JP4783591B2 - ドリフト検出器及び蓄積電荷の中和方法 - Google Patents

ドリフト検出器及び蓄積電荷の中和方法 Download PDF

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Description

この発明は、概して電磁放射を検出するための半導体検出器の技術に関する。特にこの発明は、例えばX線検出に使用されるドリフトタイプ検出器でノイズを減少する方法に関する。
従来から、例えば画像用や分光学用のX線検出装置に用いられる半導体検出器として、PIN検出器がある。それに用いられる検出素子は、逆バイアスが印加されたPINダイオードであり、一方の電極がFET(電界効果トランジスタ)のゲート電極に接続されている。PINダイオードに衝突したX線の量子は光電効果を引き起こし、半導体材料中の空乏層領域に多数の自由電子と正孔を生成する。PINダイオードに印加されるバイアス電圧により、移動電荷キャリアが電極に引き寄せられ、それにより電極の電位が変化する。FETに接続される積分器により、PINダイオードの電極電位の変化が、帰還コンデンサーにかかる電圧の変化に変換される。
X線量子が次々にPINダイオードに衝突し続けると、時間の関数としてのコンデンサー電圧のグラフは階段状のランプ関数に似始めて、次第に検出器のダイナミックレンジの極限に近づいていく。その現象が起こる前に、PINダイオードの電極からの蓄積電荷を中和して、新しいランプ期間が開始し同様のステップが繰り返せるようにする必要がある。蓄積電荷を中和する公知技術として、PINダイオードの電極の一つを電流源に一時的に接続し、光学的活性化パルスによってより導電性の高い状態に一時的にトリガーがかけられる光学的活性FETを使用し、PINダイオードのバイアス電圧に瞬時的な振動を引き起こす技術が知られている。コンデンサーの電圧をリファレンスと比較して、リファレンスが中和作用にトリガーをかけ始めると、中和した正確な瞬間が分かる。
ドリフト検出器は最新の検出器であり、より優れたノイズ特性を持ち、そのため、従来のPIN検出器より優れたエネルギー分解能を持つ。ノイズ特性が優れているので、ドリフト検出器を、より処理速度の速い電子機器に接続することが可能となり、大きな利点となる。公知のドリフト検出技術の、いくつかの重要な態様については、Carlo Fiorini,Peter Lechner“集積されたフロントエンドJFETに持つのゲート−ドレイン電流による、半導体検出器の連続した電荷の回復”IEEE原子物理学会報、1999年6月Vol.46、No.3に、優れた概説が記載されている。
図1は、公知のドリフト検出器の概略回路図である。図に記載のダイオード101は、特定の半導体検出部であり、例えば公知のPIN検出器のPINダイオードとは、集積化された増幅部(基本的にFET102)と同様に電荷の運動を制御するためのフィールド電極を含む点において異なるものである。ドリフト検出ダイオード101の電気容量は、PINダイオードの電気容量より小さい。シリコン以外の半導体材料を除外するわけではないが、半導体材料は概してシリコンを用いる。半導体材料がX線量子を受けると光電効果が起き、その結果、電荷の蓄積を引き起こす。蓄積される電荷は、FET102のゲート電位を負に引き込む。FETはフォロワーとして動作する為に接続される。すなわち、FETのソース電位はゲート電位の変化に似るので、増幅および検出のためにソース電位から信号を取り出すことができる。
FET102のゲート電位とソース電位が低下すると、ドレイン−ソース電圧が上昇し、次にFET102を流れる電流の増加を引き起こす。ドレインからゲートへの漏れ電流103は増加し、検出された量子に起因する蓄積電荷を連続的に中和して、それにより、漏れ電流の中和効果が平均電荷蓄積速度と等しくなる動的平衡状態に達する。
中和電流の特性は、半導体のドープ領域間の接合を通って移動するキャリアの、基本的にランダムな過程として起こることが、ドリフト検出器の構成の固有の問題点である。さらに、検出器内で衝突がランダムに起きるため、中和電流の大きさは時間とともに変化することに注意すべきである。ドリフト検出器で発生する全ノイズ中のノイズ項は、瞬間的なパルス周波数、そして、それゆえ中和電流の変化量に影響されることを、数学的にも示すことができる。より簡単に言うと、中和電流はノイズの根源であり、ドリフト検出器で得られる分解能を制限しているのである。
上述したランプ中和サイクルを、PIN検出器からドリフト検出器に応用することは可能ではない。なぜなら、原理的には、連続したノイジーな中和電流を除去することはできるが、他のエラーの源が発生するからである。FET特有の浮遊容量は電圧の関数として変化するので、検出された量子のエネルギーの指標が、ランプの始まり、または終わり近くに検出されたかどうかによって変化するようになる。言い換えると、ランプ中和サイクルを利用すると、検出器の出力として得られたエネルギーピークが、比較的予測しにくい程度まで広がるのである。
