製の基板10aに鉛フリー半田合金膜を蒸着させる場合に、当該基板10aに対する環境変化による伸縮や外部衝撃による変形を、このアイランド状の鉛フリー半田合金膜間に存在する微細な間隙で吸収できる。よって、上記基板10aの伸縮や変形に伴う、鉛フリー半田合金膜中に視認されるレベルのクラック発生が防げる。また、このような鉛フリー半田合金膜自体が、従来のクロム膜に比べて高い粘弾性を有し、外部衝撃等による変形に対しクラックを発生し難いという効果もある。つまり、本実施形態の鉛フリー半田合金膜は、外部衝撃等による伸縮や変形に脆弱なベタ状のクロム膜の代替膜として、上記微細な間隙によるクラック発生抑制効果と高い粘弾性によるクラック発生抑制効果とを兼ね備える。なお、このような微細な間隙は、目視レベルでは視認されず、鉛フリー半田合金膜の表面は適切な鏡面状態を維持できると考えられている。
また、図2と図3との間の比較によれば、アイランド状に蒸着された錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜の平面視した形態と、錫−銀−ビスマス系半田合金膜の平面視した形態と、が、互いに異なることが分かる。よって、鉛フリー半田合金膜の反射特性は、鉛フリー半田の材料組成(材料系)に依存すると考えられる。
図4は、錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜および錫−銀−ビスマス系半田合金膜により反射された可視波長光の反射率プロファイルを示した図である。図4では、横軸に反射光の「波長(nm)」をとり、縦軸に「5°絶対反射率」をとって、400Åの厚みの錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜(図4の実線参照)および400Åの厚みの錫−銀−ビスマス系半田合金膜(図4の点線参照)について、両者間の関係が図示されている。
なお、試料の反射光強度と基準ミラーの反射光強度との比をとる相対反射率もあるが、適宜の分光光度計(不図示)を用いて、上記絶対反射率の測定が可能である。これにより、反射光の反射率測定が高精度に行える。絶対反射率測定は、分光させた光の入射光角度を適宜変えて行えるが、本実施の形態では、入射光角度として5°を採用した「5°絶対反射率」を評価した。なお、このような絶対反射率の測定原理は公知であり、ここではこの詳細な説明は省く。
図4によれば、錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜による5°絶対反射率プロファイル(以下、「錫−銀−ビスマス−銅系半田反射率プロファイル」と略す)についての、可視波長の変化に対する傾きは、錫−銀−ビスマス系半田合金膜による5°絶対反射率プロファイル(以下、「、錫−銀−ビスマス系半田反射率プロファイル」と略す)についての、可視波長の変化に対する傾きよりも小さくなることが分かる。
つまり、可視波長の変化に対する鉛フリー半田合金膜の反射率変化量が、鉛フリー半田の材料組成に依存して変化する。ここでの錫−銀−ビスマス−銅系半田反射率プロファイルでは、図4に示す如く、錫−銀−ビスマス系半田反射率プロファイルに比べて、可視波長に対する反射率変化量が抑えられ平坦性に優れ有益な場合がある。
例えば、車両用の樹脂製ドアミラー用の反射膜には、最適な反射率範囲(例えば、55〜60%)があり、この範囲より反射率が超える場合にはドアミラーは眩し過ぎ、この範囲より反射率が下回る場合にはドアミラーは明度不足になると考えられている。
よって、上記最適な反射率範囲(例えば、55〜60%)に対応する可視波長域が広くなる錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜の方が、車両用の樹脂製ドアミラー用の反射膜の用途としては、錫−銀−ビスマス系半田合金膜よりも優れている。
<鉛フリー半田合金膜の表面性および反射特性とその膜厚との間の相関性>
次に、鉛フリー半田合金膜の表面性および反射特性と、当該鉛フリー半田合金膜の膜厚との間の相関性を検証した結果を、図面を参照しながら説明する。
図5は、鉛フリー半田合金膜の膜厚を変えた場合の、基板に蒸着された鉛フリー半田合金膜の表面を走査電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真を比較した図である。図5では、350Åの厚みの鉛フリー半田合金膜および550Åの厚みの鉛フリー半田合金膜の各々について、5万倍の倍率のSEMによる平面視の写真および10万倍の倍率のSEMによる平面視の写真が示されている。
