JP4786070B2 - 転写用薄膜複合体及びその製造方法 - Google Patents

転写用薄膜複合体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写用薄膜複合体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、布、紙、木、プラスチック、ガラス、陶磁器等の表面に文字、模様、絵、写真等を転写するため、あるいは、燃料電池の電解質膜の表面に白金担持カーボン等の触媒電極を転写するために用いられる転写用薄膜複合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、壁紙用生地、衣料用生地、バッグ用生地等のプリント、ポスター、看板、ショーウインドー等の紙、プラスチックフィルム、ガラス板、金属版等へのプリント装飾する方法として、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷で行われていた。しかし、これらの方法では、多数の高価な印刷原盤・ドラムを用意しなければならず、その上、これの作製に時間がかかるばかりでなく、納期に迅速に対応できなく、また写真調な模様・柄となると版合わせや、色合わせが困難であり、熟練技術者が必要であり、しかも画質の点でも、被印刷物の表面が平坦でなければならず、表面に凹凸のある布、キャンバス、不織布、和紙等では原稿の再現性は困難であり、印刷インキの溶剤が作業環境内に揮発し、これの排除に費用がかかり、大量にプリント物を生産しないとコスト高となるので、小ロットのプリント物を安く早く生産する方式としては、適さない方式である。
【0003】
一方、近年の電子複写手段の発展に伴い、画像形成装置により形成された文字、模様、絵、写真等のトナー画像、または彩色材料で手描きされた画像等を転写対象物表面に転写することができる転写シート(転写紙、転写材、転写基材、転写プロセス材等と呼称されることもある。)が実用化され、需要が拡大しつつある。
その理由は、転写シートの文字、模様、絵、写真等のトナー画像、または彩色材料で手描きされた画像等は、近年発達した(カラー)複写機や、手描きで簡単な操作、小ロット、短時間に形成することができるからである。
例えば、オーダーメードのTシャツやトレーナー、エプロン、ジャンバー、テーブルクロス、自動車、オートバイ等の車体、コップ、皿、ステンドグラス、ポスター、複写絵画のような個人向けの小ロットの製品の製造には適しているからである。
かかる転写シートは、転写対象物の物性、使用環境、製造数量等の相違、転写作業性、転写シートの製造コスト、廃棄材の発生の有無等を考慮し、各種のタイプのものがあるが、湿式転写タイプと乾式転写タイプに大別される。
【0004】
湿式転写タイプとしては、水透過性の台紙の表面に水溶性樹脂を主体とする剥離層、転写対象物表面に接着性を有する接着剤層、画像が形成される画像保持層が順次積層されている。このような転写シートの画像保持層を、転写対象物表面に転写するには、転写シートを水中に浸漬し、水溶性樹脂を主体とする剥離層を溶解させることで画像保持層/接着剤層を台紙から剥離可能とし、台紙からスライド剥離させた画像保持層/接着剤層をガラス、プラスチック等の転写対象物表面に貼りつけ、乾燥して転写画像を形成させるものである。
湿式転写タイプは、乾式転写タイプにくらべ、加熱、加圧処理のために特別な装置を必要とせず、ガラス、プラスチック等の加熱、加圧による変形や破壊を起こす基材にも問題なく転写でき、任意の曲面形状のものにも簡単に転写できるが、水中に浸漬後、画像保持層/接着剤層膜をスライド剥離させて、転写対象物表面に仮置きした場合、接着剤層は常温で接着性を有するために、すぐに部分的に接着してしまい、位置の修正が困難であったり、シワが入った場合、シワを取り除くことが困難であるという問題点もある。
【0005】
乾式転写タイプとしては、紙、プラスチック等のシート上に、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂からなる剥離層を形成し、その上に、メタアクリル酸メチル−n−ブチル共重合体、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、ポリ塩化ビニル系ラテックス、塩化ビニル−アクリレート系ラテックス等から選択された低温溶融性接着剤層を形成し、更にその上に、画像が形成される画像保持層が順次積層されている。また、上記転写シートにおいて、先に画像保持層を形成し、その上に接着剤層を形成させたタイプもある。このような転写シートの画像保持層を、転写対象物表面に転写するには、転写シートの剥離層から画像保持層/接着剤層を引剥がすことにより台紙から剥離可能とし、台紙からスライド剥離させた画像保持層/接着剤層をガラス、プラスチック等の転写対象物表面に貼りつけ、転写画像を形成させるものである。