この発明の目的は、中和電流のノイズ取り込み効果を弱めることができるドリフト検出器に基づく検出器を提供することである。この発明の他の目的は、中和電流のノイズ取り込み効果を低減することができるドリフト検出器の操作方法を提供することである。また、この発明の別の目的は、電磁放射の量子を速い応答および優れたエネルギー分解能で検出できる検出器を提供することである。
発明の目的は、1つあるいは少量の量子が測定された後、ドリフト検出器の検出素子へ中和電流のパルスをすばやく繰り返し放つ事によって達成された。
課題を解決するための手段および発明の効果
この発明の第一の態様によれば、検出器は、
電磁放射に曝される半導体検出部と、
その半導体検出部に接続され、ドリフト検出器を構成する増幅部と、
その増幅部を通って前記半導体検出部へ中和電流を流す中和電流経路と、
その中和電流経路に接続され前記中和電流が流れることを制御するように調節されるスイッチと、
を含む。
この発明の第二の態様によれば、検出器は、
検出ダイオードと、増幅部として作用する、集積化された電界効果トランジスタとを含むドリフト検出チップと、
集積化された前記電界効果トランジスタのソース電極に接続される入力部と、出力部とを備えたプリアンプと、
そのプリアンプの出力部に接続された入力部と、タイミングパルスを生成するタイミングチャネルとを含むリニアアンプと、
前記タイミングチャネルからのタイミングパルスを受信するために接続され、その受信した前記タイミングパルスをサンプルし、そのサンプルした前記タイミングパルスを一時的に保持するラッチ回路と、
そのラッチ回路と前記集積化された電界効果トランジスタとの間に接続された中和電流スイッチと、
前記ラッチ回路と、固定電位の間に接続されたラッチ空スイッチと、
前記タイミングチャネルからのタイミングパルスを受信する入力部と、前記中和電流スイッチの導電状態を制御するように接続された第一出力部と、前記ラッチ空スイッチの導電状態を制御するように接続された第二出力部とを有するパルスジェネレータと、
を備え、前記パルスジェネレータは、前記中和電流スイッチを導電状態に設定し、その後に、前記中和電流スイッチを非導電状態に設定するとともに前記ラッチ空スイッチを導電状態に設定することで、
前記タイミングパルスの受信に対して反応するようになっている。
この発明の第三の態様によれば、検出器は、
検出ダイオードと、増幅部として作用する、集積化された電界効果トランジスタとを含むドリフト検出チップと、
集積化された前記電界効果トランジスタのソース電極に接続される入力部と、出力部とを備えたプリアンプと、
そのプリアンプの出力部に接続された入力部を備え、前記検出ダイオードにおいて検出された、量子の衝突の指標となる増幅パルスを生成するリニアアンプと、
前記中和電流の源と前記集積化された電界効果トランジスタとの間に接続された中和電流スイッチと、
その中和電流スイッチの導電状態を制御するように接続された出力部を有するタイマーと、
を備え、前記タイマーは、前記中和電流スイッチを導電状態にし、その後、非導電状態にする設定を繰り返し行う。
この発明の第四の態様によれば、ドリフト検出器における蓄積電荷の中和方法は、
前記ドリフト検出器において量子が衝突したことの指標となる指標信号を発生し、
その指標信号に基づいて、限られた時間間隔の間、意図的に増加された中和電流のパルスをドリフト検出器にトリガーする。
この発明の第五の態様によれば、ドリフト検出器における蓄積電荷の中和方法は、
限られた時間間隔の間、意図的に増加された中和電流のパルスを、前記ドリフト検出器に定期的にトリガーし、
その定期的にかけられるトリガーの動作特性であって、前記中和電流の増加量と、前記トリガーの生成における周波数と、意図的に増加された前記中和電流の、トリガーされたパルスの負荷サイクルのうち、少なくとも一からなる動作特性を、前記ドリフト検出器内のモニターされた蓄積電荷に比例するように調節する。
本発明の実施例による同期中和方法は以下のものである。すなわち、量子の個々の衝突を観測し、個々の衝突後か、または数個の連続する衝突の後に、検出素子へ素早く中和電流パルスを送る。本発明の他の実施例による代表的な非同期中和方法は、連続した中和期間の間に、小数の衝突のみしか起こらないほど十分短いサイクルで同期を定期的に実行する。
典型として知られているドリフト検出回路における構造と動作では、検出器に衝突している個々の量子に対する反応として、いわゆるタイミングパルスを生成することが含まれている。タイミングパルスの目的は、衝突が起こった瞬間の正確な指標として作用することにある。タイミングパルスの高さもしくは振幅は、量子エネルギーの正確な指標ではないが、近似的な相関関係はある。従って、検出器において個々の衝突の後に中和イベントをトリガーする少し遅れたタイミングパルスを使用することや、少数の連続したタイミングパルスを集めて、合わせたタイミングパルスによって電荷蓄積効果をまとめて中和することは可能である。そのような動作により、同期的に蓄積電荷を中和できる。
