接近及び離反可能なプレス台及びプレス板と、このプレス台及びプレス板を動作させる駆動機構と、埋込ナットを押圧して当該埋込ナットをベース部材に取り付ける取付治具により、機械で埋込ナットをベース部材に取り付けることのできる埋込ナット取付装置を簡単な構成によって実現した。
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1〜図9は、本発明の実施の形態の例を示すものである。即ち、図1は埋込ナットを備えたパネル板の第1の実施の例を示す説明図、図2は平面図、図3は断面図、図4Aは埋込ナットの第1の実施の例に係る爪付ナットを示す斜視図、図4Bは平面図、図4Cは側面図、図5はベース部材の要部を示す説明図である。
図6は本発明の埋込ナット取付装置の第1の実施例を示す説明図、図7A〜図7Cは埋込ナットの取り付け作業の第1の実施の例を示すもので、図7Aは初期状態を示す説明図、図7Bは取付治具に埋込ナットを取り付けた状態を示す説明図、図7Cはプレスした状態を示す説明図、図8A〜図8Cは埋込ナットの取り付け作業の第2の実施の例を示すもので、図8Aは初期状態を示す説明図、図8Bは保持部材に埋込ナットを取り付けた状態を示す説明図、図8Cはプレスした状態を示す説明図、図9A〜図9Cは埋込ナットの取り付け作業の第3の実施の例を示すもので、図9Aは初期状態を示す説明図、図9Bは取付治具及び保持部材に埋込ナットを取り付けた状態を示す説明図、図9Cはプレスした状態を示す説明図である。
まず、埋込ナットの第1の実施の例を、図4を参照して説明する。図4A〜図4Cに示すように、この埋込ナットは、爪付ナット1である。爪付ナット1は、中空の円筒状をなす本発明の嵌合部の第1の実施例を示す筒軸部2と、この筒軸部2の軸方向の一端から半径方向外側に向けて張り出した本発明の嵌合部の他の実施例を示すフランジ部3等から構成されている。筒軸部2は、中空の円筒状をなしており、その内周面にネジ部4が設けられた本発明の穴の一具体例を示す筒軸穴2aを有している。この筒軸部2の外径(軸径)は、図4Cに示すように、d1に設定されている。
フランジ部3は、筒軸部2の軸方向の一端から半径方向外側に向けて連続して張り出して(展開して)形成されている。フランジ部3は、円板状をなしており、その直径は、図4Bに示すように、d2に設定されている。このフランジ部3は、周縁部から連続して筒軸部2の軸方向の他端に向けて突出する爪部5が設けられている。爪部5は、フランジ部3の周方向に沿って等角度間隔に4つ設けられている。この爪部5は、フランジ部3の周縁部から半径方向に対して直角に切り込みを形成し、これらの切り込みに沿ってフランジ部3の一部を折り曲げることによって形成されている。
次に、前述した爪付ナット1が取り付けられたパネル板の第1の実施の例について、図1〜3及び図5を参照して説明する。図1〜図3に示すように、爪付ナットを備えたパネル板10は、爪付ナット1と、この爪付ナット1が取り付けられるベース部材11から構成されている。
図5に示すように、ベース部材11は、爪付ナット1の筒軸部2が嵌合される嵌合穴12と、この嵌合穴12の縁に当該嵌合穴12の直径よりも大きな直径を有する座グリ穴13が設けられている。このベース部材11の材料としては、木材、合板、集成材、単板積層材、硬化積層材、木材・プラスチック複合材、パーティクルボード、繊維板(中質繊維板:MDF)等の木質材料が用いられる。嵌合穴12及び座グリ穴13は、本発明の凹部の第1の実施例を示している。
嵌合穴12は、ベース部材11を上下方向に貫通する円形の穴として設けられている。この嵌合穴12の直径D1は、爪付ナット1の筒軸部2の外径d1よりも小さく設定されている(d1>D1)。その結果、嵌合穴12と筒軸部2のはめ合いは、しまりばめの関係をなしている。ここで、嵌合穴12と筒軸部2のしめしろは、大きすぎると爪付ナット1を保持する強度が十分に確保できなくなり、小さすぎると爪付ナット1の圧入が困難となるため、0.1mm〜0.5mmが好適であり、好ましくは0.2mm〜0.3mmである。即ち、嵌合穴12の直径D1は、数式(1)を満たす値に設定されている。
