JP4790512B2 - 構造用高強度鋳鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、特に重車両部品や建築・土木・橋梁などの構造部材に使用する、強度、延性、靱性、溶接性、鋳造性のいずれの点でも優れた、鋳鋼材に関するものである。
近年、過酷な条件下で使用される特殊重車両の車軸、サスペンション等の足回り部品、及び多様なデザインと大空間を創生するための建築構造物用部材等において、高強度でかつ延性、靱性にすぐれ、形状自由度の高い素材が求められている。
素材に高強度が要求される理由は、いずれも大型化に伴う総重量の増加を抑えるため、部材を軽量化する必要性に迫られているためである。このような目的で用いられる鉄系構造用素材としては、圧延鋼材や鍛鋼材(以下、鋼材と称す)及び鋳鋼材があるが、このような厳しい用途には、従来、鋼材が用いられてきた。これは、鋳鋼材は同一強度の鋼材と比較した場合、延性、靱性が低く、ユーザーの要求を満たすことが難しかったからである。
一方、鋼材はその製造プロセスの関係から、製品形状の自由度が制限される。最近になって軽量化要求がますます強くなる傾向にあり、需要者は軽量化するために薄肉で複雑な部品形状を求めようになっており、鋼材ではこのような需要者の要求に十分対応できないという問題が顕在化してきている。
上記の背景から、近年、高強度と延性、靱性を兼ね備えた鋳鋼材の開発が行われるようになってきた。しかし、1000MPa以上の強度(引張強さ)を有し、しかも延性(伸び12%以上、絞り40%以上)、靭性(衝撃値60J/cm2以上)を併せ持った鋳鋼材は実現されていなかった。
以下、従来技術の内容について関連する特許文献を示して説明する。
例えば特許文献1では、焼入性倍数αや溶接性指数βにより成分組成を限定した鋳鋼材が提案されており、特許文献2では、ベイナイトパラメータβや高じん性倍数δ、炭素当量、溶接割れ感受性により成分組成を限定した鋳鋼材が提案されている。
また、本願発明者らによる特許文献3では、熱処理時の冷却速度の影響が小さく、均一なベイナイト組織となる成分組成を見出し、強度のばらつきの少ない高延靭性鋳鋼材を実現している。
特許第3509634 特許第3536001 特開2001−329332
しかし、従来技術による鋳鋼材のうち、特許文献1及び特許文献2はいずれも引張強さが700MPa前後であり、特許文献3においても引張強さは800〜900MPaに留まっている。また、特許文献3では、靭性を保つためにP、Sの含有量を極めて低く管理する必要があり、このためには使用原料の吟味や溶解時の精錬等が不可欠であり、その適用には制限があった。
このように、従来技術による鋳鋼材では、1000MPa以上の引張強さと高い延性(伸び12%以上、絞り40%以上)、靭性(衝撃値60J/cm2以上)を同時に得ることは実現されていない。
このような背景に鑑み、本発明は高い強度(引張強さ)と延性、並びに靱性を併せ持ち、しかも実用材料には欠かせない鋳造性や溶接性にも優れた鋳鋼材を得るために、最適な化学組成を見出すことを目的とする。
請求項1記載の発明は、
重量%で、C:0.12(超)〜0.20%、Si:0.15〜0.7%、Mn:0.4〜1.0%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Ni:3.0〜4.0%、Cr:0.15〜0.4%、Mo:0.30〜0.50%、V:0.05〜0.15%、N:0.005〜0.02%、Ca:0.01〜0.05%を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする
構造用高強度鋳鋼材である。
請求項2記載の発明は、Ca量が、重量%で、S×2.5≦Ca≦S×4.5の関係を満足することを特徴とする構造用高強度鋳鋼材である。
請求項3記載の発明は、CaをNi−Ca合金によって添加することを特徴とする構造用高強度鋳鋼材である。
請求項4記載の発明は、V量が、重量%で、(C+N)×0.4≦V≦(C+N)×0.8の関係を満足する構造用高強度鋳鋼材である。
請求項5記載の発明は、C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Mo/4+Cr/5+V/14で示される炭素当量の値が、0.6%以下であることを特徴とする構造用高強度鋳鋼材である。