タイミングパルスの振幅が、検出された量子エネルギーを近似する精度が十分でない場合は、各パルス毎に管理されるべき中和電流の量を、より正確に決定する為に、微調整を使用することが可能である。好適な微調整装置はフィードバックループを利用したもので、FETでの蓄積電荷を示す電圧レベルをモニターし、その測定値に従って、中和電流が流れる可変アンプの増幅定数を制御する。基本的には、測定パルスが並列的に、且つタイミングパルスよりも正確に生成される測定チャネルから、正確な蓄積量子エネルギーの指標を得ることは可能である。
非同調的または非同期的な中和方法においては、中和電流のパルスにトリガーをかけるために必ずしもタイミングパルスを必要とするわけではない。なぜなら、中和電流は予め決められたタイムスケジュールに従って運ばれるからである。しかし、連続した中和期間の間に、多すぎる衝突が起きないようにするために、少なくともタイミングパルスの周波数をモニターして、それに応じて、検出器内で起きた衝突の予測回数よりも小さくならないように、中和電流の周波数を適応的にセットすることは有益であろう。
本出願に示される発明の実施例は、添付した請求項の適用に限定を設けるように解釈すべきものではない。動詞“to comprise”は本特許出願では、挙げられていない特徴の存在を排除するものではない。従属項で挙げられた特徴は、明示されていない限りは、相互に自由に組合わせ可能である。
本発明の特徴として考えられる新規な特徴は、特に添付請求項に明らかにされている。しかしながら、本発明の構成と実施方法は、目的および効果とともに以下に詳述する発明の実施形態を添付図とともに読むことにより容易に理解できよう。
図2は発明の実施例による検出器の概略ブロック図である。検出素子201は電磁放射の量子にさらされ、光電効果を起こして、その検出素子201の電極に電荷を蓄積させるのに好適なものである。増幅トランジスタ素子202(典型的には、FET)は、ドリフト検出器の技術における周知の方法で、検出素子201に接続される。
トランジスタ素子202から測定チャネル203およびタイミングチャネル204への接続がある。これらも先行技術から知られているものと本質的に同様である。しかし、本実施形態では、タイミングチャネル204から遅延素子205を通り中和電流スイッチ206への接続もある。中和電流経路は、中和電流スイッチ206を、検出素子201とトランジスタ素子202からなる本体に接続する。
図2の検出器は次のように動作する。ある一定のエネルギーを持つ電磁放射の量子が検出素子201に衝突した時、タイミングパルスがタイミングチャネル204に発生し、測定パルスが測定チャネル203(よく知られている半導体放射検出器とそれらに関するスペクトル分析の動作原理による)に生じる。タイミング調整に用いるタイミングチャネルが動作するのに加えて、タイミングパルスと同じ信号が遅延素子205に向かう。遅延素子205の目的は、検出器に衝突した量子によって蓄積された電荷を集める時間までタイミングパルスの伝搬を遅延させて、対応する測定パルスを生成することである。ここまで、中和電流スイッチ206は非導電状態にされている。すなわち、先行技術におけるドリフト検出器の原理と異なり、中和電流を連続して流していないのである。
測定パルスの生成が完了した後、遅延素子205から中和電流スイッチ206へタイミングパルスが送られる。これにより、中和電流スイッチ206は一時的に導電状態に変わり、そして検出素子からの蓄積電荷を中和するための中和電流のパルスが生じる。ここで、中和電流スイッチ206がある種のアナログスイッチであれば、タイミングパルスの高さか振幅により、少なくとも部分的に中和電流の量が決定されると考えても良い。このように大きな中和電流パルス(電流が大きいか、時間が長いか、又はその両方)は、小さなエネルギー量子の衝突より相対的に大きなエネルギー量子の衝突に追従できる。
たとえ中和電流が中和電流パルスの間だけ流れるという本発明の実施例に係る原理が概念的には理解できたとしても、以下に述べるような中和電流の性質について現実的な視点が必要だという事に注意すべきである。
つまり、検出素子201に印加されたバイアスが原因となって、トランジスタ素子202を通って検出素子201に漏れる電流が、少ないながらも確実に存在する。中和電流パルスが流れる間に、トランジスタ素子202のドレイン電圧が数百mV(1V以内)上昇するのに対して、検出素子201に量子が衝突することで生じるソース電位の変化はミリボルトオーダーである。このドレイン電圧の鋭い上昇は、漏れ電流の瞬間的な増加を引き起こす。中和電流パルスの終わりには、ドレイン電圧は以前の値にまで減少し、漏れ電流もまた以前の値(大変小さな値)に戻る。