転写対象物表面に画像を転写する場合も、画像保持層/接着剤層膜をスライド剥離させて、転写対象物表面に仮置きした場合、接着剤層は常温で接着性を有するために、すぐに部分的に接着してしまい、位置の修正が困難であったり、シワが入った場合、シワを取り除くことが困難であるという問題点もある。
【0006】
上記した湿式タイプ及び乾式タイプの転写シートは、台紙やプラスチックシートの上に剥離層を形成しなければならず、また画像保持層/接着剤層を形成しなければならず、製造コストがかかり、転写作業も熟練を要する。
また、画像保持層は、通常、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の高分子重合体が使用されているが、電子複写手段による画像形成装置からのトナーとの接着性が、十分ではなく、この原因は、画像保持層のトナーとの濡れ性が不十分なものと推定される。
【0007】
また、本発明の他の目的である、燃料電池の電解質膜の表面に白金担持カーボン等の触媒電極を形成する方法については、これまでの従来技術は以下のような状況である。
燃料電池では、アノードでは、水素ガスを水素イオン(プロトン)と電子にする反応がおこり、カソードでは、酸素ガスと水素イオンおよび電子から水を生成する反応する。アノードで発生した水素イオンは、水和状態となって電解質膜(パーフルオロアルキレンを主骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテル側鎖の末端にスルホン酸基、カルボン酸基等のイオン交換基を有するフッ素樹脂系膜である。デュポン社のNafion膜、ダウ社のDow膜、旭化成(株)のAciplex膜、旭硝子(株)のFlemion膜等が知られている。)の中をカソードに移動する。
電解質膜の表面にはアノード、カソードと、他に白金担持カーボン等の触媒電極が形成される。その方法として、触媒粒子とPTFEの分散液を混合しシート状に形成後、電解質と接着する方法や、触媒と膜溶液の混合液を電解質膜に塗布する方法や、PTFEなどの転写用シートに触媒と膜溶液の混合液を塗布した後に電解質膜に転写する方法など様々な方法がある。
しかし、電極反応面積の効果的な増加とともに、反応ガス供給、生成水の逸散などの物質移動が容易な電解質構造、白金利用率向上等を考慮すると必ずしも十分ではなく、量産化が好ましいと思われる方法においても良好な転写シートはなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、濡れ性及び剥離性に優れ、剥離層の形成が簡単で、画像形成剤(トナー)或いは燃料電池用の電極触媒の形成性にすぐれた転写シートに用いられる転写用薄膜複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、表面に凹凸又は微孔を有する基材の少なくとも最上面に、オリゴマー又は高分子物質からなる被覆薄膜を形成してなる転写用薄膜複合体において、基材としてポリオレフィン系フィルムを、さらに被覆薄膜を形成するオリゴマー又は高分子物質として沸点が100℃以上で、かつ表面張力が30dyne/cm未満である特定の材料を選定すると、所望とする転写用薄膜複合体が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、表面に凹凸又は微孔を有する基材(A)の少なくとも最上面に、オリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜を形成してなる転写用薄膜複合体であって、該基材(A)は、ポリエチレン微多孔膜であり、さらに、該オリゴマー又は高分子物質(B)は、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30×10 −5 /cm未満であるオルガノポリシロキサンであり、転写用薄膜複合体は基材(A)に対して、重量比で3倍未満、厚さ比で2倍未満であることを特徴とする転写用薄膜複合体が提供される。
【0012】
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、転写用薄膜複合体は、基材(A)に対して、重量比で2倍未満、厚さ比で1.5倍未満であることを特徴とする転写用薄膜複合体が提供される。
【0015】