請求項6記載の発明は、引張強さ≧1000MPa、伸び≧12%、絞り≧40%、衝撃値≧60J/cm2(JIS3号試験片、20℃)を同時に満足することを特徴とする構造用高強度鋳鋼材である。
本発明によれば簡易な熱処理により、優れた強度及び延性、靱性を持ち、かつ溶接性も良好な鋳鋼品が製造可能であり、その素材の応用範囲は広く、効果はきわめて顕著である。
本発明者は、以下の手段によって上述した問題を解決した。
すなわち、焼入れ・焼戻熱処理を施した鋳鋼材において、高強度、高延性、高靭性を兼ね備え、焼戻温度に対する感受性が低く、かつ鋳造性、溶接性にも優れた鋳鋼材の成分組成を見出した。
具体的には、
a.鋳鋼材の強度と延性、靭性のバランスを図るCの添加量を定めた。
b.1000MPa以上の引張強さと12%以上の伸びを併せ持つ、Niの添加量を定めた。
c.V炭窒化物を生成させ、焼戻しや溶接熱影響等の熱履歴に鈍感で、しかも機械的性質を向上させるC、N、Vの添加量の割合を定めた。
d.S量に応じたCa量を添加して硫化物をCa硫化物として、延性、靭性を高めるための添加量を定めた。
e.溶接性を高めるべく、炭素当量の上限値を定めた。
以下、本発明鋼の基本成分範囲(重量%)の限定理由について、各成分ごとに述べる。
・C:0.12(超)〜0.20%
Cは鋳鋼材の強度及び焼入性を向上させるのに有効な元素である。また、VやNと結びついて炭窒化物を形成し、焼戻軟化抵抗性を向上させ、熱処理条件の管理が容易になる他、溶接熱影響部の機械的性質の低下を防止する。
0.12%以下では1000MPa以上の引張強さを得ることができず、また0.20%を超えると延性、靭性が低下し、溶接割れが発生しやすくなる。
従って、C添加量は0.12(超)〜0.20%と定めた。
・Si:0.15〜0.7%
Siは脱酸及び湯流れ性の改善を目的として添加する元素である。0.15%未満では溶鋼の湯流れ性が低く、鋳造品質の劣化を招く。
Siはフェライト生成元素であり、冷却速度が遅い厚肉部にフェライトを析出させ、強度が低下することから上限値を0.7%とした。
従って、Si添加量は0.15〜0.7%と定めた。
・Mn:0.4〜1.0%
Mnは鋳鋼材の強度及び焼入性向上に有効な元素であり、脱酸効果も有す。0.4%未満ではその効果が少なく、1.0%を超えると延性、靭性が低下するとともに溶接性を劣化させる。
従って、Mn添加量は0.4%〜1.0%と定めた。
・Ni:3.0〜4.0%
Niは高強度と延性、靭性、及び良好な溶接性を同時に得ようとする本発明において最も重要な元素である。
Niは鋳鋼材の強度及び焼入性に有効な元素であるが、同様の効果のある他の元素と異なり、延性、靭性や溶接性に及ぼす悪影響が非常に小さい。また、Niはオーステナイト安定化作用の大きい元素であり、フェライト変態域を長時間側へ移動させ、ベイナイト変態域が拡大することにより、冷却速度の遅い厚肉部においてもフェライト析出を抑え、高い強度が得られる。
図1は、鋳鋼材におけるNi含有率とその機械的性質の関係を図示した図である。本図は、Ni以外の元素を固定して、Ni単独の引張強さ及び伸びに与える効果を調べたものである。
横軸にNi含有率(単位:重量%)、左の縦軸にNiを含有させた鋳鋼材の引張強さ(単位:MPa)を、右側の縦軸に鋳鋼材の伸び(単位:%)を示す。Niの含有率を1.5%から5%まで増やしたときの引張強さの変化、及び伸びの変化を示す。
本図から、Ni3.0%未満では1000MPa以上の引張強さが得られず、4.0%を超えると12%以上の伸びが得られなくなる。従って、1000MPa以上の強度(引張強さ)と12%以上の伸びを併せ持つためのNi添加量を3.0〜4.0%の範囲と定めた。
ここで伸びとは、以下の定義による。
伸び(%)=(破断後の標点間距離―原標点間距離)x100/原標点間距離
・Cr:0.15〜0.4%
Crは鋳鋼材の強度向上に有効な元素である。0.15%未満ではその効果が少なく、0.4%を超えるとフェライト変態域を拡大して、冷却速度が遅い厚肉部にフェライトを析出させ、強度が低下するとともに炭素当量が増加し、溶接性を低下させる。
従ってCr添加量は0.15〜0.4%の範囲と定めた。
・Mo:0.30〜0.50%
Moは鋳鋼材の焼入性を高め、強度向上に有効な元素である。0.30%未満ではその効果が少なく、0.50%を超えるとフェライト変態域を拡大して、冷却速度が遅い厚肉部にフェライトを析出させ、強度が低下するとともに炭素当量が増加し、溶接性を低下させる。