〔式1〕
d1−0.5(mm)<D1<d1−0.1(mm)
座グリ穴13は、嵌合穴12の縁に当該嵌合穴12と略同心円状をなして配置されている。この座グリ穴13には、爪付ナット1のフランジ部3が嵌合される。そして、座グリ穴13の直径D2は、爪付ナット1のフランジ部3の直径d2よりも小さく設定されている(d2>D2)。その結果、座グリ穴13とフランジ部3のはめ合いは、しまりばめの関係をなしている。ここで、座グリ穴13とフランジ部3のしめしろは、大きすぎると爪付ナット1を保持する強度が十分に確保できなくなり、小さすぎると爪付ナット1の圧入が困難となるため、0.1mm〜0.7mmが好適である。即ち、座グリ穴13の直径D2は、数式(2)を満たす値に設定されている。また、ねじの呼びがM4等の比較的小さな爪付ナット1では、0.5mm〜0.7mmが好ましく、ねじの呼びがM8等の比較的大きな爪付ナットでは、0.2mm〜0.5mmが好ましい。
〔式2〕
d2−0.7(mm)<D2<d2−0.1(mm)
この座グリ穴13の深さTは、浅すぎると爪付ナット1を保持する強度が十分に確保できなくなるため、3.8mm以上が好適であり、好ましくは4mm以上である。本実施の例では、嵌合穴12と座グリ穴13の角部は、それぞれ面取りされている。これにより、爪付ナット1をベース部材11に取り付ける際に、筒軸部2やフランジ部3の圧入を行い易く構成されている。また、この面取りは、嵌合穴12だけでもよく、或いは座グリ穴13だけに設けてもよい。
上述したような爪付ナット1のベース部材11への取り付け作業は、例えば次のようにして行われる。まず、ベース部材11に設けた嵌合穴12の上方に爪付ナット1の筒軸部2における軸方向の他端側の端部を臨ませる。そして、この爪付ナット1を後述する埋込ナット取付装置15を用いてベース部材11に打ち込む。すると、図3に示すように、爪付ナット1の筒軸部2の端部が嵌合穴12に挿入される。さらに、この爪付ナット1を押圧すると、爪付ナット1の爪部5が座グリ穴13の底面に打ち込まれる。これと同時に嵌合穴12に筒軸部2が圧入される。同様に、座グリ穴13にフランジ部3が圧入される。そして、フランジ部3の底面が座グリ穴13の底面に押し付けられる。これにより、爪付ナット1のベース部材11への取り付け作業が完了する。
このとき、筒軸部2の外周面は、嵌合穴12の側面に押し付けられている。同様に、フランジ部3の外周面は、座グリ穴13の側面に押し付けられている。その結果、爪付ナット1は、爪部5による保持力だけでなく、筒軸部2の外周面が嵌合穴12の側面から受ける押圧力及びフランジ部3の外周面が座グリ穴13の側面から受ける押圧力により、ベース部材11に固定されている。これにより、爪付ナット1を十分な強度で保持することができる。そのため、ステープル等を用いることなく、爪付ナット1の緩みを防ぎ、爪付ナット1がベース部材11から抜け落ちることを防止することができる。
なお、本実施の例では、ベース部材11に爪付ナット1のフランジ部3が圧入される座グリ穴13を設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ナットの呼びがM6やM8等の比較的大きな爪付ナットの場合は、その筒軸部2がベース部材11の嵌合穴12と接触する面積も大きくなる。その結果、筒軸部2の外周面には、嵌合穴12から大きな押圧力がかかる。これにより、爪付ナット1は、ベース部材11に座グリ穴13を設けることなく、十分な固着強度を得ることができる。ここで、他のパネル板10と緩衝する箇所には、座グリ穴13を設け、その他の箇所には、座グリ穴13を設けなくてもよい。これにより、一つのパネル板10の中で、座グリ穴13有りと座グリ穴13無しでの固着方法を併用することができる。