また、本発明の第の発明によれば、表面に凹凸又は微孔を有するポリエチレン微多孔膜基材(A)の少なくとも最上面に、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30×10 −5 /cm未満であるオルガノポリシロキサンを溶融状態又は溶液状態で塗布させ、該オルガノポリシロキサンからなる被覆薄膜を、それと基材(A)とからなる複合体が、基材(A)に対して、重量比で3倍未満、厚さ比で2倍未満となるように、形成させることを特徴とする第1〜5の発明のいずれかに係る転写用薄膜複合体の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第の発明によれば、表面に凹凸又は微孔を有するポリエチレン微多孔膜基材(A)の少なくとも最上面に、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30×10 −5 /cm未満であるオルガノポリシロキサンを溶融状態又は溶液状態で浸漬させ、該オルガノポリシロキサンからなる被覆薄膜を、それと基材(A)とからなる複合体が、基材(A)に対して、重量比で3倍未満、厚さ比で2倍未満となるように、形成させることを特徴とする第1〜5の発明のいずれかに係る転写用薄膜複合体の製造方法が提供される。
【0017】
本発明は、上記した如く、本発明の転写用薄膜複合体及びその製造方法に係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)本発明の第1の発明において、表面に凹凸又は微孔を有する基材(A)がポリオレフィン微多孔膜である転写用薄膜複合体。
(2)上記(1)において、ポリオレフィン微多孔膜に用いられるポリオレフィンが、重量平均分子量1×10〜15×10であることを特徴とする転写用薄膜複合体。
(3)上記(1)において、ポリオレフィン微多孔膜に用いられるポリオレフィン又はポリオレフィン樹脂組成物の重量平均分子量/数平均分子量(以下、「Mw/Mn」という。)が、5〜300であることを特徴とする転写用薄膜複合体。
(4)上記(1)において、ポリオレフィン微多孔膜に用いられるポリオレフィン又はポリオレフィン樹脂組成物に使用されるポリオレフィンが、ポリプロピレン又はポリエチレンであることを特徴とする転写用薄膜複合体。
(5)上記(2)において、ポリオレフィン微多孔膜に用いられるポリオレフィンが、重量平均分子量50万以上のポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂組成物であることを特徴とする転写用薄膜複合体。
(6)上記(5)において、ポリオレフィン微多孔膜に用いられる重量平均分子量50万以上のポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂組成物が、重量平均分子量50万以上の超高分子ポリエチレンと重量平均分子量1万以上50万未満の高密度ポリエチレンからなる樹脂組成物であることを特徴とする転写用薄膜複合体。
【0018】
(7)上記(5)において、ポリオレフィン微多孔膜に用いられる重量平均分子量50万以上のポリオレフィンを含有するポリオレフィン樹脂組成物が、重量平均分子量50万以上の超高分子ポリエチレンと重量平均分子量1万以上50万未満の高密度ポリエチレンとシャットダウン機能を付与するポリオレフィンとからなり、該シャットダウン機能を付与するポリオレフィンが、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、分子量1000〜4000の低分子量ポリエチレン又はシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体の中から少なくとも一つ選ばれたものであることを特徴とする転写用薄膜複合体。
(8)透気度≦800秒/100ccである前記ポリオレフィン微多孔膜に用いた前記転写用薄膜複合体。
(9)引張強度≧100MPa(約1100Kg/cm)、突刺強度≧5500mN/25μm(今までの600g/25μm)である前記ポリオレフィン微多孔膜に用いた前記転写用薄膜複合体。
(10)(B)として使用される高分子がポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリフルオロビニリデンである前記転写用薄膜複合体。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の転写用薄膜複合体及びその製造方法について各項目毎に詳細に説明する。
【0020】
1.基材(A)
本発明の転写用薄膜複合体の基材(A)としては、接触界面の面積が広く、薄く屈曲性があることが必要であり、突起やくぼみや孔を有するフィルム、貫通孔を有する不織布や微多孔膜などを用いることができる。突起やくぼみや孔は、フィルム製造工程で微粒子や繊維状物質を混合する方法、二次的にエンボス加工やニードル加工を利用して形成させることができる。それらの中では、下記のポリオレフィン微多孔膜が好適である。