従ってMo添加量は0.30〜0.50%の範囲と定めた。
・V:0.05〜0.15%
VはCやNと結びついて炭窒化物を形成し、焼戻軟化抵抗性を高めることにより、焼戻熱処理時の強度維持に有効な元素であり、焼戻熱処理条件管理が容易になる他、溶接熱影響部の機械的性質の低下を防止することができる。
0.05%未満ではその効果が不十分で、0.15%超では延性、靭性が低下する。
従ってV添加量は0.05〜0.15%の範囲と定めた。
・P:0.015%以下
・S:0.015%以下
P及びSは、母材の靱性に大きな影響を及ぼす元素である。それぞれ0.015%を超えて含有されると母材の靱性を著しく低下させる。
従ってP及びSの含有量を0.015%以下と定めた。
・N:0.005〜0.02%
Nは、CやVと結びついて炭窒化物を形成し、焼戻軟化抵抗性を高めることにより、焼戻熱処理時の強度維持に有効な元素であり、熱処理条件の管理が容易になる他、溶接熱影響部の機械的性質の低下を防止する。
0.005%未満ではその効果が小さく、0.02%を超えると靱性に悪影響を及ぼすとともに鋳物にガス欠陥を生じやすくなる。
従ってNの添加量を0.005〜0.02%の範囲と定めた。
・(C+N)×0.4≦V≦(C+N)×0.8
上述したように、VはC及びNと結びついて炭窒化物を形成することにより機械的性質を向上させる。このためには、Vが(C+N)×0.4未満では十分な強度が得られず、(C+N)×0.8超では延性、靭性の低下が無視できなくなるとともに強度向上効果が小さくなる。
従って(C+N)×0.4≦V≦(C+N)×0.8と定めた。
・Ca:0.01〜0.05%
・S×2.5≦Ca≦S×4.5
CaはSと結びついて高融点硫化物を形成し、低融点のFeSやMnSが結晶粒界で生成するのを防止し、延性、靭性を向上させる効果がある。
Sを0.015%以下含有する場合において、Caが0.01%未満ではその効果が小さく、0.05%を超えるとS量に対して過剰になり、材料費の増大を招く。
従ってCaの添加量を0.01〜0.05%の範囲と定めた。
さらに、Ca添加量をS量に応じて調整することが好ましい。
SをCaSとして無害化するのに必要なCa量は、化学量論的にはCa≧S×1.25であるが、歩留りを考慮してCa≧S×2.5とした。
Ca≧S×4.5では過剰になり、介在物の生成及び巻込みの問題が出てくるとともに材料費の増大を招く。
従って、Caの添加量はS×2.5≦Ca≦S×4.5の範囲と定めた。
なお、Caの添加はCa−Si等のCa含有合金で添加することも可能であるが、Caは酸素との反応性が高く、高歩留りで添加するためには、95%のNi及び5%のCa等のNi−Ca合金で添加することが好ましい。
・C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Mo/4+Cr/5+V/14≦0.6%
金属材料の溶接の難易度(溶接割れが生じるか否か等)を「溶接性」と呼ぶ。また、溶接性を評価する指標として「炭素当量」がある。炭素当量が大きくなると熱影響部の硬さが高くなり、溶接割れが発生し易くなる。
C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Mo/4+Cr/5+V/14
で示される炭素当量が0.6%を超えると硬化性が大きくなるため、低温割れの発生や溶接部の延性低下などを防止するには特別な熱管理が必要になる。
従って炭素当量は0.6%以下と定めた。なお、必要に応じて、本発明組成範囲で溶接構造用鋳鋼品(JIS G5102)鋼種と同等の炭素当量に調整することも可能である。
上記組成を有する本発明における合金の残部は、実質的に鉄からなる。すなわち、不可避不純物や本発明の効果を損なわない範囲の微量添加元素は許容される。
(実施例)
本発明の実施例について以下、説明する。
図4の表1、及び図5の表2に示す化学組成の鋳鋼材サンプル材(No1〜29)を溶解容量50kgの高周波誘導炉で大気溶解し、幅100mm×長さ220mm、板厚50mm及び100mmのサンプル材を鋳造した。
表1、2の縦欄にサンプル材のNoを、横欄にそれぞれのサンプル材における化学組成の値(単位:重量%)及び炭素当量(Ceq)を示す。表1に示すサンプル材No1〜12は、本発明によるサンプル材、表2に示すサンプル材No13〜29は比較品を示す。