次に、従来の固着方法による爪付ナットの固着強度試験と、本発明の固着方法による爪付ナットの固着強度試験の比較を表1及び表2を参照して説明する。試験方法は、まず、ベース部材11の材質に、繊維材を圧縮して形成した中質繊維板(MDF)を用いた。このベース部材11に、爪付ナット1を表1に示す条件で取り付け、爪付ナット1にボルトをねじ込む。次に、一方でパネル板10を治具で押さえ、他方でボルトの頭を把持して、引張試験機(エーアンドデイ社製 万能材料試験機)により荷重速度2mm/毎分で上方に引っ張る。そして、爪付ナット1がベース部材11から抜け落ちるまでの最大荷重(引き抜き荷重)を測定する。
表1で、No.1、No.2、No.3は、本発明の爪付ナットの固着方法を示しており、No.4、No.5、No.6は従来の爪付ナットの固着方法を示している。ここで、No.3とNo.6は、座グリ穴13をベース部材11に設けずに、爪付ナット1をベース部材11に取り付けている。
ねじの呼びが共にM4であるNo.1とNo.4を比較すると、ステープルを使用しない本発明の爪付ナットの固着方法(No.1)のほうが、表3に示すように、最大荷重が約1.4倍大きくなっている。同様に、ねじの呼びが共にM8であるNo.2とNo.5を比較すると、ステープルを使用しない本発明の爪付ナットの固着方法(No.2)のほうが、表3に示すように、最大荷重が約1.5倍大きくなっている。これにより、本発明の爪付ナットの固着方法(使用方法)によれば、ステープルを用いることなく従来の爪付ナットの固着方法よりも高い固着強度を得ることができる。
また、共に座グリ穴13を設けていない、No.3とNo.6を比較すると、本発明の爪付ナットの固着方法(No.3)のほうが、表3に示すように、最大荷重が約1.3倍大きくなっている。更に、座グリ穴13を設けていない本発明の固着方法(No.3)と座グリ穴13を設けている従来の固着方法(No.5)を比較すると、本発明の爪付ナットの固着方法(No.3)のほうが、表3に示すように、最大荷重が約1.3倍大きくなっている。即ち、ねじの呼びがM8と比較的大きい爪付ナットの場合は、爪付ナット1の筒軸部2の外周面の面積がM4よりも大きいため、ベース部材11の嵌合穴12と接触する面積も大きくなる。その結果、筒軸部2の外周面には、嵌合穴12から大きな押圧力がかかるため、座グリ穴13を設けることなく、十分な固着強度を得ることができる。
このように、本発明による爪付ナットの固着方法を用いた場合は、従来の爪付ナットの固着方法を用いた場合に比べて約1.3倍〜1.5倍の固着強度を有している。これは、従来の固着方法が、ステープルによって単に爪付ナット1を押え付けているだけである。これに対し、本発明の固着方法の場合は、筒軸部2と嵌合穴12の寸法を最適な、しまりばめの嵌め合い関係に設定して圧入固定していることによるものと推測される。
図6は、本発明の埋込ナット取付装置の第1の実施の例を示すものである。この埋込ナット取付装置15は、プレス台16と、このプレス台16と対向して設けられた本発明のプレス板であるプレス上板17と、このプレス上板17を上下方向に昇降動作(プレス台16に接近及び離反するように動作)させる2本の支持軸18,18と、プレス上板17の昇降動作を操作する操作部19と、支持軸18を昇降動作させる駆動機構等から構成されている。駆動機構は、例えばモータとトグル機構から構成されている。プレス台16とプレス上板17の間には、取付治具20が介在している。
なお、本実施の例においては、プレス上板17を上下方向に昇降動作させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、プレス上板17を固定してプレス台16を上下方向に昇降動作させてもよく、或いはプレス台16及びプレス上板17の双方を上下方向に昇降動作させてもよい。