【0021】
1.1 ポリオレフィン微多孔膜
本発明の転写用薄膜複合体の基材(A)として用いられるポリオレフィン微多孔膜は、特に限定されるものではなく、公知のものならば、いかなる材質の、いかなる製法によるものであってもよい。
ポリオレフィン微多孔膜に使用されるポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体または共重合体が挙げられる。その際、これらの単独重合体または共重合体は、単独で使用することができるが、2種以上のものを配合して用いてもよい。
【0022】
これらの中では、微多孔の形成性および機械的強度の観点などから、高分子量ポリエチレン、特に重量平均分子量が5×10〜15×10となるものを含有し、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が5〜300の高密度の超高分子量ポリエチレンが好ましい。このようなポリエチレンは、単体または組成物のいずれであってもかまわない。
【0023】
ここで、2種以上のポリオレフィンを配合する好ましい態様としては、重量平均分子量50万以上の超高分子畳ポリエチレンと重量平均分子量1万以上50万未満の高密度ポリエチレンとからなる組成物がある。その際、該組成物中に、さらに、シャットダウン機能を付与することのできる第3のポリオレフィン成分として、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、分子量1000〜4000の低分子量ポリエチレン又はシングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体の中から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィンを配合してもよい。
【0024】
また、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、限定されるものではないが、特開昭60−242035号や特開平3−64334号に記載の方法で行えばよい。例えば、次のようにして行うことができる。
まず、ポリオレフィン組成物を溶媒に加熱溶解することにより溶液を調整する。この溶媒としては、ポリオレフィン組成物を充分に溶解できるものであれば特に限定されず、特開昭60−242035号などに記載のものと同じでよいが、デカリン、キシレンなどの易揮発性の溶媒も用いることができる。加熱溶解は、ポリオレフィン組成物が溶媒中で完全に溶解する温度で撹拌しながら行う。その温度は、使用する重合体及び溶媒により異なるが、140〜250℃の範囲が好ましい。また、ポリオレフィン組成物溶液の濃度は、10〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
次に、ポリオレフィン組成物の加熱溶液をダイから押し出して成形する。ダイは、通常長方形の口金形状をしたシートダイが用いられるが、2重円筒状の中空糸ダイ、インフレーションダイなども用いることができる。シートダイを用いた場合のダイギャップは、通常0.1〜5mmであり、押出し成形時には140〜250℃に加熱される。この際の押出し速度は、通常20〜30cm/分乃至5〜10m/分である。
【0025】
このようにしてダイから押し出された溶液は、冷却することによりゲル状物に成形される。冷却速度は少なくともゲル化温度以下までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。
次に、このゲル状成形物を延伸する。延伸は、ゲル状成形物を加熱し、通常のテンター法、ロール法、インフレーション法、圧延法もしくはこれらの方法の組合せによって所定の倍率で行う。2軸延伸が好ましく、縦横同時延伸又は逐次延伸のいずれもよいが、特に同時2軸延伸が好ましい。延伸温度は、ポリオレフィン組成物の内、ポリエチレンの融点+10℃以下、好ましくは結晶分散温度から結晶融点未満の範囲である。例えば、90〜140℃、より好ましくは、100〜130℃の範囲である。さらに、この延伸膜中に含まれる溶媒を塩化メチレンのような揮発性溶剤で抽出除去し、次いで乾燥、熱セットする。
なお、ポリオレフィン微多孔膜には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、顔料、染料、無機充填剤などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0026】