図3は、中和電流パルスを正確に微調整できる検出器の概略ブロック図である。図2を参考にして既に記述した機能ブロックに付け加え、図3の検出器では、中和電流スイッチ206とトランジスタ素子202の間に接続された可変アンプ301と、トランジスタ素子202と可変アンプの間に接続されたモニターフィードバック素子302とを備える。モニターフィードバック素子302は、トランジスタ素子202に生じる電圧レベル(ここではソース電圧)であって、検出素子201における蓄積電荷量の指標となる電圧レベルをモニターする。加えて、モニターフィードバック素子302は可変アンプ301の増幅係数を制御して、蓄積電荷量とつり合うようにする。
図2の参照で記述されている動作に加えて、図3の検出器では、以下の動作が行われる。まず、タイミングパルスが遅延素子205から放出される時に、モニターフィードバック素子302は、トランジスタ素子202の電位を測定する。これは即ち、最新の衝突の結果として、どの程度の電荷が検出素子201に蓄積したかを測定したのと同じことである。モニターフィードバック素子302は可変アンプ301の増幅係数を適切に調整する。タイミングパルスが、中和電流スイッチ206を瞬間的に導電状態に変えた時、中和電流パルスの最終的な増幅は可変アンプ301で決定され、そのため、検出素子201の最新の蓄積電荷量を正確に中和できる。
図3に描かれた点線は、測定部203から可変アンプ301に向けて、微調整をするための情報を送る代替経路又は追加経路である。基本的には、可変アンプ301を微調整するための情報を測定部203から得られるが、上述したように直接接続した方が、より正確に蓄積電荷を中和できるであろう。
図4は他の変形例の検出器の概要ブロック図である。同期中和の基本原理は適用されるものの、中和電流は、各衝突の後には流されない。図2に追加した回路要素として、図4の検出器は累積カウンター401を備えている。その累積カウンター401は、タイミングパルスを少数カウント(2〜10の間)してその振幅を合計し、その後、合わされたパルスを中和電流スイッチへ送るものである。この検出器は図2とは違った動作になるが、その違いは各Nパルスの後に中和を行うだけである。ここで、正の整数Nはカウンターのカウントサイクルに等しく、即ち、最新のN個のタイミングパルスを合計したものが中和電流パルスに相当する。
図4の検出器は、図3と同様に、微調整をする装置を追加しても良い。ここで図3において、仮に、十分正確に微調整されていれば、微調整だけで、中和量を十分正確に決定できる。少なくとも理論上は、タイミングパルスの振幅を無視して、そのタイミングパルスを衝突回数の指標として用いることが可能である。可変アンプ(図3の301)の前には、中和電流パルスは常に一定の大きさであり、それはモニターフィードバック素子と、可変アンプの結合による合成効果によって適宜変化できる。
図5は非同期的に電荷を中和する検出器の概略ブロック図である。図2から図4の実施例と違って、タイミングパルスの発生から中和電流パルスにトリガーをかけるまでは、直接的な接続がない。そのかわりに、中和電流パルスに定期的にトリガーをかけるタイマー501がある。
タイマー501によって適用されるタイミングサイクルは、一定の連続した中和電流パルスの間に、1〜15の間ぐらいの、比較的少ない数の衝突だけが起こるよう、十分短くするべきである。もし、連続した中和電流パルスの間に、多くの衝突が起きると、先に説明したように、PIN検出器のランプ中和サイクルを用いた時の様な問題が起こる。即ち、最新の中和イベントのすぐ後に検出された衝突と、中和サイクルの終わりに近い時に起きた衝突を比較すると、異なるエネルギーをもっているように観測されるのである。
検出回路にて生じる量子の衝突の割合は変動する可能性があるので、タイミングパルスの生成と、中和電流パルスにトリガーをかけるまでの間を、間接的に接続するとよいことがわかる。図5では、この間接接続502は、接続502の形で現れており、この接続502は検出された衝突の回数についてタイマー501に情報を与える。タイマー501は中和サイクルの長さを選択することにより、衝突回数を計数し、検出された衝突の回数と正しい相関関係が得られるようにする。微調整する機構が存在すれば、タイマー501に同様のフィードバックをすることもできる。
検出器内での衝突の発生は、確率的なプロセスの結果である。つまり、トリガーをかけられた中和電流パルスのサイクルを繰り返して、中和時間を計測したとすると、一定時間内に起こる衝突数は、変化するのである。このことは、連続した中和サイクルの間に発生した衝突の数や、必要とされる中和効果、即ち、中和電流パルスによって運ばれる電荷量も変わることを意味する。この変化に対しては、2つのアプローチをとることが考えられる。一つ目の選択肢は、非常に正確に調整された固定電位に検出器を接続することにより、中和電流パルスを得ることであり、これにより、電位が常に一定であるとみなせるので、中和電流パルスを自己調整させることができる。二つ目の選択肢は、図3と同様に示すような微調整機構を用いることにより、現実に蓄積された電荷量をFETでモニターし、可変アンプを通して中和電流パルスを調整することである。
