JP4783873B2 - 環境状態測定装置及び方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は音波発生検出装置、環境状態測定装置及び方法に係り、特に、環境状態の測定に利用可能な音波発生検出装置、前記音波発生検出装置を用いて空間内の温度分布等の環境状態を測定する環境状態測定方法、及び該環境状態測定方法を適用可能な環境状態測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
被空調空間内の温度や湿度を所望の値に制御するためには、被空調空間内の温度、湿度を測定する必要があるが、被空調空間内の各箇所における温度、湿度が一定であることは稀であり、特にドーム球場や劇場等の閉鎖された大空間では、空間内の各箇所における温度、湿度は大きくばらついていることが多い。このため、例えばドーム球場や劇場等の大空間において快適性と省エネルギーの双方を満足する空気調和を行う場合や、室内の温度や湿度を精密に所望の値に制御する場合には、被空調空間内の温度や湿度の分布を測定する必要がある。
【0003】
しかし、温度センサや湿度センサによって温度や湿度の分布を直接測定しようとすると、センサを、被空調空間の中央部付近を含む被空調空間内にマトリクス状に多数配設する必要があるが、コストが嵩み景観が損なわれると共に被測定空間の利用も制限されるので、上記のように多数のセンサを配設することは現実的ではない。またドーム球場や劇場等では、被測定空間の周縁部(例えば壁体等)に取付けたセンサにより周縁部の温度等を測定すると共に、風船等でセンサを吊り上げることで被測定空間の中央部付近の温度等を測定することが考えられるが、この方法では、被測定空間内で例えば野球等のイベントが実施されている最中に温度や湿度の分布を測定することは不可能である。
【0004】
一方、医学の分野では、人体に対して多方向からX線を照射し、人体を透過したX線量を高感度のセンサで測定し、測定されたX線量に基づき人体の横断面に沿った各位置における体内組織のX線吸収量をコンピュータにより演算して2次元画像として再構成し、人体の横断面像としてモニタに表示するコンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)技術が広く利用されている。このCT技術によれば、測定対象(この場合は人体)内部の状態を非接触で測定することができるので、このCT技術を利用して被測定空間内の温度分布を求めることが提案されている。
【0005】
具体的には、X線に代えて、媒質の温度によって伝搬時間(速度)が変化する音波を用い、例えば被測定空間を区画している壁体の多数箇所にスピーカ、マイクロフォン、温度センサを設け、スピーカ及びマイクロフォンによって前記多数箇所の間の音波の伝搬時間を各々測定し、被測定空間内の多数箇所の間の音波の伝搬時間から、被測定空間内の温度分布を演算によって求めている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
音波の伝播時間の測定は、詳しくはデジタルの原音声データをD/A変換器を介してスピーカに供給することでスピーカから音波を発生させ、被測定空間を伝播した音波がマイクロフォン配設位置に到達することでマイクロフォンから出力された音声信号を、A/D変換器によってデジタルの検出音声データへ変換し、検出音声データの波形と原音声データの波形を時間的にずらしながら相関性を演算し、相関性が最も高くなるときの時間差を音波の伝播時間とすることによって行われる。
【0007】
しかしながら、スピーカは音声信号に応じて振動板を振動させることで音を発する構造であり、マイクロフォンは周囲の音に応じて発生する振動板の振動を音声信号に変換する構造であるので、振動板の質量の影響により、スピーカから発せられる音の波形及びマイクロフォンから出力される音声信号の波形は、何れも元の波形に対して鈍っていると共に、周波数が高くなるに従って振動板の振動が追従し切れなくなることで所定周波数以上の高周波成分がカットされる。また、スピーカとマイクロフォンは扱う音の音圧レベルが異なっており、より音圧レベルの高い音を扱うスピーカの振動板は、相応の強度が必要とされるために質量が大きく、上記の現象がより顕著である。
【0008】
このため、スピーカから発せられた音をマイクロフォンで検出することによって得られる音声信号の波形は、スピーカ及びマイクロフォン(特にスピーカ)の影響により原音声データの波形と相違するので、伝播時間の測定における測定精度低下の原因となっており、温度分布の測定精度の低下も招いていた。また、音声信号に対して振動板の振動のレスポンスの悪いスピーカは、マイクロフォンから出力される音声信号の波形の鈍りを助長し、伝播時間及び温度分布の測定精度の更なる低下に繋がるために使用できないという問題もあった。
【0009】
また、スピーカの振動板は例えばコーン型やドーム型等の立体的な形状である(平面型は波形再現性が劣るという欠点がある)と共に、振動板上における実際に音が発せられる点(発音点)の位置は、振動板の分割振動により、スピーカから発せられる音の周波数によって相違するため、スピーカの発音点とマイクロフォンとの距離もスピーカから発せられる音の周波数によって若干変化する。このスピーカの発音点とマイクロフォンとの距離の変化は、特に狭い空間内における伝播時間及び温度分布の測定に無視できない影響を及ぼすので、伝播時間及び温度分布の測定のためにスピーカから発する音が、例えば単一周波数の単純音又はそれに近い音に制限されていた。
【0010】
また、3台のスピーカ及びマイクロフォンを用いて発音点の位置を計測する3スピーカ法等のキャリブレーション方法も提案されているが、計測精度が充分でないという問題があった。
【0012】
発明は、被測定空間内の温度分布等の環境状態を高精度に測定できる環境状態測定方法及び環境状態測定装置を得ることが目的である。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る環境状態測定装置は、音波発生器と、前記音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器から放射された音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第1音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第2音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した光を音波発生器から所定距離隔てた位置で反射する光反射板と、を含み、前記第1音波検出手段、第2音波検出手段及び前記光反射板が、前記音波発生器と連結されたブラケットに一体に取付けられ、被測定空間を横切る複数の伝播時間測定区間の両端部に、前記ブラケットが取付けられた側同士が対向するように各々配置された音波発生検出装置と、伝播時間測定区間の両端部に配置された一対の前記音波発生検出装置のうちの一方の前記音波発生検出装置の音波発生器から音波を発生させ、発生させた音波を、前記一方の前記音波発生検出装置の前記第1音波検出手段、及び他方の前記音波発生検出装置の前記第2音波検出手段によって各々検出させることを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行う制御手段と、前記第2音波検出手段によって検出された音波の波形を前記第1音波検出手段によって検出された音波の波形と照合し、前記波形の相関性を時間軸に沿って演算した結果に基づいて、前記第1音波検出手段による音波の検出位置から前記第2音波検出手段による音波の検出位置へ伝播する音波の伝播時間を演算することを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行う伝播時間演算手段と、前記伝播時間測定手段によって測定された前記複数の伝播時間測定区間の音波の伝播時間の測定値に基づいて被測定空間内の環境状態を演算する環境状態演算手段と、を含んで構成されている。
【0014】
請求項1記載の発明は、音波発生検出装置を備えており、この音波発生検出装置は、音波発生器と、前記音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器から放射された音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第1音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第2音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した光を音波発生器から所定距離隔てた位置で反射する光反射板と、を含んで構成されている。
【0015】