上記のポリオレフィン微多孔膜は、10〜1000μm、好ましくは50〜500μmの膜厚を有する。厚さが10μm未満では、機械的強度及び取扱の観点から実用に供することが難しい。一方、1000μmを超える場合には、機械的強度は十分すぎるほどあり、厚くなるほど材料費がかさむので望ましくない。また、膜の空孔率は、限定的ではないが、30〜95%、より好ましくは50〜90%の範囲のものである。空孔率が30%未満では、透気度や水蒸気透過度が不十分になる場合があり、一方、空孔率が95%を超えると、膜の機械的強度が小さくなり実用性に劣る。
本発明に用いるポリオレフィン微多孔膜としては、通常、空孔率が30〜95%、膜厚25μmでの透気度が150000秒/100cc以下、好ましくは100000秒/100cc以下、平均貫通孔径が0.005〜1μm、引張破断強度が80MPa以上、好ましくは100MPa以上、突刺強度が3000mN以上、好ましくは5500mN以上の機械物性を有する微多孔膜が望ましい。
【0027】
2.オリゴマー又は高分子物質(B)
本発明の転写用薄膜複合体に用いるオリゴマー又は高分子物質(B)は、沸点が100℃以上で、かつ表面張力が30dyne/cm未満であることが必要であり、かかる物質としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリフルオロビニリデン、又はこれらの共重合体、及びこれらのプレポリマー又はオリゴマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のものが好適である。それらの中では、下記のポリジメチルシロキサンが好適である。
【0028】
2.1 ポリジメチルシロキサン
本発明で用いるオルガノポリシロキサンは、1個のケイ素当たり少なくとも1個以上のケイ素−炭素結合を有し、ケイ素−酸素結合(−Si−O−)を繰り返し単位とする高分子化合物である。例えばシリコーンオイル、シリコーン製ゴムとして市販されている重合度が10以上、好ましくは10〜10000のものが利用できる。重合度が10未満では揮発散逸が無視できなくなり好ましくない。一方、重合度が100を大きく超えると高粘度となり、ゲル状成形物へ均一に充填することが困難となるので、揮発性溶剤で希釈することが好ましい。
【0029】
オルガノポリシロキサンの具体例としては、有機基がメチル基であるポリジメチルシロキサンを基本として、ポリシロキサン鎖の末端又は内部に水素、ビニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、長鎖アルキル基、フェニル基、塩素又はフッ素などが結合した変性ポリシロキサン、更に主鎖に非ポリシロキサン部分を持つもの、例えばアルキレンオキシド変性ポリシロキサン、シリコーン変性共重合体、アルコキシシラン変性重合体などが挙げられる。ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルビニルシロキサン、ポリメチルフルオロビニルシロキサンあるいは末端が水酸基封鎖されたポリジメチルシロキサンなどポリシロキサン鎖の内部又は末端にビニル基あるいは水酸基などを結合した変性ポリシロキサンも用いることができるが、−(CHCHO)−Rのようなエーテル系基を側鎖に持つ変性ポリシロキサンあるいは−〔(CHCOO(CH〕−Rのようなエステル系基を持つ変性ポリシロキサンは、トナーや接着剤との親和性を増す効果が期待される。
【0030】
重合度の高いオルガノポリシロキサンを希釈する際の揮発性溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素、三塩化三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類、その他、メタノール、エタノールなどのアルコール類が挙げられる。なお、上記のオルガノポリシロキサンまたはその希釈溶液には、必要に応じてオルガノポリシロキサンの架橋剤、例えば有機過酸化物、3個以上の官能基を有する有機ケイ素化合物、アルキルオルソシリケート、金属系触媒あるいは合成シリカなどの補強材、その他の添加剤を少量調合してもよい。
【0031】
3.転写用薄膜複合体の製造方法
本発明において、転写用薄膜複合体の製造方法としては、公知の積層技術ならば何でも適用することができ、特に限定されないが、ポリオレフィン系基材の場合には、下記の2つの製造方法が好ましい。その際、採用される製造条件は特に制限がない。これらの方法の中でも、簡便性等の面から塗布法や浸漬法が特に好ましい。
【0032】
3.1 塗布法