図6は、発明の実施例による検出器のより詳細な概略図である。この検出器は図3の原理に基づいた動作をするためのものである。
検出ダイオード201とFET202は、ドリフト検出チップ601に一緒に集積される。FET202のソース電極から、プリアンプ602を通りリニアアンプ603への接続がある。そしてリニアアンプ603は、図3における測定チャネル203とタイミングチャネル204を含む。タイミングチャネル204内のタイミングアンプ604の出力から、ダイオード605のアノードへの接続があり、そのダイオード605のカソードとGNDの間に接続されるコンデンサー606と抵抗607はラッチ回路を構成する。ラッチ回路の出力を構成するダイオード605のカソードは、2つのスイッチに接続される。これらのスイッチのうち、第一のスイッチ608は、ラッチ回路の出力と可変アンプ301の入力の間に接続され、一方、第二のスイッチ609はラッチ回路の出力と固定電位(ここではGND電位)との間に接続される。抵抗610は可変アンプ301の入力とGNDの間に接続される。可変アンプ301の出力はドリフト検出チップ601内のFET202のドレインに接続される。
抵抗611はFET202のソースとフィードバックアンプ612の入力の間に接続され、そのフィードバックアンプ612の出力は制御アンプ301の制御入力に接続される。コンデンサー613はフィードバックアンプ612の入力と出力の間に接続される。
パルスジェネレータ614の入力はタイミングアンプ604の出力に接続されている。パルスジェネレータ614の2つの出力は、第一のスイッチ608と、第二のスイッチ609に、それぞれ接続されている。
図6の検出器は次のように動作する。検出チップ601から得られたパルス信号は、初めにプリアンプ602で増幅されて、次にリニアアンプ603で受け取られる。このリニアアンプ603には、パルス信号の高さや形から、検出チップ601内でパルス信号を生じさせた量子エネルギーを正確に見積もる測定チャネル203がある。タイミングチャネル204で生成したタイミングパルスは、タイミングアンプ604の出力から取り出されて、ダイオード605、コンデンサー606、抵抗607から成るラッチ回路にサンプルされる。その結果、ラッチ回路内のコンデンサー606に電位差が生じ、その電位差は、タイミングパルスの高さにより代表される。これは検出チップ601内の元々の蓄積電荷の粗い指標となる。この段階で、両方のスイッチ608と609は非導電状態である。
パルスジェネレータ614も、タイミングアンプ604からタイミングパルスを受け取る。タイミングパルスの立ち上がりエッジを受けた後、パルスジェネレータ614は予め決定された遅延時間だけ待つ。その遅延時間の長さは、検出された量子のエネルギーを表す、測定パルスの高さを、測定チャネル203が測定できるように決められる。遅延時間が終了した後、パルスジェネレータ614は第一のスイッチ608を導電状態にセットする。ラッチ回路に前もって保持された電圧により、FET202のドレイン電圧が一時的に増加し、これによって、検出チップ601に中和電流が流れて、蓄積電流が中和される。短い時間の後に、パルスジェネレータ614は第一のスイッチ608を非導電状態に戻し、第二のスイッチ609を導電状態にセットする。これは中和電流を終わらせる効果と、ラッチ回路を空にする効果と、次のタイミングパルスをサンプルする為の準備をする効果がある。
中和電流が流れている短い時間間隔の間、中和電流により発生するノイズを受けないようにする為に測定チャネルは止めるべきである。パルスジェネレータ614の動作に関係するタイミングの特徴は良く知られているので、リニアアンプ603内外の、信号処理をする要素が、対応するタイムインターバルの間、入力信号を無視できるようにすることは簡単である。本発明の実施例による検出器によって、約1000衝突/秒から数10,000衝突/秒の平均量子周波数を測定することが可能である。例えば約10,000衝突/秒の平均量子周波数の場合、測定チャネル203で一つの測定パルスを集積し形成する為にかかる時間は、およそ4μsecのオーダーであると考えられる。その後、2〜3μsecの時間間隔は、同期的な中和処理に好適に使用され、これにより測定に顕著な問題を引き起こす事なく、その時間間隔に対応する時間、測定チャネルを止めることができる。
タイミングチャネル204から得られたタイミングパルスの高さは、中和されるべき電荷量の粗い指標でしかない。従って、検出器は、抵抗611と、アンプ612、コンデンサー613を含むモニターフィードバック結合を可変アンプとともに含んでいる。モニターフィードバック結合により、FET202のソース電位を一定に保つという効果もある。参照値からの偏差が大きくなればなるほど、必要な中和電流パルスも大きくなる。モニターフィードバック結合が可変アンプ301の増幅係数をコントロールし、その可変アンプ301を通って検出チップへ中和電流パルスを送るようにすることで、上述した、FET202のソース電位を一定に保つという効果が達成される。