また、V範囲の欄には、Vの含有量を(C+N)×0.4、(C+N)×0.8とそれぞれ比較するためにこれらの値を、Ca範囲の欄には、CaとSの含有量を比較するためにS×2.5、S×4.5の値を示す。Ceq欄は、それぞれのサンプル材の炭素当量を示す。なお、表1、表2に示す数値の単位はすべて重量%である。
これらのサンプル材は、900℃で2時間保持した後に油冷し、引き続き600℃で焼戻処理を行った。
このサンプル鋳鋼材から引張試験用としてJIS−Z2201、4号試験片、シャルピー衝撃試験用としてJIS−Z2202、3号(Uノッチ)試験片を作成した。
引張試験により引張強さ、伸び、及び絞りを測定し、シャルピー衝撃試験により衝撃値を測定して靭性を評価した。これらの試験はいずれも室温(20℃)で行った。
図6の表3に、本実施例による各サンプル材の機械的性質を示す。
表3のサンプル材No1〜12は、本発明によるサンプル材の、サンプル材No13〜29は比較品の機械的性質を示す。
縦欄にサンプル材のNoを、横欄に、板厚50mm(薄肉材)、100mm(厚肉材)の各サンプル材での引張強さ(単位:Mpa)、板厚50mm材での伸び(単位:%)、絞り(単位:%)及び室温でのシャルピー衝撃試験での衝撃値(単位:J/cm)を示す。
なお、本実施例において、
伸び(%)=(破断後の標点間距離―原標点間距離)x100/原標点間距離
絞り(%)=(原断面積―破断後の最小断面積)x100/原断面積
シャルピー衝撃値(J/cm2)=W・r(cosβ―cosα)/原断面積
ここに、
W:ハンマーの重量による負荷(N)
r:ハンマーの回転軸中心から重心までの距離(m)
α:ハンマーの持ち上げ角度(度)
β:試験片破断後のハンマーの振り上がり角度(度)
原断面積=0.8cm2
である。
本発明による鋳鋼材であるサンプル材No.1〜12では、いずれの板厚(50mm、100mm)でも1000MPa以上の引張強さと12%以上の伸び、40%以上の絞り、及び60J/cm2以上の衝撃値を示している。
一方、比較材であるNo.13〜29で示されるサンプル材は、化学組成が本発明の範囲外であるため、所望の特性を満たせない結果となった。
No.13、17、19、22は強度については所望の値を満足しているものの、それぞれC、Mo、V、Nの添加量が本発明で規定する含有量より多いため、No.17、19、22では所望の伸び、靱性が得られなかった。またNo.13では、衝撃値は60J/cm2以上であり、所望の靭性が得られたが、伸びが不足していた。
No.15、26、27はNiが、No.18はVが本発明で規定する含有量より少ないために強度が不足した。
No.14、16はそれぞれSi、Crが過剰であり、厚肉材(板厚100mm)において焼入性が不十分だったために強度が不足した。
No.20、21、23〜25は単独では本発明で規定する範囲の化学組成であるが、No.20はV≧(C+N)×0.4を満足しなかったため厚肉材での強度が不足し、またNo.21ではV≦(C+N)×0.8を満足せず、所望の伸び、靭性が得られなかった。
No.23はCa≧S×2.5を満足せず、硫化物の形態制御が不十分だったために所望の伸びが得られなかった。またNo.24ではCa≦S×4.5を満足せず過剰であり、No.25は炭素当量(Ceq)が0.6を超えたためにいずれも伸び、靭性が不足した。
図2は、サンプルNo.2(本発明品)と、炭素当量が規定を超えたNo.25(比較材)の溶接後の母材、溶接金属及び熱影響部(HAZ、Heat Affected Zone)の硬さ分布を比較したグラフである。
縦軸は、荷重10kgでのビッカース硬さ(Hv)を、横軸は、溶接部からの距離(単位:mm)を示す。
本発明に係る鋳鋼材のサンプル材(No.2)では、溶接熱影響部におけるビッカース硬さは平均値で Hv 345であり、通常、溶接割れの発生防止に必要とされるビッカース硬さの上限値であるHv 350より小さい値であった。
一方、比較材であるサンプル材(No.25)では、炭素当量が0.6を超えたため、溶接熱影響部のビッカース硬さが平均値でHv 385であり、上限値であるHv 350を大きく超えており、所望の溶接性が得られなかった。
本実験での、サンプル材を溶接したときの溶接方法、及び硬さ測定要領を、図3(1)により簡単に説明する。