取付治具20は、プレス台16に載置される第1治具板21と、ベース部材11の位置決めを行うガイドピン22と、支持枠23と、プレス上板17に固定される第2治具板31等から構成されている。
第1治具板21は、略平板状をなしており、プレス台16の上面にネジ止め等の固着手段により固定されている。第1治具板21は、所定の箇所にネジ止め等の固着手段により固定される第1ガイド部材25等を備えて構成されている。第1ガイド部材25を第1治具板21に取り付ける位置は、ベース部材11に取り付ける埋込ナット(爪付ナット1)の位置に応じて種々に変更できるものである。また、第1治具板21の端部には、支持枠23が設けられている。
図7Aに示すように、第1ガイド部材25は、第1治具板21の所定の箇所に固定される第1固定板26と、この第1固定板26に座金28を介して立設される第1押圧体27を備えている。
第1固定板26は、略平板状をなして構成されている。第1固定板26は、ベース部材11に設けられた嵌合穴12と上下方向で対応する箇所に第1押圧体27を固定する図に表れないネジ穴が設けられている。この第1固定板26は、固定ネジなどの固着手段により第1治具板21に固定されている。
第1押圧体27は、押圧部27aと、凸部27bと、ネジ軸部27cから構成されている。押圧部27aは、円柱形をなしており、その側面には、二面を平行に切り欠くことによって二面幅部が設けられている。押圧部27aの軸径は、埋込ナットの筒軸部の外径よりも大きく、且つ、フランジ部の直径よりも小さく設定されている。この押圧部27aは、爪付ナット1の取り付け深さに応じた高さに設定されている。
凸部27bは、押圧部27aの一端面の略中心から外側へ突出するように一体に形成されている。凸部27bは、爪付ナット1の筒軸部2の長さと略同一、或いは若干短く設定されている。そして、この凸部27bに、爪付ナット1の筒軸部2の筒軸穴2aが挿脱可能に係合される。また、押圧部27aの凸部27bが設けられた反対側の端面には、ネジ軸部27cが設けられている。
図7A等に示すように、第1押圧体27は、座金28を介してネジ軸部27cを第1固定板26に設けたネジ穴に螺合することによって、第1固定板26に固定される。この第1押圧体27を固定する箇所は、ベース部材11の嵌合穴12と上下方向で対応する位置に設定されている。なお、この実施例では、第1押圧体27を第1固定板26に固定した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1固定板26を無くし、第1押圧体27を、座金28を介して直接第1治具板21に固定してもよい。或いは、第1治具板21を無くし、第1押圧体27を直接プレス台16に座金28を介して固定し、第1押圧体27のみで取付治具20を構成してもよい。
ガイドピン22は、プレス台16の所定の箇所に複数個、立設している。図6に示すように、このガイドピン22にベース部材11及び保持部材32の端部を当接させる。これにより、爪付ナット1を打ち込む際における当該ベース部材11と保持部材32の位置決めを行うことができる。
図6に示すように、支持枠23は、ベース部材11が載置される載置部23aと、この載置部23aの下側に設けられたコイルばね23bから構成されている。コイルばね23bは、一端が載置部23aの下面に取り付けられており、他端が第1治具板21に着脱可能に取り付けられている。この支持枠23は、埋込ナットの取り付け作業時において緩衝材としての役割を果たしている。
第2治具板31は、略平板状をなしており、プレス上板17のネジ等の固着手段によって固定されている。第2治具板31は、所定の箇所にネジ止め等の固着手段により固定される第2ガイド部材33等を備えて構成されている。第2ガイド部材33を第2治具板31に取り付ける位置は、ベース部材11に打ち込む埋込ナット(爪付ナット1)の位置に応じて種々に変更できるものである。