この方法では、表面に凹凸又は微孔を有するポリオレフィン系基材(A)の少なくとも最上面に、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30dyne/cm未満であるオリゴマー又は高分子物質(B)を溶融状態又は溶液状態で塗布させ、該オリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜を形成させる。
【0033】
3.2 浸漬法
この方法では、表面に凹凸又は微孔を有するポリオレフィン系基材(A)の少なくとも最上面に、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30dyne/cm未満であるオリゴマー又は高分子物質(B)を溶融状態又は溶液状態で浸漬させ、該オリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜を形成させる。
【0034】
4.転写用薄膜複合体
本発明の転写用薄膜複合体は、表面に凹凸又は微孔を有する基材(A)の少なくとも最上面に、オリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜を形成してなる転写用薄膜複合体であって、該基材(A)は、ポリオレフィン系フィルムであり、さらに、該オリゴマー又は高分子物質(B)は、沸点が100℃以上で、かつ表面張力が30dyne/cm未満であるものである。
また、該転写用薄膜複合体は、基材(A)に対して、重量比で3倍未満、厚さ比で2倍未満であるものである。
さらに、該転写用薄膜複合体は、基材(A)に対して、重量比で2倍未満、厚さ比で1.5倍未満であることが好ましい。
【0035】
4.1 転写用薄膜複合体の転写シートとしての用途
本発明の転写用薄膜複合体は、用途の一つとして乾式転写シートがあるので以下に説明する。
一般的な乾式転写シートとしては、紙、プラスチック等のシート(基材層)上に、シリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂からなる剥離層を形成し、その上に、メタアクリル酸メチル−n−ブチル共重合体、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、ポリ塩化ビニル系ラテックス、塩化ビニル−アクリレート系ラテックス等から選択された低温溶融性接着剤層を形成し、更にその上に、画像が形成される画像保持層が順次積層されている。また、上記転写シートにおいて、先に画像保持層を形成し、その上に接着剤層を形成させたタイプもある。接着剤としては、ホットメルト型接着剤が望ましく(剥離層を設ける必要がない。)、常温粘着型接着剤をもちいる場合は、接着剤層の上に剥離層を設けた方がよい。
【0036】
本発明の転写用薄膜複合体を転写シートとして使用するには、本発明の基材(A)が、一般的な乾式転写シートの紙、プラスチック等のシート(基材層)に相当し、本発明のオリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜が、一般的な乾式転写シートの画像が形成される画像保持層に相当する。
本発明においては、基材(A)とオリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜との間の界面結合力は、弱いので両者は容易に分離できるので、一般的な乾式転写シートのシリコーン系樹脂又はフッ素系樹脂からなる剥離層を設ける必要はなく、従って、従来の一般的な乾式転写シートの層構成とはことなる新規な層構成の転写シートといえる。
本発明の転写シートにおいては、本発明のオリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜が、一般的な乾式転写シートの画像が形成される画像保持層に相当するので、該被覆薄膜上に電子複写装置でトナーを付着させ画像を形成させる。さらに、この画像の上に、被転写体に接着させるための接着層を形成させる。
すなわち、本発明の転写シートは、転写用薄膜複合体/画像/接着層という簡単な層構成のものである。
【0037】
本発明の転写シートの接着層は、転写対象物に貼着させるまでは、容易に他の物質に接着してはならないので、ホットメルト型接着剤を使用することが望ましい。ホットメルト型接着剤とは、常温では非粘着性であるが加熱によって粘着性を発現する感熱性粘着剤である。
【0038】
【実施例】
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例における測定は下記方法に依った。
なお、透気度は、JIS P8117に準拠して測定した。(単位:sec/100cc)
【0039】
実施例1〜2(転写用複合体の製造)