7mm離した板厚50mmのサンプル材2枚のうち、1枚に角度35度の傾きを設けてサンプル材を溶接し、サンプル材上面から10mm下の位置の硬さ分布を測定した。その溶接条件を図3(2)に示す。
図7に示す表4は、板厚50mmのサンプル材における焼戻温度とそれぞれの焼戻温度における引張強さ等の機械的性質の関係を示すものである。
表4の縦の欄には焼戻温度を、横の欄にはサンプル材No.11(本発明品)と、V≧(C+N)×0.4を満足しなかったサンプルNo.20(比較材)の引張強さ(単位:Mpa)、伸び(単位:%)、絞り(単位:%)及び室温におけるシャルピー衝撃試験での衝撃値(単位:J/cm2)の比較を示す。
表4に示すように、焼戻温度の変化に対して機械的性質の変動が本発明鋼サンプル材No.11では比較例サンプル材No.20に比べて少ないことが分かる。これは、焼戻温度に応じて固溶していたVが微細な炭窒化物として析出し、焼戻軟化を相殺するためである。
図8に示す表5は、発明鋼サンプル材No.2における溶接前と溶接後(溶接のまま)の機械的性質を調べた結果である。
引張試験片は、図3(1)に示す溶接継手部が試験片の平行部中央に、衝撃試験片は溶接熱影響部が切欠き位置となるように切出して試験を行った。この結果、溶接前と溶接後(溶接のまま)でシャルピー衝撃試験での衝撃値の劣化がなく、また、破断位置が母材でなく溶接金属部であったことから、母材の強度低下もないことが確認できた。
図1は、鋳鋼材におけるNiの含有率とその機械的性質の関係を図示した図である。 図2は、本発明によるサンプル材と比較品のサンプル材の溶接性を比較した図である。 図3(1)は、溶接部硬さの測定要領を示した図である。図3(2)は溶接条件を示す図である。 図4は、本発明品に係るサンプル材の化学組成を示す図(表1)である。 図5は、比較品のサンプル材の化学組成を示す図(表2)である。 図6は、サンプル材の機械的性質を示す図(表3)である。 図7は、本発明品と比較品の各焼戻温度での機械的性質を比較した図(表4)である。 図8は、本発明品の溶接前後での機械的性質を比較した図(表5)である。
符号の説明
1:母材
2:溶接金属

Claims (6)

  1. 重量%で
    C :0.12(超)〜0.20%
    Si:0.15〜0.7%
    Mn:0.4〜1.0%
    P :0.015%以下
    S :0.015%以下
    Ni:3.0〜4.0%
    Cr:0.15〜0.4%
    Mo:0.30〜0.50%
    V :0.05〜0.15%
    N :0.005〜0.02%
    Ca:0.01〜0.05%
    を含有し、残部はFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする構造用高強度鋳鋼材。
  2. 前記Ca量が、重量%で
    S×2.5≦Ca≦S×4.5
    の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の構造用高強度鋳鋼材。
  3. 前記CaをNi−Ca合金によって添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の構造用高強度鋳鋼材。
  4. 前記V量が、重量%で
    (C+N)×0.4≦V≦(C+N)×0.8
    の関係を満足する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造用高強度鋳鋼材。
  5. 前記成分が、
    C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Mo/4+Cr/5+V/14
    で示される炭素当量の値が、0.6%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の構造用高強度鋳鋼材。
  6. 引張強さ≧1000MPa、伸び≧12%、絞り≧40%、衝撃値≧60J/cm2(JIS3号試験片、20℃)を同時に満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の構造用高強度鋳鋼材。
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