図8Bに示すように、第2ガイド部材33は、第2治具板31の所定の箇所に固定される第2固定板34と、この第2固定板34に座金28を介して立設される第2押圧体35を備えている。
第2固定板34は、第1固定板26と同様に、略平板状をなしており、ベース部材11に設けられた嵌合穴12と上下方向で対応する箇所に第2押圧体35を固定する図に表れないネジ穴が設けられている。この第2固定板34は、固定ネジなどの固着手段によって第2治具板31に固定されている。
第2押圧体35は、押圧部35aと、突起部35bと、ネジ軸部35cから構成されている。押圧部35aは、円柱形をなしており、その側面には、二面を平行に切り欠くことによって二面幅部が設けられている。押圧部35aの軸径は、埋込ナットの筒軸部2の外径よりも大きく、且つ、フランジ部3の直径より小さく設定されている。この押圧部35aは、爪付ナット1の取り付け深さに応じた高さに設定されている。
突起部35bは、押圧部35aの一端面の略中心から外側へ突出するように一体に形成されている。突起部35bは、略円錐形状をなす凸部として構成されている。また、押圧部35aの突起部35bが設けられた反対側の端面には、ネジ軸部35cが設けられている。
図8B等に示すように、第2押圧体35は、座金28を介してネジ軸部35cを第2固定板34に設けたネジ穴と第2治具板に設けたネジ穴31aに螺合することによって、第2固定板34に固定される。この第2押圧体35を固定する箇所は、ベース部材11の嵌合穴12と上下方向で対応する位置に設定されている。なお、この実施例では、第2押圧体35を第2固定板34に固定した例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第2固定板34を無くし、第2押圧体35を、座金28を介して直接第2治具板31に固定してもよい。或いは、第2治具板31を無くし、第2押圧体35を、座金28を介して直接プレス上板17に固定し、第2押圧体35のみで取付治具20を構成してもよい。
また、図6等に示すように、ベース部材11の上面には保持部材32が載置している。保持部材32は、略平板状をなしており、ベース部材11の上面に載置して使用される。この保持部材32は、ベース部材11の上面に重ね合わせると共に、ガイドピン22に端部を当接させた際に、ベース部材11の嵌合穴12と上下方向で対応する位置に、保持穴32aが設けられている。
保持穴32aは、保持部材32を上下方向に貫通する略円形の穴として形成されている。この保持穴32aの直径は、爪付ナット1のフランジ部3の直径d2と略同一、或いはやや大きく設定されている。これにより、ベース部材11の所定位置に所定の大きさの埋込ナットを間違えることなく取り付けることができる。また、保持穴32aの中心とこの保持穴32aと上下方向で対応する第2押圧体35の押圧部35aの中心(突起部35bの中心)は、ほぼ一致している。
次に、このような構成を有する埋込ナット取付装置15を用いた爪付ナット1の取り付け作業の第1の実施の例を、図6及び図7A〜図7Cを参照して説明する。この実施の例では、第2治具板31と保持部材32を使用せずに取り付け作業を行う。まず、図6及び図7Aに示すように、第1治具板21をプレス台16の上面に載置して、ネジ止め等の固着手段により固定する。次に、この第1治具板21に、第1押圧体27とベース部材11の嵌合穴12が上下方向で対応する位置(例えば、押圧部27aの中心と嵌合穴12の中心が上下方向でほぼ一致する位置)に、第1ガイド部材25をネジ止め等の固着手段により固定する。そして、爪付ナット1のフランジ部3を下方向に向けて、筒軸部2の筒軸穴2aを第1押圧体27の凸部27bに挿入する。