上記の音波発生器としては、例えばスピーカを用いることができ、詳しくは動電形(例えばダイナミックスピーカ)、電磁形(例えばマグネティックスピーカ)、静電形(例えばコンデンサスピーカ)等の各種スピーカを適用することができるが、音波発生器が発生する音波は可聴域外の周波数の音波であってもよく、例えば音波発生器として超音波を発する送波器等を用いることも可能である。
【0016】
第1音波検出手段及び第2音波検出手段としては、例えばマイクロフォンを用いることができ、詳しくは動電形(例えばダイナミックマイクロフォンやリボンマイクロフォン)、静電形(例えばコンデンサマイクロフォン)、圧電形(例えばクリスタルマイクロフォン)等の各種マイクロフォン等の音波検出器を適用することができるが、音波発生器が発生する音波が超音波であれば、例えば超音波を検出する受波器等の音波検出器を用いることも可能である。
【0017】
また、第1音波検出手段と第2音波検出手段は別体の音波検出器である必要はない。すなわち、第1音波検出手段と第2音波検出手段は検出対象の音波の到来方向がおおよそ逆方向であるので、例えば第1音波検出手段及び第2音波検出手段を、両指向性の単一の音波検出器によって構成することも可能である。更に、第1音波検出手段と第2音波検出手段を各々独立した単一指向性の音波検出器によって構成する場合には、第1音波検出手段に対応する音波検出器は音波検出方向が音波発生器側を向くように配置し、第2音波検出手段に対応する音波検出器は音波検出方向が音波発生器と反対側を向くように配置すればよい。
【0018】
また、上記の音波発生検出装置は、第1音波検出手段、第2音波検出手段及び光反射板が、音波発生器と連結されたブラケットに一体に取付けられ、被測定空間を横切る複数の伝播時間測定区間の両端部に、ブラケットが取付けられた側同士が対向するように各々配置されている。これにより、伝播時間測定区間の両端部に各々配置された一対の音波発生検出装置のうち、一方の音波発生検出装置(便宜的に「第1の音波発生検出装置」という)の音波発生器から音波を発生させれば、該発生させた音波を、第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段により、前記区間の前記音波発生器側の端部の所定位置(詳しくは前記音波発生器から所定距離隔てた位置:便宜的に「第1の位置」という)で検出すると共に、他方の音波発生検出装置(便宜的に「第2の音波発生検出装置」という)の第2音波検出手段により、前記区間を挟んで前記音波発生器と反対側の端部の所定位置(便宜的に「第2の位置」という)で検出することができる。
【0019】
ここで、例えば音波発生器が、入力された音声信号に応じた音波を発生する構成であると共に、発生される音波の波形が音声信号の波形から変化する(例えば波形が鈍る)特性を有しているとしても、音波発生器によって発生された音波を検出する第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段及び第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段は、音波発生器から発せられた音波(音波発生器によって波形が変化した後の音波)を検出するので、第1音波検出手段によって検出される音波の波形と第2音波検出手段によって検出される音波の波形は高い精度で一致する。
【0020】
また、音波発生器が音波を発生する際の発音点の位置は、音波発生器が発生する音波の周波数に応じて変化するので、この発音点の位置の変化が第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段による音波の検出に影響を及ぼし、第1の音波発生検出装置の音波発生器から発生されて第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段で検出される音波の伝播距離は、発音点の位置の変化に応じて変化し、この音波の伝播距離の変化に伴って音波の伝播時間も変化する。
【0021】
しかしながら、第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段は第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段と同一の音波を検出するので、上述した発音点の位置の移動は、第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段による音波の検出に対しても同様の影響を及ぼし、第1の音波発生検出装置の音波発生器から発生されて第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段で検出される音波の伝播距離及び伝播時間は、第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段による音波の検出と同様に変化する。
【0022】
従って、第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段によって検出された音波の波形と、第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段によって検出された音波の波形を照合し(例えば相関性を演算する等)、伝播時間を測定すべき区間の音波の伝播時間として、音波発生器によって発生された音波が第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段に到達してから、該音波が第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段に到達する迄の時間差、すなわち第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段と、第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段の間の音波の伝播時間を求めることにより、音波の伝播時間を、音波発生器の特性や発音点の位置の移動の影響を受けることなく高精度に測定することができる。
【0023】
また、複数の区間の音波の伝播時間を測定することで温度分布等の環境状態を測定するに際しては、伝播時間測定区間の距離を正確に把握することが重要であるが、伝播時間測定区間として音波発生器から音波検出器に至る区間を用いた場合、発音点の位置が変化すると音波の実際の伝播距離が変化するため、伝播時間測定区間の距離を正確に把握することは困難である。これに対し、請求項1記載の発明に係る音波発生検出装置を用いた音波の伝播時間の測定では、第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段と第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段の間の区間が伝播時間測定区間となるため、発音点の位置が変化しても音波の実際の伝播距離が変化することはない。
【0024】
請求項1記載の発明において、制御手段は、伝播時間測定区間の両端部に配置された一対の音波発生検出装置のうちの一方の音波発生検出装置の音波発生器から音波を発生させ、発生させた音波を、一方の音波発生検出装置の第1音波検出手段、及び他方の音波発生検出装置の第2音波検出手段によって各々検出させることを、複数の伝播時間測定区間について各々行う。
【0025】
また伝播時間演算手段は、第2音波検出手段によって検出された音波の波形を第1音波検出手段によって検出された音波の波形と照合し、波形の相関性を時間軸に沿って演算した結果に基づいて、第1音波検出手段による音波の検出位置から第2音波検出手段による音波の検出位置へ伝播する音波の伝播時間を演算することを、複数の伝播時間測定区間について各々行う。これにより、音波発生器の特性の影響や発音点の位置が移動することによる影響を受けることなく、複数の伝播時間測定区間について、音波の伝播時間を各々精度良く測定することができる。
【0026】
また、上記のように音波の伝播時間の測定精度が発音点位置の移動の影響を受けることがないため、音波発生器から発生させる音波として任意の音波(例えば自然音に相当する音波)を用いることが可能となる。これにより、被測定空間内に人間が存在している場合にも、伝播時間の測定にあたり被測定空間内に存在している人間に違和感や不快感を与えることを回避することができる。
【0027】
そして環境状態演算手段は、伝播時間測定手段によって測定された複数の伝播時間測定区間の音波の伝播時間の測定値に基づいて、被測定空間内の環境状態を演算するので、被測定空間内の温度分布等の環境状態を高精度に測定することができる。
【0028】
また、音波発生検出装置は、音波発生器と連結されたブラケットに第1音波検出手段、第2音波検出手段及び光反射板が一体に取付けられているので、音波発生検出装置の設置に際し、音波発生器から距離が等しくなるように第1音波検出手段、第2音波検出手段及び光反射板の相対位置を調整する必要がなくなり、音波発生検出装置の設置を容易に行うことができると共に、周囲温度の変化に伴う第1音波検出手段、第2音波検出手段及び光反射板の相対位置の変化を抑制することができる。