図5によれば、アイランド状に蒸着された鉛フリー半田合金膜の平面視した形態が、鉛フリー半田合金膜の膜厚により変化することが分かる。つまり、図5に示す如く、550Åの厚みの鉛フリー半田合金膜のアイランド(島)のサイズは、350Åの厚みの鉛フリー半田合金膜のアイランドのサイズより大きくなっている。また、550Åの厚みの鉛フリー半田合金膜内の個々のアイランド部位間の間隙は、350Åの厚みの鉛フリー半田合金膜内の個々のアイランド部位間の間隙より狭まっている。このため、鉛フリー半田合金膜の膜厚を変更することにより、鉛フリー半田合金膜の反射率が調整されると考えられる。
図6は、鉛フリー半田合金膜の膜厚をパラメータとして、鉛フリー半田合金膜により反射された可視波長光の反射率プロファイルを示した図である。図6では、横軸に反射光の「波長(nm)」をとり、縦軸に「5°絶対反射率」をとって、350Åの厚みの鉛フリー半田合金膜(以下、「350Å半田合金膜」と略す)、550Åの厚みの鉛フリー半田合金膜(以下、「550Å半田合金膜」と略す)、および560Åの厚みの鉛フリー半田合金膜(以下、「560Å半田合金膜」と略す)につき、両者間の関係が図示されている。なおここでは、図6の各半田合金膜は、抵抗加熱方式の真空蒸着装置により基板に蒸着された膜である。
図6に示す如く、560Å半田合金膜による5°絶対反射率プロファイル(図6の実線参照)は、可視波長域において、550Å半田合金膜による5°絶対反射率プロファイル(図6の一点鎖線参照)よりも高くなっている。また、550Å半田合金膜による5°絶対反射率プロファイルは、可視波長域において、350Å半田合金膜による5°絶対反射率プロファイル(図6の点線参照)よりも高くなっている。
つまり、アイランド状の鉛フリー半田合金膜の厚みを変更することにより、可視波長光の鉛フリー半田合金膜反射率の多少を調整できる。本実施形態の鉛フリー半田合金膜では、鉛フリー半田合金膜の厚みが350Åから560Åに増加するに連れて、可視波長域における鉛フリー半田合金膜の反射率が向上する。そしてこのことは、鉛フリー半田合金膜の膜厚を厚めにすれば、鉛フリー半田合金膜の間隙率を小さくできるという図5に示した写真の結果とも符合する。
なお、以上に述べたアイランド状の鉛フリー半田合金膜を、車両用の樹脂製のドアミラーの反射膜の用途に使用する場合には、基板10aの表面に予め樹脂製の透明なアンダーコート層をウェット塗布によりコートしても良い。そして、アンダーコート層および、その上層のアイランド状の鉛フリー半田合金膜を覆うように、鉛フリー半田合金膜保護用の樹脂製の透明なトップコート層をウェット塗布によりコートする方が望ましい。こうすれば、トップコート層の塗布原料液をアイランド状の鉛フリー半田合金膜の間の間隙に浸透でき、基板10a上のアンダーコート層(アンダーコート層を形成しない場合は基板10a)とトップコート層とが、この間隙に浸透された部位を介して強固に密着でき好適である。なおこの場合、基板10a上のアンダーコート層(アンダーコート層を形成しない場合は基板10a)とトップコート層との間の密着性を、鉛フリー半田合金膜の膜厚の変更に伴う上記間隙率の適切な調整に基づいて適度に保つようにできる。
本実施形態の真空蒸着方法および真空蒸着装置100によれば、アイランド状の鉛フリー半田合金膜を基板10aに蒸着させる際に、鉛フリー半田合金膜の反射特性が鉛フリー半田合金膜の膜厚に基づき適切に調整できる。また、このような鉛フリー半田合金膜の反射特性を、鉛フリー半田の材料組成の適切な選定により改善できる。
例えば、錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜による可視波長の変化に対する反射率変化量は、錫−銀−ビスマス系半田合金膜によるそれよりも小さくなる。また、アイランド状の鉛フリー半田合金膜の厚みを、例えば350Å以上、560Å以下の範囲内で変更することにより、可視波長光の鉛フリー半田合金膜反射率の多少を適切に調整できる。
また、このような鉛フリー半田合金膜の膜厚を、当該鉛フリー半田合金膜がベタ状に成長する膜厚(例えば5000Å程度)よりも薄めの350Å以上、560Å以下の範囲内に設定すれば、鉛フリー半田合金膜は樹脂製の基板10a上にアイランド状に蒸着される。このため、このような鉛フリー半田合金膜を、車両用の樹脂製ドアミラーの反射膜の用途に使用する場合、基板10aに対する環境変化による伸縮や外部衝撃による変形を、このアイランド状の鉛フリー半田合金膜間に存在する微細な間隙で吸収できる。よって、上記基板10aの伸縮や変形に伴う鉛フリー半田合金膜中に視認されるレベルのクラック発生が防げる。