図7は、本発明の他の実施例による検出器のより詳細な概略図である。タイマー701は、短い時間間隔の間、中和電流スイッチ702を定期的に導電状態にセットするために使用される。図6に関連して記述されているものと類似のモニターフィードバック結合は、可変アンプ301の増幅係数を制御して、短い時間間隔の間、可変アンプ301を通る中和電流を検出器601に流すのに用いられるとともに、中和に実際必要な情報をタイマー701に与えるのにも用いられる。タイマー701は、スイッチ702に送るパルスの周波数または負荷サイクルのどちらか若しくは両方を変えることによって、上記情報に応答することができる。仮に、モニターフィードバック結合および、タイマー701の制御効果が正確で十分効果的であれば,可変アンプ301を取り去ってもよい。その他、リニアアンプ603’と、その中のタイミングチャネル204’は図6の603及び204と似ている。しかし、これらは図7においては、タイマー701から送られる禁止信号に反応して、中和電流パルスが送られる間、測定を中断することにより、中和電流によって引き起こされるノイズが測定に影響を与えないようにしている。
図8と図9に本発明の方法の態様を図示する。ステップ801と802は観測された蓄積電荷に基づいて、ドリフト検出器内で量子衝突が起きたことの指標となる指標信号を生成することを表す。それ自体公知の方法で、上記指標信号はステップ803による分析および蓄積に移行される。タイミングパルスをサンプリングして蓄積する(好ましくは電圧の形で)ことにより、ステップ804(ステップ802か803のうち、少なくとも一方から入力される)においてタイミングと振幅の情報が得られる。ステップ805は、正確な測定ができるように、予め決められた遅延時間、待機することに相当する。基本的にはステップ801と802で作成された指標信号に基づいて、ステップ806では、限られた時間間隔の間、意図的に増加された中和電流をドリフト検出器へ送るトリガーがかけられる。このステップ806は特に、サンプルされたタイミングパルスを、蓄積した場所から中和電流経路を通ってドリフト検出器へ送るステップである。ステップ807は、検出器において、実際に電荷を中和することを示す。
ステップ808と809では、微調整が行われる。このステップは、ドリフト検出器に蓄積した電荷の量をモニターして、ドリフト検出器でモニターされた蓄積電荷に対応して、中和電流の増加量を微調整するステップである。ステップ809では中和電流を増幅してもよいし、代わりに減衰するように制御してもよい。
図9に、別の方法で、非同期的な中和方法を示す。ステップ901では、限られた時間内に、意図的に増加した中和電流のパルスをドリフト検出器へ送るトリガーを連続してかけるステップであり、ステップ902は、トリガーをかけるタイマーが、測定禁止信号を生成して、分析及び蓄積プロセスであるステップ803へその測定禁止信号を送るステップである。ステップ808と809では、上述した内容に加えて、点線で示すように、ドリフト検出器内の、モニターされた蓄積電荷に合わせてタイマーの動作特性を調整することを示す。その動作特性は、中和電流を増加させる量と、トリガーをかける周波数と、中和電流パルスの負荷サイクルのうち、少なくとも1つとすることができる。
従来のドリフト検出回路の原理。 本発明の実施形態による検出器の原理。 本発明の他の実施形態による検出器の原理。 本発明の他の実施形態による検出器の原理。 本発明の他の実施形態による検出器の原理。 本発明の実施形態による検出器を、より詳細に示した図。 本発明の他の実施形態による検出器を、より詳細に示した図。 本発明の実施形態のいくつかの方法。 本発明の他の実施形態のいくつかの方法。
符号の説明
101 ダイオード
102 FET
103 漏れ電流
201 検出素子、半導体検出器
202 増幅トランジスタ素子
203 測定チャネル
204,204’ タイミングチャネル
205,614 遅延素子
206,608、702 スイッチ
301 可変アンプ
302,611,612,613 モニターフィードバック素子
501,701 タイマー

Claims (22)

  1. 電磁放射に曝される半導体検出部(201)と、
    ドリフト検出器(601)を構成するために前記半導体検出部(201)に一体化された増幅部(202)と、
    前記増幅部(202)を通って前記半導体検出部(201)へ中和電流を流す中和電流経路と、を備え、
    電磁放射の量子を検出するための検出器において、
    前記中和電流が流れることを制御するように調節されて、前記中和電流経路に接続されたスイッチ(206,608,702)を含むことを特徴とする検出器。
  2. 前記電磁放射の量子が前記半導体検出部において検出されたことの指標となる指標信号を発生するタイミングチャネル(204,204’)を含む請求項1記載の検出器。