【0029】
更に、音波発生検出装置のブラケットには、音波発生器側と反対側より到来した光を、第1音波検出手段及び第2音波検出手段に対して音波発生器からの距離が等しい位置(音波発生器から所定距離隔てた位置)で反射する光反射板が設けられている。この光反射板は、例えば光反射面が音波発生器と反対側を向くように配置した全反射ミラーによって構成することができる。この光反射板を利用することで、伝播時間測定区間の距離を、例えばレーザ距離計等によって容易かつ正確に測定することができ、音波の伝播時間の測定結果及び伝播時間測定区間の距離の測定結果に基づいて、温度分布等の環境状態を精度良く測定することができる。
【0030】
なお、環境状態演算手段による被測定空間内の環境状態の演算は、詳しくは、例えば被測定空間を多数の小領域に区分し、各小領域内の音速を変数とし、或る音波発生装置から或る音波検出装置に至る伝搬経路を伝搬する音波の伝搬時間を、前記伝搬経路上に存在する各小領域の音波の通過時間の和で表した方程式を連立方程式として多数生成し、測定した音波の伝搬時間を連立方程式に代入して解くことによっても実現できるが、下記のようにして演算することが好ましい。
【0031】
すなわち、各々一定の方向に沿いかつ互いに異なる位置で被測定空間を貫く等しい長さの多数の仮想経路を、互いに異なる複数の方向について各々設定しておき、前記各仮想経路について、第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段と、第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段と、の間に相当する仮想経路上の測定区間の音波の伝搬時間を実際に音波を伝搬させて測定し、仮想経路上の測定区間外の区間の音波の伝搬時間を被測定空間外が一定温度の媒質で満たされていると仮定して推定することにより、仮想経路上を音波が伝搬するときの伝搬時間の推定値を各々求め、所定方向に沿った多数の仮想経路の各々の音波の伝搬時間の推定値に基づき、前記所定方向についての音波の伝搬時間の投影データを求めることを、前記複数の方向について各々行い、前記複数の方向の各々についての音波の伝搬時間の投影データに基づいて被測定空間内の環境状態を演算することが好ましい。
【0032】
上記では、伝搬時間測定経路の長さを仮想的に一致させることで、音波の伝搬時間の投影データを取得できるので、短時間で演算可能な演算方法(フーリエ領域再構成法やフィルタ処理データの逆投影法、2次元フィルタリング法等)を適用することができ、演算時間の短縮や伝播時間を測定するための装置構成の簡易化を実現できる。
【0033】
なお、請求項1記載の発明に係る第1音波検出手段は、検出対象の音波を発生する音波発生器が比較的近い位置に位置しているので、検出対象の音波の音圧レベルが比較的高く、第1音波検出手段によって検出される音波の波形が歪んだり飽和したりする可能性がある。これを考慮すると、請求項2に記載したように、第1音波検出手段による音波検出位置の音波到来側に、到来した音波を減衰させる減衰手段を配置することが好ましい。なお、減衰手段としては、例えば吸音材等を用いることができる。これにより、第1音波検出手段によって検出される音波の波形が歪んだり飽和することを防止することができる。
【0034】
また、音波検出手段によって検出される音波の波形は、到来した音波の波形に対して若干ではあるが変化する(例えば鈍りが生ずる等)。これを考慮すると、請求項3に記載したように、第1音波検出手段及び第2音波検出手段を、少なくとも類似種(好ましくは同一種)の音波検出器によって音波を検出するよう構成することが好ましい。これにより、第1音波検出手段によって検出される波形及び第2音波検出手段によって検出される波形が、到来した音波の波形に対して同様の変化を示すことになる。
【0035】
従って、本発明に係る音波発生検出装置を、音波の伝播時間を測定すべき区間の両端部に各々配置する態様において、音波発生器から音波を発生させる第1の音波発生検出装置の第1音波検出手段によって検出される音波の波形と、第2の音波発生検出装置の第2音波検出手段によって検出される音波の波形を高い精度で一致させることができ、音波伝播時間をより精度良く測定することができる。
【0038】
請求項記載の発明に係る環境状態測定方法は、被測定空間を横切る複数の伝播時間測定区間の両端部に、音波発生器と、前記音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器から放射された音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第1音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第2音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した光を音波発生器から所定距離隔てた位置で反射する光反射板と、を含み、前記第1音波検出手段、第2音波検出手段及び前記光反射板が、前記音波発生器と連結されたブラケットに一体に取付けられた音波発生検出装置を、前記ブラケットが取付けられた側同士が対向するように各々配置しておき、伝播時間測定区間の両端部に配置した一対の音波発生検出装置のうちの一方の音波発生検出装置の音波発生器から音波を発生させ、発生させた音波を、前記一方の音波発生検出装置の前記第1音波検出手段、及び他方の音波発生検出装置の前記第2音波検出手段によって各々検出させることを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行い、前記第2音波検出手段によって検出された音波の波形を前記第1音波検出手段によって検出された音波の波形と照合し、前記波形の相関性を時間軸に沿って演算した結果に基づいて、前記第1音波検出手段による音波の検出位置から前記第2音波検出手段による音波の検出位置へ伝播する音波の伝播時間を演算することを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行い、前記複数の伝播時間測定区間の音波の伝播時間の測定値に基づいて被測定空間内の環境状態を演算するので、請求項記載の発明と同様に、被測定空間内の温度分布等の環境状態を高精度に測定することができる。
【0039】
また、請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、伝播時間測定区間の両端部に各々配置した一対の音波発生検出装置の一対の光反射板に各々光を照射して前記一対の光反射板の距離を測定することを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行い、前記被測定空間内の環境状態の演算を、複数の伝播時間測定区間の各々における一対の光反射板の距離の測定結果も考慮して行うことを特徴としている。
【0040】
請求項記載の発明では、伝播時間測定区間の両端部に各々配置した一対の音波発生検出装置の一対の光反射板に各々光を照射して一対の光反射板の距離を測定する。なお、この距離測定には例えばレーザ距離計等を用いることができ、光反射板にレーザ光を照射することで一対の光反射板の距離、すなわち伝播時間測定区間の距離を容易かつ正確に測定することができる。
【0041】
そして請求項記載の発明では、上記の距離の測定を複数の伝播時間測定区間について各々定期的に行い、複数の伝播時間測定区間の各々における一対の光反射板の距離の測定結果も考慮して、被測定空間内の環境状態の演算を行うので、例えば季節変化等に起因する環境温度の変化や経時変化に伴って伝播時間測定区間の距離が変化したとしても、距離変化の影響を受けることなく、被測定空間内の環境状態を精度良く測定することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。図1には、環境状態測定方法が適用された環境状態測定装置10が示されている。環境状態測定装置10は、多数のノード12A、12B、12C、…と、ホストコンピュータ14を備えており、これらが伝送媒体18を介して互いに接続されて構成されている。
【0043】
ホストコンピュータ14は、CPU14A、ROM14B、RAM14C、入出力ポート14Dを備え、これらがバス14Eを介して互いに接続されて構成されている。入出力ポート14Dはネットワーク伝送部16を介して伝送媒体18に接続されている。また、入出力ポート14Dには、各種の情報を表示するためのディスプレイ20と、オペレータが各種のデータやコマンド等を入力するためのキーボード22が接続されている。
【0044】