次に、図6及び図7Bに示すように、ベース部材11を、支持枠23の載置部23aに載置する。この載置されたベース部材11を、予めプレス台16に取り付けられているガイドピン22にその端部を当接させる。このとき、爪付ナット1の筒軸部2とベース部材11の嵌合穴12が上下方向で対応する位置(例えば、筒軸部2の中心と嵌合穴12の中心が上下方向でほぼ一致する位置)に、ベース部材11と第1ガイド部材25が配置されている。
図6及び図7Cに示すように、埋込ナット取付装置15の操作部19を操作し、支持軸18を下方向にスライドさせてプレス上板17をプレス台16に接近させる。これにより、ベース部材11がプレス上板17に押圧される。そして、ベース部材11が支持枠23のコイルばね23bの付勢力に反して、下方向に移動する。すると、爪付ナット1が、フランジ部3側の端面を押圧部27aの端面に押圧されて、ベース部材11に押し込まれる。これにより、ベース部材11に設けた嵌合穴12に爪付ナット1の筒軸部2が圧入される。同様に、座グリ穴13にフランジ部3が圧入される。そして、座グリ穴13の底面に爪付ナット1の爪部5が打ち込まれる。次に、プレス上板17を上方向に移動させてプレス台16から離反させると、筒軸部2の筒軸穴2aが凸部27bから離脱する。これにより、ベース部材11への爪付ナット1の取り付け作業が完了する。
このとき、爪付ナット1(埋込ナット)は、筒軸穴2aを凸部27bに挿入し、筒軸部2の軸方向がベース部材11に対して垂直になるように保持されている。この保持された状態で、爪付ナット1をベース部材11に圧入して取り付けている。これにより、爪付ナット1の筒軸部2をベース部材11の嵌合穴12に対して曲がることなく、真っ直ぐ圧入することができ、パネル板10の歩留りを向上させることができる。
図8A〜図8Cは、爪付ナット1の取り付け作業の第2の実施の例を説明するものである。この実施の例に係る取り付け作業が、前記第1の実施の例に係る取り付け作業と異なるところは、支持枠23及び第1ガイド部材25を使用しない代わりに、第2治具板31と、保持部材32を用いる点である。本実施の例によれば、ベース部材11に対して上方から埋込ナットを取り付けることができる。そのため、埋込ナットの取り付け位置をベース部材の上方から確認することが出来る。以下、前記第1の実施の例と同様の構成については、同一の符号を付し重複した説明を省略する。
図8Aに示すように、ベース部材11を、第1治具板21の上面に載置させて、ガイドピン22に端部を当接させる。このベース部材11の上面に、保持部材32を、その端部をガイドピン22に当接させて、重ね合わせる。このとき、保持部材32の保持穴32aの位置と、ベース部材11の嵌合穴12の位置は、上下方向で対応している。具体的には、保持穴32aの中心と、嵌合穴12の中心が上下方向でほぼ一致している。次に、図8Bに示すように、重ね合わせた保持部材32の保持穴32aに、爪付ナット1を、筒軸部2の軸方向における他端を下方向に向けて挿入する。
ここで、プレス上板17には、第2治具板31が予め取り付けられている。この第2治具板31に、第2ガイド部材33をネジ止め等の固着手段により固定する。このとき、第2ガイド部材33に設けた第2押圧体35と、ベース部材11に設けた嵌合穴12の位置が上下方向に対応するように設定されている。具体的には、押圧部35aの中心と嵌合穴12の中心が上下方向でほぼ一致している。
次に、図6及び図8Cに示すように、埋込ナット取付装置15の操作部19を操作し、支持軸18を下方にスライドさせてプレス上板17をプレス台16に接近させる。これにより、プレス上板17に取り付けられた第2治具板31も下方向に移動する。そして、第2ガイド部材33の第2押圧体35に設けた突起部35bが、爪付ナット1の筒軸部2に挿入され、押圧部35aの端面が爪付ナット1のフランジ部3の端面を押圧する。さらにプレス上板17が下方向に移動すると、爪付ナット1が保持穴32aから離反して、爪付ナット1の筒軸部2がベース部材11の嵌合穴12に圧入される。同様に、座グリ穴13にフランジ部3が圧入される。そして、座グリ穴13の底面に爪付ナット1の爪部5が打ち込まれる。これにより、ベース部材11への爪付ナット1の取り付け作業が完了する。