  3. 前記中和電流経路に接続されている前記スイッチ(206,608)は、前記タイミングチャネル(204)から得られる前記指標信号に従って所定の時間間隔の間、前記中和電流を増加することにより、前記タイミングチャネル(204)から得られる前記指標信号に対して応答する請求項2記載の検出器。
  4. 前記タイミングチャネル(204)と前記スイッチ(206,608)の間に設けられるとともに前記中和電流経路に接続され、前記タイミングチャネル(204)から前記指標信号が得られた後、予め決められた時間、前記中和電流の増加が始まる時間を遅延させる遅延素子(205,614)を含む請求項3記載の検出器。
  5. 前記中和電流経路(605,606,607)は、前記タイミングチャネル(204)から得られる前記指標信号の振幅に対して、流すべき前記中和電流の量を決定することにより反応する請求項3記載の検出器。
  6. 前記タイミングチャネル(204)は、前記検出器が前記電磁放射の量子を検出しないように、禁止信号を発生する請求項3記載の検出器。
  7. 前記中和電流経路に設けられた可変アンプ(301)と、
    前記増幅部(202)と前記可変アンプ(301)の間に接続され、前記半導体検出部(201)に蓄積された電荷量の指標となる、電位の変化であって、前記増幅部(202)における電位の変化をモニターし、それに基づいて前記可変アンプ(301)を調節するモニターフィードバック素子(302,611,612,613)と、
    を含む請求項1記載の検出器。
  8. 前記スイッチ(206)を制御するために接続され、該スイッチ(206,702)を導電状態および非導電状態になるように繰り返し設定するタイマー(501,701)を含む請求項1記載の検出器。
  9. 前記増幅部(202)に接続され、前記半導体検出部(201)に蓄積された電荷量の指標となる、電位の変化であって、前記増幅部(202)における電位の変化をモニターするモニターフィードバック素子(611,612,613)と、
    そのモニターフィードバック素子(611,612,613)から、前記タイマー(701)へのフィードバック結合と、
    を含む請求項8記載の検出器。
  10. 前記電磁放射の量子が検出されたことの指標となる指標信号を発生するタイミングチャネル(204)と、
    前記タイミングチャネル(204)から前記タイマー(501)へのフィードバック結合(502)と、
    を含む請求項8記載の検出器。
  11. 前記タイマー(701)は、前記スイッチ(702)が前記中和電流の増加を許容する状態にあるときに、前記検出器が前記電磁放射の量子を検出しないように、禁止信号を発生する請求項8記載の検出器。
  12. 検出ダイオード(201)と、増幅部として作用する、集積化された電界効果トランジスタ(202)とを含むドリフト検出チップ(601)と、
    前記集積化された電界効果トランジスタ(202)のソース電極に接続される入力部と、出力部とを備えたプリアンプ(602)と、
    そのプリアンプ(602)の出力部に接続された入力部と、タイミングパルスを生成するタイミングチャネル(204)とを含むリニアアンプ(603)と、
    を備え、
    電磁放射の量子を検出するための検出器において、
    前記タイミングチャネル(204)からのタイミングパルスを受信するために接続され、その受信した前記タイミングパルスをサンプルし、そのサンプルした前記タイミングパルスを一時的に保持するラッチ回路(605,606,607)と、
    そのラッチ回路(605,606,607)と前記集積化された電界効果トランジスタ(202)との間に接続された中和電流スイッチ(608)と、
    前記ラッチ回路(605,606,607)と、固定電位の間に接続されたラッチ空スイッチ(609)と、
    前記タイミングチャネル(204)からタイミングパルスを受信するように接続された入力部と、前記中和電流スイッチ(608)の導電状態を制御するように接続された第一出力部と、前記ラッチ空スイッチ(609)の導電状態を制御するように接続された第二出力部とを含むパルスジェネレータ(614)と、
    を備え、前記パルスジェネレータ(614)は、前記中和電流スイッチ(608)を導電状態に設定し、その後に、前記中和電流スイッチ(608)を非導電状態にするとともに前記ラッチ空スイッチ(609)を導電状態にすることで、受信した前記タイミングパルスに対して反応することを特徴とする検出器。
  13. 前記ラッチ回路(605,606,607)と前記集積化された電界効果トランジスタ(202)との間の電流経路上に配置された可変アンプ(301)と、
    前記集積化された電界効果トランジスタ(202)と前記可変アンプ(301)の間に接続され、前記検出ダイオード(201)に蓄積された電荷量の指標となる、電位の変化であって、前記集積化された電界効果トランジスタ(202)における電位の変化をモニターし、それに基づいて前記可変アンプ(301)を調節するモニターフィードバック素子(611,612,613)と、