一方、多数のノード12は、被測定空間の周縁部に、周縁部の全周に亘って略一定の間隔で配置されている。例として図2には、円筒状の壁体22によって区画され、上方が屋根(図示省略)によって閉塞されたドーム状の被測定空間24(例えばドーム球場等)内の環境状態を測定する場合の各ノード12の配置が示されている。なお、ノード12の数及び間隔は図2に示した例に限定されるものではないが、ノード12の数は偶数であることが望ましい。また、各ノード12を識別するために、各ノードには便宜的にノード番号が付与されている。
【0045】
ノード12A、12B、12C、…は各々同一の構成であるので、以下ではノード12Aについて説明する。ノード12Aは、被測定空間24内に向けて配置された音波発生器としてのスピーカ30と、スピーカ30へ向けて配置された第1音波検出手段としての第1マイクロフォン32と、被測定空間24内に向けて配置された第2音波検出手段としての第2マイクロフォン34を備えている。スピーカ30は壁体22に埋設されており(図示省略)、増幅器36、D/A変換器38を介してデータ処理部40に接続されている。
【0046】
図3(A)に示すように、スピーカ30には、中間部が被測定空間24側へ突出するようにU字型に屈曲されたアーム54の基部が取付けられている。図3(B)に示すように、アーム54の中間部には、スピーカ30と対向する面に孔54Aが穿設されており、第1マイクロフォン32は、スピーカ30から発せられた音波をスピーカ30から所定距離隔てた位置で検出するように、孔54Aの内部に埋設されている。なお、以下では第1マイクロフォン32の配置位置を「第1の位置」と称する。
【0047】
第1マイクロフォン32は自ノードのスピーカ30から発せられた音波を検出するので、音源(スピーカ30)との距離が小さく、検出対象の音波の音圧レベルが比較的高い。このため、第1マイクロフォン32は孔54Aの底部側に配置されており、孔54Aの手前側(第1マイクロフォン32とスピーカ30の間)には吸音材56が設けられている。これにより、第1マイクロフォン32から出力される音声信号の信号レベルが歪んだり飽和することが防止される。吸音材56は請求項に記載の減衰手段に対応している。
【0048】
また、図3(B)に示すように、アーム54の中間部には、孔54Aが穿設された面と反対側の面(被測定空間24側を向いている面)に孔54B、54Cが各々穿設されており、第2マイクロフォン34は、他ノードのスピーカ30から発せられた音波を、スピーカ30から所定距離隔てた位置で検出するように、孔54Bの内部に埋設されている。また、以下では第2マイクロフォン34の配置位置を「第2の位置」と称する。第2マイクロフォン34は他ノードのスピーカ30から発せられた音波を検出するので、音源との距離が大きく検出対象の音波の音圧レベルが比較的小さいので、孔54Bには吸音材は設けられていない。
【0049】
なお、本実施形態では第1マイクロフォン32及び第2マイクロフォン34として同一機種のマイクロフォンを用いており、第1マイクロフォン32及び第2マイクロフォン34は請求項に記載の「類似種の音波検出器」に対応している。一方、孔54Cの底部には、スピーカ30側と反対側より到来した光をスピーカ30から所定距離隔てた位置で反射するように光反射板58が取付けられている。光反射板58は各ノード12のアーム54間の距離をレーザ距離計等によって測定する際に用いられる。
【0050】
なお、上述したスピーカ30、アーム54、第1マイクロフォン32、第2マイクロフォン34及び光反射板58は、請求項1に記載の音波発生検出装置に対応している。
【0051】
第1マイクロフォン32はフィルタ/増幅器42、A/D変換器44を介してデータ処理部40に接続されており、第2マイクロフォン34はフィルタ/増幅器46、A/D変換器48を介してデータ処理部40に接続されている。データ処理部40はマイクロコンピュータ等を含んで構成されており、ネットワーク伝送部50を介して伝送媒体18に接続されている。
【0052】
次に本実施形態の作用を説明する。本実施形態では、後述する温度分布演算処理において、音波の伝搬時間の推定を行う経路として、例として図4に示すように、多数の仮想経路を予め設定している。なお、図4では或る一定の方向に沿った仮想経路のみを示しているが、実際には、一例として図6(B)にも示すように、互いに異なる複数の方向(例えば10°ずつ異なる方向)について、各々多数の仮想経路が予め設定されている。
【0053】
仮想経路は、被測定空間24外に、所定方向に直交するように配置された仮想スピーカ列上に位置している仮想スピーカと、被測定空間24を挟んで仮想スピーカ列と反対側の被測定空間24外に一定の間隔L0 (図5参照)を隔てて仮想スピーカ列と平行に配置された仮想マイクロフォン列上に位置している仮想マイクロフォンと、を結ぶ経路として定義されており、仮想スピーカ及び仮想マイクロフォンは、各仮想経路が、各々所定方向に沿いかつ互いに異なるノード12が配置されている位置で壁体22と交差して被測定空間24を貫くように、仮想スピーカ列及び仮想マイクロフォン列上での位置が定められている。従って、各仮想経路の長さは互いに等しくされている。
【0054】
各仮想経路のうち、同一の仮想経路上に位置している一対のノード12の間の区間(図4に実線で示す測定対象区間:詳しくは一対のノード12の各々のアーム54の間の区間)については、実際に音波を伝搬させることによって音波の伝搬時間を測定するが、仮想スピーカとノード12の間、及びノード12と仮想マイクロフォンの間の区間(伝搬時間推定区間)については、音波の伝搬時間を測定することはできない。このため、ホストコンピュータ14のROM14Bには、各仮想経路に対応して伝搬時間推定区間の長さが各々記憶されている。
【0055】
なお、本実施形態では、図5に示すように、被測定空間24の中心を原点Oとする直交座標系x−yを定義し、仮想経路の各々を、仮想経路に直交し原点Oを通る直線Sの長さX(距離X)、及び前記直線Sとx軸との成す角度θ(傾きθ)によって識別する(仮想経路(X,θ)と称する)。
【0056】
次に図7のフローチャートを参照し、被測定空間24内の環境状態(本実施形態では温度分布)を求める場合にホストコンピュータ14で実行される温度分布演算処理について説明する。
【0057】
本実施形態では、伝播時間の測定に用いる音波データ(音波をアナログ信号に変換し更にデジタルデータに変換したもの)がホストコンピュータ14のROM14B等に予め記憶されており、ステップ100では、伝送媒体18を介して前記音波データを全てのノード12へ転送する。各ノード12に転送された音波データは、各ノード12のデータ処理部40の内蔵メモリ等に記憶される。
【0058】
なお、この音波データとしては任意の音声を表す音波データを用いることができ、例えば音楽、メッセージ、自然音(鳥のさえずりやドアの開閉音等)を表す音波データを用いることができる。また、被測定空間24の大きさが大きくなるに従って(すなわち被測定空間12の中央部を挟んで対向するノード12間の距離が大きくなるに従って)、音波の周波数帯域が低周波側に偏倚するように音波データを選択してもよい。
【0059】
次のステップ102では音波を発生させるノード12のノード番号を表すカウント値mに1を代入する。ステップ104では音波発生対象のノードmからの音波発生時刻を決定し、次のステップ106では、決定した音波発生時刻及び音波発生対象のノード12のノード番号を全てのノード12に通知する。次のステップ108では、音波発生タイミングが到来したか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。音波発生タイミングが到来すると、ステップ108の判定が肯定されてステップ110へ移行し、音波発生対象のノードmに対し、先に転送した音波データを用いて音波を発生するよう指示する。
【0060】
音波発生対象のノードmのデータ処理部40では、図8(A)に示す音波発生処理が行われる。この音波発生処理は、ホストコンピュータ14から通知された音波発生対象のノード12のノード番号に基づき、自ノードが音波発生対象のノード12であることを認識すると実行され、まずステップ150で音波発生タイミングが到来したか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。
【0061】
伝送媒体18及びネットワーク伝送部48を介してホストコンピュータ14から音波の発生が指示されると、ステップ150の判定が肯定されてステップ152へ移行し、先に転送された音波データをD/A変換器38に出力する。データ処理部40から出力された音波データは、D/A変換器38でアナログの音声信号に変換され、増幅器36によって所定の増幅率で増幅された後にスピーカ30に供給される。これにより、ノードmのスピーカ30からは、温度分布演算処理(図7)のステップ104で判定された音波発生タイミングで、音波データが表す音波が所定の音量で発せられる。