ポリエチレン微多孔膜(東燃化学(株)社製、膜厚23.5μm、平均孔径0.03μm、最大孔径0.05μm、空孔率38%、透気度878sec/100cc)の4辺を金枠に固定し、シリコーン(信越化学工業(株)製、KE−103)20gと、シリコーン(信越化学工業(株)製、CAT−103)1gをn−ヘキサンに希釈混合した溶液に室温で浸漬し、取り出し垂直に保持することにより余分な液を流下させた後、室温にて24時間放置させた。
得られた複合膜の基材に対する重量比、膜厚比と透気度を測定した結果を表1に示す。
【0040】
比較例1(転写用複合体の製造)
実施例と同様な製造方法で、シリコーンの重量比と膜厚比のことなる複合膜を得、その基材に対する重量比、膜厚比と透気度を測定した結果を表1に示す。
【0041】
実施例3(膜の濡れ性試験)
ぬれ指数標準液No.31(和光純薬工業(株)製)を用い、JIS K6768に準じて、濡れ性の評価をした結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
Figure 0004786070
評価
表1から判るように、本実施例では、基材に対するシリコーンの、重量比、膜厚比を限定することにより、シリコーンのそれより濡れ性をある程度維持することができ、さまざまな液状物の塗布性などが改善することが期待される。一方、剥離性については、シリコーンの良好な剥離性が期待される。
【0043】
実施例4(転写用複合体から転写シートの製造)
実施例1で作った転写用複合体の表面に、ミラー画像コピー機能を有するカラー複写機を使用して風景写真のミラー画像を形成させた。
本発明の転写用複合体のシリコーン被覆薄膜では、濡れ性がよいのでミラー画像もきれいに形成された。
画像の上にホットメルト型接着剤層をバーコーターを用いて乾燥後の塗工量が10g/mとなるように塗工し、40℃で2分30秒間乾燥させて転写シートを作った。
【0044】
この転写シートは50℃までの温度ならば、ホットメルト型接着層であるから、表面はサラサラしており、保管・保存は容易である。
この転写シートから、シリコーン被覆薄膜/ミラー画像/ホットメルト型接着剤層からなる転写層は、ポリエチレン微多孔膜から容易に剥離することができ、転写シートを加熱・溶融し、接着剤層の接着性を発現させ、キャンバスシートの上に乗せ加熱ローラーで圧着させた。
シリコーン被覆薄膜は、可撓性にすぐれ、表面に凹凸のあるキャンバスシートにもきれいに貼着することができた。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、濡れ性及び剥離性に優れ、剥離層の形成が簡単で、画像形成剤(トナー)の形成性にすぐれている転写用薄膜複合体が得られるため、従来の転写シートの様に剥離層を設ける手間が省略できる。

Claims (4)

  1. 表面に凹凸又は微孔を有する基材(A)の少なくとも最上面に、オリゴマー又は高分子物質(B)からなる被覆薄膜を形成してなる転写用薄膜複合体であって、該基材(A)は、ポリエチレン微多孔膜であり、さらに、該オリゴマー又は高分子物質(B)は、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30×10 −5 /cm未満であるオルガノポリシロキサンであり、転写用薄膜複合体は基材(A)に対して、重量比で3倍未満、厚さ比で2倍未満であることを特徴とする転写用薄膜複合体。
  2. 転写用薄膜複合体は、基材(A)に対して、重量比で2倍未満、厚さ比で1.5倍未満であることを特徴とする請求項1記載の転写用薄膜複合体。
  3. 表面に凹凸又は微孔を有するポリエチレン微多孔膜基材(A)の少なくとも最上面に、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30×10 −5 /cm未満であるオルガノポリシロキサンを溶融状態又は溶液状態で塗布させ、該オルガノポリシロキサンからなる被覆薄膜を、それと基材(A)とからなる複合体が、基材(A)に対して、重量比で3倍未満、厚さ比で2倍未満となるように、形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の転写用薄膜複合体の製造方法。
  4. 表面に凹凸又は微孔を有するポリエチレン微多孔膜基材(A)の少なくとも最上面に、沸点が100℃以上でかつ表面張力が30×10 −5 /cm未満であるオルガノポリシロキサンを溶融状態又は溶液状態で浸漬させ、該オルガノポリシロキサンからなる被覆薄膜を、それと基材(A)とからなる複合体が、基材(A)に対して、重量比で3倍未満、厚さ比で2倍未満となるように、形成させることを特徴とする請求項1または2に記載の転写用薄膜複合体の製造方法。
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