    を含む請求項12記載の検出器。
  14. 検出ダイオード(201)と、増幅部として作用する、集積化された電界効果トランジスタ(202)とを含むドリフト検出チップ(601)と、
    前記集積化された電界効果トランジスタ(202)のソース電極に接続される入力部と、出力部とを備えたプリアンプ(602)と、
    そのプリアンプ(602)の出力部に接続された入力部を備え、前記検出ダイオード(201)において検出された、量子の衝突の指標となる増幅パルスを生成するリニアアンプ(603’)と、を備え、電磁放射の量子を検出するための検出器において、
    前記中和電流の源と前記集積化された電界効果トランジスタ(202)との間に接続された中和電流スイッチ(702)と、
    その中和電流スイッチ(702)の導電状態を制御するように接続された出力部を有するタイマー(701)と、
    を含み、前記タイマー(701)は、前記中和電流スイッチ(702)を導電状態にし、その後、非導電状態にする設定を繰り返し行うことを特徴とする検出器。
  15. 前記中和電流の源と前記集積化された電界効果トランジスタ(202)との間の電流経路上に設けられた可変アンプ(301)と、
    前記集積化された電界効果トランジスタ(202)と前記可変アンプの間に接続され、前記検出ダイオード(201)に蓄積された電荷量の指標となる、電位の変化であって、前記集積化された電界効果トランジスタ(202)における電位の変化を観測し、それに基づいて前記可変アンプ(301)を調節するモニターフィードバック素子(611,612,613)と、
    を含む請求項14記載の検出器。
  16. 前記モニターフィードバック素子(611,612,613)は、前記検出ダイオード(201)に蓄積された電荷量の指標となる、電位の変化であって、前記集積化された電界効果トランジスタ(202)における電位の変化を観測し、それに基づいて、前記タイマー(701)の動作特性であって、動作周波数および負荷サイクルのうち少なくとも一からなる動作特性を制御する請求項15記載の検出器。
  17. ドリフト検出器において量子が衝突したことの指標となる指標信号を発生する(802,804,805)ドリフト検出器に備えられた検出ダイオードに量子の衝突による光電効果によって蓄積された蓄積電荷の中和方法であって、
    前記指標信号に基づいて、限られた時間間隔の間、意図的に増加された中和電流のパルスを、前記検出ダイオードに接続されたトランジスタ素子を通って前記検出ダイオードにトリガーする(806)ことを特徴とする蓄積電荷の中和方法。
  18. 前記意図的に増加された中和電流のパルスは、前記検出ダイオードにおいて量子が衝突したことの指標となる、個々に生成された指標信号(802)のそれぞれに反応してトリガー(901)される請求項17記載の蓄積電荷の中和方法。
  19. 前記指標信号はリニアアンプ内のタイミングチャネルから得られるタイミングパルスであり、
    そのタイミングパルスをサンプリング(804)し、そのサンプルされたタイミングパルスを電圧の形で保持(804)し、
    予め決められた遅延時間(805)、待機し、
    その遅延時間が過ぎた後、前記タイミングパルスを保持した所から前記中和電流経路を通って前記ドリフト検出器へ向けて、前記サンプルされたタイミングパルスを放つ請求項18記載の蓄積電荷の中和方法。
  20. 前記検出ダイオード内に蓄積された蓄積電荷をモニター(808)し、
    前記検出ダイオード内のモニターされた蓄積電荷に比例するように、前記中和電流の増加量を調節(809)する請求項17記載の蓄積電荷の中和方法。
  21. 前記意図的に増加された中和電流のパルスは、前記検出ダイオードにおいて前記量子が衝突したことの指標となる、個々の前記指標信号を所定の数、合計したものに対して反応してトリガー(806)される請求項17記載の蓄積電荷の中和方法。
  22. ドリフト検出器に備えられた検出ダイオードに量子の衝突による光電効果によって蓄積された蓄積電荷の中和方法であって、
    意図的に増加された中和電流のパルスを限られた時間間隔の間、定期的に、前記検出ダイオードに接続されたトランジスタ素子を通って前記検出ダイオードへトリガー(901)し、
    その定期的にかけられるトリガーの動作特性であって、前記中和電流の増加量と、前記トリガーの生成における周波数と、増加された前記中和電流の、トリガーされたパルスの負荷サイクルのうち、少なくとも一からなる動作特性を調節して、前記検出ダイオード内の、モニター(808)された蓄積電荷に対応させることを特徴とする蓄積電荷の中和方法。
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