【0062】
音波発生対象のノードmのスピーカ30によって発生された音波はノードmの第1マイクロフォン32によって検出され、ノードmの第1マイクロフォン32からアナログの音声信号が出力される。ステップ152では、スピーカ30から音波を発生させる処理と並行してA/D変換器44を所定時間(例えば数秒)作動させ、第1マイクロフォン32が音波を検出することで第1マイクロフォン32から出力される音声信号のサンプリングを所定時間実行させる。
【0063】
これにより、第1マイクロフォン32から出力された音声信号は、所定時間の間、フィルタ/増幅器42で雑音が除去されて増幅された後に、A/D変換器44によって一定のサンプリング周期でサンプリングされてデジタルの音波データに変換され、所定時間分の比較用音波測定データ(第1マイクロフォン32で検出された音波の振幅を、所定時間に亘り(tWAVE=0〜tLAST:図9(B)参照)、A/D変換器42のサンプリング周期に相当する時間間隔で時系列に表すデータ)としてデータ処理部40に順次入力される。データ処理部40は順次入力される比較用音波測定データをメモリ等に記憶する。
【0064】
ステップ154では、上記の処理によって得られた所定時間分の比較用音波測定データを自ノード以外の各ノード12へ転送し、音波発生処理を終了する。
【0065】
例として、図9(A)には音波発生対象のノード12からの音波の発生に用いた音波データが表す音波の波形の一例を、図9(B)には比較用音波測定データが表す音波の波形の一例を各々示す。比較用音波測定データは、スピーカ30から発せられた音波を第1マイクロフォン32によって検出した結果を表しているので、図9(A)の波形と図9(C)の波形を比較しても明らかなように、比較用音波測定データが表す音波の波形は、スピーカ30及び第1マイクロフォン32の特性の影響を受け、元の音波データが表す音波の波形に対して若干変化している(歪んでいる)。
【0066】
一方、音波発生対象のノード12以外のノード12(測定対象のノード12)のデータ処理部40では、図8(B)に示す伝播時間演算処理が行われる。この伝播時間演算処理は、ホストコンピュータ14から通知された音波発生対象のノード12のノード番号に基づき、自ノードが音波発生対象のノード12でないことを認識すると実行され、まずステップ160では、ホストコンピュータ14からノード番号と共に通知された音波発生時刻を記憶する。次のステップ162では、記憶した音波発生時刻を現時刻と比較することで音波発生タイミングが到来したか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。音波発生時刻が到来すると、上記判定が肯定されてステップ164へ移行する。
【0067】
先にも説明したように音波発生時刻が到来すると、音波発生対象のノード12のスピーカから音波が発せられるが、この音波は被測定空間24全域に放射され、音波測定対象の各ノード12の第2マイクロフォン34によって各々検出され、音波測定対象の各ノード12の第2マイクロフォン34からアナログの音声信号が出力される。ステップ164ではA/D変換器48を所定時間(例えば数秒)作動させ、第2マイクロフォン34が音波を検出することで第2マイクロフォン34から出力される音声信号のサンプリングを所定時間実行させる。
【0068】
これにより、第2マイクロフォン32から出力された音声信号は、所定時間の間、フィルタ/増幅器46で雑音が除去されて増幅された後に、A/D変換器48によって一定のサンプリング周期でサンプリングされてデジタルの音波データに変換され、所定時間分の音波測定データ(第2マイクロフォン32で検出された音波の振幅を、所定時間に亘り、A/D変換器42のサンプリング周期に相当する時間間隔で時系列に表すデータ)としてデータ処理部40に順次入力される。データ処理部40は順次入力される音波測定データをメモリ等に記憶する。なお、音波測定データのデータ量を削減するために、音波発生時刻が到来してから或る時間(音波発生対象のノード12からの音波の伝播時間よりも若干短い時間)経過後に音声信号のサンプリングを開始するようにしてもよい。
【0069】
次のステップ166では音波発生対象のノード12から比較用音波測定データを受信したか否か判定し、判定が肯定される迄待機する。比較用音波測定データを受信すると、ステップ166の判定が肯定されてステップ168へ移行し、音波測定データが表す波形と音波発生対象のノード12から受信した比較用音波測定データが表す波形との相関性を演算する。
【0070】
音波測定データが表す波形と比較用音波測定データが表す波形との相関性は、音波発生対象のノード12の第1マイクロフォン32の配設位置(第1の位置)に測定対象音波が到達したタイミングを基準とし、この基準タイミングから、測定対象のノード12の第2マイクロフォン34の配設位置(第2の位置)に測定対象音波が到達する迄の時間(音波の伝播時間)として或る値tX を仮定し、tWAVEが所定値(初期値はtWAVE=0:基準タイミング(図9(B)参照))のときの振幅値を表すデータを比較用音波測定データから取り出すと共に、対応するタイミング(基準タイミングからtX +tWAVE経過したタイミング)における振幅値を表すデータを音波測定データから取り出し、両者を乗算することを、tWAVEの値を0〜tLAST迄順に変化させながら繰り返し、乗算結果を積算することで求めることができる。
【0071】
上記の演算によって求まる相関性の値は、音波発生対象のノード12のアーム54の配設位置(第1マイクロフォン32の配設位置)に測定対象音波が到達してから時間tX が経過したときに、測定対象のノード12のアーム54の配設位置(第2マイクロフォン34の配設位置)に測定対象音波が到達した確からしさを表しており(相関性の値が符号が正でかつ絶対値が大きくなる程、前記確からしさが高いとみなすことができる)、上記の演算処理を、時間tX の値を徐々に変化させながら繰り返すことで、例として図9(D)に示すように、音波測定データが表す波形と比較用音波測定データが表す波形との相関性の値の時間軸に沿った推移を表すデータを得ることができる。
【0072】
次のステップ170では、ステップ168における相関性の演算結果に基づいて、相関性の値が最大になるときの時間tX の値を求め、音波発生対象のノード12から測定対象のノード12(自ノード)への測定対象音波の伝播時間(詳しくは音波発生対象のノード12の第1の位置から測定対象のノード12の第2の位置への測定対象音波の伝播時間)として、相関性の値が最大のときの時間tX を設定し、設定した伝播時間を、ノードmからノードnへの音波の伝播時間データtmnとしてホストコンピュータ14へ転送し、伝播時間演算処理を終了する。
【0073】
例として、図9(C)には音波測定データが表す音波の波形の一例を示す。音波測定データは、スピーカ30から発せられた音波を第2マイクロフォン34によって検出した結果を表しているので、図9(A)の波形と図9(C)の波形を比較しても明らかなように、音波測定データが表す音波の波形は、スピーカ30及び第2マイクロフォン34の特性の影響を受け、元の音波データが表す音波の波形に対して若干変化している(歪んでいる)。
【0074】
しかしながら、比較用音波測定データは、同一のスピーカ30から発せられた音波を、第2マイクロフォン34と同一機種の第1マイクロフォン32(すなわち、第2マイクロフォン34と特性が同一のマイクロフォン)によって検出した結果を表しているので、音波測定データが表す音波の波形及び比較用音波測定データが表す音波の波形は、図9(B)の波形と図9(C)の波形を比較しても明らかなように、元の音波データが表す音波の波形に対して同様に変化しており、波形の相関度が飛躍的に向上している。
【0075】
従って、ステップ168の演算によって求まる相関性の値は、時間tX の値が音波発生対象のノード12から測定対象のノード12への測定対象音波の伝播時間に一致したときに正の最大値となり、時間tX の値がその前後の値のときにも相関性の値の絶対値は多少大きいものの、時間tX の値が前記伝播時間と大きく異なる値のときには相関性の値の絶対値は非常に小さな値となる。これにより、スピーカ30や第2マイクロフォン34の特性の影響を受けることなく、伝播時間を高精度に測定・設定することができる。また、各ノード12のアーム54の間を伝播速度の測定対象区間としているので、測定対象区間の音波伝播時間の測定結果が、スピーカ30から発せられる音波の周波数変化に伴う発音点位置の変化の影響を受けて変動することもない。なお、ステップ168,170は請求項に記載の伝播時間演算手段に対応している。
【0076】