このとき、爪付ナット1(埋込ナット)は、保持穴32aに保持され、且つ、筒軸穴2aに突起部35bが挿入されている。その結果、爪付ナット1は、その筒軸部2の軸方向がベース部材11に対して垂直になるように保持されている。この保持された状態で、爪付ナット1をベース部材11に圧入されて取り付けられている。これにより、爪付ナット1の筒軸部2をベース部材11の嵌合穴12に対して曲がることなく、真っ直ぐ圧入することができ、パネル板10の歩留りを向上させることができる。
図6及び図9は、爪付ナット1の取り付け作業の第3の実施の例を説明するものである。この実施の例に係る取り付け作業は、前記第1の実施の例に係る取り付け作業と、前記第2の実施の例に係る取り付け作業を合わせたものである。即ち、この実施の例に係る取り付け作業は、支持枠23と、第1ガイド部材25を用いると共に、第2治具板31と保持部材32も用いて行なう。この実施の例に係る取り付け作業によれば、一回の取り付け作業でベース部材11の上面及び下面に複数の埋込ナットを同時に取り付けることができる。これにより、埋込ナットの取り付け作業の工数を削減することができ、作業効率を向上させることが出来る。
ここで、爪付ナット1が取り付けられるベース部材11には、その下面に第1嵌合穴12aと、第1座グリ穴13aが設けられており、上面に第2嵌合穴12bと、第2座グリ穴13bが設けられている。第1嵌合穴12aには、第1の爪付ナット1aが取り付けられ、第2嵌合穴12bには、第2の爪付ナット1bが取り付けられる。
まず、図6及び図9Aに示すように、第1治具板21をプレス台16の上面に載置して、ネジ止め等の固着手段により固定する。次に、この第1治具板21に、第1押圧体27とベース部材11の第1嵌合穴12aが上下方向で対応する位置に、第1ガイド部材25をネジ止め等の固着手段により固定する。そして、第1の爪付ナット1aを、そのフランジ部3を下方向に向けて、第1押圧体27の凸部27bに挿入する。
次に、図6及び図9Bに示すように、ベース部材11を、支持枠23の載置部23aに載置し、予めプレス台16に取り付けられているガイドピン22にその端部を当接させる。このとき、第1の爪付ナット1aの筒軸部2とベース部材11の第1嵌合穴12aが上下方向で対応する位置に、ベース部材11と第1ガイド部材25が配置されている。そして、このベース部材11の上面に、保持部材32を、その端部をガイドピン22に当接させて、重ね合わせる。このとき、保持部材32の保持穴32aの位置と、ベース部材11の第2嵌合穴12bの位置は、上下方向で対応している。次に、重ね合わせた保持部材32の保持穴32aに、第2の爪付ナット1bを、筒軸部2の軸方向における他端を下方向に向けて、挿入する。
ここで、プレス上板17には、第2治具板31が予め取り付けられている。この第2治具板31に、第2ガイド部材33をネジ止め等の固着手段により固定する。このとき、第2ガイド部材33に設けた第2押圧体35と、ベース部材11に設けた第2嵌合穴12bの位置が上下方向に対応するように設定されている。
次に、図6及び図9Cに示すように、埋込ナット取付装置15の操作部19を操作し、支持軸18を下方にスライドさせてプレス上板17をプレス台16に接近させる。これにより、プレス上板17に取り付けられた第2治具板31も下方向に移動する。そして、第2ガイド部材33の第2押圧体35に設けた突起部35bが、第2の爪付ナット1bの筒軸部2に挿入され、押圧部35aの端面が第2の爪付ナット1bのフランジ部3の端面を押圧する。さらにプレス上板17が下方向に移動すると、第2の爪付ナット1bが保持穴32aから離反し、第2の爪付ナット1bの筒軸部2がベース部材11の第2嵌合穴12bに圧入される。同様に、第2座グリ穴13bに第2の爪付ナット1bのフランジ部3が圧入される。そして、第2座グリ穴13bの底面に第2の爪付ナット1bの爪部5が打ち込まれる。