なおここまで、電子ビーム加熱や抵抗加熱等による鉛フリー半田合金膜の真空蒸着方法について述べたが、特開平5−69190号公報や特開平6−53639号公報等の公知文献に記載のスパッタリング法により鉛フリー半田合金膜を形成しても良い。
(変形例1)
ここまで、鉛フリー半田合金膜を、樹脂製ドアミラーの反射膜に用いる例を述べたが、その変形例として、鉛フリー半田合金膜に、ドアミラー表面のくもり止め機能を兼用させても良い。例えば、適宜の電源(不図示)を用いて導電性の鉛フリー半田合金膜に電流を流すことにより、この通電のエネルギーに基づいて鉛フリー半田合金膜が加熱され、その結果、ドアミラーの結露を気化させてドアミラーのくもりを適切に解消できる。但しこの場合、鉛フリー半田合金膜の略全域に亘り通電可能なように、鉛フリー半田合金膜の膜厚を厚めにする方が好ましい。
(変形例2)
ガラス製や樹脂製の基板に、銀(Ag)をコートした既存の銀ミラーでは、Ag層とガラス基板との間の密着性が劣ることから、両者の間に、Ag層剥がれ防止用下地膜として、クロム膜が多用されている。
そこで、以上に述べた鉛フリー半田合金膜の変形例として、上記クロム膜に代えて、鉛フリー半田合金膜を銀ミラーのAg層剥がれ防止用の下地膜に使用しても良い。
これにより、クロム材料よりも低融点の鉛フリー半田を使用できることになり、真空蒸着プロセスの省エネルギー化が図れる。また、このような鉛フリー半田合金膜には、以上に述べたように、樹脂製の基板の、外部衝撃等による変形や伸縮に対しクラックを発生し難いといった利点も兼ね備える。よって、樹脂製の基板に蒸着した銀ミラーのAg層の下地膜として、当該鉛フリー半田合金膜は特に有益である。
本発明の真空成膜装置は、適正な反射特性を有する鉛フリー半田合金膜を樹脂製の基板に形成可能な真空成膜用の機器として有用である。
本発明の実施の形態による真空成膜装置の内部の一構成例を示した図である。 基板に蒸着された錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜の表面を、走査電子顕微鏡により撮影した写真を示した図である。 基板に蒸着された錫−銀−ビスマス系半田合金膜の表面を、走査電子顕微鏡により撮影した写真を示した図である。 錫−銀−ビスマス−銅系半田合金膜および錫−銀−ビスマス系半田合金膜により反射された可視波長光の反射率プロファイルを示した図である。 鉛フリー半田合金膜の膜厚を変えた場合の、基板に蒸着された鉛フリー半田合金膜の表面を走査電子顕微鏡により撮影した写真を比較した図である。 鉛フリー半田合金膜の膜厚をパラメータとして、鉛フリー半田合金膜により反射された可視波長光の反射率プロファイルを示した図である。
符号の説明
10 基板ホルダ
10a 基板
11 ハース
11a 半田
12 シャッタ部材
13 膜厚計
14 ヒータ
15 真空ポンプ
16 真空槽
16a 排気孔
17 電子銃
17a 電子ビーム
100 真空蒸着装置(真空成膜装置)

Claims (7)

  1. 真空槽内の基板ホルダに樹脂製の基板を配置し、
    前記真空槽内の材料ホルダに鉛フリー半田を配置し、
    その後、前記真空槽内を減圧し、
    前記鉛フリー半田からなるアイランド状の合金膜を前記基板に形成する際に、前記合金膜の反射特性を前記合金膜の膜厚に基づき調整し、前記鉛フリー半田として、錫−銀−ビスマス−銅系半田が用いられる、真空成膜方法。
  2. 前記反射特性は、前記合金膜により反射される反射光の反射率である請求項1記載の真空成膜方法。
  3. 平面視した前記合金膜のアイランドのサイズを、前記合金膜の膜厚により調整する、請求項1記載の真空成膜方法。
  4. 内部を減圧可能な真空槽と、
    前記真空槽内において、樹脂製の基板を保持する基板ホルダと、
    前記真空槽内において、鉛フリー半田を配置する材料ホルダと、
    前記鉛フリー半田を放出させる放出手段と、を備え、
    前記放出された前記鉛フリー半田からなるアイランド状の合金膜が前記基板に形成される際に、前記合金膜の反射特性が前記合金膜の膜厚に基づき調整され、前記鉛フリー半田として、錫−銀−ビスマス−銅系半田が用いられる、真空成膜装置。
  5. 前記材料ホルダは、前記鉛フリー半田を溜めるハースであり、前記放出手段は、前記ハース内の前記鉛フリー半田を加熱および蒸発させる電子ビームを放出する電子銃を備える請求項記載の真空成膜装置。
  6. 前記反射特性は、前記合金膜により反射される反射光の反射率である請求項記載の真空成膜装置。
  7. 平面視した前記合金膜のアイランドのサイズが、前記合金膜の膜厚により調整される、請求項記載の真空成膜装置。
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