上記の伝播時間演算処理が、音波発生対象のノード12以外の各ノード12(測定対象のノード12)で各々行われることにより、音波発生対象のノード12とそれ以外の各ノード12との間の測定対象区間(例えば図6(A)において、単一の被測定空間の図に重ねて示した放射状の線に相当する測定対象区間)について、音波発生対象のノード12から測定対象のノード12への音波の伝播時間が各々演算され、演算された伝播時間がホストコンピュータ14へ転送されることになる。
【0077】
一方、温度分布演算処理(図7)では、音波発生対象のノード12に対して音波の発生を指示(ステップ110)するとステップ112へ移行し、全ての測定対象区間の伝播時間の演算が完了したか否か判定し、測定対象のノード12から音波の伝播時間を受信する毎に、受信した音波の伝播時間をRAM14C等に記憶する処理を繰り返しながら、判定が肯定される迄待機する。
【0078】
測定対象の全てのノード12から音波の伝播時間を受信すると、ステップ112の判定が肯定されてステップ114へ移行し、カウンタmの値がノード12の総数mMAXに一致したか否か、すなわち全てのノード12を音波発生対象のノード12として音波検出処理(音波発生対象のノード12から音波を発生させ、音波発生対象のノード12から測定対象のノード12への音波の伝播時間を演算する処理)を行ったか否かを判定する。判定が否定された場合には、ステップ116でカウンタmの値を1だけインクリメントした後にステップ104に戻る。
【0079】
これにより、ステップ114の判定が肯定される迄の間は、音波発生対象のノード12を順に切り換えてステップ104〜114が繰り返され(所謂ファンビーム測定:図6(A)参照)、全ての測定対象区間の音波の伝播時間が各々両方向について測定・演算されることになる。
【0080】
ステップ114の判定が肯定されるとステップ118へ移行し、ステップ118以降で被測定空間24内の温度分布を演算する。すなわち、ステップ118では、所定方向に平行な多数の仮想経路(傾きθが等しい全ての仮想経路)に対応する全ての測定対象区間(図6(B)において、単一の測定対象区間に重ねて示した互いに平行な線に相当する区間)の伝搬時間のデータを取り込む。
【0081】
ところで、音波が伝播する空間内に空気流(風)が生じていた場合、音波の伝播時間は空気流の影響(詳しくは、音波の伝播方向に平行な方向の空気流成分の流速の影響)を受けて変化する。本実施形態では、被測定空間24内に生じている空気流の影響で温度分布の測定精度が低下することを回避するために、全ての測定対象区間の音波の伝播時間を各々両方向について測定しており、次のステップ120では、ステップ118で取り込んだ伝播時間のデータに基づいて、単一の測定対象区間に対応する両方向の伝播時間のデータ毎にその平均値を演算することを、所定方向に平行な全ての測定対象区間について行う。
【0082】
例えばノードm及びノードnを各々通る仮想経路に対応する測定対象区間の伝播時間のデータとしては、ノードmからノードnへの音波の伝播時間tmnのデータと、ノードnからノードmへの音波の伝播時間tnmのデータが存在しており、これらの平均値tm-n(=(tmn+tnm)÷2)を演算する。後述するように、本実施形態ではこの平均値tm-nを用いて温度分布を演算するので、空気流の影響による伝播時間の変化分を補正することができる。
【0083】
なお、本実施形態のようにファンビーム計測を行った場合、一部の測定対象区間については、両方向の音波の伝播時間の測定が時間を空けて行われることになる。被測定空間24内に生じている空気流が主に空調等に起因するものであれば、空気流の流れる方向や強さは経時的に略一定であることが多く、両方向の伝播時間の測定を時間を空けて行っても影響は小さい。しかし、被測定空間24内に生じている空気流の流れる方向や強さは経時的に大きく変化する場合には、一方向の伝播時間の測定を行ってから他方向の伝播時間の測定を行う迄の間に空気流の流れる方向や強さが変化することで、空気流の影響による伝播時間の変化に対する補正の精度が不足することも考えられる。
【0084】
上記のような場合には、ファンビーム計測を行うことに代えて、単一の測定対象区間に対して一方向の伝播時間を測定すると、直ちに他方向の伝播時間を測定することを、全ての測定対象区間について順次行うことが好ましい。これにより、ファンビーム計測と比較して測定に時間はかかるものの、被測定空間24内に生じている空気流の流れる方向や強さの経時的な変化の影響を受けることなく、被測定空間24内の温度分布を精度良く求めることができる。
【0085】
次のステップ122では、平均値tm-nを演算した全ての測定対象区間について、両方向の音波の伝播時間の差(tmn−tnm)を各々演算し、演算結果を各測定対象区間における空気流データとしてRAM14C等に記憶する。この空気流データは、温度分布の演算結果を表示する際(後述)に併せて表示するようにしてもよい。
【0086】
ステップ124では、予め設定してROM14Bに記憶している伝搬時間推定区間の長さ(仮想スピーカとノード12(詳しくはノード12のアーム54)との間の長さLSN 、及びノード12(詳しくはノード12のアーム54)と仮想マイクロフォンの間の長さLNM )を、所定方向に平行な全ての仮想経路について各々取り込む。なお、測定対象区間の距離(各ノード12のアーム54間の距離)は光反射板58を用いてレーザ距離計により正確に計測することができるので、上記の長さLSN及び長さLNMについても、測定対象区間の距離の計測結果に基づいて正確に求めることができる。
【0087】
ステップ126では、測定対象区間外が所定温度の媒質(空気)で満たされていると仮定して、所定方向に平行な全ての仮想経路(X,θ)について、音波の伝搬時間の推定値t(X,θ)を各々演算する。伝搬時間の推定値t(X,θ)は次の(1)式により求めることができる。
【0088】
t(X,θ)=(LSN÷v0 )+tm-n+(LNM÷v0 ) …(1)
但し、v0 は空気が所定温度のときの音速であり、tm-n、LSN及びLNMは仮想経路(X,θ)に対応する値である。(1)式における第1項及び第3項は、被測定区間外が一定温度の媒質で満たされていると仮定したときの、仮想経路上の被測定区間外の区間(伝搬時間推定区間)の音波の伝搬時間の推定値に対応している。
【0089】
ステップ128では、所定方向に平行な全ての仮想経路(X,θ)の音波の伝搬時間の推定値t(X,θ)に基づいて、投影データp(X,θ)を演算する。
投影データp(X,θ)は次の(2)式によって求めることができる。
【0090】
p(X,θ)=t(X,θ)−(L0 ÷v0 ) …(2)
ここで、位置(x,y)における音速をv(x,y)とし、音速分布f(x,y)を(温度分布は音速分布f(x,y)から容易に算出できる)、
f(x,y)=(1/v(x,y))−(1/v0 ) …(3)
上記(3)式のように定義(すなわち、測定対象区間外ではf(x,y)=0となる)すると共に、直線S(図5参照)に沿う方向をX軸、仮想経路に沿う方向をY軸とする直交座標系X−Y(直交座標系x−yを原点O周りに角度θだけ回転させた座標系)を定めると、投影データp(X,θ)と音速分布f(x,y)との関係は、仮想経路(X,θ)が積分区間となり、
【0091】
【数1】
Figure 0004783873
【0092】
となる。(4)式に示したように、投影データp(X,θ)は、仮想経路(X,θ)に沿った音速分布f(x,y)を投影したものである。前述のステップ110では、(2)式の演算を所定方向に平行な全ての仮想経路(X,θ)(すなわち、距離Xが異なり傾きθが等しい全ての仮想経路)について各々行うので、角度θが同一の投影データp(X,θ)の集合(平行な投影データ:parallel projection data)が得られることになる。
【0093】
次のステップ130では全ての方向について投影データp(X,θ)を演算したか否か判定する。判定が否定された場合にはステップ118に戻り、ステップ130の判定が肯定される迄、ステップ118〜ステップ130を繰り返す。全ての方向について仮想経路(X,θ)の投影データp(X,θ)の演算を完了すると(なお全ての方向について仮想経路(X,θ)の投影データp(X,θ)を演算することは、一般にラドン(Radon)変換と称されている)、これらの投影データ(X,θ)に基づき、フーリエ領域再構成法やフィルタ処理データの逆投影法、2次元フィルタリング法等の短時間で演算可能な演算方法を適用することで、被測定空間24内の温度分布を演算することが可能となる。
【0094】
このため、ステップ130の判定が肯定されるとステップ132へ移行し、先のステップ128において全ての方向について演算した投影データp(X,θ)に基づいて、被測定空間24内の温度分布を演算する。このステップ132は環境状態演算手段に対応しており、以下では、投影データに基づいて温度分布を演算する演算方法の一例として、フーリエ領域再構成法について説明する。
【0095】
音速分布f(x,y)の2次元フーリエ変換をF(u,v)とすると、
【0096】
【数2】