更にプレス上板17が下方向に移動すると、ベース部材11が支持枠23のコイルばね23bの付勢力に反して、下方向に移動する。すると、第1の爪付ナット1aが、フランジ部3側の端面を押圧部27aの端面に押圧されて、ベース部材11に押し込まれる。これにより、ベース部材11に設けた第1嵌合穴12aに第1の爪付ナット1aの筒軸部2が圧入される。同様に、第1座グリ穴13aに第1の爪付ナット1aのフランジ部3が圧入される。そして、第1座グリ穴13aの底面に第1の爪付ナット1aの爪部5が打ち込まれる。次に、プレス上板17を上方向に移動させてプレス台16から離反させると、筒軸部2の筒軸穴2aが凸部27bから離脱する。これらにより、ベース部材11の上面および下面に第1及び第2の爪付ナット1a,1bの取り付け作業が完了する。
なお、本実施例においては、埋込ナットの一具体例として、爪付ナット(Tナット)を用いた例を説明したが、例えば、鬼目ナットを用いてもよい。鬼目ナットは、内周面にネジが設けられた筒軸穴を有する筒軸部と、筒軸部の軸方向の一端から半径方向外側に展開されたフランジ部等から構成されている。この鬼目ナットは、筒軸部の外周面に複数のノコ歯型鬼目状の突起が設けられている。複数の突起は、筒軸部の外周面に軸方向に沿って列をなし、その列が略等角度間隔に複数配置されている。この複数の突起は、筒軸部の外周面に千鳥状に配置してもよい。このような構成を有する鬼目ナットは、ベース部材の嵌合穴に、筒軸部を挿入すると、複数の突起がベース部材の嵌合穴の側面に食い込むことにより、ベース部材に固定される。
以上説明してきたように、本発明の埋込ナット取付装置によれば、操作部を操作するだけで自動的に埋込ナットをベース部材に取り付けることができ、作業者の作業負担を軽減することができる。また、機械で打ち込むため、ベース部材の材質による硬さの違いに関係なく、容易に埋込ナットをベース部材に取り付けることができる。
また、一回のプレス作業で複数の埋込ナットを同時にベース部材に取り付けることができる。これにより、埋込ナットの取り付け作業工数を削減することができ、作業効率を向上させることができる。更に、上記第3の実施の例に係る取り付け作業によれば、一回のプレス作業で、ベース部材の上方向及び下方向から埋込ナットを同時に取り付けることができる。これにより、埋込ナットの取り付け作業工数を削減することができる。
更に、第1ガイド部材及び第2ガイド部材の取り付け箇所を、種々に変更させることで、埋込ナットの取り付け位置をベース部材の嵌合穴に合わせて好適に且つ容易に変更することができる。
尚、本発明は前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、前記実施例においては、埋込ナットの一具体例として、爪付ナット(Tナット)及び鬼目ナットを用いた例を説明したが、その他各種の埋込ナットを用いてもよい。
1…爪付ナット(埋込ナット)、 2…筒軸部(嵌合部)、 2a…筒軸穴(穴)、 3…フランジ部(嵌合部)、 10…パネル板、 11…ベース部材、 12…嵌合穴(凹部)、 13…座グリ穴(凹部)、 15…埋込ナット取付装置、 16…プレス台、 17…プレス上板(プレス板)、 20…取付治具、 21…第1治具板、 22…ガイドピン、 25…第1ガイド部材、 27…第1押圧体、 27a,35a…押圧部 27b…凸部、 27c,35c…ネジ軸部、 31…第2治具板、 32…保持部材、 32a…保持穴、 33…第2ガイド部材、 35…第2押圧体