Figure 0004783873
【0097】
フーリエ変換は上記(5)式で定義される。また、F(u,v)からの2次元フーリエ逆変換は、
【0098】
【数3】
Figure 0004783873
【0099】
上記(6)式で定義される。
【0100】
一方、直交座標系x−yと直交座標系X−Yとの間には、以下の(7)式の関係が成り立つ。
【0101】
x=Xcosθ−Ysinθ
y=Xsinθ+Ycosθ …(7)
(7)式より、音速分布f(x,y)は次の(8)式で表すことができる。
【0102】
Figure 0004783873
なお、f'(X,Y)はf(x,y)を原点O周りに角度−θだけ回転させることで得られる関数である。(8)式を用いて(5)式のフーリエ変換の定義式を変数変換すると、
【0103】
【数4】
Figure 0004783873
【0104】
となる。
【0105】
また、空間周波数領域においても、実領域と同様に、座標系(u,v)に対して原点周りに角度θだけ回転させることで得られる座標系を座標系(U,V)とすると、先の(7)式と同様に、
u=Ucosθ−Vsinθ
v=Usinθ+Vcosθ …(10)
また
U=ucosθ+Vsinθ
V=−usinθ+vcosθ …(11)
の関係があり、(10)式よりF(u,v)は、
Figure 0004783873
と表すことができる。これらの式を(9)式に代入することにより、次の(13)式を得ることができる。
【0106】
【数5】
Figure 0004783873
【0107】
(13)式より、実領域において回転した物体(この場合は音速分布f(x,y))のスペクトルは、元の物体のスペクトルを同じ角度だけ回転したものと同じになることがわかる。
【0108】
(7)式及び(8)式によれば、投影データp(X,θ)に関する(4)式は次の(14)式のように表すことができる。
【0109】
【数6】
Figure 0004783873
【0110】
なお、(14)式では音速分布f(x,y)、すなわちf'(x,y)が測定対象区間外では0であるため、積分区間を±∞に拡大している。また、投影データp(X,θ)のX軸に関するフーリエ変換は、次の(15)式で表すことができる。
【0111】
【数7】
Figure 0004783873
【0112】
(14)式を(15)式に代入すると、次の(16)式が得られる。
【0113】
【数8】
Figure 0004783873
【0114】
(16)式は先の(13)式においてV=0としたときの式に一致するので、
P(U,θ)=F'(U,0)
が成り立つ。
【0115】
このように、傾きθが同一の全ての仮想経路の投影データp(X,θ)に対して、(15)式に従ってX軸に関するフーリエ変換(1次元フーリエ変換)を行った結果P(U,θ)は、音速分布f(x,y)の2次元フーリエ変換F(u,v)のθ方向成分(フーリエ変換F(u,v)のu軸に対して角度θだけ傾いた直線(すなわちU軸)上の値)に等しい(これを2次元断層定理(projection slice theorem)という)。
【0116】
従って、各方向について各々求めた投影データに対して各々フーリエ変換を行って座標系(u,v)上に放射状に並べれば、音速分布f(x,y)の2次元フーリエ変換F(u,v)を得ることができる。そして、このF(u,v)に対し、先の(6)式に従って2次元フーリエ逆変換を行うことにより、音速分布f(x,y)を求めることができる。
【0117】
ステップ132では、まず上記で説明したフーリエ領域再構成法、或いは公知のフィルタ処理データの逆投影法や2次元フィルタリング法等の短時間で演算可能な演算方法を適用して投影データp(X,θ)から音速分布f(x,y)を求める。次に、求めた音速分布f(x,y)から(3)式に基づいて被測定空間24内の各位置における音速v(x,y)を演算し、音速vと音波が伝搬する媒体(空気)の温度Tとの関係を表す次の(17)式に基づき、被測定空間24内における温度分布T(x,y)を演算する。
【0118】
v= 331.45 + 0.607・T 〔m/秒〕 …(17)
次のステップ134では、上記により得られた被測定空間24内の温度分布を、例として図10に示すコンターマップ等の形態でディスプレイ20に表示し、処理を終了する。なお、ディスプレイ20への表示に代えて、被空調空間24内の空気調和を行う空調装置に対し、被測定空間24内の温度分布及び湿度分布を表すデータを出力するようにしてもよい。これにより、空調装置が被測定空間24に対し、例えば快適性と省エネルギーの双方を満足する空気調和を行うことも可能となる。
【0119】
本実施形態では、被測定空間24の周縁部に多数のノード12を設け、仮想経路上の一対のノード12の間の測定対象区間(一対のノード12の各々のアーム54の間の区間)については、実際に音波を両方向について各々伝搬させて伝搬時間tmn及び伝搬時間tnmを測定し、伝播時間の平均値tm-nを求め、測定対象区間外の区間(仮想スピーカとノード12の間、及びノード12と仮想マイクロフォンの間の伝搬時間推定区間)については、気温が所定温度であると仮定し、空気が所定温度のときの音速v0 を用いて音波の伝搬時間を推定し、伝搬時間の推定値t(X,θ)を演算しているので、被測定空間24外にノード12を多数設けることなく投影データp(X,θ)を得ることができ、この投影データp(X,θ)に基づき、フーリエ領域再構成法やフィルタ処理データの逆投影法、2次元フィルタリング法等の短時間で演算可能な演算方法を適用して被測定空間内の環境状態を演算することができる。従って、環境状態測定装置10の構成を簡単にすることができると共に、温度分布の演算に要する時間を短縮することができる。
【0120】
なお、上記では第1の位置に到達した音波を第1マイクロフォン32によって検出する場合を説明したが、音波発生対象のノード12のスピーカ30から音波を発生させるための音波データを予め固定的に定めておくと共に、該音波データを用いてスピーカ30から音波を発生させ、第1の位置に到達した音波をマイクロフォンによって検出し、比較用音波測定データを求めてホストコンピュータ14のROM14B、又は各ノード12のデータ処理部40の内蔵メモリに記憶しておき、伝播時間の演算時に比較用音波データを読み出して用いることも可能である。
【0121】
また、上記では第1マイクロフォン32及び第2マイクロフォン34として、同一機種のマイクロフォン(特性が同一のマイクロフォン)を用いていたが、これに限られるものではなく、類似種のマイクロフォン(例えば音波の検出原理が同一等のように特性が類似しているマイクロフォン)であれば第1マイクロフォン32及び第2マイクロフォン34としての使用に好適である。
【0122】
また、上記では音波の伝搬時間の投影データから温度分布を演算していたが、これに限定されるものではなく、例えば壁体22の壁面近傍の温度を温度センサによって測定し、壁面近傍の温度の測定値に基づいて前記温度分布を補正するようにしてもよい。
【0123】
更に、上記では被測定空間24を貫くように仮想経路を設定し、仮想経路のうち測定対象区間外の区間については音波の伝播時間を推定することにより、仮想経路上を伝播する音波の伝播時間を求めて温度分布を求めていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば被測定空間を仮想的に多数の領域(ボクセル)に区切り、或る一対の箇所の間を音波が伝搬した際に前記一対の箇所の間に存在する各領域を音波が横切る距離を求め、前記一対の箇所の間の音波の伝搬時間と、前記各領域を音波が横切る際の伝搬速度との関係を、前記各領域を音波が横切る距離を用いて数式で表すことを前記複数箇所の間について各々行って連立方程式を立て、測定した複数箇所の間の音波の伝搬時間を連立方程式に代入し、伝搬速度が未知の領域について音波が横切る際の伝搬速度を演算し、伝搬速度から各領域の温度を演算することによって温度分布を求めるようにしてもよい。
【0124】
また、上記ではドーム球場等のように床面が円形の被測定空間24内の環境状態を測定する場合を例に説明したが、本発明によれば、音波発生器及び音波検出手段を被測定空間の周縁部に設けることで被測定空間内の温度分布を求めることができるので、任意の形状の空間を被測定空間として採用し、任意の形状の空間内の温度分布を求めることができる。
【0125】
また、上記では環境状態として温度分布のみを演算する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、複数種の周波数の音波について減衰量を各々測定して減衰率分布を求めることにより、被測定空間内の湿度分布も併せて演算したり、他の環境状態の演算も行うようにしてもよい。
【0126】
【発明の効果】
請求項1及び請求項4記載の発明は、第1音波検出手段、第2音波検出手段及び光反射板が、音波発生器と連結されたブラケットに一体に取付けられた音波発生検出装置を、被測定空間を横切る複数の伝播時間測定区間の両端部に、ブラケットが取付けられた側同士が対向するように各々配置し、一方の音波発生検出装置の音波発生器から音波を発生させ、発生させた音波を、一方の音波発生検出装置の第1音波検出手段、及び他方の音波発生検出装置の第2音波検出手段によって各々検出させることを、複数の伝播時間測定区間について各々行い、検出された音波の波形を照合し、波形の相関性を時間軸に沿って演算した結果に基づいて、第1音波検出手段による音波の検出位置から第2音波検出手段による音波の検出位置へ伝播する音波の伝播時間を演算することを、複数の伝播時間測定区間について各々行い、複数の伝播時間測定区間の音波の伝播時間の測定値に基づいて被測定空間内の環境状態を演算するので、被測定空間内の温度分布等の環境状態を高精度に測定できる、という優れた効果を有する。
【0128】
請求項記載の発明は、請求項1記載の発明において、第1音波検出手段による音波検出位置の音波到来側に、到来した音波を減衰させる減衰手段を配置するので、上記効果に加え、第1音波検出手段によって検出される音波の波形が歪んだり飽和することを防止することができる、という効果を有する。
【0129】
請求項記載の発明は、請求項1記載の発明において、第1音波検出手段及び第2音波検出手段が少なくとも類似種の音波検出器によって音波を検出するので、音波伝播時間をより精度良く測定することができる、という効果を有する。
【0131】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、伝播時間測定区間の両端部の一対の音波発生検出装置の一対の光反射板に各々光を照射して距離を測定することを、複数の伝播時間測定区間について各々定期的に行い、被測定空間内の環境状態の演算を、複数の伝播時間測定区間の各々における一対の光反射板の距離の測定結果も考慮して行うので、上記効果に加え、環境温度の変化や経時変化に伴う伝播時間測定区間の距離変化の影響を受けることなく、被測定空間内の環境状態を精度良く測定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態に係る環境状態測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】 ノードの配置を示す被測定空間の平面図である。
【図3】 (A)単一のノードにおけるスピーカ及びマイクロフォンの配置を示す側面図、(B)は(A)におけるマイクロフォン配置位置周辺の拡大図である。
【図4】 測定対象区間及び伝搬時間推定区間から成る仮想経路を、被測定空間の平面図に重ねて示す概念図である。
【図5】 被測定空間に対して設定した直交座標系x−y、各仮想経路を識別するための直線Sの距離X及び傾きθを示す概念図である。
【図6】 (A)及び(B)は、伝搬時間データの測定順序と、伝搬時間データの処理順序と、の関係を示す概念図である。
【図7】 ホストコンピュータで実行される温度分布演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図8】 測定対象の各ノードで実行される音波発生処理及び伝播時間演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】 (A)は音波データが表す音波の波形の一例、(B)は比較用音波測定データが表す音波の波形の一例、(C)は音波測定データが表す音波の波形の一例、(D)は相関性演算結果の一例を各々示す線図である。
【図10】 被測定空間内の温度分布の表示例を示すイメージ図である。
【符号の説明】
10 環境状態測定装置
12 ノード
14 ホストコンピュータ
24 被測定空間
30 スピーカ
32 第1マイクロフォン
34 第1マイクロフォン

Claims (5)

  1. 音波発生器と、前記音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器から放射された音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第1音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第2音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した光を音波発生器から所定距離隔てた位置で反射する光反射板と、を含み、前記第1音波検出手段、第2音波検出手段及び前記光反射板が、前記音波発生器と連結されたブラケットに一体に取付けられ、被測定空間を横切る複数の伝播時間測定区間の両端部に、前記ブラケットが取付けられた側同士が対向するように各々配置された音波発生検出装置と、
    伝播時間測定区間の両端部に配置された一対の前記音波発生検出装置のうちの一方の前記音波発生検出装置の音波発生器から音波を発生させ、発生させた音波を、前記一方の前記音波発生検出装置の前記第1音波検出手段、及び他方の前記音波発生検出装置の前記第2音波検出手段によって各々検出させることを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行う制御手段と、
    前記第2音波検出手段によって検出された音波の波形を前記第1音波検出手段によって検出された音波の波形と照合し、前記波形の相関性を時間軸に沿って演算した結果に基づいて、前記第1音波検出手段による音波の検出位置から前記第2音波検出手段による音波の検出位置へ伝播する音波の伝播時間を演算することを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行う伝播時間演算手段と、
    前記伝播時間測定手段によって測定された前記複数の伝播時間測定区間の音波の伝播時間の測定値に基づいて被測定空間内の環境状態を演算する環境状態演算手段と、
    を含む環境状態測定装置。
  2. 前記音波発生検出装置は、前記第1音波検出手段による音波検出位置の音波到来側に配置され、到来した音波を減衰させる減衰手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の環境状態測定装置。
  3. 前記音波発生検出装置の前記第1音波検出手段及び第2音波検出手段は、少なくとも類似種の音波検出器によって音波を検出することを特徴とする請求項1記載の環境状態測定装置。
  4. 被測定空間を横切る複数の伝播時間測定区間の両端部に、音波発生器と、前記音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器から放射された音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第1音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した音波を音波発生器から所定距離隔てた位置で検出する第2音波検出手段と、音波発生器の音波放射側に配置され、音波発生器側と反対側より到来した光を音波発生器から所定距離隔てた位置で反射する光反射板と、を含み、前記第1音波検出手段、第2音波検出手段及び前記光反射板が、前記音波発生器と連結されたブラケットに一体に取付けられた音波発生検出装置を、前記ブラケットが取付けられた側同士が対向するように各々配置しておき、
    伝播時間測定区間の両端部に配置した一対の音波発生検出装置のうちの一方の音波発生検出装置の音波発生器から音波を発生させ、発生させた音波を、前記一方の音波発生検出装置の前記第1音波検出手段、及び他方の音波発生検出装置の前記第2音波検出手段によって各々検出させることを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行い、
    前記第2音波検出手段によって検出された音波の波形を前記第1音波検出手段によって検出された音波の波形と照合し、前記波形の相関性を時間軸に沿って演算した結果に基づいて、前記第1音波検出手段による音波の検出位置から前記第2音波検出手段による音波の検出位置へ伝播する音波の伝播時間を演算することを、前記複数の伝播時間測定区間について各々行い、
    前記複数の伝播時間測定区間の音波の伝播時間の測定値に基づいて被測定空間内の環境状態を演算する
    環境状態測定方法。
  5. 伝播時間測定区間の両端部に各々配置した一対の音波発生検出装置の一対の光反射板に各々光を照射して前記一対の光反射板の距離を測定することを、前記複数の伝播時間測定区間について各々定期的に行い、
    前記被測定空間内の環境状態の演算を、複数の伝播時間測定区間の各々における一対の光反射板の距離の測定結果も考慮して行う
    ことを特徴とする請求項4記載の環境状態測定方法。
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